JP2002285265A - モータ式燃料ポンプのCu基焼結合金製軸受および前記軸受が組み込まれたモータ式燃料ポンプ - Google Patents

モータ式燃料ポンプのCu基焼結合金製軸受および前記軸受が組み込まれたモータ式燃料ポンプ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 液体燃料の高圧高速流通下ですぐれた耐摩耗
性を発揮するモータ式燃料ポンプの軸受を提供する。 【解決手段】 モータ式燃料ポンプの軸受を、質量%
で、Ni:10〜25%、Zn:10〜25%、P:
0.1〜0.9%、C:0.5〜5%、MoS2:0.
5〜5%を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる
組成、並びにCu−Ni−Zn系合金の固溶体相からな
る素地に、硬質のCu−P化合物と、潤滑性の高い遊離
黒鉛およびMoS2が分散分布した組織を有し、さらに
5〜25%の気孔率を有するCu基焼結合金で構成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、特に小型化さ
れ、かつ高駆動操業されるモータ式燃料ポンプに適用し
た場合にすぐれた耐摩耗性を発揮するCu基焼結合金製
軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、一般に燃料としてガソリンや軽油
などの液体燃料を用いるエンジンにはモータ式燃料ポン
プが備えられており、例えばガソリンエンジン用モータ
式燃料ポンプとして図1に概略横断面図で示される構造
のものが知られている。すなわち、図示される通り上記
モータ式燃料ポンプは、ケーシング1内において、モー
タ5の両端部に固設した回転軸2が軸受3a,3bに支
持され、前記回転軸2の一方端部にはインペラ4が挿入
され、かつ前記インペラ4の外周面、モータ(アーマチ
ュア)5の外周面、および軸受3a,3bと回転軸2と
の間の図示しない隙間にそって狭い間隙のガソリン流通
路が形成された構造を有し、前記モータ5の回転でイン
ペラ4が回転し、このインペラ4の回転でガソリンがケ
ーシング1内に取り込まれ、取り込まれたガソリンはイ
ンペラ4の外周面およびモータ5の外周面にそって形成
された前記ガソリン流通路を通って送り出され、別設の
ガソリンエンジンに送り込まれるように作動するもので
ある。なお、図1では微量の燃料が両軸受3a,3bの
内面と回転軸2の外周面間を通過し、回転軸摺動の潤滑
油の役割を果たしている。。また、上記のモータ式燃料
ポンプの構造部材である上記軸受として各種のCu基焼
結合金が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、近年の例えば自
動車などのエンジンの軽量化、並びに高性能化はめざま
しく、これに伴って、これに用いられるモータ式燃料ポ
ンプにも小型化が強く求められているが、上記の構造の
モータ式燃料ポンプの場合、吐出性能を確保しつつこれ
を小型化するには、高駆動すなわち回転数を高くするこ
とが必要であり、このような条件下では特にモータ式燃
料ポンプの構造部材である軸受には一段の高強度と耐摩
耗性が要求されることになるが、上記の構造のモータ式
燃料ポンプに用いられている従来のCu基焼結合金製軸
受においては、いずれも十分な強度および耐摩耗性を具
備するものでないため、摩耗進行が速く、さらにこの摩
耗進行は前記液体燃料が硫黄やその化合物などを不純物
として含有する場合には、一層促進されるようになり、
この結果比較的短時間で使用寿命に至るのが現状であ
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
上述のような観点から、小型化されて、高駆動操業され
るモータ式燃料ポンプに用いるのに適した軸受を開発す
べく研究を行った結果、モータ式燃料ポンプの軸受を、
質量%(以下、%は質量%を示す)で、 Ni:10〜25%、 Zn:10〜25%、 P :0.1〜0.9%、 C :0.5〜5%、 二硫化モリブデン(以下、MoS2で示す):0.5〜
5%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成、並
びにCu−Ni−Zn系合金の固溶体相からなる素地
に、硬質のCu−P化合物と、潤滑性の高い遊離黒鉛お
よびMoS2が分散分布した組織を有し、さらに5〜2
5%の気孔率を有するCu基焼結合金で構成すると、液
体燃料の高圧高速流を生起せしめるモータの高速回転に
より軸受が受ける摩擦抵抗が、軸受内に存在する気孔を
介して軸受外周面から軸受内周面に供給される液体燃料
によって形成される流体潤滑膜の作用で緩和され、一方
前記気孔を形成した分だけ耐摩耗性が低下するようにな
るが、この耐摩耗性の低下はCu−Ni−Zn系合金の
固溶体相からなる素地に分散分布した硬質のCu−P化
合物と同じく素地に分散分布した潤滑性の高い遊離黒鉛
およびMoS2によって補われることから、この結果の
Cu基焼結合金製軸受は、これの素地を形成するCu−
Ni−Zn系合金のもつすぐれた強度および耐食性と相
俟って、液体燃料の高圧高速流に曝された環境下ですぐ
れた耐摩耗性を発揮するようになり、また、このCu基
焼結合金製軸受は硫黄やその化合物などを不純物として
含有する液体燃料に対してもすぐれた耐食性を示す、と
いう研究結果を得たのである。
【0005】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、 Ni:10〜25%、 Zn:10〜25%、 P :0.1〜0.9%、 C :0.5〜5%、 MoS2:0.5〜5%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成、並
びにCu−Ni−Zn系合金の固溶体相からなる素地
に、硬質のCu−P化合物と、潤滑性の高い遊離黒鉛お
よびMoS2が分散分布した組織を有し、さらに5〜2
5%の気孔率を有するCu基焼結合金で構成してなる、
液体燃料の高圧高速流通下ですぐれた耐摩耗性を発揮す
るモータ式燃料ポンプのCu基焼結合金製軸受に特徴を
有するものである。
【0006】つぎに、この発明の軸受において、これを
構成するCu基焼結合金の成分組成および気孔率を上記
の通りに限定した理由を説明する。 (1)成分組成 (a)NiおよびZn これらの成分には、上記の通り共にCuに固溶して、C
u−Ni−Zn系合金の固溶体相からなる素地を形成
し、軸受の強度および耐食性を向上させる作用がある
が、Niについては、その含有量が10%未満でも、2
5%を越えても強度が低下するようになり、またZnで
は、その含有量が10%未満になると耐食性が低下する
ようになり、一方その含有量が25%を越えると強度が
急激に低下するようになることから、それぞれの含有量
をNi:10〜25%、望ましくは15〜20%、Z
n:10〜25%、望ましくは15〜20%と定めた。
【0007】(b)P P成分には、焼結性を向上させて軸受強度の向上に寄与
すると共に、素地に分散分布する硬質のCu−P合金を
形成して耐摩耗性を向上させる作用があるが、その含有
量が0.1%未満では前記作用に所望の向上効果が得ら
れず、一方その含有量が0.9%を越えると強度に低下
傾向が現われるようになり、所望の高強度を安定的に確
保するのが難しくなることから、その含有量を0.1〜
0.9%、望ましくは0.3〜0.6%と定めた。
【0008】(c)CおよびMoS2 これら両成分は、主として遊離黒鉛およびMoS2とし
て素地に分散分布し、共存した状態で軸受にすぐれた潤
滑性を付与し、もって軸受の耐摩耗性向上に寄与する作
用があるが、その含有量がCおよびMoS2のいずれか
でも0.5%未満になると所望のすぐれた潤滑性向上効
果が得られず、一方その含有量が同じくCおよびMoS
2のいずれかでも5%を越えると強度低下が避けられな
いことから、それぞれの含有量をC:0.5〜5%、望
ましくは1〜3%、MoS2:0.5〜5%、望ましく
は1〜3%と定めた。
【0009】(2)気孔率 Cu−Ni−Zn系合金の素地に分散する気孔には、上
記の通り液体燃料の高圧高速流通下で軸受が受ける強い
摩擦および高い面圧を緩和し、もって軸受の摩耗を著し
く抑制する作用があるが、その気孔率が5%未満では、
素地中に分布する気孔の割合が少なくなり過ぎて前記作
用を十分満足に発揮することができず、一方その気孔率
が25%を越えると、軸受の強度が急激に低下するよう
になることから、その気孔率を5〜25%、望ましくは
10〜20%と定めた。
【0010】
【発明の実施の態様】この発明のCu基焼結合金製軸受
を実施例により具体的に説明する。原料粉末として、水
アトマイズ法により形成され、かついずれも45μmの
平均粒径を有するが、NiおよびZn含有量の異なる各
種のCu−Ni−Zn合金粉末、同じく45μmの平均
粒径を有する水アトマイズCu−P合金(P:33%含
有)粉末、さらに75μmの平均粒径を有する黒鉛粉末
およびMoS2粉末を用意し、これら原料粉末を所定の
配合組成に配合し,ボールミルで40分間混合した後、
150〜300MPaの範囲内の所定の圧力で圧粉体に
プレス成形し、この圧粉体をアンモニア分解ガス雰囲気
中、750〜900℃の範囲内の所定の温度に40分間
保持の条件で焼結することにより、それぞれ表1、2に
示される組成並びに気孔率を有するCu基焼結合金で構
成され、かついずれも外形:9mm×内径:5mm×高
さ:6mmの寸法をもった本発明焼結軸受1〜25をそ
れぞれ製造した。この結果得られた本発明焼結軸受1〜
25の任意断面を光学顕微鏡(200倍)を用いて観察
したところ、いずれもCu−Ni−Zn系合金の固溶体
相からなる素地に微細なCu−P合金と遊離黒鉛、さら
にMoS2が分散分布し、かつ気孔も存在する組織を示
した。また、比較の目的で、表3に示される通りの組成
とする以外は同一の条件でCu基焼結合金で構成された
軸受(以下、比較焼結軸受という)1〜12をそれぞれ
調製した。なお、上記の比較焼結軸受1〜12は、いず
れも合金成分含有量および気孔率のうちのいずれかがこ
の発明の範囲から外れたCu基焼結合金で構成されたも
のである。
【0011】ついで、上記の本発明焼結軸受1〜25お
よび比較焼結軸受1〜12を外形寸法が長さ:110m
m×直径:40mmの燃料ポンプに組み込み、この燃料
ポンプをガソリンタンク内に設置し、 インペラの回転数:3000(最小回転数)〜9000
(最大回転数)r.p.m.、 ガソリンの流量:45リットル/時(最小流量)〜13
0リットル/時(最大流量)、 軸受が高速回転軸より受ける圧力:最大300KPa、 試験時間:220時間、 の条件、すなわちガソリンが狭い間隙を高速で流通し、
これを生起せしめるモータの高速回転軸によって軸受が
高圧を受け、かつ速い流速のガソリンに曝される条件で
実機試験を行い、試験後の軸受面における最大摩耗深さ
を測定した。この測定結果を同じく表1〜3に示した。
また、表1〜3には強度を評価する目的で、それぞれの
焼結軸受の圧壊強度を示した。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
【表3】
【0015】
【発明の効果】表1〜3に示される結果から、本発明焼
結軸受1〜25は、いずれもこれを構成するCu基焼結
合金が高強度を有し、かつCu−Ni−Zn系合金の固
溶体相のもつすぐれた耐食性、並びにこれの素地に分散
分布する気孔および硬質のCu−P合金、さらに高い潤
滑性を有する遊離黒鉛およびMoS2の作用で、特にモ
ータ式燃料ポンプの軸受として用いた場合に、ガソリン
の高圧高速流通下で、一段とすぐれた耐摩耗性を発揮す
るのに対して、比較焼結軸受1〜12に見られる通り、
これを構成するCu基焼結合金の成分含有量および気孔
率のうちのいずれかがこの発明の範囲から外れると強度
および耐摩耗性のうちの少なくともいずれかの低下は避
けられないことが明らかである。上述のように、この発
明のCu基焼結合金製軸受は、通常の液体燃料を用いる
エンジンのモータ式燃料ポンプ用としては勿論のこと、
特にモータ式燃料ポンプの小型化および高駆動化に伴っ
て回転軸から高面圧を受け、かつ液体燃料の高速流に曝
される環境下で用いた場合でも、さらに液体燃料が不純
物として硫黄やその化合物などを含有する場合にも、す
ぐれた耐摩耗性を発揮するものであるから、液体燃料を
用いるエンジンの軽量化、並びに高性能化に十分満足に
対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガソリンエンジン用モータ式燃料ポンプの概略
横断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16C 17/02 F16C 17/02 Z 33/10 33/10 A 33/12 33/12 B (72)発明者 丸山 恒夫 新潟県新潟市小金町3−1 三菱マテリア ル株式会社新潟製作所内 (72)発明者 海老原 嘉男 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 Fターム(参考) 3H022 AA01 BA06 CA13 CA51 DA13 3J011 AA07 AA20 BA02 DA01 JA02 KA02 LA01 MA01 SB03 SB05 SB15 SB19 SB20 SE06

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 Ni:10〜25%、 Zn:10〜25%、 P :0.1〜0.9%、 C :0.5〜5%、 二硫化モリブデン:0.5〜5%、を含有し、残りがC
    uと不可避不純物からなる組成、並びにCu−Ni−Z
    n系合金の固溶体相からなる素地に、硬質のCu−P化
    合物と、潤滑性の高い遊離黒鉛および二硫化モリブデン
    が分散分布した組織を有し、さらに5〜25%の気孔率
    を有するCu基焼結合金で構成したことを特徴とする、
    液体燃料の高圧高速流通下ですぐれた耐摩耗性を発揮す
    るモータ式燃料ポンプのCu基焼結合金製軸受。
  2. 【請求項2】 請求項1のCu基焼結合金製軸受が組み
    込まれたモータ式燃料ポンプ。
JP2001093181A 2001-03-28 2001-03-28 モータ式燃料ポンプのCu基焼結合金製軸受および前記軸受が組み込まれたモータ式燃料ポンプ Expired - Lifetime JP4743569B2 (ja)

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