JP2002369682A - Dna抽出精製方法およびそのための装置 - Google Patents

Dna抽出精製方法およびそのための装置

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JP2002369682A JP2001179534A JP2001179534A JP2002369682A JP 2002369682 A JP2002369682 A JP 2002369682A JP 2001179534 A JP2001179534 A JP 2001179534A JP 2001179534 A JP2001179534 A JP 2001179534A JP 2002369682 A JP2002369682 A JP 2002369682A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ボイル法による多検体用の新規なDNA抽出
精製方法及び装置を提供すること。 【解決手段】 形質転換プラスミドからボイル法によっ
てプラスミドDNAを抽出精製するにあたって、PCR
反応用の多検体プレートのウェル内で菌体の培養、集
菌、溶菌、懸濁、加熱、及び沈殿ろ過を行うことを特徴
とするDNA抽出精製方法及び装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多検体試料からD
NAを抽出精製する方法及び装置に関する。さらに詳細
には、大腸菌などを形質転換した形質転換体からプラス
ミドDNAを抽出精製する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】特定のDNA断片を分析に必要なだけ純粋
かつ大量に得るDNAクローニングは、分子生物学にお
いて最も重要な方法である。その中でもプラスミドをベ
クターとするクローニングは最もポピュラーな技術であ
り、分子生物学の様々な分野で用いられている。プラス
ミド増幅のための宿主となる大腸菌には、プラスミド以
外の核酸としてゲノムDNAや種々のRNA、さらに菌
体の構成成分としての蛋白質や脂質などが含まれてい
る。これらの夾雑物からプラスミドDNAを抽出精製す
る方法として、従来、アルカリ法(Birnboim,H.C.等 Nu
cleic Acid Res.vol7,1513(1979) “Alkaline Lysis Me
thod”)やボイル法(Holdes,d.s.等 Anal.Biochem.vol
114,193(1981) “BOILING METHOD”)が知られている。
【0004】アルカリ法は、比較的純度の高いプラスミ
ドを得ることができるが、フェノール、クロロホルム等
の危険試薬を使用しなければならない。ボイル法(煮沸
法)は、加熱によりプラスミドを抽出する方法で、アル
カリ法に比べて処理工程数が少ないという利点を持って
いるが、純度が劣るという欠点がありシーケンスなどに
は不適当であるとされ、現在ゲノム解析では主にアルカ
リ法が用いられている。
【0005】ボイル法がシーケンスに用いられてこなか
った理由としては、純度が劣るという欠点以外に、
(1)熱処理時間による回収量のバラツキがあること、
(2)除タンパク不足によるシーケンス反応効率の低下
が挙げられる。しかしながら、近年、DNAシーケンス
用試薬の改良により、従来の十数倍もの感度で測定が可
能になり、反応に用いるDNA量の幅が広がり、また、
DNAシーケンサの感度向上も図られてきた。その結
果、本発明者らは、(1)ボイル法によるDNAの純度
であっても、近年の反応試薬によれば、反応しうるこ
と、(2)タンパク質の混入により反応効率が低下した
としても分析試薬の蛍光強度が向上したため現在のDN
Aシーケンサではデータ取得が可能であると考え、ボイ
ル法による、シーケンス用のDNA抽出法の研究に着手
した。
【0006】従来の一般的なボイル法の概略は、プラス
ミドを含む形質転換体培養液をマイクロチューブに移
し、遠心して菌体をペレットにして上澄み液を分離した
後、菌体ペレットを溶菌して懸濁させたマイクロチュー
ブをボイル用ラックにセットして、煮沸鍋中で加熱し
て、ゲノムDNA、タンパクなどを凝集させてろ過し、
さらに、上澄み液を塩析してプラスミドを凝集させ、遠
心沈殿、洗浄によりRNAを除去することによって、精
製プラスミドDNAを得るという工程からなる。
【0007】ボイル法によると1本のマイクロチューブ
内で集菌から最後の精製DNA溶液の回収までを行うこ
とが可能であるが、従来の通常のボイル法では、マイク
ロチューブをボイル用ラックにセットして煮沸鍋中で加
熱を行うために、多検体を同時に処理することが困難で
あった。さらに、ろ過工程におけるサンプルのロスも無
視できなかった。
【0008】ボイル法を高処理量、低コストでDNA抽
出精製を行おうとする試みも提案されている(Marco A.
Marra 等 Nucleic Acids Research, 1999, Vol. 27,
No.24)。この方法は、96ウェルのブロックを用いて
マイクロウエーブ加熱によって多検体を同時処理しよう
とする方法であるが、ブロックが肉厚であること、マイ
クロウエーブ加熱であることなどのために、加熱にバラ
ツキが生じるという問題点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
従来法の問題点を解決しようとするもので、ボイル法に
よる多検体用の新規なDNA抽出精製方法及び装置を提
供することを課題とする。さらに詳細には、多検体を同
時に処理しても加熱のバラツキがなく、サンプルのロス
が少なく、各サンプル量が微量であっても、高効率で、
高純度にDNAを抽出精製することができる簡便な方法
及び装置を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、アルカリ
法に比べ処理工程数が少なく、危険試薬を使用する必要
がないという利点を有するボイル法をシーケンス用に用
いる手段を鋭意検討した結果、本発明に至った。
【0011】加熱のバラツキを少なくするために、本発
明では、PCR反応(Polymerase chain reaction)用
プレートを使用することを特徴とする。PCR反応用プ
レートは、PCR反応に用いられる多サンプル用のプレ
ートで、通常、12×8=96のウェルを有するもので
あるが、このプレートをDNA抽出工程に用いようとす
ることは従来行われていない。本発明者らは、DNA抽
出のための多検体を同時処理するボイル法を開発するに
あたって、この多数のウェルを有するPCR反応用プレ
ートを応用することに注目した。PCR反応用プレート
は、肉厚が薄く、伝熱性に優れ、PCR用ヒートブロッ
クを加熱に用いることことができるので、均等な加熱が
可能であるという利点を有する。さらにまた、このPC
R反応用プレートは、ウェルの上部がプレートから突出
しているためにデカンテーションしてろ過する工程にお
ける汚染(コンタミネーション)を受け難いという利点
も有することができる。
【0012】すなわち、本発明の方法は、形質転換プラ
スミドからボイル法によってプラスミドDNAを抽出精
製するにあたって、PCR反応用の多検体プレートのウ
ェル内で菌体の培養、集菌、溶菌、懸濁、加熱、及び沈
殿ろ過を行うことを特徴とするDNA抽出精製方法に関
するものである。
【0013】また、本発明は、加熱をPCR反応用ヒー
トブロックを用いて行うことを特徴とするDNA抽出精
製方法に関するものである。
【0014】さらに、本発明では、ろ過工程に親水性2
フッ化ポリビニリデン(PVDF)フィルタを用いて密
閉状態で遠心することでサンプルのロスを少なくするこ
とができた。
【0015】さらにまた、本発明者らは、DNA抽出精
製方法における工程を詳細に検討した結果、STET
(NaCl、Tris-HCl、EDTA、TritonX-100)溶液とリゾチ
ーム溶液とを用いて行う溶菌工程において、PCR反応
用プレートを応用する本発明の方法では、リゾチーム溶
液を添加した後にSTET溶液を添加した方が収量が上
がること、及びSTET溶液中のTris-HClを1mM、Tr
itonX-100を1重量%に調整すること、ボイルを25秒
程度行うことで最適条件が得られることを見出した。
【0016】さらにまた、本発明は、これらのDNA抽
出精製方法を行うための少なくともPCR用プレート及
びPCR用ヒートブロックを含む装置にも関するもので
ある。
【0017】本発明のDNA抽出精製方法及び装置によ
れば、形質転換体からプラスミドDNAを効率よく高純
度で抽出することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について、詳細に
説明する。本発明のDNA抽出精製方法を適用する対象
となる形質転換体は、公知のプラスミドのいずれでも良
いが、例えば、PUC18、PME18SFL3が挙げ
られる。
【0019】本発明で用いるPCR反応用プレートとし
ては、通常、PCR反応に用いられる多サンプル用のプ
レートであれば、いかなるものも使用できる。例えば、
Robbins社製の12×8=96ウェルプレートを挙げる
ことができる。このプレートは、図1に示すようなもの
である。図1(a)には、PCR反応用プレートの全体
斜視図を、図1(b)には、一部破断した側面図を示し
た。ウェルプレート(1)は、縦78mm×横118m
m、肉厚0.3〜0.4mmのポリプロピレン製であ
り、各ウェル(2)は、内径5.5mm、深さ22mm
の寸法を有している。各ウェルの上部は、プレート上に
5mm程度突出する突出部(3)となっている。
【0020】本発明のボイル工程で用いる加熱装置とし
て、例えばBiometra社製 Tl thermocyclerを用いるこ
とができる。サーモサイクラーは、温度を可変に調整す
ることができる恒温槽であって、本発明においては、P
CR反応用ヒートブロックを内蔵した加熱装置として利
用する。図2には、PCR反応用ヒートブロックの例を
図示した。図2(a)は、PCR反応用ヒートブロック
(4)にPCR反応用プレート(1)を嵌合した様子を
示す断面図である。図2(b)には、PCR反応用ヒー
トブロックを設置したサーモサイクラーを図示した。
【0021】ボイル法によるDNA抽出精製方法は、一
般的には、次のような工程からなる。形質転換体をウェ
ルに分注し、培養した後(培養工程)、遠心して得た菌
体ペレットから不純物である上澄み液を除去し(集菌工
程)、菌体ペレットを懸濁状態で溶菌して菌壁を壊す工
程(懸濁・溶菌工程)、煮沸してゲノムDNAのような
巨大DNA鎖をバラバラにする工程(ボイル工程)、不
純物であるタンパク質や脂質を沈殿ろ過する工程(沈殿
ろ過工程)、上澄み液を塩とアルコールで塩析してプラ
スミドを沈殿させる工程(塩析工程)、洗浄・蒸発工
程、及びRNA抽出除去工程である。
【0022】従来法による試験 本発明者らは、まず、次のようなプロトコルでボイル法
を実施してみることで、従来のボイル法における問題点
を探った。プレートとしては、96ウェルのディープウ
ェルプレート(コーニング社製)を用いた。コーニング
社製96ウェルのディープウェルプレートを図3に示し
た。図3(a)は、ディープウェルプレートの全体斜視
図、図3(b)は、一部破断されたその側面図である。
図3(b)にも見られるとおり、このウェルプレートは
肉厚である。
【0023】プラスミド抽出は次の工程に従った。 (プラスミド抽出) 1)アンピシリン(細胞壁合成阻害の抗生物質)50μ
g/mlを含んだ液体LB培地(1リットル当たりbact
o-tryptone 10g、bacto-yeast extract 5g、NaCl10g)
をコーニング社製96ウェルディーププレートの各ウェ
ルに900μlずつ分注する。 2)楊枝で各ウェルにコロニーをピックし埴菌する。 3)37℃で18〜24時間、振盪培養する。 4)培養後、1,500G、10分で遠心して菌体を集
菌する。 5)70%エタノールで洗浄しながら不純物である上澄
み液をアスピレーターで除去する。 6)STET溶液(NaCl 0.1M、Tris-HCl 10mM、EDTA
1mM、TritonX-1005%)を各ウェルに200μlずつ加
え攪拌する。STET溶液に含まれるTritonX-10により
菌壁を壊す。 7)リゾチーム溶液(リゾチーム10mg/ml、Tris-HCl 10
mM(pH8.0))14μl加え、懸濁する。 8)98℃の熱湯で40秒間加熱する。 9)1,900G、10分で遠心することにより底に沈
殿物として沈殿する分解された大きなタンパク質、脂質
類を取り除く。 10)プレートを他のプレート上へひっくり返して載置
し、上澄み液だけを他のプレートへ採取する。 11)その上澄み液に3Mの酢酸ナトリウム24μl加え
攪拌する。 12)イソプロパノールを240μl加え攪拌する。高分
子コロイドであるプラスミドを凝集させる(塩析)。 13)1,900G、20分遠心してプラスミドを沈殿さ
せる。 14)上澄み液を取り除き70%エタノールを200μl
加えて洗浄する。 15)1,900G、5分遠心する。 16)上澄み液を取り除きエタノールを蒸発させる。 17)各ウェルに6mlのTE(10mMTris-HCl、1mMEDT
A)にRNaseA(10mg/ml)を25μlずつ加える。RNaseA
によりRNAを取り除く。
【0024】(結果の分析)以上のプロトコルにより得
られたプラスミドをアガロース電気泳動により収量チェ
ックし、次のシーケンス反応に使用する。繰返し追試を
実施した結果、ボイル後の遠心で浮遊物が除けないこ
と、プラスミドの収量にバラツキが生じることが分かっ
た。図4には、24のサンプルについてのアガロース電
気泳動写真を示す。図中のM(両端のレーン)は、分子
量マーカーを示す。図4に示されるとおり、サンプルに
よっては、プラスミドDNAに相当するピークが現れて
おらず、プラスミド収量にバラツキがあることが分か
る。バラツキが生じる原因として、(1)プレートの肉
厚が厚く、各ウェルに満遍なく熱を加えることができな
いこと、(2)10)のデカンテーション時にプレートを
ひっくりかえしサンプルを受けるためにロスが生じるこ
とが考えられた。なお、8)の加熱工程を、98℃の熱
湯で40秒間加熱する代わりに、700Wのレンジで2
0秒間、2回マイクロウェーブ加熱する場合にも同様に
収量のバラツキが生じ、ボイル後の遠心で浮遊物が除け
ないという結果が得られた。
【0025】PCR用プレートを用いるプロトコル そこで、加熱方法を改良するために、通常PCR法で用
いられているRobbins社のプレートを試みた。このプレ
ートは、肉厚が薄く、シーケンス反応やPCR反応で用
いられていることからPCR法で用いられる加熱方法を
用いて均等に加熱することができる。しかし、プレート
の変更により培養量が減少するため回収率を高めるため
の最適な条件の検討も同時に行う必要があった。
【0026】(加熱工程)加熱時間は短かいと溶菌が不
十分でプラスミドの収量が減少すると考えられる。ま
た、時間が長すぎるとプラスミドの切断・変性を招く。
加熱温度を99℃に設定してTl thermocycler加熱時間
を60,40,30,25,20秒の5段階にして評価
した。その結果、25秒で加熱したときの収量が最も多
く、他の夾雑物も確認できなかった。以上から、加熱時
間は25秒が最適であることが分かった。
【0027】(懸濁・溶菌工程)PCR用プレートはウ
ェルの底が尖っているため、集菌時に菌体が固まってし
まい、STET溶液を加えた後の攪拌では溶菌が不十分
である可能性が懸念された。アガロース電気泳動により
プラスミドの収量を確認したところ、回収できないウェ
ルには菌体が残っていることが分かった。そこで、リゾ
チーム溶液を加えてからSTET溶液を加えるのでな
く、STET溶液を加えて、その後リゾチーム溶液を加
える工程に変更した。リゾチーム溶液がSTET溶液よ
り溶解度が高く、容量が少ないことからリゾチーム溶液
の方が懸濁し易いのでピペッティング(懸濁)してから
STET溶液を加える順番に変更したものである。この
工程変更により均等にプラスミドが採取できた。
【0028】(STET溶液)コストダウンを図るた
め,STET溶液中の試薬量の節減を検討した。STE
T溶液中のTEはTritonX-100の溶解及びDNA分解酵
素の働きを抑制するために使用している。本操作では、
加熱後すぐにプラスミドを抽出するのでDNA分解酵素
の働きが少ない。このことから、TEの添加量は低くで
きると考え10倍希釈してみた。その結果、10倍希釈
しても同程度のデータを得ることができた。
【0029】また、STET溶液中のTritonX-100は、
シーケンス反応の夾雑物となる可能性があるため過剰添
加を避けたい。現在、通常はSTET溶液中にTritonX-
100を5%使用しているが、今回、3,1,0.5%に減少
させて検討した。その結果、いずれの濃度でもアガロー
ス電気泳動にて十分なプラスミドが確認できた。しか
し、大腸菌に形質転換させるクローンにより菌体の増殖
量が異なるため、あらゆる増加量に対応できるよう最適
条件を1%とした。
【0030】以上から、STET溶液中の試薬量をTE
において通常の10分の1であるTris-HCl 1mM、EDTA
0.1mM、TritonX-100においては5分の1の1%まで
低減させても、従来通常の試薬量の場合と変わらないプ
ラスミドの収量を得ることができることが分かった。
【0031】以上の実験により、最適なプロトコルを確
立することができた。すなわち、加熱時間は25秒程
度、試薬添加順序はSTET溶液を添加した後でリゾチ
ームを添加すること、STET溶液中の試薬量はTris-H
Cl 1mM、EDTA0.1mM、TritonX-100が1%というもので
ある。
【0032】(ろ過工程)また、PCR反応用プレート
を用いる本発明の方法では、加熱工程後のろ過工程の汚
染を少なくできる利点もある。すなわち、加熱工程後に
遠心することで加熱工程によりバラバラになったゲノム
DNAやタンパク質、脂質などを沈殿させ、ウェル内の
上澄み液はフィルターを用いて遠心ろ過する。この時、
フィルターとして、図5に示すようなPCR反応用プレ
ートのウェルと嵌合するフィルター(8)を有するフィ
ルタープレート(7)を用いるのが有利である。ウェル
内に上澄み液を有しているPCR反応用プレート(1)
は、図6に示すように、PCR反応用プレートのウェル
の数と同じ数のフィルターを有するフィルタープレート
(7)上にひっくり返してセットし、さらにフィルター
の下にもう一つのPCR反応用プレート(1’)をセッ
トすることができる。このPCR反応用プレートとフィ
ルタープレートとPCR反応用プレートの組み立て体に
遠心をかけることによって、ろ過された上澄み液を、他
のPCR反応用プレートに収集することができる。PC
R反応用プレートの各ウェルは、上部が突出部(3)を
有していてフィルターと嵌合できるために、デカンテー
ション時に各ウェルのサンプル同士が交差することによ
るクロスコンタミネーションが避けられ、また、遠心ろ
過工程における液漏れによるサンプルのロスや外部から
の汚染も避けることができる。
【0033】ろ過用フィルターには、親水性のろ材が用
いられる。親水性2フッ化ポリビニリデン(PVDF)
が好ましい。ガラスフィルターを用いると付着して収率
が悪くなる。PVDFを用いれば、ろ過工程におけるサ
ンプルのロスも減少することができる。
【0034】さらに、不純物の少ない方法を確立するた
めに、ボイル後の塩析工程、培地、界面活性剤などの使
用試薬についても検討を行った。 (塩析工程)上記のプロトコルでは、塩析工程におい
て、イソプロパノールを用いているが、より回収率を上
げるため、ポリエチレングリコールの適用を検討した。
その結果、イソプロパノールによる塩析よりプラスミド
の収量は高く、バラツキが認められなかったが、その後
の塩基配列決定でデータを得ることができないサンプル
が多く含まれていた。これは、ポリエチレングリコール
がイソプロパノールに比較して粘性が高いため、塩析後
の上澄み除去の工程において完全に除去できず、シーケ
ンス反応時に阻害物質として影響した可能性が考えられ
る。よって、ポリエチレングリコールを塩析に用いるこ
とは通常は有効ではなく、サンプル由来によるプラスミ
ドの収量の少ないサンプルへの対策としては使用可能で
あることが分かった。
【0035】(培地)栄養価の高い2×YT培地を使用
して評価を行った。2×YT培地は、1リットル当たり
bacto-tryptone 16g、bacto-yeast extract10g、NaCl 5
g含有する培地である。LB培地よりプラスミドの収量
を増加できたが、DNAシーケンサによる測定では、良
好なデータを得ることができないことが分かった。回収
された溶液中に大腸菌由来のタンパク質が多量に含ま
れ、また培地の構成成分が夾雑物として残ってしまうた
めに、シーケンス反応が阻害されたものであると推測さ
れる。よって、2×YT培地よりLB培地の方が最適で
あることが分かった。
【0036】(界面活性剤)ボイル法に用いる界面活性
剤として、TritonX-100の他にTWEEN20が使用される。TW
EEN20はTritonX-100に比べて粘性が低いので使用しやす
い。しかし、本工程は洗浄工程を省略したためにTWEEN2
0は夾雑物として残りシーケンス反応を阻害した。よっ
て、TWEEN20は、本発明方法においては適さないことが
分かった。
【0037】
【実施例】以下に実施例を示すが、本発明は、実施例に
より何ら限定されるものではない。プラスミド抽出 次の操作によってプラスミド抽出を行った。抽出精製方
法の対象となるプラスミドベクターは、PUC18であ
る。
【0038】1)PCR用96ウェルプレート(Robbin
s社製)の各ウェルにアンピシリン(細胞壁合成阻害の
抗生物質)50μg/mlを含んだ液体LB培地を27
5μlずつ分注する。 2)楊枝で各ウェルに大腸菌が形成したコロニーをピッ
クし埴菌する。 3)37℃で15〜17時間、振盪培養する。 4)培養後、1,500G、5分で遠心し菌体を集菌す
る。 5)70%エタノールで洗浄しながら不純物である上澄
み液をアスピレーターで除去する。 6)得られた菌体ペレットにリゾチーム溶液7μl加え
ピペッティングし、懸濁する。 7)NaCl 0.1M、Tris-HCl 1mM、EDTA 0.1mM、Triton
X-100 1%を含むSTET溶液を各ウェルに70μlずつ
加え攪拌する。STET溶液に含まれるTritonX-10によ
り菌壁が壊される。 8)PCR用ヒートブロックであるTl thermocyclerに
て99℃、25秒加熱する。 9)1,900G、5分で遠心することによりプラスミ
ドを底に沈殿物として沈殿させる。 10)1,900G、3分遠心しながらPVDFフィルター
(コーニング社製 孔径0.2μm)でろ過する。 11)上澄み液に3Mの酢酸ナトリウム8μlを加え攪拌
する。 12)イソプロパノールを80μl加え攪拌する。 13)1,900G、20分遠心してプラスミドを沈殿さ
せる。 14)上澄み液を取り除き70%エタノール200μl加
えて洗浄する。 15)1,900G、5分遠心する。 16)上澄み液を取り除きエタノールを蒸発させる。 17)各ウェルに6mlのTEにRNaseAを9μl溶かした
溶液を50μlずつ加える。RNaseAによりRNAを取り除
く。
【0039】結果 上記の実施例で得られた結果を、市販の自動抽出装置
(PI-200、PI-1100及びMG768)による結果と比較して表
1に示した。なお、市販の自動抽出装置であるPI-200
(倉敷紡績(株)製)、PI-1100(倉敷紡績(株)製)
及びMG768(日立工機(株)製)は、いずれもアルカリ
SDS法によるものである。平均抽出量は、吸光度によ
り測定した。また、OD260/280の値が、1.8
〜2であればプラスミドDNA以外のタンパク質の混入
が少なく純度が高いことを示す(「遺伝子工学入門」南
山堂、43〜44頁(1986年)など参照)。
【0040】
【表1】本発明と市販自動抽出装置との比較
【0041】表から分かるように、本発明の方法及び装
置によるとランニングコストがPI-200の5分の1で済
み、その他の従来法に比較しても低コストであることが
分かる。また、本発明の方法は、特別な装置を使用する
必要がないので、装置購入に伴う設備コストも削減でき
る。そして、処理時間も従来の他の装置と比べて2倍以
上短縮できる。さらに、プラスミドの回収率及びOD2
60/280で表される純度は、市販の自動抽出装置と
同程度かあるいはそれ以上であり、本発明は、手軽で簡
便な方法・装置であるにも関わらず、回収率及び純度の
点からみても優れていることが分かる。
【0042】上記の実施例によって得られたプラスミド
DNAの電気泳動写真を図8に示した。図8によると、
本発明の抽出法によれば、いずれのサンプルもバラツキ
なくプラスミドDNAが得られていることが分かる。
【0043】ベクターをPME18SFL3に代えても
同様の結果が得られた。また、フィルターとしてWhatma
n社製の孔径0.45μmのフィルタープレートを用い
ても同様の結果が得られた。さらに、本発明の方法及び
装置によると、アルカリ法におけるフェノールのような
危険試薬を取り扱う必要がないので、安全性が高いとい
う効果も有する。
【0044】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、多検体を同時に処理してもバラツキがなく、純
度・回収率に優れた、簡便で低コストのプラスミドDN
Aの抽出精製方法及び装置を提供することができた。本
発明は、効率を上げることができ、且つ、低コストであ
るので、大量ゲノム解析において有効な手段である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用するPCR反応用プレートの一例
を示す。
【図2】本発明の加熱工程で使用するPCR反応用ヒー
トブロックの一例を示す。
【図3】従来法におけるディープウェルプレートの一例
を示す。
【図4】従来法により抽出したプラスミドの電気泳動写
真を示す。
【図5】本発明で使用するフィルタープレートの一例を
示す。
【図6】本発明の遠心ろ過工程におけるPCR反応用プ
レートとフィルタープレートとの組合せを示す。
【図7】本発明により抽出したプラスミドの電気泳動写
真を示す。
【符号の説明】
1、1’:PCR反応用プレート 2:ウェル 3:突出部 4:PCR反応用ヒートブロック 5:サーモサイクラー 6:ディープウェルプレート 7:フィルタープレート 8:フィルター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 豊田 敦 神奈川県横浜市緑区鴨居5−13−4 サン ビレッジ鴨居C201 (72)発明者 会津 智幸 神奈川県川崎市多摩区菅城下23−20 シャ トースズキ102 Fターム(参考) 4B024 AA20 CA01 HA19 HA20 4B029 AA23 BB20 CC01

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 形質転換体からボイル法によってプラス
    ミドDNAを抽出精製する方法において、PCR反応用
    の多検体プレートを用いて菌体の培養、集菌、溶菌、懸
    濁、加熱、及び沈殿ろ過工程を行うことを特徴とするD
    NA抽出精製方法。
  2. 【請求項2】 加熱工程をPCR反応用ヒートブロック
    を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 沈殿ろ過工程に親水性2フッ化ポリビニ
    リデン(PVDF)フィルタを用いることを特徴とする
    請求項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 菌体を集菌した後、リゾチーム溶液を添
    加して懸濁した後、STET溶液を添加して溶菌を行う
    請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 STET溶液中のTris-HClを1mM、Tr
    itonX-100を1重量%に調整することを特徴とする請求
    項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 加熱を25秒程度行うことを特徴とする
    請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 【請求項7】 PCR反応用プレート及びPCR反応用
    ヒートブロックを含むボイル法によるDNA抽出精製装
    置。
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