JP4472534B2 - 細胞内Caイオンの機能制御 - Google Patents
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Description
ホスファチジルイノシトール(PI)は、ジアシルグリセロールの残りの水酸基にイノシトールがリン酸エステルとして結合したものである。ホスファチジルイノシトール(PI)は、リン脂質の1種であり、細胞の膜上にも存在しているが、その量は全リン脂質の10%未満である。ホスファチジルイノシトール(PI)は、大きく分けて2つの役割をになっており、そのひとつは膜に存在したままでリン酸化酵素などの各種のリン酸化反応の足場となることであり、他のひとつはリン酸化イノシトール部分が加水分解されて、セカンドメッセンジャーとしてのリン酸化イノシトールを放出する作用である。
PIのイノシトール部分の水酸基はさらにリン酸化され、イノシトールの3位、4位、若しくは5位、又はこれらの2箇所以上がリン酸化されたイノシトールリン脂質が知られている。とりわけ、4位及び5位がリン酸化されたホスファチジルイノシトール4,5−ビスホスフェイト(PI(4,5)P2)は、小胞輸送や核への情報伝達の役割をになうホスファチジルイノシトール3,4,5−トリホスフェイト(PI(3,4,5)P3)の中間体となるばかりでなく、それ自身でも極めて重要な役割をになっている。
PI(4,5)P2は種々のアクチン結合タンパク質と結合することができ、細胞内のアクチンを再編成させることにより細胞の形態を保持し、変化させる役割をになっている。PI(4,5)P2の他の重要な役割は、ホスホリパーゼC(PLC)により、イノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)及びジアシルグリセロール(DAG)に加水分解され、これらの分子をセカンドメッセンジャーとして放出することである。放出されたイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)は、細胞の小胞体の表面に存在するIP3レセプター(IP3R)に結合し、小胞体内に貯蔵されているCa2+を細胞質に放出させ、Ca2+依存性の各種の酵素を活性化させる。また、DAGはCキナーゼを活性化させる。
細胞の受容体にホルモン、サイトカイン、神経伝達物質などの物質が結合することにより、細胞内にイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)の産生が誘発され、当該IP3が細胞の小胞体の表面に存在するイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)レセプター(IP3R)に結合する。当該IP3Rは、IP3によるシグナル伝達をCa2+によるシグナル伝達系に変換することにより、さまざまな細胞機能において、胚の発生、細胞の分化、増殖、貪食、顆粒分泌、運動、神経系における作用などのきわめて重要な役割を果たしており、細胞内でIP3Rが正常に機能することが細胞の恒常性を維持する上で極めて重要なこととなっている。このように、IP3Rは細胞のシグナル伝達の関与する重要なタンパク質であるばかりでなく、細胞の多彩な機能を調整することができる重要なタンパク質でもある。したがって、IP3Rの機能を調節することにより細胞の各種の作用を調整することも可能となる。
細胞内におけるIP3やIP3Rの重要性が明らかにされてくるにつれて、これらについての研究も活発になってきており、IP3Rに対するモノクローナル抗体についての特許出願(先行技術文献1参照)、IP3を拮抗する方法についての特許出願(先行技術文献2参照)、さらにIP3Rに高親和性で結合するポリペプチドについての特許出願(先行技術文献3参照)などの特許出願もなされてきている。
これまでの分子クローニングの研究により、IP3Rファミリーには哺乳動物において少なくとも3つのサブタイプが存在することが知られている(先行技術文献4〜6参照)。これらのIP3Rは、構造的、機能的には、リガンド結合ドメイン、調節ドメイン、およびチャネルドメインの3つのドメインから構成されていることが明らかになっている(先行技術文献7参照)。
結合ドメインは、IP3との結合に係わっており、IP3RのN末端部位の約600個のアミノ酸からなるドメインである。突然変異解析により、この部位の3アミノ酸残基、例えばマウスIP3Rタイプ1のArg−265、Lys−508、及びArg−511が、IP3との結合にとってきわめて重要であることが分かっている。また、Arg−658が種々のイノシトールリン酸との特異的な結合を決定することも知られている。
チャネルドメインは、IP3RのC末端付近に存在し、6個の膜貫通領域を有し、Ca2+チャネルに対応している。膜貫通領域の1〜4番目は、IP3Rファミリーにおいて高度な相同性が維持されている。
調節ドメインは、N末端側の結合ドメインと、C末端側のチャネルドメインの間に存在し、このドメインは、Ca2+、Ca2+−カルモデュリン、FK506結合性蛋白12K、ATPなどのさまざまな調節因子の結合部位、およびcAMP依存性蛋白質キナーゼ、cGMP依存性蛋白質キナーゼ、蛋白質キナーゼCによるリン酸化の部位が含まれている。そして、この調節ドメインが、IP3の結合によりチャネルを開く作用をしていると考えられる。IP3に誘導されるCa2+の放出は、この調節ドメインによるさまざまな修飾によって精密に制御されていると考えられる。この調節ドメインは、IP3Rファミリー間における相同性がその他の部位に比べて低く、その結果、各々のサブタイプのIP3R/Ca2+チャネル機能がそれぞれ異なって調節され、各々のサブタイプに特有なチャネル特性が生じていると考えられる。
このようにIP3Rの調節ドメインに結合する物質により、IP3Rの機能が微妙に調整されていることから、IP3Rの調節ドメインに結合する物質を解明してゆくことはIP3Rの機能を解明し、それが原因となっている各種の疾患に治療や診断に極めて有用なことになる。
一方、炭酸脱水酵素関連タンパク質(carbonic anhydrase−related protein(CARP))は、プルキンエ細胞(小脳皮質の大型神経細胞で、梨状細胞体および葉を横切る平面に配列された樹状突起を有する細胞)に特異的な遺伝子のスクリーニングにより同定されたタンパク質である(先行技術文献8参照)。CARPは291個のアミノ酸で構成され、N末端のアミノ酸50個の内に16個のグルタミン酸(Glu)残基および4個のアスパラギン酸(Asp)残基からなる酸性アミノ酸クラスターを有している。また、CARPは炭酸脱水酵素の主要なモチーフを有しているが、触媒の亜鉛を配位するための残基を有していないので炭酸脱水酵素活性はない。事実、CARPには炭酸脱水酵素活性がないことが報告されている。ヒトCARP遺伝子についてもクローニングが行われており(先行技術文献9参照)、マウスのそれとアミノ酸で98%の相同性があり、進化の過程で高度に保存されていることが明らかになっているが、これまでのところ、CARPは小脳のプルキンエ細胞に高度に発現することが分かっているが、CARPの機能は解明されていないし、組織分布についてもこれまでに包括的な解明もなされていない。
この出願の発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
1. 特開平8−134099号
2. 特表平8−502068号
3. 特開2000−135095号
4. Furuichi,T.,Yoshikawa,S.,et al.,(1989),Nature,342,32−38
5. Blondel,O.,Takeda,J.,et al.,(1993),J.Biol.Chem.,268,11356−11363
6. Yamamoto−Hino,M.,Sugiyama,T.,et al.,(1994),Receptors Channels,2,9−22
7. Furuichi,T.,Kohda,K.,et al.,(1994),Curr.Opin.Neurobiol.,4,294−303
8. Karo,K.,(1990),FEBS Lett.,271,137−40
9. Skaggs,L.A.,Bergenhem,N.C.,et al.,(1993),Gene,126,291−221
10. Bultynck G,De Smet P,et al.,(2001),Biochem J.,354,413−22
第2図は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)の組織分布を調べたウェスタンブロットの結果を示す図面に代わる写真である。可溶性分画(10μg/レーン)について、ドデシル硫酸ナトリウム存在下で5%のポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、ニトロセルロースにトランスファーした後、抗CARPポリクローナル抗体2μg/mlで検出した。
第3図は、培養したプルキンエ細胞を、抗CARP抗体(第3図左側、緑色)、及び抗IP3R1抗体(第3図の中間、赤色)で免疫染色したもの、並びに両者をマージした(第3図の右側)ものを示す図面に代わるカラー写真である。矢印は、CARPとIP3R1の局在の例を示している。
第4図の(A)はマウス小脳の細胞質分画を、GST−ELまたはGSTとともにインキュベートし、結合した蛋白質について、グルタチオンセファロースを用いてプル−ダウンアッセイを行い、グルタチオンにて溶出し、抗CARP抗体を用いてウェスタンブロット法で解析した結果を示し、第4図の(B)はマウス小脳ミクロソームの界面活性剤抽出物について、(A)で説明した方法でGST−CARPまたはGSTを用いプル−ダウンアッセイを行い、結合した蛋白質について、抗IP3R1抗体KM1112にて免疫ブロット解析を行った結果を示し、第4図の(C)は精製されたCARP−Hisについて、GST−ELまたはGSTを用いてプル−ダウンアッセイを行い、結合した蛋白質について、抗CARP抗体にて免疫ブロット解析を行った結果を示す図面に代わる写真である。
第5図は、CARPおよびIP3R1のN末端およびC末端側の欠失した変異体の構造、及びCARP変異体とMD2、CARPとIP3R1変異体間の相互作用を、酵母のツーハイブリッドシステムによるβ−galアッセイ(n=3)で解析した結果を示したものである。β−galアッセイは、青色のコロニーが出現するまでの時間で評価し、青色のコロニーが30分で出現した場合を「+++」で示し、2時間で出現した場合を「++」で示し、8時間以内に出現した場合を「+」で示している。
第6図は、IP3R1へのIP3の結合に及ぼすCARPの阻害作用をスキャッチャードプロットによって行った結果を示している。黒四角印(■)はCARPの存在下の場合を、黒丸印(●)はCARPの非存在下の場合を示す。CARPの存在下または非存在下で行った3回の実験のKdの平均値(Kd±S.D.)は、各々33.5±2.07nMおよび18.2±4.58nMであった。
また、本発明者らは、IP3Rを豊富に発現している小脳のプルキンエ(Purkinje)細胞のみにCARPが発現していることを明らかにすると共に、CARPのIP3Rに対する作用を検討し解析した。
したがって、本発明は細胞内におけるカルシウムの放出の機構を制御することを目的とするものであり、さらには細胞内におけるカルシウムが関与しているシグナル伝達を制御することを目的とするものである。また、本発明は、炭酸脱水酵素関連蛋白質(CARP)による細胞内のカルシウムの放出の制御、IP3Rの作動の調節や作動の診断をすることを目的とするものである。
本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなるイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)レセプター(IP3R)の作動調節剤に関する。
また、本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなる細胞内におけるカルシウム放出の制御剤、及びそれを用いた制御方法に関する。
IP3Rには、Ca2+、Ca2+−カルモデュリン、FK506結合性蛋白12K、ATP、キナーゼなど、さまざまな調節因子が関与している。これらの多くはIP3Rの中央部分に結合したり、またはリン酸化することによりIP3Rの機能を調節していると考えられている。
IP3Rの新規な調節因子を探索するために、本発明者らは、IP3R1の調節ドメインをベイトとして、酵母のツーハイブリッド法を用いてマウスの脳のcDNAライブラリーをスクリーニングした。
第1図にマウスIP3Rタイプ1(mIP3R1)のリガンド結合ドメイン、調節ドメイン、およびチャネルドメインを模式的に示す。第1図の中段に示す数字はアミノ酸の番号を示す。第1図の調節ドメインには、FK506結合性蛋白(FKBP)(アミノ酸番号:1400−1401)、Ca2+−カルモデュリン(CaM)(アミノ酸番号:1564−1585)、そして推定としてのATP結合部位(ATP)(アミノ酸番号:1773−1778、1775−1780、及び2016−2021)、PKAリン酸化のためのセリン残基(アミノ酸:1588、1755)のための結合部位が示されている。クロモグラニンAおよびB(CGA/B)の結合部位は、チャネルドメイン(膜貫通部位5番目と6番目の間)に示されている。本発明者らは、この調節ドメインの一部分をベイトとして用いた。第1図に、本発明で用いた6個のベイトに相当する位置がMD1〜MD6として示されている。
mIP3R1のアミノ酸の1245−2264番目を、重複する6断片に分割し、それぞれの対応するcDNA断片をベイトとして使用した。IP3R1調節ドメインのアミノ酸残基1245−2264番目をマッピングし、これに重複している次のセンス鎖(S)及びアンチセンス鎖(A)からなるプライマーセットを使用し、PCR法により6ベイト構成体(MD1〜MD6)を作製した。
PCR法により得られたcDNAを、EcoRIおよびSalI、またはSalI単独のいずれかにより消化し、次にpGBT9(クロンテック社)に連結した。このプラスミドのすべてについてシーケンシングを行い、これらのcDNAのクローニングがフレームに合わせて翻訳され、PCRに起因するエラーがないことを確認した。
なお、MD2に対応するmIP3R1の1387番目から1647番目までのアミノ酸配列を配列表の配列番号1に示す。
ベイト断片MD1、3、4、5、及び6による一次スクリーニングでは、数十個の候補物質が得られたが、非翻訳配列として知られている領域を含んでいたり翻訳フレームシフトをおこしていたりして、IP3R1結合蛋白質とは考えられなかった。一方、MD2断片を用いたスクリーニングでは、13個のポジティブクローンを得た。DNAのシーケンシング解析を行ったところ、これらはすべてが炭酸脱水酵素関連蛋白質(CARP)をコードしていることが明らかになった。これらのクローンは、CARP cDNAの5’UTRの異なる長さを含むものであったが、フレームに基づいて完全長のコーティング領域を含んでいた。
炭酸脱水酵素関連蛋白質(CARP)のマウスのCARPの291個のアミノ酸のアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。
MD1およびMD2断片には、FKBP12結合部位と推測される部位が含まれていたが、今回の酵母ツーハイブリッド法によるスクリーニングでは、ポジティブクローンからFKBPを見つけることはできなかった。この結果は、FKBP12がIP3R1に結合しないという最近の報告を裏付けている可能性がある(先行技術文献10参照)。別の原因として、cDNAライブラリーの大きさ、あるいはIP3R1へのFKBPの結合に別の蛋白質が必要であることも可能性として考えられるが、いずれにしても今回の実験においてはFKBPを見出すことはできなかった。また、MD2には、カルモデュリン結合部位も含まれているが、IP3R1へのカルモデュリン結合はCa2+依存性であるため、今回のスクリーニングではカルモデュリンの結合を検出できなかった。
炭酸脱水酵素関連蛋白質(CARP)は、小脳のプルキンエ細胞に高度に発現することが知られているが、組織分布についてはこれまで包括的な研究がなされていないので、まず、ウェスタンブロット解析によりCARPの組織分布を調べた。
結果を第2図に図面に代わる写真で示す。第2図は、種々の臓器の可溶性分画におけるCARPの発現を示している。CARP蛋白質は、既報のとおり、小脳での発現が顕著であり、また小脳ではIP3R1も豊富に発現している。大脳、嗅球、嗅上皮、鋤鼻器、肺、顎下腺、肝臓、副腎、胃、小腸、大腸では、発現レベルが低い。心臓、胸腺、脾臓、膵臓、卵巣、子宮、精巣、筋肉には、シグナルが認められなかった。
小脳の免疫組織化学解析では、CARPはIP3R1と共に、小脳のプルキンエ細胞の細胞質における発現が顕著であることが明らかになった。プルキンエ細胞においてIP3R1は、豊富かつ広範囲に発現しているが、クラスターが形成されているために、特に樹状突起では均質性が低かった。CARPは細胞質可溶性の蛋白質ではあるが、もしCARPがIP3R1に結合するとすれば、CARP蛋白質の分布は均質ではなく、IP3R1とクラスターを形成して局在化している。プルキンエ細胞におけるCARPおよびIP3R1の細胞内での局在化を明確にするために、プルキンエ細胞の一次培養を行い免疫組織化学解析を行った。第3図は、プルキンエ細胞におけるCARP(緑色)およびIP3R1(赤色)の発現を二重染色法により示した、図面に代わるカラー写真である。第3図の左側は抗CARP抗体(緑色)で、左から2番目は抗IP3R1抗体(赤色)で免疫染色したものであり、右側はこれらをマージしたものである。第3図の上段は培養したプルキンエ細胞の全体像であり、下段はその拡大図である。矢印は、CARPとIP3R1の局在の例を示している。
この結果、双方とも、細胞質、樹状突起、および軸索において発現している(第3図参照)。細胞内での局在により、CARPがIP3R1とクラスターを形成して局在していることが明らかになった(第3図の矢印参照)。CARPとIP3R1が豊富かつ高特異的に共に発現し、プルキンエ細胞において局在していることから、これらの蛋白質が生理学的にも結合していることが示された。
次に本発明者らは、生化学的方法によりCARPとIP3R1間の相互作用をさらに調べるために、プル−ダウン(pull−down)法により両者の相互作用を調べた。このために、本発明者らはSf9細胞内での発現システムを開発した。IP3R1のチャネルドメインを除去してIP3R1を可溶性にした。GST−ELと命名したこの可溶性IP3R1は、リガンド結合ドメインと調節ドメインの双方が含まれ(mIP3R1のアミノ酸の1−2217)、そのN末端にはGSTがある。マウス小脳の細胞質分画を、GST−ELまたはGSTにてインキュベートし、この組換え蛋白質へのCARPの結合を抗CARP抗体を用い免疫ブロット法により解析した。結果を第4図に図面に代わる写真で示す。第4図の(A)は、マウス小脳の細胞質分画を、GST−ELまたはGSTを用いてインキュベートし、結合した蛋白質について、グルタチオンセファロースを用いてプル−ダウンアッセイを行い、グルタチオンにて溶出し、抗CARP抗体を用いてウェスタンブロット法で解析した結果を示す。第4図の(B)は、マウス小脳ミクロソームの界面活性剤抽出物について、前記の(A)で説明したGST−CARPまたはGSTを用いたプルダウンアッセイを行い、結合した蛋白質について、抗IP3R1抗体KM1112にて免疫ブロット解析を行った結果を示す。第4図の(C)は、精製済みのCARP−Hisについて、GST−ELまたはGSTを用いてプルダウンアッセイを行い、結合した蛋白質について、抗CARP抗体にて免疫ブロット解析を行った結果を示す。
この結果、CARPがGST−ELに特異的に結合し、GST単独には結合しないことが示された。相互実験では、マウス小脳ミクロソームの界面活性剤抽出物について、GST−CARPを用いたプルダウンアッセイを行い、IP3R1の結合を抗IP3R1抗体にて分析した。第4図の(B)に示されるように、IP3R1とGST−CARPとの相互作用はあったが、GSTとの相互作用はなかった。IP3R1へのCARPの結合が直接的であるか否かを確認するため、精製済みHisタグ付きCARPについて、GST−ELを用いプルダウンアッセイを行った。第4図の(C)に示されるように、CARP−HisはGST−ELに特異的に結合し、CARPとIP3R1間の相互作用が直接的であることが示された。
以上の結果を総合すると、これらの知見は、CARPが新たなIP3R1結合性の蛋白質であることが示された。
次に、本発明者らは、CARPとIP3R1の相互作用のドメインを確定することにした。そのために、双方の遺伝子をトランケートした変異体を作製し、酵母のツーハイブリッド法により解析した。
第5図は、CARP(第5図の上の段)およびIP3R1(第5図の下の段)のN末端およびC末端を欠失させた変異体の遺伝子の構造を示している。CARP変異体とMD2、CARPとIP3R1変異体間の相互作用を、酵母のツーハイブリッド法により分析した。作製した変異体と、酵母のツーハイブリッド法によるβ−galアッセイ(n=3)の結果を第5図に示す。β−galアッセイは、青色のコロニーが出現するまでの時間で評価した。すなわち青色のコロニーが、30分(+++)、2時間(++)および8時間(+)以内に出現している場合を+としている。
この結果、CARPのN末端のアミノ酸44個が欠失した場合には弱いが結合活性が見られたが、その他の部位が欠失した場合にはIP3R1への結合が失われた。これは、IP3R1へのCARPの最小限の結合部位が、45−291のアミノ酸であることを示している。IP3R1の場合には、1387−1647のアミノ酸がCARPとの結合に必要であることが示された。
次に、IP3の結合に及ぼすCARPの作用について検討した。
プルキンエ細胞におけるIP3誘導によるCa2+の放出は、その他の組織や単離されたIP3R1(EC50=100nM〜1μM)に比べて、はるかに高濃度のIP3(EC50≧10μM)を必要とすることが知られている。本発明者らの前記して実験結果によれば、CARPはプルキンエ細胞においてIP3R1と共に顕著に発現し、IP3R1に結合することが示された。そして、プルキンエ細胞ではIP3に対するIP3R1の感受性が低下しいることが知られており、この原因として、プルキンエ細胞におけるCARPの発現があると推測された。そこで、本発明者らは、IP3結合に及ぼすCARPの阻害作用について検討した。
精製されたIP3R1を用いて結合アッセイを行い、IP3R1へのIP3の結合親和性に対するCARPの作用を評価した。精製されたIP3R1を、精製組換えCARPの存在または非存在下で、種々の濃度の〔3H〕IP3を用いてインキュベートし、スキャッチャードプロットにより解析した。
第6図は、CARPの存在下(第6図の■印)または非存在下(第6図の●印)でのIP3R1に対するIP3による特異的〔3H〕IP3結合の阻害に関するスキャッチャードプロット解析の結果を示す。第6図の横軸は結合したIP3量(pmol/mg)を示し、縦軸は結合したIP3量/結合していないIP3量(pmol/mg/nM)を示す。
この結果、CARPの存在または非存在下でのIP3R1に対するIP3結合の解離定数の平均値(Kd±S.D.)は、各々33.5±2.07nMおよび18.2±4.58nMであることがわかった。そして、CARPの存在または非存在下でのBmax値は、各々1630±108pmol/mgおよび1720±234pmol/mgであることから、IP3の結合部位の最大数はCARPの存在によって変化しないことが示された。これらの結果は、CARPが拮抗作用ではなく、親和性を低下させることによって、IP3R1に対するIP3結合を阻害していることを示している。これは、CARPの結合により、IP3R1の立体配座が変化し、このためにIP3に対する感受性が低下するものと推測される。
プルキンエ細胞でのIP3誘導によるCa2+の放出におけるIP3に対する感受性の低下の原因のひとつとして、IP3R1の高密度化がこれまで報告されていた(Ogden,D.and Capiod,T.(1997),J.Gen.Physiol.,109,741−56)。この説明に加え、プルキンエ細胞におけるIP3R1へのIP3結合に及ぼすCARPの阻害作用の結果としてIP3に対する感受性の低下が生じているという新たな知見を本発明は提供するものである。
本発明のイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)レセプター(IP3R)として、マウスのものを用いて説明してきたが、本発明のIP3Rはマウスに限定されるものではなく、例えば線虫、ショウジョウバエなどの動物、好ましくはヒト、マウス、ラット、ハムスター、サル、イヌ、ウサギなどの哺乳動物であればよい。また、前記してきた説明ではIP3Rのサブタイプとしてサブタイプ1を用いて説明してきたが、他のサブタイプについても同様にして結合を確認することは可能である。したがって、特別の事情の無い限り本発明はIP3Rの全てのサブタイプをも包含するものである。好ましいサブタイプとしては、前記で説明してきたサブタイプ1が挙げられる。
本発明の炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)としては、天然のものであってもよいし、遺伝子の情報に基づいて組換え技術により製造されたものであってもよい。また、本発明のCARPは前記の説明で用いられてきたマウス由来のものに限定されるものではなく、例えば線虫、ショウジョウバエなどの動物、好ましくはヒト、マウス、ラット、ハムスター、サル、イヌ、ウサギなどの哺乳動物であればよい。本発明のCARPは、使用されるIP3Rと同種の動物のCARPを用いるのが好ましいが、これに限定されるものではない。さらに、本発明のCARPは、全長のものであってもよいが、IP3Rとの結合に必要とされる最小限のアミノ酸配列、例えばマウスの例では、少なくとも45−291のアミノ酸配列を有するものであればよい。好ましいCARPとしては、天然のアミノ酸配列を有するものが挙げられるが、IP3Rとの結合性を有するものであれば、天然のアミノ酸配列のうちの1個以上のアミノ酸は欠失し、付加し、及び/又は他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列を有するものであってもよい。
本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなるIP3Rの作動調節剤を提供するものであり、本発明の作動調節剤は、CARP単独であってもよいし、緩衝液などの生物学的に許容される担体を含有する組成物となっていてもよい。また、本発明の作動調節剤は、CARPの存在しない場合に比べてIP3に対するIP3Rの作動が変動、亢進または抑制されるものであればよい。前記で説明してきたマウスの例では抑制される例が示されている。使用されるCARPの濃度については、IP3Rの作動が変動できる濃度であればよい。
また、本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなる細胞内におけるカルシウム放出の制御剤を提供するものであり、本発明の制御剤は、CARP単独であってもよいし、緩衝液などの生物学的又は製薬的に許容される担体を含有する組成物、例えば医薬組成物などとなっていてもよい。また、本発明の制御剤は、CARPの存在により細胞内のカルシウムの放出量を制御できる、減少又は増加できるものであればよい。使用されるCARPの濃度については、特に制限はなく、副作用や毒性が生じない範囲で細胞内のカルシウムの放出量を制御できる濃度であればよい。本発明の細胞内のカルシウムの放出の制御は、イノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)により誘発されるカルシウムの放出であることが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
さらに、本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)を細胞に添加することからなる細胞内におけるカルシウム放出を制御する方法を提供するものである。本発明のこの方法における細胞としては、生体を構成している細胞であって、好ましくはIP3Rを有する細胞である。本発明のこの方法は細胞内におけるセカンドメッセンジャーとしてのIP3の作用を解析するためや、細胞内におけるIP3Rの作動を検査するためだけでなく、治療や診断にも広く適用可能な方法である。
また、本発明は、炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)がIP3R、好ましくはIP3R1に特異的に結合する物質であることを明にするものであり、当該CARPによりIP3Rの検出や同定をすることも本発明に包含されている。このような目的のためには、適当な方法でCARPを標識化し、このような標識化されたCARPによりIP3Rを検出、同定、又は定量することも可能となる。
なお、特願2003−141083明細書に記載された内容を、本明細書にすべて取り込む。
以下の実施例における、酵母のツーハイブリッドアッセイは、メーカーのプロトコール(米カリフォルニア州パロアルト、クロンテック社)に従い、MATCHJMAKERTM Two−Hybridシステムを使用して行った。
実施例1 (ベイト構築体の設計と合成)
第1図に示されるIP3R1の調節ドメインの一部をベイトとして使用し、6種のベイトを構築した。
マウスIP3R1(mIP3R1)のアミノ酸の1245−2264番目を、重複する6断片に分割し、それぞれの対応するcDNA断片をベイトとして使用した。IP3R1調節ドメインのアミノ酸残基1245−2264番目をマッピングし、これに重複している次のセンス鎖(S)及びアンチセンス鎖(A)からなるプライマーセットを使用し、PCR法により6ベイト構成体(MD1〜MD6)を作製した。
PCR法により得られたcDNAを、EcoRIおよびSalI、またはSalI単独のいずれかにより消化し、次にpGBT9(クロンテック社)に連結した。このプラスミドのすべてについてシーケンシングを行い、これらのcDNAのクローニングがフレームに合わせて翻訳され、PCRに起因するエラーがないことを確認した。
実施例2 (cDNAライブラリーの構築)
マウス脳cDNAライブラリーを、pGAD−GL(クロンテック社)を用いて構築した。即ち、マウス脳(6週齢ddYマウス;日本国浜松市、日本エスエルシー株式会社)からの全RNAについて、オリゴ(dT)−セルロース・クロマトグラフィーを用いて、ポリ(A)+mRNA発現を濃縮した。ランダムな6量体をプライマーとして使用し二本鎖cDNAを作製し、アダプターEcoRIに連結した。EcoRIで消化後、400bpを超えるcDNAを、セファロースCL2B(米ニュージャージー州ピスカタウェイ、アマシャム バイオサイエンス株式会社)を用いて分別して回収した。これらをpGAD GLのEcoRI部位に挿入した。大腸菌XL1−Blue MRF(米カリフォルニア州ラホーヤ、ストラタジーン社)により、約5×105の独立したクローンを作製し、1回増幅した後、プラスミドDNAを単離した。
実施例3 (抗体の調製)
文献に記載の方法により(Maeda,N.,Niinobe,M.,et al.,(1988),J.Neurochem.,51,1724−1730;Maeda,N.,Niinobe,M.,et al.,(1990),EMBO J.,9,61−67;Sugiyama,T.,Furuya,A.,et al.,(1994),FEBS Letters,354,149−154)、mIP3R1、4C11、18A10およびKM1112に対するモノクローナル抗体を調製した。炭酸脱水酵素ファミリーの中で異なっているマウスCARPのアミノ酸残基267−279(CDGILGDNFRPTQ)に対応するペプチドを合成し、このペプチドを、MBS(m−maleimidobenzoyl N−hydroxysuccinimide)エステルを使用し、N末端のCys残基を通じてアオガイヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin(KLH))にコンジュゲートさせた。ポリクローナル抗体をウサギ(New England White、日本国北海道、ホクドー洞爺免疫研究所)から作製した。この抗体を、標準プロトコールに従い抗原性のペプチド結合ビーズを用いて、抗血清から精製した。
実施例4 (CARPの発現のウェスタンブロット解析)
種々の臓器におけるCARPの発現を、ウェスタンブロット法により解析した。マウスから切断した各臓器に、ホモジナイズ用バッファー(0.32Mスクロース、1mM EDTA、1mM2−メルカプトエタノール、プロテアーゼ阻害剤(0.1mMフェニルメチルスルホニルフルオライド、10μMロイペプチン、10μMペプスタチンA、10μM E−64)、および10mMトリス−HCL pH7.4)を加え、ガラス−テフロン(登録商標)製ホモジナイザーを使用してホモジナイズした。心臓、肝臓、腎臓、副腎、精巣、筋肉については、これら臓器をハサミで小片に細切した後にホモジナイズした。このホモジネートを4℃にて20分間、100,000×gで遠心した。この遠心上清液(10μg)を使用し、ドデシル硫酸ナトリウム存在下で5%のポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、ニトロセルロースにトランスファーした後、抗CARP抗体にて免疫検出した。
結果を第2図に示す。
実施例5 (免疫組織化学)
一次培養を行った小脳プルキンエ細胞の調製および免疫組織化学解析は、文献(Yuzaki,M.,and Mikos hiba,K.,(1992),J.Neurosci.,12,4253−63.)に記載の方法に準じて行った。一次抗体および二次抗体を組み合わせた後、ウサギ抗CARPポリクローナル抗体、FITC結合抗ウサギIgG抗体、抗IP3R1モノクローナル抗体、18A10およびTexasRed結合抗ラットIgG抗体を使用して二重染色を行った。
結果を第3図に示す。
実施例6 (Sf9細胞におけるIP3R1のチャネルドメインの欠失した組換え体の発現)
マウスIP3R1のN末端部位(残基1−225)をコードするDNAを、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)融合ベクターpGEX−KGにインサートした。GST−IP3R1(1−225)断片を、バキュロウイルストランスファーベクターpBlueBac4.5(インビトロジェン社)にサブクローニングした。GST−IP3R1(1−225)のSmaI部位から下流の3’−部位を、マウスIP3R1のSmaI−EcoRI断片(残基79−2217に対応)と交換し、GST−IP3R1(1−2217)を構築した(GST−ELと呼ぶ)。メーカーのプロトコールに従い、Bac−N−BlueTMトランスフェクション・キット(インビトロジェン社)により、GST−ELをもつ組換えバキュロウイルスを作製した。感染多重度5で組換えバキュロウイルスを感染させることにより、2×108個のSf9細胞にGST−ELを発現させ、48時間インキュベートした。GST−ELを発現している細胞に、HEPES 10mM(pH7.4)、NaCl 100mM、EDTA 2mM、2−メルカプトエタノール 1mM、0.1% トリトンX−100、およびプロテアーゼ阻害剤を加え、ガラス−テフロン(登録商標)製ホモジナイザーを使用してホモジナイズした。このホモジネートを30分間、20,000×gで遠心した。ベンダーの推奨に従って、グルタチオンセファロース4B(アマシャム ファルマシア バイオテク株式会社)を用い、この遠心上清液からGST−ELを精製した。
実施例7 (大腸菌における組換えCARPの発現)
完全長CARP cDNAを、pET23aベクター(Stratagene社)のNdeIおよびHindIIIサイトに、転写のフレームを合わせてクローニングした。これによってHis−タグが組換えCARPのC末端に導入された。CARP発現ベクターにより形質転換した大腸菌BL21(DE3)の単一コロニーを、アンピシリン100μg/mlを含むLuria−Bertani培地1.5mlで、37℃で10時間インキュベートした。この培養菌1ミリリットルを、アンピシリン100μg/mlを含むLuria−Bertani培地1リットルに接種し、A600=0.7に達するまで25℃でインキュベートした後、培養菌にイソプロピルチオ−β−D−ガラクトシドを添加した(最終濃度、0.5mM)。25℃で8時間、インキュベーションを続け、遠心分離器を用いて細胞を採取し、リン酸塩緩衝食塩水(PBS)10mlにて洗浄後、PBS 50mlで4℃で超音波処理した。不溶性物質を遠心除去した後、上清をハイトラップ−キレートカラム(アマシャム バイオサイエンス社)に載せた。組換えCARP蛋白質を、まずメーカーのプロトコールに従って精製、次にMono Qを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー(アマシャム バイオサイエンス社)で精製し、最後に複合体共沈法(pull−down実験)またはIP3結合実験で使用するバッファーに対して透析し、バッファーを交換した。
GST融合組換えCARPについては、完全長CARP cDNAをpGEX−KGのBamHIおよびXhoIサイトにクローニングしてGST−CARPを構築した。GST−CARPを大腸菌に発現させ、上記のようにグルタチオンセファロースを用いて精製した。
実施例8 (IP3R1へのCARP結合の生化学解析)
成体マウス小脳を、HEPES(pH7.4)10mM、スクロース 320mM、EDTA 2mM、2−メルカプトエタノール 1mM、およびプロテアーゼ阻害剤を加えてホモジナイズし、そのホモジネートを10分間、1,000×gで遠心した。この遠心上清液を、60分間、100,000×gで遠心して細胞質分画(上清)および未精製のミクロソーム分画(小球)を得た。この細胞質分画にNaCl100mMを加え、GST−ELまたはGST20μgにより4℃で2時間、インキュベートした。グルタチオンセファロース10μlを加え、さらに2時間インキュベートした後、この樹脂を洗浄バッファー(HEPES(pH7.4)10mM、NaCl100mM、EDTA2mM、2−メルカプトエタノール1mM、および0.01%トリトンX−100)にて5回洗浄し、結合した蛋白質をグルタチオン20mMにて溶出した。溶出した蛋白質を、抗CARP抗体を用いてウェスタンブロット法で解析した。
未精製のミクロソームに1%トリトンX−100を加え可溶化し、HEPES(pH7.4)50mM、EDTA2mM、2−メルカプトエタノール1mM、およびプロテアーゼ阻害剤に4℃で30分間溶解し、30分間、20,000×gで遠心した。この遠心上清液について、先に説明したとおりGST−CARPまたはGST10μgを用いてプルダウンアッセイを行い、結合した蛋白質について、抗IP3R1抗体KM1112を用いて免疫ブロット解析を行った。
直接的な結合アッセイについては、洗浄バッファーにて精製済みのCARP−His(5μg)に対し、先に説明したとおりGST−ELまたはGST20μgを用いてプルダウンアッセイを行い、結合した蛋白質について、抗CARP抗体を用いて免疫ブロット解析を行った。結果を確認するため、実験を少なくとも3回反復した。
結果を第4図に示す。
実施例9 (酵母のツーハイブリッドアッセイによる結合サイトの同定)
結合サイトを確認するため、pGBT9およびpGAD−GLを各々用いて、IP3R1およびCARP構成体のいずれかをトランケートした。トランケート型IP3R1構成体には、次のアミノ酸が含まれている:
pGBT9−ΔI1(mIP3R1:アミノ酸の1387−1464)、
pGBT9−ΔI2(mIP3R1:アミノ酸の1387−1520)、
pGBT9−ΔI3(mIP3R1:アミノ酸の1387−1598)、
pGBT9−ΔI4(mIP3R1:アミノ酸の1513−1598)、
pGBT9−ΔI5(mIP3R1:アミノ酸の1513−1647)。
トランケート型CARP構成体には、次のアミノ酸が含まれている:
pGAD−GL−ΔC1(CARP;アミノ酸の1−127)、
pGAD−GL−ΔC2(CARP;アミノ酸の1−147)、
pGAD−GL−ΔC3(CARP;アミノ酸の1−170)、
pGAD−GL−ΔC4(CARP;アミノ酸の1−180)、
pGAD−GL−ΔC5(CARP;アミノ酸の1−217)、
pGAD−GL−ΔC6(CARP;アミノ酸の1−234)、
pGAD−GL−ΔC7(CARP;アミノ酸の45−291)、
pGAD−GL−ΔC8(CARP;アミノ酸の121−291)、および
pGAD−GL−ΔC9(CARP;アミノ酸の184−291)。
このプラスミド構成体のすべてについてシーケンシングを行い、適切なcDNAのクローニングが転写のフレームに合わせて行われたことを確認した。
結果を第5図に示す。
実施例10 (〔3H〕IP3結合アッセイ)
IP3R1に結合する〔3H〕IP3について、CARP存在または非存在下で、ポリエチレングリコールを用いた沈殿法によるアッセイを文献(Maeda,N.,Niinobe,M.,et al.,(1990),EMBO J.,9,61−67)に記載の方法に準じて行った。0.5μgの精製されたIP3R1を、50mMトリス−HCL、pH8.0、1mM EDTA、1mM2−メルカプトエタノール、9.6nM〔3H〕IP3、および種々の濃度のIP3を含む溶液50μl中で、10μgの精製されたHis−CARPの存在下、又は非存在下に、4℃で10分間インキュベートした。非特異的結合を、10μMのIP3の存在下で測定した。
結果を第6図に示す。
また、本発明はその機能が解明されていなかったCARPの新たな機能を明らかにしたものであり、CARPの細胞内におけるカルシウムの放出の制御という新たな用途を提供するものである。
Claims (7)
- 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなるイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)レセプタータイプ1(IP3R1)に対するIP3結合阻害剤。
- 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)が、少なくとも45−291のアミノ酸配列を有するものである請求項1に記載のIP3結合阻害剤。
- 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)が、組換えCARPである請求項1又は2に記載のIP3結合阻害剤。
- 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)からなる細胞内におけるイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)のIP3レセプタータイプ1(IP3R1)への結合により誘発されるカルシウム放出の抑制剤。
- 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)が、少なくとも45−291のアミノ酸配列を有するものである請求項4に記載の抑制剤。
- 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)が、組換えCARPである請求項4又は5に記載の抑制剤。
- 炭酸脱水酵素関連タンパク質(CARP)をインビトロ条件下の細胞に添加することからなる、細胞内におけるイノシトール−1,4,5−三リン酸(IP3)のIP3レセプタータイプ1(IP3R1)への結合により誘発されるカルシウム放出を抑制する方法。
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