JP4472534B2 - 細胞内Caイオンの機能制御 - Google Patents

細胞内Caイオンの機能制御 Download PDF

Info

Publication number
JP4472534B2
JP4472534B2 JP2004572136A JP2004572136A JP4472534B2 JP 4472534 B2 JP4472534 B2 JP 4472534B2 JP 2004572136 A JP2004572136 A JP 2004572136A JP 2004572136 A JP2004572136 A JP 2004572136A JP 4472534 B2 JP4472534 B2 JP 4472534B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carp
binding
gst
protein
cells
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004572136A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2004103393A1 (ja
Inventor
克彦 御子柴
順二 廣田
英明 安東
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Science and Technology Agency
National Institute of Japan Science and Technology Agency
Original Assignee
Japan Science and Technology Agency
National Institute of Japan Science and Technology Agency
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Science and Technology Agency, National Institute of Japan Science and Technology Agency filed Critical Japan Science and Technology Agency
Publication of JPWO2004103393A1 publication Critical patent/JPWO2004103393A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4472534B2 publication Critical patent/JP4472534B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/17Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • A61K38/1703Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates
    • A61K38/1709Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P3/00Drugs for disorders of the metabolism
    • A61P3/12Drugs for disorders of the metabolism for electrolyte homeostasis
    • A61P3/14Drugs for disorders of the metabolism for electrolyte homeostasis for calcium homeostasis
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/46Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates
    • C07K14/47Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals
    • C07K14/4701Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans from vertebrates from mammals not used
    • C07K14/4702Regulators; Modulating activity

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Marine Sciences & Fisheries (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Obesity (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Diabetes (AREA)
  • Rheumatology (AREA)
  • Endocrinology (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

本発明は、細胞内のCa2+の放出機能の制御に関する。より詳細には、本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなるイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)レセプター(IPR)の作動調節剤、及び炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなる細胞内におけるカルシウム放出の制御剤、並びにそれを用いた制御方法に関する。
細胞内シグナル伝達系において脂質が重要な役割を果たしていることが明らかにされてきた。特にホスファチジルイノシトールのリン酸化物によるシグナル伝達についての研究が活発に行われている。
ホスファチジルイノシトール(PI)は、ジアシルグリセロールの残りの水酸基にイノシトールがリン酸エステルとして結合したものである。ホスファチジルイノシトール(PI)は、リン脂質の1種であり、細胞の膜上にも存在しているが、その量は全リン脂質の10%未満である。ホスファチジルイノシトール(PI)は、大きく分けて2つの役割をになっており、そのひとつは膜に存在したままでリン酸化酵素などの各種のリン酸化反応の足場となることであり、他のひとつはリン酸化イノシトール部分が加水分解されて、セカンドメッセンジャーとしてのリン酸化イノシトールを放出する作用である。
PIのイノシトール部分の水酸基はさらにリン酸化され、イノシトールの3位、4位、若しくは5位、又はこれらの2箇所以上がリン酸化されたイノシトールリン脂質が知られている。とりわけ、4位及び5位がリン酸化されたホスファチジルイノシトール4,5−ビスホスフェイト(PI(4,5)P)は、小胞輸送や核への情報伝達の役割をになうホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェイト(PI(3,4,5)P)の中間体となるばかりでなく、それ自身でも極めて重要な役割をになっている。
PI(4,5)Pは種々のアクチン結合タンパク質と結合することができ、細胞内のアクチンを再編成させることにより細胞の形態を保持し、変化させる役割をになっている。PI(4,5)Pの他の重要な役割は、ホスホリパーゼC(PLC)により、イノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)及びジアシルグリセロール(DAG)に加水分解され、これらの分子をセカンドメッセンジャーとして放出することである。放出されたイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)は、細胞の小胞体の表面に存在するIPレセプター(IPR)に結合し、小胞体内に貯蔵されているCa2+を細胞質に放出させ、Ca2+依存性の各種の酵素を活性化させる。また、DAGはCキナーゼを活性化させる。
細胞の受容体にホルモン、サイトカイン、神経伝達物質などの物質が結合することにより、細胞内にイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)の産生が誘発され、当該IPが細胞の小胞体の表面に存在するイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)レセプター(IPR)に結合する。当該IPRは、IPによるシグナル伝達をCa2+によるシグナル伝達系に変換することにより、さまざまな細胞機能において、胚の発生、細胞の分化、増殖、貪食、顆粒分泌、運動、神経系における作用などのきわめて重要な役割を果たしており、細胞内でIPRが正常に機能することが細胞の恒常性を維持する上で極めて重要なこととなっている。このように、IPRは細胞のシグナル伝達の関与する重要なタンパク質であるばかりでなく、細胞の多彩な機能を調整することができる重要なタンパク質でもある。したがって、IPRの機能を調節することにより細胞の各種の作用を調整することも可能となる。
細胞内におけるIPやIPRの重要性が明らかにされてくるにつれて、これらについての研究も活発になってきており、IPRに対するモノクローナル抗体についての特許出願(先行技術文献1参照)、IPを拮抗する方法についての特許出願(先行技術文献2参照)、さらにIPRに高親和性で結合するポリペプチドについての特許出願(先行技術文献3参照)などの特許出願もなされてきている。
これまでの分子クローニングの研究により、IPRファミリーには哺乳動物において少なくとも3つのサブタイプが存在することが知られている(先行技術文献4〜6参照)。これらのIPRは、構造的、機能的には、リガンド結合ドメイン、調節ドメイン、およびチャネルドメインの3つのドメインから構成されていることが明らかになっている(先行技術文献7参照)。
結合ドメインは、IPとの結合に係わっており、IPRのN末端部位の約600個のアミノ酸からなるドメインである。突然変異解析により、この部位の3アミノ酸残基、例えばマウスIPRタイプ1のArg−265、Lys−508、及びArg−511が、IPとの結合にとってきわめて重要であることが分かっている。また、Arg−658が種々のイノシトールリン酸との特異的な結合を決定することも知られている。
チャネルドメインは、IPRのC末端付近に存在し、6個の膜貫通領域を有し、Ca2+チャネルに対応している。膜貫通領域の1〜4番目は、IPRファミリーにおいて高度な相同性が維持されている。
調節ドメインは、N末端側の結合ドメインと、C末端側のチャネルドメインの間に存在し、このドメインは、Ca2+、Ca2+−カルモデュリン、FK506結合性蛋白12K、ATPなどのさまざまな調節因子の結合部位、およびcAMP依存性蛋白質キナーゼ、cGMP依存性蛋白質キナーゼ、蛋白質キナーゼCによるリン酸化の部位が含まれている。そして、この調節ドメインが、IPの結合によりチャネルを開く作用をしていると考えられる。IPに誘導されるCa2+の放出は、この調節ドメインによるさまざまな修飾によって精密に制御されていると考えられる。この調節ドメインは、IPRファミリー間における相同性がその他の部位に比べて低く、その結果、各々のサブタイプのIPR/Ca2+チャネル機能がそれぞれ異なって調節され、各々のサブタイプに特有なチャネル特性が生じていると考えられる。
このようにIPRの調節ドメインに結合する物質により、IPRの機能が微妙に調整されていることから、IPRの調節ドメインに結合する物質を解明してゆくことはIPRの機能を解明し、それが原因となっている各種の疾患に治療や診断に極めて有用なことになる。
一方、炭酸脱水酵素関連タンパク質(carbonic anhydrase−related protein(CARP))は、プルキンエ細胞(小脳皮質の大型神経細胞で、梨状細胞体および葉を横切る平面に配列された樹状突起を有する細胞)に特異的な遺伝子のスクリーニングにより同定されたタンパク質である(先行技術文献8参照)。CARPは291個のアミノ酸で構成され、N末端のアミノ酸50個の内に16個のグルタミン酸(Glu)残基および4個のアスパラギン酸(Asp)残基からなる酸性アミノ酸クラスターを有している。また、CARPは炭酸脱水酵素の主要なモチーフを有しているが、触媒の亜鉛を配位するための残基を有していないので炭酸脱水酵素活性はない。事実、CARPには炭酸脱水酵素活性がないことが報告されている。ヒトCARP遺伝子についてもクローニングが行われており(先行技術文献9参照)、マウスのそれとアミノ酸で98%の相同性があり、進化の過程で高度に保存されていることが明らかになっているが、これまでのところ、CARPは小脳のプルキンエ細胞に高度に発現することが分かっているが、CARPの機能は解明されていないし、組織分布についてもこれまでに包括的な解明もなされていない。
この出願の発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
1. 特開平8−134099号
2. 特表平8−502068号
3. 特開2000−135095号
4. Furuichi,T.,Yoshikawa,S.,et al.,(1989),Nature,342,32−38
5. Blondel,O.,Takeda,J.,et al.,(1993),J.Biol.Chem.,268,11356−11363
6. Yamamoto−Hino,M.,Sugiyama,T.,et al.,(1994),Receptors Channels,2,9−22
7. Furuichi,T.,Kohda,K.,et al.,(1994),Curr.Opin.Neurobiol.,4,294−303
8. Karo,K.,(1990),FEBS Lett.,271,137−40
9. Skaggs,L.A.,Bergenhem,N.C.,et al.,(1993),Gene,126,291−221
10. Bultynck G,De Smet P,et al.,(2001),Biochem J.,354,413−22
本発明は、イノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)レセプター(IPR)、好ましくはIPRの調節ドメインに結合する物質を解明し、IPRの機能を解明すると共に、IPRが関与している各種の異常や疾患などの治療方法や診断方法を確立させることを目的としている。また、本発明は、IPRに結合してIPRの機能を調節することにより細胞の機能を調整するための組成物及びそれを用いた調整方法に関する。
第1図は、IPR1の3つのドメイン及び調節ドメインなどに結合する物質の位置を模式的に示すと共に、本発明で使用した6個のベイトの断片を示す。
第2図は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)の組織分布を調べたウェスタンブロットの結果を示す図面に代わる写真である。可溶性分画(10μg/レーン)について、ドデシル硫酸ナトリウム存在下で5%のポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、ニトロセルロースにトランスファーした後、抗CARPポリクローナル抗体2μg/mlで検出した。
第3図は、培養したプルキンエ細胞を、抗CARP抗体(第3図左側、緑色)、及び抗IPR1抗体(第3図の中間、赤色)で免疫染色したもの、並びに両者をマージした(第3図の右側)ものを示す図面に代わるカラー写真である。矢印は、CARPとIPR1の局在の例を示している。
第4図の(A)はマウス小脳の細胞質分画を、GST−ELまたはGSTとともにインキュベートし、結合した蛋白質について、グルタチオンセファロースを用いてプル−ダウンアッセイを行い、グルタチオンにて溶出し、抗CARP抗体を用いてウェスタンブロット法で解析した結果を示し、第4図の(B)はマウス小脳ミクロソームの界面活性剤抽出物について、(A)で説明した方法でGST−CARPまたはGSTを用いプル−ダウンアッセイを行い、結合した蛋白質について、抗IPR1抗体KM1112にて免疫ブロット解析を行った結果を示し、第4図の(C)は精製されたCARP−Hisについて、GST−ELまたはGSTを用いてプル−ダウンアッセイを行い、結合した蛋白質について、抗CARP抗体にて免疫ブロット解析を行った結果を示す図面に代わる写真である。
第5図は、CARPおよびIPR1のN末端およびC末端側の欠失した変異体の構造、及びCARP変異体とMD2、CARPとIPR1変異体間の相互作用を、酵母のツーハイブリッドシステムによるβ−galアッセイ(n=3)で解析した結果を示したものである。β−galアッセイは、青色のコロニーが出現するまでの時間で評価し、青色のコロニーが30分で出現した場合を「+++」で示し、2時間で出現した場合を「++」で示し、8時間以内に出現した場合を「+」で示している。
第6図は、IPR1へのIPの結合に及ぼすCARPの阻害作用をスキャッチャードプロットによって行った結果を示している。黒四角印(■)はCARPの存在下の場合を、黒丸印(●)はCARPの非存在下の場合を示す。CARPの存在下または非存在下で行った3回の実験のKdの平均値(Kd±S.D.)は、各々33.5±2.07nMおよび18.2±4.58nMであった。
イノシトール−1,4,5−3リン酸(IP)レセプター(IPR)は、細胞内のIPによって誘発されるCa2+の放出経路であり、IPRは種々の物質と結合することにより微妙に細胞内におけるCa2+の放出を制御している。本発明者らは、IPRに結合してIPによるカルシウムの放出の制御している物質を解析したところ、IPRに結合性を有する新たなタンパク質を同定した。そして、このタンパク質が炭酸脱水酵素関連蛋白質(CARP)として知られているタンパク質であることを見出した。
また、本発明者らは、IPRを豊富に発現している小脳のプルキンエ(Purkinje)細胞のみにCARPが発現していることを明らかにすると共に、CARPのIPRに対する作用を検討し解析した。
したがって、本発明は細胞内におけるカルシウムの放出の機構を制御することを目的とするものであり、さらには細胞内におけるカルシウムが関与しているシグナル伝達を制御することを目的とするものである。また、本発明は、炭酸脱水酵素関連蛋白質(CARP)による細胞内のカルシウムの放出の制御、IPRの作動の調節や作動の診断をすることを目的とするものである。
本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなるイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)レセプター(IPR)の作動調節剤に関する。
また、本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなる細胞内におけるカルシウム放出の制御剤、及びそれを用いた制御方法に関する。
IPRには、Ca2+、Ca2+−カルモデュリン、FK506結合性蛋白12K、ATP、キナーゼなど、さまざまな調節因子が関与している。これらの多くはIPRの中央部分に結合したり、またはリン酸化することによりIPRの機能を調節していると考えられている。
IPRの新規な調節因子を探索するために、本発明者らは、IPR1の調節ドメインをベイトとして、酵母のツーハイブリッド法を用いてマウスの脳のcDNAライブラリーをスクリーニングした。
第1図にマウスIPRタイプ1(mIPR1)のリガンド結合ドメイン、調節ドメイン、およびチャネルドメインを模式的に示す。第1図の中段に示す数字はアミノ酸の番号を示す。第1図の調節ドメインには、FK506結合性蛋白(FKBP)(アミノ酸番号:1400−1401)、Ca2+−カルモデュリン(CaM)(アミノ酸番号:1564−1585)、そして推定としてのATP結合部位(ATP)(アミノ酸番号:1773−1778、1775−1780、及び2016−2021)、PKAリン酸化のためのセリン残基(アミノ酸:1588、1755)のための結合部位が示されている。クロモグラニンAおよびB(CGA/B)の結合部位は、チャネルドメイン(膜貫通部位5番目と6番目の間)に示されている。本発明者らは、この調節ドメインの一部分をベイトとして用いた。第1図に、本発明で用いた6個のベイトに相当する位置がMD1〜MD6として示されている。
mIPR1のアミノ酸の1245−2264番目を、重複する6断片に分割し、それぞれの対応するcDNA断片をベイトとして使用した。IPR1調節ドメインのアミノ酸残基1245−2264番目をマッピングし、これに重複している次のセンス鎖(S)及びアンチセンス鎖(A)からなるプライマーセットを使用し、PCR法により6ベイト構成体(MD1〜MD6)を作製した。
Figure 0004472534
PCR法により得られたcDNAを、EcoRIおよびSalI、またはSalI単独のいずれかにより消化し、次にpGBT9(クロンテック社)に連結した。このプラスミドのすべてについてシーケンシングを行い、これらのcDNAのクローニングがフレームに合わせて翻訳され、PCRに起因するエラーがないことを確認した。
なお、MD2に対応するmIPR1の1387番目から1647番目までのアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。
ベイト断片MD1、3、4、5、及び6による一次スクリーニングでは、数十個の候補物質が得られたが、非翻訳配列として知られている領域を含んでいたり翻訳フレームシフトをおこしていたりして、IPR1結合蛋白質とは考えられなかった。一方、MD2断片を用いたスクリーニングでは、13個のポジティブクローンを得た。DNAのシーケンシング解析を行ったところ、これらはすべてが炭酸脱水酵素関連蛋白質(CARP)をコードしていることが明らかになった。これらのクローンは、CARP cDNAの5’UTRの異なる長さを含むものであったが、フレームに基づいて完全長のコーティング領域を含んでいた。
炭酸脱水酵素関連蛋白質(CARP)のマウスのCARPの291個のアミノ酸のアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。
MD1およびMD2断片には、FKBP12結合部位と推測される部位が含まれていたが、今回の酵母ツーハイブリッド法によるスクリーニングでは、ポジティブクローンからFKBPを見つけることはできなかった。この結果は、FKBP12がIPR1に結合しないという最近の報告を裏付けている可能性がある(先行技術文献10参照)。別の原因として、cDNAライブラリーの大きさ、あるいはIPR1へのFKBPの結合に別の蛋白質が必要であることも可能性として考えられるが、いずれにしても今回の実験においてはFKBPを見出すことはできなかった。また、MD2には、カルモデュリン結合部位も含まれているが、IPR1へのカルモデュリン結合はCa2+依存性であるため、今回のスクリーニングではカルモデュリンの結合を検出できなかった。
炭酸脱水酵素関連蛋白質(CARP)は、小脳のプルキンエ細胞に高度に発現することが知られているが、組織分布についてはこれまで包括的な研究がなされていないので、まず、ウェスタンブロット解析によりCARPの組織分布を調べた。
結果を第2図に図面に代わる写真で示す。第2図は、種々の臓器の可溶性分画におけるCARPの発現を示している。CARP蛋白質は、既報のとおり、小脳での発現が顕著であり、また小脳ではIPR1も豊富に発現している。大脳、嗅球、嗅上皮、鋤鼻器、肺、顎下腺、肝臓、副腎、胃、小腸、大腸では、発現レベルが低い。心臓、胸腺、脾臓、膵臓、卵巣、子宮、精巣、筋肉には、シグナルが認められなかった。
小脳の免疫組織化学解析では、CARPはIPR1と共に、小脳のプルキンエ細胞の細胞質における発現が顕著であることが明らかになった。プルキンエ細胞においてIPR1は、豊富かつ広範囲に発現しているが、クラスターが形成されているために、特に樹状突起では均質性が低かった。CARPは細胞質可溶性の蛋白質ではあるが、もしCARPがIPR1に結合するとすれば、CARP蛋白質の分布は均質ではなく、IPR1とクラスターを形成して局在化している。プルキンエ細胞におけるCARPおよびIPR1の細胞内での局在化を明確にするために、プルキンエ細胞の一次培養を行い免疫組織化学解析を行った。第3図は、プルキンエ細胞におけるCARP(緑色)およびIPR1(赤色)の発現を二重染色法により示した、図面に代わるカラー写真である。第3図の左側は抗CARP抗体(緑色)で、左から2番目は抗IPR1抗体(赤色)で免疫染色したものであり、右側はこれらをマージしたものである。第3図の上段は培養したプルキンエ細胞の全体像であり、下段はその拡大図である。矢印は、CARPとIPR1の局在の例を示している。
この結果、双方とも、細胞質、樹状突起、および軸索において発現している(第3図参照)。細胞内での局在により、CARPがIPR1とクラスターを形成して局在していることが明らかになった(第3図の矢印参照)。CARPとIPR1が豊富かつ高特異的に共に発現し、プルキンエ細胞において局在していることから、これらの蛋白質が生理学的にも結合していることが示された。
次に本発明者らは、生化学的方法によりCARPとIPR1間の相互作用をさらに調べるために、プル−ダウン(pull−down)法により両者の相互作用を調べた。このために、本発明者らはSf9細胞内での発現システムを開発した。IPR1のチャネルドメインを除去してIPR1を可溶性にした。GST−ELと命名したこの可溶性IPR1は、リガンド結合ドメインと調節ドメインの双方が含まれ(mIPR1のアミノ酸の1−2217)、そのN末端にはGSTがある。マウス小脳の細胞質分画を、GST−ELまたはGSTにてインキュベートし、この組換え蛋白質へのCARPの結合を抗CARP抗体を用い免疫ブロット法により解析した。結果を第4図に図面に代わる写真で示す。第4図の(A)は、マウス小脳の細胞質分画を、GST−ELまたはGSTを用いてインキュベートし、結合した蛋白質について、グルタチオンセファロースを用いてプル−ダウンアッセイを行い、グルタチオンにて溶出し、抗CARP抗体を用いてウェスタンブロット法で解析した結果を示す。第4図の(B)は、マウス小脳ミクロソームの界面活性剤抽出物について、前記の(A)で説明したGST−CARPまたはGSTを用いたプルダウンアッセイを行い、結合した蛋白質について、抗IPR1抗体KM1112にて免疫ブロット解析を行った結果を示す。第4図の(C)は、精製済みのCARP−Hisについて、GST−ELまたはGSTを用いてプルダウンアッセイを行い、結合した蛋白質について、抗CARP抗体にて免疫ブロット解析を行った結果を示す。
この結果、CARPがGST−ELに特異的に結合し、GST単独には結合しないことが示された。相互実験では、マウス小脳ミクロソームの界面活性剤抽出物について、GST−CARPを用いたプルダウンアッセイを行い、IPR1の結合を抗IPR1抗体にて分析した。第4図の(B)に示されるように、IPR1とGST−CARPとの相互作用はあったが、GSTとの相互作用はなかった。IPR1へのCARPの結合が直接的であるか否かを確認するため、精製済みHisタグ付きCARPについて、GST−ELを用いプルダウンアッセイを行った。第4図の(C)に示されるように、CARP−HisはGST−ELに特異的に結合し、CARPとIPR1間の相互作用が直接的であることが示された。
以上の結果を総合すると、これらの知見は、CARPが新たなIPR1結合性の蛋白質であることが示された。
次に、本発明者らは、CARPとIPR1の相互作用のドメインを確定することにした。そのために、双方の遺伝子をトランケートした変異体を作製し、酵母のツーハイブリッド法により解析した。
第5図は、CARP(第5図の上の段)およびIPR1(第5図の下の段)のN末端およびC末端を欠失させた変異体の遺伝子の構造を示している。CARP変異体とMD2、CARPとIPR1変異体間の相互作用を、酵母のツーハイブリッド法により分析した。作製した変異体と、酵母のツーハイブリッド法によるβ−galアッセイ(n=3)の結果を第5図に示す。β−galアッセイは、青色のコロニーが出現するまでの時間で評価した。すなわち青色のコロニーが、30分(+++)、2時間(++)および8時間(+)以内に出現している場合を+としている。
この結果、CARPのN末端のアミノ酸44個が欠失した場合には弱いが結合活性が見られたが、その他の部位が欠失した場合にはIPR1への結合が失われた。これは、IPR1へのCARPの最小限の結合部位が、45−291のアミノ酸であることを示している。IPR1の場合には、1387−1647のアミノ酸がCARPとの結合に必要であることが示された。
次に、IPの結合に及ぼすCARPの作用について検討した。
プルキンエ細胞におけるIP誘導によるCa2+の放出は、その他の組織や単離されたIPR1(EC50=100nM〜1μM)に比べて、はるかに高濃度のIP(EC50≧10μM)を必要とすることが知られている。本発明者らの前記して実験結果によれば、CARPはプルキンエ細胞においてIPR1と共に顕著に発現し、IPR1に結合することが示された。そして、プルキンエ細胞ではIPに対するIPR1の感受性が低下しいることが知られており、この原因として、プルキンエ細胞におけるCARPの発現があると推測された。そこで、本発明者らは、IP結合に及ぼすCARPの阻害作用について検討した。
精製されたIPR1を用いて結合アッセイを行い、IPR1へのIPの結合親和性に対するCARPの作用を評価した。精製されたIPR1を、精製組換えCARPの存在または非存在下で、種々の濃度の〔H〕IPを用いてインキュベートし、スキャッチャードプロットにより解析した。
第6図は、CARPの存在下(第6図の■印)または非存在下(第6図の●印)でのIPR1に対するIPによる特異的〔H〕IP結合の阻害に関するスキャッチャードプロット解析の結果を示す。第6図の横軸は結合したIP量(pmol/mg)を示し、縦軸は結合したIP量/結合していないIP量(pmol/mg/nM)を示す。
この結果、CARPの存在または非存在下でのIPR1に対するIP結合の解離定数の平均値(Kd±S.D.)は、各々33.5±2.07nMおよび18.2±4.58nMであることがわかった。そして、CARPの存在または非存在下でのBmax値は、各々1630±108pmol/mgおよび1720±234pmol/mgであることから、IPの結合部位の最大数はCARPの存在によって変化しないことが示された。これらの結果は、CARPが拮抗作用ではなく、親和性を低下させることによって、IPR1に対するIP結合を阻害していることを示している。これは、CARPの結合により、IPR1の立体配座が変化し、このためにIPに対する感受性が低下するものと推測される。
プルキンエ細胞でのIP誘導によるCa2+の放出におけるIPに対する感受性の低下の原因のひとつとして、IPR1の高密度化がこれまで報告されていた(Ogden,D.and Capiod,T.(1997),J.Gen.Physiol.,109,741−56)。この説明に加え、プルキンエ細胞におけるIPR1へのIP結合に及ぼすCARPの阻害作用の結果としてIPに対する感受性の低下が生じているという新たな知見を本発明は提供するものである。
本発明のイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)レセプター(IPR)として、マウスのものを用いて説明してきたが、本発明のIPRはマウスに限定されるものではなく、例えば線虫、ショウジョウバエなどの動物、好ましくはヒト、マウス、ラット、ハムスター、サル、イヌ、ウサギなどの哺乳動物であればよい。また、前記してきた説明ではIPRのサブタイプとしてサブタイプ1を用いて説明してきたが、他のサブタイプについても同様にして結合を確認することは可能である。したがって、特別の事情の無い限り本発明はIPRの全てのサブタイプをも包含するものである。好ましいサブタイプとしては、前記で説明してきたサブタイプ1が挙げられる。
本発明の炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)としては、天然のものであってもよいし、遺伝子の情報に基づいて組換え技術により製造されたものであってもよい。また、本発明のCARPは前記の説明で用いられてきたマウス由来のものに限定されるものではなく、例えば線虫、ショウジョウバエなどの動物、好ましくはヒト、マウス、ラット、ハムスター、サル、イヌ、ウサギなどの哺乳動物であればよい。本発明のCARPは、使用されるIPRと同種の動物のCARPを用いるのが好ましいが、これに限定されるものではない。さらに、本発明のCARPは、全長のものであってもよいが、IPRとの結合に必要とされる最小限のアミノ酸配列、例えばマウスの例では、少なくとも45−291のアミノ酸配列を有するものであればよい。好ましいCARPとしては、天然のアミノ酸配列を有するものが挙げられるが、IPRとの結合性を有するものであれば、天然のアミノ酸配列のうちの1個以上のアミノ酸は欠失し、付加し、及び/又は他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。
本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなるIPRの作動調節剤を提供するものであり、本発明の作動調節剤は、CARP単独であってもよいし、緩衝液などの生物学的に許容される担体を含有する組成物となっていてもよい。また、本発明の作動調節剤は、CARPの存在しない場合に比べてIPに対するIPRの作動が変動、亢進または抑制されるものであればよい。前記で説明してきたマウスの例では抑制される例が示されている。使用されるCARPの濃度については、IPRの作動が変動できる濃度であればよい。
また、本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなる細胞内におけるカルシウム放出の制御剤を提供するものであり、本発明の制御剤は、CARP単独であってもよいし、緩衝液などの生物学的又は製薬的に許容される担体を含有する組成物、例えば医薬組成物などとなっていてもよい。また、本発明の制御剤は、CARPの存在により細胞内のカルシウムの放出量を制御できる、減少又は増加できるものであればよい。使用されるCARPの濃度については、特に制限はなく、副作用や毒性が生じない範囲で細胞内のカルシウムの放出量を制御できる濃度であればよい。本発明の細胞内のカルシウムの放出の制御は、イノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)により誘発されるカルシウムの放出であることが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
さらに、本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)を細胞に添加することからなる細胞内におけるカルシウム放出を制御する方法を提供するものである。本発明のこの方法における細胞としては、生体を構成している細胞であって、好ましくはIPRを有する細胞である。本発明のこの方法は細胞内におけるセカンドメッセンジャーとしてのIPの作用を解析するためや、細胞内におけるIPRの作動を検査するためだけでなく、治療や診断にも広く適用可能な方法である。
また、本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)がIPR、好ましくはIPR1に特異的に結合する物質であることを明にするものであり、当該CARPによりIPRの検出や同定をすることも本発明に包含されている。このような目的のためには、適当な方法でCARPを標識化し、このような標識化されたCARPによりIPRを検出、同定、又は定量することも可能となる。
なお、特願2003−141083明細書に記載された内容を、本明細書にすべて取り込む。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例における、酵母のツーハイブリッドアッセイは、メーカーのプロトコール(米カリフォルニア州パロアルト、クロンテック社)に従い、MATCHJMAKERTM Two−Hybridシステムを使用して行った。
実施例1 (ベイト構築体の設計と合成)
第1図に示されるIPR1の調節ドメインの一部をベイトとして使用し、6種のベイトを構築した。
マウスIPR1(mIPR1)のアミノ酸の1245−2264番目を、重複する6断片に分割し、それぞれの対応するcDNA断片をベイトとして使用した。IPR1調節ドメインのアミノ酸残基1245−2264番目をマッピングし、これに重複している次のセンス鎖(S)及びアンチセンス鎖(A)からなるプライマーセットを使用し、PCR法により6ベイト構成体(MD1〜MD6)を作製した。
Figure 0004472534
Figure 0004472534
PCR法により得られたcDNAを、EcoRIおよびSalI、またはSalI単独のいずれかにより消化し、次にpGBT9(クロンテック社)に連結した。このプラスミドのすべてについてシーケンシングを行い、これらのcDNAのクローニングがフレームに合わせて翻訳され、PCRに起因するエラーがないことを確認した。
実施例2 (cDNAライブラリーの構築)
マウス脳cDNAライブラリーを、pGAD−GL(クロンテック社)を用いて構築した。即ち、マウス脳(6週齢ddYマウス;日本国浜松市、日本エスエルシー株式会社)からの全RNAについて、オリゴ(dT)−セルロース・クロマトグラフィーを用いて、ポリ(A)mRNA発現を濃縮した。ランダムな6量体をプライマーとして使用し二本鎖cDNAを作製し、アダプターEcoRIに連結した。EcoRIで消化後、400bpを超えるcDNAを、セファロースCL2B(米ニュージャージー州ピスカタウェイ、アマシャム バイオサイエンス株式会社)を用いて分別して回収した。これらをpGAD GLのEcoRI部位に挿入した。大腸菌XL1−Blue MRF(米カリフォルニア州ラホーヤ、ストラタジーン社)により、約5×10の独立したクローンを作製し、1回増幅した後、プラスミドDNAを単離した。
実施例3 (抗体の調製)
文献に記載の方法により(Maeda,N.,Niinobe,M.,et al.,(1988),J.Neurochem.,51,1724−1730;Maeda,N.,Niinobe,M.,et al.,(1990),EMBO J.,9,61−67;Sugiyama,T.,Furuya,A.,et al.,(1994),FEBS Letters,354,149−154)、mIPR1、4C11、18A10およびKM1112に対するモノクローナル抗体を調製した。炭酸脱水酵素ファミリーの中で異なっているマウスCARPのアミノ酸残基267−279(CDGILGDNFRPTQ)に対応するペプチドを合成し、このペプチドを、MBS(m−maleimidobenzoyl N−hydroxysuccinimide)エステルを使用し、N末端のCys残基を通じてアオガイヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin(KLH))にコンジュゲートさせた。ポリクローナル抗体をウサギ(New England White、日本国北海道、ホクドー洞爺免疫研究所)から作製した。この抗体を、標準プロトコールに従い抗原性のペプチド結合ビーズを用いて、抗血清から精製した。
実施例4 (CARPの発現のウェスタンブロット解析)
種々の臓器におけるCARPの発現を、ウェスタンブロット法により解析した。マウスから切断した各臓器に、ホモジナイズ用バッファー(0.32Mスクロース、1mM EDTA、1mM2−メルカプトエタノール、プロテアーゼ阻害剤(0.1mMフェニルメチルスルホニルフルオライド、10μMロイペプチン、10μMペプスタチンA、10μM E−64)、および10mMトリス−HCL pH7.4)を加え、ガラス−テフロン(登録商標)製ホモジナイザーを使用してホモジナイズした。心臓、肝臓、腎臓、副腎、精巣、筋肉については、これら臓器をハサミで小片に細切した後にホモジナイズした。このホモジネートを4℃にて20分間、100,000×gで遠心した。この遠心上清液(10μg)を使用し、ドデシル硫酸ナトリウム存在下で5%のポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、ニトロセルロースにトランスファーした後、抗CARP抗体にて免疫検出した。
結果を第2図に示す。
実施例5 (免疫組織化学)
一次培養を行った小脳プルキンエ細胞の調製および免疫組織化学解析は、文献(Yuzaki,M.,and Mikos hiba,K.,(1992),J.Neurosci.,12,4253−63.)に記載の方法に準じて行った。一次抗体および二次抗体を組み合わせた後、ウサギ抗CARPポリクローナル抗体、FITC結合抗ウサギIgG抗体、抗IPR1モノクローナル抗体、18A10およびTexasRed結合抗ラットIgG抗体を使用して二重染色を行った。
結果を第3図に示す。
実施例6 (Sf9細胞におけるIPR1のチャネルドメインの欠失した組換え体の発現)
マウスIPR1のN末端部位(残基1−225)をコードするDNAを、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)融合ベクターpGEX−KGにインサートした。GST−IPR1(1−225)断片を、バキュロウイルストランスファーベクターpBlueBac4.5(インビトロジェン社)にサブクローニングした。GST−IPR1(1−225)のSmaI部位から下流の3’−部位を、マウスIPR1のSmaI−EcoRI断片(残基79−2217に対応)と交換し、GST−IPR1(1−2217)を構築した(GST−ELと呼ぶ)。メーカーのプロトコールに従い、Bac−N−BlueTMトランスフェクション・キット(インビトロジェン社)により、GST−ELをもつ組換えバキュロウイルスを作製した。感染多重度5で組換えバキュロウイルスを感染させることにより、2×10個のSf9細胞にGST−ELを発現させ、48時間インキュベートした。GST−ELを発現している細胞に、HEPES 10mM(pH7.4)、NaCl 100mM、EDTA 2mM、2−メルカプトエタノール 1mM、0.1% トリトンX−100、およびプロテアーゼ阻害剤を加え、ガラス−テフロン(登録商標)製ホモジナイザーを使用してホモジナイズした。このホモジネートを30分間、20,000×gで遠心した。ベンダーの推奨に従って、グルタチオンセファロース4B(アマシャム ファルマシア バイオテク株式会社)を用い、この遠心上清液からGST−ELを精製した。
実施例7 (大腸菌における組換えCARPの発現)
完全長CARP cDNAを、pET23aベクター(Stratagene社)のNdeIおよびHindIIIサイトに、転写のフレームを合わせてクローニングした。これによってHis−タグが組換えCARPのC末端に導入された。CARP発現ベクターにより形質転換した大腸菌BL21(DE3)の単一コロニーを、アンピシリン100μg/mlを含むLuria−Bertani培地1.5mlで、37℃で10時間インキュベートした。この培養菌1ミリリットルを、アンピシリン100μg/mlを含むLuria−Bertani培地1リットルに接種し、A600=0.7に達するまで25℃でインキュベートした後、培養菌にイソプロピルチオ−β−D−ガラクトシドを添加した(最終濃度、0.5mM)。25℃で8時間、インキュベーションを続け、遠心分離器を用いて細胞を採取し、リン酸塩緩衝食塩水(PBS)10mlにて洗浄後、PBS 50mlで4℃で超音波処理した。不溶性物質を遠心除去した後、上清をハイトラップ−キレートカラム(アマシャム バイオサイエンス社)に載せた。組換えCARP蛋白質を、まずメーカーのプロトコールに従って精製、次にMono Qを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー(アマシャム バイオサイエンス社)で精製し、最後に複合体共沈法(pull−down実験)またはIP結合実験で使用するバッファーに対して透析し、バッファーを交換した。
GST融合組換えCARPについては、完全長CARP cDNAをpGEX−KGのBamHIおよびXhoIサイトにクローニングしてGST−CARPを構築した。GST−CARPを大腸菌に発現させ、上記のようにグルタチオンセファロースを用いて精製した。
実施例8 (IPR1へのCARP結合の生化学解析)
成体マウス小脳を、HEPES(pH7.4)10mM、スクロース 320mM、EDTA 2mM、2−メルカプトエタノール 1mM、およびプロテアーゼ阻害剤を加えてホモジナイズし、そのホモジネートを10分間、1,000×gで遠心した。この遠心上清液を、60分間、100,000×gで遠心して細胞質分画(上清)および未精製のミクロソーム分画(小球)を得た。この細胞質分画にNaCl100mMを加え、GST−ELまたはGST20μgにより4℃で2時間、インキュベートした。グルタチオンセファロース10μlを加え、さらに2時間インキュベートした後、この樹脂を洗浄バッファー(HEPES(pH7.4)10mM、NaCl100mM、EDTA2mM、2−メルカプトエタノール1mM、および0.01%トリトンX−100)にて5回洗浄し、結合した蛋白質をグルタチオン20mMにて溶出した。溶出した蛋白質を、抗CARP抗体を用いてウェスタンブロット法で解析した。
未精製のミクロソームに1%トリトンX−100を加え可溶化し、HEPES(pH7.4)50mM、EDTA2mM、2−メルカプトエタノール1mM、およびプロテアーゼ阻害剤に4℃で30分間溶解し、30分間、20,000×gで遠心した。この遠心上清液について、先に説明したとおりGST−CARPまたはGST10μgを用いてプルダウンアッセイを行い、結合した蛋白質について、抗IPR1抗体KM1112を用いて免疫ブロット解析を行った。
直接的な結合アッセイについては、洗浄バッファーにて精製済みのCARP−His(5μg)に対し、先に説明したとおりGST−ELまたはGST20μgを用いてプルダウンアッセイを行い、結合した蛋白質について、抗CARP抗体を用いて免疫ブロット解析を行った。結果を確認するため、実験を少なくとも3回反復した。
結果を第4図に示す。
実施例9 (酵母のツーハイブリッドアッセイによる結合サイトの同定)
結合サイトを確認するため、pGBT9およびpGAD−GLを各々用いて、IPR1およびCARP構成体のいずれかをトランケートした。トランケート型IPR1構成体には、次のアミノ酸が含まれている:
pGBT9−ΔI1(mIPR1:アミノ酸の1387−1464)、
pGBT9−ΔI2(mIPR1:アミノ酸の1387−1520)、
pGBT9−ΔI3(mIPR1:アミノ酸の1387−1598)、
pGBT9−ΔI4(mIPR1:アミノ酸の1513−1598)、
pGBT9−ΔI5(mIPR1:アミノ酸の1513−1647)。
トランケート型CARP構成体には、次のアミノ酸が含まれている:
pGAD−GL−ΔC1(CARP;アミノ酸の1−127)、
pGAD−GL−ΔC2(CARP;アミノ酸の1−147)、
pGAD−GL−ΔC3(CARP;アミノ酸の1−170)、
pGAD−GL−ΔC4(CARP;アミノ酸の1−180)、
pGAD−GL−ΔC5(CARP;アミノ酸の1−217)、
pGAD−GL−ΔC6(CARP;アミノ酸の1−234)、
pGAD−GL−ΔC7(CARP;アミノ酸の45−291)、
pGAD−GL−ΔC8(CARP;アミノ酸の121−291)、および
pGAD−GL−ΔC9(CARP;アミノ酸の184−291)。
このプラスミド構成体のすべてについてシーケンシングを行い、適切なcDNAのクローニングが転写のフレームに合わせて行われたことを確認した。
結果を第5図に示す。
実施例10 (〔H〕IP結合アッセイ)
IPR1に結合する〔H〕IPについて、CARP存在または非存在下で、ポリエチレングリコールを用いた沈殿法によるアッセイを文献(Maeda,N.,Niinobe,M.,et al.,(1990),EMBO J.,9,61−67)に記載の方法に準じて行った。0.5μgの精製されたIPR1を、50mMトリス−HCL、pH8.0、1mM EDTA、1mM2−メルカプトエタノール、9.6nM〔H〕IP、および種々の濃度のIPを含む溶液50μl中で、10μgの精製されたHis−CARPの存在下、又は非存在下に、4℃で10分間インキュベートした。非特異的結合を、10μMのIPの存在下で測定した。
結果を第6図に示す。
本発明は、IPRに結合し得る新たな物質を提供するものであり、IPRの作動による細胞内のカルシウムの放出を制御する手段を提供するものである。本発明の調節剤によりIPにより誘発される細胞内のカルシウムの放出を制御することができ、カルシウムの放出の異常に起因する各種の疾患の治療や診断に有用であるばかりでなく、細胞内におけるセカンドメッセンジャーとしてのIPの作用を解析するための有力な手段を提供するものである。
また、本発明はその機能が解明されていなかったCARPの新たな機能を明らかにしたものであり、CARPの細胞内におけるカルシウムの放出の制御という新たな用途を提供するものである。

Claims (7)

  1. 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなるイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)レセプタータイプ1(IP)に対するIP結合阻害剤。
  2. 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)が、少なくとも45−291のアミノ酸配列を有するものである請求項1に記載のIP結合阻害剤。
  3. 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)が、組換えCARPである請求項1又は2に記載のIP結合阻害剤。
  4. 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなる細胞内におけるイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)のIPレセプタータイプ1(IP)への結合により誘発されるカルシウム放出の抑制剤。
  5. 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)が、少なくとも45−291のアミノ酸配列を有するものである請求項4に記載の抑制剤。
  6. 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)が、組換えCARPである請求項4又は5に記載の抑制剤。
  7. 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)をインビトロ条件下の細胞に添加することからなる細胞内におけるイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP)のIPレセプタータイプ1(IP)への結合により誘発されるカルシウム放出を抑制する方法。
JP2004572136A 2003-05-19 2003-10-31 細胞内Caイオンの機能制御 Expired - Fee Related JP4472534B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003141083 2003-05-19
JP2003141083 2003-05-19
PCT/JP2003/014004 WO2004103393A1 (ja) 2003-05-19 2003-10-31 細胞内Caイオンの機能制御

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2004103393A1 JPWO2004103393A1 (ja) 2006-07-20
JP4472534B2 true JP4472534B2 (ja) 2010-06-02

Family

ID=33474969

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004572136A Expired - Fee Related JP4472534B2 (ja) 2003-05-19 2003-10-31 細胞内Caイオンの機能制御

Country Status (4)

Country Link
US (2) US7276582B2 (ja)
JP (1) JP4472534B2 (ja)
CA (1) CA2525696A1 (ja)
WO (1) WO2004103393A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8034779B2 (en) * 2007-08-13 2011-10-11 Case Western Reserve University Inhibitors of BCL-2

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6465211B1 (en) * 1998-08-27 2002-10-15 Riken Nucleic acids, vectors and transformed cells for making and using high affinity IP-3 binding polypeptides
GB9929993D0 (en) * 1999-12-17 2000-02-09 Avidex Ltd Substances
AU2001243342B2 (en) * 2000-02-29 2005-06-23 Barnes-Jewish Hospital Modulation of pleiotrophin signaling by receptor-type protein tyrosine phosphatase beta/zeta

Also Published As

Publication number Publication date
CA2525696A1 (en) 2004-12-02
JPWO2004103393A1 (ja) 2006-07-20
US20080064082A1 (en) 2008-03-13
US7709441B2 (en) 2010-05-04
US20060166880A1 (en) 2006-07-27
WO2004103393A1 (ja) 2004-12-02
US7276582B2 (en) 2007-10-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Hirota et al. Carbonic anhydrase-related protein is a novel binding protein for inositol 1, 4, 5-trisphosphate receptor type 1
OLEINIKOV et al. Cytosolic adaptor protein Dab2 is an intracellular ligand of endocytic receptor gp600/megalin
Kato et al. WICH, a novel verprolin homology domain-containing protein that functions cooperatively with N-WASP in actin-microspike formation
Velichkova et al. A human homologue of Drosophila kelch associates with myosin‐VIIa in specialized adhesion junctions
Haass et al. Pantophysin is a ubiquitously expressed synaptophysin homologue and defines constitutive transport vesicles.
WO2002006483A1 (fr) Nouveau peptide actif sur le plan physiologique et utilisation associee
US8603455B2 (en) Removal promoters and inhibitor for apoptosis cells in vivo
US6077686A (en) Shc proteins
JP2001505779A (ja) Pyk2関連産物および方法
Schnöder et al. P38α‐MAPK phosphorylates Snapin and reduces Snapin‐mediated BACE1 transportation in APP‐transgenic mice
Haeseleer Interaction and colocalization of CaBP4 and Unc119 (MRG4) in photoreceptors
Duda et al. Calcium-modulated ciliary membrane guanylate cyclase transduction machinery: constitution and operational principles
US20090203041A1 (en) Bmp4 inhibitors
WO2009042727A1 (en) Immediate early gene arc interacts with endocytic machinery and regulates the trafficking and function of presenilin
JP4472534B2 (ja) 細胞内Caイオンの機能制御
US6635446B1 (en) WIP, a WASP-associated protein
JP5093578B2 (ja) 受容体型プロテインチロシンホスファターゼPtprzによるErbB4シグナルの抑制
EP1408049A2 (en) A novel inositol 1,4,5-trisphosphate (IP3) receptor-binding protein and an IP3 indicator
JP6187960B2 (ja) がんの治療又は予防剤
Baron et al. The α‐subunit of the trimeric GTP ase Go2 regulates axonal growth
JPWO2003044196A1 (ja) ポストシナプス蛋白質
CA2459013C (en) Proteins having effects of controlling cell migration and cell death
MXPA04003421A (es) Familias de proteinas ee3 y secuencias de adn correspondientes.
JP4843595B2 (ja) 生体内のアポトーシス細胞の除去促進剤及び除去阻害剤
Li et al. Huntingtin-associated protein 1 interacts with Hrs and functions in endosomal trafficking

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060602

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090804

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091002

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091208

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100202

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100302

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100303

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130312

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140312

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees
S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350