JP2002348648A - I形構造部材の溶融亜鉛メッキ方法 - Google Patents

I形構造部材の溶融亜鉛メッキ方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】I形構造部材の溶融亜鉛メッキ工程における、
はらみ、ねじれ、曲がり等の変形を防止する。 【解決手段】ウェブ1の上下にフランジ2を有するI形
構造部材を溶融亜鉛メッキするとき、ウェブ1の横方向
の端部に設けられている継手部ボルト孔5を利用して変
形防止用拘束材6をウェブ1の端部に沿って取り付け
し、ウェブを縦方向にして並列した2個の該I形構造部
材の両端を、前記拘束材に拘束板9をボルト10により
取り付けることにより連結し、この状態で溶融亜鉛メッ
キする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大型のI形構造部
材、特に橋梁用のI形構造部材の新規な溶融亜鉛メッキ
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】各種の鋼鉄製の構造部材が種々の分野で
使用されており、例えば、橋梁主構造部材としても広
く、使用されている。橋梁主構造部材の形式としては、
鈑桁タイプ、箱形タイプ、トラス形タイプ等が知られて
いる。このうち鈑桁タイプには、図7および図8に示す
ようなウェブ(腹板ともいう)1の上下部にフランジ2
を溶接などにより取り付けたI形構造部材が用いられて
いる。そして、これらのI形構造部材は、通常図7に例
示するような垂直補剛材(スチフナーともいう)3、ま
たは図8のような水平補剛材4をウェブ1の両面または
片面に溶接することにより、I形構造部材を補強した
り、その変形を防止している。また、このようなI形構
造部材は横方向に接続して用いるために、ウェブ1の端
部部には図7に示すように多数の継手部ボルト孔5が設
けられている。
【0003】一方、前記I形構造部材を橋梁などとして
用いる場合には、防錆のために塗装または溶融亜鉛メッ
キ(以下、単に亜鉛メッキともいう)が施される。後者
の亜鉛メッキは、I形構造部材を溶融亜鉛メッキ浴槽
(440℃程度)に通常、4〜10分間メッキ浸漬した
後、浴槽から引き上げて温水冷却することにより行われ
る。かかる溶融亜鉛メッキによる防錆は、塗装に比べ優
れた耐食性と経済性を備えているが、以下に記述するよ
うな熱変形の大きな問題がある。
【0004】すなわち、鈑桁用のI形構造部材のような
長尺、大型で、しかも複雑な断面の薄板I形構造部材を
溶融亜鉛メッキすると、ウェブのはらみや桁のねじれ変
形、曲がり変形などの残留変形が多かれ少なかれ必ず生
じる。I形構造部材のメッキ工程においてこのような変
形は、メッキ浴浸漬時と冷却水浸漬時における熱応力に
起因して生じる。一般にメッキ過程では、I形構造部材
にはらみ変形が発生し、次の冷却過程で上下フランジに
発生する圧縮熱応力が前記はらみの影響で偏芯して作用
し、ねじれ座屈が生じるものと考えられている。
【0005】I形構造部材におけるこのようなはらみや
ねじれは、ウェブの板厚や高さ寸法、鋼材の降伏強度な
どの影響を受けて変わり、板厚が小さいほど、高さ寸法
が大きくなるほど、また降伏強度が小さくなるほど増大
する。このほかにフランジとウェブの板厚比、メッキ浸
漬条件などによっても変わり、板厚比が大きいほど、ま
たメッキ浸漬速度が遅くなるほど、これら変形は増大す
る傾向がある。特に、ねじれはこれら諸因子に加え、当
然のことながら部材が長く大型になるに従って大きくな
る。
【0006】従来、このようなI形構造部材の亜鉛メッ
キ時における変形防止策として、ウェブの横方向の両端
部に変形防止用拘束材(以下拘束材とする)を取り付け
る方法が提案されている。図9〜図12は、この方法を
例示したものである。図9は鈑桁に用いる両端部に拘束
材を取り付けたI形構造部材の側面図、図10は該I形
構造部材の右端部分の拡大図、図11は図9の右側面
図、図12は図11のA−A部の部分断面図である。な
お、図9のI形構造部材には、垂直補剛材3(図7参
照)または水平補剛材4(図8参照)は省略してある。
【0007】かかる従来の方法は、剛性のある山形鋼か
らなる拘束材6を図11および図12に示すようにウェ
ブ1の継手部の両側に、ボルト7を通じて強固に緊締し
て取り付け、この拘束材により溶融亜鉛メッキ工程でI
形橋梁部材に発生する熱変形を防止または軽減しようと
するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記拘束材を使用する
従来方法は、それを実施しない場合に比較すると、溶融
亜鉛メッキ工程においてウェブの端部に発生するはらみ
の変形量はかなり低減される。したがって、この拘束材
は、ウェブの端部におけるはらみ変形の有効な防止策の
一つであると言える。しかしながら、この方法はあくま
でI形構造部材の端部のはらみ防止のみであり、部材内
部のはらみやねじれ防止に対する効果はない。I形構造
部材の端部に拘束材を設けても、開放端であることには
変わりなく変形自由度を持っているために、亜鉛メッキ
工程における熱応力によりI形構造部材に発生するねじ
れや曲がり等の変形に対しては殆ど効果がなく、これら
変形は拘束材を設けないときと実質的に同様に発生して
しまう。
【0009】I形構造部材の端部におけるウェブのはら
み変形が防止できても、ねじれや曲がりが生じている
と、I形構造部材を現場において継手で接続し橋梁を組
み立てる場合に、接続しようとするI形構造部材の継手
部の整合が難渋する。そればかりでなく、その変形量が
許容量を超えると継手の取り付けが極めて困難になるの
で、この場合には、現場にて、機械的に変形を矯正する
大掛かりな作業を余儀なくされる。
【0010】したがって、このようなねじれや曲がり
は、I形構造部材を橋梁部材として使用する場合には大
きな問題となるが、この問題は、I形構造部材自体の構
造やその構成部材の厚みや形状を工夫することも考えら
れるが、現時点では、これらの変形を防止するのは困難
である。例えば、ウェブの板厚を厚くすることは重量の
点からしても問題であるが、変形を防止のため、ウェブ
の板厚を1mm厚くしたとしても、亜鉛メッキをする限
りねじれや曲がりを回避できない。特に、ウェブの厚さ
に対して、フランジの板厚がかなり厚くなる場合(例え
ば1:3以上)や部材長さが長い場合(例えば12m以
上)は、亜鉛メッキによるI形構造部材のねじれや曲が
りおよび部材内部のはらみが一層大きくなる。
【0011】これまでのところ、I形構造部材の亜鉛メ
ッキにおいて前記拘束材以外の実用的で有効な変形防止
方法は知られていない。このため、橋梁用の鈑桁におい
ては塗装桁に比べて亜鉛メッキ桁の方が寿命を含め優れ
ていると認識されているにも拘わらず、普及が遅れてい
るのが現状である。
【0012】そこで、本発明は、鈑桁などに使用するI
形構造部材の亜鉛メッキにおいて、はらみ、ねじれ、曲
がりなどの変形を防止できる簡便で実用的な亜鉛メッキ
方法を提供し、また、本発明は、亜鉛メッキしたI形構
造部材を、その輸送、保管または架設をも容易にするも
のである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記目的を達
成するために種々検討した結果により得られたのもので
あり、その要旨は、ウェブの上下部にフランジを有する
I形構造部材を亜鉛メッキするとき、ウェブを縦方向に
して少なくとも2個の前記I形構造部材を並列させ、該
I形構造部材の横方向の両端部を拘束板で連結した状態
で溶融亜鉛メッキ浴浸漬して亜鉛メッキすることを特徴
とするI形構造部材の溶融亜鉛メッキ方法にある。
【0014】さらに、本発明はウェブの横方向の端部に
設けられている継手部ボルト孔を利用して変形防止用拘
束材をウェブの端部に沿って取り付けし、該拘束材を介
して前記I形構造部材の両端を拘束板で連結することを
特徴とするI形構造部材の溶融亜鉛メッキ方法を提供す
る。
【0015】また、本発明はウェブと拘束板との間、ま
たはウェブと変形防止用拘束材との間にスペーサーを介
在させて、拘束板または変形防止用拘束材とウェブとの
間に間隙を設け、できるだけウェブの全面に溶融亜鉛メ
ッキすることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明のI形構造部材の溶融亜鉛
メッキ方法は、従来のようにI形構造部材を単体の状態
で溶融亜鉛メッキ浴槽に浸漬し亜鉛メッキするのではな
く、少なくとも2個のI形構造部材をその横方向の両端
部を拘束板で連結した状態で溶融亜鉛メッキすることを
特徴とする。
【0017】本発明がこのようにI形構造部材の端部を
拘束板で連結した状態で溶融亜鉛メッキをするのは、両
端部を拘束板で連結することにより2個のI形構造部材
を一時的に擬似単一構造体にして、各I形構造部材が溶
融亜鉛メッキ工程において熱応力を受けても、これまで
のようにI形構造部材が自由に変形ができないようにす
るためである。つまり、I形構造部材の横方向の端部を
拘束板で強固に連結することにより、メッキ工程中に熱
応力を受けて変形しようとしてもこの拘束板により互い
に制約されて変形が著しく抑制され得ることが判明し
た。
【0018】本発明における前記I形構造部材は、防錆
のための溶融亜鉛メッキが必要であり、かつ各種構造材
として所要の強度が得られる金属部材で、通常は鋼材か
ら形成されている。ウェブの上下部に、通常、溶接など
により取り付けたフランジを有する略I形の断面を有す
る長尺の薄板構造部材で、その代表的なものとして例え
ば橋梁用の鈑桁を挙げることができる。もちろん、鈑桁
以外のI形構造部材であってもよい。
【0019】さらに、前記I形構造部材は溶融亜鉛メッ
キの工程で、上記したようなはらみ変形やねじれ変形等
が生じる大型のI形構造部材で、通常、部材長さが4m
以上のものが本発明にとって効果的である。そして、該
I形構造部材のウェブとフランジの厚さや寸法は、主と
して用途により適宜決めれるが、実用範囲としてはウェ
ブの厚さが5〜20mm、高さが1000〜3000m
m、またフランジの厚さが10〜50mm、幅が200
〜800mm程度のものが一般的である。
【0020】本発明において、連結するI形構造部材の
数は限定されないが、通常は2個のI形構造部材を連結
する。連結するI形構造部材の数が増加すると、外見上
の容積は単体のI形構造部材の2倍以上となるため、大
型の溶融亜鉛メッキ浴槽が必要になるばかりでなく、全
体の重量が著しく増すためにメッキ浴槽への搬入やその
搬出が負担増となって、溶融亜鉛メッキの作業性が悪く
なる。さらに、好ましい実施形態では、メッキ後も前記
拘束板をI形構造部材から取り外さないで、連結した状
態でI形構造部材の保管および場内運搬を行うため、連
結するI形構造部材の数が3個以上になると、これらの
面でも支障が多くなる。したがって、通常は2個のI形
構造部材を連結するのが最適である。
【0021】また、I形構造部材を拘束板で連結する場
合は、ウェブを縦方向にして2個のI形構造部材を好ま
しくは 0.5〜1.5m、特には0.8〜 1.0mの
間隔をおいて並列させ、この状態でウェブの両端部を拘
束板により連結する。I形構造部材が鈑桁用であると
き、両端部の少なくともウェブには前記したように継手
部ボルト孔が設けられているので、この継手部のボルト
孔を利用すれば拘束板を容易に連結できる。もちろん、
このようなボルト孔がない場合には、必要に応じてかか
るボルト孔が形成される。さらに、この継手部には、前
記したように、従来から溶融亜鉛メッキ時のはらみ変形
防止策としてウェブの両端部に拘束材を取り付けること
が知られているが、本発明の最も好ましい実施態様で
は、かかる拘束材で、好ましくは山形鋼からなる拘束材
を介してI形構造部材を拘束板で連結することが特に好
ましい。この場合、拘束板の取り付けが極めて簡便とな
るとともに、拘束材自体によるはらみ変形防止効果が一
層強固に達成される。しかし、本発明では、このような
拘束材を介さないで2個のI形構造部材の両端部を拘束
板で直接に連結してもよい。
【0022】本発明において、I形構造部材の溶融亜鉛
メッキ条件と冷却条件は、従来方法と実質的に同じもの
が使用できる。したがって、これらの条件は詳述しない
が、概説すると、メッキ条件は浴温度:435〜445
℃、メッキ浴への浸漬速度:10〜30m/分、浸漬角
度:15〜25度、引上げ速度:1〜10m/分、引上
げ角度は初期5度から最終30度に漸増するのが好まし
い。また、冷却条件は水温:60〜80℃、浸漬速度:
10〜30m/分程度、浸漬角度:20〜30度程度が
好ましく、引上げ速度と角度は任意に選ばれる。次に、
本発明を図面を参照しながら具体的に説明する。
【0023】図1は、2個のI形構造部材の両端を拘束
板9で連結したときの平面図である。本例は、2個の鈑
桁用のI形構造部材を図11に示した拘束材6を介して
拘束板9により連結した場合であり、図2は、図1の右
側面図、図3は図2のB−B部の断面図である。図1の
I形構造部材の左端部も該右端部と全く同じである。
【0024】連結前の各I形構造部材は、桁を現場で横
方向に継ぎ接続するために、通常、ウェブ1の両端部分
に継手部ボルト孔(図7参照)を有している。そして、
ウェブ1のかかる継手部には、図9〜図12で詳述した
ようにウェブ1の両側に山形鋼からなる拘束材6を、あ
らかじめボルト7により強固に取り付けしておくのが好
ましい。この場合、拘束材6からもウェブのはらみ変形
の防止効果が得られるので、拘束材6は本例のようにウ
ェブ1の両側に設けるのが好ましい。なお、ウェブ1の
両側に取り付けられた前記拘束材6のうち、拘束板9を
固定する側の拘束材すなわち並列した2個のI形構造部
材の内側に位置する拘束材には、拘束板9を取り付ける
ためのボルト孔が設けられている。
【0025】また、拘束材6がウェブ1に密着すると、
この部分のウェブは拘束材6で覆われてしまい溶融亜鉛
メッキがされなくなるので、拘束材をウェブから隔置し
てウェブのできるだけ全面が溶融亜鉛メッキされるよう
にするために、本例ではウェブ1と拘束材6との間にス
ペーサーとしてパイプワッシャー8を挿入している。図
6はこのパイプワッシャー8の一例であり、パイプ体の
端部四方に直径が好ましくは5〜15mmの亜鉛流出用
の半円孔12が便宜的に設けられている。なお、このパ
イプワッシャー8は拘束材6に仮付け溶接してもよい。
【0026】図5は、本例の拘束板9を示したものであ
る。通常拘束板9は鋼鉄製の四角形の厚板から形成され
ており、この拘束板9の両端部には、前記拘束材6のボ
ルト孔の位置に合わせてボルト孔11が設けられてい
る。ここで、拘束板9の高さは連結するI形構造部材の
ウェブ1の高さと実質的に同じであり、横幅は適宜決め
ることができるが、この横幅により連結する2個のI形
構造部材の間隔が規定される。この拘束板の横幅が大き
過ぎると連結後のI形構造部材の幅が不必要に大きくな
り、溶融亜鉛メッキ浴槽の大きさやメッキ後の保管スペ
ース、場内運搬などに影響を与える。一方、横幅が小さ
過ぎると、拘束板を構造部材に取り付ける際の作業性が
悪くなるとともに、メッキ浴に浸漬させる際の抵抗が大
きくなり、構造部材のメッキ浴への浸漬速度を小さくせ
ざるを得ない場合がある。メッキ浴への浸漬速度が小さ
いと構造部材に生じるねじれ量が増大してしまう。これ
らを勘案して、拘束板9の横幅は通常50〜150cm
程度である。
【0027】拘束板9の厚さは、溶融亜鉛メッキ工程で
発生する応力に対抗できる強度が得られるように決め
る。この厚さが小さいと、所要の強度が得られないため
に、溶融亜鉛メッキ工程の熱応力により拘束板が変形
し、I形構造部材に生じる、はらみ、ねじれ、曲がり等
の変形を十分に抑制できない。しかし、I形構造部材の
変形が主に部材長さ、ウェブ厚及びフランジ厚などに依
拠しているので、拘束板9の厚さはI形構造部材の設計
仕様に基づいて決めるのが実際的である。橋梁用のI形
構造部材を連結する拘束板の場合、その厚さは好ましく
は10〜50mmである。
【0028】次に、2個のI形構造部材を拘束板9で実
際に連結する方法について説明する。先ずあらかじめ端
部の継手部に拘束材6を装着した2個のI形構造部材
を、ウェブを縦方向にして拘束板9の横幅に相当する間
隔をあけて並列する。次いで前記拘束材6の内側(図3
では拘束材6の上部)に拘束板9を当接して、各I形構
造部材の拘束材6と拘束板9とをボルト10により緊締
する。緊締するボルトの数は、構造部材のサイズ、拘束
板の取り付け強度等により適宜選択すればよいが、拘束
板の上下部と中央部は重点的に固定するのが望ましい。
かかる拘束板の取り付けをI形構造部材の両側に対して
行えば、2個のI形構造部材を図1に示すように拘束板
9で連結できる。
【0029】なお、ウェブの片側だけに垂直補剛材また
は水平補剛材が取り付けられているI形構造部材を組み
合わせる場合には、これらのI形構造部材を並列すると
き、前記補剛材が左右対称となるように配置するのが好
ましい。また、本例では拘束板9を拘束材6の内側に取
り付けているが、拘束材6のウェブ1への取り付け向き
を変えれば、拘束板9を拘束材6の外側に取り付けでき
る。
【0030】図4は、本発明の他の実施態様を示す。本
例は、図から明らかのように前述の拘束材6を介さない
で、I形構造部材の両端部を拘束板9により連結する場
合である。本例の拘束板9は、両側にリブ部14が形成
されている断面コ字状の厚板で、該リブ部に設けたボル
ト孔とウェブ1の継手部ボルト孔を利用して、拘束板9
をウェブ1にボルト7により直接取り付けるように構成
されている。図中13はナット止め板である。
【0031】さらに、本発明において拘束板は図3の単
板や図4の断面コ字状の厚板に限定されない。図示はし
ないが、所要の強度さえ保証されれば、例えば枠体状の
ものまたは複合パネルなども使用できる。また、I形構
造部材の両端部を拘束板で連結するだけで、実質的に目
的を達成できるが、必要に応じI形構造部材の両端部以
外の部分の例えばフランジを他の手段により固定しても
よい。
【0032】
【実施例】(実施例1)フランジ厚が20mm、ウェブ
の高さが2400mm、ウェブ厚が12mm、ウェブの
長さが下記の表1に示される、6.7〜11.7mの橋
梁用のI形構造部材を鋼材を用いて製作した。そして、
それぞれ2個の該I形構造部材を図2および図3の方法
により、表1に示されるように、板厚が20mm又は3
0mmで横幅が80cmの鋼鉄製の拘束板で端部を連結
したものを〜の4セット製作した。これらの各I形
構造部材について常法に従って溶融亜鉛メッキした。溶
融亜鉛メッキ後に部材長さとねじれの関係を測定した。
表1はその結果を示したものである。なお、メッキ後の
上記I形構造部材は、ウェブの両面方向にねじれが生じ
るが、表1には、図13のdに見られるように、最大ね
じれを生じたウェブの片面のねじれ量を測定することに
より求めた。
【0033】
【表1】 図1から明らかなように、拘束板厚が20mm及び拘束
板厚が30mmのいずれの場合も、ねじれ量は、実用許
容範囲内の100mm未満に抑制できることがわかっ
た。また、拘束板厚が30mmの場合は、部材長さが1
1m以上と極めて大きい場合にも、ねじれ量をなお小さ
く抑制できることがわかった。
【0034】さらに、本発明の場合、ねじれ量に加え
て、部材のはらみ変形(ウェブの平坦度)も小さい範囲
に抑制できることがわかった。例えば、部材長さ8.8
mのI形構造部材は、表1からわかるように、ねじれ量
は42mmであるが、その場合のウェブの平坦度はH/
400(Hはウェブの高さ)であった。なお、ウェブの
平坦度は、横方向から見たウェブ両側への最大はらみ長
さでウェブの高さを除したXを求め、これをH/Xとし
て記載したもので、上記の場合、ウェブ面の最大はらみ
長さは6mmである。
【0035】他方、本発明の方法を従来方法と比較する
ため、部材長さ8.8mのI形構造部材を図11および
図12の拘束材だけを取り付けた従来方法で本実施例と
同じ条件で溶融亜鉛メッキし、メッキ後にねじれ量およ
びウェブの平坦度を測定したところ、ねじれ量は130
mm、ウェブの平坦度はH/229であった。これから
して、本発明の方法は、従来方法に比べて溶融亜鉛メッ
キ工程における変形を著しく減少できることがわかる。
【0036】(実施例2)実施例1の部材長さ8.8m
のI形構造部材についてフランジの厚さを変え、このI
形構造部材を実施例1と同じ方法により板厚が20mm
と30mmの鋼鉄製の拘束板で、並列した2個の両端部
を連結した状態で溶融亜鉛メッキした。メッキ後にウェ
ブ厚とフランジ厚の比およびねじれの関係について調査
した。その結果を表2に示す。ねじれ量の測定方法は実
施例1と同じである。
【0037】
【表2】 表2から、板厚が20mmの拘束板及び板厚が30mm
の拘束板のいずれの場合も、ねじれ量は実用適許容範囲
内の100mm未満に抑制できることが確認できた。ま
た、ウェブ厚とフランジ厚の比がねじれ量と密接な関係
を有し、フランジ厚が大きいほど、ねじれ量は大きくな
るが、板厚が30mmの拘束板は、板厚が20mmの拘
束板に比べて、より大きいねじれ抑制効果を有すること
がわかった。
【0038】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように溶融亜鉛
メッキする少なくとも2個のI形構造部材の端部を、拘
束板で強固に連結して擬似単一構造体を形成し、この状
態で溶融亜鉛メッキするので、各I形構造部材は溶融亜
鉛メッキ工程で熱応力を受けて変形しようとしても、前
記の単一構造体のために変形が抑制され、はらみ、ねじ
れ、曲がり等の変形を著しく防止または減少させること
ができる。とりわけ、これらの変形が最も生じやすく、
かつ継手部としてこれらの変形防止が他部分より強く要
求されるI形構造部材の端部を拘束板で連結ことによ
り、従来方法で解決できなかった前記変形を極めて効果
的に許容範囲内に減少させることができる。
【0039】また、拘束板によるI形構造部材の端部連
結は、継手部ボルト孔を利用することにより簡便かつ強
固に行うことができるとともに、この継手部に従来方法
として知られている拘束材を装着し、この拘束材を介し
て拘束板で連結すると、連結作業が容易となるばかりで
なく、前記拘束材による変形防止効果も加算されるので
一層好ましい。
【0040】さらに、本発明によれば、溶融亜鉛メッキ
後も架設するまで拘束板を取り外さないでそのままに保
持することにより、I形構造部材を単体で溶融亜鉛メッ
キする従来方法では全く得られない付加的効果が数多く
得られる。
【0041】すなわち、本発明ではI形構造部材のねじ
れが著しく小さく、また少なくとも2個のI形構造部材
が所望の間隔をおいて端部を拘束板で連結されユニット
化されているので、I形構造部材を直立した安定状態で
保管および運搬等に適応できるなど、従来方法に比べる
と予想を超える大きなメリットが得られる。表3は、本
発明の溶融亜鉛メッキ工程における変形防止以外の長所
と従来方法に対するメリットを整理しまとめたものであ
る。
【0042】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により得られるI形構造部材の平面図。
【図2】図1の右側面図。
【図3】図2のB−B部の断面図。
【図4】本発明の他の実施態様における図3に相当する
断面図。
【図5】本発明における拘束板の実施例の斜視図。
【図6】本発明におけるパイプワッシャーの斜視図。
【図7】I形構造部材の実施例を示す斜視図。
【図8】I形構造部材の他の実施例を示す斜視図。
【図9】従来方法によるI形構造部材の正面図。
【図10】図9の右端部の部分拡大図。
【図11】図9の右側面図。
【図12】図10のA−A部の断面図。
【図13】I形構造部材のねじれ量測定の説明図。
【符号の説明】
1:ウェブ 2:フランジ 5:継手部ボルト孔 6:拘束材 7:ボルト 8:パイプワッシャー 9:拘束板 10:ボルト
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤本 寛次 広島県三原市沼田西町松江187−22 (72)発明者 藤本 正幸 愛媛県今治市神宮甲383 (72)発明者 柳川 浩二 広島県豊田郡本郷町大字本郷4315 (72)発明者 菊川 耕平 広島県三原市沼田西町惣定1043−30 Fターム(参考) 4K027 AA08 AA22 AB42 AC47 AD13

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ウェブの上下部にフランジを有するI形構
    造部材を亜鉛メッキする方法において、ウェブを縦方向
    にして少なくとも2個の前記I形構造部材を並列させ、
    該I形構造部材の横方向の両端部を拘束板で連結した状
    態で溶融亜鉛メッキ浴に浸漬して亜鉛メッキすることを
    特徴とするI形構造部材の溶融亜鉛メッキ方法。
  2. 【請求項2】ウェブの横方向の端部に設けられている継
    手部ボルト孔を利用して変形防止用拘束材をウェブの端
    部に沿って取り付けし、該拘束材を介して前記I形構造
    部材の両端を前記拘束板で連結する請求項1に記載のI
    形構造部材の溶融亜鉛メッキ方法。
  3. 【請求項3】ウェブと拘束板との間、またはウェブと変
    形防止用拘束材との間にスペーサーを介在させて、拘束
    板または変形防止用拘束材とウェブとの間に間隙を設け
    る請求項1または2に記載のI形構造部材の溶融亜鉛メ
    ッキ方法。
  4. 【請求項4】前記I形構造部材が橋梁用鈑桁である請求
    項1、2または3に記載のI形構造部材の溶融亜鉛メッ
    キ方法。
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