JP2002321146A - 回折光学素子用金型加工方法 - Google Patents

回折光学素子用金型加工方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 研削加工によって、正確で表面状態の良好な
回折格子形状を金型に形成する。 【解決手段】 回折格子形状の最外周の輪帯から内周方
向へ砥石1を送りながら、各輪帯の斜面の目標傾斜角度
θn と同じ傾斜角度の斜面創成面1aと垂直面創成面1
bを斜面創成用砥石11と垂直面創成用砥石12によっ
てそれぞれ形成しながら金型素材W1 の研削加工を行な
う。各輪帯ごとに目標傾斜角度の斜面創成面1aで研削
するいわゆる総型の砥石による加工であるため、回折格
子形状が正確で表面粗さも良好である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回折光学素子の製
造に用いる成形用の金型を研削加工によって製作するた
めの回折光学素子用金型加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】超硬合金、セラミックス等の硬質材料の
金型素材に、各輪帯により斜面の傾斜角度の異なる回折
面形状を創成する研削加工においては、シャープエッジ
を持つレジンボンドダイヤモンド砥石等を回転させなが
ら、目標とする回折面形状に倣って並進させる研削方法
が知られている。
【0003】図4は一従来例による回折光学素子用金型
加工方法を説明するもので、円錐状に形状創成された加
工面101aを有するダイヤモンド砥石等の砥石101
を軸O1 のまわりに回転させながら、軸O2 のまわりに
回転する金型素材W0 の上面に切り込み、矢印R1 〜R
n で示す方向に所定の速度で砥石101を移動させるこ
とで、回折格子形状を研削・創成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来
の方法では、ダイヤモンド砥石等の砥石のエッジ部の摩
耗が大きいため、回折面形状を正確に創成するのが難し
く、また、良好な表面粗さを得ることも困難であるとい
う未解決の課題があった。
【0005】本発明は上記従来の技術の有する未解決の
課題に鑑みてなされたものであり、超硬合金、セラミッ
クス等の硬質材料の金型素材に、所望の回折格子形状を
良好な表面粗さで正確に創成することのできる回折光学
素子用金型加工方法を提供することを目的とするもので
ある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の回折光学素子用金型加工方法は、研削加工
によって金型素材に回折格子形状を創成する工程を有
し、前記回折格子形状の各斜面ごとに、該斜面の目標傾
斜角度と同じ傾斜角度を有する斜面創成面を備えた総型
の砥石によって研削することを特徴とする。
【0007】また、研削加工によって金型素材に回折格
子形状を創成する工程を有し、前段の斜面を研削した砥
石の斜面創成面を後段の斜面の目標傾斜角度と同じ傾斜
角度に工具創成手段によって創成しながら、前記砥石に
よって前記後段の斜面を研削することを特徴としてもよ
い。
【0008】工具創成手段が、回転軸の傾斜角度を変更
自在である工具斜面創成用の砥石を有するとよい。
【0009】砥石の斜面創成面の創成と同時に、前記砥
石の垂直面創成面の創成を行なうとよい。
【0010】砥石の斜面創成面の創成と垂直面創成面の
創成を、2つの工具創成手段によって個別に行なうとよ
い。
【0011】
【作用】回折格子形状の各斜面ごとに目標傾斜角度と同
じ傾斜角度を有する斜面創成面を備えた総型の砥石を用
いて研削することで、回折格子形状の溝底部の形状や表
面粗さを劣化させることなく正確で良好な溝形状創成を
行なうことができる。
【0012】同じ砥石を用いて、各斜面ごとに前記砥石
の斜面創成面を研削し、後段の斜面の目標傾斜角度と同
じ傾斜角度に創成しながら金型の回折格子形状の研削を
行なうことで、回折光学素子の製造工程を大幅に簡略化
かつ効率化できる。
【0013】回折格子形状を創成する砥石に、その斜面
創成面を創成するための工具斜面創成用の砥石や垂直面
創成用の砥石を組み合わせて用いることにより、装置お
よび制御の簡略化を促進できる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
いて説明する。
【0015】図1は一実施の形態による回折光学素子用
金型加工方法を示す。これは、例えば、格子高さが10
μm、同心円状で20輪帯、最外周の輪帯半径が4m
m、輪帯間隔は最外周が最も狭く50μm、最内周が最
も広く200μmである回折光学素子用金型を研削加工
するためのものである(図3参照)。
【0016】加工に先だって、形状誤差1μm以下に格
子加工面を平面形状に前加工することで、格子加工時の
砥石の最大切り込み量を15μm以下にした。
【0017】図1の装置において、円錐状に形状創成さ
れた斜面創成面1aを有するダイヤモンド砥石等の砥石
1を軸O1 のまわりに回転させながら、軸O2 のまわり
に回転する金型素材W1 の上面に切り込み、軸O1 と平
行に所定の速度で移動させることで、回折格子形状を研
削・創成する。
【0018】例えば、砥石1として、粒径#1500の
レジンボンドダイヤモンド砥石で外径φ80mmのもの
を用いて、回転軸O1 を中心に1000r.p.mで回
転させながら、回転軸O2 を中心に2000r.p.m
で回転する超硬合金製の金型素材W1 に所望量切り込
み、回折格子形状を創成する。
【0019】砥石1の円錐状の加工面である斜面創成面
1aと平面状の加工面である垂直面創成面1bは、上記
の回折格子形状を研削・創成する工程において、回折格
子形状の各輪帯ごとに、以下のように目標傾斜角度に同
時創成される。
【0020】工具創成手段である円筒形の斜面創成用砥
石11および垂直面創成用砥石12(粒径#500のダ
イヤモンド砥石)により、金型加工中に砥石1の斜面創
成面1aと垂直面創成面1bをそれぞれ総型の砥石に研
削・創成する。まず、工具斜面創成用の砥石である斜面
創成用砥石11の回転軸と砥石1の回転軸O1 の間の角
度を回折格子形状の最外周部の輪帯の目標傾斜角度θ1
に等しくした状態で、斜面創成用砥石11を10000
r.p.mで回転させるとともに、砥石1の斜面創成面
1aと平行に移動させながら斜面創成面1aを加工す
る。同時に、垂直面創成用砥石12を10000r.
p.mで回転させるとともに、砥石1の垂直面創成面1
bと平行に移動させながら垂直面創成面1bを加工す
る。このようにして最外周部の格子溝形状に対応した砥
石1の加工面形状が創成される。
【0021】上記のように形状創成される総型の砥石1
の回転軸O1 と金型素材W1 の回転軸O2 が垂直な状態
で砥石1を金型素材W1 に所望量の14μm、型1回転
あたり0.05μmの速度で切り込むことにより所望の
回折格子形状が金型素材W1に形成される。この時、砥
石1の総型加工を行なう工具創成用砥石11および12
は、前述の形状創成を行なっている状態で砥石1ととも
に移動する。一輪帯の回折格子を加工するごとに、斜面
創成用砥石11の回転軸と砥石1の回転軸O1で作られ
る角度を、加工する回折格子形状の目標傾斜角度θn
等しくなるように変化させ、上記と同様の方法で砥石1
の形状創成を行ない、同時に、第n番目の回折格子輪帯
を加工する。
【0022】それぞれの回折格子輪帯の目標傾斜角度に
等しくなるような砥石の同時形状創成と金型素材W1
溝加工を繰り返すことにより、所望の回折格子形状を金
型素材W1 上に創成できる。
【0023】ここで、砥石1の総型加工を行なう工具創
成用砥石11および12は、図2に示すように互いに干
渉しない位置に配置されており、回折格子形状の1番目
輪帯における砥石1の形状創成と金型素材W1 の溝加工
から、第n番目の輪帯における砥石1の形状創成と金型
素材W1 の溝加工までの一連の加工は、加工機の停止も
しくは金型素材W1 や砥石1等を取り外すことなく、回
折面形状の創成完了まで連続して行なわれる。
【0024】上記の方法で回折格子形状を研削・創成し
た回折光学素子用金型と、図4の従来例によって加工さ
れた回折光学素子用金型を比較した実験の結果を末尾の
表1に示す。
【0025】図4の装置において、砥石101は、粒径
#1500のレジンボンドダイヤモンド砥石、外径φ8
0mmであり、回転軸O1 を中心に1000r.p.m
で回転しながら、回転軸O2 を中心に2000r.p.
mで回転する超硬合金製の金型素材W0 に所望量切り込
むとともに、所望の形状に倣って矢印R1 〜Rn の方向
に毎分0.2mmの速度で移動して、回折格子形状を創
成した。
【0026】表1に示した測定項目は、図5に示す斜面
粗さ(A)、溝底部はずれ量(B)、格子高さ(C)で
ある。ここで、溝底部はずれ量(B)は、溝エッジ部の
所望形状からはずれた部分の幅を示す。溝底部の形状
は、砥石のエッジ部の損耗状態により、図5の(a)に
示すような丸みを帯びた形状や、同図の(b)に示すよ
うなカギザキ状の形状になる。
【0027】表1から分かるように、本発明の加工方法
では、各ピッチ(輪帯)毎に加工用砥石の形状創成をし
て砥石形状を金型素材に転写するいわゆる総形加工であ
るため、中心近傍、外周近傍に関係なく型に格子全面に
わたってその斜面粗さ、形状精度に大きな差異は認めら
れず良好な値を示した。
【0028】しかしながら、従来例の方法では、加工初
期の外周近傍の格子溝の斜面粗さ、形状は良好である
が、中心部に近づくに従って斜面粗さ、形状が劣化し
た。従来例の方法では、砥石の先端で回折格子形状を創
成するために大きな負荷がかかり摩耗が発生する。その
結果、砥石のシャープエッジで加工される溝底部のエッ
ジ形状が所望形状より大きくずれるとともに、格子高さ
不足、斜面粗さ劣化も発生すると考えられる。
【0029】特に中心部の格子では、本発明の方法によ
れば、斜面粗さと、溝底部はずれ量、格子高さがそれぞ
れ1.0nm、3.2μm、9.9μmであったが、従
来の方法ではそれらの値が2.5nm、10.5μm、
8.9μmであり、本発明の方法が格段にすぐれている
ことが分かる。
【0030】
【表1】
【0031】
【発明の効果】本発明は上述のとおり構成されているの
で、以下に記載するような効果を奏する。
【0032】硬質材料の金型素材に、所望の回折格子形
状を正確に良好な表面粗さで効率的に創成することがで
きる。これによって、回折光学素子の低価格化と高品質
化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態による回折光学素子用金型加工方
法を説明する図である。
【図2】図1の装置を図示右方向からみた図である。
【図3】一具体例による回折格子形状を説明する図であ
る。
【図4】一従来例を説明する図である。
【図5】格子溝形状を拡大して説明する図である。
【符号の説明】
1 砥石 1a 斜面創成面 1b 垂直面創成面 11 斜面創成用砥石 12 垂直面創成用砥石

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 研削加工によって金型素材に回折格子形
    状を創成する工程を有し、前記回折格子形状の各斜面ご
    とに、該斜面の目標傾斜角度と同じ傾斜角度を有する斜
    面創成面を備えた総型の砥石によって研削することを特
    徴とする回折光学素子用金型加工方法。
  2. 【請求項2】 研削加工によって金型素材に回折格子形
    状を創成する工程を有し、前段の斜面を研削した砥石の
    斜面創成面を後段の斜面の目標傾斜角度と同じ傾斜角度
    に工具創成手段によって創成しながら、前記砥石によっ
    て前記後段の斜面を研削することを特徴とする回折光学
    素子用金型加工方法。
  3. 【請求項3】 工具創成手段が、回転軸の傾斜角度を変
    更自在である工具斜面創成用の砥石を有することを特徴
    とする請求項2記載の回折光学素子用金型加工方法。
  4. 【請求項4】 砥石の斜面創成面の創成と同時に、前記
    砥石の垂直面創成面の創成を行なうことを特徴とする請
    求項2または3記載の回折光学素子用金型加工方法。
  5. 【請求項5】 砥石の斜面創成面の創成と垂直面創成面
    の創成を、2つの工具創成手段によって個別に行なうこ
    とを特徴とする請求項4記載の回折光学素子用金型加工
    方法。
  6. 【請求項6】 工具創成手段が、回折格子形状を創成す
    る砥石とともに送り方向に移動することを特徴とする請
    求項2ないし5いずれか1項記載の回折光学素子用金型
    加工方法。
  7. 【請求項7】 金型素材の材料が、超硬合金またはセラ
    ミック材料を含むことを特徴とする請求項1ないし6い
    ずれか1項記載の回折光学素子用金型加工方法。
  8. 【請求項8】 砥石が、ダイヤモンド砥石であることを
    特徴とする請求項1ないし7いずれか1項記載の回折光
    学素子用金型加工方法。
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