JP2002506817A - 癒着の予防と治療 - Google Patents

癒着の予防と治療

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、外科処置後に生じる癒着などの、動物、とくにヒトの体器官、体器官の一部、および/または組織への癒着およびこれらの間の癒着の発生を予防または低減するための治療法および医薬組成物に関する。本発明は、動物の特定の位置における、器官、器官の部位または組織への、およびこれらの間における癒着の予防または低減のために提供されるものであって、前記位置に存在する中皮細胞によるプラスミノゲン活性剤の合成および/または分泌作用の促進のために行われる治療、または前記位置に存在する中皮細胞によるプラスミノゲン活性阻害剤の合成および/または分泌の遅延のために行われる治療に、前記動物を被験させることからなる。該活性剤は、22(R)−ヒドロキシコレステロール、メバロネート、またはこれらの混合物など、任意的にレチノイン酸を混合したバスタチンおよび異なった天然オキシステロールからなる群から選択されたものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 [技術分野] 本発明は、外科処置後に生じる癒着などの、動物、とくにヒトにおける体器官
、体器官の一部、および/または組織への癒着およびそれらの間の癒着の発生を
防止または低減させる医学的治療に関する。
【0002】 [背景技術] 腹部手術または腹膜炎症後の腹膜内癒着の発生は、女性における腸閉塞および
受精欠陥に共通するものであり、その後の手術における複雑化因子であり得る。
全ての病因局面は知られていないが、腹膜内癒着および腹膜線維化につながる一
連の事象は、線維素付着とともに発生し、続いて、線維芽細胞の移入および増殖
、および線維芽細胞によるコラーゲン合成が生じるものと考えられる。線維素付
着は、腹膜の予備凝固(線維素形成)および線溶(線維素溶解)作用との間の不
均衡の結果である。癒着は、胸郭または心臓などの他の体腔の手術後にも生じる
ことがあり、たとえば、腹膜炎、心膜炎および胸膜炎において見られるような、
そのような体腔における炎症プロセス後に生じることがある。
【0003】 病気進行の初期段階における均衡の回復は、線維素付着の低下につながり、線
維芽細胞反応を遅延または予防させ、その結果、癒着形成を遅延または予防させ
得ると理由付けられている。
【0004】 腹膜表面の癒着を防止するために、キナクリン塩酸塩(米国特許第5,478
,837号明細書)、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症性薬(Hol
z著,Fertil.Steril.第37巻,582頁,1982年)、ヘパ
リンなどの抗凝固剤(Jansen著,Surg.Gynecol.Obste
t.第166巻,154頁,1988年)、イブプロフェン(米国特許第4,3
46,108号明細書)、抗ヒスタミン剤、抗生物質、デキストラン溶液、ポリ
ビニルピロリドン溶液および溶線剤(米国特許第5,364,622号明細書)
を含む種々の薬理学的試薬が検討または提案されている。
【0005】 動物モデルでは効果的であるとわかった組織型プラスミノーゲン活性化因子(
t−PA)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(u−PA)およびス
トレプトキナーゼなどの溶線剤を除いて、今まで、結果は不満足なものであった
。これらの溶線剤は、不活性酵素原プラスミノーゲンをプラスミンに転化する。
プラスミンは、線維素の分解を行う。線維素付着は、癒着の進行における重要な
因子であるので、t−PA、u−PAまたはストレプトキナーゼの投与により、
癒着形成が防止され、または既に形成された癒着が除去される。
【0006】 この概念は、ラット(Evansら,Am.J.Surg.第165巻,22
9頁,1993年;Hill−Westら,J.Surg.Res.第59巻,
759頁,1995年)、ウサギ(Doodyら,Fertil.Steril
.第51巻,509頁,1989年;MenziesおよびEllis,J.R
oyal.Soc.Med.第82巻,534頁,1989年;Menzies
およびEllis,Surg.Gynecol.Obstet.第172巻,3
62頁,1991年;Doerrら,Eur.J.Obstet.Gyneco
l.Reprod.Biol.第37巻,287頁,1990年;Oritaら
,Int.J.Fertil.第36巻,172頁,1991年;Dunnおよ
びMohler,J.Surg.Res.第54巻,242頁,1993年)お
よびイヌ(Am.J.Obstet.Gynecol.第165巻,1539頁
,1991年)を含む動物における実験的に誘発された腹膜癒着の防止において
有効であるとわかった。
【0007】 溶線活性因子の投与の制限および欠点は、比較的多量が必要とされること、原
形質の腔から血漿への漏れにより作用が短時間であること(Flessnerら
,Am.J.Physiol.第240巻,H15頁,1985年)、または特
定の阻害剤の阻害であり、ストレプトキナーゼの場合、喚起された免疫応答であ
ることである。
【0008】 好ましい別の態様は、所望の期間中、腔の内因性溶線能が制御下に促進するこ
とであるが、現在まで効果的対策は記載されていない。
【0009】 中皮細胞は、腹膜腔の内層に含まれる主用な細胞集合である。培養されたヒト
中皮細胞(HMC)はt−PAおよびu−PAを生成し、培地におけるこれらプ
ラスミノーゲン活性因子の活性が、プラスミノーゲン活性因子阻害剤−1(PA
I−1)を含む特定のプラスミノーゲン活性因子阻害剤の同時分泌により打ち消
されることが示された。
【0010】 [発明の開示] 本発明は、動物の特定部位における器官、器官の一部または組織への癒着また
はそれらの間の癒着を低減または予防する方法であって、前記部位に存在する中
皮細胞によるプラスミノーゲン活性因子の合成および/または分泌の促進のため
に提供する、または、プラスミノーゲン活性因子阻害剤(PAI)の合成および
/または分泌の遅延のために提供する治療に、前記動物を付することを含む方法
を提供する。ここで、本発明は、外因性t−PA、u−PAまたはストレプトキ
ナーゼを投与するのではなく、前記部位、たとえば、体腔において内因性溶線能
を所望の期間中、制御下に促進させる方法を提供する。すなわち、本発明の方法
を適用すると、組織型プラスミノーゲン活性因子の内因性(体そのものの;生体
内)生成を促進させることにより、フィブリンの付着(癒着につながる一連の事
象の主用工程の1つ)が予防または低下される。
【0011】 前記動物は哺乳動物が好ましく、最も好ましくはヒトであり、前記部位は、局
所的線維形成につながり得る外傷にさらされる、さらされている、またはさらさ
れるかもしれない。動物において、本発明は、獣医学において、たとえば小型動
物または大型動物において使用され、鳥類、または哺乳動物あるいは他の脊椎動
物が治療される。ヒトにおいては、本発明は、薬剤において用いられる。外傷の
例は外科処置、たとえば腹部または胸部手術である。もう1つの例は、事故後の
外傷であり、たとえば内出血が凝固剤での治療により停止される。そのような凝
固剤での処理後、本発明は、癒着防止の補助に用いられる。
【0012】 好ましい態様において、本発明は、前記治療が、前記中皮細胞によるt−PA
および/またはu−PAの合成および/または分泌を促進させることができる、
またはPAI−1の合成および/または分泌を遅延させることができる活性剤を
前記動物に投与することを含む方法を提供する。前記治療は、前記活性剤を、好
ましくは前記部位において、癒着発生の危険性が観察された後に適用することを
含むが、全身性または非経口治療も可能であり、そのような治療は、予防手段と
して提供することもでき、たとえば、外科処置の直前も考えられ、実施される。
たとえば、本発明は、前記活性剤が、中皮細胞によるt−PA合成を促進させ、
またはPAI−1合成を遅延させることができる方法を提供する。そのような活
性剤としては、シムバスタチン、ロバスタチン、メビノリンなどのバスタチン類
、および22(R)−ヒドロキシコレステロールなどの別のオキシステロール類
からなる群において見出すことができる。全トランスレチン酸および9−シスレ
チン酸などのレチノイドを、そのような活性剤と組み合わせて用いると、中皮細
胞によるt−PAの合成を促進させる、またはPAI−1合成を遅延させる。
【0013】 もう1つの好ましい態様において、本発明は、前記活性剤がHMG−CoAレ
ダクターゼを阻害でき、それにより中皮細胞によるt−PAおよび/またはu−
PAの合成および/または分泌を促進させる、および/またはそれにより、これ
らの細胞によるPAI−1の合成および/または分泌を遅延させることができる
方法を提供する。メバロン酸(MVA)は、ステロール(たとえば、コレステロ
ールおよびオキシステロール)の前駆体であるイソプレノイド類、ならびに、フ
ァルネシル−およびゲラニルゲラニル−ピロリン酸塩(GGPP)などの種々の
非ステロール誘導体の生合成における重要な代謝産物を構成する。MVAの生成
は、HNG−CoAレダクターゼにより触媒され、その阻害剤(シムバスタチン
、ロバスタチン、メビノリンなどのバスタチン類)が、高コレステロール血症の
患者において抗アテローム性硬化症薬として広く用いられている。HMG−Co
Aレダクターゼ阻害剤と相乗的に作用することができる(それにより、t−PA
の合成および/または分泌を促進させ、またはPAIの合成および/または分泌
を遅延させる)他の薬剤は、たとえば、別の天然オキシステロールおよび9−シ
スレチン酸である。
【0014】 HMG−CoAレダクターゼの阻害は、中皮細胞におけるt−PAの合成を大
きく促進させ、PAI−1を遅延させる。たとえば、そのような細胞のシムバス
タチン治療は、t−PA合成を大きく促進させ、それは、第2局面において、9
−シスレチン酸および/または22(R)−ヒドロキシクロステロールまたはそ
れらの組み合わせを続いてまたは同時に投与することによりさらに増強される。
【0015】 本発明は、また、中皮細胞におけるプラスミノーゲン活性因子の合成および/
または分泌の促進、またはプラスミノーゲン活性因子阻害剤の合成および/また
は分泌の遅延のために提供する前記いずれかの治療方法を抑制する方法も提供す
る。このように、本発明は、たとえば腔の内因性溶線能を制御下に促進させる方
法のみならず、前記性能を所望期間促進させる方法も提供する。前記いずれかの
治療を停止または低下させることが望まれる場合、前記治療を停止させ効果が漸
減するまで待つのみでは充分でない。本発明により、第1の治療を打ち消すこと
ができる活性剤を用いる第2の治療が提供される。本発明は、たとえば、シムバ
スタチン、ロバスタチンまたはメビノリンなどのHMG−CoAレダクターゼ阻
害剤を用いる、たとえば、異なるオキシステロールおよびレチン酸を用いる治療
後に見られる効果を、たとえば、プラスミノーゲン活性因子の促進またはPAI
の遅延を抑制するまたは打ち消す、たとえばMVAまたはゲラニルゲラニオール
の投与を続いてまたは同時に行うことにより、打ち消す効果的方法を提供する。
【0016】 本発明は、器官、器官の一部または組織への癒着またはそれらの間の癒着を低
減または予防するための薬剤組成物を調製するために、中皮細胞におけるプラス
ミノーゲン活性因子の合成および/または分泌の促進、またはプラスミノーゲン
活性因子阻害剤の合成および/または分泌の遅延を提供することができる活性剤
の使用も提供する。本発明の好ましい態様は、前記中皮細胞が哺乳動物、たとえ
ば、ヒトのものである発明である。
【0017】 本発明の1つの態様において、前記活性剤が前記中皮細胞によるプラスミノー
ゲン活性因子、好ましくはt−PAの合成および/または分泌を促進できること
が好ましい。本発明のさらにもう1つの態様において、前記活性剤が前記中皮細
胞によるプラスミノーゲン活性因子阻害剤、好ましくはPAI−1の合成および
/または分泌を遅延させ得ることが好ましい。好ましい態様によれば、前記活性
剤は、シムバスタチン、ロバスタチンおよびメビノリンなどのバスタチン類、2
2(R)−ヒドロキシコレステロールなどの異なるオキシステロール、および9
−シスレチン酸からなる群より選択される。好ましくは、前記活性剤は、シムバ
スタチンなどのメバロン酸合成の阻害剤またはその機能的対価物質、ゲラニルゲ
ラニオール合成の阻害剤または22(R)−ヒドロキシコレステロールなどのオ
キシステロール、またはその機能的対価物質からなる群より選択される。
【0018】 もう1つの態様において、前記活性剤は、HMG−CoAレダクターゼを阻害
することができる試薬または組成物から、または、肝臓−X−受容体または関連
受容体を活性化することができる試薬または組成物から選択される。肝臓−X−
受容体(LXR)は、構成的転写活性を示すオーファン受容体である。たとえば
、20(S)−ヒドロキシコレステロール(OH−Chol)、22(R)−O
H−Chol、24(S)−OH−Cholおよび24(S)、25−エポキシ
−Cholなどの天然産オキシステロールであって、メバロン酸塩代謝産物の他
の産物でないものは、組織抽出物中において見られるものに相当する濃度におい
てLXRを活性化する。これに対して、MVAの他の代謝産物であるGG−PP
は、LXRの強力な阻害剤である。LXRのための結合部位のためのt−PAプ
ロモーターをソフトウェアを用いて検討して、位置−8,682:ACTGGG
taac ACTTGG(モチーフDR4/inv)における推定応答要素を
同定した。
【0019】 本発明は、器官、器官の一部または組織への癒着またはそれらの間の癒着を低
下または予防するための前記薬剤組成物のいずれかの作用を打ち消す、または緩
和するための薬剤組成物を製造するために、中皮細胞におけるプラスミノーゲン
活性因子の合成および/または分泌の促進、またはプラスミノーゲン活性因子阻
害剤の合成および/または分泌の遅延を打ち消すことができる活性剤、好ましく
はMVAまたはゲラニルゲラニオールを使用することも提供する。
【0020】 本発明の組成物および方法は、癒着形成の低減、最少化または予防において有
用であり、その最も一般的場合は、事前の手術である。本発明の組成物および方
法は、器官表面間の癒着形成の予防、とくに手術後の腹膜における癒着形成にお
いて特に効果的であると示された。しかしながら、本発明は、たとえば心臓血管
、整形、胸郭、眼、中枢神経系および、手術後、炎症過程中または後の癒着の形
成の予防が強く係わる他の用途のような他の分野においても有用性がある。以下
の説明において、腹膜癒着形成の阻害において有用な組成物および方法の説明が
主に注目されるが、そこに開示の種々の可能性および好ましい態様は、本発明を
適用し得る全ての他の症状に適用される。
【0021】 ここで用いられる「薬剤組成物」という用語は、活性剤単独、および、活性剤
を薬学的に許容できるキャリア、希釈剤または賦形剤とを一緒に含む組成物の両
方を含むことが意図される。
【0022】 本発明の1つの態様によると、癒着形成の可能性がある部位において有効濃度
で活性剤が投与される。投与は、単一投与物として、種々の投与物の不連続とし
て、または連続的に、実質的組織修復、とくに、再上皮形成または中皮修復に充
分な時間行うことができる。活性剤は、典型的には、手術処置中に、数回まで、
その完了後に投与され、投与は、手術直前に行うまたは開始することもできる。
連続投与の場合、投与の継続時間は、当業者により容易に理解される多くの因子
に依存して変化し得る。通常、本発明による組成物の投与は、手術の時から、手
術処置の完了後少なくとも1または2日間行うべきである。大部分の場合、治癒
は約2週間以内に完了するので、本発明の組成物の投与を2週間よりかなり長く
続ける必要は通常無い。好ましくは、本発明の組成物は、略手術の時から、約1
日〜約2週間、とくに、約2日〜約1週間投与される。
【0023】 活性剤の投与は、かなり広い範囲で変化し得る。投与することができる活性剤
の濃度は、下限が効能により制限され上限が化合物の溶解度により制限される。
特定の患者に対する最適な投与量は、医師または医学専門家により、患者の症状
、体重および年齢のような良く知られている関連因子、癒着の所定のまたは予想
される程度などを考慮して、決められるべきであり決めることができる。
【0024】 活性剤は、たとえばリン酸塩緩衝塩水(PBS)などの適当な媒体中、または
アルコールもしくはDMSO中の溶液として直接投与することができる。しかし
ながら、本発明の好ましい態様によると、活性剤は、活性剤の必要な濃度を適切
な組織修復に充分な時間維持することを可能にする除放配達系(sustained-rele
ase delivery system)により投与される。適当なドラッヅデリバリーシステム は、薬理学的に不活性または少なくとも許容し得るものである。それは、好まし
くは免疫原性でなく、また炎症反応も起こさず、かつ、活性剤の効果的水準を所
望の期間維持するように活性剤の放出を許容すべきである。多くの種々の別態様
が、除放の目的に好適であると知られており、本発明の範囲内であると考えられ
る。適当なデリバリー媒体は、マイクロカプセルまたは微小球;リポソーム類お
よび他の脂質系放出系;粘性滴下剤;吸収性および/または生分解性メカニカル
障壁およびインプラント;および、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキ
シドブロックコポリマー、ポリエステル、架橋ポリビニルアルコール、ポリ無水
物、ポリメタクリレートおよびポリメタクリルアミドヒドロゲル、アニオン性炭
水化物ポリマーなどのポリマーデリバリー材料があげられるが、これらに限定さ
れず、有用なデリバリーシステムは当該分野においてよく知られている。
【0025】 活性剤放出を達成するために高度に適している組成物は、ポリ(dl−ラクチ
ド)、ポリ(dl−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリカプロラクトン、ポリグ
リコリド、ポリ乳酸−コ−グリコリド、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリエステル
またはポリアセタールなどの生分解性ポリマーから作製された注入性マイクロカ
プセルまたは微小球を含む。直径約50〜500μmのマイクロカプセルまたは
微小球を含む注入系が、他のデリバリーシステムを超える利点を提供する。たと
えば、それらは、通常、少ない活性剤を利用し、パラメディカルパーソネルによ
り投与され得る。さらに、そのような系は、マイクロカプセルまたは微小球の寸
法、薬剤使用量および投与量の選択により持続時間および別個の薬剤放出の割合
の設計において本質的に柔軟性がある。さらに、これらは、γ線照射により良好
に滅菌することができる。
【0026】 マイクロカプセルおよび微小球の設計、調製および使用は、当業者の充分に考
え得る範囲内にあり、これらの点に関する詳細な情報は文献において得ることが
できる。マイクロカプセルおよび微小球以外の製剤において生分解性ポリマー(
たとえば、ラクチド、グリコリドおよびカプロラクトンポリマー)を用いること
もでき、たとえば活性剤を含むこれらのポリマーの予備形成フィルムおよびスプ
レー形成フィルムが、本発明による使用に適している。活性剤を含む線維または
フィラメントも、本発明の範囲内と考えられる。
【0027】 本発明による活性剤の単一投与デリバリーのためのほかの高度に適した製剤は
、リポソームを含む。リポソームまたは多層小疱中の活性剤のカプセル化は、目
的とするドラッグデリバリーおよび延長された薬剤滞留時間のために良く知られ
ている技術である。薬剤を含むリポソームの調製および使用は、当業者の充分に
考え得る範囲内であり、文献に充分に記載されている。
【0028】 本発明による活性剤の単一投与デリバリーのためのさらにほかの最適な手段は
、粘性滴下剤の使用を含む。この技術において、高分子量媒体が、活性剤と混合
されて使用され、高粘度の溶液を生成する構造が得られる。適当な高分子量媒体
は、限定はされないが、以下のものを含む:デキストランおよびシクロデキスト
ラン;ヒドロゲル;(架橋)粘弾性材料を含む(架橋)粘性材料;カルボキシメ
チルセルロース;ヒアルロン酸;および硫酸コンドロイチン。薬剤を含む粘性滴
下剤の調製は、当業者に良く知られている。
【0029】 さらにほかの手段によれば、活性剤は、酸化再生セルロースなどの吸収性メカ
ニカル障壁と組み合わせて投与することができる。活性剤は、そのような障壁に
共有または非共有(たとえば、イオン性)結合することができ、または、単にそ
こに分散することができる。
【0030】 前述の投与手段は、概して、本発明によるいかなる活性剤にも適用される。し
かしながら、徐放デリバリーシステムを介して配達される組成物を用いて癒着の
発生を治療または予防することが好ましく、そのような治療の打ち消しまたは緩
和が、活性剤を迅速に放出し、従って迅速な作用をもたらす組成物の投与により
好ましく達成することができる。
【0031】 [実施例] 我々は、HMCにおけるt−PA合成が、メバロン酸代謝の異なる産物により
陽性および陰性の両方向に制御されることを発見した。内因性メバロン酸合成を
阻害することにより、我々は、HMCによる内因性t−PA生成を促進させるこ
とができた。特定のオキシステロールの添加は、この刺激されたt−PA発現を
さらに促進させ、一方、メバロン酸のほかの代謝産物であるゲラニルゲラニオー
ルの投与は、HMCにおいて観察される高められたt−PA発現を抑制し、メバ
ロン酸生合成が低下した。ヒト血管内皮細胞を含むほかのt−PA生成細胞を用
いて、比較結果が得られた。
【0032】 特定のオキシステロールなどの特定のメバロン酸代謝産物および/またはメバ
ロン酸合成の阻害剤の使用、または、ゲラニルゲラニオールのような特定のメバ
ロン酸代謝産物の形成は、ヒト中皮細胞および他のt−PA生成細胞の内因性溶
線能を促進させる可能性を提供し、そのような性能の促進は望ましい。
【0033】 メバロン酸塩生合成の阻害および/または22(R)−ヒドロキシコレステロ
ールの添加が、中皮細胞(MC)または内皮細胞(EC)の調整された培地にお
けるt−PAの水準を促進させることを示すために複数の研究を行った。用いら
れたモデルシステムは、選択的手術を同意している患者の大網組織から選択され
た培養ヒト腹膜中皮細胞(HMC)から、および、ヒト臍帯静脈から単離された
培養ヒト内皮細胞(HEC)からなっていた。細胞を、フィブリノネクチン被覆
皿において、20ミリモル/LのHEPES(pH7.4)、10%(体積/体
積)のヒト血清、10%(体積/体積)の熱不活性化新生子ウシ血清、150μ
g/mLの内皮細胞成長サプリメント、2ミリモル/LのL−グルタミン、5I
U/mLのヘパリン、100U/mLのペニシリン、および100μg/mLの
ストレプトマイシンを加えたM199中で、5%CO2/95%空気雰囲気下に 、37℃で成長させた。培地を、2〜3日毎に交換した。1:3の分離比でコン
フルエント単層のトリプシン/EDTA処理により二次培地を得た。大網組織か
らの細胞は、集合状態で均一コブルストーン概観(uniform cobblestone appear
ance)により、フォン−ウィスブランド因子の不存在、および、サイトケラチン
8および18およびビメンチン(ファン・ヒンスベルグら、Blood,第75
巻,1490頁,1990年)についての均一な陽性染色により評価される、純
粋な中皮細胞である。臍帯静脈からの細胞は、コンフルエンスにおける均一コブ
ルストーン概観により、およびフォン−ウィルブランド因子(Jaffeら、J
.Clin.Invest.第52巻,2745頁、1973年、ファン・ヒン
スベルグら、Arteriosclerosis第3巻,547頁,1983年
)についての均一な陽性染色により評定される純粋な内皮細胞である。実験につ
いては、コンフルエント培地を2次または3次継代において用い、細胞は、常に
、実験の前日に、20ミリモル/LのHEPES(pH7.4)、10%(体積
/体積)のヒト血清、2ミリモル/L−グルタミン、および抗生物質を加えた培
養培地:M199を再供給した。適当な濃度の試験化合物または貯蔵溶媒を含む
0.5mLの培養培地を用いて、2cm2皿において37℃で細胞を培養するこ とにより調整培地を得た。調整培地を、Microfuge遠心分離機において8000 回転で5分間遠心分離し、細胞および細胞断片を除去した。調整培地を使用する
まで−20℃で貯蔵した。
【0034】 (メバロン酸塩(MVA)経路の代謝産物の分析) MVAは、実質的に全ての真核細胞により用いられる共通する代謝産物である
。MVA代謝は、コレステロール、オキシステロール、ファルネシル−ピロリン
酸塩(F−PP)およびゲラニルゲラニル−ピロリン酸塩(GG−PP)を含む
多くの重要な分子への前駆体として作用する一連のイソプレノイドを産出する。
我々は、薄層クロマトグラフィーおよびHPLC分析、ならびに、MVA経路か
らの中間体、および[14C]酢酸塩または[14C]MVAなどの投与された放射
標識前駆体である細胞からのオキシステロール(すなわち、コレステロールのヒ
ドロキシル化誘導体)の定量のための手順を達成した。興味深いことに、我々は
、HMCにおけるt−PA合成が、MVA代謝の異なる産物により陽性および陰
性的に制御されることを発見した。我々の実験は、これらの効果が、肝臓−X−
受容体(LXR)などの最近発見された核ホルモン受容体上科のオーファン因子
により媒介されるらしいことを示している。人工モデル系においてLXRのトラ
ンス活性化活性を刺激または鎮圧する条件は、我々のHMCにおけるt−PA発
現を並行変化させることがわかった。1.HMCにおける内因性MVA合成の阻
害は、t−PA遺伝子発現を大きく促進させた。2.LXRを活性化させること
が示された特定のオキシステロールの添加は、基本的条件下にt−PA発現を促
進させ、MVA−除去HMCにおいて見られる刺激されたt−PA発現をさらに
促進させた。3.オキシステロール(LXRの配位子)の効果は、LXRのヘテ
ロダイマーパートナーであるレチノイド−X−受容体(RXR)の配位子である
9−シスレチン酸により増強された。4.MVAのほかの代謝産物であるゲラニ
ルゲラニオールの投与は、MVA−除去HMCにおける高められたt−PA発現
を抑制し、ファルネゾールは効果が無かった。5.LXR−RXRヘテロダイマ
ーは、標的遺伝子のみに存在する特定のヌクレオチド配列である応答要素に結合
し;t−PAはそのような特定の反応要素を含む(下記参照)。
【0035】 t−PAおよびLXRの活性化プロフィールは、ファルネゾール−X−受容体
(Cell,第81巻,687〜693頁,1995年)およびGoldste
inおよびBrownにより記載されたステロール受容体(Cell,第89巻
,331〜340頁,1997年)などの関連受容体のものと明らかに異なる。
HMCにおける内因性MVA合成の阻害は、PAI−1合成を大幅に抑制し、こ
れは、MVA代謝が、t−PA合成の単なる変化よりも内皮機能に、より一般的
な効果を有するという我々の発見も興味深い。
【0036】 (オキシステロールおよび線維素溶解) 核受容体LXR(下記参照)を介する標的遺伝子の転写を活性化する特定群の
酸素化コレステロール誘導体(「オキシステロール」)は、酸素化低密度リポタ
ンパク(Ox−LDL)中に存在し、コレステロールの自己酸化産物であるアテ
ローム性オキシステロールと明らかに異なることに注目すべきである。アテロー
ム性硬化血管壁中に存在するアテローム性リポタンパクであるOx−LDLは、
PAI−1生成を刺激し、培養されたヒト内皮細胞(HEC)からのt−PA放
出を阻害することが示された。Ox−LDLのこれらの効果は、特定のオキシス
テロール、とくにLDLの酸化中に形成される25(R)−ヒドロキシコレステ
ロールおよび7−ケトコレステロールにより模倣することができる。
【0037】 Ox−LDL−誘発オキシステロールと対照的に、我々は、ほかの天然産の、
細胞内で形成された22(R)−ヒドロキシコレステロールなどのオキシステロ
ールが、HMCにおけるt−PA合成を特異的に刺激することを発見した。また
、我々は、コレステロール合成への主経路に沿った前駆体が、HMCにおけるt
−PAおよびPAI−1合成を陽性および陰性の両方向に制御することも観察し
た。これらの結果は、一方としてのコレステロール生合成の中間体およびその代
謝産物と、他方としての中皮官能化との間の新規相互作用を示している。
【0038】 (核ホルモン受容体およびLXR) ステロイドホルモンおよびビタミンDを含む種々のコレステロール誘導体は、
核受容体上科の因子との相互作用を介して遺伝子発現に効果を及ぼす。この科の
構成メンバーは、標的遺伝子の制御領域に存在する、ホルモン応答要素と呼ばれ
る、DNAの短伸張部に結合することにより配位子活性化転写因子として機能す
る。既知の配位子を有する核受容体に加えて、この上科は、DNA結合領域およ
び推定配位子結合領域を含むが、同定された配位子、いわゆる「オーファン受容
体」を欠く多数の構造的に関連した因子を含む。肝臓−X−受容体(LXR)は
、構成的転写活性を示すオーファン受容体である。20(S)−ヒドロキシコレ
ステロール(OH−CHol)、22(R)−OH−Chol、24(S)−O
H−Cholおよび24(S)、25−エポキシ−Cholなどの天然産オキシ
ステロールは、メバロン酸塩代謝の他の産物は除いて、組織抽出物において見ら
れるものに相当する濃度においてLXRを活性化する。対照的に、MVAのほか
の代謝産物であるGG−PPは、LXRの強力な阻害剤である。LXRは、4つ
のヌクレオチド、いわゆるDR−4モチーフにより隔てられたコア配列AG(G
/T)TCAの直接繰返しであるDENA応答要素に、レチノイド−X−受容体
(RXR)とのヘテロダイマーとして、結合する。最近、非常に類似の活性化特
性を示すLXRαおよびLXRβと呼ばれる2つの密に関連するLXR下科構成
メンバーが存在することがわかった。
【0039】 (t−PAプロモーターにおけるLXR応答要素) RXR/LXRのための結合部位のためのt−PAプロモーターをソフトウェ
アを用いて検討し、位置−8,682:ACTGGG taac ACTTGG
(モチーフDR4/inv)における推定応答要素を同定した。同様のDR4モ
チーフが、一連のゲル遅延アッセイにおいてLXRαおよびLXRβを結合する
ことが示された。
【0040】 配列は、複ホルモンエンハンサーとして作用する、転写の開始位置から7.1
kb上流に位置する2.4kbのDNAフラグメントの一部である。
【0041】 (メバロン酸塩経路の中間体の分析) ゲラニルゲラニル−ピロリン酸塩を介するアセチル−CoAからのメバロン酸
塩経路の11の中間体の単離および分析の手法は、文献のものを用いた(Ana
l.Biochem.第215巻,141〜149頁,1993年)。従来のよ
うに、中性7M尿素中で細胞を迅速に懸濁し、続いて液体窒素中で凍結溶解する
ことにより、細胞が効果的に抽出されることがわかった。Mg2+−依存ホスホハ
イドロラーゼは、EDTAの添加により阻害した。抽出物は、吸着およびアニオ
ン交換膜からの高収率での脱着により、部分的に精製される。経路の中間体は、
続いて、前駆体としての[14C]ピルビン酸塩、[14C]メバロン酸塩または[ 3 H]−イソペンテニル−ピロリン酸塩の導入を試験することにより、逆相イオ ン対HPLCにより分離および定量される。同定は、主に達成された保持時間に
基づく。抽出手順の開始において内部標準を添加することにより、実験間または
個々のサンプル間の放射標識中間体の回復における可変性が補正される。手順は
、培養されたヒト内皮細胞に容易に適合される。
【0042】 (オキシステロールの分析) オキシステロールの分析のために、本質的に、TA Spencerのグルー
プにより記載された手順を用いる(J.Biol.Chem.第260巻,14
571〜14579頁,1985年;262巻,14056〜14062頁、1
987年)。[3H]メバロン酸塩を用いて細胞を培養した後に、ステロールの 自己酸化およびエポキシドの酸触媒加水分解を防止するように設計された手順を
利用して、細胞のステロールフラクションを単離し、HPLCのために調製する
。再び、内部標準の添加により回収率が計算される。ステロールの同定は、主に
、HPLC保持時間、および真のサンプルを用いるコクロマトグラフィーに基づ
く。この手順も、培養された中皮細胞に容易に適用することができる。
【0043】 (細胞インキュベーションおよびインキュベーション可変因子) 多くの実験を通して、チャコール処理または完全に抽出した血清を用いてステ
ロール、ホルモンおよび脂質を除去する。(存在するコレステロールからのオキ
システロール形成を防止するために)外因性コレステロールの細胞を除去するこ
とが必須である実験において、細胞を、リポタンパク除去血清で予備処理する。
適当な場合、培地および細胞の両方が分析のために集められる。
【0044】 細胞を、メバロン酸塩代謝産物およびステロールについて比較して、相違を評
価する。
【0045】 同時に、細胞内代謝プロセス(「イソプレノイドバランス」)および中皮官能
化のマーカーの発現に関する情報を得るために、t−PA、u−PAおよびPA
I−1を測定する。抗原測定は、ELISAなどの従来法を用いて行われる。
【0046】 (実施例1) 中皮細胞によるt−PA合成を促進させる1つの手段は、たとえばHMG−C
oAレダクターゼの阻害剤であるシムバスタチン(GoldsteinおよびB
rown,Nature,第343巻,425頁,1990年)の投与により、
3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素A(HMG−CoA)からのメバ
ロン酸(MVA)の細胞内合成を防止することである。
【0047】 図1に示す結果は、シムバスタチン(1μモル/L)の添加が、24時間調整
培地におけるt−PAの水準を対照条件下の64ng/mlからシムバスタチン
の存在下における199ng/mlに促進させたことを示している。それ自体で
はt−PA合成への効果が殆ど無かった化合物であるメバロン酸塩(10μモル
/L)またはゲラニルゲラニオール(10μモル/L)の共投与により、シムバ
スタチンのt−PA合成刺激効果を著しく抑制する。
【0048】 (実施例2) 我々は、シムバスタチン(1μモル/L)、22(R)−ヒドロキシコレステ
ロール(10μモル)またはそれらの組み合わせの存在下における24時間の培
養後の中皮細胞の調整培地におけるt−PA抗原蓄積を測定した(図2)。両化
合物がt−PA抗原生成を促進させ、一緒に添加した場合、少なくとも付加的効
果を示した。
【0049】 (実施例3) 細胞内MVA合成の阻害も、中皮細胞以外の細胞におけるt−PA合成を促進
させるか否かを調べるために、我々は、シムバスタチン(1μモル/L)の存在
下における24時間培養後の内皮細胞の調整培地におけるt−PA抗原蓄積を測
定した。我々は、シムバスタチンが、対照条件下の2.8ng/mlと比較して
6.7ng/mlの水準にt−PAを促進させることを発見した。シムバスタチ
ンの効果は、9−シスレチン酸(10μモル/L)および22(R)−ヒドロキ
シコレステロール(10μモル/L)の同時添加によりさらに増強された。
【0050】 (実施例4) MECおよびHECにおけるt−PA合成へのシムバスタチンの刺激効果が、
これらの細胞におけるタンパク合成への一般的効果の結果ではないことを調べる
ために、我々は、t−PA、PAI−1の特異的阻害剤も測定した。MECおよ
びHECへのシムバスタチン(1μモル/L)の添加は、図4に示すように、2
4時間調整培地においてPAI−1水準大きく低下させた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ヒト中皮細胞を、ビヒクルのみ(対照)または、1μモル/Lのシムバスタチ
ン、10μモル/Lのメバロン酸塩、10μモル/Lのゲラニルゲラニオールま
たはそれらの組み合わせを用いて、37℃で24時間培養した。調整した培地を
、t−PA抗原について分析した。示したデータは、3回行った1つの典型的実
験からのものであり、平均値として表す。
【図2】 ヒト中皮細胞を、ビヒクルのみ(対照)または、1μモル/Lのシムバスタチ
ン、10μモル/Lの22(R)−ヒドロキシコレステロール、またはそれらの
組み合わせを用いて、37℃で24時間培養した。調整した培地を、t−PA抗
原について分析した。示したデータは、3回行った1つの典型的実験からのもの
であり、平均値として表す。
【図3】 ヒト内皮細胞を、ビヒクルのみ(対照)または、1μモル/Lのシムバスタチ
ン、10μモル/Lの9−シスレチン酸を用いて、37℃で24時間培養した。
調整した培地を、PAI−1抗原について分析した。示したデータは、3回行っ
た1つの典型的実験からのものであり、平均値として表す。
【図4】 ヒト中皮細胞およびヒト内皮細胞を、ビヒクルのみ(対照)または、1μモル
/Lのシムバスタチン、10μモル/Lの9−シスレチン酸、10μモル/Lの
22(R)−ヒドロキシコレステロール、またはそれらの組み合わせを用いて、
37℃で24時間培養した。調整した培地を、t−PAについて分析した。示し
たデータは、3回行った1つの典型的実験からのものであり、平均値として表す
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ,BA ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU, CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GD,G E,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS ,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK, LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,M N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU ,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM, TR,TT,UA,UG,US,UZ,VN,YU,Z A,ZW Fターム(参考) 4C084 AA17 NA14 ZB211 ZC022 ZC192 ZC202 ZC512 4C086 AA01 AA02 BA07 DA11 MA01 MA04 NA14 ZB21 ZC02 ZC19 ZC20 ZC41 4C206 AA01 AA02 CA23 DA07 MA01 MA04 NA14 ZB21 ZC02 ZC19 ZC20 ZC51

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動物の特定位置における、体器官、体器官の部位または組織
    への、またはこれらの間における癒着の低減または予防方法であって、 前記位置に存在する中皮細胞によるプラスミノゲン活性剤の合成および/または
    分泌を促進させ、またはプラスミノゲン活性阻害剤の合成および/または分泌を
    遅延されるために行われる治療に前記動物を委ねることを含む方法。
  2. 【請求項2】 前記位置における内生的な腺溶能を促進させることを、さら
    に含む請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記動物が哺乳動物である請求項1または2記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記動物がヒトである請求項2または3記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記位置が、局所的な線維症を導く外傷にさらされる、さら
    されている、またはさらされるかもしれない請求項1、2、3または4記載の方
    法。
  6. 【請求項6】 前記外傷が、手術の行為、たとえば腹部のまたは胸部の手術
    である請求項1、2、3、4または5記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記治療が、前記中皮細胞によるプラスミノゲン活性剤の合
    成および/または分泌を促進できる活性剤を、前記動物に投与することを含む請
    求項1、2、3、4、5または6記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記活性剤が、t−PA合成および/または分泌を促進でき
    る請求項7記載の方法。。
  9. 【請求項9】 前記活性剤がシンバスタチン、ロバスタチン、メビロニンな
    どのバスタチン類、またはシコレステロール、メバロネート、または22(R)
    −ヒドロキシコレステロールなどの異なったオキシステロールからなる群から選
    択される請求項7または8記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記活性剤が、HMG−CoAリダクターゼを阻害または
    肝臓−X−レセプターを活性化できる請求項7または8記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記治療が、前記中皮細胞によるプラスミノゲン活性剤の
    合成および/または分泌を遅延できる活性剤を前記動物に投与することを含む請
    求項1、2、3、4、5または6記載の方法。
  12. 【請求項12】 前記活性剤が、PAI−1の合成および/または分泌を遅
    延できる請求項11記載の方法。
  13. 【請求項13】 前記活性剤が、シムバスタチン、ロバスタチン、メビロニ
    ンなどのバスタチン類からなる群から選択される請求項11または12記載の方
    法。
  14. 【請求項14】 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
    、12または13記載の方法を無効にするか、または緩和する方法であって、前
    記動物を活性剤での治療に被験させることを含み、前記活性剤が好ましくはMV
    Aまたはゲラニルゲラニオールである方法。
  15. 【請求項15】 メソセリアル細胞によるプラスミノゲン活性剤の合成およ
    び/または分泌の促進のため、またはプラスミノゲン活性阻害剤の合成および/
    または分泌作用の遅延のために提供できる活性剤の使用であって、 体器官、体器官の部位または組織への、またはこれらの間における癒着を低減ま
    たは予防するための医薬組成物の製造のための使用。
  16. 【請求項16】 前記中皮細胞が、哺乳動物、好ましくはヒトである請求項
    15記載の使用。
  17. 【請求項17】 前記活性剤が、プラスミノゲン活性剤、好ましくはt−P
    Aの合成および/または分泌を促進できる請求項15または16記載の使用。
  18. 【請求項18】 前記活性剤が、プラスミノゲン活性阻害剤、好ましくはP
    AI−1の合成および/または分泌を遅延できる請求項15または16記載の使
    用。
  19. 【請求項19】 前記活性剤が、任意的にレチノイン酸を混合したバスタチ
    ンおよび異なった天然オキシステロールからなる群から選択される請求項17ま
    たは18記載の使用。
  20. 【請求項20】 前記活性剤が、HMG−CoAリダクターゼを阻害または
    肝臓−X−レセプターを活性化できる請求項17または18記載の使用。
  21. 【請求項21】 中皮細胞において、プラスミノゲン活性剤の合成および/
    または分泌の促進、またはプラスミノゲン活性阻害剤の合成および/または分泌
    の遅延を制御できる活性剤の使用であって、請求項1、2、3、4、5、6、7
    、8、9、10、11、12または13記載の方法を無効にするか、または緩和
    するための医薬組成物の製造のための使用。
  22. 【請求項22】 前記活性剤が、MVAまたはゲラニルゲラニオールである
    請求項21記載の方法。
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