JP2002286617A - 三次元分極計測用の走査型非線形誘電率顕微鏡 - Google Patents

三次元分極計測用の走査型非線形誘電率顕微鏡

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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明の課題は、非線形誘電率顕微鏡において
試料に対して異なる方向からの交番電界を印加できる手
段を実現し、それに基く容量変化の測定をして三次元分
極を高分解能で観測できる新たな非線形誘電率顕微鏡を
開発し、提供することにある。 【解決手段】 本発明の走査型非線形誘電率顕微鏡は、
非線形を起こすための交番電界の方向を容量変化を計測
するための高周波電界の方向に対して直交する方向に印
加することで試料表面に沿った水平方向の分極成分の検
出を可能とすると共に、この試料表面に沿った水平方向
に対峙する電極対を直交する二組とすることによってあ
らゆる水平方向の電界の印加を可能とし、更にはこの印
加電界に従来の試料面に垂直方向の電界を加えることに
よって非線形を起こすための交番電界の方向を三次元的
に自由に設定できるように構成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強誘電材料の永久
分極の状態や結晶性を評価するものとして開発した走査
型非線形誘電率顕微鏡の改良技術であって、三次元分極
を計測できる走査型非線形誘電率顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】本発明者らは先に誘電・強誘電析料の線
形・非線形誘電率分布の計測がおこなえる走査型非線形
誘電率顕微鏡(SNDM)を開発した。本顕微鏡は機械的応
答、熱的応答である圧電・焦電応答などを使わずに、純
電気的に分極分布を測定するものであって、分解能もサ
ブナノメータオーダ達していることが確かめられてお
り、極微小分極分布観察のための測定法の一つとして注
目を集めている。まず、この走査型非線形誘電率顕微鏡
の動作原理について説明する。本顕微鏡の原理は本件発
明者らが提案している印加交番電界による誘電率変化の
動的測定法を基本にしたものであり、それは以下に述べ
るように残留分極を固定したまま、電束と電界の間の非
線形性の次数を分離できる計測法である。まず、比較的
大きな振幅E03=Vp/dとゆっくりした角周波数ωpをも
つ交番電界が非線形性をもった誘電体に印加され、その
ため微分容量Cs(t)が時間の関数として交番的に変化
する状況を考える。ここでz軸(3方向)を残留分極Pr
の方向にとり簡単化のためこの方向のみの変化を考え
る。このような物質中で電束密度D3と電界E3の関係は
非線形性まで考慮に入れて D=Pr33E+ε333E32 /2+ε3333E33 /6+ε33333E34 /24‥‥(1) で与えられる。その展開係数ε33、ε333およびε3333
‥‥をここではそれぞれ二次(線形)、三次(最低次の
非線形)および四次‥‥の誘電率と呼ぶことにする。そ
れらは、2階、3階および4階‥‥のテンソル量であ
る。なお、この一見奇妙な呼び名は電気的エンタルピー
2などのエネルギー関数を電界で展開したときの展開
次数から定義されたものであり、通常D−E関係で定義
される電界の次数より一次大きいことに注意されたい。
特に3階のテンソル量であるε333は圧電定数と同様に
対称中心をもつ材料には存在せず、強誘電材料において
は、残留分極Pの向きを反転させるとそれに従って符
号が変わる性質をもっている。少々正確さを欠くがこの
ことを図示したのが図11であり、強誘電体のヒステリ
シス曲線において、D=Prの点ではD−E曲線は上に
凸であり(二次曲線成分の係数は負)ε333=−ε'333
<0、D=−Prの点では下に凸となりε333=ε'333>0
(大きさは同じで逆符号)となる。また、未分極状態
(原点)ではD−E曲線は点対称で二次曲線成分はなく
なりε333=0となる。さらに、一次の傾きである線形
の誘電率は分極の反転によっては変化しないことも、こ
の図からあわせて理解できる。
【0003】このような特性を持つ材料に外部から強制
的に電界を印加し、その各点でのD−E曲線の傾きの変
化すなわち微分容量の変化を計測することにより、非線
形誘電率を計測するのである。具体的には、試料に外部
から Ep3=Epcosωpt (2) の交番電界を印加し、その試料の微分容量をω0の角周
波数(ωp≪ω0)の微小高周波電界E 3で測定する。E 3E 0cosω0t (3) ただし、EpE 0 の関係にある。ここで E3=Ep3E 3 (4) を(1)式に代入し整理すると、微小高周波電界によっ
て誘起される微小な電束密度 3は以下のように与えら
れる。(ただし、下式ではω0に近い成分のみを抽出し2
ω0などのω0からかけはなれた成分を無視している。) 3=(ε33+ε333 Ep3+ε3333Ep3 /2)E 3 (5) 上式は外部から強制的に印如した電界Ep3により、微分
誘電率が変化することを表しており、そのため微分容量
s(t)は次式に従い変化する。 Cs(t)=Cs0+ΔCs(t) (6) ここで、Cs0 は零印加電界時の静電容量、ΔCs(t)
は電界印加による静電容量の交番的変化分であり、これ
らの比は ΔCs(t)/Cs0=ε333 Epcosωpt/ε33+ε3333 Ep cos2ωpt/4ε33 +ε33333 Ep3cos3ωpt/24ε33+‥‥‥‥ (7) で与えられる。以上のことより、三次の誘電率に起因す
る容量変化は印加電界と同一周波数で変化し、その振幅
は印加電界の振幅に比例し、四次の誘電率による容量変
化は印加交番電界の2倍の周波数をもち、その振幅の自
乗に比例する振幅をもつことがわかる。
【0004】次に、走査型非線形誘電率顕微鏡用プロー
ブおよびシステムを説明する。上記印加電界による容量
変化(誘電率変化)の直流成分に対する比は大きくて10
-3の大きさであり、通常は10-5〜10-8程度の微小な変化
である。この変化を測定用基板上の任意の位置で測定で
きるプローブを本発明者らが開発した。開発したプロー
ブには同軸共振器を用いた分布定数型とLC共振器を用
いた集中定数型があるが、ここでは最近の高分解能型に
対応した集中定数型について説明する。図12に走査型
非線形誘電率顕微鏡用集中定数型プローブの概念図を示
す。薄板状の誘電体試料(基板)9の背面に電極(背面
電極)3を配置し、その表面側に円形のアース導体(リ
ング)2とその中心位置に探針1を組み合わせたプロー
ブを配置する。中心導体(探針)1直下の試料の静電容
量Cs(t)と外付けのインタクタンスLで構成された
集中定数型の共振器の共振周波数に同調して発振器が発
振する。すなわち、発振器の帰還回路にLC共振器が入
った形態となっている。リング2と背面電極3間に外部
から角周波数ωp振幅Vpの電圧を印加すると、非線形効
果のため静電容量が変化し発振周波数の交番的変化が起
こる。同図中Cgは円形のアース導体(リング)2直下
の静電容量であり、Cg(t)はCs(t)に比べて十分
大きくとるので共振周波数に関しては無視でき、中心導
体直下の微小な部分の情報(これを基に顕微鏡像が作ら
れる。)が得られる。また図中のCoは共振器や発信回
路中に存在する浮遊容量である。ただし、上記説明は基
板の厚さが探針の直径より小さい場合についてのみ正確
であり、探針先端の直径が被測定基板の厚さより十分小
さいときは(通常の試料はほとんどこの場合に該当す
る。)、探針直下への電界の集中のため基板表面近くの
部分の容量変化が観測される。因みに上記原理に従って
作成した集中定数型プローブの発振周波数は1GHz〜2.2
GHz程度であり、探針はSTMなどに用いられるW針の
作り方を参考にして本顕微鏡用の仕様に合わせて製作し
たもの、及び導電性の原子間力顕微鏡用のカンチレバー
を用いている。プローブの発振器6から出力される信号
は非線形誘電率の大きさに対応してFM変調されてお
り、このFM波を復調器7によって復調し、それをロッ
クインアンプ8で検波することによって非線形誘電率の
大きさに対応した出力信号が得られる。また試料台であ
るx−yステージを動かすことにより、非線形誘電率の
分布測定が行われ、これを画像化して顕微鏡像ができる
ものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで従来の走査型
非線形誘電率顕微鏡は、試料表面に対して垂直方向に低
周波数の交番電界をかけたときの静電容量の変化を取り
出すものであり、原理的に前記電界方向即ち試料表面に
対して垂直方向の分極しか計測出来ない。本発明の課題
は、非線形誘電率顕微鏡において試料に対して異なる方
向からの交番電界を印加できる手段を実現し、それに基
く容量変化の測定をして三次元分極を高分解能で観測で
きる新たな非線形誘電率顕微鏡を開発し、提供すること
にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の走査型非線形誘
電率顕微鏡は、非線形を起こすための交番電界の方向を
容量変化を計測するための高周波電界の方向に対して直
交する方向に印加することで試料表面に沿った水平方向
の分極成分の検出を可能とする。そして、この非線形を
起こすための交番電界を発生させる試料表面に沿った水
平方向に対峙する電極対を、直交する二組とすることに
よってあらゆる水平方向の電界の印加を可能として、あ
らゆる水平方向の分極成分の検出ができるようにする。
更にはこの印加電界に従来の試料面に垂直方向の電界を
加えることによって非線形を起こすための交番電界の方
向を三次元的に自由に設定できるようににして、あらゆ
る方向の分極成分の検出ができるように構成した。
【0007】
【発明の実施の形態】図1(a)に示す従来のSNDMは、主
に非線形を起こすための交番電界の方向と容量変化をセ
ンシングするための高周波電界の方向が同じ場合に計測
される非線形定数(ここではそれらをまとめてε333
呼ぶことにする)を計測することで分極を評価してい
る。なお、本明細書では原則として分極の方向を3
(z)方向として扱うものとする。従来のプローブは、
試料表面に垂直方向に電界を印加しているため、試料表
面に垂直な分極成分を評価することしかできない。しか
し、実際の計測評価の場面では、分極は必ずしも試料表
面に垂直に向いているとは限らないため、水平方向の分
極成分を評価したい場合がある。SNDMで水平方向の分極
成分の計測を可能にする方法は、いくつか考えられる。
例えば、三次(最低次)の非線形の誘電率ε333を計測
する方法でも、非線形を起こすための電界及び容量変化
をセンシングする電界共に、試料の面内方向にかけるよ
うなプローブを用いれば、面内方向の分極を計測するこ
とができる。しかし、この方法では空間分解能が上がら
ないと考えられる。また、別の方法として、図1(b)に
示すような非線形を起こすための交番電界の方向と容量
変化をセンシングするための高周波電界の方向が垂直な
場合に計測される非線形定数(ここではそれらをまとめ
てε311と呼ぶことにする)を計測する方法がある。こ
の場合もいくつかの方法が考えられるが、本発明者はそ
の中で試料面内のε311の分布を非常に高い空間分解能
で計測可能な新しいプローブを開発し実際に計測を行っ
て現象の検証を実行した。また、それを用いてε311
ε333を同時に計測するシステム、及び回転電界を用い
て分極の方向を3次元ベクトルとして計測可能なシステ
ムを開発した。それについて以下に述べる。この、3次
元ベクトル計測が可能になると、図2(a)に示すような
水平及び垂直方向の分極が混在するa−cドメインの計
測、図2(b)に示すような種々の方向に向く分極が混在
することで特性が向上するとされているエンジニアード
・ドメイン構造の計測、図2(c)に示すような分極の方
向が面内で種々の方向を向いているドメイン構造などを
効果的に計測・評価することが可能になる。
【0008】本発明の原理を説明する。図3は、非線形
を起こすための交番電界 の方向と容量変化をセンシ
ングするための高周波電界 の方向が並行な場合
(「従来の技術」で説明した非線形誘電率ε333の計
測)の原理図である。図に示すとおり、探針先端の電界
分布は、 共に針先に集中し試料表面に垂直方
向となっている。この形態における電束密度と電界との
関係は次式となる。
【数1】 また、交番電界 =Ecosωt印加時の静電容
量C に対する交番容量変化ΔC の比は次式で表せ
る。
【数2】 これに対応して図4が非線形誘電率ε311を計測する本
発明の実施形態を示したものであり、非線形を起こすた
めの交番電界 の方向と容量変化をセンシングするた
めの高周波電界 の方向が垂直な場合の原理図であ
る。図に示すとおり、 を印加するための電極対を探
針の両側に設置している。このとき、探針の電位(0
V)と両側の電極の中点の電位が同じになるように+
及び− を印加することで、 は探針に収束しな
いで試料表面に水平となる。一方、高周波電界 は探
針先端に集中し試料表面に垂直な方向となる。このよう
にすることで、非線形誘電率ε311を計測することが可
能となる。この方法は、高周波電界 が探針先端に集
中しているため、高い空間分解能での計測が可能であ
る。この形態における電束密度と電界との関係は次式で
表せる。
【数3】 また、交番電界 =Ecosωt印加時の静電容
量C に対する交番容量変化ΔC の比は次式で表せ
る。
【数4】 図4は交番電界 を印加する電極対を一方向にのみ配
置している例であるが、これを図5のように交差する二
方向(図では、x方向及びy方向)に配置し、それぞれ
に印加する電圧 ,及び の大きさの割合を変化さ
せることで、電界を合成させx−y平面の任意方向の電
界ベクトルを形成する事が可能となる。この方法を用い
ると、試料を回転させることなく面内の任意の方向の分
極を計測することが可能になる。二対の電極方向が直交
配置であり、その際の ,及び の関係が =E
cosα, =Esinαとなるように変化させ
ると、合成された電界の大きさは振幅Eが一定で角度
αの方向に傾いた交番電界となる。なお、以上の説明で
は電極対を直交する二対の電極としたが、これに限られ
ることなく交差する複数組の電極であればよい。
【0009】次なる形態として、図6に示すように、試
料の背面に電極を配置してリング電極との間に、容量変
化をセンシングするための高周波電界 の方向と並行
な非線形を起こすための交番電界 を重畳して印加す
る構成としたブローブは、ε 333とε311の同時計測が可
能である。ε311を計測するために印加する交番電界
と、ε333を計測するために印加する交番電界
周波数をそれぞれω,ωと変えて同時に印加する。
このときのロックインアンプの出力をωで同期検波す
ればε311を、ωで同期検波すればε333を分離して計
測することができる。なお、ここでは分極方向にではな
く試料厚さ方向に3(z軸)方向を、試料面方向に1
(x軸)方向をとっている。
【0010】[実験データ1]図7に実際にこのブローブ
の特性を評価した結果を示す。用いた試料はyカットLi
NbOである。ここでは実際に結晶学において定義され
ている結晶方向を考慮するので、試料面に垂直な方向が
この結晶の(結晶学的に定義されている)y(2)方向
となり、z(3)方向が分極方向、そしてこの両方向に
直交する軸(面)がx(1)軸(面)の方向となる。す
なわち、本明細書において便宜的に行った面(軸)定義
において、基板(試料面)に垂直な面をx(1)面とし
た表記と異なり、これがy(2)面となる。前述でε
311(=ε31)と表した非線形誘電率はこの場合の結晶
学的な表現慣例に従うとx(1)とy(2)が入れ換わ
りε322(=ε32)となる。図7の(b)に結晶学により定
義された LiNbO (点群3mに属する)の非線形誘電
率の対称表を示す。同図で小点・で示したところは0を
示している。因みにε111=ε11=0ということ。ま
た、εi(jk)=εiJ であり、この(jk)=
(1,1)=1,(2,2)=2,(3,3)=3,
(3,2)=(2,3)=4,(1,3)=(3,1)
=5,(1,2)=(2,1)=6とする。また、図中
で●同士が線で結ばれているところは同じ値をもつこと
を、●と○が線で結ばれているところは同じ大きさでは
あるが逆符号であることを表す。ここではε322=ε32
がz(3)方向に電界を印加した時のy(2)方向の
誘電率変化に寄与する項であり、x(1)方向に電界を
印加したときの基板(試料面)に垂直な方向の容量変化
に寄与する項ε122(=ε12)は存在しない。この図(b)
はこのことを示している。この結晶は、ε311の他に値
の等しいε322が存在しているがε122は存在しない材料
である。この試料に、図5に示した形態のもので15°
づつに方向を変えて交番電界を印加したとき、計測され
るy方向の容量変化の割合をプロットした結果が図7
(c)である。この図は、原点から任意の角度に直線を引
きグラフの曲線と交差した点までの距離が、その方向に
電界を印加した時に得られる信号の強さを表している
(アンテナの指向性の図と類似)。つまりこの場合、y
カットLiNbO 結晶の結晶学的に定義されたz方向に電
界を印加したときが最も容量変化が大きく、同様に定義
されたx方向に電界を印加したときには容量変化がない
という結果を表している。これは、ε322が存在してい
るためz方向(3方向)に電界を印加したときy方向
(2方向)の容量が変化したが、ε122が存在しないた
めx方向(1方向)に電界を印加したときy方向(2方
向)の容量は変化がしなかったことを示している。電界
をz方向からずらした場合でもいくらか値が得られてい
るのは、x方向に印加したとき以外ではいくらか電界の
z方向成分があるからである。それを考慮して計算した
結果を実線でプロットしてある。この理論値と実験値が
よく一致していることからもわかるように、今回開発し
たプローブは所望の特性を有していることがわかる。こ
の実験のように、非線形を起こすための電界の方向を変
化させていき、最も強い信号が得られた方向が分極の方
向であると決定できる。図8は、非線形を起こすための
電界の方向を変えてPZT薄膜の分極の面内方向成分の
計測を行った実験結果である。図8(a)と(b)では電界の
方向を90°変えて印加している。電界の方向と分極の
方向が同一の場合(図8(a)の場合)は、分極方向を3
(z)とし、試料面に垂直の方向を1とする本明細書の
定義におけるε311が計測されるため信号が観測されて
いる。一方、図8(b)の場合は、分極の方向と垂直な方
向に電界を印加したため信号が得られていない。このこ
とから、この試料は分極の水平方向成分が存在し、その
方向は、図8(a)の電界の方向であることがわかる。ま
た図8(a)の白い部分と黒い部分では分極の水平方向成
分の向きは180°反対である。開発した本発明のプロ
ーブは、ε311とε333を独立に計測できるためε333
計測してみた。その結果を図8(c)に示す。この図が示
すとおり、図8(a)で信号が得られた部分とほぼ同じ場
所からε333による信号も得られており、この試料には
分極の水平方向成分とともに垂直方向成分も存在してい
ることが伺える。即ち、分極は試料表面に対して斜め方
向を向いていることがわかる。また、このプローブはト
ポグラフィ(プローブ顕微鏡像)との同時計測も可能で
ある。その測定結果を図8(d)に示す。
【0011】次に、回転電界を用いて、分極方向をリア
ルタイムで計測する方法について説明する。図5に示し
た方法で電界の角度を変えていき、最も強い方向が分極
方向であることに基いた計測であるが、回転電界を用い
ることにより、分極の方向をリアルタイムで計測できる
方法を説明する。図9に示すように、適当な角周波数ω
を用いて x=Ecosωt, y=Esinω
tとなるように電界を印加することで、角周波数ω
で回転する回転電界を得ることができる。このとき容量
変化の割合(FM復調器の出力)はωで周期的に変化
する。これをロックインアンプでωの信号を参照信号
として同期検波すると、ロックインアンプの位相の情報
が分極の方向を直接表すことになる。よって、プローブ
で試料表面をスキャンしながらロックインアンプの位相
情報をプロットしていくことで、分極の方向の2次元分
布が測定できる。これを画像化して顕微鏡像とすること
ができるが、このとき探針を介して信号を得ているため
空間分解能が高いものとなる。
【0012】次に、交差する2つの回転電界を用いて分
極の3次元ベクトルとしてリアルタイムに計測する方法
について説明する。この方法は図10に示すとおり、図
5に示した試料面に並行する二対の直交電極と試料厚み
方向に電界を印加する電極とを組み合わせた形態で実行
する。交差する2平面を回転する回転電界を利用するこ
とで、分極の方向を3次元ベクトルとしてリアルタイム
に計測することが可能である。前述の図9の方法では、
1つの平面内を回転する回転電界とロックインアンプの
位相情報を用いることで、面内の分極の方向を計測可能
であることを述べたが、ここでは、これを更に発展さ
せ、交差する2つの平面をそれぞれ異なった角周波数で
回転する回転電界を印加し、出力をそれぞれの角周波数
で同期検波することで、独立にそれぞれの位相情報を得
ることができる。即ち、図10(a)のように3方向の電
【数5】 を印加した例で説明すると、回転電界は図10(b)に示
すように、x−y平面及びx−z平面をそれぞれ角周波
数ω,ωで回転することになる。このときω で同
期検波した場合の位相情報は、分極をx−y平面に投射
したときの角度θを表し、ωで同期検波した場合の位
相情報は、分極をx−z平面に投射したときの角度φを
表している。これらを計測することにより、分極の方向
を3次元ベクトルとして計測が可能である。なお、この
場合も方向3は分極方向を意味しておらず、試料厚さ方
向にとっている。
【0013】
【発明の効果】本発明の走査型非線形誘電率顕微鏡は、
非線形を起こすための低周波の交番電界を試料表面方向
に印加することができるようにしたので、従来不可能で
あった試料表面に並行方向の分極成分を計測できる画期
的なものである。しかも、探針をプローブとする走査型
非線形誘電率顕微鏡であるから、高分解能の計測ができ
る。また、本発明の走査型非線形誘電率顕微鏡は、非線
形を起こすための低周波の交番電界を試料表面方向に印
加する電極対を、探針を中心として対称位置に複数組備
えることで、試料表面方向における所望方向の電界を合
成して印加することができる。このことによって、試料
表面方向のあらゆる方向の分極を計測することができ
る。更に、本発明の走査型非線形誘電率顕微鏡は、非線
形を起こすための低周波の交番電界を試料に印加する電
極対として、探針を中心とした表面方向に対称位置と試
料の表裏面位置に備えることにより、それぞれの電極対
に異なる周波数の交番電界を印加すると共に、検出信号
をそれぞれの周波数で同期検波することにより、分極方
向成分を分離して同時に検出することができる。
【0014】本発明の走査型非線形誘電率顕微鏡を用い
た分極方向計測法は、非線形を起こすための低周波の交
番電界の方向を時系列的に変化させることができるの
で、検出信号が最も強くなったときの電界方向に分極方
向があると判定することにより、強誘電体等の試料の分
極方向を容易にリアルタイムで判定することができる。
そして、非線形を起こすための低周波の交番電界を試料
に印加する電極対は、探針を中心とした表面方向に対称
位置に複数組と試料の表裏面に備え、交差する2平面を
回転する回転電界を各電極対に印加することで、三次元
的にあらゆる方向の電界を合成することが可能であり、
これによって三次元方向の分極を計測することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】面内方向の分極計測の種類を説明する図であ
る。
【図2】三次元ベクトル計測の適用例を示す図である。
【図3】深さ方向の分極を計測するSNDMモデルを示
す図である。
【図4】面内方向の分極を計測するSNDMモデルを示
す図である。
【図5】面内方向の分極計測用の電極パターンを示す図
である。
【図6】深さ方向と面内方向の同時計測を説明する図で
ある。
【図7】yカットLiNbOを用いて計測した例を示す
図である。
【図8】PZT薄膜の測定例を示す図である。
【図9】面内分極を走査しながら分極方向を判定する計
測法を説明する図である。
【図10】2つの交差する回転電界を印加しながら三次
元の分極方向を判定する計測法を説明する図である。
【図11】強誘電体のヒステリシス曲線と非線形誘電率
を説明する図である。
【図12】本発明の基礎となる走査型非線形誘電率顕微
鏡システムを示す図である。
【符号の説明】 1 探針 6 発振器 2 リング電極 7 FM復調器 3 背面電極 8 ロックイン・アン
プリファイア 4,5 電極対 9 試料
フロントページの続き (72)発明者 小田川 裕之 宮城県仙台市太白区長町8−6−10−210 (72)発明者 安武 正敏 静岡県駿東郡小山町竹の下36−1 セイコ ーインスツルメンツ株式会社小山事業所内 (72)発明者 渡辺 和俊 静岡県駿東郡小山町竹の下36−1 セイコ ーインスツルメンツ株式会社小山事業所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非線形を起こすために試料に低周波の交
    番電界を印加させ、その容量変化を計測するために試料
    表面に接触させる探針と、該探針と該探針先端部より十
    分大きな面積を有する電極間(ただし、この静電容量は
    探針直下の静電容量よりはるかに大である)に高周波電
    界を印加する走査型非線形誘電率顕微鏡において、前記
    非線形を起こすための低周波の交番電界を試料表面方向
    に印加することを特徴とする走査型非線形誘電率顕微
    鏡。
  2. 【請求項2】 非線形を起こすための低周波の交番電界
    を試料表面方向に印加する電極対は、探針を中心として
    対称位置に複数組備えることで、試料表面方向における
    所望方向の電界を合成して印加できる請求項1に記載の
    走査型非線形誘電率顕微鏡。
  3. 【請求項3】 非線形を起こすために試料に低周波の交
    番電界を印加させ、その容量変化を計測するために試料
    表面に接触させる探針と、該探針と該探針先端部より十
    分大きな面積を有する電極間(ただし、この静電容量は
    探針直下の静電容量よりはるかに大である)に高周波電
    界を印加する走査型非線形誘電率顕微鏡において、前記
    非線形を起こすための低周波の交番電界を試料に印加す
    る電極対は、探針を中心とした表面方向に対称位置と試
    料の表裏面に備え、それぞれに異なる周波数の交番電界
    を印加すると共に、検出信号をそれぞれの周波数で同期
    検波することにより、分極方向成分を分離検出すること
    を特徴とする走査型非線形誘電率顕微鏡。
  4. 【請求項4】 非線形を起こすために試料に低周波の交
    番電界を印加させ、その容量変化を計測するために試料
    表面に接触させる探針と、該探針と該探針先端部より十
    分大きな面積を有する電極間(ただし、この静電容量は
    探針直下の静電容量よりはるかに大である)に高周波電
    界を印加する走査型非線形誘電率顕微鏡において、前記
    非線形を起こすための低周波の交番電界の方向を時系列
    的に変化させ、検出信号が最も強くなったときの電界方
    向に分極方向があると判定する走査型非線形誘電率顕微
    鏡を用いた分極方向計測法。
  5. 【請求項5】 非線形を起こすための低周波の交番電界
    を試料に印加する電極対は、探針を中心とした表面方向
    に対称位置に複数組と試料の表裏面に備え、交差する2
    平面を回転する回転電界を各電極対に印加することで、
    三次元的にあらゆる方向の電界を発生させることを特徴
    とする請求項4に記載の走査型非線形誘電率顕微鏡を用
    いた分極方向計測法。
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WO2017154936A1 (ja) * 2016-03-09 2017-09-14 国立研究開発法人産業技術総合研究所 誘電率顕微鏡及び有機物試料の観察方法

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