JP2002360252A - アミロイド前駆体タンパク質代謝分解の阻害因子 - Google Patents

アミロイド前駆体タンパク質代謝分解の阻害因子

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JP2002360252A
JP2002360252A JP2001133178A JP2001133178A JP2002360252A JP 2002360252 A JP2002360252 A JP 2002360252A JP 2001133178 A JP2001133178 A JP 2001133178A JP 2001133178 A JP2001133178 A JP 2001133178A JP 2002360252 A JP2002360252 A JP 2002360252A
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nucleic acid
glu
hard1
leu
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JP2001133178A
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Toshiji Suzuki
利治 鈴木
Koichi Iijima
浩一 飯島
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Sumitomo Pharmaceuticals Co Ltd
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Sumitomo Pharmaceuticals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】βアミロイド生成を抑制しうる:アミロイド前
駆体タンパク質(APP)の分解を抑制する活性を有す
るポリペプチドをコードする核酸;該核酸又は該核酸に
よりコードされたポリペプチドを用いる、アルツハイマ
ー病の治療用の化合物のスクリーニング方法;並びに得
られた化合物を有効成分としたアルツハイマー病の治療
剤を提供する。 【解決手段】ヒト由来の特定の配列又はその誘導体を有
する核酸であり、該核酸にコードされたポリペプチドの
発現により、APPの代謝分解が抑制されるものであ
る、APP分解阻害のための単離核酸及びその組換えD
NA;該核酸を含む細胞導入用担体;これらを有効成分
としたAPP分解阻害剤;該分解阻害剤を有効成分とし
たアルツハイマー病治療剤;これらを用いたアルツハイ
マー病の発症又は症状を抑制しうる物質のスクリーニン
グ方法;並びに得られた物質を有効成分としたアルツハ
イマー病治療剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルツハイマー病
の治療に有用な、アミロイド前駆体タンパク質の分解を
抑制する活性、特に、βアミロイドの生成を阻害する活
性を有するタンパク質をコードする核酸、アルツハイマ
ー病の治療剤、及び該核酸を用いたアルツハイマー病の
治療剤のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルツハイマー病は、進行性の記憶障
害、知能低下などを主症状とする脳の変性疾患であり、
いくつかの要因が重なって発病する多因子性の病気であ
る。発症の危険因子として遺伝的因子、環境因子に関す
る報告がいくつかあるが、最大の危険因子は脳の老化で
あると考えられている。
【0003】一般に、アルツハイマー病は、遺伝病では
ないが、まれに家族性アルツハイマー病と呼ばれる、常
染色体優性遺伝を示す遺伝性のアルツハイマー病が存在
する。前記家族性アルツハイマー病に対し、患者の大部
分 (97-98%) を占める非遺伝性アルツハイマー病は孤発
性アルツハイマー病と呼ばれる。両患者脳の病理学的変
化には、シナプスの変性・脱落、ニューロン死、老人斑
の沈着など、共通の異常が多く、同様の発症機序の存在
が予想されることから、家族性アルツハイマー病の原因
遺伝子を同定することで、孤発性アルツハイマー病の発
症機構を解明しようとする試みがなされている。
【0004】アルツハイマー病患者脳に特徴的な病理学
的変化として、大脳皮質、海馬等への老人斑の沈着が挙
げられる。前記老人斑の主要構成成分として、βアミロ
イドペプチド(Aβ)が単離されている。また、前記A
βの前駆体として、アミロイド前駆体タンパク質(amylo
id precursor protein ; APP) が単離されている [ゴー
ルドゲーバー(Goldgaber, D.) ら、Science, 235, 877-
880, (1987);タンズィ(Tanzi, R. E.)ら、Science, 23
5, 880-884, (1987);ロバキス(Robakis, N. K.)ら、Pro
c. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 4190-4194 (1987); キ
タグチ(Kitaguchi, N.) ら、Nature 331, 530-532, (19
88);ポンテ(Ponte, P.) ら、Nature, 331,525-527, (19
88); カン(Kang, J.)ら、Nature, 325, 733-736, (198
7)] 。
【0005】アルツハイマー病は、前記Aβの持つ神経
細胞毒性が、シナプスの脱落や神経細胞死を引き起こす
ことにより生じるという仮説があり、かかる仮説は、
「βアミロイド仮説」と呼ばれている。前記仮説は、
1)実際に神経細胞内で APPからAβが生成すること、
2)家族性アルツハイマー病の原因遺伝子として同定さ
れている APP遺伝子、プレセニリン1(PS1) 遺伝子、プ
レセニリン2(PS2) 遺伝子の変異が、いずれもAβの生
成に影響を及ぼすこと、3)Aβが in vivo、 invitro
で神経細胞毒性を示すこと、などの知見から現在広く
支持されている。
【0006】前記APP は、長い細胞外ドメインと1つの
膜貫通ドメインと短い細胞内ドメインとからなるタンパ
ク質であり、1回膜貫通型受容体に似た構造をとる糖タ
ンパク質である。前記APP には、APP の細胞外から細胞
膜内にかけての領域にβアミロイドドメインが存在す
る。細胞内代謝過程において、APP にセクレターゼが作
用することにより、Aβが生成する。
【0007】また、APP のトランスジェニックマウス脳
において、老人斑の沈着とシナプス消失は相関しないも
のの、脳内Aβの濃度とシナプス消失は相関していると
いう報告がなされている [ミュッケ(Mucke, L.) ら、J.
Neurosci., 20, 4050-4058,(2000)]。現在は、脳内に
おけるAβが蓄積・凝集した老人斑の形成が神経変性の
原因であるのではなく、Aβ量の増加が神経変性の原因
であると考えられている。
【0008】現在、高齢化社会に伴い、アルツハイマー
病患者数の著しい増加が予想されることから、予防・治
療法の開発が望まれている。しかしながら、アルツハイ
マー病は、その臨床・病理像から、発症機構は多様であ
り、多くの因子が関与することが予想されること、及び
脳の老化に伴い発病する複雑な病気であることから、研
究が困難である点が多いのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アルツハイ
マー病発症への関与が示唆されているβアミロイド生成
を抑制しうる、アミロイド前駆体タンパク質の分解を抑
制する活性を有するポリペプチドをコードする核酸;該
核酸又は該核酸によりコードされたポリペプチドを用い
る、アルツハイマー病の治療用の化合物のスクリーニン
グ方法;並びにスクリーニング方法により得られる化合
物を有効成分として含有したアルツハイマー病の治療剤
を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の要旨は、 〔1〕 (A)配列番号:1に示される塩基配列; (B)前記(A)の塩基配列において、少なくとも1塩
基の置換、欠失、付加若しくは挿入を有する塩基配列; (C)前記(A)又は(B)の塩基配列と縮重を介して
異なる塩基配列; (D)前記(A)〜(C)のいずれかの塩基配列を有す
る核酸のアンチセンス鎖とストリンジェントな条件下に
ハイブリダイズしうる核酸の塩基配列; (E)配列番号:1に示される塩基配列に対して、40
%を超える配列同一性を有する塩基配列;及び (F)配列番号:1に示される塩基配列と核酸多型を介
して異なる塩基配列;からなる群より選ばれた1種の塩
基配列を有する核酸であり、かつ該核酸によりコードさ
れたポリペプチドの発現により、アミロイド前駆体タン
パク質の代謝分解が抑制されるものである、アミロイド
前駆体タンパク質の分解阻害のための単離された核酸、 〔2〕 前記〔1〕記載の核酸と、該核酸の細胞におけ
る発現に適した配列からなる核酸とを保持してなる組換
えDNA、 〔3〕 細胞が、神経細胞である、前記〔2〕記載の組
換えDNA、 〔4〕 前記〔1〕記載の核酸又は前記〔2〕若しくは
〔3〕記載の組換えDNAを含有した担体からなる細胞
導入用担体、 〔5〕 担体が、細胞への導入に適したベクター、リポ
ソーム、金属粒子及び正電荷ポリマーからなる群より選
ばれた少なくとも1種である、前記〔4〕記載の細胞導
入用担体、 〔6〕 前記〔1〕記載の核酸、前記〔2〕若しくは
〔3〕記載の組換えDNA又は前記〔4〕若しくは
〔5〕記載の細胞導入用担体のいずれかを有効成分とし
て含有してなる、アミロイド前駆体タンパク質の分解阻
害剤、 〔7〕 前記〔6〕記載のアミロイド前駆体タンパク質
の分解阻害剤を有効成分として含有してなる、アルツハ
イマー病の治療剤、 〔8〕 被検物質の存在下に、 a)請求項1記載の核酸の発現の増強、 b)請求項1記載の核酸によりコードされたポリペプチ
ドとアミロイド前駆体タンパク質との結合の親和性の増
強、 c)請求項1記載の核酸によりコードされたポリペプチ
ドのN−アセチルトランスフェラーゼ活性の増強、及び d)アミロイド前駆体タンパク質の分解抑制能の増強、
からなる群より選ばれた少なくとも1種を検出すること
を特徴とする、アルツハイマー病の発症又は症状を抑制
しうる物質のスクリーニング方法、並びに
〔9〕 前記〔8〕記載のスクリーニング方法により得
られた物質を有効成分として含有してなる、アルツハイ
マー病の治療剤、に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明は、配列番号:1に示され
る塩基配列からなる核酸によりコードされたポリペプチ
ドが、アミロイド前駆体タンパク質に結合し、該アミロ
イド前駆体タンパク質の代謝分解を阻害し、さらには、
アミロイド前駆体タンパク質のエンドサイトーシスを抑
制するという本発明者らの驚くべき知見に基づく。
【0012】本発明の核酸としては、具体的には、
(A)配列番号:1に示される塩基配列を有する核酸; (B)前記(A)の塩基配列において、少なくとも1塩
基の置換、欠失、付加若しくは挿入を有する塩基配列を
有する核酸; (C)前記(A)又は(B)の塩基配列と縮重を介して
異なる塩基配列を有する核酸; (D)前記(A)〜(C)のいずれかの塩基配列を有す
る核酸のアンチセンス鎖とストリンジェントな条件下に
ハイブリダイズしうる核酸の塩基配列を有する核酸; (E)配列番号:1に示される塩基配列に対して、40
%を超える配列同一性を有する塩基配列を有する核酸;
並びに (F)配列番号:1に示される塩基配列と核酸多型を介
して異なる塩基配列を有する核酸が挙げられる。かかる
核酸は、該核酸によりコードされたポリペプチドの発現
により、アミロイド前駆体タンパク質の代謝分解が抑制
されるものである、アミロイド前駆体タンパク質の分解
阻害のための単離された核酸である。
【0013】本発明の核酸によれば、該核酸によりコー
ドされたポリペプチドにより、アミロイド前駆体タンパ
ク質の代謝分解を阻害することができるという驚くべき
効果を発揮する。また、本発明の核酸によれば、該核酸
によりコードされたポリペプチドの発現により、アミロ
イド前駆体タンパク質のエンドサイトーシスを抑制する
ことができるという優れた効果を発揮する。
【0014】前記アミロイド前駆体タンパク質(以下、
APPともいう)は、その細胞外ドメインから細胞膜内
にかけての領域に、βアミロイドドメインを保持するタ
ンパク質である。かかるAPPの一部は、βアミロイド
を生成する経路(アミロイド生成経路ともいう)によ
り、βサイトで切断され、ついで、γサイトで切断され
ることにより、βアミロイドを生じる。なお、かかるア
ミロイド前駆体タンパク質のアミノ酸配列及び塩基配列
は、例えば、カング(Kang, J.)ら、Nature, 325,733-73
6 (1987) 、レマイア(Lemaire, H. G.)ら、Nucleic Aci
ds Res., 17, 517-522 (1989)、ポンテ(Ponte, P.)
ら、Nature, 331, 525-527 (1988) 、タンズィー(Tanz
i, R. E.)ら、Nature, 331, 528-530 (1988) 、キタグ
チ(Kitaguchi,N.) ら、Nature, 331, 530-532 (1988)
などに開示されている。
【0015】前記βアミロイド(以下、Aβともいう)
は、アルツハイマー病の病理学的変化として顕著である
大脳皮質、海馬等の老人斑の主要構成成分である。かか
るAβとしては、40アミノ酸残基からなるAβ40と、42
アミノ酸残基からなるAβ42とが挙げられる。
【0016】前記Aβ40はトランス−ゴルジネットワー
ク(TGN) 以降の分泌過程で生成され、特に細胞膜上から
再取り込みされた後のエンドソーム/ライソソームでの
分解過程が主要なコンパートメントである。また、細胞
内で生成したAβ40の大部分は細胞外に分泌される。か
かるAβ40は、脂質二重膜に陽イオンチャネルを形成
し、特に、細胞内へのCa2+の流入により、アポトーシス
を引き起こすことが予想される。
【0017】前記Aβ42は、前記Aβ40より著しく凝集
しやすいという性質を有する。
【0018】アルツハイマー病は、シナプスの変性・脱
落、ニューロン死、老人斑の沈着や神経原繊維変化の異
常な増加などを特徴的な病理学的変化とする疾患であ
る。かかるアルツハイマー病としては、Alzheimer によ
り報告された、初老期 (45-60歳;早発型) で発病する
アルツハイマー病 (Alzheimer's disease ; AD) 、それ
以降に発病する (遅発型) アルツハイマー病型老年痴呆
(senile dementia Alzheimer's type ; SDAT)などが挙
げられる。
【0019】なお、本明細書においては、本発明の核酸
を「hard1 遺伝子」ともいい、該核酸にコードされたポ
リペプチドを「hard1 タンパク質」ともいう。
【0020】また、本明細書において、「核酸」とは、
mRNA、cDNA、DNAのいずれをも含むことを意
味する。
【0021】本発明の核酸によりコードされたポリペプ
チド(hard1 タンパク質)のAPP への結合能は、例え
ば、two-hybrid法、エピトープタグを用いた共免疫沈降
(例えば、pull-down 法) 、共鳴プラズモン相互作用解
析などにより評価することができる。
【0022】具体的には、下記方法などが挙げられる。 結合能評価方法1(two-hybrid 法) hard1 cDNAを、preyベクターに組込み、preyプラス
ミドを得るステップ; 得られたpreyプラスミドを酵母(EGY48[p8op lacZ])
に導入して、preyプラスミド保持クローンを得るステッ
プ; ヒトAPP 遺伝子(全長や細胞内ドメインなど)を、
baitベクターに組込み、baitプラスミドを得るステッ
プ; 得られたbaitプラスミドを、前記ステップで得ら
れたpreyプラスミド保持クローンに導入し、クローンを
得るステップ;並びに 前記で得られたクローンを、ロイシン欠失プレー
ト上で3日間培養し、酵母細胞内におけるAPP とhard1
との相互作用能をロイシン欠失プレート上でのコロニー
形成能により評価するステップ;を含む方法。かかる方
法1においては、ロイシン欠失プレート上でコロニーが
形成されることを、hard1 タンパク質とAPP とが結合す
ることの指標とする。 結合能評価方法2 (共免疫沈降法) シグナル配列の下流にFLAG配列を有するAPP を発現
するAPP-FLAG発現プラスミドを得るステップ; N 末側にHA配列を有するhard1 タンパク質を発現し
うるHA-hard1発現プラスミドを得るステップ; 細胞に、前記ステップで得られたAPP-FLAG発現プ
ラスミドと前記ステップで得られたHA-hard1発現プラ
スミドとを、一過的にコトランスフェクトして、トラン
スフェクタントを得るステップ; 前記ステップで得られたコトランスフェクタント
を培養して、培養細胞を得るステップ; 前記ステップで得られた培養細胞から、細胞抽出
液を得るステップ; 前記ステップで得られた細胞抽出液に抗FLAG抗体
又は抗HA抗体を加えて共免疫沈降を行なうステップ;並
びに 共免疫沈降を、ウエスタンブロット解析により検出
するステップ;を含む方法。かかる方法2においては、
抗FLAG抗体及び抗HA抗体のいずれの場合においても、AP
P-hard1 の複合体の沈降がみられることを、hard1 タン
パク質とAPP とが結合することの指標とする。 結合能評価方法3(pull-down 法) GST と hard1とからなる融合タンパク質(GST-hard
1) と、APP とを接触させるステップ; グルタチオンビーズでタンパク質を、回収するステ
ップ; 抗 APP抗体を用いたウエスタンブロット解析を行な
い、GST-hard1 と、APPとの複合体を検出するステッ
プ;を含む方法。かかる方法3においては、GST-hard1
とAPP との複合体の存在を、hard1 タンパク質とAPP と
が結合することの指標とする。 結合能評価方法4 (共鳴プラズモン相互作用解析) APP又はhard1 タンパク質(いずれも全長又は結合に
関与する部分タンパク質)を固定化したチップに、対応
して、hard1 タンパク質又はAPP を一定の流速で、送液
するステップ;及び 適切な検出手段〔例えば、光学的検出(蛍光度、蛍光
偏向度など)、質量分析計との組み合わせ(マトリック
ス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型質量分析計:M
ALDI-TOF MS 、エレクトロスプレー・イオン化質量分析
計:ESI-MS など)〕により相互作用を検出するステッ
プ;を含む方法。ここで、hard1 タンパク質とAPP とか
らなる複合体の形成を示すセンサーグラムが呈示された
場合、hard1 タンパク質とAPP とが結合することの指標
とする。
【0023】また、hard 1タンパク質の発現によるAPP
の代謝分解の抑制能は、例えば、パルスチェイス法、免
疫測定法などにより評価することができる。
【0024】具体的には、例えば、下記方法が挙げられ
る。 代謝分解抑制能評価方法1(パルスチェイス法) APP-FLAG発現プラスミドとHA-hard1発現プラスミド
とを一過的にコトランスフェクトした細胞を得るステッ
プ; 前記ステップで得られた細胞を、35S-標識メチオ
ニン含有培地で一定時間培養し、ついで、過剰量のメチ
オニンを添加するステップ; 培養液と細胞抽出液とを調製し、抗FLAG抗体を用い
た免疫沈降により、タンパク質を回収するステップ;及
び 回収されたタンパク質をゲル上で電気泳動して分離
し、シグナルの解析を行ない、それにより量的変動を調
べるステップ;を含む方法。ここで、未成熟APP の量
と、成熟APP の量とを経時的に評価することにより、AP
P の代謝分解の抑制が評価できる。 代謝分解抑制能評価方法2(免疫測定法) APP-FLAG発現プラスミドとHA-hard1発現プラスミド
とを一過的にコトランスフェクトした細胞を得るステッ
プ;及び 前記ステップにより得られた培養上清を回収し、
サンドウィッチELISA 法によりAβ濃度を測定するステ
ップ;を含む方法。
【0025】さらに、hard 1タンパク質は、APP のエン
ドサイトーシスの抑制能をも発揮する。かかるhard 1タ
ンパク質の発現によるAPP のエンドサイトーシスの抑制
能は、例えば、下記方法により評価することができる。 エンドサイトーシス抑制能評価方法 APP-FLAG発現プラスミドとHA-hard1発現プラスミド
とを一過的にコトランスフェクトした細胞を得るステッ
プ; 前記ステップで得られた細胞を氷上で冷やしなが
ら、0.5mg/mlのNHS-SS-Biotin 含有PBS-CMを用いて細胞
表面のAPP をラベルするステップ; 前記ステップで得られた細胞に37℃で10% FCS/D-
MEM を添加し、5% CO2,37℃の条件下で、細胞のエンド
サイトーシスを誘導するステップ; 前記ステップで得られたエンドサイトーシスを誘
導された細胞の細胞抽出液について、抗FLAG抗体を用い
て、免疫沈降させ、タンパク質を回収するステップ; ウエスタンブロット解析により、ビオチン化された
APP を検出し、膜表面の全APP 量に対するエンドサイト
ーシスされたAPP 量を評価するステップ;を含む方法。
【0026】前記(B)の核酸は、天然由来の核酸又は
慣用の変異導入法などにより、人為的に作製された核酸
のいずれでもよい。
【0027】前記(B)の核酸において、塩基の置換、
欠失、付加若しくは挿入等の変異の数は、少なくとも1
塩基、具体的には、1若しくは複数個、又はそれ以上で
ある。かかる変異の数は、コードされるポリペプチドに
ついて、APP への結合能及びAPP の代謝分解の抑制能が
見出される範囲であればよく、好ましくは、1若しくは
数個の範囲が挙げられる。また、前記変異の局在位置
は、コードされるポリペプチドが、APP への結合能及び
APP の代謝分解の抑制能を有するものであれば、いかな
る位置であってもよい。
【0028】前記変異導入法としては、慣用の部位特異
的変異導入法、変異導入用プライマーを用いたPCRに
よる方法等が挙げられる [例えば、ギャップド・デュプ
レックス(gapped duplex) 法、Nucleic Acids Researc
h, 12, 9441-9456(1984) ;クンケル(Kunkel)法、Proc.
Natl. Acad. Sci. USA, 82,488-492(1985)などを参照
のこと] 。
【0029】前記(C)の核酸は、前記(A)又は
(B)の核酸よりコードされるポリペプチドをコード
し、かつ(A)又は(B)の核酸と異なる塩基配列を有
する核酸をさす。
【0030】前記(D)の核酸において、「ストリンジ
ェントな条件」とは、例えば、モレキュラー・クローニ
ング:ア・ラボラトリー・マニュアル 第2版 [T.マ
ニアティス(T.Maniatis)ら編、Molecular Cloning : A
Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Labor
atory発行, (1989)] 等に記載のハイブリダイゼーショ
ン条件などが挙げられ、具体的には、例えば、6×SS
PE、0.2% BSA、0.2% Ficoll 4
00、0.2% ポリビニルピロリドン、0.1% S
DS、100μg/ml 変性サケ精子DNA中、55
℃で16時間インキュベーションする条件等が挙げられ
る。
【0031】前記(D)の核酸は、例えば、適切なライ
ブラリーについて、前記ストリンジェントな条件下、前
記モレキュラークローニング:ア・ラボラトリーマニュ
アル第2版等に記載のハイブリダイゼーション法によ
り、ハイブリッドの形成に伴うシグナルを呈するクロー
ンを選択し、得られたクローンについて、前記評価法に
より評価し、APP への結合能及びAPP の代謝分解の抑制
能が見出されるクローンを選択することにより、得られ
うる。
【0032】前記(E)の核酸において、配列番号:1
に示される塩基配列に対する配列同一性は、40%を超
えることが好ましく、60%以上であることがより好ま
しく、80%以上であることがさらに好ましく、90%
以上であることがさらに好ましく、95%以上であるこ
とが特に好ましい。
【0033】また、本発明の核酸には、N−アセチルト
ランスフェラーゼドメインとして知られている配列を有
するドメインをコードする領域が存在する。前記(E)
の核酸においては、配列番号:1に示される塩基配列に
おいて、N−アセチルトランスフェラーゼドメインに対
応するアミノ酸配列の配列同一性が、60%を超えるこ
とが望ましく、80%以上であることがより望ましく、
90%以上であることがさらに望ましく、95%以上で
あることが特に望ましい。
【0034】本発明においては、配列同一性とは、2つ
の核酸間又は2つのポリペプチド間の残基の配列類似性
をいう。前記「配列同一性」は、比較対象の配列の領域
にわたって、最適な状態にアラインメントされた2つの
配列を比較することにより決定されうる。ここで、比較
対象の核酸又はポリペプチドは、2つの配列の最適なア
ラインメントのための参考配列(例えば、コンセンサス
配列等)と比べて、付加又は欠失(例えば、ギャップ
等)を有していてもよい。
【0035】配列同一性の数値(パーセンテージ)は、
両方の配列に存在する同一の残基を決定して、適合部位
の数を決定し、ついで、比較対象の配列領域内の残基の
総数で、前記適合部位の数を割、得られた数値に100
をかけることにより、算出されうる。最適なアラインメ
ント及びホモロジーを得るためのアルゴリズムとして
は、例えば、スミス(Smith) らの局所ホモロジーアルゴ
リズム[Add. APL. Math., 2, 482 (1981)]、ニードルマ
ン(Needleman) らのホモロジーアラインメントアルゴリ
ズム[J. Mol. Biol., 48, 443(1970)]、パールソン(Pea
rson) らの相同性検索法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA,
85, 2444 (1988)] が挙げられ、より具体的には、ダイ
ナミックプログラミング法、ギャップペナルテイ法、Sm
ith-Watermanアルゴリズム、Good-Kanehisa アルゴリズ
ム、BLAST アルゴリズム、FASTA アルゴリズム等が挙げ
られる。
【0036】配列同一性は、例えば、配列解析ソフト、
具体的には、GENETYX−MAC、BLASTN、
BLASTP等を用いて測定される。前記BLASTN
及びBLASTPは、ホームページアドレスhttp:
//www.ncbi.nlm.nih.gov/BL
AST/において、一般に利用可能である。
【0037】前記(F)の核酸において、核酸多型と
は、同じ種の個体間、生物の同一個体間若しくは生物間
において見出される場合がある差異又は変化であり、AP
P への結合能及びAPP の代謝分解の抑制能を呈する範囲
における、核酸の構造、形質又は形態の差異あるいは変
化をいう。かかる核酸多型としては、一塩基多型(SN
P)が挙げられ、より具体的には、アミノ酸置換を生じ
るcSNP、アミノ酸置換を伴わないsSNP、ゲノム
における多型であるgSNP、調節領域における多型で
あるrSNP等が挙げられる。前記SNPは、1種であ
ってもよく、複数種共存してもよい。
【0038】本発明の核酸によれば、細胞、特に、脳組
織における神経細胞への導入により、該核酸によりコ
ードされたポリペプチドを発現させ、APP の代謝分解を
阻害すること;該核酸によりコードされたポリペプチ
ドを発現させ、APP のエンドサイトーシスを抑制するこ
とが期待される。
【0039】本発明の核酸は、細胞への導入及び細胞に
おける発現に適した配列からなる核酸と連結して、組換
えDNAとして使用することもできる。かかる組換えD
NAも本発明の範囲に含まれる。
【0040】前記細胞としては、神経細胞が挙げられ
る。
【0041】前記細胞における発現に適した配列として
は、例えば、転写を制御するプロモーター配列などの制
御遺伝子、神経細胞特異的に発現する遺伝子の転写領域
の配列(例えば、PDGFのプロモーター配列;Gen
Bankアクセッション番号:M59423)などが挙
げられる。
【0042】また、本発明の核酸又は組換えDNAを、
適切な担体に含有させて用いることにより、より一層、
細胞への導入が容易になり、かつ該核酸によりコードさ
れたポリペプチドを発現させ、APP の代謝分解を阻害す
ること及びAPP のエンドサイトーシスを抑制することが
期待される。したがって、本発明の核酸又は組換えDN
Aを含有した担体からなる細胞導入用担体も本発明の範
囲に含まれる。
【0043】担体としては、細胞への導入に適したベク
ター、リポソーム、金属粒子、正電荷ポリマー、リン酸
カルシウム、DEAEデキストランなどが挙げられる。
また、前記担体は、リポソーム、金属粒子、正電荷ポリ
マー、リン酸カルシウム又はDEAEデキストランのい
ずれかに、本発明の核酸又は組換えDNAを含有した細
胞への導入に適したベクターを保持せしめたものであっ
てもよい。
【0044】細胞への導入に適したベクターのうち、非
ウイルス性ベクターとしては、例えば、pCAGGS [Gene,
108, 193-200 (1991)]やpBK-CMV 、pcDNA3.1、pZeoSV
(インビトロゲン社製、ストラタジーン社製) などの発
現ベクターが挙げられる。また、ウイルス性ベクターと
しては、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイル
ス、無毒化したレトロウイルス、ヘルペスウイルス、ワ
クシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイル
ス、シンビスウイルス、センダイウイルス、SV40、免疫
不全症ウイルス(HIV) などのDNA ウイルス、またはRNA
ウイルスなどのウイルス性ベクターが挙げられる。この
うち、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベ
クター及びヘルペスウイルスベクターが好ましい。
【0045】また、リポソーム、金属粒子、正電荷ポリ
マーなどの担体のうち、最も好ましいものとしては、リ
ポソームが挙げられる。かかるリポソームとしては、カ
チオニックリポソーム、HVJ(センダイウイルス)-リポソ
ーム、改良型HVJ-リポソーム(HVJ-AVEリポソーム) 、正
電荷リポソームなどが挙げられる。
【0046】さらに、本発明の核酸によれば、該核酸に
よりコードされたポリペプチドの発現により、APP の代
謝分解を阻害することができるため、APP の分解阻害剤
をも提供することができる。かかるAPP の分解阻害剤も
本発明の範囲に含まれる。
【0047】本発明のAPP の分解阻害剤は、本発明の核
酸、組換えDNA又は細胞導入用担体のいずれかを有効
成分として含有することに1つの特徴がある。そのた
め、APP の代謝分解を阻害し、かつAPP のエンドサイト
ーシスを抑制することができるという優れた効果を発揮
する。
【0048】本発明のAPP の分解阻害剤における有効成
分の含有量及びその投与回数は、投与目的、個体の年
齢、体重、状態等に応じて、APP の代謝分解を阻害し、
かつAPP のエンドサイトーシスを抑制する効果を十分に
発揮させうる範囲で適宜設定され得る。例えば、本発明
の核酸の含有量として、0.0001〜100mg、前
記ポリペプチドの場合、0.001〜1000mgであ
ることが望ましい。
【0049】投与手段は、特に神経細胞における導入を
達成し得、APP の代謝分解を阻害し、かつAPP のエンド
サイトーシスを抑制する効果を十分に発揮させうるもの
であれば、特に限定されるものではない。
【0050】例えば、本発明のAPP の分解阻害剤を細
胞、組織又は個体に導入する方法としては、リン酸−カ
ルシウム共沈法;微小ガラス管を用いた核酸の直接注入
法;内包型リポソームによる遺伝子導入法;静電気型リ
ポソームによる遺伝子導入法;HVJ-リポソーム法、改良
型HVJ-リポソーム法(HVJ-AVE リポソーム法);受容体
介在性遺伝子導入法;パーティクル銃で担体(金属粒
子)とともに核酸分子を細胞に移入する方法;naked-DN
A の直接導入法;正電荷ポリマーによる導入法等が挙げ
られる。
【0051】患者への投与方法としては、例えば、以下
の手法が挙げられる。すなわち、線維芽細胞やアストロ
サイトなどの細胞に対して体外で本発明の核酸を導入
し、遺伝子導入が成功した細胞を選択したうえで、脳内
に移植するex vivo の方法や、ウイルスベクターやリポ
ソームを用いて直接脳内の特定の部位に局所注入し、in
vivo で本発明の核酸の導入を行なうアプローチが考え
られる。さらに、徐放性の製剤を調製し、患部近くに埋
め込む手法や、オスモチックポンプを用いて、脳内に連
続的に徐々に投与する方法も挙げられる。
【0052】また、本発明のAPP の分解阻害剤は、通常
の薬理学的に許容されうる担体、賦形剤、結合剤、安定
剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤などを含有してもよ
い。
【0053】本発明のAPP の分解阻害剤によれば、アル
ツハイマー病において顕著に見られる老人斑の主要構成
成分であるAβの生成を阻害するため、該アルツハイマ
ー病の治療効果が認められる。したがって、本発明のAP
P の分解阻害剤を有効成分として含有したアルツハイマ
ー病の治療剤も本発明の範囲に含まれる。
【0054】本発明の治療剤における有効成分量は、疾
患、患者の年齢及び体重等に応じて適宜設定することが
できるが、例えば、本発明の核酸の含有量として、0.
0001〜100mgであることが望ましい。
【0055】かかる治療剤を直接体内に導入するin viv
o 法又は動物、例えば、ヒト等の哺乳動物からある種の
細胞を取り出して体外で治療剤を該細胞に導入し、その
細胞を体内に戻すex vivo 法により、投与することがで
きる。かかる手法については、例えば、日経サイエン
ス,1994 年4 月号,20-45頁;月刊薬事,36(1),23-48,19
94;実験医学増刊,12(15),1994;日本遺伝子治療学会編
遺伝子治療開発研究ハンドブック, エヌ・ティー・エ
ス,1999 等を参照することができる。
【0056】患者への投与方法としては、例えば、以下
の手法が挙げられる。すなわち、線維芽細胞やアストロ
サイトなどの細胞に対して体外で本発明の核酸を導入
し、遺伝子導入が成功した細胞を選択したうえで、脳内
に移植するex vivo の方法や、ウイルスベクターやリポ
ソームを用いて直接脳内の特定の部位に局所注入し、in
vivo で本発明の核酸の導入を行なうアプローチが考え
られる。さらに、徐放性の製剤を調製し、患部近くに埋
め込む手法や、オスモチックポンプを用いて、脳内に連
続的に徐々に投与する方法も挙げられる。
【0057】さらに、本発明によれば、hard1 タンパク
質とAPP とが結合すること;該hard1 タンパク質がAPP
の代謝分解を阻害すること;該hard1 タンパク質がAPP
のエンドサイトーシスを抑制することに基づき、アルツ
ハイマー病の発症又は症状を抑制しうる物質のスクリー
ニング方法が提供されうる。かかるスクリーニング方法
も本発明に含まれる。
【0058】本発明のスクリーニング方法は、被検物質
の存在下に、 a)本発明の核酸の発現の増強、 b)本発明の核酸によりコードされたポリペプチドとア
ミロイド前駆体タンパク質との結合の親和性の増強、 c)本発明の核酸によりコードされたポリペプチドのN
−アセチルトランスフェラーゼ活性の増強、及び d)APP の分解抑制能の増強、からなる群より選ばれた
少なくとも1種を検出することを1つの特徴とする方法
である。
【0059】前記a)を検出する場合、例えば、慣用の
方法により、hard1 遺伝子のプロモーターを得、該プロ
モーターの制御下における慣用のレポーター遺伝子の発
現を測定することにより、発現の増強を評価すればよ
い。
【0060】プロモーターの同定方法としては、例え
ば、下記ステップ: 5'- レース法 (5'-RACE 法) 〔例えば、5'Full Rac
e Core Kit (宝酒造社製) などを用いて実施されう
る〕、オリゴキャップ法、S1プライマーマッピングなど
の常法により、5'末端を決定するステップ; Genome Walker Kit(クローンテック社製) などを用
いて5'- 上流域を取得し、得られた領域について、プロ
モーター活性を測定するステップ;を含む手法などによ
り、プロモーターを同定することができる。
【0061】前記レポーター遺伝子としては、ルシフェ
ラーゼ遺伝子、アルカリホスファターゼ遺伝子、クロラ
ムフェニコール耐性遺伝子、β−ガラクトシダーゼ遺伝
子、緑色蛍光タンパク質遺伝子、青色蛍光タンパク質遺
伝子、黄色蛍光タンパク質遺伝子、赤色蛍光タンパク質
遺伝子、これらの誘導体などが挙げられる。
【0062】前記a)を検出する場合、被検物質の存在
下又は非存在下におけるレポーター遺伝子の産物の発現
量を定量ればよい。ここで、被検物質の存在下における
レポーター遺伝子の産物の発現量が、非存在下における
発現量よりも上昇した場合、かかる被検物質が、アルツ
ハイマー病の発症又は症状を抑制しうる物質の候補物質
であることの指標となる。
【0063】ついで、かかる候補物質について、APP の
トランスジェニックマウスを用いてAβ産生阻害剤の薬
物を評価する方法 [ドベイ(H. F. Dovey) ら、J. Neuro
chem. 、76、173-181 (2001)] に供してもよい。
【0064】被検物質としては、低分子化合物などが挙
げられる。
【0065】前記b)を検出する場合、例えば、被検物
質の存在下及び非存在下において、前記結合能評価方法
を行ない、hard1 とAPP との複合体の生成量、該複合体
の形成に要する時間を測定すればよい。ここで、被検物
質の存在下における複合体の生成量が、被検物質の非存
在下における複合体の生成量よりも増加した場合、又は
被検物質の存在下における複合体の形成に要する時間
が、被検物質の非存在下における複合体の形成に要する
時間よりも短縮された場合、かかる被検物質が、アルツ
ハイマー病の発症又は症状を抑制しうる物質の候補物質
であることの指標となる。
【0066】かかる候補物質については、さらに、かか
る候補物質の存在下及び非存在下において、代謝分解抑
制能評価方法及びエンドサイトーシス抑制能評価方法に
供する。ここで、hard1 タンパク質による、APP の代謝
分解抑制能、APP のエンドサイトーシス抑制能が、検出
される場合、該候補物質がアルツハイマー病の発症又は
症状を抑制しうる物質であることの指標となる。また、
前記候補物質を、ドベイ(H. F. Dovey) ら、J. Neuroch
em. 、76、173-181 (2001)の記載に従い、APPのトラン
スジェニックマウスを用いてAβ産生阻害剤の薬効を評
価する方法に供してもよい。
【0067】被検物質としては、低分子化合物などが挙
げられる。
【0068】なお、前記結合能評価方法において、hard
1 タンパク質の代わりに、該hard1タンパク質とAPP と
の結合に関与する会合領域に基づきデザインされた合成
ペプチドを被検物質として用いることにより、アルツハ
イマー病の発症又は症状を抑制しうる物質をスクリーニ
ングすることもできる。この場合、被検物質としては、
hard1 のC 末端アミノ酸50アミノ酸残基からなるペプチ
ド、かかるペプチドの機能部位を含む一部からなるペプ
チド、これらのペプチドのアナログ(例えば、電荷が類
似したアミノ酸残基と置換して得られたペプチド、ペプ
チド類似体など)などが挙げられる。
【0069】前記c)を検出する場合、例えば、hard1
タンパク質について、被検物質の存在下及び非存在下に
おいて、例えば、下記N−アセチルトランスフェラーゼ
活性測定法により、活性を測定すればよい。 N−アセチルトランスフェラーゼ活性測定法 hard1 を発現する細胞の細胞抽出液、又は単離され
たhard1 タンパク質を得るステップ; 前記ステップで得られた細胞抽出液又はhard1 タ
ンパク質を、反応液 [組成:50mM HEPES (pH7.4), 150m
M KCl, 1mM DTT, 25μM [3H]アセチルCoA (0.5μCi) ,
50μM 合成ペプチド基質] 中、被検物質の存在下又は非
存在下に30℃で30分間インキュベートして、[3H]アセチ
ルCoA の[3H]アセチル基を合成ペプチド基質に転移する
反応を行なうステップ; 0.5 M 酢酸の添加により反応を停止させ、得られた
反応産物を、適切なメンブランに滴下するステップ; 前記ステップで得られたメンブランについて、シ
ンチレーションカウンターにより、合成ペプチド基質に
転移した[3H]アセチル基の量を測定するステップ;を含
む方法。ここで、N−アセチルトランスフェラーゼの酵
素活性1ユニット(U) は、前記条件下、[3H]アセチルCo
A の[3H]アセチル基 1pmolを合成ペプチド基質に転移さ
せうる酵素量として定義される。
【0070】なお、本発明において、N−アセチルトラ
ンスフェラーゼ活性測定法は、酵素カップリング法によ
り、生成される反応産物の生成量を、吸光度、呈色によ
り検出する測定法であってもよい。
【0071】ここで、被検物質の非存在下よりも、存在
下におけるN−アセチルトランスフェラーゼ活性が上昇
した場合、かかる被検物質が、N−アセチルトランスフ
ェラーゼ活性の促進剤であることの指標となる。一方、
被検物質の非存在下よりも、存在下におけるN−アセチ
ルトランスフェラーゼ活性が減少した場合、かかる被検
物質が、N−アセチルトランスフェラーゼ活性の阻害剤
であることの指標となる。
【0072】さらに、N−アセチルトランスフェラーゼ
活性の促進剤について、前記結合能評価方法、代謝分解
抑制能評価方法及びエンドサイトーシス抑制能評価方法
を行なうことにより、hard1 タンパク質による、APP へ
の結合能、APP の代謝分解抑制能、APP のエンドサイト
ーシス抑制能が、検出される場合、該促進剤がアルツハ
イマー病の発症又は症状を抑制しうる物質であることの
指標となる。また、前記候補物質を、ドベイ(H. F. Dov
ey) ら、J. Neurochem. 、76、173-181 (2001)の記載に
従い、APP のトランスジェニックマウスを用いてAβ産
生阻害剤の薬効を評価する方法に供してもよい。
【0073】被検物質としては、低分子化合物などが挙
げられる。
【0074】前記d)を検出する場合、例えば、被検物
質の存在下及び非存在下において、代謝分解抑制能評価
方法及び/又はエンドサイトーシス抑制能評価方法を行
ない、hard1 タンパク質によるAPP のエンドサイトーシ
ス抑制能を測定する。ここで、被検物質の存在下におけ
るエンドサイトーシスされたAPP の量が、非存在下にお
けるエンドサイトーシスされたAPP の量よりも減少した
場合、かかる被検物質が、アルツハイマー病の発症又は
症状を抑制しうる物質の候補物質であることの指標とな
る。
【0075】ついで、かかる候補物質の存在下及び非存
在下において、前記結合能評価方法に供する。ここで、
hard1 タンパク質による、APP への結合能、APP の代謝
分解抑制能が、検出される場合、該候補物質がアルツハ
イマー病の発症又は症状を抑制しうる物質であることの
指標となる。また、前記候補物質を、ドベイ(H. F. Dov
ey) ら、J. Neurochem. 、76、173-181 (2001)の記載に
従い、APP のトランスジェニックマウスを用いてAβ産
生阻害剤の薬効を評価する方法に供してもよい。
【0076】被検物質としては、低分子化合物などが挙
げられる。
【0077】また、代謝分解抑制能評価方法及び/又は
エンドサイトーシス抑制能評価方法において、hard1 タ
ンパク質の代わりに、該hard1 タンパク質とAPP との結
合に関与する会合領域に基づきデザインされた合成ペプ
チドを被検物質として用いることにより、アルツハイマ
ー病の発症又は症状を抑制しうる物質をスクリーニング
することもできる。この場合、被検物質としては、hard
1 のC 末端アミノ酸50アミノ酸残基からなるペプチド、
かかるペプチドの機能部位を含む一部からなるペプチ
ド、これらのペプチドのアナログ(例えば、電荷が類似
したアミノ酸残基と置換して得られたペプチド、ペプチ
ド類似体など)などが挙げられる。
【0078】前記スクリーニング方法により得られうる
物質としては、例えば、低分子化合物、hard1 のC 末端
アミノ酸50アミノ酸残基からなるペプチド、かかるペプ
チドの機能部位を含む一部からなるペプチド、これらの
ペプチドのアナログ(例えば、電荷が類似したアミノ酸
残基と置換して得られたペプチド、ペプチド類似体な
ど)が挙げられる。また、本発明のスクリーニング方法
により得られた物質によれば、hard1 タンパク質とAPP
との結合の増強、APP への結合、該hard1 タンパク質に
よるAPP の代謝分解の抑制能の増強、APP のエンドサイ
トーシスの抑制及び該hard1 タンパク質によるAPP のエ
ンドサイトーシスの抑制能の増強などが期待されるた
め、かかる物質を有効成分として含有したアルツハイマ
ー病の治療薬を提供することができる。
【0079】
【実施例】以下、実施例により、本発明を具体的に説明
するが、本発明は、かかる実施例のみにより限定される
ものではない。
【0080】実施例1 APP 細胞内ドメインと結合する
タンパク質の探索 APP の細胞内ドメインに結合するタンパク質については
いくつかの報告がある。それらは、APP 細胞内ドメイン
への結合領域により大きく二つに分類できる。まず、AP
P の細胞膜からの再取り込みシグナルとして知られてい
る YENPTY 配列に結合するものとして、Fe65ファミリー
(Fe65 、Fe65-like 1 、Fe65-like 2)、X11 ファミリー
(X11, X11 -like 1 、X11 -like 2)、mDab1 (mouse dis
abled 1)が知られている。これらの分子の機能について
は、mDab1 の脳皮質形成における機能以外に in vivoで
示された報告はない。第2に APPの細胞膜からの再取り
込みシグナル、またはMDCK細胞などの極性細胞における
基底外局在化シグナル(basolatelal sorting signal)と
しての報告があるYTSI配列周辺へ結合するPAT1がある。
しかし、この分子が実際に APPの代謝に関与しているこ
とは示されておらず、また、PAT1自身は神経細胞におい
て発現していないことが分かっている。APP細胞内ドメ
インThr 668 サイトのリン酸化は、神経組織およびNGF
刺激により神経細胞分化させたPC12細胞において観察さ
れるが、その制御機構については不明である。
【0081】本発明者らは、Thr668サイトのリン酸化が
もつ生理機能の1つとして、Thr668サイトのリン酸化に
伴い、細胞内ドメインの構造変化が生じ、それにより A
PP細胞内ドメイン結合タンパク質の結合様式が変化する
ことで、何らかの生理機能制御を行なっている可能性を
考えた。また、APP の細胞内ドメインの立体構造は NMR
と CD spectroscopyによって解析されており、Thr668リ
ン酸化サイト周辺のVTPEERとNPTY配列が type 1 β−タ
ーン構造をとること [クレンケ(Kroenke) ら、Biochemi
stry, 36, 8145-8152 (1997); ラメロット(Ramelot)
ら、Biochemistry, 39, 2714-2725 (2000)] 、さらに、
VTPEER配列は、N-cap (T668)とN-3 (E671)の側鎖と主鎖
同士の水素結合がみられ、N末端ヘリックスキャッピン
グボックスを作っていることが報告されている [前記ラ
メロットら、Biochemistry, 39, 2714-2725 (2000)] 。
このN末端ヘリックスキャッピングボックスは立体構造
の安定化に重要であることが知られており、Thr668サイ
トのリン酸化に伴い APP細胞内ドメインの構造変化が生
じることは十分に予想される。
【0082】そこで、 Thr668 サイトのリン酸化に伴い
APP細胞内ドメインへの結合様式が変化する新規分子を
想定し、特に Thr668 サイトのリン酸化により結合能の
上昇するタンパク質をtwo-hybrid法により探索した。
【0083】1)two-hybridスクリーニング Thr668サイトがリン酸化された状態の APP細胞内ドメイ
ンに強く相互作用する新規タンパク質の単離を目的とし
て、Human Fetal Brain MATCHMAKER GAL4 cDNAlibrary
(HL4028AH; CLONTECH社製) 及びHuman Fetal Brain MAT
CHMAKER LexAcDNA library (HL4504AK; CLONTECH社製)
を用いて、two-hybridスクリーニングを行なった。前記
two-hybridスクリーニングは、製造者のプロトコールに
従い、以下のように、GAL4システム及びLexAシステムに
より行なった。
【0084】two-hybridスクリーニングにおいて、bait
として Thr668 サイトを Gluに置換したものを用いた。
この Thr668Glu変異 APPは、Thr668サイトでリン酸化を
受けた APPの細胞内ドメインを特異的に認識する抗体に
より検出できることから、Thr668サイトでリン酸化され
た APPと構造上類似していると考えられる。このような
Thr668Glu置換体 (以下 APPcyt.T668E と表記) をbait
として、これと相互作用する分子の探索を、神経発生な
らびに脳皮質形成が盛んな時期であるヒト胎児脳 cDNA
ライブラリー (Gal4システム) 及びヒト胎児前脳 cDNA
ライブラリー (LexAシステム) を用いて行なった。スク
リーニングは各ライブラリーについて、1 ×106 個以上
のクローンをスクリーニングした。
【0085】その結果、前者のGal4システムのcDNAライ
ブラリーから、既知の APP結合タンパク質であるFe65フ
ァミリー、X11 -like が得られたものの、新規タンパク
質は得られなかった。次に、後者のLexAシステムのcDNA
ライブラリーをスクリーニングした結果、新規 APP結合
タンパク質が得られた。
【0086】2)hard1 の単離 ヒト胎児前脳由来 LexA cDNAライブラリーについて、 A
PPcyt.T668E を baitとしてスクリーニングした。その
結果、多数の陽性クローンが得られた。
【0087】得られた陽性クローンからからランダムに
96クローンを選び DNAシークエンス解析を行なった。そ
の結果、すべて同一の遺伝子であった。かかる遺伝子
は、図1及び図2に示されるように、酵母の ard1 N-te
rminal acetyltransferaseと全体のアミノ酸レベルで 4
0%程度の相同性を示した。かかる遺伝子は、特に、N末
端アセチルトランスフェラーゼドメインでは、相同性が
60%以上であることから、このヒトホモログ分子である
と考え、human ard1 N-terminal acetyltransferase ;
hard1 と命名した。さらに、データベース検索により、
図3に示すように、hard1 は、C. elagans、ショウジョ
ウバエ(Drosophila)、マウスにも存在しており、N末端
アセチルトランスフェラーゼドメインの相同性が非常に
高いことがわかる。一方で、図3に示すように、 C末端
側のホモロジーは生物種間で非常に低いことも示され
た。
【0088】また、残りの陽性クローンについては、ha
rd1 をプローブとして用いたコロニーハイブリダイゼー
ションを行なった結果、すべて hard1であることが判明
した。
【0089】ついで、このクローンと APPcyt.T668E と
の結合特異性を、慣用のβ−ガラクトシダーゼアッセイ
により検討した。その結果、図4に示すように、ベクタ
ーと比較して有意な発色が見られたため、両者の相互作
用は特異的なものであるとことが分かった。
【0090】3)hard1 と APP細胞内ドメインとの相互
作用に対するThr668サイトリン酸化の関与(two-hybrid
法) hard1 と APP細胞内ドメインの相互作用へのAPP Thr668
サイトリン酸化の関与について、two-hybrid法による検
討を行なった。
【0091】hard1 全長cDNAを、preyベクターであるpB
42AD/Trp(+) に組込み、preyプラスミドを得た。つい
で、得られた組換えプラスミドを酵母(EGY48[p8op lac
Z])に導入して、preyプラスミド保持クローンを得た。
【0092】また、 APP細胞内ドメイン APPcyt.野生
型、Thr668サイトを Gluに置換したAPPcyt.T668E、又は
Thr668サイトを Alaに置換したAPPcyt.T668Aを、baitベ
クターである pGilda/His(+)にそれぞれ組込み、baitプ
ラスミドを得た。なお、Thr668を Alaまたは Gluに置換
したDNA については、PCR 法により、アンドウ(Ando,
K.)ら[J. Neurosci 19, 4421-4427, (1999)] と同様に
作製した。得られた各baitプラスミドを、それぞれ前記
preyプラスミド保持クローンに導入し、クローンを得
た。
【0093】各クローンを単離後、ロイシン欠失プレー
ト上で3日間培養し、酵母細胞内におけるhard1 との相
互作用能をロイシン欠失プレート上でのコロニー形成能
により評価した。結果を図5に示す。
【0094】その結果、図5に示すように、APPcyt. 野
生型、T668E 及びT668A のすべてについてコロニー形成
が観察され、T668サイトの変異に伴う結合能の顕著な変
化は見られないことが分かった。
【0095】4)hard1 と APP細胞内ドメインとの相互
作用に対するThr668サイトリン酸化の関与(pull-downア
ッセイ) タンパク質レベルにおける、hard1 と APPとの相互作用
能について、以下に示すように、pull-down アッセイに
より検討した。
【0096】まず、GST 融合タンパク質の作製のため
に、hard1 全長をPCR 法により、pGEX-4T-1(Amersham P
harmacia Biotech社製) にクローニングした。得られた
プラスミドを E. coli BL21 株に導入した。得られた形
質転換体について、10mM IPTGにより GST融合タンパク
質の発現を誘導し、30℃で 4hr培養した。大腸菌を回収
し、1% Triton X-100 と5 μg/mlキモスタチンと5 μg/
mlロイペプチンと5 μg/mlペプスタチンA とを含む PBS
中で超音波破砕した。GST 融合タンパク質を、グルタチ
オン−セファロース4B (Amersham Pharmacia Biotech社
製) に結合し、5mM 還元グルタチオンバッファー [組
成: 5mM グルタチオン、50mM Tris-HCl (pH7.4)] で溶
出、透析し、GST 融合タンパク質を得た。
【0097】また、以下に示すように、FLAGタグを付加
した APP全長 (野生型) 、T668E 変異APP (T668E) 、T6
68A 変異APP (T668A) のそれぞれを過剰発現する形質転
換COS7細胞を作製した。
【0098】まず、ヒトAPP695 cDNA を、pcDNA3(Invi
trogen社製) に連結し、ついで、シグナル配列の下流の
Kpn IサイトにFLAG配列を挿入した。
【0099】Thr668の Alaまたは Gluへの置換を、PCR
法により、アンドウ(Ando, K.)ら[J. Neurosci., 19, 4
421-4427, (1999)] と同様に行なった。
【0100】次に、COS7細胞を、10%熱処理ウシ胎仔
血清(FBS)(Filtron 社製) 含有ダルベッコ改変イーグル
培地(DMEM)(Life Technologies社製) で培養した。つい
で、各構築物のプラスミドDNA を、LipofectAMINE (Lif
e Technologies社製) を用い、COS7細胞に一過性に導入
した。導入から 48 時間後、細胞を10mM CHAPS溶解バッ
ファー [組成:PBS中、10mM CHAPS, 1mM Na3VO4, 1mM Na
F, 5μg/mlキモスタチン, 5 μg/mlロイペプチン, 5 μ
g/mlペプスタチンA を含有する] で可溶化し、遠心分離
して不溶物を除き、細胞抽出液を得た。
【0101】かかる細胞抽出液について、構築物の確認
は、ウエスタンブロット解析により行なった。すなわ
ち、前記細胞抽出液を、それぞれSDS-PAGEにより分離し
た。電気泳動後のゲル上のタンパク質をニトロセルロー
ス膜に転写した。ついで、得られたニトロセルロース膜
と、抗FLAGモノクローナル抗体M2(シグマ社製)とを用
いて、ウエスタンブロットを行ない、125I-Protein A
(アマシャム ファルマシア社製)で検出した。放射活
性の解析を、Fuji BAS Imaging Analyzer 1800 [富士フ
ィルム社製] を用いて行なった。その結果、いずれの構
築物もCOS7細胞で発現することが確認された。以下、前
記細胞抽出液を用いた。
【0102】前記 GST融合タンパク質と各細胞抽出液と
を 4℃で 2時間インキュベートした。ついで、グルタチ
オン−セファロースビーズを用いて、 GST-hard1を回収
した。ついで、ビーズを TBS-T [組成:20mM Tris-HCl
(pH7.5)、150mM NaCl、0.1% Tween-20]で 5度洗浄し
た。洗浄後のビーズに、サンプルバッファー [組成:10%
Glycerol 、3% SDS、0.05mM Tris-HCl (pH 8.0), 1.2m
M EDTA、0.005%ブロムフェノールブルー、4M尿素] を添
加して煮沸し、サンプルを得た。前記サンプルをSDS-PA
GEで分離した。泳動後のゲル上のタンパク質をニトロセ
ルロース膜に転写した。hard1 と結合して pull downさ
れた APPを抗FLAG抗体を用いて、ウエスタンブロットを
行ない、ECL detection kit (Amersham Pharmacia Biot
ech 社製) で検出した。
【0103】その結果、図6に示すように、回収された
APP量は、野生型、T668A 、T668E間で顕著な差異が見
られず、タンパク質レベルにおいても両者の結合への T
668サイトの関与は見られなかった。
【0104】実施例2 APP 結合タンパク質 hard1がAP
P 細胞内代謝へ及ぼす効果の解析 hard1のアルツハイマー病への関与という観点から、APP
の細胞内代謝及び APPからのβアミロイドペプチド生
成への効果について検討を行なった。
【0105】1)hard1 の組織分布 hard1 のヒト及びマウスにおける組織分布、並びにヒト
脳各領域における hard1の発現レベルを、hard1 全長 c
DNA をプローブとしたノーザンブロット法により調べ
た。
【0106】ノーザンブロット解析は、human multiple
tissue Northern blot (カタログ番号#7760-1; CLONT
ECH 社製) 、human brain II MTN Northern blot (カタ
ログ番号#7755-1; CLONTECH 社製) 、mouse multiple t
issue Northern blot(カタログ番号#7762-1; CLONTECH
社製) 、または mouse Embryo MTN Blot (#7763-1; CLO
NTECH 社製) を用いて、モレキュラークローニング ア
ラボラトリーマニュアル第2版 [ザンブルーク(Sambr
ook, J. ) ら、molecular cloning. A Laboratory manu
al, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory
発行 (1989)]に記載の標準的な手法で行なった。
【0107】標識プローブは、 [α-32P]dCTP (2000Ci/
mmol, Amersham pharmacia社製) とランダムオリゴヌク
レオチド (High Prime DNA Labeling Kit, Boehringer
Mannheim社製) とを用いて、hard1 全長 cDNA を標識す
ることにより作製した。
【0108】その結果、図7に示されるように、ヒト各
組織においては、約1.35kbp と2.4kbp の位置に2本の
シグナルが得られた。また、hard1 の発現レベルは、骨
格筋、心臓で高く、腎臓、脾臓で中程度、脳を含むその
他の組織での発現は低いことがわかった。
【0109】また、ヒト脳各領域における hard1の発現
は、図8に示されるように、脳においてもやはり 2本の
シグナルとして観察され、該 hard1の発現は、脳全域に
渡るということがわかった。
【0110】さらに、マウスにおける組織分布は、図9
に示されるように、ヒトの場合とはサイズが若干異なる
ものの、2本のシグナルが観察でき、心臓、肝臓での発
現レベルが高く、脳、腎臓で中程度、その他の組織での
発現レベルは低いことがわかった。
【0111】また、マウス脳各領域における発現分布
は、図10に示されるように、ヒトの場合と同様に全域
にわたることがわかった。
【0112】さらに、発生過程におけるマウス胎児全身
での発現レベルの変化を調べた。その結果、図11に示
すように、hard1 は発生の初期である E11からの発現が
観察された。
【0113】2)APP ファミリー細胞内ドメインと har
d1結合能の検討 APP には同じ遺伝子ファミリーに属する分子として APL
P1、APLP2 が存在する。これらの細胞内ドメインは非常
に類似しており、特にYENPTY、YxxIといったシグナル配
列は完全に保存されている。そこで、hard1 がこれらの
ファミリー分子と相互作用しうるかをtwo-hybrid法によ
り検討した。
【0114】hard1 全長cDNAを、preyベクターであるpB
42AD/Trp(+) に組込み、preyプラスミドを得た。つい
で、得られた組換えプラスミドを酵母(EGY48[p8op lac
Z])に導入して、preyプラスミド保持クローンを得た。
【0115】また、APP 、APLP1 及び、APLP2 遺伝子の
細胞質ドメインを、baitベクターである pGilda/His(+)
にそれぞれ組込み、baitプラスミドを得た。得られた各
baitプラスミドを、それぞれ前記preyプラスミド保持ク
ローンに導入し、クローンを得た。
【0116】各クローンを単離後、ロイシン欠失プレー
ト上で3日間培養し、酵母細胞内におけるhard1 との相
互作用能をロイシン欠失プレート上でのコロニー形成能
により評価した。結果を図12に示す。
【0117】その結果、図12に示されるように、APP
、APLP1 、APLP2 のいずれにおいてもコロニーの形成
が見られ、hard1 はAPP ファミリーの細胞内ドメインす
べてと相互作用することが明らかとなった。
【0118】3)APP 細胞内ドメイン側の hard1結合領
域の決定 hard1 全長cDNAを、preyベクターであるpB42AD/Trp(+)
に組込み、preyプラスミドを得た。ついで、得られた組
換えプラスミドを酵母(EGY48[p8op lacZ])に導入して、
preyプラスミド保持クローンを得た。
【0119】また、APP 細胞内ドメインを C末側又はN
末側から欠失させた、図13に示される各構築物を、ba
itベクターである pGilda/His(+)にそれぞれ組込み、ba
itプラスミドを得た。得られた各baitプラスミドを、そ
れぞれ前記preyプラスミド保持クローンに導入し、クロ
ーンを得た。
【0120】各クローンを単離後、ロイシン欠失プレー
ト上で3日間培養し、酵母細胞内におけるhard1 全長と
の結合能をロイシン欠失プレート上でのコロニー形成能
により評価した。その結果を図13に示す。
【0121】その結果、図13に示されるように、細胞
内ドメインのN 末側19アミノ酸のみ(C19)でも、酵母の
コロニー形成が観察され、該C19 がhard1 との結合能を
有することが示された。さらに、図13に示されるよう
に、この細胞内ドメインのN末側19アミノ酸残基を欠失
させた構築物 (ΔN19)では相互作用が見られないことが
わかった。これらの結果より、hard1 との結合には APP
の細胞内ドメイン19アミノ酸が必須であることが示され
た。
【0122】前記19アミノ酸残基中には、APP の内部移
行シグナル、また、基底外局在化シグナル(basolateral
sorting signal)としての報告があるYxxI配列が存在し
ていた。そこで、重要であることが報告されているTyr6
53を Alaに置換した構築物(Y653A) を作製し、得られた
構築物(Y653A) について、hard1 全長との結合能を、tw
o-hybrid法により解析した。
【0123】また、このYTSI配列の後ろに続く配列もAP
P ファミリーでよく保存されていることから、HGVVEVD
配列を欠失した構築物 (ΔHGVVEVD)についても作製し、
得られた構築物 (ΔHGVVEVD)について、hard1 全長との
結合能を、two-hybrid法により解析した。
【0124】すなわち、構築物(Y653A) 又は構築物 (Δ
HGVVEVD)を、baitベクターである pGilda/His(+)にそれ
ぞれ組込み、baitプラスミドを得た。得られた各baitプ
ラスミドを、それぞれ前記preyプラスミド保持クローン
に導入し、クローンを得た。その結果を図14に示す。
【0125】その結果、図14に示すように、Y653A 構
築物において hard1との結合能は完全に失われていた。
この結果より、hard1 との結合には、Tyr653が必須であ
ることが判明した。さらに、図14に示すように、Δ H
GVVEVD構築物においても hard1との結合が見られなくな
ることから、この領域もまたhard1 と APP細胞内ドメイ
ンの相互作用に必要であると考えられた。
【0126】4)hard1 側のAPP 細胞内ドメイン結合領
域の決定 hard1 側の APP細胞内ドメイン結合領域の決定を行なっ
た。hard1 を C末端側から、それぞれ50アミノ酸残基、
100 アミノ酸残基又は150 アミノ酸残基欠失させた構築
物(ΔC50 、ΔC100及びΔC150) を作製し、APP 細胞内
ドメイン全長との結合能を、two-hybrid法により検討し
た。
【0127】すなわち、APP 細胞内ドメインcDNAを、pr
eyベクターであるpB42AD/Trp(+) に組込み、preyプラス
ミドを得た。ついで、得られた組換えプラスミドを酵母
(EGY48[p8op lacZ])に導入して、preyプラスミド保持ク
ローンを得た。
【0128】また、構築物ΔC50 、ΔC100又はΔC150
を、baitベクターである pGilda/His(+)にそれぞれ組込
み、baitプラスミドを得た。得られた各baitプラスミド
を、それぞれ前記preyプラスミド保持クローンに導入
し、クローンを得た。その結果を図15に示す。
【0129】その結果、図15に示すように、C 末端側
50アミノ酸残基の欠失により APP細胞内ドメインとの結
合能が完全に失われた。この結果より、hard1 の C末端
50アミノ酸残基が APPとの結合には必要であり、N末端
アセチルトランスフェラーゼドメインは APPとの結合に
は関与しないことが明らかとなった。
【0130】5)APP と hard1のタンパク質レベルでの
結合能の検討 APP と hard1が、細胞内で相互作用しうるかどうかを共
役免疫沈降法により検討した。
【0131】ヒトAPP695 cDNA を、pcDNA3(Invitrogen
社製) に連結し、ついで、シグナル配列の下流の Kpn I
サイトにFLAG配列を挿入し、タグとしてシグナルシーク
エンスの後ろに FLAG 配列を挿入した APPを発現するAP
P-FLAG発現プラスミドを得た。また、hard1 cDNAを鋳型
とした PCR法により N末側へ HA 配列を付加し、HA-har
d1 cDNA を得た。ついで、HA-hard1 cDNA を、 pcDNA3
のBamHI 部位及びEcoRI 部位を介してクローン化し、HA
-hard1発現プラスミドを得た。
【0132】LipofectAMINE (Life Technologies社製)
を用いて、前記APP-FLAG発現プラスミドとHA-hard1発現
プラスミドとを、human embryonic kidney 293細胞 (以
下、HEK293細胞と略記) に一過的にコトランスフェクト
した。得られたコトランスフェクタントを10%熱処理
ウシ胎仔血清(FBS)(Filtron 社製) 含有ダルベッコ改変
イーグル培地(DMEM)(Life Technologies社製) で培養し
た。導入から 48 時間後、細胞を10mM CHAPS溶解バッフ
ァー [組成:PBS中、10mM CHAPS, 1mM Na3VO4,1mM NaF,
5μg/mlキモスタチン, 5 μg/mlロイペプチン, 5 μg/m
lペプスタチンA を含有する] で可溶化し、遠心分離し
て不溶物を除き、細胞抽出液を得た。
【0133】得られた細胞抽出液に抗FLAG抗体 (シグマ
社製) 又は抗HA抗体 (ベーリンガーマンハイム社製) を
加えて 2時間 4℃でインキュベートし、共免疫沈降を行
なった。抗体とタンパク質の複合体を、プロテインG−
セファロース (Amersham Pharmacia Biotech) で回収し
た。TBS-T で洗浄後、ビーズにサンプルバッファーを加
えて煮沸し、SDS-PAGEで分離した。タンパク質をニトロ
セルロース膜に転写し、ウエスタンブロットを行なっ
た。検出は ECL detection kitを用いた。その結果を図
16に示す。
【0134】図16のパネル(a)に示されるように、
hard1 側の抗 HA 抗体で免疫沈降したときに、共免疫沈
降されてきた APPを確認することができた。また、図1
6のパネル(b)に示されるように、APP 側の抗体であ
る抗FLAG抗体で免疫沈降したときに共免疫沈降されてき
た hard1を確認することができた。
【0135】これらの結果より、HEK293細胞内におい
て、APP と hard1は相互作用していることが明らかとな
った。
【0136】さらに、APP と hard1が直接結合している
か否かについて検討を行なった。
【0137】APP 細胞内ドメインの配列645-694 からな
るペプチド(APPcyt. 645-694) を合成した (W. M. Keck
Foundation Biotechnology Resource Laboratory, Yal
e University) 。
【0138】ついで、10nMペプチド(APPcyt. 645-694)
を含むTBSTバッファー(0.1% Tween20を含むTris緩衝化
生理的食塩水) 中へ、GST と hard1との融合タンパク質
(20μg)を添加し、4 ℃でインキュベートした。その
後、グルタチオンビーズでGST-hard1 又は GSTを回収し
た。回収されたタンパク質を、SDS-PAGEで分離し、ゲル
上のタンパク質をニトロセルロース膜へ転写した。
【0139】ついで、hard1 とともに pull-downされて
きたペプチド(APPcyt. 645-694) を抗 APP抗体 (UT-42
1) を用いたウエスタンブロット解析により検出した。
結果を図17に示す。
【0140】図17に示すように、GST-hard1 のレーン
において、hard1 とともに pull-downされてきた APP細
胞質ドメインペプチドを確認することができた。以上の
結果より、APP と hard1がタンパク質レベルで直接結合
しうることが明らかとなった。
【0141】6)HEK293細胞内における APPと hard1の
分布 APP と hard1とを発現するHEK293細胞における細胞内分
布を免疫染色法により調べた。
【0142】LipofectAMINE (Life Technologies社製)
を用いて、前記APP-FLAG発現プラスミドとHA-hard1発現
プラスミドとを、human embryonic kidney 293細胞 (以
下、HEK293細胞と略記) に一過的にコトランスフェクト
した。得られたコトランスフェクタントを10%熱処理
ウシ胎仔血清(FBS)(Filtron 社製) 含有ダルベッコ改変
イーグル培地(DMEM)(Life Technologies社製) で培養し
た。
【0143】48時間後、2 ×104 個の細胞を 35mm ガラ
スボトムディッシュ (MatTek, Ashland, MA)に撒いて培
養した。4%パラホルムアルデヒドを含む PBSで、室温10
分間のインキュベーションにより細胞を固定した。その
後、0.2% (v/v) Triton X-100 を含むPBS での 5分間イ
ンキュベーションにより透過処理し、PBS で洗浄したの
ち、1次抗体 (抗HA抗体、抗FLAG抗体) を含む PBSを加
えて4 ℃で一晩インキュベーションした。PBS で洗浄
後、FITC- または TRITC- でラベルされた2次抗体を含
むPBS を加えて室温で 2時間インキュベーションして、
二重免疫染色を行なった。染色後のガラスボトムディッ
シュを、PBS で再洗浄後、共焦点レーザ顕微鏡 (BioRad
MRC-600; BioRad社製) で解析した。その結果を、図1
8に示す。なお、図18は、図面参照用写真として、別
途提出する。
【0144】図18において、赤色は APPの分布、緑色
は hard1の分布を示している。図18に示されるよう
に、APP の発現が細胞体全域に渡るのに対して、hard1
の分布は細胞膜近辺で強く観察された。また、図18の
mergeのパネルに示されるように、両者の共局在は細胞
膜近辺で最も強く観察された。
【0145】7)hard1 の強制発現がAPP の細胞内代謝
へ与える影響 APP は、細胞内代謝過程において小胞体で N型糖鎖修飾
を受け、さらにゴルジにおいて O型糖鎖修飾を受けた
後、細胞膜に到達し、細胞外ドメインは分泌される。N
型糖鎖修飾のみを受けた APPはimmature APP、N 型、O
型糖鎖修飾の両方を受けた APPはmature APPと呼ばれ、
細胞内においてはこの二つの形で観察される。なお、図
18で示した免疫染色の結果は、APP と hard1がゴルジ
以降の細胞膜近辺で特に強く共局在していることを示し
ている。
【0146】このような APPの細胞内代謝に hard1の強
制発現が与える影響をパルスチェイス法により調べた。
【0147】前記APP-FLAG発現プラスミドとHA-hard1発
現プラスミドとを、LipofectAMINEを用いて、HEK293細
胞に一過的にコトランスフェクトした。また、前記APP-
FLAG発現プラスミドと対照としてのベクターとを、同様
にLipofectAMINE を用いて、HEK293細胞に一過的にコト
ランスフェクトした。48時間培養後、各細胞をDMEM wit
hout methionine and glutamine (Life Tech社製) で洗
浄し、10%FBS、0.2 mCi/mlの35S-標識メチオニン(Amers
ham Pharmacia Biotech 社製) を含むDMEM without met
hionine and glutamine を加えて 15 分間培養した。各
細胞の培養物に、過剰量のメチオニン(Life Tech社製)
を添加してラベルを止め、この間に細胞内で合成された
APPを [35S] Metによりラベルした。
【0148】培養液を交換した後、それぞれの時間帯に
細胞、及び培養液を回収し、細胞内mature APP及びimma
ture APP、並びに培養液中に分泌されたsAPPを、抗FLAG
抗体を用いた免疫沈降により回収した。回収されたタン
パク質を電気泳動して展開し、ゲルを乾燥させたのち、
Fuji BAS Imaging Analyzer 1800を用いて、シグナルの
解析を行ない、量的変動を調べた。なお、それぞれのグ
ラフはピークを 1として補正した。その結果を図19及
び図20に示す。
【0149】図19に示すように、細胞内 mature APP
量はベクターを発現させた細胞グループでは、約 1.5時
間でピークを迎え、その後分解を受けて減少していくこ
とがわかった。一方、hard1 を発現させた細胞グループ
では、mature APPの増加速度は対照と比較して差は見ら
れなかったが、ピークに達した後の代謝分解が抑制され
ることがわかった。
【0150】また、図20に示すように、細胞内immatu
re APP量については、 hard1を発現させた細胞グループ
とベクターを発現させた対照グループとの間で、全体の
傾向に大きな差異は見られなかった。しかしながら、2
時間目以降に hard1を発現させたグループで若干の安定
化効果が見られた。なお、1.5 時間目までの急激な減少
は主にmature APPへの変換によるものであると考えら
れ、やはり hard1の強制発現による APPの成熟 (小胞体
からゴルジへの輸送) への影響はほとんど見られないと
考えられる。
【0151】以上の結果より、hard1 の強制発現によ
り、APP 、特に mature APP の細胞内代謝分解が抑制さ
れることが明らかとなった。この結果は、細胞内におけ
る APPと hard1の共局在の様子とよく一致している。
【0152】また、細胞外へ分泌されるsAPPについても
同様に調べた。その結果、図21に示すように、hard1
を発現させた細胞グループでは、対照グループと比較し
て、sAPPの分泌が若干遅れることがわかった。かかる結
果により、hard1 を発現させた細胞グループでは APPの
代謝分解が遅れることが示された。
【0153】8)hard1 の強制発現が APPからのAβ生
成へ及ぼす効果 つぎに、hard1 の強制発現が APPからのAβ生成へ与え
る効果を調べた。Aβには、40アミノ酸からなるAβ40
と、C 末端側にさらに 2アミノ酸長いAβ42の2種類が
存在する。それぞれが生成する細胞内コンパートメント
についていは比較的よく調べられている。Aβ40は主に
トランス−ゴルジ以降の細胞内代謝過程で生成されるこ
とがわかっており、またそのほとんどが細胞外に分泌さ
れることが分かっている。これまでの実験により、hard
1 は、トランスゴルジ以降の細胞内コンパートメントで
APPと共局在していること、またその強制発現は、成熟
APP の代謝分解を抑制することが明らかとなっている。
そこで、hard1 の強制発現が Aβ生成に及ぼす効果につ
いて検討した。
【0154】前記APP-FLAG発現プラスミドとHA-hard1発
現プラスミドとを、LipofectAMINEを用いて、HEK293細
胞に一過的にコトランスフェクトした。また、前記APP-
FLAG発現プラスミドと対照としてのベクターとを、同様
にLipofectAMINE を用いて、HEK293細胞に一過的にコト
ランスフェクトした。
【0155】48時間培養後、培養上清を回収し、サンド
ウィッチELISA 法でAβ濃度を測定した [トミタ(Tomit
a, S.)ら、J. Biol. Chem., 274, 2243-2254 (1999)]。
【0156】ウェルをAβ40 (4D1)またはAβ42 (4D8)
に特異的なモノクローナル抗体でコートした (0.3 μg
of IgG in PBS)。0.05% (w/v) Tween 20含有PBS でウェ
ルを洗浄した後、3%ウシ血清アルブミン含有PBS でブロ
ッキングした。
【0157】洗浄後、培養液またはAβペプチドの希釈
系列をウェルに添加した。洗浄後、ウェルにビオチン化
した2D1 抗体を12.5μg/mLの濃度で加えた。
【0158】なお、2D1 抗体は、ヒトAβに対するモノ
クローナル抗体 2D1であり、α−セクレターゼとβ−セ
クレターゼの切断部位の間にあるヒト特異的FRH (600-6
02)配列を抗原として認識する抗体である [トミタ(Tomi
ta)ら, J. Biol. Chem., 273, 6277-6284 (1998)]。
【0159】洗浄後、ウェルに、ストレプトアビジン−
西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体(1:2000希釈, Amers
ham Pharmacia Biotech社製) を添加した。さらに、洗
浄後、ウェルに、2,2’−アジノ−ビス−3−エチル
ベンゾチアゾリン−6−スルホン酸溶液 [2,2'-azino-b
is-3-ethylbenzothiazoline-6-sulfonic acid solution
(Kirkegaard&Perry Laboratories 製)]を添加して、室
温でインキュベートして発色させ、405nm での吸光度を
測定した。
【0160】その結果、図22のパネル(a)に示すよ
うに、 hard1の存在により、細胞外に分泌されるAβ40
量が 30%程度減少することがわかった。この結果は、ha
rd1と APPが細胞内でトランスゴルジ以降の細胞膜近辺
で共局在するという結果とよく一致している。
【0161】また、細胞外に分泌されるAβ42量につい
ても調べたが、図22のパネル(b)に示すように、有
意な差は見られなかった。
【0162】また、上記の結果をさらに確かめるため
に、安定的に APPを過剰発現する HEK293 細胞株へ har
d1、または対照としてベクター単独をリポフェクトアミ
ン法によりコトランスフェクトし、同様の方法で細胞外
に分泌されるAβ40、Aβ42量を測定した。
【0163】その結果、図23のパネル(a)に示すよ
うに、Aβ40量は、約 20%程度減少することがわかっ
た。一方、図23のパネル(b)に示すように、Aβ42
量は、変化が見られないことがわかった。
【0164】実施例3 hard1 のAPP エンドサイトーシ
スに及ぼす影響 HEK293細胞への遺伝子導入 HEK293細胞はトランスフェクションの前日に0.25% トリ
プシン/1mM EDTA 溶液で処理した後、2 枚の10cm dish
に撒き、5% CO2, 37℃条件下、10% のFCS を加えたD-ME
M 中で培養した。
【0165】HEK293細胞が約70〜80% のconfluencyにな
ったところで 6μg のFLAG-APP/pcDNA3 と 9μg のhard
1/pcDNA3をLipofectAMINE (GIBCO BRL社製) とOPTI-MEM
(GIBCO BRL 社製) を用いて該HEK293細胞にトランスフ
ェクトした。また、同時に対照として、 6μg のFLAG-A
PP/pcDNA3 と 9μg のpcDNA3を用いて、同様の方法で該
HEK293細胞にトランスフェクトした。
【0166】導入後16時間で10% のFCS を加えたD-MEM
に培地交換し、さらに24時間培養した。ついで、0.25%
トリプシン/1mM EDTA 溶液でそれぞれのdishを処理し、
各9枚の10cm dish に分けてさらに24時間培養した。
【0167】 エンドサイトーシスアッセイ で遺伝子を導入したHEK293細胞の10cm dish をそれぞ
れ6 枚ずつ氷上で冷やしながら氷冷したPBS-CM (1mM Mg
Cl2, 1mM CaCl2含有PBS)で3 回洗浄した。その後、氷上
に置いた状態で3mL の0.5mg/mlのNHS-SS-Biotin (PIERC
E)含有PBS-CMを用いて細胞表面のAPP をラベルした。30
分後、50mMグリシン/PBS-CM を3 分間インキュベートし
て反応を終了させた。
【0168】PBS-CMで2 回細胞を洗浄した。その後、ラ
ベルの程度を見るための1 枚のdish、エンドサイトーシ
スさせない(t = 0 )1 枚のdishを除き、残り4 枚のdi
shに、37℃に暖めて置いた10% FCS/D-MEM を添加し、5%
CO2, 37℃の条件下に置いて細胞のエンドサイトーシス
を誘導した。その後、それぞれ5 分(t = 5 )、10分
(t = 10)、20分(t = 20)、40分(t = 40)後にdish
を取り出して氷上でエンドサイトーシスを停止させた。
【0169】ラベルの程度を見るための1 枚以外はエン
ドサイトーシスを停止させた後、すぐに切断溶液 [組
成:50mM MESNA, 100mM NaCl, 25mM CaCl2, 50mM Tris-H
Cl(pH8.7)]を20分×2 回処理して、エンドサイトーシス
されなかったAPP 上のビオチンを切断した。処理後、5m
g/mlのヨードアセトアミド/PBS-CM で切断溶液の反応を
終了させた。その後、PBS-CMで3 回細胞を洗浄した。つ
いで、RIPAバッファーで細胞を可溶化し、4 ℃で1 時間
インキュベートした。その後、15,000r.p.m.で遠心分離
して細胞抽出液を回収した。
【0170】 ビオチン化APP の検出 それぞれの細胞抽出液800 μl に、5 μl の抗FLAG M2
抗体(SIGMA社製) を添加し、4 ℃で1 時間インキュベー
トした。その後、得られた混合物に、50μl の25% プロ
テインG セファロースのレジンを添加して4 ℃で1 時間
インキュベートした。ついで、得られた混合物を、800
μl のWBI(1M NaCl, 20mM Tris-Cl pH7.4 (25℃), 0.1
% Triton X-100) で洗浄し、2,000r.p.m. で5 分間遠心
分離して、レジンを回収した。
【0171】ついで、回収したレジンを、800 μl のWB
II(150mM NaCl, 5mM EDTA, 50mM Tris-HCl pH7.4 (25
℃), 1% Triton X-100, 0.05% SDS)で洗浄した。さら
に、2,000r.p.m. で5 分間遠心分離して、レジンを回収
した。さらに、800 μl のRB(-)(150mM NaCl, 1mM EDT
A, 10mM Tris-HCl pH7.4 (25℃), 0.1% Triton X-100)
で洗浄し、12,000r.p.m.で2 分間遠心分離して、レジン
を回収した。
【0172】回収されたレジンに、35μl の×5 sample
buffer [48%グリセロール, 18% SDS, 0.25M Tris-HCl
pH6.8 (25 ℃), 6mM EDTA pH8.0, 0.25g/L BPB] と35μ
l の8M尿素とを添加した。得られた混合物を5 分間煮沸
し、12,000r.p.m.で2 分間遠心分離して、上清を回収し
た。得られた上清20μl を7.5% ポリアクリルアミドゲ
ルで電気泳動して、タンパク質を分離した。
【0173】ついで、ゲル上のタンパク質をニトロセル
ロース膜に転写した。転写した膜を5%スキムミルク溶液
で1 時間インキュベートしてブロッキングした後、TBST
[組成: 137mM NaCl, 20mM Tris-HCl pH7.6 (25 ℃),
0.1% Tween20]で5 分間、2 回洗浄した。その後、スト
レプトアビジン−ビオチン化HRP 複合体(Amersham Phar
macia Biotech 社製) の1000倍希釈物を膜に接触させ
て、室温2 時間インキュベートして、ビオチン化された
APP に結合させた。反応終了後、15分間×1 回, 5分間
×3 回TBSTで洗浄し過剰の前記複合体を除去した。
【0174】その後、ECL western blotting detection
reagents (Amersham Pharmacia Biotech 社製) でビオ
チン化されたAPP を検出した。バンドの定量はImage Ga
uge(富士写真フィルム社製) を用い、膜表面の全APP 量
に対するエンドサイトーシスされたAPP 量をパーセンテ
ージで表した。結果を図24に示す。
【0175】図24に示すように、エンドサイトーシス
を誘導してから5 分後の時点でのAPP のエンドサイトー
シス量は、hard1 を共発現させた細胞において、APP の
みを発現させた細胞と比べて、有意に減少することがわ
かった(p<0.005, n=3) 。Aβ1-40が、APP のエンドサ
イトーシス後に切り出されるというこれまでの定説を考
慮に入れると、今回示されたhard1 のAPP エンドサイト
ーシスに対する効果は、hard1 のAβ1-40産生抑制効果
を説明するものであると考えられる。
【0176】また、HEK293細胞にhard1 とAPP とを共に
一過的にトランスフェクトした場合、APP のみをトラン
スフェクトした場合と比べて、APP のエンドサイトーシ
スが有意に減少することがわかった。
【0177】配列表フリーテキスト 配列番号:10は、T668A APP 変異体の配列である。
【0178】配列番号:11は、T668E APP 変異体の配
列である。
【0179】配列番号:14は、C33 APP 変異体の配列
である。
【0180】配列番号:15は、C19 APP 変異体の配列
である。
【0181】配列番号:16は、ΔN19 APP 変異体の配
列である。
【0182】配列番号:17は、Y653A APP 変異体の配
列である。
【0183】配列番号:18は、ΔHGVVEVD APP 変異体
の配列である。
【0184】
【発明の効果】本発明の核酸によれば、該核酸によりコ
ードされたポリペプチドを発現させ、APP の代謝分解を
阻害することができ、APP のエンドサイトーシスを抑制
することができるという優れた効果を奏する。また、本
発明の核酸によれば、アルツハイマー病の発症の予防ま
たは症状の治療効果が期待できる。また、本発明の組換
えDNA又は細胞導入用担体によれば、細胞への導入が
容易になり、かつAPP の代謝分解の阻害能及びAPP のエ
ンドサイトーシスの抑制能を得ることができるという優
れた効果を奏する。さらに、本発明のアルツハイマー病
の発症又は症状を抑制しうる物質のスクリーニング方法
によれば、アルツハイマー病において顕著に見られる老
人斑の主要構成成分であるAβの生成を阻害しうる物質
を選抜することができる。また、本発明のアルツハイマ
ー病の治療剤によれば、Aβの生成の阻害に基づき、ア
ルツハイマー病の発症の予防または症状の治療効果が期
待できる。
【0185】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Toshiharu, Suzuki <110> Sumitomo Pharmaceuticals Co., Ltd. <120> Inhibitor for metabolic degradation of amyloid precursor protein <130> SP-13-004 <160> 18 <170> PatentIn Ver. 2.1 <210> 1 <211> 708 <212> DNA <213> Homo sapiens <220> <221> CDS <222> (1)..(705) <400> 1 atg aac atc cgc aat gcg agg cca gag gac cta atg aac atg cag cac 48 Met Asn Ile Arg Asn Ala Arg Pro Glu Asp Leu Met Asn Met Gln His 1 5 10 15 tgc aac ctc ctc tgc ctg ccc gag aac tac cag atg aaa tac tac ttc 96 Cys Asn Leu Leu Cys Leu Pro Glu Asn Tyr Gln Met Lys Tyr Tyr Phe 20 25 30 tac cat ggc ctt tcc tgg ccc cag ctc tct tac att gct gag gac gag 144 Tyr His Gly Leu Ser Trp Pro Gln Leu Ser Tyr Ile Ala Glu Asp Glu 35 40 45 aat ggg aag att gtg ggg tat gtc ctg gcc aaa atg gaa gag gac cca 192 Asn Gly Lys Ile Val Gly Tyr Val Leu Ala Lys Met Glu Glu Asp Pro 50 55 60 gat gat gtg ccc cat gga cat atc acc tca ttg gct gtg aag cgt tcc 240 Asp Asp Val Pro His Gly His Ile Thr Ser Leu Ala Val Lys Arg Ser 65 70 75 80 cac cgg cgc ctc ggt ctg gct cag aaa ctg atg gac cag gcc tct cga 288 His Arg Arg Leu Gly Leu Ala Gln Lys Leu Met Asp Gln Ala Ser Arg 85 90 95 gcc atg ata gag aac ttc aat gcc aaa tat gtc tcc ctg cat gtc agg 336 Ala Met Ile Glu Asn Phe Asn Ala Lys Tyr Val Ser Leu His Val Arg 100 105 110 aag agt aac cgg gcc gcc ctg cac ctc tat tcc aac acc ctc aac ttt 384 Lys Ser Asn Arg Ala Ala Leu His Leu Tyr Ser Asn Thr Leu Asn Phe 115 120 125 cag atc agt gaa gtg gag ccc aaa tac tat gca gat ggg gag gac gcc 432 Gln Ile Ser Glu Val Glu Pro Lys Tyr Tyr Ala Asp Gly Glu Asp Ala 130 135 140 tat gcc atg aag cgg gac ctc act cag atg gcc gac gag ctg agg cgg 480 Tyr Ala Met Lys Arg Asp Leu Thr Gln Met Ala Asp Glu Leu Arg Arg 145 150 155 160 cac ctg gag ctg aaa gag aag ggc agg cac gtg gtg ctg ggt gcc atc 528 His Leu Glu Leu Lys Glu Lys Gly Arg His Val Val Leu Gly Ala Ile 165 170 175 gag aac aag gtg gag agc aaa ggc aat tca cct ccg agc tca gga gag 576 Glu Asn Lys Val Glu Ser Lys Gly Asn Ser Pro Pro Ser Ser Gly Glu 180 185 190 gcc tgt cgc gag gag aag ggc ctg gct gcc gag gat agt ggt ggg gac 624 Ala Cys Arg Glu Glu Lys Gly Leu Ala Ala Glu Asp Ser Gly Gly Asp 195 200 205 agc aag gac ctc agc gag gtc agc gag acc aca gag agc aca gat gtc 672 Ser Lys Asp Leu Ser Glu Val Ser Glu Thr Thr Glu Ser Thr Asp Val 210 215 220 aag gac agc tca gag gcc tcc gac tca gcc tcc tag 708 Lys Asp Ser Ser Glu Ala Ser Asp Ser Ala Ser 225 230 235
【0186】 <210> 2 <211> 235 <212> PRT <213> Homo sapiens <400> 2 Met Asn Ile Arg Asn Ala Arg Pro Glu Asp Leu Met Asn Met Gln His 1 5 10 15 Cys Asn Leu Leu Cys Leu Pro Glu Asn Tyr Gln Met Lys Tyr Tyr Phe 20 25 30 Tyr His Gly Leu Ser Trp Pro Gln Leu Ser Tyr Ile Ala Glu Asp Glu 35 40 45 Asn Gly Lys Ile Val Gly Tyr Val Leu Ala Lys Met Glu Glu Asp Pro 50 55 60 Asp Asp Val Pro His Gly His Ile Thr Ser Leu Ala Val Lys Arg Ser 65 70 75 80 His Arg Arg Leu Gly Leu Ala Gln Lys Leu Met Asp Gln Ala Ser Arg 85 90 95 Ala Met Ile Glu Asn Phe Asn Ala Lys Tyr Val Ser Leu His Val Arg 100 105 110 Lys Ser Asn Arg Ala Ala Leu His Leu Tyr Ser Asn Thr Leu Asn Phe 115 120 125 Gln Ile Ser Glu Val Glu Pro Lys Tyr Tyr Ala Asp Gly Glu Asp Ala 130 135 140 Tyr Ala Met Lys Arg Asp Leu Thr Gln Met Ala Asp Glu Leu Arg Arg 145 150 155 160 His Leu Glu Leu Lys Glu Lys Gly Arg His Val Val Leu Gly Ala Ile 165 170 175 Glu Asn Lys Val Glu Ser Lys Gly Asn Ser Pro Pro Ser Ser Gly Glu 180 185 190 Ala Cys Arg Glu Glu Lys Gly Leu Ala Ala Glu Asp Ser Gly Gly Asp 195 200 205 Ser Lys Asp Leu Ser Glu Val Ser Glu Thr Thr Glu Ser Thr Asp Val 210 215 220 Lys Asp Ser Ser Glu Ala Ser Asp Ser Ala Ser 225 230 235
【0187】 <210> 3 <211> 238 <212> PRT <213> Saccharomyces cerevisiae <400> 3 Met Pro Ile Asn Ile Arg Arg Ala Thr Ile Asn Asp Ile Ile Cys Met 1 5 10 15 Gln Asn Ala Asn Leu His Asn Leu Pro Glu Asn Tyr Met Met Lys Tyr 20 25 30 Tyr Met Tyr His Ile Leu Ser Trp Pro Glu Ala Ser Phe Val Ala Thr 35 40 45 Thr Thr Thr Leu Asp Cys Glu Asp Ser Asp Glu Gln Asp Glu Asn Asp 50 55 60 Lys Leu Glu Leu Thr Leu Asp Gly Thr Asn Asp Gly Arg Thr Ile Lys 65 70 75 80 Leu Asp Pro Thr Tyr Leu Ala Pro Gly Glu Lys Leu Val Gly Tyr Val 85 90 95 Leu Val Lys Met Asn Asp Asp Pro Asp Gln Gln Asn Glu Pro Pro Asn 100 105 110 Gly His Ile Thr Ser Leu Ser Val Met Arg Thr Tyr Arg Arg Met Gly 115 120 125 Ile Ala Glu Asn Leu Met Arg Gln Ala Leu Phe Ala Leu Arg Glu Val 130 135 140 His Gln Ala Glu Tyr Val Ser Leu His Val Arg Gln Ser Asn Arg Ala 145 150 155 160 Ala Leu His Leu Tyr Arg Asp Thr Leu Ala Phe Glu Val Leu Ser Ile 165 170 175 Glu Lys Ser Tyr Tyr Gln Asp Gly Glu Asp Ala Tyr Ala Met Lys Lys 180 185 190 Val Leu Lys Leu Glu Glu Leu Gln Ile Ser Asn Phe Thr His Arg Arg 195 200 205 Leu Lys Glu Asn Glu Glu Lys Leu Glu Asp Asp Leu Glu Ser Asp Leu 210 215 220 Leu Glu Asp Ile Ile Lys Gln Gly Val Asn Asp Ile Ile Val 225 230 235
【0188】 <210> 4 <211> 176 <212> PRT <213> Saccharomyces cerevisiae <400> 4 Met Glu Ile Val Tyr Lys Pro Leu Asp Ile Arg Asn Glu Glu Gln Phe 1 5 10 15 Ala Ser Ile Lys Lys Leu Ile Asp Ala Asp Leu Ser Glu Pro Tyr Ser 20 25 30 Ile Tyr Val Tyr Arg Tyr Phe Leu Asn Gln Trp Pro Glu Leu Thr Tyr 35 40 45 Ile Ala Val Asp Asn Lys Ser Gly Thr Pro Asn Ile Pro Ile Gly Cys 50 55 60 Ile Val Cys Lys Met Asp Pro His Arg Asn Val Arg Leu Arg Gly Tyr 65 70 75 80 Ile Gly Met Leu Ala Val Glu Ser Thr Tyr Arg Gly His Gly Ile Ala 85 90 95 Lys Lys Leu Val Glu Ile Ala Ile Asp Lys Met Gln Arg Glu His Cys 100 105 110 Asp Glu Ile Met Leu Glu Thr Glu Val Glu Asn Ser Ala Ala Leu Asn 115 120 125 Leu Tyr Glu Gly Met Gly Phe Ile Arg Met Lys Arg Met Phe Arg Tyr 130 135 140 Tyr Leu Asn Glu Gly Asp Ala Phe Lys Leu Ile Leu Pro Leu Thr Glu 145 150 155 160 Lys Ser Cys Thr Arg Ser Thr Phe Leu Met His Gly Arg Leu Ala Thr 165 170 175
【0189】 <210> 5 <211> 161 <212> PRT <213> Escherichia coli <400> 5 Met Asn Thr Ile Ser Ser Leu Glu Thr Thr Asp Leu Pro Ala Ala Tyr 1 5 10 15 His Ile Glu Gln Arg Ala His Ala Phe Pro Trp Ser Glu Lys Thr Phe 20 25 30 Ala Ser Asn Gln Gly Glu Arg Tyr Leu Asn Phe Gln Leu Thr Gln Asn 35 40 45 Gly Lys Met Ala Ala Phe Ala Ile Thr Gln Val Val Leu Asp Glu Ala 50 55 60 Thr Leu Phe Asn Ile Ala Val Asp Pro Asp Tyr Gln Arg Gln Gly Leu 65 70 75 80 Gly Arg Ala Leu Leu Glu His Leu Ile Asp Glu Leu Glu Lys Arg Gly 85 90 95 Val Ala Thr Leu Trp Leu Glu Val Arg Ala Ser Asn Ala Ala Ala Ile 100 105 110 Ala Leu Tyr Glu Ser Leu Gly Phe Asn Glu Ala Thr Ile Arg Arg Asn 115 120 125 Tyr Tyr Pro Thr Thr Asp Gly Arg Glu Asp Ala Ile Ile Met Arg Cys 130 135 140 Gln Ser Val Cys Asn Thr Arg Trp Asn Asn Glu Val Gly Leu Asp Phe 145 150 155 160 Leu
【0190】 <210> 6 <211> 235 <212> PRT <213> Mouse <400> 6 Met Asn Ile Arg Asn Ala Arg Pro Glu Asp Leu Met Asn Met Gln His 1 5 10 15 Cys Asn Leu Leu Cys Leu Pro Glu Asn Tyr Gln Met Lys Tyr Tyr Phe 20 25 30 Tyr His Gly Leu Ser Trp Pro Gln Leu Ser Tyr Ile Ala Glu Asp Glu 35 40 45 Asn Gly Lys Ile Val Gly Tyr Val Leu Ala Lys Met Glu Glu Asp Pro 50 55 60 Asp Asp Val Pro His Gly His Ile Thr Ser Leu Ala Val Lys Arg Ser 65 70 75 80 His Arg Arg Leu Gly Leu Ala Gln Lys Leu Met Asp Gln Ala Ser Arg 85 90 95 Ala Met Ile Glu Asn Phe Asn Ala Lys Tyr Val Ser Leu His Val Arg 100 105 110 Lys Ser Asn Arg Ala Ala Leu His Leu Tyr Ser Asn Thr Leu Asn Phe 115 120 125 Gln Ile Ser Glu Val Glu Pro Lys Tyr Tyr Ala Asp Gly Glu Asp Ala 130 135 140 Tyr Ala Met Lys Arg Asp Leu Thr Gln Met Ala Asp Glu Leu Arg Arg 145 150 155 160 His Leu Glu Leu Lys Glu Lys Gly Lys His Met Val Leu Ala Ala Leu 165 170 175 Glu Asn Lys Ala Glu Asn Lys Gly Asn Val Leu Leu Ser Ser Gly Glu 180 185 190 Ala Cys Arg Glu Glu Lys Gly Leu Ala Ala Glu Asp Ser Gly Gly Asp 195 200 205 Ser Lys Asp Leu Ser Glu Val Ser Glu Thr Thr Glu Ser Thr Asp Val 210 215 220 Lys Asp Ser Ser Glu Ala Ser Asp Ser Ala Ser 225 230 235
【0191】 <210> 7 <211> 196 <212> PRT <213> Drosophila melanogaster <400> 7 Met Asn Ile Arg Cys Ala Lys Pro Glu Asp Leu Met Thr Met Gln His 1 5 10 15 Cys Asn Leu Leu Cys Leu Pro Glu Asn Tyr Gln Met Lys Tyr Tyr Phe 20 25 30 Tyr His Gly Leu Thr Trp Pro Gln Leu Ser Tyr Val Ala Val Asp Asp 35 40 45 Lys Gly Ala Ile Val Gly Tyr Val Leu Ala Lys Met Glu Glu Pro Glu 50 55 60 Pro Asn Glu Glu Ser Arg His Gly His Ile Thr Ser Leu Ala Val Lys 65 70 75 80 Arg Ser Tyr Arg Arg Leu Gly Leu Ala Gln Lys Leu Met Asn Gln Ala 85 90 95 Ser Gln Ala Met Val Glu Cys Phe Asn Ala Gln Tyr Val Ser Leu His 100 105 110 Val Arg Lys Ser Asn Arg Ala Ala Leu Asn Leu Tyr Thr Asn Ala Leu 115 120 125 Lys Phe Lys Ile Ile Glu Val Glu Pro Lys Tyr Tyr Ala Asp Gly Glu 130 135 140 Asp Ala Tyr Ala Met Arg Arg Asp Leu Ser Glu Phe Ala Asp Glu Asp 145 150 155 160 Gln Ala Lys Ala Ala Lys Gln Ser Gly Glu Glu Glu Glu Lys Ala Val 165 170 175 His Arg Ser Gly Gly His Gly His Ser His Asn His Ser Gly His Asp 180 185 190 Gly His Cys Cys 195
【0192】 <210> 8 <211> 182 <212> PRT <213> Caenorhabditis elegans <400> 8 Met Asn Ile Arg Cys Ala Arg Val Asp Asp Leu Met Ser Met Gln Asn 1 5 10 15 Ala Asn Leu Met Cys Leu Pro Glu Asn Tyr Gln Met Lys Tyr Tyr Phe 20 25 30 Tyr His Ala Leu Ser Trp Pro Gln Leu Ser Tyr Ile Ala Glu Asp His 35 40 45 Lys Gly Asn Val Val Gly Tyr Val Leu Ala Lys Met Glu Glu Asp Pro 50 55 60 Gly Glu Glu Pro His Gly His Ile Thr Ser Leu Ala Val Lys Arg Ser 65 70 75 80 Tyr Arg Arg Leu Gly Leu Ala Asn Lys Met Met Asp Gln Thr Ala Arg 85 90 95 Ala Met Val Glu Thr Tyr Asn Ala Lys Tyr Val Ser Leu His Val Arg 100 105 110 Val Ser Asn Arg Ala Ala Leu Asn Leu Tyr Lys Asn Thr Leu Lys Phe 115 120 125 Glu Ile Val Asp Thr Glu Pro Lys Tyr Tyr Ala Asp Gly Glu Asp Ala 130 135 140 Tyr Ala Met Arg Arg Asp Leu Ala Lys Trp Ala Glu Glu Arg Asn Ile 145 150 155 160 Glu Pro Ala Asp Arg Glu Ala Tyr Thr Thr Ala Lys Thr Thr Asp Asp 165 170 175 Lys Lys Lys Asn Arg Ser 180
【0193】 <210> 9 <211> 47 <212> PRT <213> Homo sapiens <400> 9 Lys Lys Lys Gln Tyr Thr Ser Ile His His Gly Val Val Glu Val Asp 1 5 10 15 Ala Ala Val Thr Pro Glu Glu Arg His Leu Ser Lys Met Gln Gln Asn 20 25 30 Gly Tyr Glu Asn Pro Thr Tyr Lys Phe Phe Glu Gln Met Gln Asn 35 40 45
【0194】 <210> 10 <211> 47 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: a sequence for T668A APP varia nt. <400> 10 Lys Lys Lys Gln Tyr Thr Ser Ile His His Gly Val Val Glu Val Asp 1 5 10 15 Ala Ala Val Ala Pro Glu Glu Arg His Leu Ser Lys Met Gln Gln Asn 20 25 30 Gly Tyr Glu Asn Pro Thr Tyr Lys Phe Phe Glu Gln Met Gln Asn 35 40 45
【0195】 <210> 11 <211> 47 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:a sequence for T668E APP varian t. <400> 11 Lys Lys Lys Gln Tyr Thr Ser Ile His His Gly Val Val Glu Val Asp 1 5 10 15 Ala Ala Val Glu Pro Glu Glu Arg His Leu Ser Lys Met Gln Gln Asn 20 25 30 Gly Tyr Glu Asn Pro Thr Tyr Lys Phe Phe Glu Gln Met Gln Asn 35 40 45
【0196】 <210> 12 <211> 47 <212> PRT <213> Homo sapiens <400> 12 Arg Lys Arg Gln Tyr Gly Thr Ile Ser His Gly Ile Val Glu Val Asp 1 5 10 15 Pro Met Leu Thr Pro Glu Glu Arg His Leu Asn Lys Met Gln Asn His 20 25 30 Gly Tyr Glu Asn Pro Thr Tyr Lys Tyr Leu Glu Gln Met Gln Ile 35 40 45
【0197】 <210> 13 <211> 46 <212> PRT <213> Homo sapiens <400> 13 Arg Lys Lys Pro Tyr Gly Ala Ile Ser His Gly Val Val Glu Val Asp 1 5 10 15 Pro Met Leu Thr Leu Glu Glu Gln Gln Leu Arg Glu Leu Gln Arg His 20 25 30 Gly Tyr Glu Asn Pro Thr Tyr Arg Phe Leu Glu Glu Arg Pro 35 40 45
【0198】 <210> 14 <211> 33 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: a sequence for C33 APP variant . <400> 14 Lys Lys Lys Gln Tyr Thr Ser Ile His His Gly Val Val Glu Val Asp 1 5 10 15 Ala Ala Val Thr Pro Glu Glu Arg His Leu Ser Lys Met Gln Gln Asn 20 25 30 Gly
【0199】 <210> 15 <211> 19 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: a sequence for C19 APP variant . <400> 15 Lys Lys Lys Gln Tyr Thr Ser Ile His His Gly Val Val Glu Val Asp 1 5 10 15 Ala Ala Val
【0200】 <210> 16 <211> 28 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: a sequence for delta N19 variant. <400> 16 Thr Pro Glu Glu Arg His Leu Ser Lys Met Gln Gln Asn Gly Tyr Glu 1 5 10 15 Asn Pro Thr Tyr Lys Phe Phe Glu Gln Met Gln Asn 20 25
【0201】 <210> 17 <211> 47 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: a sequence for Y653A APP varia nt. <400> 17 Lys Lys Lys Gln Ala Thr Ser Ile His His Gly Val Val Glu Val Asp 1 5 10 15 Ala Ala Val Thr Pro Glu Glu Arg His Leu Ser Lys Met Gln Gln Asn 20 25 30 Gly Tyr Glu Asn Pro Thr Tyr Lys Phe Phe Glu Gln Met Gln Asn 35 40 45
【0202】 <210> 18 <211> 40 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: a sequence for delta HGVVEVD A PP variant. <400> 18 Lys Lys Lys Gln Tyr Thr Ser Ile His Ala Ala Val Thr Pro Glu Glu 1 5 10 15 Arg His Leu Ser Lys Met Gln Gln Asn Gly Tyr Glu Asn Pro Thr Tyr 20 25 30 Lys Phe Phe Glu Gln Met Gln Asn 35 40
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、hard1 の構造を示す図である。hard1
は酵母 ard1 N−アセチルトランスフェラーゼと全体の
アミノ酸レベルで約40% の相同性を示す。特に、N-アセ
チルトランスフェラーゼドメインのホモロジーは 60%以
上である。
【図2】図2は、hard1 (配列番号:2)と酵母ard1
(配列番号:3)と、酵母MAK3(配列番号:4)と、大
腸菌(E.coli) RimI (配列番号:5)とのアミノ酸配列
の比較を示す図である。網かけで囲まれたN末端アセチ
ルトランスフェラーゼドメインにおける相同性が高い。
【図3】図3は、ヒト由来ard1、マウス由来ard1(配列
番号:6)、ショウジョウバエ由来ard1(配列番号:
7)、C. elegans由来ard1(配列番号:8)及び酵母由
来ard1のアミノ酸配列の比較を示す図である。網かけで
囲まれたN末端アセチルトランスフェラーゼドメインに
おける相同性は高いが、C 末端側のホモロジーは著しく
低い。
【図4】図4は、hard1 とAPPcyt.T668Eとの結合特異性
を示す図である。hard1 とAPP細胞内ドメインT668E(図
中、APPcyt.T668E) との結合特異性を、β−ガラクトシ
ダーゼアッセイで検討した。
【図5】図5は、hard1 と APP細胞内ドメインとの結合
における Thr668 サイトリン酸化の関与をtwo-hybrid法
により調べた結果を示す図である。上部パネルは、APP
細胞内ドメイン及び各変異体それぞれのアミノ酸配列を
示す。下部パネルは、two-hybrid法の結果を示す。図
中、APPcyt.full は、APP 細胞内ドメイン全長(配列番
号:9)を示し、T668A は、APP 細胞内ドメインのThr6
68サイトを、アラニンに置換した変異体(配列番号:1
0)を示し、T668E はAPP 細胞内ドメインのThr668サイ
トを、グルタミン酸に置換した変異体(配列番号:1
1)を示す。
【図6】図6は、hard1 と APP細胞内ドメインの結合へ
の Thr668 サイトリン酸化の関与を pull-down法により
調べた結果を示す図である。図中、FLAG-APP野生型は、
FLAG配列を有するAPP 細胞内ドメインを示す。また、FL
AG-APP T668Eは、Thr668サイトをルタミン酸に置換した
変異体を示し、FLAG-APP T668Aは、Thr668サイトをアラ
ニンに置換した変異体を示す。GST-hard1 は、グルタチ
オン-S- トランスフェラーゼ融合hard1 を示す。
【図7】図7は、ヒト各組織における hard1の発現様式
を示す図である。対照として、ヒトβ−アクチンを用い
てブロットを行なった。
【図8】図8は、ヒト脳各領域におけるhard1 の発現様
式を示す図である。対照として、ヒトβ−アクチンを用
いてブロットを行なった。
【図9】図9は、マウス各組織における hard1の発現様
式を示す図である。対照として、ヒトβ−アクチンでブ
ロットを行なった。
【図10】図10は、マウス脳各領域における hard1の
発現様式を示す図である。対照として、ヒトβ−アクチ
ンでブロットを行なった。
【図11】図11は、発生過程のマウス胎仔全身におけ
る hard1の発現様式を示す図である。対照として、ヒト
β−アクチンでブロットを行なった。
【図12】図12は、APP ファミリーの細胞内ドメイン
と hard1との結合能をtwo-hybrid法により検討した結果
を示す図である。APP ファミリー〔図中、APPcyt.full
、APLP2cyt. full(配列番号:12)、APLP1cyt.full
(配列番号:13)〕の各細胞内ドメインと hard1全
長との結合能を調べた結果を示す。上部パネルは、アミ
ノ酸配列を示し、下部パネルは、two-hybrid法の結果を
示す。
【図13】図13は、APP 細胞内ドメインのhard1 結合
領域を検討した結果を示す図である。上部パネルは、ア
ミノ酸配列を示し、下部パネルは、two-hybrid法の結果
を示す。図中、APPcyt.full は、 APP細胞内ドメイン全
長を示し、C33 は、N 末端側から33アミノ酸残基からな
る欠失構築物(配列番号:14)を示し、C19 は、N 末
端側から19アミノ酸残基からなる欠失構築物(配列番
号:15)を示し、ΔN19 は、N 末端側から19アミノ酸
残基を欠失した欠失構築物(配列番号:16)を示す。
【図14】図14は、APP 細胞内ドメインのhard1 結合
領域を検討した結果を示す図である。上部パネルは、ア
ミノ酸配列を示し、下部パネルは、two-hybrid法の結果
を示す。図中、APPcyt.full は、APP 細胞内ドメイン全
長を示し、Y653A は、Tyr653をアラニンに置換した変異
体(配列番号:17)を示し、ΔHGVVEVD は、APP細胞
内ドメインにおけるHGVVEVD 配列を欠失した変異体(配
列番号:18)を示し、T668A は、Thr668サイトをアラ
ニンに置換した変異体を示し、T668E は、Thr668サイト
をルタミン酸に置換した変異体を示す。
【図15】図15は、hard1 の APP細胞内ドメイン結合
領域を検討した結果を示す図である。上部パネルは、ha
rd1 全長及び各欠失変異体の模式図を示し、下部パネル
は、two-hybrid法の結果を示す。図中、ΔC50 、ΔC100
及びΔC150は、C 末端側から、それぞれ50アミノ酸残
基、100 アミノ酸残基及び150 アミノ酸残基を欠失した
変異体を示す。また、網かけ箇所は、N−末端アセチル
トランスフェラーゼドメインを示し、この領域は APPへ
の結合には関与しない。
【図16】図16は、培養細胞内における APPと hard1
との結合能を検討した結果を示す図である。HEK293細胞
へ、パネル上に示した組み合わせで FLAG-APP 、HA-har
d1をリポフェクタミン法でトランスフェクトし、48時間
培養後、10mM CHAPSバッファーで可溶化して共役免疫沈
降を行なった。パネル(a)は、抗FLAG抗体を用い、ha
rd1 とともに共免疫沈降された APPを調べた結果を示
し、パネル(b)は、抗HA抗体を用い、APP とともに共
免疫沈降された hard1を調べた結果を示す。
【図17】図17は、APP 細胞内ドメインと hard1との
結合について検討した結果を示す図である。図中、APPc
yt. 645-694 は、APP 細胞内ドメインの配列645-694 か
らなるペプチドを示す。また、GST-hard1 は、グルタチ
オン-S- トランスフェラーゼ融合hard1 を示す。
【図18】図18は、HEK293細胞における APP、hard1
の細胞内分布を示す図である。APP は赤色で、hard1 は
緑色で観察される。また、両者の共局在は黄色で観察さ
れる。図中のスケールバーは25μmである。
【図19】図19は、HEK293細胞における hard1の強制
発現による成熟APP の細胞内代謝に及ぼす効果を示す図
である。白丸は対照としてのベクターを、黒丸は hard1
をトランスフェクトした時の細胞内成熟APP の量的変動
を示す。なお、グラフはピークを1として補正してあ
る。(n=2)
【図20】図20は、HEK293細胞における hard1の強制
発現による未成熟APP の細胞内代謝に及ぼす効果を示す
図である。白丸は対照としてのベクターを、黒丸は har
d1をトランスフェクトした時の細胞内未成熟APP の量的
変動を示す。なお、グラフはピークを 1として補正して
ある。(n=2)
【図21】図21は、HEK293細胞における hard1の強制
発現による培養液中への sAPP 分泌に及ぼす効果を示す
図である。白丸は対照としてのベクターを、黒丸は har
d1をトランスフェクトした時の培養液中への sAPP 分泌
量の変動を示す。なお、グラフはピークを 1として補正
してある。(n=2)
【図22】図22は、HEK293細胞における hard1の強制
発現による培養液中への Aβ40、A β42の分泌に及ぼす
効果を示す図である。パネル(a)は、培養液中に分泌
されたAβ40量(n=9) を示し、パネル(b)は、培養液
中に分泌されたAβ42量(n=9) を示す。
【図23】図23は、安定的にAPP を過剰発現する HEK
293 細胞 (W10)における hard1の強制発現による、培養
液中へのAβ40、Aβ42の分泌に及ぼす効果を示す図で
ある。パネル(a)は、培養液中に分泌されたAβ40量
(n=9) を示し、パネル(b)は、培養液中に分泌された
Aβ42量(n=9) を示す。
【図24】図24は、hard1 のAPP エンドサイトーシス
に及ぼす影響を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 25/28 C12Q 1/48 Z 43/00 111 1/68 A C12Q 1/48 G01N 33/15 Z 1/68 33/50 Z G01N 33/15 33/53 D 33/50 M 33/53 33/566 C12N 15/00 ZNAA 33/566 A61K 37/64 (72)発明者 飯島 浩一 愛知県西春日井郡師勝町鹿田2512−1 グ リンシティ D−1303

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)配列番号:1に示される塩基配
    列; (B)前記(A)の塩基配列において、少なくとも1塩
    基の置換、欠失、付加若しくは挿入を有する塩基配列; (C)前記(A)又は(B)の塩基配列と縮重を介して
    異なる塩基配列; (D)前記(A)〜(C)のいずれかの塩基配列を有す
    る核酸のアンチセンス鎖とストリンジェントな条件下に
    ハイブリダイズしうる核酸の塩基配列; (E)配列番号:1に示される塩基配列に対して、40
    %を超える配列同一性を有する塩基配列;及び(F)配
    列番号:1に示される塩基配列と核酸多型を介して異な
    る塩基配列;からなる群より選ばれた1種の塩基配列を
    有する核酸であり、かつ該核酸によりコードされたポリ
    ペプチドの発現により、アミロイド前駆体タンパク質の
    代謝分解が抑制されるものである、アミロイド前駆体タ
    ンパク質の分解阻害のための単離された核酸。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の核酸と、該核酸の細胞に
    おける発現に適した配列からなる核酸とを保持してなる
    組換えDNA。
  3. 【請求項3】 細胞が、神経細胞である、請求項2記載
    の組換えDNA。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の核酸又は請求項2若しく
    は3記載の組換えDNAを含有した担体からなる細胞導
    入用担体。
  5. 【請求項5】 担体が、細胞への導入に適したベクタ
    ー、リポソーム、金属粒子及び正電荷ポリマーからなる
    群より選ばれた少なくとも1種である、請求項4記載の
    細胞導入用担体。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の核酸、請求項2若しくは
    3記載の組換えDNA又は請求項4若しくは5記載の細
    胞導入用担体のいずれかを有効成分として含有してな
    る、アミロイド前駆体タンパク質の分解阻害剤。
  7. 【請求項7】 請求項6記載のアミロイド前駆体タンパ
    ク質の分解阻害剤を有効成分として含有してなる、アル
    ツハイマー病の治療剤。
  8. 【請求項8】 被検物質の存在下に、 a)請求項1記載の核酸の発現の増強、 b)請求項1記載の核酸によりコードされたポリペプチ
    ドとアミロイド前駆体タンパク質との結合の親和性の増
    強、 c)請求項1記載の核酸によりコードされたポリペプチ
    ドのN−アセチルトランスフェラーゼ活性の増強、及び d)アミロイド前駆体タンパク質の分解抑制能の増強、 からなる群より選ばれた少なくとも1種を検出すること
    を特徴とする、アルツハイマー病の発症又は症状を抑制
    しうる物質のスクリーニング方法。
  9. 【請求項9】 請求項8記載のスクリーニング方法によ
    り得られた物質を有効成分として含有してなる、アルツ
    ハイマー病の治療剤。
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