JP2002333410A - 結晶配向の評価方法及びそれに用いる評価装置 - Google Patents

結晶配向の評価方法及びそれに用いる評価装置

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JP2002333410A
JP2002333410A JP2001137099A JP2001137099A JP2002333410A JP 2002333410 A JP2002333410 A JP 2002333410A JP 2001137099 A JP2001137099 A JP 2001137099A JP 2001137099 A JP2001137099 A JP 2001137099A JP 2002333410 A JP2002333410 A JP 2002333410A
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diffraction
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crystal
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Hiroshi Iwasaki
洋 岩崎
Takuya Ito
琢哉 伊藤
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Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 強い背景の散乱が重なっている場合であって
も、効果的に背景の散乱を抑止し、測定データを読み取
り可能な品質に高めることができ、しかも、その回折強
度分布を、目的の面指数だけの強度に分離することがで
きる結晶配向の評価方法及びそれに用いる評価装置を提
供する。 【解決手段】 評価の対象となる結晶試料における電子
散乱の角度分布を測定するに際し、特定のエネルギー範
囲の電子のみを用いて散乱線強度の方位分布を測定す
る。この測定処理によって得られた回折線強度の方位分
布又は回折パターンの数値化データを用い、特定の結晶
相と特定の格子面指数によって生じている回折線の強度
成分を、数値処理によってそれ以外の背景強度成分から
分離する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶配向の評価方
法及びそれに用いる評価装置に関し、さらに詳しくは、
一個の大きさがlμm以下の結晶子の集合体としてなる
多結晶材料一般を対象とし、その結晶配向の定量的評価
に好適に用いられるものである。多結晶材料としては、
真空蒸着乃至スパッタリングで堆積される薄膜磁気記録
媒体、強誘電体薄膜や集積回路要素薄膜をはじめ、塗布
工程によって作製される磁気記録媒体、写真感光材料、
電磁波吸収材料などが挙げられる。
【0002】
【従来の技術】圧延鋼鈑などの結晶配向評価法として、
エックス線回折測定に基づいて決定される結晶粒方向分
布関数(ODF:Orientation Distribution Functio
n)が詳細な解析手段を提供している。結晶方向がつよ
く揃った単一配向乃至繊維組織の薄膜に対しては、やは
りエックス線回折によって、特定の結晶軸が集中して分
布する範囲の広さを評価するロッキング・カーブ測定
が、その簡便さからよく用いられている。
【0003】結晶すなわち原子の周期配列は、一般に周
期構造による波動の回折現象によって観測されるため、
検出手段はエックス線に限らず波動性においてそれと共
通する電子波をも用いることができる。
【0004】電子を用いる評価法のうち、透過型電子顕
微鏡は微細な結晶子の格子を直接見ることができ、結晶
方位を反映する回折パターンも得ることができる。ま
た、電子を用いる評価法では、反射電子回折(RHEE
D,MEED,LEED)によっても結晶方位の情報を
得ることができる。
【0005】さらに、走査型電子顕微鏡において反射電
子回折の測定を可能にした走査型RHEEDなどの製品
もある。また、電子のチャネリング現象を利用して結晶
方位を反映するパターン(ECP:Electron Channeli
ng PatternやEBSP:Electron Back‐Scattering
Pattern)を得ることもでき、走査型電子顕微鏡には
これらのパターン測定を行う製品もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、エックス線
を用いる測定法は、微細結晶子や小原子番号の材料に感
度が低い。エックス線は物質をよく透過することからも
わかるように、物質との相互作用が小さい。従って、対
象となる結晶子の寸法が小さくなると、測定に十分な強
度の回折線を得ることが困難になる。結晶子の大きさが
10nm前後の小さな値をもつ蒸着テープ試料で明瞭な
回折パターンが得られないのは、このためである。
【0007】また、原子番号の小さい材料では、エック
ス線の散乱は弱くなる。たとえば金属より軽い酸素や窒
素を多く含むセラミック材料では、この事情によって、
(結晶子寸法が蒸着テープほどに小さい材料でなくて
も)エックス線回折強度が小さく測定が困難になる。
【0008】一方、電子線はエックス線に比較して物質
との相互作用が強いので、小さな結晶子や軽元素を含む
試料によっても比較的強く明瞭な回折を得ることができ
る利点がある。この反面、結晶中の周期構造を反映した
回折のほかに、結晶構造とは無関係な散乱の強度も比較
的高くなる。このため、「ひろい範囲に散乱が観測され
たとしても、それがランダムな方位をもって分布した結
晶子群による回折によるものなのか、或いは方位と無関
係な散乱によるものなのか判別し難い」状況が起こる。
回折と背景散乱の寄与は二者択一に分けられるものでは
なくそれぞれの成分がある割合で含まれ、それを分離す
ることが困難なので、回折起源の散乱線の分布を詳細・
定量的に分析することは従来では困難であった。
【0009】本発明は上記状況に鑑みてなされたもの
で、強い背景の散乱が重なっている場合であっても、効
果的に背景の散乱を抑止し、測定データを読み取り可能
な品質に高めることができ、しかも、その回折強度分布
を、目的の面指数だけの強度に分離することができる結
晶配向の評価方法及びそれに用いる評価装置を提供し、
もって、エックス線を用いる評価或いは従来の電子線を
用いる評価ではなし得なかった微結晶材料や軽元素を多
く含む材料の配向評価を可能にし、結晶配向の評価性能
を格段に高め、信頼性の向上を図ることを目的とするも
のである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明に係る請求項1記載の結晶配向の評価方法は、
評価の対象となる結晶試料における電子散乱の角度分布
を測定するに際し、特定のエネルギー範囲の電子のみを
用いて散乱線強度の方位分布を測定する処理と、該測定
処理によって得られた回折線強度の方位分布又は回折パ
ターンの数値化データを用い、特定の結晶相と特定の格
子面指数によって生じている回折線の強度成分を、それ
以外の背景強度成分から分離する数値処理とを含むこと
を特徴とする。
【0011】この結晶配向の評価方法では、電子散乱の
角度分布を測定するに際し、特定のエネルギー範囲の電
子のみを用いて散乱線強度の方位分布が測定される。こ
の測定処理によって得られた回折線強度の方位分布又は
回折パターンの数値化データを用い、特定の結晶相と特
定の格子面指数によって生じている強度成分が、数値処
理によって、それ以外の背景強度成分から分離される。
これにより、測定された回折パターンの背景に、強い散
乱が重なっている場合においても、エネルギー・フィル
タを透過させ、例えば所定eV以上の散乱線が除かれる
ことで、効果的に背景の散乱が抑止される。従って、特
定の結晶相と特定の格子面指数によって生じている強度
成分からピークが分離されて(ピークの重なりがなくな
って明確となり)、読み取り可能な品質に高められる。
しかも、その回折強度分布が、数値処理によって目的の
面指数だけの強度に分離される。この結果、エックス線
を用いる評価或いは従来の電子線を用いる評価ではなし
得なかった微結晶材料や軽元素を多く含む材料の配向評
価(蒸着テープの結晶磁気異方性の大きさ決定など)が
可能になる。
【0012】請求項2記載の結晶配向の評価方法は、評
価の対象となる結晶試料における電子散乱の角度分布を
測定するに際し、特定のエネルギー範囲の電子のみを用
いて散乱線強度の方位分布を測定する処理と、前記結晶
試料の目的の面指数による寄与のみを選んで得た電子回
折強度の角度分布から結晶粒方位分布関数を求める処理
とを含むことを特徴とする。
【0013】この結晶配向の評価方法では、電子散乱の
角度分布を測定するに際し、特定のエネルギー範囲の電
子のみを用いて散乱線強度の方位分布が測定される。こ
の測定処理によって回折線強度の方位分布又は回折パタ
ーンが得られる。そして、結晶試料の目的の面指数によ
る寄与のみを選んで得た電子回折強度の角度分布から結
晶粒方位分布関数が求められる。すなわち、この発明で
は、上記の数値処理が行われないものの、特定の結晶相
と特定の格子面指数によって生じている強度成分からエ
ネルギー・フィルタによってピークが分離され、それぞ
れの強度が定量的に読み取り可能になる。つまり、生デ
ータ(散乱線強度の方位分布)の分解能が高められる。
そして、この散乱線強度の方位分布(又は回折パター
ン)に基づいて結晶粒方位分布関数が求められ、評価の
信頼性が高められる。
【0014】請求項3記載の結晶配向の評価方法は、評
価の対象となる結晶試料における電子散乱の角度分布を
測定するに際し、特定のエネルギー範囲の電子のみを用
いて散乱線強度の方位分布を測定する処理と、該測定処
理によって得られた回折線強度の方位分布又は回折パタ
ーンの数値化データを用い、特定の結晶相と特定の格子
面指数によって生じている回折線の強度成分を、それ以
外の背景強度成分から分離する数値処理と、前記特定の
結晶相と前記特定の格子面指数による寄与のみを選んで
得た電子回折強度の角度分布から結晶粒方位分布関数を
求める処理とを含むことを特徴とする。
【0015】この結晶配向の評価方法では、電子散乱の
角度分布を測定するに際し、特定のエネルギー範囲の電
子のみを用いて散乱線強度の方位分布が測定され、散乱
強度の分布から、目的の指数の結晶面による電子回折成
分のみが、数値処理によって求められる。そして、目的
の指数の結晶面による電子回折強度の角度分布から、O
DFが求められる。すなわち、請求項1及び請求項2記
載の構成要件を、共に備えたものとなっている。従っ
て、測定された回折パターンの背景に、強い散乱が重な
っている場合においても、効果的に背景の散乱が抑止さ
れ、生データが読み取り可能な品質に高められる。しか
も、その回折強度分布が、数値処理によって目的の面指
数だけの強度に分離された後、この散乱線強度の方位分
布(又は回折パターン)に基づいて結晶粒方位分布関数
が求められる。これにより、評価の信頼性が大幅に高め
られることになる。
【0016】ODFを用いた配向の解析がもっとも進ん
だ金属組織の研究分野では、主に対象となる試料は金属
の圧延板などで、結晶粒のサイズは多くの場合1μm以
上あり、エックス線回折で十分に観測できるものであっ
た。そのため、従来では、ODFによる記述方法を、電
子顕微鏡(とくに透過電子顕微鏡などによる電子回折)
による測定にまで拡張する必要も着想もなかった。
【0017】詳述すれば、走査電子顕微鏡を用いて結晶
子の寸法よりも細く絞った電子ビームを一個づつの結晶
子に照射して得られるEBSP(Electron Back‐Scat
teringPattern)を観察して個々の結晶子の方位を決定
する技術は、圧延金属板の評価技術として今日盛んに使
われるようになってきたものである。EBSPから得た
様々な方位の結晶子の体積割合乃至個数割合はODFに
相当するが、径が20nm以下の粒子から構成される磁
気記録媒体の測定はEBSPでは達成されていない。E
BSPでODFを測定可能な結晶子サイズは、原理的に
は走査電子顕微鏡のビーム径程度と主張されるが、現実
にはふたつの結晶子にまたがる境界部に電子ビームが当
たったときには方位を決定不可能になるなどの理由で、
数nm径の結晶子からなる磁気記録媒体の配向評価がE
BSPで実現される可能性はない。
【0018】電子回折の分野では、非弾性散乱による背
景が回折パターンに重なって現れるので、これらの背景
を適切に除去して回折の定量測定が可能であるとは一般
には信じられていなかった。実際、結晶の並び方に関す
る直観的な特徴は局部の電子顕微鏡像で観察し、とくに
多結晶試料の配向など、ある程度広い領域での平均が要
求される測定はエックス線で行なうという、手法の使い
分けが常識となっていた。
【0019】蒸着テープやハードディスクなど磁気記録
媒体の結晶子は、きわめて小さく、数nm以下のものも
かなりの割合で含まれている。このような試料を対象に
した開発の過程で、微細な結晶子に対し検出能力が高
く、かつ定量的な記述が可能な手法を探したが、既存の
手法はなかった。すなわち、上記した「配向測定はエッ
クス線回折で」という、使い分けの常識は通用しない対
象であった。電子回折による測定とODFによる記述の
組み合わせは想像のおよぶ範囲であるが、後述するよう
に労多くして益少ない試みである。
【0020】この結晶配向の評価方法では、電子回折測
定にエネルギー・フィルタを使用して背景を減らすこと
のみならず、ピーク分離に類する数値処理によって特定
の面指数の回折成分を抽出するという容易な想像の域を
超えた2段階の操作を取り込むことによって、これを実
用に耐え、かつ信頼性の高い測定手法にまで高めること
が可能になった。
【0021】請求項4記載の結晶配向の評価方法は、複
数の結晶面にて、前記面指数による回折の測定を行って
前記結晶粒方位分布関数を求めるに際し、前記散乱線強
度の方位分布を測定する処理乃至前記数値処理までを、
それぞれの前記面指数について行った後、前記結晶粒方
位分布関数を求めることを特徴とする。
【0022】この結晶配向の評価方法では、複数の結晶
面で回折の測定が行われ、結晶粒方位分布関数が求めら
れる場合、それぞれの面指数について、散乱線強度の方
位分布を測定する処理、乃至数値処理までが行われる。
そして、特定の結晶相と特定の格子面指数によって生じ
ている強度成分が、それ以外の背景強度成分から分離さ
れ、目的の面指数だけの強度に分離された後、それぞれ
の面指数について結晶粒方位分布関数が求められる。こ
れにより、方位分布の測定処理、数値処理、結晶粒方位
分布関数の算出が、それぞれの面指数ごとに繰り返され
ることなく、処理が効率化されることになる。
【0023】請求項5記載の結晶配向の評価装置は、評
価の対象となる結晶試料における電子散乱の角度分布を
測定する電子回折測定装置と、該電子回折測定装置に設
けられ前記電子散乱の中から特定のエネルギー範囲の電
子のみを選別することで、前記電子回折測定装置に散乱
線強度の方位分布測定機能を付与するエネルギー・フィ
ルタと、前記電子回折測定装置によって得られた回折線
強度の方位分布又は回折パターンの数値化データから、
特定の結晶相と特定の格子面指数によって生じている強
度成分を、それ以外の背景強度成分より分離する数値処
理手段と、該数値処理手段によって得られた目的の面指
数による電子回折強度の角度分布から結晶粒方位分布関
数を算出する結晶粒方位分布関数算出手段とを具備した
ことを特徴とする。
【0024】この結晶配向の評価装置では、エネルギー
・フィルタによって生データの定量信頼性が向上され、
さらに、数値処理手段によって目的の回折線強度が他の
寄与から分離されて、最終的な結晶粒方位分布関数算出
手段における信頼性が高められることになる。すなわ
ち、上記の構成である電子回折測定装置、エネルギー・
フィルタ、数値処理手段、結晶粒方位分布関数算出手段
により段階的な処理が行われることで、従来では不可能
であった高精度かつ定量的な配向情報が提供可能にな
る。これにより、エックス線に比べて物質との相互作用
が大きい電子を用い、エックス線による測定ではじゅう
ぶんな散乱線強度が得られなかった結晶子(例えば微結
晶材料、或いは軽元素を多く含む材料など)をも測定す
ることが可能になる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る結晶配向の評
価方法及びそれに用いる評価装置の好適な実施の形態を
図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る評
価装置概略の構成を示したブロック図、図2はエネルギ
ー・フィルタを備えた電子散乱測定装置の例を(a)
(b)に示した要部構成図、図3はエネルギー・フィル
タを備えた電子散乱測定装置の概略構成図である。
【0026】本実施の形態による評価装置1は、電子回
折測定装置Aと、エネルギー・フィルタBと、数値処理
手段Cと、結晶粒方位分布関数算出手段Dとを主要な要
素に構成されている。
【0027】電子回折測定装置Aは、評価の対象となる
結晶試料における電子散乱の角度分布を測定する。エネ
ルギー・フィルタBは、電子回折測定装置Aに設けられ
電子散乱の中から特定のエネルギー範囲の電子のみを選
別して、電子回折測定装置Aに散乱線強度の方位分布測
定機能を付与する。
【0028】数値処理手段Cは、電子回折測定装置Aに
よって得られた回折線強度の方位分布又は回折パターン
の数値化データから、特定の結晶相と特定の格子面指数
によって生じている強度成分を、それ以外の背景強度成
分より分離する。結晶粒方位分布関数算出手段Dは、数
値処理手段Cによって得られた目的の面指数による電子
回折強度の角度分布から、結晶粒方位分布関数を算出す
る。
【0029】数値処理手段C及び結晶粒方位分布関数算
出手段Dは、数値処理アルゴリズムを実行する例えばプ
ログラムとすることができる。この場合、当該プログラ
ムは、ソフトウエアとしてコンピュータなどの計算機3
に格納することができる。したがって、電子回折測定装
置Aに計算機3を接続することで、測定、数値処理、結
晶粒方位分布関数の算出が一連の処理で求められるよう
になっている。
【0030】つまり、評価装置1は、エネルギー・フィ
ルタBを備えた電子回折測定装置Aを用いて、特定のエ
ネルギ一範囲の散乱電子を選択して散乱線の角度分布を
測定し、この測定結果に基づく数値処理から結晶粒方位
分布関数を求めて配向の記述・評価がなされるようにな
っている。
【0031】試料に電子線を当て、そこからの散乱線の
方向分布を測定する装置には、大別して、図2に示すよ
うに反射配置(a)と透過配置(b)とがある。これ
は、散乱線の角度分布を測定する検出器(たとえばスク
リーン)5が、試料7に関して入射線9と同じ側にある
か、反対側にあるかの差である。いずれの配置でも、エ
ネルギー・フィルタBは、試料7と散乱線検出器5との
間に配置される。
【0032】電子に対するエネルギー・フィルタBに
は、様々な形状の電極配置を利用する静電型のもののほ
か、周期電場との共鳴型のものや、磁場を併用するもの
など、多様な形式がある。反射配置の測定装置には、走
査電子顕微競(SEM)をベースにしたものがある。ま
た、とくに微細な結晶子からなる試料の解析には、分解
能の高い透過電子顕微鏡(TEM)をベースにした解析
装置が適している。
【0033】その一例として、図3に光学系の略図を示
す透過電子顕微鏡にエネルギー・フィルタBを搭載した
日本電子製の装置(機種名:JEM‐2010FEF)
がある。この装置は、試料7側から、対物レンズ11、
中間レンズ13、エネルギー・フィルタB、スリット1
5、投射レンズ17、蛍光板19、イメージングプレー
ト又はスロースキャンCCDカメラなどの検出器21よ
りなる。この装置では、試料7を透過した電子線を分光
し、特定のエネルギー値をもつ電子群をスリット15に
より選別した後、それらの電子だけを投射レンズ17に
導入させ、結像を得る。本実施の形態による電子回折測
定装置Aとしては、この種の装置を好適に用いることが
できる。
【0034】次に、上記の評価装置1を用いて結晶の配
向を評価する本実施の形態による評価方法の手順を、実
例に即して説明する。図4は本発明に係る評価方法の手
順を示す流れ図、図5は試料の観察方向を示す説明図、
図6はエネルギー・フィルタを用いない撮影結果を
(a)(c)、エネルギー・フィルタを用いた撮影結果
を(b)(d)に示した説明図、図7は数値処理によっ
てピーク形状が分離された電子解析パターンの図、図8
はODF算出のために定めた回折パターンの帯状領域を
示す図、図9はピーク強度を帯状領域の方向に対してプ
ロットした図、図10は蒸着テープのTEM像を
(a)、エネルギー・フィルタ像を(b)に示した拡大
図である。
【0035】先ず、本実施の形態による評価方法では、
図4の手順Iに示すように、エネルギー・フィルタBを
備えた電子回折測定装置Aによる電子散乱(回折を含
む)の角度分布測定がなされる。結晶子のサイズがl0
−20nmと小さいCo及びCoOの混合物からなる蒸
着テープ(磁気記録用媒体)の走行方向を含む断面試料
7aを作製し、透過電子顕微鏡を用いて図5に示す方向
から観察を行なって撮影した結果を図6に示す。図5
中、23は蒸着テープの磁性膜、25は一次電子線、2
7は散乱電子線、29は検出器21の投影面、31は回
折図形である。
【0036】図6(a)に示すように、エネルギー・フ
ィルタBを用いない場合には回折パターンには強い背景
の散乱が重なっているが、エネルギー損失が20eV以
上の散乱線をエネルギー・フィルタBで除いて撮影する
と、図6(b)に示すように、効果的に背景の抑圧が達
成される。なお、本評価方法の実施の対象となる蒸着テ
ープ断面試料の透過電子顕微鏡像を、参考のため図10
に示した。
【0037】図6の下段(c)(d)には回折パターン
の半径に沿って測定した強度プロファイルを示すが、エ
ネルギー・フィルタBを用いないデータ(c)に比べ、
エネルギー・フィルタBを用いたデータ(d)の場合に
はCoとCoOの様々な回折に起因するピークを分離し
てそれぞれの強度が定量的に読み取れる品質となってい
ることがわかる。
【0038】次に、図4の手順IIに示すように、散乱強
度の分布から、目的の指数(hkl)の結晶面による電
子回折成分のみを、数値処理手段Cを用いた数値処理に
よって求める。回折パターンにおいて結晶面(hkl)
による回折の強度分布を調べようとするときに、同じ結
晶の異なる結晶面(uvw)による回折の寄与が回折パ
ターン上で同じ領域に重なって現れる場合がある。或い
は、試料が複数の結晶相からなる場合には、別の結晶に
よる回折が重なって現れる場合もある。このような重な
り合いを数値的に分析して、目的の面指数(hkl)だ
けの強度を分離する。
【0039】このような処理の例を図7を参照して説明
する。図7中の実線のプロットは、金属Coと酸化物で
あるCoOとの混合物である薄膜試料(磁気記録用蒸着
テープ)を、エネルギー・フィルタBの設けられた電子
回折測定装置Aで測定した、電子回折パターン(同心円
形状)の半径方向に沿って強度分布を測定した結果であ
る。
【0040】図7に現れた5本のピークのうち、もっと
も右側のCoO(220)以外の4本のピークは互いに
裾が重なっているが、カーブ・フィッティング、或いは
ピーク分離と呼ばれる数値処理を施すことによって、図
7の破線で示すような個別のピーク形状を分離して得る
ことができる。
【0041】Co系磁気記録媒体では結晶のc‐軸又は
(002)軸が磁化容易軸になっているので、図7に示
すように、Co(002)の回折強度が他の寄与から分
離して得られることは磁気特性の解析・評価上重要なこ
とになる。
【0042】そして、このようなピーク分離を施す前の
生データにおいて、エネルギー・フィルタBによって背
景強度が小さく抑えられていることは、ピーク分離の信
頼性を高めるために極めて重要なことになる。
【0043】次に、図4の手順IIIに示すように、目的
の指数(hkl)の結晶面による電子回折強度の角度分
布から結晶粒方向分布関数を求める。ひとつの結晶子が
空間に対してどのような向きに置かれているかを記述す
るには、3つの値(たとえばオイラー角θ,φ,ψの
値)が必要である。従って、多結晶の試料について「ど
の方位の結晶子がどれほどの体積割合で試料中に含まれ
ているか」の記述は、オイラー角が(θ=θ〜θ+Δ
θ,φ=φ〜φ+△φ,ψ=ψ〜ψ+△ψ)の範囲内に
含まれる結晶の体積割合V=V(θ=θ〜θ+Δθ,φ
=φ〜φ+△φ,ψ=ψ〜ψ+△ψ)をすべての角度範
囲で与えることによって達成される。
【0044】或いは、この体積割合がV=p(θ,φ,
ψ)・dΩと表されるような密度関数p=p(θ,φ,
ψ)を用いても良い。但し、dΩは、立体角要素であ
る。このような分布関数は、結晶粒方向分布関数(OD
F:Orientation DistributionFunction)と呼ばれる
(文献:長島晋一編著『集合組織』第1章、丸善198
4)。
【0045】多結晶材料の物性には、試料全体の平均的
な物性が個々の単結晶粒子からの寄与の和で与えられる
と考えられる(又は近似できる)ものがいくつかある。
このような多結晶材料の物性は、単結晶の物性値をOD
Fによって重み付け平均して推定することができる。た
とえば、弾性定数、磁気異方性、塑性異方性などはこの
方法がひろく適用されている(文献:長島晋一編著『集
合組織』第5章、丸善1984)。誘電的性質乃至光学
的性質においても、このような重み付け平均が有効な場
合がある。
【0046】ここで、簡略化したODFの利用について
説明する。重み付け平均の方法で扱える物性について、
「結晶のひとつの軸だけが特異な性質をもち、その軸と
直行する方向の間には物性の違いがあまりない」場合に
は、問題の軸のみの分布によって集合組織の物性を推定
することができる。たとえば、磁気記録媒体に多用され
る六方晶コバルト(hcp‐Co)の集合組織はこの例
に該当する。この材料は結晶のc‐軸方向にのみとくに
磁化しやすい性質があるので、集合組織の磁気異方性
は、c‐軸の方向分布に基づいて重み付け平均で推定で
きる。
【0047】一般的なODFは3次元の関数であるか
ら、c-軸だけの分布ならば2次元の関数に簡略化され
る。すなわち、ある軸が向いている方向は(θ,φ)の
2変数で表されるので、p=p(θ,φ)によって完全
に記述される。
【0048】Co-CoO蒸着テープの場合には、様々
な方向に切出した試料について回折を測定した経験か
ら、Coのc‐軸の分布は薄膜の柱状組織に近い一方向
のまわりに軸対称であることが知られている。このよう
に分布の対称性がよい場合には、さらに方向を記述する
パラメータを減らし、「対称の軸から角度θだけ離れた
方向にどれほどの分布があるか」という、1次元の分布
関数p=p(θ)で記述できる。
【0049】この例として、以下の手順で、Co‐Co
O蒸着テープについて簡略化ODFを求めることができ
る。先ず、断面試料(テープ走行方向を含む)の回折パ
ターンに対し、中心から外周に伸びる帯状領域33を図
8に示すように例えば36個で定める。これらの方向は
隣同士で10度ずつ異なり、Co(002)回折リング
に重なる部分が中心角5度に相当するように幅を定め
る。
【0050】次に、個々の帯状領域内の回折強度を、半
径に対して図7に示すようにプロットし、ピーク分離を
行なってCo(002)の回折ピーク強度を求める。C
o(002)のピーク強度を、帯状領域33の方向に対
して図9に示すように、プロットする。図9のプロット
に当てはまる滑らかな関数として p(θ)=exp〔−(θ/40)2〕 …(式l) を選び、これを簡略化したODFとして採用する。
【0051】図9の実測値は(式1)の曲線から外れる
ばらつきを示しているが、ODFにはこのような狭い角
度範囲に現れる構造を必ずしも反映させる必要はない。
なぜならば、全方位の立体角(4・π平方ラジアン)に
比較して小さな立体角の中での回折強度の特異値は、な
んらかの物性パラメータ(たとえば磁気異方性エネルギ
ー)にODFで重み付けして立体角について積分乃至総
和をとって平均値を求める場合には大きな寄与を持たな
いからである。
【0052】Coの(002)軸の分布は、図9の極大
方向を軸としてそれから測った角度θ(°)と、その周
りに測った角度φとで書け、(002)軸が(θ,φ)
方向の立体角要素sinθ・dθ・dφの範囲内にある
確率は、p(θ)・sin(θ)・dθ・dφで与えら
れる。
【0053】ODFに基づく物性評価の例として、蒸着
テープの結晶磁気異方性エネルギーを、ODFを用いて
求めることができる。一般に、一軸異方性の単結晶の磁
気異方性エネルギーは、 u=v・Ku・sin2θ …(式2) と書ける。ここで、θは、磁化容易軸と磁化ベクトルの
なす角度である。
【0054】多結晶の集合組織の場合、磁気異方性エネ
ルギーは、組織を構成する結晶子すべてについて(式
1)の和をとればよい。すなわち、総和のエネルギー
は、 U=Σ(vi・Ku・sin2θi) …(式3) ただし、i番目の結晶子の体積をvi、これの磁化容易
軸と磁化ベクトルのなす角をθiのように添字iで表し
た。
【0055】Kuは単結晶試料の測定によって決められ
ている磁気異方性定数であるから、その値を用いれば、
図4の手順IVに示すように、本発明の配向評価法に基づ
いて(式3)の値を計算することによって微細な結晶子
からなる蒸着テープの結晶磁気異方性の大きさが決定で
きる。つまり、微細結晶子の定量評価が可能になる。
【0056】なお、本実施の形態による評価の流れにお
いて、ひとつの(hkl)に関する測定だけでなく、複
数種の結晶面、(pqr),(uvw),…による回折
の測定も併用してODFを求める場合には、図4に示す
手順Iの測定から手順IIの数値処理までを(pqr),
(uvw),…それぞれの場合について行なった後、手
順IIIのODF決定に進む。この手順を構成するI,I
I,III,IVのうちいずれかを省いた場合にも、手順の流
れの中で個別の操作の順序が逆転することはない。
【0057】このような手順によれば、特定の結晶相と
特定の格子面指数によって生じている強度成分が、それ
以外の背景強度成分から分離され、目的の面指数だけの
強度に分離された後、それぞれの面指数について結晶粒
方位分布関数が求められる。これにより、方位分布の測
定処理、数値処理、結晶粒方位分布関数の算出が、それ
ぞれの面指数ごとに繰り返されることなく、処理が効率
化される。
【0058】また、回折図形からの、特定回折成分の抽
出手順としては、以下のものとすることができる。すな
わち、回折図形上での強度分布は一般に、I=I(R,
θ)のように、中心からの半径Rと方向θの関数として
表される。そして、全回折強度Itotalは、それぞれの
点(R,θ)において Itotal=Ibackground+Ihkl+Ipqr+Iuvw+… のように、背景の強度Ibackgroundとさまざまな面指数
(hkl),(pqr),(uvw),…の回折線の強
度Ihkl ,Ipqr ,uvw ,…の和として観測される。
【0059】このなかからあるひとつの(hkl)によ
る回折強度を抜き出して求める手順はいろいろあるが、
たとえばつぎのようにできる。すなわち、ある方向θ1
について、半径Rの関数としてのItotal(R,θ1)を
プロットし、ピーク分離によって、Ihkl(R,θ1)を
求める。この手順の実例が図7に示したものである。
【0060】この操作をさまざまなθ1,θ2,…につい
て繰り返し(これが図8に示す様子)、(hkl)回折
に対応した半径Rhkl上での方向θの関数としてItotal
(Rhk l,θ)を求める。するとこれは、指数(hk
l)の結晶面による回折強度のみを他の成分から分離
し、方向の関数として表したものになる。これをプロッ
トした実例が、図9となる。
【0061】このように、本実施の形態による評価方法
は、解析の対象となる結晶試料の電子散乱(電子回折を
含む)の角度分布測定することのできる電子回折測定装
置Aが特定のエネルギー範囲の電子のみを用いて散乱線
強度の方位分布を測定(乃至は回折パターンとして記録
・撮影)することができるような、エネルギー・フィル
タBを有すること。数値処理アルゴリズムを実行する計
算機3を備え、回折線強度の方位分布乃至回折パターン
を数値化したデータにおいて、特定の結晶相と特定の格
子面指数(hkl)から生じている強度成分を数値処理
手段Cによってそれ以外の背景強度成分から分離するこ
と。特定結晶相、特定面指数からの寄与のみを選んで構
成した“回折パターン”に基づいて、適切なアルゴリズ
ムによる結晶粒方位分布関数算出手段Dによって計算を
行ない結晶粒方位分布関数(ODF)を求めることを構
成の要件としている。
【0062】これにより、電子散乱の角度分布を測定す
るに際し、特定のエネルギー範囲の電子のみを用いて散
乱線強度の方位分布が測定され、散乱強度の分布から、
目的の指数の結晶面による電子回折成分のみが、数値処
理によって求められる。そして、目的の指数の結晶面に
よる電子回折強度の角度分布から、ODFが求められ
る。従って、測定された回折パターンの背景に、強い散
乱が重なっている場合においても、効果的に背景の散乱
が抑止され、生データが読み取り可能な品質に高められ
る。しかも、その回折強度分布が、数値処理によって目
的の面指数だけの強度に分離された後、この散乱線強度
の方位分布(又は回折パターン)に基づいて結晶粒方位
分布関数が求められるので、結晶配向評価の信頼性を大
幅に高めることができる。
【0063】上記した電子回折測定装置A(以下、単に
「A」と記す。)、結晶粒方位分布関数算出手段Dは、
それぞれ結晶配向の測定・評価の標準的な道具である。
結晶粒方位分布関数算出手段Dの長所は、定量的な評価
手段である点にあるが、その基礎となる電子回折測定装
置Aがエネルギー・フィルタB(以下、単に「B」と記
す。)の機能を有することによって、生データの定量信
頼性は著しく向上する。また、目的の回折線強度を他の
寄与から分離する数値処理手段C(以下、単に「C」と
記す。)も同じく結晶粒方位分布関数算出手段D(以
下、単に「D」と記す。)の信頼性を高めるものであ
る。すなわち、本実施の形態による組み合わせ「A+B
+C+D」は、すでにある「A+B」や「A+D」では
まったく到達できない、「高精度かつ定量的な」配向情
報を提供できる独自性をもっている。
【0064】「A+B」の電子回折測定装置による測定
結果は、生データとしての回折パターンはもちろん鮮明
になるが、それを見るだけでなく「C+D」のような定
量的記述を行なった場合に初めて「B」を用いた真価が
発揮される。「A+D」だけの組み合わせは、定量的記
述の形式を踏んではいるが、生データ及びデータ処理の
段階に定量化に耐える信頼性が低い。
【0065】このように、本実施の形態による組み合わ
せ「A+B+C+D」では、エックス線に比べて物質と
の相互作用が大きい電子を用いるので、エックス線によ
る測定ではじゅうぶんな散乱線強度が得られないような
結晶子からなる試料(たとえば微結晶材料、或いは軽元
素を多く含む材料)をも測定することができるようにな
る。
【0066】なお、本発明に係る評価方法は、上記した
実施の形態による組み合わせ「A+B+C+D」がベス
トモードとなるが、その他、「A+B+C」、「A+B
+D」の組み合わせによっても、従来の評価方法に比べ
て信頼性を高めることができる。
【0067】すなわち、「A+B+C」のモードでは、
電子散乱の角度分布を測定するに際し、特定のエネルギ
ー範囲の電子のみを用いて散乱線強度の方位分布が測定
される。この測定処理によって得られた回折線強度の方
位分布又は回折パターンの数値化データを用い、特定の
結晶相と特定の格子面指数によって生じている強度成分
が、数値処理によって、それ以外の背景強度成分から分
離される。これにより、測定された回折パターンの背景
に、強い散乱が重なっている場合においても、エネルギ
ー・フィルタを透過させ、例えば所定eV以上の散乱線
が除かれることで、効果的に背景の散乱が抑止される。
従って、特定の結晶相と特定の格子面指数によって生じ
ている強度成分(所謂生データ)からピークが分離され
て(ピークの重なりがなくなって明確となり)、読み取
り可能な品質に高められる。しかも、その回折強度分布
が、数値処理によって目的の面指数だけの強度に分離さ
れる。この結果、エックス線を用いる評価或いは従来の
電子線を用いる評価ではなし得なかった微結晶材料や軽
元素を多く含む材料の配向評価(蒸着テープの結晶磁気
異方性の大きさ決定など)が可能になる。
【0068】また、「A+B+D」では、電子散乱の角
度分布を測定するに際し、特定のエネルギー範囲の電子
のみを用いて散乱線強度の方位分布が測定される。この
測定処理によって回折線強度の方位分布又は回折パター
ンが得られる。そして、結晶試料の目的の面指数による
寄与のみを選んで得た電子回折強度の角度分布から結晶
粒方位分布関数が求められる。すなわち、このモードで
は、上記の数値処理が行われないものの、特定の結晶相
と特定の格子面指数によって生じている強度成分からエ
ネルギー・フィルタBによってピークが分離され、それ
ぞれの強度が定量的に読み取られる。つまり、生データ
の定量信頼性が高められる。そして、この散乱線強度の
方位分布(又は回折パターン)に基づいて結晶粒方位分
布関数が求められ、評価の信頼性が高められる。
【0069】なお、本発明に係る結晶配向の評価方法及
びそれに用いる評価装置は、対象となる多結晶材料それ
自体の組成や用途によって適用範囲が限定されることは
ない。
【0070】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明に係
る結晶配向の評価方法によれば、電子散乱の角度分布を
測定するに際し、特定のエネルギー範囲の電子のみを用
いて散乱線強度の方位分布を測定し、この測定処理によ
って得られた回折線強度の方位分布又は回折パターンの
数値化データから、特定の結晶相と特定の格子面指数に
よって生じている強度成分を、それ以外の背景強度成分
より分離する数値処理を行うので、強い背景の散乱が重
なっている場合であっても、例えば所定eV以上の散乱
線を除いて測定を行うことにより、効果的に背景の散乱
を抑止し、所謂生データからピークを分離してそれぞれ
の強度を読み取り可能な品質に高めることができ、しか
も、その回折強度分布を、数値処理によって、目的の面
指数だけの強度に分離することができる。この結果、エ
ックス線を用いる評価或いは従来の電子線を用いる評価
ではなし得なかった微結晶材料や軽元素を多く含む材料
の配向評価が可能になり、結晶配向の評価性能を格段に
向上させて、信頼性を高めることができる。
【0071】本発明に係る結晶配向の評価装置によれ
ば、電子散乱の角度分布を測定する電子回折測定装置
と、特定のエネルギー範囲の電子のみを選別するエネル
ギー・フィルタと、特定の結晶相と特定の格子面指数に
よって生じている強度成分を、それ以外の背景強度成分
から分離する数値処理手段と、目的の電子回折強度の角
度分布から結晶粒方位分布関数を算出する結晶粒方位分
布関数算出手段とを備えたので、エネルギー・フィルタ
によって生データの定量信頼性を著しく向上させ、さら
に、数値処理手段によって目的の回折線強度を他の寄与
から分離して、最終的な結晶粒方位分布関数算出手段に
おける信頼性を高めることができる。すなわち、上記の
構成により段階的な処理を行うことで、従来では不可能
であった高精度かつ定量的な配向情報を提供することが
できる。この結果、エックス線に比べて物質との相互作
用が大きい電子を用い、エックス線による測定ではじゅ
うぶんな散乱線強度が得られないような結晶子からなる
試料(例えば微結晶材料、或いは軽元素を多く含む材
料)をも測定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る評価装置の概略構成を示したブロ
ック図である。
【図2】エネルギー・フィルタを備えた電子散乱測定装
置の例を(a)(b)に示した要部構成図である。
【図3】エネルギー・フィルタを備えた電子散乱測定装
置の概略構成図である。
【図4】本発明に係る評価方法の手順を示す流れ図であ
る。
【図5】試料の観察方向を示す説明図である。
【図6】エネルギー・フィルタを用いない撮影結果を
(a)(c)、エネルギー・フィルタを用いた撮影結果
を(b)(d)に示した説明図である。
【図7】数値処理によってピーク形状が分離された電子
解析パターンの図である。
【図8】ODF算出のために定めた回折パターンの帯状
領域を示す図である。
【図9】ピーク強度を帯状領域の方向に対してプロット
した図である。
【図10】蒸着テープのTEM像を示した拡大図であ
る。
【符号の説明】
1…結晶配向の評価装置、7…結晶試料、A…電子回折
測定装置、B…エネルギー・フィルタ、C…数値処理手
段、D…結晶粒方位分布関数算出手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2G001 AA03 BA14 BA18 CA03 DA09 GA01 GA13 HA12 KA08 MA05 RA08 5D112 JJ01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 評価の対象となる結晶試料における電子
    散乱の角度分布を測定するに際し、特定のエネルギー範
    囲の電子のみを用いて散乱線強度の方位分布を測定する
    処理と、 該測定処理によって得られた回折線強度の方位分布又は
    回折パターンの数値化データを用い、特定の結晶相と特
    定の格子面指数によって生じている回折線の強度成分
    を、それ以外の背景強度成分から分離する数値処理とを
    含むことを特徴とする結晶配向の評価方法。
  2. 【請求項2】 評価の対象となる結晶試料における電子
    散乱の角度分布を測定するに際し、特定のエネルギー範
    囲の電子のみを用いて散乱線強度の方位分布を測定する
    処理と、 前記結晶試料の目的の面指数による寄与のみを選んで得
    た電子回折強度の角度分布から結晶粒方位分布関数を求
    める処理とを含むことを特徴とする結晶配向の評価方
    法。
  3. 【請求項3】 評価の対象となる結晶試料における電子
    散乱の角度分布を測定するに際し、特定のエネルギー範
    囲の電子のみを用いて散乱線強度の方位分布を測定する
    処理と、 該測定処理によって得られた回折線強度の方位分布又は
    回折パターンの数値化データを用い、特定の結晶相と特
    定の格子面指数によって生じている回折線の強度成分
    を、それ以外の背景強度成分から分離する数値処理と、 前記特定の結晶相と前記特定の格子面指数による寄与の
    みを選んで得た電子回折強度の角度分布から結晶粒方位
    分布関数を求める処理とを含むことを特徴とする結晶配
    向の評価方法。
  4. 【請求項4】 複数の結晶面にて、前記面指数による回
    折の測定を行って前記結晶粒方位分布関数を求めるに際
    し、前記散乱線強度の方位分布を測定する処理乃至前記
    数値処理までを、それぞれの前記面指数について行った
    後、前記結晶粒方位分布関数を求めることを特徴とする
    請求項2又は3記載の結晶配向の評価方法。
  5. 【請求項5】 評価の対象となる結晶試料における電子
    散乱の角度分布を測定する電子回折測定装置と、該電子
    回折測定装置に設けられ前記電子散乱の中から特定のエ
    ネルギー範囲の電子のみを選別することで、前記電子回
    折測定装置に散乱線強度の方位分布測定機能を付与する
    エネルギー・フィルタと、 前記電子回折測定装置によって得られた回折線強度の方
    位分布又は回折パターンの数値化データから、特定の結
    晶相と特定の格子面指数によって生じている強度成分
    を、それ以外の背景強度成分より分離する数値処理手段
    と、 該数値処理手段によって得られた目的の面指数による電
    子回折強度の角度分布から結晶粒方位分布関数を算出す
    る結晶粒方位分布関数算出手段とを具備したことを特徴
    とする結晶配向の評価装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004264260A (ja) * 2003-03-04 2004-09-24 Kyocera Corp 電子回折パターンの解析方法及び解析装置
WO2011071090A1 (ja) * 2009-12-10 2011-06-16 電気化学工業株式会社 結晶方位分布の偏りの解析方法
JP2012202701A (ja) * 2011-03-23 2012-10-22 Fujitsu Ltd 結晶粒方位の分析方法および結晶粒方位の分析装置

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JP2012202701A (ja) * 2011-03-23 2012-10-22 Fujitsu Ltd 結晶粒方位の分析方法および結晶粒方位の分析装置

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