JP2002327244A - 靭性および延性に優れた高強度パーライト系レール及びその製造方法 - Google Patents

靭性および延性に優れた高強度パーライト系レール及びその製造方法

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JP2002327244A JP2001128923A JP2001128923A JP2002327244A JP 2002327244 A JP2002327244 A JP 2002327244A JP 2001128923 A JP2001128923 A JP 2001128923A JP 2001128923 A JP2001128923 A JP 2001128923A JP 2002327244 A JP2002327244 A JP 2002327244A
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toughness
pearlite
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oxide
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Daisuke Hiragami
大輔 平上
Koichi Uchino
耕一 内野
Kenichi Karimine
健一 狩峰
Toshizo Tarui
敏三 樽井
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 寒冷地用の高靭性・高延性の高強度パーライ
ト系レールを提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.55〜1.2%、S
i:0.1〜1.2%、Mn:0.1〜1.5%、S:
0.002〜0.035%、Mg:0.0004〜0.
02%、O:0.001以下含有し、或いは更にAl,
Ti,Cr,Ni,Cu,Mo,Nb,V,Bの1種又
は2種以上を所定量含有し、残部Fe及び不可避的不純
物からなりなり、少なくともレール頭部が面積率で90
%以上のパーライト組織からなり、前記パーライト組織
中の任意断面において直径が0.01〜10μmのMg
酸化物若しくはMg硫化物又はこれらの複合析出物が1
mm 2 中に500〜100,000個存在し、前記Mg
酸化物の直径(円相当径)の平均値が2μm以下である
ことを特徴とする靭性及び延性に優れた高強度パーライ
ト系レール。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レール鋼のパーラ
イト組織を微細化して靭性および延性の向上を図った高
強度レールおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在、鉄道輸送は輸送効率向上のための
重積載化、輸送迅速化のための高速化が進められてお
り、レールの特性に対する要求が厳しくなっている。重
荷重鉄道では急曲線区間の耐磨耗性、耐頭部内部疲労損
傷性がより要求され、高速鉄道では主に直線区間の頭部
表面損傷によるレール取替割合の増加が問題となってい
る。これらに加えて、寒冷地の鉄道では冬季にレールク
ラック発生によるレール取替が集中しており、レール材
の靭性改善がレール寿命の延伸に必要な課題になってい
る。
【0003】輸送効率向上のための重積載化はレール頭
部の磨耗を促進し、また疲労損傷の増加によりレール寿
命が短くなってきている。この重荷重鉄道でのレール短
寿命化を改善するために、耐磨耗性の優れた高強度レー
ル鋼の技術開発が活発に行われてきた。その結果、曲線
区間ではほぼ高強度レールが使用されるようになった。
【0004】一方、レール鋼の耐磨耗性の向上と共に、
本来磨耗によって削り取られるべき疲労ダメージ層がレ
ール頭表面や車輪フランジ付け根部が押し付けられるゲ
ージ・コーナー(GC)表面に残存し、表面損傷生成が
認められるようになってきた。さらにレール鋼の耐磨耗
性の向上は、車輪荷重による応力集中をレールGC内部
の一点に固定させることになり、このレールGC内部か
らの疲労損傷を増加させることとなった。このようなレ
ールの耐頭部表面損傷性および耐内部疲労損傷性の改善
には、レール材の靭性および延性を向上させることが重
要である。
【0005】高強度レールの靭性および延性改善の方策
としては以下の方法が考えられる。 (1)普通圧延後、一旦室温まで冷却したレールを低温
度で再加熱した後加速冷却する方法。 (2)制御圧延によりオーステナイト粒を微細化した
後、レール頭部を加速冷却する方法。 (3)制御圧延した後、パーライト変態前で低温度に再
加熱し、その後加速冷却する方法。
【0006】上記(1)の方法では、例えば特開昭55
−125321号公報に記載されているように、通常の
加熱温度よりも低い850℃以下の低温度に再加熱し、
オーステナイト粒を細粒化することによって大幅に靭性
および延性を改善しようとする発明がある。また上記
(2)の方法は、例えば特開昭52−138427号公
報および特開昭52−138428号公報に記載されて
いるように、制御圧延によるオーステナイト粒の細粒化
で靭性・延性の向上を図ろうとする発明がある。さらに
上記(3)の方法は、例えば特公平4−4371号公報
に記載されているように、800℃以下で5%以上の圧
延を実施した後、再度750〜900℃に加熱すること
によりオーステナイト粒を微細にし、靭性および延性を
改善しようとする発明がある。
【0007】またレール鋼の靭性・延性を改善する発明
としては、例えば特開平8−104946号、特開平8
−104947号公報および特開平8−109438号
公報に記載されているように、脱酸元素としてMgを添
加し、0.1〜10μmのMnSの個数が1mm2 あた
り600〜12000個存在する靭性・延性の優れた高
強度パーライト系レールがあり、この発明により靭性お
よび延性に優れたレールの製造が可能となった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前記特開昭55−12
5321号公報に記載されている発明により、低温度で
加熱し、かつレール頭部内部まで加熱を深めようとする
と、投入熱量を下げて長時間加熱する必要があり、この
熱処理のため生産性を阻害し製造コストを高める難点が
ある。また、前記特開昭52−138427号公報およ
び特開昭52−138428号公報に記載されている発
明では、大きな圧下力等がなければレールの断面形状や
長手方向の寸法精度が容易に得られないという形状制御
性の観点からも問題を含んでいる。さらに前記特公平4
−4371号公報に記載されている発明は、圧延後に低
温再加熱のための加熱炉を必要とするため作業性、生産
性、製造コスト等の問題がある。
【0009】また前記特開平8−104946号公報、
特開平8−104947号公報および特開平8−109
438号公報に記載されている発明により、靭性および
延性に優れたレールの製造が可能となったが、重荷重鉄
道ではなお一層の重積載化および高速化の検討されてお
り、さらに靭性および延性の特性を改善することが要求
されてきている。本発明は上記のような課題を解決し、
重積載化の下でも靭性および延性の優れた高強度パーラ
イト系レール及びその製造方法を提供することを目的と
する。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明では以下の構成を要旨とする。 (1) 質量%で(以下同じ)、 C :0.55〜1.2%、 Si:0.1〜1.2%、 Mn:0.1〜1.5%、 S :0.002〜0.035%、 Mg:0.0004〜0.02%、 O :0.001以下 を含有し、必要に応じてさらに、 Al:0.0005〜0.05%、 Ti:0.001〜0.05%、 Cr:0.1〜1%、 Ni:0.1〜4%、 Cu:0.1〜4%、 Mo:0.01〜0.5%、 Nb:0.001〜0.05%、 V :0.01〜1%、 B :0.0001〜0.005% の1種または2種以上を含有し、残部が鉄および不可避
的不純物からなり、少なくとも前記レール頭部が面積率
で90%以上のパーライト組織からなり、前記パーライ
ト組織中の任意の断面において直径が0.01〜10μ
mのMg酸化物若しくはMg硫化物又はこれらの複合析
出物が1mm2 中に500〜100,000個存在し、
前記Mg系介在物の直径(円相当径)の平均値が2μm
以下であることを特徴とする靭性および延性に優れた高
強度パーライト系レール。
【0011】(2) 前記(1)に記載の成分を有する
鋼片を、熱延ままあるいは熱延後、Ac1 変態温度〜A
c3 変態温度+250℃に加熱し、前記レールの少なく
とも頭部を700〜500℃間を1〜5/secで加速冷却
して、少なくとも前記レール頭部を面積率で90%以上
のパーライト組織とし、前記パーライト組織中の任意の
断面において直径が直径が0.01〜10μmのMg酸
化物若しくはMg硫化物又はこれらの複合析出物が1m
2 中に500〜100,000個存在し、前記Mg酸
化物の直径(円相当径)の平均値が2μm以下であるレ
ールを製造する方法。 (3) 更に、望ましくは脱酸元素として少なくともM
gを添加して脱酸処理を行うこと、及び/または二次脱
酸元素として少なくともMgを添加し、Mg酸化物また
はMg硫化物もしくはこれらの複合析出物を二次脱酸生
成物として生成させることを特徴とする靭性および延性
に優れた高強度パーライト系レールの製造方法。
【0012】
【発明の実施の形態】以下本発明について詳細に説明す
る。本発明者らは、Mgを添加した綱片でのMg酸化物
若しくはMg硫化物又はこれらの複合析出物の生成に及
ぼす鋼中のO濃度の影響を詳細に検討した。その結果、
鋼中のO濃度を0.001%以下にすると、Mg酸化物
若しくはMg硫化物又はこれらの複合析出物が二次脱酸
生成物として生成しやすくなり、Mg酸化物が微細分散
されること、このMg酸化物が粒成長抑制することで、
オーステナイト粒を微細な状態にし、オーステナイト粒
界の変態サイトを増加させ変態後のパーライト組織を微
細にすることを見出した。
【0013】また、パーライト変態時のMg酸化物を核
にして生成したMnSの影響について詳細に検討した結
果、前記特開平8−104946号公報、特開平8−1
04947公報および特開平8−109438号公報で
本出願人が明らかにした、オーステナイト粒内に分散し
たMg酸化物を核に析出したMnSがパーライト変態サ
イトとなるというメカニズムにおいて、Mg酸化物若し
くはMg硫化物又はこれらの複合析出物が更に微細に分
散生成することにより、パーライトがオーステナイト粒
内から変態する割合が著しく増加し、パーライト組織が
微細になることを見出した。
【0014】このように、Mg添加した鋼材のO濃度を
制御することにより、脱酸時に生成するMg酸化物若し
くはMg硫化物又はこれらの複合析出物を微細に分散さ
せることによって、オーステナイト細粒化からもたらさ
れるパーライト組織の微細化、ならびにオーステナイト
粒内に微細分散したMg酸化物若しくはMg硫化物又は
これらの複合析出物を核に生成したMnSからの粒内変
態によるパーライト組織の微細化の相乗効果により、優
れた靭性および延性を有するレール鋼を得ることができ
ることを知見し、本発明を完成した。
【0015】次に、上記レール鋼の成分を限定した理由
について述べる。 C:Cはレール鋼における高強度化およびパーライト組
織生成のための必須元素である。0.55%未満では必
要とする高強度のパーライト組織が得がたく、また1.
20%を超えるとオーステナイト粒界を脆化させる有害
な初析セメンタイトを生成させるばかりか、レール頭部
熱処理層や溶接部の微小偏析部にマルテンサイトが生成
し、靭性延性を著しく低下させるため、0.55〜1.
20%に限定した。
【0016】Si:Siはパーライト組織中のフェライ
ト相への固溶強化による高強度化への寄与のみでなく、
若干の靭性および延性改善効果がある。0.10%未満
ではその効果は少なく、1.20%を超えると脆化をも
たらし溶接接合性も低下するので、0.10〜1.20
%に限定した。
【0017】Mn:MnはC同様にパーライト変態温度
を低下させ焼入れ性を高めることによって高強度化に寄
与する元素である。しかし、0.10%未満ではその効
果が小さく、1.50%を超えると偏析部にマルテンサ
イト組織を生成させ易くするため、0.10〜1.50
%に限定した。
【0018】S:Sは一般に有害元素として知られてい
るが、本発明においてはオーステナイト中の介在物を核
としてMnSが生成し、オーステナイト粒の粗大化を抑
制およびMnSがパーライトの変態核になることによる
パーライト組織の微細化に重大な元素のひとつである。
しかし、0.002%未満では十分なMnS量を得るこ
とができず、また0.035%を超えると粗大なMnS
が生成し始め、靭性および延性を著しく低下させるた
め、0.002〜0.035%に限定した。
【0019】Mg:Mgは本発明の重要な構成元素であ
り、製鋼での脱酸剤が残存含有するものである。Mg酸
化物若しくはMg硫化物又はこれらの複合析出物を核に
して析出したMnSは、それぞれピン止め効果によるオ
ーステナイト粒の粒成長抑制効果があり、変態後のパー
ライト組織を微細化する。またこの効果に加えて、Mg
酸化物若しくはMg硫化物又はこれらの複合析出物自身
およびこれらを核として析出したMnSからパーライト
が生成し、更にパーライト組織を微細にする機能を有す
る。その結果、レール鋼の大幅な靭性、延性の向上を果
たすことができた。しかし、0.0004%未満ではオ
ーステナイト粒成長抑制効果および粒内変態によるパー
ライト組織微細化がほとんど無く、0.02%を超える
と粗大なMg系介在物が生成して靭性が著しく低下する
ため、0.0004〜0.02%の範囲に限定した。
【0020】O:Oは不純物であり不可避的に含有する
が、Mgと共に本発明の重要な構成元素である。Mg酸
化物は1次脱酸時あるいは2次脱酸時に生成するが、2
次脱酸時に生成したものの方が著しく微細分散する。鋼
中のO濃度を0.001%以下に抑制すると、Mg酸化
物の1次脱酸生成を抑制し、2次脱酸生成が促進され、
Mg酸化物若しくはMg硫化物又はこれらの複合析出物
が著しく微細分散することができる。したがってOは
0.001%以下に限定した。
【0021】さらに本発明においては、上記成分の他に
必要に応じて1種または2種以上のAl,Ti,Cr,
Ni,Cu,Mo,Nb,V,Bの添加によって、フェ
ライト地の靭性改善、レール圧延のための加熱時におけ
るオーステナイト粒の、あるいは制御圧延時におけるオ
ーステナイト粒の細粒化によって高靭性を得ることがで
き、さらに冷却過程における加速冷却によって、より高
強度と同時に高靭性を得ることができる。なお、上記成
分の添加において、Al,Ti,Ni,Cu,Nbは靭
性改善を、Cr,Mo,V,Bは高靭性化と同時に高強
度と硬さを改善することを主目的とする。
【0022】これらの化学成分を限定した理由を以下に
説明する。 Al:Alは製鋼時の脱酸剤が残存含有するものであ
る。AlはMgとの複合酸化物を生成し、オーステナイ
ト粒成長の抑制、およびこのMg−Al複合酸化物がM
nS析出の核になり、これらの析出物からパーライト変
態して組織が微細になる。この複合析出の効果は0.0
005%以上で有効であり、0.05%を超えるとAl
酸化物およびMg−Al酸化物が粗大化し、靭性の低下
をもたらすことから、Alの含有量を0.0005〜
0.05%に限定した。
【0023】Ti:TiはMgやAlと同様にTi酸化物
を生成し、このTi酸化物を核にして析出したMnSと
共にピン止め効果によるオーステナイト粒の粒成長を抑
制し、変態後のパーライト組織を微細化する。またこの
効果に加えて、微細に生成したMg酸化物若しくはMg
硫化物又はこれらの複合析出物を核に析出したMnS上
にTi窒化物、Ti炭化物およびこれらの複合介在物を
起点として著しくオーステナイト粒内変態し易くなり、
パーライト組織が微細になる。その結果、レール鋼の大
幅な靭性、延性の向上を果たすことができる。しかし、
0.001%未満ではオーステナイト粒成長抑制効果お
よび粒内変態によるパーライト組織微細化がほとんど無
く、0.05%を超えると粗大なTi系析出物が生成
し、著しく靭性を低下するため、0.001〜0.05
%に限定した。
【0024】Cr:Crはパーライト変態温度を低下さ
せることによって高強度化に寄与すると共に、パーライ
ト組織中のセメンタイト相を強化する作用を有すること
から、溶接継ぎ手部軟化防止の観点から0.1%以上の
含有が有効である。一方、1.5%を超えて含有する
と、強制冷却時に元素偏析部のみでなく、過冷却傾向の
強いレールの肩部にベイナイトやマルテンサイトが生成
し靭性の低下をもたらす。したがって強度確保に一定の
寄与が期待され、かつ靭性および延性を損なわない範囲
から、0.1〜1.5%に限定した。
【0025】Ni:Niはフェライト中に固溶し、フェ
ライトの靭性を向上させるのに有効な元素である。0.
1%未満の場合にはその効果が極めて少なく、また4.
0%を超えて含有してもその効果は飽和する。したがっ
て靭性向上の観点から、0.1〜4.0%の範囲に限定
した。
【0026】Cu:CuはNiと同様にフェライト中に
固溶し、フェライトの靭性を向上させるのに有効な元素
である。0.1%未満の場合にはその効果が極めて少な
く、また4.0%を超えて含有してもその効果は飽和す
る。したがって靭性向上の観点から、0.1〜4.0%
の範囲に限定した。
【0027】Mo:Moはパーライトの変態速度を抑制
し、パーライト組織を微細化することから靭性向上に有
効な元素である。さらにMoは加速冷却時にレール内部
において、表面層のパーライト変態にともなう発熱に連
動した高温での変態誘起を防止し、レール内部の高強度
化に寄与して強度を高める。しかし、0.01%未満で
は上記の効果は少なく、また、0.50%を超える含有
量ではパーライト変態速度が低下し、パーライト組織中
にベイナイトやマルテンサイトを生成させ靭性低下をも
たらす。したがって、0.01〜0.50%に範囲を限
定した。
【0028】Nb:Nbは熱間圧延時に低温加熱するこ
とによって、Nbの炭窒化物がオーステナイト粒成長を
抑制し細粒化に寄与する。また、高温加熱・低温仕上げ
圧延によって熱間圧延後のオーステナイト粒を細粒化
し、加速冷却後に得られるパーライト組織を微細にす
る。この効果を得るためには0.001%以上必要であ
り、0.05%を超えると粗大なNb炭化物、Nb窒化
物、Nb炭窒化物を生成によって靭性が低下する。した
がって0.001〜0.05%の範囲に限定した。
【0029】V:Vはフェライト中に析出し、強度を向
上させるために有効な元素であり、0.01%未満では
強度増加は得られず、1%を超えると粗大なV炭化物を
生成し靭性が低下する。したがって、0.01%〜1%
の範囲に限定した。
【0030】B:Bは微量添加においてもオーステナイ
ト粒界に偏析し、変態を遅らせることにより焼入れ性を
著しく改善する元素である。この効果を得るためには
0.0001%以上必要であり、0.005%を超える
とBの炭窒化物が生成し、靭性が著しく低下する。した
がって0.0001〜0.005%の範囲に限定した。
【0031】不可避的元素であるPはレール鋼の靭性を
下げるため、できるだけ低減させ、0.03%以下にす
ることが望ましい。
【0032】前記のような成分組成で構成されるレール
鋼は、転炉、電気炉などの通常使用される溶解炉で前述
した脱酸を含む溶製を行うか、この溶鋼を造塊・分塊あ
るいは連続鋳造法により凝固させるときに、Mg酸化物
若しくはMg硫化物又はこれらの複合析出物を一次脱酸
生成および二次脱酸生成させること、望ましくは凝固中
の二次脱酸時に多く生成させることで、著しく微細に分
散したMg酸化物若しくはMg硫化物又はこれらの複合
析出物を得ることができ、さらに熱間圧延法を経て製造
する。
【0033】熱間圧延を終えたレールは、冷却中におい
てオーステナイト粒内のMnSに加えてMg酸化物若し
くはMg硫化物又はこれらの複合析出物からもパーライ
トが生成し、オーステナイト粒界から生成するパーライ
トと共に微細なパーライト組織を形成する。その結果、
圧延ままで靭性の優れた高強度レールを製造することが
できる。
【0034】さらに、高靭性と共に1200MPa以上
の高強度が要求される場合には、圧延終了後、あるいは
一度室温まで冷却した後熱処理する目的でAc1 変態温
度〜Ac3 変態温度+250℃まで再加熱し、700〜
500℃間を1〜5℃/secで加速冷却を行うことが望ま
しい。加熱温度がAc1 変態温度より低いとオーステナ
イトに変態しないため、その後の冷却によっても微細な
パーライトを得ることができず、Ac3 変態温度+25
0℃を超えて加熱するとオーステナイト粒が粗大になり
靭性が低下するため、前記の加熱温度の範囲に限定す
る。
【0035】また、加速冷却すると低温でパーライト変
態を生じるため、レール鋼はパーライトの変態核の生成
速度が向上し、パーライト粒が微細になる。この加速冷
却時の冷却速度が1℃/sec未満のときは必要強度を得る
ことができず、5℃/secを超える場合はマルテンサイト
が生成する。従って冷却速度は1〜5℃/secに限定し
た。
【0036】以上述べたように、加速冷却は強度増加に
加えて、オーステナイト粒界、Mg酸化物若しくはMg
硫化物又はこれらの複合析出物およびこれらのMg系介
在物を核にしたMnSからのパーライト変態において変
態核の増加をもたらし、パーライトの細粒化に寄与する
結果、一層のレール鋼の靭性向上を達成することができ
る。この際冷却媒体は空気あるいはミストなどの気液混
合物を用いることが望ましい。
【0037】次に、レール鋼のパーライト組織中の直径
0.01〜10μmのMg酸化物若しくはMg硫化物又
はこれらの複合析出物の個数を任意の断面1mm2 中に
おいて500〜100,000個に限定した理由を述べ
る。レール鋼中のMg酸化物若しくはMg硫化物又はこ
れらの複合析出物は、ピンニングにより加工後の微細γ
粒の粒成長を抑制し、変態後のパーライト組織を微細に
する。また、γ粒内にあるMg酸化物若しくはMg硫化
物又はこれらの複合析出物、およびこれらのMg系介在
物を核にして生成したMnSからパーライト変態するこ
とで、パーライト組織が微細になり靭性値が向上する。
【0038】このとき任意の断面において、Mg系介在
物の断面積から算出したその断面での円相当径(直径)
が0.01μm未満のMg酸化物若しくはMg硫化物又
はこれらの複合析出物はパーライト粒内変態核になら
ず、10μmを超える大きさでは破壊の起点となり靭性
値を低下させてしまうことから、Mg酸化物若しくはM
g硫化物又はこれらの複合析出物の大きさを0.001
〜10μmに限定した。1mm2 中に500個未満の場
合、ピンニングおよびパーライト粒内変態の効果が弱
く、靭性向上の効果が得られない。また、100,00
0個を超える場合はレール鋼自体が汚染され、靭性値が
低下することから、1mm2 中のMg酸化物若しくはM
g硫化物又はこれらの複合析出物の個数を500〜10
0,000個に限定した。
【0039】また、Mg酸化物若しくはMg硫化物又は
これらの複合析出物の直径の平均値が2μm以下であれ
ば、粒成長抑制および粒内変態によるパーライト組織微
細化に伴い靭性が著しく向上するので、この範囲に限定
する。Mg酸化物の直径の下限は特に定めないが、粒内
変態の促進のためには0.05μm以上であることが好
ましい。
【0040】
【実施例】次に、本発明により製造した高靭性および延
性を有する高強度レールの製造実施例について述べる。
表1は、溶鋼にMgを添加した場合と、添加しなかった
場合のレール鋼の化学成分を示す。表2は、レール鋼の
冷却後の組織中に存在する任意の断面中の直径0.01
〜10μmのMg系介在物の個数の測定結果、Mg酸化
物の直径の平均値、加工後焼き入れた試料のγ粒度番号
およびパーライト粒内変態の有無の観察結果を示す。
【0041】Mg酸化物若しくはMg硫化物又はこれら
の複合析出物の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)も
しくは透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、任意の断面
において1,000〜50,000倍の倍率で、測定下
限を0.01μm、測定上限を10μmとして個々のM
g系介在物の面積を求め、この面積に等しい円の直径
(円相当径)を用いた。
【0042】また、MnS中のMg系介在物もSEMや
TEMのイメージ中でコントラストが異なるため、この
コントラストが異なる部分をMg系介在物として、Mg
系介在物単独のときと同様に粒径を算出した。Mg系介
在物の個数は、この直径0.01〜10μmのMg介在
物の個数を20視野測定し、この20視野中のMg介在
物個数が正規分布に従うとして平均を出し、この1視野
の面積での個数から面積1mm2 に換算したときの値を
用いた。
【0043】Mg酸化物の直径の平均値は、TEMによ
り、レール頭部の頭頂部下5mm、10mm、15m
m、40mmの場所を、5000倍および10000倍
の倍率で、各場所とも4視野、計20視野を対象に測定
下限を0.01μm、測定上限を20μmとして観察し
た結果から求めた。
【0044】Mg添加による脱酸を行った本発明鋼で
は、所定の量のMg酸化物若しくはMg硫化物又はこれ
らの複合析出物が微細に分散し、粒内にあるこのMg系
介在物およびこのMg系介在物を核に生成したMnSか
らパーライトが粒内変態し、パーライト組織が微細にな
ることが確認された。
【0045】表3は、圧延ままおよび強度を一定にする
ために、それぞれの鋼種につき700〜500℃間の冷
却速度を1〜5℃/secの範囲で変化させたレール鋼の引
張試験強度、伸びおよび2mmUノッチシャルピー試験
における+20℃での衝撃吸収エネルギー測定結果を示
す。引張試験はレール頭部ゲージ・コーナー内部10m
m深さから採取した平行部径6mm、平行部長さ30m
mの試験片で行った。
【0046】この結果、本発明鋼は従来鋼に比べて十分
にパーライト組織微細化による延性の改善が認められ
た。衝撃試験片はレール頭部1mm下より採取した。こ
の試験条件はロシアのΓoct 規格に基づくものであり、
同規格では高強度熱処理レールの+20℃での衝撃吸収
エネルギーは25J/cm2 以上が必要とされており、
本発明のMg添加鋼は、加工後のオーステナイト微細粒
の粒成長抑制およびオーステナイト粒内からのパーライ
ト粒内変態で微細パーライト組織になり、いずれもΓoc
t 規格に定められたシャルピー吸収エネルギーを十分に
満たしている。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【発明の効果】本発明により、良好な延性と安定して2
5J/cm2 以上の衝撃吸収エネルギーを示す高強度パ
ーライト系レールを得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 38/04 C22C 38/04 38/54 38/54 (72)発明者 狩峰 健一 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製鐵 株式会社八幡製鐵所内 (72)発明者 樽井 敏三 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 Fターム(参考) 4K013 BA08 EA24 FA02 4K042 AA04 BA01 BA02 BA05 CA02 CA05 CA06 CA08 CA09 CA10 CA12 CA13 DA01 DC02 DE05 DE06

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C :0.55〜1.2%、 Si:0.1〜1.2%、 Mn:0.1〜1.5%、 S :0.002〜0.035%、 Mg:0.0004〜0.02%、 O :0.001%以下を含有し、残部がFeおよび不
    可避的不純物からなり、少なくともレール頭部が面積率
    で90%以上のパーライト組織からなり、前記パーライ
    ト組織中の任意断面において直径が0.01〜10μm
    のMg酸化物若しくはMg硫化物又はこれらの複合析出
    物が1mm2 中に500〜100,000個存在し、前
    記Mg酸化物若しくはMg硫化物又はこれらの複合析出
    物の直径の平均値が2μm以下であることを特徴とする
    靭性および延性に優れた高強度パーライト系レール。
  2. 【請求項2】 質量%でさらに、 Al:0.0005〜0.05%、 Ti:0.001〜0.05%、 Cr:0.1〜1.5%、 Ni:0.1〜4%、 Cu:0.1〜4%、 Mo:0.01〜0.5%、 Nb:0.001〜0.05%、 V :0.01〜1%、 B :0.0001〜0.005%の1種または2種以
    上を含有することを特徴とする請求項1記載の靭性およ
    び延性に優れた高強度パーライト系レール。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の成分を有する鋼片
    を、熱延ままあるいは熱延後、Ac1 変態温度〜Ac3
    変態温度+250℃に加熱し、前記レールの少なくとも
    頭部を700〜500℃間を1〜5℃/secで加速冷却し
    て、少なくとも前記レール頭部を面積率で90%以上の
    パーライト組織とし、前記パーライト組織中の任意断面
    において直径が0.1〜10μmのMg酸化物若しくは
    Mg硫化物又はこれらの複合析出物が1mm2 中に50
    0〜100,000個存在し、前記Mg酸化物若しくは
    Mg硫化物又はこれらの複合析出物の直径の平均値が2
    μm以下であるレールを得ることを特徴とする靭性およ
    び延性に優れた高強度パーライト系レールの製造方法。
  4. 【請求項4】 脱酸元素として少なくともMgを添加し
    て脱酸処理を行ない、溶製した溶鋼を鋳造して前記鋼片
    を製造することを特徴とする請求項3記載の靭性および
    延性に優れた高強度パーライト系レールの製造方法。
  5. 【請求項5】 二次脱酸元素として少なくともMgを添
    加し、Mg酸化物またはMg硫化物もしくはこれらの複
    合析出物を二次脱酸生成物として鋼片中に生成させるこ
    とを特徴とする請求項3又は4記載の靭性および延性に
    優れた高強度パーライト系レールの製造方法。
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