JP2002503108A - pRb2/p130を発現するベクターを使った癌細胞増殖を抑制する方法 - Google Patents

pRb2/p130を発現するベクターを使った癌細胞増殖を抑制する方法

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Abstract

(57)【要約】 pRb2/p130を発現するベクターの投与により癌細胞の増殖を抑制する方法および患者の癌を治療する方法が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】 pRb2/p130を発現するベクターを使った癌細胞増殖を抑制する方法序論 本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)による支 援を受けた研究の過程で完成された。米国政府は本発明において或る程度の権利 を有する。発明の背景 癌は多様なゲノム変異に起因する遺伝病である。それらの変異は結局細胞周期 機構の機能不全に至り、最終的には自律性細胞増殖に至る。腫瘍性形質転換は次 の4種類の遺伝子を含む:オンコジーン(腫瘍遺伝子)、腫瘍抑制遺伝子、ミュ ーテーター遺伝子および枯死(アポプトシス)遺伝子。様々な病型の癌がそれら の遺伝子のいずれか1つまたは複数の組合せの変異に関連し得る。 ゲノム変異が細胞増殖に影響を及ぼすためには、それらは何らかの形で細胞周 期を調節する正常過程に悪影響を及ぼさなければならない。次いで細胞は、通常 は分裂、静止、分化または枯死する時に細胞にシグナルを送る外部環境に頼らず に複製することができる自律性単位となる。従って、腫瘍の発生は、結局、細胞 周期の正の調節因子(プロトオンコジーン)、負の調節因子(腫瘍抑制遺伝子) および/または細胞成長および増殖の枯死遺伝子のいずれかの妨害である。癌の 様々な形態の同定と治療のためのより効果的な方法を開発するためには、細胞周 期に作用するメカニズムおよびいかにそれらが相互連結し、分布されるようにな り、そして調節されるかを を考えなければならない。 分子生物学、生化学および腫瘍生物学における大きな進展は、研究者や臨床医 が癌の取扱と治療を概念化するやり方を変えた。細胞周期調節を媒介するタンパ ク質が解明され(例えば、p53核タンパク質)、一方でDNA技術によってその 現象を支配する遺伝子に容易に近づけるようになった。常用の薬理物質によるデ リバリーまたは改変のためのそれらのタンパク質の直接ターゲティングは、タン パク質それ自体の複雑さ、入手しにくさ、およびサイズのために困難である。し かしながら、それらのタンパク質の発現を調節する遺伝子の操作、即ち遺伝子療 法が、組織中に組換えDNAを選択的に導入し、それによって組織中の生物活性 タンパク質の発現の改変を引き起こすことにより、上記の障壁を克服する。これ は引いては細胞機能の変更を引き起こす。 遺伝子療法は、今や癌のような病気の治療の治療手段として受け入れられてい る。例えば、EckおよびWilson,Goodman & Gilman's The Pharmacological Basi s of Therapeutics,1996,第5章を参照のこと。癌治療のための遺伝子療法は 、米国国立衛生研究所の組換えDNA顧問委員会により承認された多数の臨床試 験の焦点となっており、その多くは好結果の臨床適用を証明している〔Hanania ,Am.Jour.Med.1995,99:537-552;Johnson他,J.Am.Acad.Derm.,1995 ,32(5):689-707;Barnes他,Current Obstetrics and Gynecology,1997,89:1 45-155;Davis他,Current Opinion in Oncology 1996,8:499-508;Rpth & Crist iano,J.Natl.Canc.Inst.,1997,89(1):21-39〕。治療方法として遺伝子 発現の改変を使用する時の重要な成功要因は、その遺伝子およびそれの遺伝子産 物の操作の確実な科学的根拠を確立することによって始めることである。 癌の遺伝子療法は、悪性の成長を改変することだけでなく、患者の病気の診断 と予防にも集中している。診断および治療方法のために、細胞周期調節タンパク 質のためのマーカーが開発されている。それらの方法の目標は、より早期の認識 と介入を促進することにより様々な形態の癌の罹患率と死亡率を減少させること である。腫瘍の早期検出により、より効果的な治療、例えば低い腫瘍負荷量(< 109細胞)を必要とする免疫療法を用いることが可能になる。更に、オンコジー ン、アポプトシス遺伝子および/またはミューテーター遺伝子中の分子変異に基 づいた腫瘍の効率的分類は、病理学者による主観的介入を少なくする。これは引 いては治療法のより良い選択をもたらす。 多数の悪性の形態が、網膜芽細胞腫遺伝子(またはRb)として知られる腫瘍抑 制遺伝子中の突然変異に結び付けられている。核タンパク質p53をコードする網 膜芽細胞腫遺伝子は、癌において最も高頻度に変更される遺伝子であり、この抑 制遺伝子の機能の欠損は、無制御な細胞増殖をもたらす。研究の結果、Rbファミ リーの追加のメンバーであるp107の同定に至り、p107も腫瘍抑制遺伝子として分 類された。細胞増殖は、増殖因子レセプター活性化により触発されるだけでなく 、細胞周期調節因子、例えばRbおよびp107によっても調節されることが示された (DeCaprio他,1989,Cell 58:1085-1095;Zhu他,1993,Gene DeveloP.7:1111- 1125)。 Rb遺伝子自体とp107の両方に構造的および機能的に関連している第三の遺伝子 Rb2/p130が同定された(Baldi他,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1996,93:4629 -4632)。これらの3つの遺伝子は全て、「ポケット領域」として知られる機能 領域を構成している幾つかの相同性領域を共有している。この「ポケット領域」 は、DNA腫瘍ウイルスからの形質転換用タンパク質(例えばアデノルイスから の E1Aタンパク質)への結合と細胞性転写因子(例えばE2F)への結合に関連してい る。従って、「ポケット」はタンパク質−タンパク質相互作用に重要な役割を果 たしている。 pRb2/p130はクローニングされそしてE1A形質転換領域への結合に基づいて同定 されている(Mayol他,1993,Oncogene 8:2561-2566)。更に、遺伝子自体の転 写調節を解明するためおよびヒト腫瘍における潜在するRb2/p130突然変異を明ら かにするための分子基礎を提供するヒト網膜芽細胞腫関連Rb2/p130遺伝子のゲノ ム構造が最近開示された(Baldi他,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:462 9-4632)。Rb2/p130遺伝子はヒト染色体16q12.2にマッピングされ(Yeung他,19 93,Oncogene 8:3465-3468)、そして乳癌、肝癌、卵巣癌および前立腺癌をはじ めとする幾つかのヒト新形成においてこの染色体の欠失が認められた。従って、 Rb2/p130遺伝子はヒト癌腫の腫瘍抑制遺伝子であると考えられる。 Rb2/p130は細胞周期機能の調節因子としての役割を持つことが示された。例え ば、Baldi他により、Rb2/p130の遺伝子産物のリン酸化は、Rbのリン酸化が細胞 周期依存性方式である(DeCaprio他,1989,Cell 58:1085-1095)のと同様にし て、細胞周期依存性方式で調節されることが示された(Baldi他,1995,J.Cell .Biochem.59:402-408)。更に、pRbおよびp107と同様にRb2/p130の遺伝子産物 の増殖抑制性質がG1期に特異的であることが示された(Claudio他,1996,Canc er Res.56:2003-2008)。Rb2/p130の遺伝子産物は、Rbファミリーの他の構成員 (即ち、pRbおよびp107)と同様にヒト腫瘍細胞系の増殖を阻止することが示さ れた。しかしながら、このタンパク質は、pRbとp107の両方の増殖抑制作用に耐 性である神経膠腫細胞系の増殖も抑制する(Claudio他,1994,Cancer Res.54: 5556-5560)。従って、pRb2/p130はpRbやp107に類似しているが それらとは異なる増殖抑制性質を有する(Claudio他,1996,Cancer Res.56:20 03-2008)。 pRb2/p130が腫瘍細胞増殖に影響を及ぼすことをたった今発見した。特異的な オンコジーンc-erbB-2(HER2/neu)により媒介される腫瘍形成が影響を受ける。更 に、pRb2/p130がc-erbB-2の発現に関連しない細胞、並びにpRb2/p130を欠いてい る腫瘍細胞およびpRb2/p130を含有する細胞において腫瘍細胞増殖を抑制するこ とがわかった。ベクター中に組み込むことができそして腫瘍細胞中にトランスフ ェクトせしめて該細胞の増殖を抑制することができる、pRb2/p130を含んで成る 組成物が同定された。発明の要約 本発明の目的は、pRb2/p130を発現するベクターと薬理学的に許容される担体 とを含んで成る組成物を提供することである。 本発明の別の目的は、腫瘍細胞の増殖を抑制する方法であって、pRb2/p130を 含有するプラスミドを用いて腫瘍細胞をトランスフェクトせしめることを含んで 成る方法を提供することである。 本発明の別の目的は、腫瘍細胞を診断的スクリーニングする方法であって、pR b2/p130を含有するプラスミドを投与することにより最良に治療されたものを同 定する方法を提供することである。発明の詳細な説明 本発明は、腫瘍形成性を抑制するための組成物と方法に関する。該組成物と方 法は、pRb2/p130陰性癌細胞およびプロトオンコジーン(例えばc-erbB-2)によ り誘導された細胞、並びにpRb2/p130を発現する細胞の腫瘍形成を逆転させるこ とに関する。本発明によれば、pRb2/p130を発現するベクター含んで成る組成物 を腫瘍細胞中にトランスフェクトせしめ、その結果として腫瘍細胞の増殖が抑制 される。 乳癌、卵巣癌、肺癌および胃癌の各癌腫は、c-erbB-2として知られ、HER2/neu としても知られる特異的ヒトプロトオンコジーンの存在と発現に関係している( Slamon他,1989,Science 244:707-712;Park他,1989,Cancer Res 49:6605-660 9;Rilke他,1991,Int.J.Cancer,1989,49:44-49;Guy他,1992,Proc.Natl .Acad.Sci.USA 89:10578-10582;Kern他,1994,J.Clin.Invest.93:516-52 0;Pupa他,1996,J.Clin.Oncol.14:85-94)。c-erbB-2(HER2/neu)オンコジー ンは、内因性チロシンキナーゼ活性を有する185,000ダルトンの表皮増殖因子レ セプター関連膜貫通タンパク質(p185HER2)をコードする(Bargmann他,1986, Nature 319:226-230;Coussens他,1985,Science 230:1132-1139)。このタンパ ク質の過剰発現が侵略的疾患および乏しい予後に関連している(Rilke他,1991 ,Int.J.Cancer 49:44-49;Kern他,1994,J.Clin.Invest.93:516-520;Pupa 他,1996,J.Clin.Oncol.14:85-94)。具体的には、この遺伝子の増幅が乳癌 (Slamon他,1989,Science 244:707-712)、卵巣癌(Slamon他,1989.Science 244:707-712)および原発胃癌(Park他,1989,Cancer.Res.49:6605-6609) に関連している。マウス乳癌モデルにおける研究(Guy他,1992,Proc.Natl.A cad.Sci.USA 89:10578-10582)およびヒト由来の肺癌における研究(Kern他, 1994,J.Clin.Invest.,1994,93:516-520)に基づいて、c-erbB-2の発現も腫 瘍増殖の転移性に関連すると提唱されている。よって、c-erbB-2発現は、動物と ヒトの癌腫の数形態の発生と進行において何らかの役割を果たしている。 ヒト癌細胞(c-erbB-2発現に特異的に関連したもの)中へのpRb2/p130cDNAの 導入が試験管内において増殖速度とコロニー形成の減少を引き起こし、そして自 己リン酸化能力のあるp185HER2レセプターの発現にもかかわらず、無胸腺症マウ スでの生体内の腫瘍増殖を 抑制することをここで発見した。その上、c-erbB-2発現に特異的に関連しない腫 瘍細胞系での研究は、pRb2/p130発現が腫瘍細胞増殖を抑制することを示した。 これらの研究は卵巣癌細胞、肺腫細胞および脳腫瘍細胞という3種類の型、並び に子宮内膜癌を有する患者において実施した。 卵巣癌細胞を使った研究 CMVプロモーターの転写調節下にpRb2/p130のコード配列を含有するプラスミド と、空のベクター(模擬トランスフェクション)を用いて好結果にSKOV3細胞を トランスフェクトせしめた。ノーザンブロット分析は、模擬および野性型SKOV3 細胞に比べて、トランスフェクトしたクローンでのpRb2/p130mRNAレベルの増加 を証明した。この増加はウエスタンブロット分析によりタンパク質レベルで確認 された。p185HER2分子に関連したキナーゼ活性は、該レセプターが試験した全て の細胞集団で機能的であることを示した。抗p185HER2免疫沈澱物の抗ホスホチロ シン抗体を使ったウエスタンブロットにより評価したタンパク質のリン酸化状態 は、クローンと対照が同様なレベルであったことを示した。 最初にコロニー形成アッセイにより、SKOV3細胞増殖に対するpRb2/p130異所性 発現の効果を評価した。その結果は、pRb2/p130でトランスフェクト細胞が、模 擬トランスフェクト細胞よりも少数のコロニーを生じることを示した。更に、増 殖速度は模擬対照細胞のものに比較して有意に減少し(p<0.001)、30%から5 4%までに及ぶ減少率を有した。軟寒天コロニー形成アッセイは、模擬トランス フェクト細胞のものに比較して、試験した各pRb2/p130トランスフェクタントに ついて有意なコロニー形成阻害を示した(p<0.001)。クローンに由来する細 胞増殖巣の数は、模擬トランスフェクト細胞に比べて84%〜94%減少した。 トランスフェクト細胞の生体内注射は、SKOV3細胞の腫瘍形成を阻害した。注 射後56日目に評価した腫瘍体積は、模擬トランスフェクト細胞に比較してpRb2/p 130トランスフェクト細胞に由来する腫瘍の増殖が有意に減少した。これは、c-e rbB-2の発現に関連することが知られている細胞系ではpRb2/p130が腫瘍抑制遺伝 子として生体内で機能できることの最初の証明である。 まとめて考察すると、それらのデータはpRb2/p130がc-erbB-2遺伝子産物に対 する特異的な作用を伴うメカニズムにより細胞増殖を抑制できることの明白な証 明である。pRb2/p130は、c-erbB-2を過剰発現している細胞においてオンコサプ レッサー分子(腫瘍抑制分子)として働くと考えられる。よって、pRb2/p130の 発現は、非限定的にヒト神経膠腫、黒色腫、乳癌、肺癌、子宮内膜癌および胃癌 をはじめとする様々なヒトの癌においてc-erbB-2により誘導される腫瘍形成を抑 制する方法を提供する。 肺癌細胞を使った研究 pRb2/p130を欠損していないかまたはc-erbB-2により誘導されることが知られ ていない腫瘍細胞、即ち変異型Rb2/p130遺伝子を含有する腫瘍細胞系の増殖に対 するpRb2/p130の効果も調べた。侵略性ヒト肺癌細胞系(H23またはA549)を用い た実験において、野性型Rb2/p130遺伝子の効率的伝達のためにマウス白血球由来 (MLV由来)レトロウイルスベクター系を使った。H23細胞系は変異型Rb2/p130遺 伝子座を有し、一方でA549は野性型遺伝子座を有する。空のウイルス(模擬)も しくはピューロマイシン耐性遺伝子だけ(MSCVPac)またはpRb2/p130と共に(MS CVPac pRb2/p130)担持しているレトロウイルスを用いて細胞を形質導入し、そ して10日間に渡りピューロマイシンについて選択した。レトロウイルスが伝達し たRb2/p130により形質導入された細胞では、H23細胞系とA549細胞系の両方で 大幅に増殖が抑制された。また、レトロウイルス上清の系列希釈液を用いて該細 胞を形質導入した。レトロウイルスにより送達されたRb2/p130遺伝子の増殖抑制 効果は用量依存性であることがわかった。これらのデータは、アップレギュレー トされたpRb2/p130発現の増殖抑制効果が、Rb2/p130欠損腫瘍細胞だけでなく、 野性型Rb2/p130を有するものも含むことを証明する。その上、それらのデータは 、H23細胞系中で生産された変異型pRb2/p130タンパク質が生来のタンパク質の増 殖抑制活性を阻害できないことから、優性陰性作用ではないことを示す。pRb2/p 130の増殖抑制性がpRb2/p130タンパク質レベルの特異的アップレギュレーション のためであることを確かめるために、空のレトロウイルスベクターまたはRb2/p1 30遺伝子を担持しているウイルスを用いてH23細胞を形質導入した。Rb2/p130cDN Aを担持しているウイルスによる形質導入は、Rb2/p130タンパク質レベルの有意 な減少を引き起こした。野性型pRb2/p130を含有するA549細胞を使った場合も同 様な結果が観察された。 単独でまたはpRb2/p130と組み合わせたレトロウイルスMSCVPacによる形質導入 後のH23細胞系の腫瘍性を、軟寒天中でコロニーを形成する能力によって評価し た。H23細胞を形質導入し、ピューロマイシン中で15日間選択し、次いでピュー ロマイシンを含む0.3%アガロース中に二重反復試験において接種した。3週間 後、50細胞より大きいコロニーを記録した。H23細胞のコロニー形成力は、MSCVP acのみで形質導入しプールしたコロニーに比較して、有意に減少した。コロニー のサイズは5〜6分の1に低下した。Rb2/p130コロニーはPacコロニーより82% 小さかった。腫瘍抑制遺伝子の形質導入によるコロニー数の減少は、10倍、即ち 90.4%であった。 生体内と試験管内の両方での腫瘍形成に対するpRb2/p130のレトロウイルス伝 達の効果をヌードマウスを使って調べた。Pac耐性遺 伝子のみまたはPacとRb2/p130cDNAとを担持しているレトロウイルスを用いて、H 23腫瘍細胞を培養中に形質導入せしめた。同数のMSCVPacのみまたはMSCVPac-Rb2 /p130cDNAで形質転換された細胞をヌードマウスの側腹部に注射した。MSCVPac- Rb2/p130による形質導入は、MSCVPacのみでの形質導入細胞を注射した動物に比 較して、腫瘍を形成する細胞の能力を大きく抑制した。腫瘍形成力が約20倍(99 .5%)低下した(切除した腫瘍の平均腫瘍重量に基づいて)。実験を繰り返した 時にも同様の結果が観察された。該遺伝子の生体内形質導入のために、ヌードマ ウスに2.5×106個のH23細胞を注射し、そして腫瘍を15日間増殖させた。15日後 、MSCVPacのみもしくはMSCVPac-Rb2/p130のいずれか、またはβ−ガラクトシダ ーゼ(LacZ)遺伝子を担持しているレトロウイルスを腫瘍に注射した。LacZによ る形質導入は、MSCVPacのみを注射した動物に比較して腫瘍増殖速度または腫瘍 形成力に対して影響を及ぼさなかった。しかしながら、MSCVPac-Rb2/p130での処 置はLacZ処置またはMSCVPac処置グループに比較してH23細胞の腫瘍形成力を抑制 した。MSCV-Pac-Rb2/p130形質導入による腫瘍増殖の減少は、12倍(92%)以上 であった。実際、Rb2/p130レトロウイルスで形質導入した腫瘍は1回の注射後に 大きさが減少し、そして6つの腫瘍のうち4つが完全に後退した。Rb2/p130レト ロウイルスにより形質導入した腫瘍の体積は、他の処置に比較して4.6倍小さか った(79%減少)。レトロウイルスベクターで処置した動物に形成された腫瘍の 検査は肺腺癌に典型的であり、そしてMSCVPac-Rb2/p130ベクターにより形質導 入された腫瘍の免疫組織学によると腫瘍細胞の75%以上がRb2/p130発現について 陽性であった。腫瘍細胞溶解物のウエスタンブロッティング分析を通して証明さ れるように、生体外と生体内の両方での形質導入実験の際の腫瘍形成の抑制と進 行は、腫瘍細胞中のpRb2/ p130発現の誘導に依存した。それらの生体内および生体外データは、試験管内研 究の結果と一致し、且つ腫瘍細胞中でのRb2/p130遺伝子の発現が、pRb2/p130を 欠損していない腫瘍細胞であっても、動物の腫瘍細胞増殖の阻害と腫瘍形成の抑 制をもたらすことを示す。 脳腫瘍細胞を用いた研究 脳腫瘍増殖におけるpRb2/p130遺伝子の役割を調べるためにも実験を行った。 改良テトラサイクリン制御法を使って、HLC-15c細胞系中の自己調節性誘導性Rb2 /p130遺伝子発現系を作製した。5つのクローン細胞系の1つはヒトポリオーマ ウイルス誘発ハムスター脳腫瘍(Shockett,P.他,1995,Proc.Natl.Acad.Sc i.USA 92:6522-6526)に由来する。この細胞系は、5つのクローン(HJC-15a, b,c,dおよびe)のRb2/p130 mRNAの発現が最低であり且つ倍加時間が最短であ るために選択した。親細胞系を使って、Tetpプロモーターの支配下にテトラサイ クリントランス活性化因子(tTA)を含有する対照細胞系HJCΔ5を作製した。HJCΔ 5細胞を使って、tTAに加えてTetpプロモーターの下流にヒトRb2/p130遺伝子の全 長cDNAを含有するHJC12細胞系を作製した。この系では、Rb2/p130遺伝子の発現 が抗生物質テトラサイクリンの存在下で抑制され、そしてそれの非存在下で誘導 される。結果は、培地からテトラサイクリンを排除するとRb2/p130遺伝子の発現 がmRNAレベルで増強され、そしてタンパク質レベルでは160倍増強される。細胞 化学は、テトラサイクリンで誘導すると核内ではRb2/p130の発現が保持されるこ とを決定づける。 次いで同数のHJC12細胞を、テトラサイクリンを含有するかまたは欠失する培 地中に置き、そして15日間増殖させた。pRb2/p130の誘導は、コロニーアッセイ により証明される通り劇的な細胞増殖抑制を引き起こした。HJC12細胞とHJCΔ5 細胞を各々テトラサイク リンの存在下または非存在下に24時間置き、次いで収穫した。フローサイトメト リーによりそれらの細胞周期プロフィールを調べた。その結果は細胞の90%近く がG0/G1期で観察され、これはG0/G1集団の41.6%の平均増加率に相当する 。これらの結果は、pRb2/p130の増殖抑制作用が細胞周期のG0/G1期に特異的 であるという別のヒト細胞系における一時的トランスフェクション実験からのデ ータと一致する(Claudio,P.P.他,1996,Cancer Res.56:2003-2008)。HJC Δ5親細胞系からのテトラサイクリンの排除はそれらの細胞周期分布に影響を及 ぼさなかったので、この作用はpRb2/p130発現に特異的であった。 次に、JCV TAgが、そのSV40相当物と同様に、pRb2/p130と相互作用するかどう かを調べるために実験を行った。まず最初に、細胞系HJCΔ5とHJCl2がJCVにより 形質転換されることおよびSV40TAgにより交差汚染(cross-contaminate)されな いことを確かめた。抗pRb2/p130免疫血清を使ったテトラサイクリン存在下およ び非存在下で増殖させたHJC細胞系Δ5と12の免疫沈澱に続き、PAB416でのウエス タンブロット分析は、pRb2/p130とJCV TAgの間の物理的相互作用を検出した。PA B 416/抗pRb2/p130を使った組合せ免疫沈澱/ウエスタンブロット分析もそれぞ れ、この複合体を検出した。この会合は、テトラサイクリンの非存在下で増殖さ せたHJC12細胞におけるpRb2/p130発現の誘導によって増加した。 pRb2/p130の機能はリン酸化を通して調節されると思われるので、JCV TAg複合 体のリン酸化状態を調べた。テトラサイクリンの存在下および非存在下で増殖さ せたHJC12細胞中のタンパク質を32Pオルトリン酸で標識し;正常ウサギ血清、p Rb2/p130免疫血清、またはPAB 416を使って免疫沈澱させ;次いで8%SDS-ポリ アクリルアミドゲル上で泳動した。抗pRb2/p130は、視覚化されたJCV TAgの 高リン酸化形態および92KDaリン酸化形態を有するpRb2/p130を沈澱させた。PAB 416は88kDaと92kDaのJCV Tag両リン酸化形態を免疫沈澱させたが、pRb2/p130を 沈澱できなかった。よって、JCV TAgの92kDa形態は、低リン酸化pRb2/p130と会 合するが、高リン酸化pRb2/p130を結合することはできない。この会合は、未誘 導状態と誘導状態の両方のHJC12細胞、並びにHJCΔ5細胞において検出された。 このことは、pRb2/p130タンパク質が過度に高レベルであるためにこの会合が特 異的であり且つ稀でないこと、そしてテトラサイクリンもテトラサイクリントラ ンス活性化因子(tTA)も複合体形成に影響を及ぼさないことを証明する。 pRb2/p130の誘導が生体内でJCV TAg媒介形質転換と腫瘍形成を弱化できる能力 を調べた。ヌードマウスの各側腹部にHJCΔ5細胞かHJC12細胞のいずれか(5×1 06細胞)を注射し、次いでマウスの飲料水の中に活性テトラサイクリン塩酸塩1 mg/kgおよびテトラサイクリン含有1%ショ糖またはテトラサイクリン不含有1 %ショ糖を含有する溶液を投与した。実験は2回行った。テトラサイクリンを使 用しないHJC12を注射したマウスでのpRb2/p130発現の誘導は、テトラサイクリン と共にHJC12を注射したマウスに比較して腫瘍増殖の速度を大幅に遅らせた。HJC Δ5グループ間(テトラサイクリン含有と不含有)では統計的に有意な差が観察 されなかった。各マウスには少なくともいくらかの細胞増殖が観察され、このこ とは、注射された細胞が生存可能であること、そして増殖抑制作用が注射過程の 前または最中の細胞の生存不能のためではないことを証明した。2回の反復実験 の終わりに、HJC12グループの各マウスから切除した腫瘍の合計重量を比較した 。HJCΔ5グループの腫瘍重量には2回の実験間に全く有意な差が観察されなかっ た。HJCΔ5腫瘍はHJC12腫瘍よりも速く増殖し、それらのマウスはHJC12マウ スより以前に犠牲にしなければならなかった。全てのHJC12マウスは各実験の同 時点に犠牲にした。第一の実験では、pRb2/p130発現の誘導が2.9倍、即ち66%だ け、腫瘍増殖を抑制した。第二の実験では、pRb2/p130発現の誘導が3.4倍、即ち 71%だけ、腫瘍増殖を抑制した。2回の実験でのpRb2/p130誘導の平均効果は、 対照グループに比較して3.2倍、即ち69%であり、これは対照グループに比較し て腫瘍増殖に対する統計的に有意な効果である。第三の実験は、1日あたり0.7m gのテトラサイクリンまたは偽薬(プラシボ)を供給するようにデザインされた4 2mg,60日の徐放性ペレットの皮下植込みを通して投与した。結果は同様であっ たが、HJC12細胞中のpRb2/p130発現の誘導時に明らかな腫瘍増殖減少に有意な差 があった(腫瘍増殖の4.3倍抑制、即ち77%抑制)。ウエスタンブロット分析は 、腫瘍試料のタンパク質抽出物を調べることにより、腫瘍増殖が生体内のpRb2/p 130発現の増加に依存することを確証した。細胞化学により確かめると、pRb2/p1 30の誘導時にはpRb2/p130およびJCV TAgの発現は共に核に限局化された。pRb2/p 130発現の誘導およびTCV TAgと該タンパク質の同時核内限局化は、平行腫瘍切片 の免疫組織化学と細胞化学によっても証明された。 これらのデータは、誘導性pRb2/p130発現系が試験管内と生体内の両方におい て、ヒト脳腫瘍細胞系の腫瘍細胞増殖を抑制する働きをすることを示す。これら の結果は、肺腫瘍細胞系および卵巣腫瘍細胞系での研究と一致する。 癌細胞のスクリーニング研究 腫瘍細胞型を同定する際の本発明方法の使用を調べるために実験を行った。第 一の実験では、pRb2/p130発現と子宮内膜癌の関係を調べた。手術前に治療を受 けていない100人の患者においてこの遺伝子の発現の低レベルが貧弱な臨床予後 と関連することがわかった。 更に、それらの患者の腫瘍は一層侵略的に作用した。病気で死亡する危険性は、 腫瘍がpRb2/p130陰性であった患者では5倍高かった。 ヒト腫瘍細胞および原発性バーキットリンパ腫および鼻咽頭腫のパネルのスク リーニングの結果、Rb2/p130タンパク質の核からの排除を引き起こすRb2/p130遺 伝子中の共通の突然変異部位が同定された。4つの骨肉腫細胞系と4つのリンパ 腫細胞系において、ポリクローナル抗Rb2/p130抗体ADLIを使った免疫細胞化学と ウエスタンブロット分析によりRb2/p130の発現を測定した。全てのリンパ腫細胞 系ではRb2/p130の細胞質限局化が観察され、一方で全ての骨肉腫細胞系は排他的 核限局化を示した。全試料の核画分と細胞質画分に関するウエスタンブロット分 析は、該タンパク質の分子量の実質的変化を示さず、且つ2つの型の腫瘍性細胞 系での排他的細胞質または核限局化を確証した。 従って、該タンパク質の細胞内分布が核限局化シグナル(NLS)モチーフを様々 に破壊する突然変異に依存することを確かめた。これらの実験では、タンパク質 のドメインBとC末端をコードするRb2/p130遺伝子のエキソン19から22までの構 造を研究した。コードエキソン19から22までのゲノムDNA配列を増幅せしめ、 次いでSSCP分析により突然変異についてスクリーニングした。 実際の突然変異を同定するために、SSCPゲルの泳動パターンの変化を有するバ ンドを切断することによって得られたDNAと直接のPCR生成物の両方を配列決定し た。配列決定クロマトグラムとSSCPゲルの評価を使って、得られた突然変異が異 型接合か同型接合のいずれであるかを決定した。CCRF-CEM細胞系とJurket細胞系 は、NLSが置かれたエキソン22中への挿入を示し、NLSの欠失をもたらすフレーム シフトを引き起こした。Daudi細胞系は推定NLSの下流に存在するエキソン22中の 挿入を示したが、しかしDaudi細胞のエキソ ン21中の挿入が、結果として生じるコード枠内でのシフトにより、エキソン22に あるNLSの欠失を効率的に引き起こした。同様に、Molt-4細胞系のエキソン22中 には突然変異または挿入が全く観察されなかった;しかしながら、エキソン21中 の挿入が、エキソン22に位置する二分性(bipartite)NLSの欠失を引き起こした。 対照的に、骨肉腫細胞系は全て、NLSを変更しないエキソン19,20および21中で の点変異のみを示した。 次いで、pRb2/p130のNLS中の破壊の機能的結果を調べた。まず初めに、この領 域がそれ自体で且つ本質的にNLSとして働くことができるかどうかを調べる実験 を行った。アミノ酸1082〜1102のpRb2/p130のNLSを、非相同タンパク質に融合さ せるると蛍光標識として役立ち得るヒトコドン最適化赤色シフト緑蛍光タンパク 質を発現するpEGFP-N1(Clontech Laboratories,Inc.,Palo Alto,CA)と融合 させた[pEGFP-N1-NLS]。EFGPは、いずれの限局化シグナルも欠いており、そし て核および細胞質区画に同等に分布される低分子量タンパク質である。二分性NL Sの第一領域に、アミノ酸K−1082からN−1082への変異とR−1083からQ−108 3への変異〔pEGFP-N1-NQ1〕、NLSの第二領域に、K−1100からN−1100への変異 とR−1102からQ−1102への変異〔pEGFP-N1-NQ2〕、並びに二分性両部位に変異 の組合せ〔pEGFP-N1-NQ1&2〕を生じる点変異を作製した。それらのプラスミドを 用いてSaos-2細胞をトランスフェクトし、そして蛍光顕微鏡検査によって異所性 発現されたタンパク質の位置を調べた。Saos-2細胞は、Pb2/p130が細胞の核に 排他的に観察され、この領域により指令される核シャトルに影響を与え得るよう な他のタンパク質中に認められるどんな突然変異も持たないということを確証す るので、選択した。この細胞をヨウ化プロピジウムで対比染色した。pEGFP-N1ト ランスフェクト細胞では、EGFPは細胞中で偏在 的に発現された。二分性野性型NLSとEGFPとの融合体は発現を排他的に核に限局 化した。二分性NLSの上流領域または下流領域のいずれかの点変異に融合したEGF Pは大部分が核発現を生じた。二分性領域の両部位(第一領域と第二領域)での 突然変異は、融合タンパク質がpEFGP-N1でトランスフェクトした細胞と同様に核 区画と細胞質区画の間で平等に分布されるという核ターゲティングを含まない発 現パターンを生じた。従って、pRb2/p130のこの領域は、上流シグナルと下流シ グナルの両方が独立して核発現を命じることができる二分性NLSとして働く。二 分性領域の両方での組合せ変異だけが、排他的核発現を完全に失わせた。 構成的シトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって発現を駆動するpcDNA3 哺乳類発現ベクターの中での全長pRb2/p130タンパク質中にPCR生成部位特異 的突然変異誘発でNQ点変異を再現することにより、増殖抑制機能に対する突然 変異の影響を分析した。外因性発現を内因性タンパク質の発現と区別できるよう に、各構成物をカルボキシ末端において単−HAエピトープ〔ヘモフィルス・イ ンフルエンゼ(Hemophilus influenzae)からの血液凝集素標識〕で標識した。 HAエピトープを使った免疫沈澱とウエスタンブロット分析により測定した時に ほぼ等しいレベルで変異型および野性型プラスミドを各々発現させた。変異型プ ラスミド並びに対照としての野性型pRb2/p130タンパク質を発現するプラスミド およびベクターのみ(空のベクター)を用いてSaos-2細胞をトランスフェクトせ しめ、そして細胞増殖に対するそれらの影響をフローサイトメトリー分析により 測定した。二分性NLSの上流領域または下流領域のいずれかの突然変異は、pRb2/ p130の増殖抑制活性に対して有意な影響を与えなかった。それらの発現は限局化 データと一致してGO/G1期増殖抑制を引き起こし、このことは、二分性シグナ ルの各々 が独立的に核輸送を指令できることを証明する。二分性領域の両部位の組合せ変 異の増殖抑制活性を無効にした。この構成物を発現する細胞は明らかに周期を成 していた。それらの変異体の発現を核へとターゲティングすることによる変異体 のカルボキシ末端へのc-myc major NLSの付加は、野性型タンパク質の増殖抑制 活性へとそれらのGO/G1期増殖抑制活性を回復させた。このことは、それらの 変異体により付与される低下したpRb2/p130の生物活性が、実際にpRb2/p130の核 限局化の破壊によるものであり、著しいコンホメーション変化の誘発および/ま たは重要なタンパク質標的への結合の廃止によるものではないことを証明した。 また、pRb2/p130タンパク質中の点変異が増殖抑制活性を効率的に廃止したこと から、pRb2/p130過剰発現の増殖抑制作用はこのタンパク質の単なる毒性のせい ではなかった。更に、pRb2/p130はG1期進行を制御するために核内になければな らない。エプスタイン−バーウイルス(EBV)陽性であるバーキットリンパ腫およ び原発性鼻咽頭癌に対しても同じ遺伝分析を実施した。2つの原発性鼻咽頭癌は 、ヒト鼻咽頭細胞HONE-1にも同様に存在するエキソン20中の2つの非相同点変異 を示した。更に、原発性鼻咽頭癌およびHONE-1のエキソン20中の挿入も検出され 、これらは核限局化シグナルの結果的欠失を伴うフレームシフトを引き起こす。 2つの原発性バーキットリンパ腫および2つの原発性鼻咽頭癌に存在する点変異 と挿入変異は、それぞれDaudi細胞系とHONE-1細胞系に見つかるものと同じであ る。 幾つかのヒト肺癌細胞系(H23,A549,H69,H82およびU1752)においてスクリ ーニング研究を行って、幾つかの腫瘍型に観察されるRb2/p130タンパク質の欠失 が遺伝的変異に関連するのかどうかを調べた。詳しくは、肺癌細胞をRb2/p130遺 伝子のエキソン19と20(B領域)並びにエキソン21と22(カルボキシ末端)中の 突然変異 についてスクリーニングした。突然変異はSSCP分析により検出し、そしてスクリ ーニングした5つの細胞系のうちの4つ(H23,H69,H82およびU1752)において 配列決定することによりそれを確かめた。A549細胞は調べたエキソンが野性型で あるとわかった(突然変異を含まない)。エキソン20中の同一の点変異が3つの 細胞系で検出され、これはB領域のコード領域に相当した。ヌクレオチド3069で のAからGへの置換はサイレント置換である;しかしながら、ヌクレオチド3074 における同じ置換は、pRb2/p130の二分性核限局化シグナル中の重要な位置にお いてArgをLysへと変更させた。両塩基転位(トランジション)ともH69,H82およ びU1752小細胞肺癌細胞系に見つかった。よって、該遺伝子のこの領域は突然変 異のホットスポットであると思われ、それの同定は迅速な診断用突然変異スクリ ーニングアッセイを開発する上で有用であるかもしれない。 H23腺癌細胞系では、全てGからAへの塩基転位である5つの点変異(5アミ ノ酸を変更する)が、エキソン21中のヌクレオチド3191,3209,3278,3280およ び3285のところに非常に近接して見つかった。反応性グアニジン基を有する3つ の極性塩基性Argアミノ酸がLys(aa 1040)およびGln(aa 1047とaa 1070)へと置換 された。塩基性アミノ酸から中性のアミド含有アミノ酸(例えばGln)への変更 、並びにグアニジン基の消失は、タンパク質の二次および三次構造に有意な影響 を与え、更にタンパク質相互作用に影響を与えるかもしれない。その上、ヒドロ キシル基を有する極性アミノ酸(例えばSer)から、無極性芳香族アミノ酸Phe(a a 1074)への置換も、タンパク質の折り畳みや機能的相互作用に有意な影響を与 えるかもしれない。 肺癌を有する一次患者試料も同様に、Rb2/p130遺伝子のエキソン19〜22中の突 然変異についてスクリーニングした。Rb2/p130遺伝子 は、分析した14の腫瘍のうち12においてエキソン21および/または22中に突然変 異を有することがわかった。コドン11および/または1084でフレームシフトを引 き起こすエキソン22中のAの挿入が、12の試料のうち4つにおいて観察された。 このフレームシフトは、pRb2/p130のG0/G1増殖抑制機能に不可欠であるpRb2/ p130の排他的核内発現に必要なpRb2/p130の二分性核限局化シグナルを破壊する 。二分性核限局化シグナルの上流領域の中にあるコドン1083中の点変異およびAs n残基からPheまたはThr残基のいずれかへの重要な変異が、12の変異型試料のう ちの7つにおいて同定された。 よって、pRb2/p130の核発現を破壊する変異は、一次組織におけるこの増殖抑 制タンパク質の機能不活性化の共通のメカニズムであると思われる。Rb/p150に おける同様な変異も、おそらく核内のタンパク質の不十分なレベルのためである 、試験管内で減少した増殖抑制を示すことが観察されている(Zacksenhaus他,M ol.Cell Biol.1993,13:4588-4599)。同様な現象がRb2/p130細胞質変異体に も起こり、これが細胞を腫瘍性形質転換へとしむけそして/または細胞に一層侵 略性のまたは増強した悪性の表現型を与えると考えられる。このことは、腫瘍の 悪性度がpRb2/p130の発現レベルと逆比例するという免疫組織化学研究によって 裏付けられる(Baldi他,Clinical Cancer Res.1996,7:1239-1245)。従って 、腫瘍細胞をスクリーニングしてRb2/p130のNLSの欠失を引き起こす突然変異を 検出することは、腫瘍の侵略性および悪性表現型を決定する手段として役立つ。 更に、腫瘍をスクリーニングしてこの遺伝子中に突然変異を有する腫瘍を同定す ることは、Rb2/p130の投与によって治療可能な腫瘍を同定するのに有用である。 「治療可能」という語は、Rb2/p130の投与がこの腫瘍の増殖を抑制するであろう ことを意味する。 従って、本発明は、pRb2/p130を含んで成るプラスミドまたはベクターを用い て治療可能である侵略性および悪性腫瘍を同定する方法、並びにpRb2/p130を含 んで成るプラスミドまたはベクターを用いて腫瘍細胞をトランスフェクトするこ とにより腫瘍形成を逆転させる方法を提供することである。好ましい態様では、 当該技術分野で周知でありそして例えばClaudio他(1994,Cancer Res.54:5556 -5560)により記載されている方法に従って、Rb2/p130cDNAを適当なウイルスベ クター中にサブクローニングする。しかしながら、本開示によって当業者に明ら かであるように、Claudio他(1994)によい記載されたもの以外の適当なベクタ ーを容易に選択することができる。適当なベクターの選択は、最低レベルのウイ ルス遺伝子発現を有する遺伝子の適切な発現に基づいて行う。本発明において有 用なベクターの1つの好ましい態様はpAd.CMV-Link.1アデノウイルスベクターで ある。或いは、一時的三元プラスミド発現系(env,gag-PolおよびRb2/p130をコ ードする3つのプラスミド)を使って、レトロウイルスベクター中に全長pRb2/p 130遺伝子をクローニングすることができる。Tetpプロモーターの支配下にテト ラサイクリントランス活性化因子の遺伝子を含むプラスミドpTet-tTakを使った 別の態様では、UHD hyg BHプラスミドのHindIII部位の中に、Tetpプロモーター の下流にヒトRb2/p130遺伝子をサブクローニングすることができる。更に別の態 様は、MSCVPacプラスミドを使ってRb2/p130の全長cDNA配列をレトロウイルスベ クター中にサブクローニングすることを含む。 次いで、pRb2/p130をコードするベクターを用いて腫瘍細胞をトランスフェク トする。これは、当業者に周知の方法を使って達成することができる。好ましい 態様では、ウイルスベクターを哺乳類、好ましくはヒトに投与する。一態様では 、pRb2/p130遺伝子を含有 するベクターを投与して腫瘍細胞の増殖を抑制し、且つ腫瘍抑制遺伝子の発現を 通して腫瘍の進行と転移を予防する。この態様では、トランスフェクション方法 は処置すべき患者集団によって大きく異なるだろう。例えば、手術可能な腫瘍を 有する患者では、再発を防ぐために外科医により腫瘍を切除した後で腫瘍領域を ウイルスベクターで被覆することができる。あるいは、手術前にベクターを腫瘍 塊に注入することができる。手術不可能な腫瘍塊を有する患者では、腫瘍部位に 近づけるならば患者の腫瘍塊に直接ベクターを注入することができ、または腫瘍 塊または近づけない腫瘍へと直接注ぎ込む動脈中に選択的にそれを動脈内注入す ることができる(Claudio他.1990,Cancer 65:1465-1471;Claudio他,1992,R eg.Cancer.Treat.4:180-187)。肺腫瘍はベクターの吸入により治療すること ができる。 ベクターを医薬上許容される担体、例えば無菌水性溶液または懸濁液中で投与 することが好ましい。用量および治療期間は改善の程度および速度に依存して個 別に決定される。そのような決定は当業者により日常的に行われている。 本発明を更に説明するために次の非限定例を提供する。実施例 実施例1:卵巣癌におけるpRb2/p130の使用 Rb2/p130cDNAのクローニング 全長pRb2/p130遺伝子をpAd.CMV-Link.1アデノウイルスベクター中にサブクロ ーニングした。これは、pcDNA3:Rb2/p130のセンス構成物をHindIIIとSalIで制限 することにより行った。SalIはベクター骨格を切断して、5’末端と3’末端に HindIII部位を有する全長Rb2/p130cDNAを単離しやすくする。pAd.CMV-Link.1ベ クターを多重クローニング部位中のHindIIIで制限し、それをRb2/p130挿入 cDNAに連結せしめて、pAd.CMV-Link.1:Rb2/p130センスおよびアンチセンス構成 物の両方を作製した。このpcDNA3:Rb2/p130センスベクターはClaudio他(1994) により記載されている。 Rb2/p130の全長cDNA配列をレトロウイルスベクターMSCVneoEBとMSCVpac中にも 、センス方向とアンチセンス方向の両方でサブクローニングした。これを達成す るために、クローン化したBamHI-NotI断片のpcDNA3 pRb2/p130センスをNotIで切 断し、NotI部位をBamHI部位に変更するリンカーオリゴヌクレオチド(5'-GGCCGG GGGATCCCCC 3')(配列番号1)とそれを再連結させた。5’末端と3’末端にB amHI部位を有するpRb2/p130断片を精製し、そしてBglIIで切断しておいたMSCVne oEBおよびMSCVpac中にセンス方向またはアンチセンス方向のいずれかにおいて該 断片をサブクローニングした。 細胞のトランスフェクション pRb2/p130プラスミドによるトランスフェクション用の標的細胞を選択し培養 した。細胞系のトランスフェクションは、標準的リン酸カルシウム沈澱法(Hutn er他,1981,J.Cell.Biol.91:153-156)によるトランスフェクションであっ た。DNA沈澱物を細胞上に12時間維持した。次いで細胞をリン酸塩緩衝食塩水 (PBS)で洗浄し、そして新鮮な培地中で培養した。 試験管内での腫瘍形成の抑制 ヒト卵巣癌細胞系SKOV3をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(A TCC)から購入し、それを空気中5%CO2の湿潤雰囲気下に37℃で維持し、10%熱 不活性化FCS(Hyclone,Logan,UT)と2mM L−グルタミンが補足されたRPMI-16 40培地(Sigma Chemical Co.)中で培養した。トランスフェクト細胞培地には30 0μg/mlのG-418(ゲネクチン)を添加した。 プラスミドpcDNA3 pRb2/p130センスベクターと空のpcDNA3ベク ターを使った。それらはClaudio他(1994,Cancer Res.54:5556-5560)により 記載された通りに調製した。50μgのリポフェクチン+20μgのプラスミドを用 いて、無血清培地中80%集密的にまで培養したSKOV3細胞をトランスフェクトし た。トランスフェクタントを37℃で一晩維持し、そして完全培地の添加後、更に 48時間培養を維持した。次いで細胞をトリプシン処理し、500μg/mlのG-418の存 在下に置いた。個々の増殖しているコロニーをつまみ取り、300μg/mlのG-418の 存在下で増殖させそして維持した。 コロニー形成力を調べるために、トランスフェクト細胞を二重反復試験として 培養プレート1枚あたり106細胞の密度に接種し、3週間後にTBメチレンブル ーで15分間染色し、そして写真撮影した(培地は500μg/mlのG-418を含んだ)。 0.2mlの培地の入った96ウエルの培養プレートに細胞を接種することにより、試 験管内増殖速度を調べた。様々な培養時間の時点で、リン酸塩緩衝食塩水中の5 mg/mlの臭化3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェ ニルテトラゾリウムを添加した。4時間インキュベーション後、培地を除去し、 生じた結晶を2−プロパノール中に溶解し、そして上清を570nmの波長で分光光 度測定した(Alley他,1998,Cancer Res.48:589-601により記載)。0.7%アガ ロース層の上に、30%FCSと300μg/mlのG-418が補足された0.35%Bacto Agar(D ifco Laboratories)を含有する半固体培地を入れた6ウエルプレート中に細胞 を接種することにより、軟寒天コロニー形成を調べた。5%CO2/空気中で37℃ で27日間インキュベーション後、コロニーを記録した。 模擬および野性型SKOV3細胞と比較したトランスフェクト細胞におけるpRb2/p1 30mRNAレベルの増加を証明するためにノーザンブロット分析を使った。簡単に言 えば、このアッセイは製造業者の指示 に従ったRNAzol B RNA単離溶媒(TEL-TEST,INC)によるRNAの抽出を含んだ 。次いでRNAを1%アガロース−ホルムアルデヒドゲル中で電気泳動し、ニト ロセルロースフィルターに移行し、そしてUV架橋形成により固定した。ハイブ リダイゼーションは、pRb2/p130cDNAのBamHIとXbaI消化により得られた5’末端 (ヌクレオチド1〜1032)に相当する(32P)dCTP(Amersham)を使ってランダム プライムドDNA標識キット(Boehringer Mannheim Biochemicals)を用いて行 った。膜ストリップ後、対照の(32P)dCTO β-アクチンプローブを用いてハイブ リダイズせしめた(Gunning他,1983,Mol.Cell.Biol.3:787-795を参照のこ と)。 mRNAの増加をウエスタンブロット分析によりタンパク質レベルで確認した。簡 単に言うと、細胞をトリプシン消化し、冷PBSで2回洗浄し、そして溶解緩衝液 (50mM Tris-HCI,pH7.4,5mM EDTA,250mM NaCl,50mM NaF,1% Nonidet P40, 10μg/mlロイペプチン,1mM PMSF,1mM Na3VO4および1μMオカダ酸)中で氷上で 50分間可溶化した。細胞溶解物を4℃で10,000×gで10分間の遠心分離により清 浄にした。BCAタンパク質アッセイ試薬(Pierce Biochem.Co.)によりタンパ ク質濃度を決定した。95℃で5分間加熱した後、各試料につき100μgの全タンパ ク質を非還元条件下で7.5%および10%SDS-PAGEにより電気泳動した。分離した タンパク質を次いでHybond-C紙(Amersham)に電気泳動により移行し、そして一 次抗体と共に室温で1〜2時間インキュベートし、続いて125I−ヤギ抗マウス 7S免疫グロブリン(Amersham)と共にインキュベートした後にオートラジオグ ラフィーを行うか;あるいは西洋ワサビペルオキシダーゼ接合抗ウサギ免疫グロ ブリンおよび/または抗マウス免疫グロブリン完全抗体(1:10000;Amersham )と共にインキュベートした後に、ECL検出系(Amersham)を使って可視化し た。使 用したモノクローナル抗体(Mab)は次のものを含んだ:以前に記載された抗p185H ER2 MGR2(10μg/ml)(Tagliabue他,1991,Int.J.Cancer 47:933-937)、お よびAb3(2μ/ml,Oncogene Science)、および抗ホスホチロシン4G10(4μg/ml, Upstate Biotechnology Inc.)。以前に記載されたポリクローナル抗pRb2/p130 血清(1:500)も使った(Baldi他,1995,J.Cell.Biol.59:402-408)。 試験管内キナーゼ活性を調べることにより、細胞中のp185HER2分子の機能的活 性を評価した。簡単に言うと、上述したように得られた細胞溶解物(2mgタンパ ク質/試料)をGammaBind Plus Sepharose(Pharmacia Biotech)を使って30分 間予備清浄した後、陰性対照としてウサギもしくはマウス正常血清または特異抗 体と共に4℃で1時間ロッカー上でインキュベートすることにより免疫沈澱せし めた。20μlのセファロースを添加し、そして1時間インキュベーション後、免 疫複合体を遠心分離により分離し、溶解緩衝液で3回、そしてキナーゼ緩衝液( 20mM HEPES,10mM酢酸マグネシウム,1mMジチオスレイトール,20μM ATP)中 で1回洗浄した。試験管内キナーゼアッセイは、Giordano他,Science 1991,25 3:1271-1275により記載された通りに行った。 生体内での腫瘍形成の抑制 6週齢の無胸腺症マウスをCharles Riverより購入した。pRb2/p130によりトラ ンスフェクトせしめたSKOV3系からの細胞(上述したもの)をトリプシン処理し 、冷PBSで洗浄し、そしてカウントした。次いで、4×106細胞を無菌条件下 でマウスの右側腹部に皮下注射した。腫瘍増殖を毎週2回測定し、そして次の式 を使って腫瘍体積を計算した:0.5×d1 2×d2(ここでd1は腫瘍の短直径、d2 は長直径である)。実施例2:肺癌におけるpRb2/p130の使用 pRb2/p130cDNAのクローニング Rb2/p130の全長cDNA配列をレトロウイルスベクターMSCVneoEBとMSCVPac中に、 センス方向とアンチセンス方向の両方でサブクローニングした。簡単に言えば、 クローン化BamHI-NotI断片のpcDNA3pRb2/p130センスをNotIで切断し、NotI部位 をBamHI位に変更するオリゴヌクレオチド(5' GGCCGGGGGATCCCCC 3')(配列番 号1)とそれを再連結させた。pRb2/p130BamHI−BamHI断片を精製し、そしてBgI IIで切断しておいたMSCVneoEBおよびMSCVPac中にセンス方向またはアンチセンス 方向のいずれかにおいて該断片をサブクローニングした。 細胞のトランスフェクション リン酸カルシウム沈澱により293T/17細胞に対して一時的DNA同時トランス フェクションを実施した。トランスフェクションの48時間後にレトロウイルス上 清を収集し、0.45μmフィルターを通して濾過し、そしてH23細胞系とA549細胞系 を形質導入することにより力価測定した。 PRINS反応用に、細胞を5×105細胞/皿の濃度でスライド上に塗布した。次い で単独でまたはセンス方向もしくはアンチセンス方向のRb2/p130cDNAと一緒にピ ューロマイシン耐性遺伝子を担持しているレトロウイルス20μl,50μl,100μl または1mlを細胞に感染させた。陰性対照としてgag/polおよびenv(空のウイル ス)を担持しているプラスミドのみを用いて細胞を形質導入した。試料をメタノ ールと氷酢酸(3:1)中で室温で10分間固定し、そして12〜24時間風乾した。翌日 、試料を一連のエタノール溶液(70%-80%−100%)中で5分間づつ脱水した。 PRINS反応用に、プライマーPUR 3(5'-GTCCTTCGGGCACCTC-3';配列番号2)お よびPUR 5(5'-TCACCGAGCTGCAAGAAC-3')を使って、 プラスミドMSCVPacとMSCVPac-pRb2/p130中に存在する、センスおよびアンチセン スcDNAとピューロマイシン耐性遺伝子中の425bpの鎖を増幅せしめた。各試料を5 0μlの反応混合物中で95℃で5分間、58℃で30分間および95℃で74分間インキュ ベートした。反応混合物は次のものを含んだ:100ngの各プライマー、15mM MgCl2 を含む1×PCR緩衝液、1mM dATP,1mM dCTP,1mM dGTP,0.65mM dTTP,0 .35mM DIG-11-dUTPを含むdNTPの混合物、アルカリ不安定性の2.5UのTaq DNAポリ メラーゼ。反応混合物を各スライド上に置き、カバーガラスを上にのせ、そして ゴムセメント接着剤でシールした。74℃で伸長させた後、スライドを2×SSC と2%BSA中で室温で10分間ずつ2回洗浄した。抗ジゴキシゲニン−FITC接合 抗体を2×SSC+2%BSA中に1:200希釈し、DIG-11-dUTP取込みの検出に 使った。前記抗体と共に暗い湿潤チャンバーの中で室温で30分間スライドをイン キュベートし、次いで2×SSC中で5分間ずつ2回洗浄して過剰の抗体を除去 した。 試料を1μg/mlのヨウ化プロピジウムの溶液で処理し、未標識のDNAを染色 し、次いで水洗した。次いでスライドを観察し、陽性細胞をカウントし、共焦点 顕微鏡下で写真撮影した。ヌードマウス中で増殖したH23腫瘍からの凍結腫瘍切 片にも同じ工程を適用した。 試験管内での腫瘍形成の抑制 Huang,H-J.他,1988,Science 242:1563-1566により記載された通りに軟寒 天コロニー形成アッセイを実施した。感染の前日にH23細胞を1×106細胞/皿の 密度で10cmの培養皿に接種した。単独でまたはRb2/p130cDNAと一緒にピューロマ イシン耐性遺伝子を担持しているレトロウイルス1mlを37℃で一晩、細胞に感染 させた。2μg/mlのピューロマイシンを含有する培地中で15日間細胞を選択した 。各感染につき同数の細胞(5×103個)を二重反復試験におい て、60mm/6ウエル培養皿に2μg/mlのピューロマイシンを含有する0.3%寒天 上に接種した。37℃で20日間インキュベーション後、少なくとも50細胞を含むコ ロニーをカウントし、そして複製プレートの各値の平均値を求めた。 生体内での腫瘍形成の抑制 H23細胞の注射により、ヌードマウス(雌,NU/NU-nuBR非近交,分離体維持マ ウス,Charles Riverから,4〜5週齢)の皮下に腫瘍を形成させた。生体内研 究用に、Pac耐性遺伝子のみを担持しているまたは更にPb2/p130cDNAを担持して いる1×107レトロウイルス/10cm皿を用いて培養中のH23腫瘍細胞を形質導入し 、そして15日間選択した。次いで、ヌードマウスの背面側腹部に同数のPacおよ びRb2/p130形質導入細胞(2.5×106個)を注射し、そして約4週間増殖させるか または対照のPacレトロウイルス腫瘍が約1cm2の面積に到達するまで増殖させた 。この実験を正確に同じ条件下で繰り返した。生体内形質導入実験用には、ヌー ドマウスの背面側腹部にそって2.5×106個のH23細胞を注射した。15日後、対照 として単独でまたは付加的にβ−ガラクトシダーゼ(LacZ)遺伝子を担持してい るまたはRb2/p130cDNA遺伝子を担持している5×106個のレトロウイルスにより 腫瘍を形質導入した。PacまたはLacZレトロウイルスにより形質導入した腫瘍が 約1cm3の大きさに達した時(約3週間)に動物を犠牲にした。動物体重を毎週 監視した。腫瘍増殖は、キャリパーを使って腫瘍の最長軸とこれに垂直な軸を計 測することによって追跡した。腫瘍体積は、次式:腫瘍体積=(長さ)(幅)2 /2を使って算出した。次いで腫瘍を切除し、処理前に重量測定した。分子生物 学的分析に使用する予定の組織は液体窒素中で急速凍結させ、そして−80℃で保 存した。実施例3:脳腫瘍におけるpRb2/p130の使用 Rb2/p130cDNAのクローニング 使用したプラスミドはpcDNA3(ネオマイシン耐性を付与する)およびpTet−tT ak(テトラサイクリントランス活性化因子をコードする遺伝子を含有する)を含 んだ。ヒトRb2/p130遺伝子の全長cDNAを、Gossen,M.& Bujard,H.,Proc.Nat l.Acad.Sci.USA 1992,89:5547-5551により記載されたようにUHD hyg BHプラ スミドのTetpプロモーターの下流のHindIII部位の中にサブクローニングした。 細胞のトランスフェクション Raj,G.V.他,1995,Int.J.Oncol.7:801-808により記載されたJCV誘発ハ ムスター脳腫瘍由来のHJC-15cクローン細胞系であるHJCΔ5、およびCOS7細胞を 、それぞれ5%ウシ胎児血清と抗生物質が補足されたダルベッコ改良イーグル培 地(DMEM)中で増殖させた。HJCΔ5細胞とHjC12細胞を共に5%子ウシ血清、抗 生物質および2μg/mlのテトラサイクリンが補足されたDMEM中に維持した。全て のトランスフェクションは、標準的懸濁リン酸カルシウム沈澱法を使って行った 。HJCΔ5細胞系は、それぞれ1:50の比でのpcDNA3およびpTet-tTakによるHIC-1 5c細胞系の安定な同時トランスフェクションにより形成させた。細胞を1000μg/ mlのG-418中で選択した。個々のコロニーを摘み取り、そして培地中2μg/mlの テトラサイクリンの存在下または非存在下でのUHD hyg BH-Rb2/p130プラスミド による一時的トランスフェクションにより細胞をスクリーニングした。トランス フェクション後48時間目に、細胞を収穫し、そしてRb2/p130に対するADL1ポリク ローナル抗体を使ったウエスタンブロット分析によりスクリーニングして、テト ラサイクリンの非存在下で最良のpRb2/p130発現の誘導を有するクローンを選択 した。次いで陽性クローンをテトラサイクリンの非存在下でpRb2/p130発 現の最良の誘導を有するクローンについて選択した。陽性クローンを、テトラサ イクリンの非存在下で長期間(4〜5週間)増殖させて、tTAの発現が細胞増殖 または細胞形態に影響を与えないことを保証した。HJC12クローンは、UHD hygBH -Rb2/p130プラスミドによるHJCΔ5クローンの安定なトランスフェクションによ り形成させ、そして500μg/mlのG418、500μg/mlのヒグロマイシンおよび2μg/ mlのテトラサイクリンによって選択することにより外因性のpRb2/p130発現を抑 圧した。テトラサイクリン(2μg/ml)の一定存在下でクローンを増殖させた。 次いで細胞をテトラサイクリン含有または不含有培地中で48時間維持し、ADL1抗 体を使ってウエスタンブロッティングすることにより、テトラサイクリンの非存 在下で最良のpRb2/p130発現の誘導を有するクローンについてスクリーニングし た。 試験管内での腫瘍形成性の抑制 Claudio他,1994,Cancer Res.54:5556-5560およびClaudio他,1996,Cancer Res.56:2003-2008により記載された通りに三重反復試験においてコロニー形成 アッセイを実施した。HJC12細胞をテトラサクリンの存在下または非存在下で1 ×105細胞/プレートの密度で接種した。HJC12細胞をPBSで徹底的に洗浄しそ してそれらをテトラサイクリンを欠いた新鮮な培地中に置くことにより、該細胞 中のpRb2/p130の発現を誘導した。培地に2μg/mlのテトラサイクリンを添加す ることにより外因性Rb2/p130の発現を抑制した。細胞を500μg/mlのG418と250μ g/mlのヒグロマイシン中に維持することにより選択圧を続けた。 生体内での腫瘍形成の抑制 HJCΔ5またはHJC12細胞の注射により、ヌードマウス(雌,NU/NU-nuBR非近交 ,分離体維持マウス,Charles Riverから,4〜5 週齢)の皮下に腫瘍を形成させた。2μg/mlのテトラサイクリンを含有する培地 中で細胞を増殖させそして注射前に洗浄した。マウスを注射前に4日間テトラサ イクリンで処理した。イソプロパンガスにより麻酔しながら、マウスの左側腹部 と右側腹部に沿って片側腹部につき5×106細胞を皮下注射した。HJC12細胞を注 射しただけの1グループとその注射後テトラサイクリン処理を続けた1グループ を含む2グループ、並びにHJCΔ5細胞を注射しただけの1グループとその注射後 テトラサイクリン処理した1グループを含む2グループから成る合計4グループ に動物をグループ分けした。動物の体重を毎週監視した。肺腫瘍細胞を使った実 験について上述したのと同様に腫瘍増殖と腫瘍体積を監視した。ショ糖中のテト ラサイクリン粉末を動物の飲料水に添加することにより、動物にテトラサイクリ ンを投与した。飲料水は毎日交換した。細胞系の注射後10週目にまたは腫瘍が1 cm3の大きさに達した時点で動物を犠牲にした。次いで腫瘍を切除しそして重量 測定した。実施例4:変異体Rb2/p130についての癌細胞のスクリーニング 細胞培養およびトランスフェクション Claudio他,Cancer Res.1994,54:5556-5560により記載されたように鼻咽頭 癌細胞系HONE-1を得た。他の細胞系はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレク ション(ATCC;Rockville Maryland)およびヨーロピアン・コレクション・オブ ・アニマルズ・セル・コレクション(Europe)から入手した。4つのヒト骨肉腫 Saos-2,Hos,MG-63,U2OSおよびHONE-1は、15%ウシ胎児血清(FBS)が補足され たダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中で37℃で増殖させた。CCRF-CEM(急性 Tリンパ芽球白血病)、Jurket(白血病T細胞リンパ芽球)、Molt-4(急性Tリ ンパ芽球白血病)およびDaudi(Bリンパ芽球バーキットリンパ種)は、10%FBS を含むRPMI-1640中で 増殖させた。 Saos-2細胞は、三重反復試験においてプレートあたり1×106細胞の濃度で増 殖させた。24時間後、Claudio他,Cancer Res.1994,56:2003-2008による教示 の通りに、標準的リン酸カルシウム沈澱法により細胞をトランスフェクトせしめ た。 免疫蛍光および共焦点顕微鏡分析 全ての細胞を0.8%Triton X-100で透過性にした1×PBS中の4%パラホル ムアルデヒドで15分間固定した。スライドをPBS中の2%BSA+3%正常ヤ ギ血清(免疫反応緩衝液)と共に37℃で30分間インキュベートして非特異的結合 をブロックし、次いで免疫反応緩衝液中に1:50希釈した一次ポリクローナル抗Rb 2/p130抗体ADL1と37℃で3時間反応させ、二次FITC接合ヤギ抗ウサギIgG(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)と37℃で1時間反応させた。DNAをDAPI(Sigm a Chemical Co.)により対比染色して核領域を評価した。100倍オイル出現レン ズ(N.A.=1.4)と488/514nmアルゴンレーザーを装着した共焦点レーザ一走査顕 微鏡Zeiss LSM410(Carl Zeiss,Germany)により試料を分析した。Neri他,J. Histo-chem.Cytochem.1997,45:295-305により記載された通りに、Indy4600グ ラフィックワークステーション(Silicon Graphics,USA)による共焦点データの zシリーズ(スタック)において、像の取得、記録およびフィルタリングを行っ た。pRb2/p130を認識するADL1抗体の特異性は、Baldi,A.他,J.Cell.Chem. ,1995,59:402-408およびClaudio他,Cancer Res.,1996,56:2003-2008によ り証明されている。 細胞画分の調製およびウエスタンブロット分析 200μlの溶解緩衝液〔50mM Tris-HCl,5mM EDTA,250mM NaCl,50mM NaF,0. 1% Triton,0.1mM Na3VO4,プロテアーゼ阻 害剤の1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF),1μg/mlアプロチニ ンおよびロイペプチン〕中にペレット化した細胞を再懸濁することにより、全細 胞溶解物を調製した。 骨肉腫細胞の核は、Martelli他,Nature,1992,358:242-244により記載され た通りに調製した。末梢血リンパ球またはリンパ様細胞系の核は、10×106細胞 を氷上で10分間4℃の溶解緩衝液〔10mM Tris-HCl,pH7.4,2mM MgCl2,0.5mM P MSF,1μg/mlアプロチニンおよびロイペプチン,O.5μg/d大豆トリプシン阻害剤 〕20ml中に懸濁することにより得た。0.2%の最終濃度になるようにTritonX-100 を添加した後、22ゲージの注射針を1回通過させることにより細胞を剪断した。 まず、高倍率の位相差顕微鏡検査により核の純度を評価した。両細胞グループか らの核を400gで6分間の遠心分離により回収した。上清を除去し、それを細胞質 画分として保持した。核を2mM→5mMの最終濃度のMgCl2を含有するTris-HCl緩衝 液(TMS)の連続した勾配により洗浄した。 300μflTMSの最終容量中に核を再懸濁し;250UのDNアーゼ(Sigma Chemical Co.)を添加し、そして氷中で穏やかに振盪させながら60分間インキュベートし た。細胞質画分も同様な手順で処理した。最後に、Wessel,D.& Flugge,U.I. ,Anal.Biochem.1984,138:141-143により記載された通りにクロロホルム/メ タノールにより核タンパク質と細胞質タンパク質を沈澱させ、そしてLaemmli緩 衝液(62.5mM Tris-HCl,pH6.8,2% SDS,10%グリセロール,5%メルカプトエ タノール,ブロモフェノールブルー)中に溶解した。 細胞溶解物または細胞画分に対するウエスタンブロッティングは、Du Luca他 ,J.Biol.Chem.,1997,272:20971-20974により記載された通りに実施した。 細胞質と膜を除去した核を50μgの全細胞 溶解物タンパク質に釣り合わせた。核純度を評価するために、全細胞溶解物、細 胞質および核をβ−チューブリンに対して向けられたポリクローナル抗体により 分析した。 PCRおよびSSCP分析 PCR反応混合物(50μl)は、最終濃度4ng/mlのSSCPゲルから抽出したD NAまたはゲノムDNA、4つのデオキシヌクレオチド三リン酸および[32S]-dA TPを各々0.2mM、2UのKlen Taq 1(Ab Peptides,USA)並びに最終濃度各0.4μMの プライマーパネルを含んだ。変性(95℃で1分)、アニーリング(55℃で1分) および伸長(72℃で1分)から成る35サイクルに72℃で7分の1サイクルを結合 したサイクルをサーマルサイクラー(Perkin Elmer,Norwalk,CT)中で行った。 ゲノムDNAからエキソンを増幅せしめるのに使ったイントロン特異的プライマ ーを表1に要約する。 表1:ゲノムDNAを増幅させるのに使うPCRプライマー SSCP分析には、2×液体濃縮物として提供されるMDEゲル溶液(FMC BioProduct s,Rockland,ME)を使った。AT Biochemにより推 奨される通りに、総容量100mlにつき、25mlの2×MDEゲル溶液、6mlの10×TBE 、69mlの脱イオン水、40μlのTEMEDおよび400μlの10%APSを使った。〔35S〕 標識PCR生成物を94℃に2分間加熱し、そして氷上に直接数分間置いた。8ワ ットの定電圧で15℃にて8時間、MDEゲル上で試料を0.6×TBE泳動緩衝液中で泳 動した。 SSCPゲルからのシフトしたバンドの抽出 現像フィルムを対応するSSCPゲルに合わせて整列させて着目のDNAバンドを 同定した。そのバンドをレーザーブレードで切断し、そして超遠心管中に入れた 。その超遠心管にRNアーゼ不含有蒸留水(50μl)を加え、室温で10分間イン キュベートした。超遠心管を15分間煮沸し、高速で2分間超遠心してゲルスライ スと紙破片をペレットにした。上清を綺麗な試験管に入れ、それをPCR反応に 使用した。PCR生成物を自動DNA配列分析に使用した。 配列分析 PCR生成物を1.5%臭化エチジウムで染色したアガロースゲル上で分離した 。ゲルからバンドを切り取った。QUIAquickゲル抽出キット(Qiagen,Santa Clar ita,CA)を使ってDNAを精製し、そしてジデオキシターミネーター化学を使っ て、Applied Biosystem Model 373A DNAシークエンサー上で配列分析した。 部位特異的試験管内変異誘発 pRb2/p130の二分性NLSをコードするオリゴヌクレオチド(アミノ酸1082〜1002 をコードする領域)を、アミノ末端へのATG転写開始部位の付加、5’HindII I制限部位と3’BamHI制限部位の付加、並びに二分性NLSSとEGFPタンパク質との 非相同融合タンパク質を読み枠内に維持するためのBamHI位の直前への2つのア デノシン残基の付加により合成した。これらのオリゴヌクレオチドをアニ ールさせ、pEGFP-N1発現構成物のHindIII制限部位とBamHI制限部位の中に連結せ しめて、pEFGP-N1-NLS構成物を作製した。合成されるオリゴヌクレオチドが、第 一の二分性領域中のアミノ酸K−1082をNに且つR−1083をQに変更する点変異 、第二の領域中のK−1100をNに且つR−1102をQに変更する点変異、および前 記K−>NとR→の変異を組み合わせた点変異をコードするように、それぞれpE FGP-N1-NLS-NQ1、pEFGP-N1-NLS-NQ2およびpEFGP-N1-NLS-NQ1&2を作製した。 全長Rb2/p130cDNAの二分性NLS中の点変異は、Sang他,Anal.Biochem.,1996 ,233:142-144により記載された、部位特異的変異誘発をもたらす長鎖PCR技 術により形成させた。pcDNA3ベクター中のカルボキシ末端に外因性血球凝集素エ ピトープ(HA)を有する野性型Rb2/p130cDNA(pcDNA3-Rb2/p130-HA)、並びにカル ボキシ末端にHAエピトープとc-myc majour NLS(HAN)を有する野性型Rb2/p130cDN A(pcDNA2-Rb2/p130-HAN)をPCR鋳型として使った。pcDNA3-Rb2/p130構成物 は、上述したように、HAエピトープかHANエピトープのいずれかを有する第一領 域中(NLS-NQ1)、第二領域中(NLS-NQ2)または両方(NLS-NQ1&2)に二分性NLS中に 等価のK→NとR→Q変異を含んだ。両エピトープ標識もIL-2レセプターも含ま ない野性型pRb2/p130を発現するpcDNA3-Rb2/p130-WTおよびCMV-CD20構成物は、C laudio他,Cancer Res.,1996,56:2003-2008により記載されている。 フローサイトメトリー分析およびコロニー形成アッセイ フローサイトメトリー分析(FAC)は、Claudio他,Cancer Res.,1996,56:2003 -2008により記載された手順に従って実施した。pcDNA2,pcDNA3-Rb2/p130-WT,p cDNA3-Rb2/p130-HA,pcDNA3-Rb2/p130-HAN,pcDNA3-Rb2/p130-NLS-NQ1-HA,pcDN A3-Rb2/p130-NLS- NQ1-HAN,pcDNA3-Rb2/p130-NLS-NQ2-HA,pcDNA3-Rb2/p130-NLS-NQ2-HAN,pcDNA3 -Rb2/p130-NLS-NQ1&2-HAまたはpcDNA3-Rb2/p130-NLS-NQ1&2-HANのいずれか10μg を2μgのCMV-CD200と共に同時トランスフェクションせしめた。トランスフェク ションから18時間後、細胞をPBSで2回洗浄し、培地で1回洗浄し、そして新鮮 な培地の中で37℃でインキュベートした。48時間後、細胞を0.1%EDTA含有PBS中 に収集し、それをFAC分析に向けてFITC接合抗CD20モノクローナル抗体(Becton Dickinton,Franklin,Lakes,NJ)と共にインキュベートすることにより加工し 、70%エタノール中で固定し、ヨウ化プロピジウムで染色し、そしてClaudio他 ,1996,Cancer Res.,1996,56:2003-2008により記載されたようにRNアーゼ で処理した。FAC分析は培養装置Coulter Elite装置上で行い、1×104CD20陽性 細胞からのデータを使って、選択した細胞の細胞周期分布を調べた。 コロニー形成アッセイは、Claudio他,Cancer Res.,1994,54:5556-5560によ り記載された手順に従って指定のDNA10μgを二重反復試験において培養皿のS aos-2細胞系にトランスフェクトせしめた。Saos-2細胞を800μg/mlのG-418を使 って三週間選択し、そして50%エタノール中のメチレンブルーで染色した。 EGFFおよびEGFP融合タンパク質の検出 無菌カバーガラスを10cm組織培養皿の中に置き、そして1×106個の密度でSao s-2細胞を接種した。指摘のpEGFP-N1(Clontech,Palo Alto,CA)構成物と融合タ ンパク質によるトランスフェクション後48時間目に、細胞をPBSで3回洗浄し、 新しく調製したPBS中で固定し、PBS中0.04mg/mlのヨウ化プロピジウムにより対 比染色し、ガラス製顕微鏡用スライドの上に一滴のPBSを添加し、次いでゴムセ メントでシールした。Leitz Wetzlar蛍光計を装備した顕 微鏡によりスライドを検査し;例示のためにCCD(cooled charge-coupled devic e)カメラ(Princeton Instruments)を使って像を得た。EGFPおよびEGFP融合タン パク質の像をヨウ化プロピジウム染色のものに重ねた。実施例5:癌患者へのpRb2/p130の投与 治療することができる癌のタイプとしては、鼻咽頭腫、肺癌、乳癌、子宮内膜 癌、神経膠腫および黒色腫が挙げられる。患者の選択は各治療プロトコールによ って異なるだろうが、下記のものを挙げることができる: a)手術により切除可能である軽度の初期癌(転移なし)を有する患者の治療 b)基本療法としておよび任意の化学療法および/または放射線療法と組み合 わせた、存在部位のため手術により切除できない軽度の初期癌(転移なし)を有 する患者の治療 c)任意の化学療法および/または放射線療法と組み合わせた、手術により切 除可能である重度の中期癌を有する患者の治療 d)任意の化学療法および/または放射線療法と組み合わせた、手術により切 除できない重度の中期癌を有する患者の治療 e)任意の化学療法および/または放射線療法と組み合わせた、転移を伴う末 期癌を有する患者の治療 f)広範囲の転移を伴う末期癌を有する患者の基本療法。 手術可能な腫瘍を有する患者は、再発を防ぐため外科医による切除後にpRb2/p 130遺伝子を含有するレトロウイルスベクターで腫瘍領域が被覆される。手術前 に腫瘍塊にレトロウイスルベクターを注入することもできる。手術不可能な腫瘍 を有する患者には、レトロウイルスの注射液が腫瘍塊に直接投与されるかまたは 腫瘍塊へと注ぎ込む動脈に投与されるだろう。肺腫瘍はアデノウイルスの吸入に より治療してもよい。ウイルスによる免疫活性化を避けるために、ウイルスの注 射または暴露の前に、シクロスポリンA暴露による処置と組み合わせることが必 要かもしれない。 患者への注射用レトロウイルスを製造するために、一時的トランスフェクショ ンが行われる。これは、トランスフェクションの日に70%集密的/プレートの最 大値を与えるように前日に接種しておいた10cm培養皿上でのPromega Profection MammalianT ransfection系を使って、一晩のリン酸カルシウム処理により293T/ 17細胞系を使って達成できる。30μgのプラスミドを各トランスフェクションに 用いる。297T/17細胞を沈澱物と共に15〜17時間インキュベートし、培地で2回 洗浄し、そして10mlの新鮮な培地を供給する。トランスフェクションから48時間 後にウイルス上清を収集し、0.45μmフィルターを通して濾過し、そして力価測 定する。ウイルス力価は、様々な希釈率のレトロウイルス上清での形質導入後に ウイルスにより伝達された耐性遺伝子についてPRINS標識した後でFITC陽性細胞 の比率を測定することによりおよびX-gal染色により測定する。
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Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1. 腫瘍細胞の増殖を抑制する方法であって、pRb2/p130を発現するベクター を用いて腫瘍細胞をトランスフェクトせしめることを含んで成る方法。 2. 前記腫瘍細胞が、c-erbB-2により誘導される細胞またはpRb2/p130陰性細 胞を含んで成る、請求項1の方法。 3.患者の癌を治療する方法であって、pRb2/p130を発現するベクターを含有 する組成物を、癌細胞の増殖が抑制されるように、癌にかかっている患者に投与 することを含んで成る方法。 4. pRb2/p130を発現するプラスミドまたはベクターにより治療可能な腫瘍を 同定する方法であって、pRb2/p130遺伝子のエキソン21または22中の突然変異に ついて腫瘍試料をスクリーニングすることを含んで成る方法。
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