JP2002326950A - 炎症性サイトカイン産生抑制剤 - Google Patents

炎症性サイトカイン産生抑制剤

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JP2002326950A
JP2002326950A JP2001135521A JP2001135521A JP2002326950A JP 2002326950 A JP2002326950 A JP 2002326950A JP 2001135521 A JP2001135521 A JP 2001135521A JP 2001135521 A JP2001135521 A JP 2001135521A JP 2002326950 A JP2002326950 A JP 2002326950A
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rhlf
inflammatory cytokine
cytokine production
lactoferrin
food
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Makoto Yamaguchi
真 山口
Yoshitaka Nakamura
吉孝 中村
Hajime Sasaki
一 佐々木
Takeshi Takahashi
高橋  毅
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Meiji Dairies Corp
Original Assignee
Meiji Milk Products Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 LfのN末端の塩基性アミノ酸クラスターの、
炎症性サイトカイン産生に及ぼす影響を調べ、もって炎
症性サイトカインの産生抑制に有用なLfを提供すること
を課題とする。また、このようなLfのスクリーニング方
法を提供する。 【解決手段】 培養細胞を用いたリガンド取込み実験に
おいてエンドサイトーシスされるラクトフェリンをが炎
症性サイトカイン産生を抑制することを見出した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体における炎症
反応を抑制または軽減する作用を有する炎症性サイトカ
イン産生抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】ラクトフェリン(Lf)は、トランスフェ
リンファミリー(Tf)に属する鉄結合性の糖タンパク質
で、多形核白血球の特定の顆粒およびほとんどの外分泌
液、例えば乳、涙、唾液などに見出される。Lfの抗菌活
性および抗炎症活性に関する多くの報告に基づくと、Lf
は、in vitroで、感染や重い炎症に対する宿主の防御に
関与していると考えられている。ヒトLf(hLf)のいく
つかの生物活性は、強力な鉄のキレート作用と関連付け
られるのに対し、その他の生物活性は、hLfと宿主の細
胞(腸上皮細胞、哺乳動物の線上皮細胞、肝細胞、単
球、活性化リンパ球、および血小板)との相互作用、あ
るいは細菌のリポ多糖(LPS)、プロテオグリカン、DN
A、およびヒトリゾチームへの結合と関連している。hLf
のN末端の高い陽性荷電は、これらの相互作用のほとん
どに関与しているかもしれない(Biochem. J. 327: 84
1, 1997 )。hLfのN末端部分は、塩基性アミノ酸残基の
セカンドクラスターだけでなくArg残基が4つ連続した
ユニークなクラスターを含んでいる。hLf、ウシLf(bL
f)、およびネズミのLf(mLf)を含めて多くのLfのアミ
ノ酸配列が、タンパクおよびDNAシーケンシングにより
決定されている(Eur. J. Biochem., 145: 659, 1984;N
ucleic Acids Res., 18: 5288, 1990; Eur. J. Bioche
m., 196: 177, 1991; J.Biol. Chem., 262: 10134, 198
7 )。Mannらは、hLfのヘパリン結合部位は、N末端から
の4つの連続したArg配列(Arg2-Arg3-Arg4-Arg5)およ
び第二の塩基性クラスター(Arg28-Lys29-Val30-Ar
g31)によって形成される“cationic cradle”に代表さ
れるということを示唆した(J. Biol. Chem., 269: 236
61, 1994 )。cationic cradleのArg4およびArg5の残基
は、hLfのヘパリンに対する結合に必須であることが示
された(J. Biol. Chem., 269: 23661, 1994 )。hLfと
細胞の相互作用は、多岐にわたるクラスの結合部位と関
連しているかもしれない(J. Biol. Chem., 268: 2706
9, 1993)。ラットの血流からのhLfの、肝による急速な
クリアランスには、hLf結合部位の少なくとも2つのク
ラス、プロテオグリカンおよびキロミクロンレムナント
受容体(アポE受容体)及び/又はLDLレセプター関連タ
ンパクが関与しているとされた。hLFのArg-Lysリッチ配
列(Arg25-Asn26-Met27-Arg28-Lys29-Val30-Arg31
(それは、アポリポタンパク質-E2が認識するレセプタ
ー構造に類似しているが)は、キロミクロンレムナント
受容体(アポE受容体)及び/又はLDLレセプター関連タ
ンパクと結合し、肝細胞にインターナリゼーションされ
るのに対し、Arg2-Arg3-Arg4-Arg5配列は、hLfと、細胞
と結合した多数のコンドロイチン硫酸タイプのプロテオ
グリカンとの、広範囲におよぶ低親和性の相互作用にお
いて重要な役割をもつかもしれない(J. Biol. Chem.,
267: 11229, 1992; J. Biol. Chem., 268: 27069, 199
3; J.Biol. Chem., 267: 18551, 1992)。一方、サイト
カインは、様々な細胞から放出され、免疫、炎症反応の
制御作用、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、細胞増殖・分
化の調節作用など細胞間相互作用を媒介する。Lfのサイ
トカイン産生におよぼす影響については数多くの報告が
なされているが、LfのN末端の塩基性アミノ酸クラスタ
ーの炎症性サイトカイン産生に及ぼす影響についてはま
だ報告が見当たらない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、LfのN末端
の塩基性アミノ酸クラスターの、炎症性サイトカイン産
生に及ぼす影響を調べ、もって炎症性サイトカインの産
生抑制に有用なLfを提供することを課題とする。また、
本発明は、このようなLfのスクリーニング方法を提供す
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】マウスをAbelson leukem
ia virusで形質転換したマクロファージ様細胞株である
RAW 264を用いて、リポ多糖(LPS)刺激によるTNF-α産
生抑制効果を、N末端アミノ酸配列(Gly1-Arg2-Arg3-Ar
g4-Arg5)が保存されたヒトラクトフェリン(rhLf)とN
末端のGly1-Arg2-Arg3が除去されたN末端欠失rhLfにつ
いて比較検討した結果、rhLfはTNF-α産生を抑制した
が、N末端欠失rhLfにはそのような効果はみられなかっ
た。そこで、rhLfのRAW 264への取込み(エンドサイト
ーシス)実験を行ったところ、N末端アミノ酸配列が保
存されたrhLfはRAW 264に取り込まれたが、N末端を欠失
したrhLfはRAW 264に取り込まれないことを見出した。
さらにこのエンドサイトーシスを確認するために、蛍光
標識したrhLfとRAW 264をインキュベート後、蛍光顕微
鏡で観察すると、rhLfは細胞の至る所に(すみずみま
で)小さい個々のベシクルとして観察された。このエン
ドサイトーシスはヘパリン添加により完全に阻害され
た。また、RAW 264を用いたrhLfのRAW 264に対する結合
実験(Binding Assay)を行った。結合は濃度依存的
で、図には示さないが飽和的曲線が得られた。それは可
逆的かつ特異的であることが示唆された。特異的結合を
スキャッチャード解析(Scatckard解析)したところ、
2つの異なる結合部位、すなわち、解離定数Kdが0.46×
10-6M(高親和性)でそのときの最大結合量Bmaxが2.38
×107/細胞、および解離定数Kdが1.48×10-6M(低親和
性)でそのときの最大結合量Bmaxが1.58×107/細胞、の
特異的結合部位を有することが確認された。以上の結果
から、N末端アミノ酸配列が保存されたrhLfは炎症性サ
イトカイン産生を抑制する作用を有するが、N末端アミ
ノ酸配列が一部欠失したrhLfにはこのような作用が著明
に低下しているか、あるいは消失していることが明らか
となった。すなわち本発明は、(1) 培養細胞を用い
たリガンド取込み実験においてエンドサイトーシスされ
るラクトフェリンを有効成分とする炎症性サイトカイン
産生抑制剤、(2) 培養細胞を用いたリガンド結合実
験(binding assay)において細胞上の高親和性結合部
位と結合するラクトフェリンを有効成分とする炎症性サ
イトカイン産生抑制剤、(3) 細胞がRAW 264である
(1)または(2)の炎症性サイトカイン産生抑制剤、
(4) 組換えヒトラクトフェリンである(1)または
(2)の炎症性サイトカイン産生抑制剤、(5) N末
端アミノ酸配列(Gly1-Arg2-Arg3-Arg4-Arg5)が保存さ
れた(4)の炎症性サイトカイン産生抑制剤、(6)
炎症性サイトカインがTNF-αである(1)〜(5)のい
ずれかの炎症性サイトカイン産生抑制剤、(7) ヘパ
リンで取り込みが阻害される(1)または(2)の炎症
性サイトカイン産生抑制剤、(8) 生体の炎症反応を
抑制または軽減する作用を有する飲食品を製造するため
の(1)〜(7)のいずれかのラクトフェリンの使用、
(9) 食品が経口・経腸栄養剤または治療食である
(8)のラクトフェリンの使用、(10) (1)〜
(7)のいずれかのラクトフェリンを有効成分として含
有する生体の炎症反応を抑制または軽減する作用を有す
る飲食品、そして(11) 食品が経口・経腸栄養剤また
は治療食である(10)の飲食品、からなる。
【0005】
【発明の実施の形態】Lfの細胞への結合実験やエンドサ
イトーシスを測定する方法は公知である(例えば、続生
化学実験講座7 情報伝達と細胞応答(下), 日本生化学会
編, p173, 東京化学同人, 1986; 新生化学実験講座7 増
殖分化因子とその受容体, 日本生化学会編, p203, 東京
化学同人, 1991 )。本発明に有効なLfを選別するため
に有用な技術である。取り込み型Lfを判定する方法は、
放射性元素による標識体を使用する方法、蛍光物質標識
体を使用する方法、抗Lf抗体による免疫学的手法、電子
顕微鏡による視覚的手法、DNA結合Lf量の定量、など、
生化学・分子生物学的なあらゆる方法を含む。上皮系細
胞においては、HT-29単層培養系で、Lfの透過が知られ
る。さらに、初代培養肝細胞培養系では、細胞内取り込
みがみられ、それが鉄不飽和型と鉄飽和型で取り込み量
に差がないことが知られる。ここで実施したRAW264に対
する検討でも、鉄飽和度はTNF産生抑制効果に影響を与
えていない。本発明で使用する細胞内取り込みが見られ
るLfは、ヒトおよびウシなどの哺乳動物の乳から公知の
方法により得られる。また、遺伝子組み換え技術によ
り、組み換えLfとして得ることもできる。また、本発明
のLfは、細胞内取り込みがみられ、Lfの生物活性を有す
るタンパク質、またはその対立遺伝子変種を含む。Lfの
生物活性とは、Lfの代謝的、または生理的機能を意味
し、類似の活性、または改善された活性、望ましくない
活性を低減させた活性をも含む。
【0006】本発明のLfは、ヒトを含む哺乳動物でのT
NF-αの有害な作用を、予防、改善、または治療する
ために、すなわち、過剰、またはTNF-αが内因的に
形成され、あるいは外部から投与される状態を、処置す
るために用いられる。過剰、または異常なTNF-α刺
激により生じる疾患として、例えば、癌や感染症におけ
る悪液質、アレルギー性、および炎症性疾患、自己免疫
疾患、肺循環疾患、感染症、および骨吸収疾患等、例え
ば、リウマチ性関節炎、リウマチ性脊椎炎、変形性関節
炎、痛風、敗血症、敗血症ショック、内毒素ショック、
グラム陰性ショック、中毒性ショック症候群、ARDS(急
性呼吸困難症)、肺サルコイドーシス、喘息、珪肺症、
悪液質、潰瘍性大腸炎、クローン病、骨粗鬆症、再灌流
後の臓器障害、中枢神経系の炎症性疾患、例えばマラリ
ア、多発性硬化症、全脳炎、感染症、例えばAIDS、
狂牛病、皮膚の感染疾患、例えば、蕁麻疹、乾せん、ア
トピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、エリトマトーデス、お
よび尿崩症、例えば、パーキンソン病の際の神経保護、
例えば多発性梗塞、および卒中発作後の痴呆等、また、
髄膜炎、肝炎、II型糖尿病等が挙げられる。Lfを、本発
明の、TNF-αの異常、または過剰産生に起因する様
々な病態の症状の予防、改善、障害された臓器の庇護、
機能回復、あるいは治癒後の予防に用いる場合の好まし
い使用形態は、Lfの有効量の経口摂取である。すなわ
ち、飲食品、栄養補助食品、特別用途食品(病者用食
品、妊産婦・授乳婦用粉乳、乳児用調製粉乳、高齢者用
食品、特定保健用食品)、経口・経腸栄養剤、医薬部外
品、あるいは医薬品等に対し、Lfの有効量を配合するこ
とを含む。
【0007】栄養による治療を進める主役は治療食であ
る。同じ病名であっても、病期により、また、各患者個
人によっても病態は異なるので、治療食の内容は、この
病態の変化に伴って変わるべきものであり、それは当業
者に公知である。Lfの配合量は、最終組成の少なくとも
1%、望ましくは、5〜40%である。経口・経腸栄養
は、経口、あるいは経鼻的に挿入したチューブや胃瘻、
空腸瘻から栄養を注入する方法である。経腸栄養剤は、
現在、成分栄養、低残さ食、天然食品流動食に分類され
るが(山東勤弥,岡田正,“最新内科学大系第6巻肥満症
・臨床栄養”井村裕夫他編,中山書店,p.289-307, 199
5)、本発明はこれらを含む。Lfを食品の一成分として使
用した場合、日常の食生活のなかで、Lfの有効量を安全
に摂取することができる。その根拠として、Lfは、ヒト
初乳に5〜10mg/mlの高濃度で含まれており、常乳でも1
〜2mg/mlで含むことから、乳児は、誕生後数日間は、
1日約3g、その後も1日約1gのLfを摂取していること
(New Food Industry, 33: 72, 1991)をあげることがで
きる。Lfを医薬品として、TNF-αの異常産生に起因する
病態の治癒後に、Lfを投与する場合には、Lfの予防剤と
しての使用形態であり、発症中に使用するときは、Lfの
治療剤としての使用形態である。
【0008】投与は、動物の種、投与目的、疾患の種
類、症状によって異なり、とくに限定されないが、錠
剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤として、直接投与
したり、飼料や飲水に混じて投与することができる。投
与量は、動物の種、投与目的、疾患の種類、症状により
異なり、とくに限定されないが、1〜5000mg/kg、好まし
くは、5〜1000mg/kg、さらに好ましくは10〜200mg/kg
程度である。Lfは、日常摂取されているものであり、本
発明において使用される量では、毒性は知られていな
い。
【0009】
【実施例】以下、本発明を試験例により具体的に説明す
るが、本発明はこれらの試験例に限定されるものではな
い。 [試験例1] TNF-α産生抑制作用 以下の試験例1〜4に用いるLfは、遺伝子組換rhLf(AG
ENNIX INCORPORATED)およびN末端のアミノ酸Gly1-Arg2
-Arg3を除去したrhLf(AGENNIX INCORPORATED)を用い
た。 (1) rhLfを0.1〜1000 μg/mlの濃度で添加した群、
及び(2) N末端欠失rhLfを0.1〜1000 μg/mlの濃度
で添加した群の実験群と、(3) カゼインナトリウム
を0.1〜1000 μg/mlの濃度で添加した対照群とを設け
た。RAW264(理化学研究所)は、適当な密度に5%ウシ胎
仔血清(FCS)含有RPMI-1640で希釈し、24ウェル培養プ
レートに蒔種し(1×105細胞/ウェル)、24時間培養し
た。その後ウェルをPBSで洗浄し、以下の実験に供し
た。上記濃度で試験試料を含む新しい培養液(RPMI-164
0)を24ウェル培養プレートの各ウェルに加えた。プレ
ートは5%CO2インキュベーター中37℃で18時間培養し
た。その後、LPSを1 ng/mlで含む10%FCS含有RPMI1640に
交換し、4時間培養した。培養後、培養液を適度に希釈
し、培養液中のTNF-α濃度を、ELISAキットで測定し
た。rhLfを予め添加し、その後LPSを培養液に添加してT
NF-α産生を誘導すると、実験群の場合には、RAW264細
胞によるTNF-α産生が、濃度依存的に抑制されているこ
とが認められた(図1)。これに対しN末端欠失rhLfに
はTNF-α産生抑制効果が全く認められなかった(図
1)。上記rhLfにヘパリンを1mg/mlの濃度で添加する
(rhLfを0.1〜1000 μg/ml+ヘパリン1mg/ml)と、100
μg/mlまでは、TNF-α産生抑制は認められなくなった
(図2)。
【0010】[試験例2] rhLfの結合アッセイ及びエ
ンドサイトーシス rhLfをIODO-BEADS(Pierce社)を用いて放射性標識し
た。200μgのrhLf、あるいはN末端欠失rhLfと125I-Na
(rhLf100μgあたり1mCi)をPBS(pH7.5)に溶解し全量
を0.5mlとした。これにIODO-BEADS2つを添加し15分間室
温で反応させた。IODO-BEADSを取り除いた後、反応液を
PD-10カラムを用いて125I-rhLfあるいは125I-N末端欠失
rhLfと125I-Naとを分離した。溶出液は0.1%BSAを含むPB
Sを用いた。RAW264細胞(1×105細胞/ウェル)を冷PBS
で洗浄後、125I-rhLfあるいは125I-N末端欠失rhLfを100
μg/mlの濃度で含む10%FCS含有RPMI-1640で、4℃または
37℃で1時間培養した。total-rhLfの量は冷却したBSA-P
BS洗浄後、また、internal-rhLfの量は冷BSA-PBS/0.1%
デキストラン硫酸-5mM EGTAで洗浄して細胞表面のrhLf
を除去後、細胞を0.5 N KOH液で溶解し、γ-カウンター
でそれぞれの放射能をカウントした。その結果、表1に
示すように、エンドサイトーシスがブロックされる4℃
の条件では、rhLfの場合、total-rhLfの75%が細胞表面
から除かれたのに対し、N末端欠失rhLfの場合は89%が除
かれた。一方、生理的な条件である37℃では、rhLfの場
合はtotal-rhLfの65%が細胞内にエンドサイトーシスさ
れたのに対し、N末端欠失rhLfの場合は僅か30%がエンド
サイトーシスされた。すなわち、rhLfの受容体依存性エ
ントサイトーシスは、N末端を欠失させると著明に低下
することが明らかとなった。
【表1】
【0011】[試験例3] rhLfのエンドサイトーシス rhLfを、Alexa Fluor 546 Protein Labeling Kitのプロ
トコールにしたがって蛍光標識した。rhLf を2 mg/mlの
濃度で溶解したPBS 0.5 mlに1 M重炭酸ナトリウム50 μ
lを加えた。この溶液をAlexa Fluor 546 reactive dye
と混合し室温で1時間撹拌した。17 μlのヒドロキシル
アミンを加えた後さらに30分間反応させた。その後カラ
ムにより蛍光標識-rhLfとrhLfとを分離した。溶出液はP
BSを用いた。 (1) 蛍光標識-rhLfを10%FCS含有PBSに100 μg/mlの濃度
で溶解した液、並びに(2) 蛍光標識-rhLf を300 μg/ml
の濃度及びヘパリン を1 mg/mlの濃度で10%FCS含有PBS
に溶解した液を準備した。RAW264細胞(1×105細胞/ウ
ェル)を冷PBSで洗浄後、上記(1)あるいは(2)の溶液を
それぞれの細胞に添加し、37℃で1時間培養した。1 mg/
mlヘパリンを含むPBSで細胞表面のrhLfを脱離したの
ち、エタノールによる脱水、透徹、封入を行った。蛍光
顕微鏡により細胞を観察した。その結果、細胞内で蛍光
を発しているrhLfが確認された(図3)。この蛍光はヘ
パリン添加により消失した(図4)。これより、rhLfは
細胞内にエンドサイトーシスされることが明らかとなっ
た。
【0012】[実験例4] 結合実験(Binding Assay) 全結合測定用のリガンド液として、125I-rhLfを、0、
2、5、10、20、50、100、200、400、あるいは600μg/ml
の濃度でそれぞれ0.1 % BSA-PBSに溶解したものを用意
した。非特異的結合測定用のリガンド液として、上記
125I-rhLfに対し大過剰の非標識rhLf(100 mg/ml)を加
えたものを用意した。RAW 264細胞1×105/wellを冷PBS
で洗浄後、全結合、あるいは非特異的結合測定用リガン
ド液を、それぞれ対応するウェルに添加し、4℃で1時間
静置した。反応液の一部をとり遊離リガンド(125I-rhL
f)の放射能をγ-カウンターでカウントした。冷BSA-PB
Sで洗浄後、細胞を0.5N KOH液で溶解し溶解液の放射能
をカウントした。各濃度において、細胞への全結合カウ
ントより、非特異的結合カウントを引いた値(特異的結
合カウント)を求め、これと遊離のカウントを125I-rhL
fの比活性から、rhLfに換算した。その結果、飽和曲線
を得た。ここで得た総結合および非特異的結合値をもと
に、Scatchard解析を行ったところ、図5に示すよう
に、rhLfと結合して2つの異なる解離定数、Kd1 = 0.46
×10-6M、Kd2 = 1.48×10-6Mのレセプターの存在が確認
された。試験例1で得たRAW264細胞へのTNF-α産生抑制
のEC50は約 30μg/ml(0.48×10-6M)であり、上記解離
定数のKd1 = 0.46×10-6Mとほぼ一致する。これよりTNF
-α産生抑制には高親和性レセプターへの結合が重要で
あると推察される。
【0013】
【発明の効果】本発明により、炎症性反応を抑制あるい
は軽減する作用を有するLfのスクリーニング方法および
該作用を有する飲食品が提供された。
【0014】
【図面の簡単な説明】
【図1】 マウス白血病由来の単球マクロファージ様細
胞RAW 264におけるLPS誘導TNF-α産生に対するrhLf、及
びN末端欠失rhLfの抑制作用を示す図である。
【図2】 同上細胞におけるrhLfのLPS誘導TNF-α産生
に対するヘパリンの阻害効果を示す図である。
【図3】 同上細胞に対する蛍光標識-rhLfのエンドサ
イトーシスを蛍光顕微鏡で観察した図である。
【図4】 同上細胞に対する蛍光標識-rhLfのエンドサ
イトーシスのヘパリンによる阻害を蛍光顕微鏡で観察し
た図である。
【図5】 同上細胞に対するrhLfの結合実験結果をス
キャッチャープロット(Scatchard plot)した図であ
る。直線の傾きから解離定数Kd値を得、横軸(x軸)の
切片からリガンド(rhLf)の最大結合値を得る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 毅 神奈川県小田原市成田540 明治乳業株式 会社栄養科学研究所内 Fターム(参考) 4B018 LB07 LB08 LB10 MD20 ME07 ME08 4C084 AA02 BA44 DC50 MA52 NA14 ZB112 ZC022

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 培養細胞を用いたリガンド取込み実験に
    おいてエンドサイトーシスされるラクトフェリンを有効
    成分とする炎症性サイトカイン産生抑制剤。
  2. 【請求項2】 培養細胞を用いたリガンド結合実験(Bi
    nding Assay)において細胞上の高親和性結合部位と結
    合するラクトフェリンを有効成分とする炎症性サイトカ
    イン産生抑制剤。
  3. 【請求項3】 細胞がRAW 264である請求項1または2
    記載の炎症性サイトカイン産生抑制剤。
  4. 【請求項4】 組換えヒトラクトフェリンである請求項
    1または2記載の炎症性サイトカイン産生抑制剤。
  5. 【請求項5】 N末端アミノ酸配列(Gly1-Arg2-Arg3-Ar
    g4-Arg5)が保存された請求項4記載の炎症性サイトカ
    イン産生抑制剤。
  6. 【請求項6】 炎症性サイトカインがTNF-αである請求
    項1〜5のいずれかに記載の炎症性サイトカイン産生抑
    制剤。
  7. 【請求項7】 ヘパリンで取り込みが阻害される請求項
    1または2記載の炎症性サイトカイン産生抑制剤。
  8. 【請求項8】 生体の炎症反応を抑制または軽減する作
    用を有する飲食品を製造するための請求項1〜7のいず
    れかに記載のラクトフェリンの使用。
  9. 【請求項9】 食品が経口・経腸栄養剤または治療食で
    ある請求項8記載のラクトフェリンの使用。
  10. 【請求項10】 請求項1〜7のいずれかに記載のラクト
    フェリンを有効成分として含有する生体の炎症反応を抑
    制または軽減する作用を有する飲食品。
  11. 【請求項11】 食品が経口・経腸栄養剤または治療食で
    ある請求項10記載の飲食品。
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