JP2002275310A - 生分解性プラスチック材料及びその製造方法と製品 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 こんにゃくによるグルコマンナントとパルプ
との複合物により石油系樹脂に劣らない生分解性プラス
チックを得る。 【解決手段】 グルコマンナンとパルプとの複合物から
なる。その比率がグルコマンナン１：パルプ０．５〜１
０からなる生分解性プラスチック材料である。こんにゃ
く粉を加水したパルプに添加する。攪拌によりこんにや
く粉中のグルコマンナンを充分に膨潤させてから脱水及
び乾燥する。パルプとグルコマンナンとを土中で分解消
失るするプラスチック材料に複合化する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、こんにゃく粉と
パルプから製造された天然物由来の生分解性プラスチッ
ク材料及び製造方法と製品に関するものである。

【０００２】

【発明が解決しようとする課題】現在の高度文明社会を
支える欠くことのできない素材の一つとして、プラスチ
ック等の合成高分子材料及びその製品は広く社会に受け
入れられ、毎年膨大な量が生産され、廃棄されている。

【０００３】軽くて、強くて、腐らないというプラスチ
ックに要求されてきた物性は、近年になって逆に地球規
模の環境汚染の一つと目され、また自然界の物質循環を
乱すものとして憂慮され、その野放図な使用に対して規
制や禁止の動きが起こっている。

【０００４】これに対して、地球環境に優しく安全で、
人に快適な技術文明・産業体系の創成を基本理念とし、
自然界において微生物が関与して低分子化合物に分解さ
れるプラスチック（高分子化合物およびその配合物を定
義とする）による生分解性プラスチックの開発が進めら
れている。

【０００５】天然物由来の生分解性プラスチックとして
は、デンプン、セルロース、キチン・キトサン、グルテ
ンやゼラチンなどの蛋白質系のものが用いられている
が、いずれも石油系樹脂に対して加工性、価格、物性に
劣る点が多く、実用化されている分野は少ない。

【０００６】そこで本発明者は、蛋白質系の材料に代わ
る新たな天然物由来の生分解性プラスチックとして、天
然に産する食用としてのこんにゃくが、これまでにない
生分解性が極めて顕著なプラスチックになり得ることを
見い出し、その実用化について研究を重ねて来た。

【０００７】こんにゃくの主成分は、グレコマンナンと
呼ばれている多糖類で、水の添加により膨潤し、乾燥に
より硬化する性質を有するので、水和物としての食用以
外にも、煎餅や可食フィルム等の乾燥食品に加工した
り、あるいは糊料として紙の補強材などに使用されたこ
ともある。

【０００８】従来のこんにゃくを乾燥して製品化する場
合には、こんにゃく粉を０．５〜３．０％程度の比較的
低濃度の水和物にして使用するのが一般的である。例え
ば可食フィルムの場合は、こんにゃく粉を０．５〜１．
０％程度の濃度になるように水に分散・溶解させ、それ
を薄くキャスティングした後に乾燥してフィルムを得る
ようにしている。

【０００９】また紙の補強材として使用する場合には、
こんにゃく粉を１．０〜３．０％程度の濃度になるよう
に水に分散・溶解させて糊化し、それを紙に塗布して乾
燥させている。このように、比較的低濃度で使用する理
由は、こんにゃくの水和物が極めて高い粘性を有してい
るため、それら以上の濃度では流動性がなくなり使用し
づらいということによる。

【００１０】しかし、低濃度で流動性を有する状態で
は、こんにゃくそのものを種々形態の製品に成形するこ
とが難しく、高濃度でも同様に成形性に困難を伴うこと
から、こんにゃくの生分解性について知るところがあっ
ても、その応用範囲は限られるものであった。

【００１１】このようなことから、本発明者は更に研究
を重ねたところ、こんにゃく（グルコマンナン）を繊維
質の他物と複合化することによって、こんにゃくの成形
性が改善され、押出又は加圧成形等の手段をもって、そ
の複合物を使用に耐える強度の任意形態の生分解性プラ
スチック製品に成形することができ、また土中における
生分解性も優れたものとなることを見い出した。

【００１２】したがって、この発明の目的は、グルコマ
ンナントと繊維質の他物、特にパルプとの複合により、
きわめてシンプルな方法で可塑化することができ、常温
での伸展性及び成形性が良好で、土中での分解消失も早
く、これまでの石油系樹脂に劣らない生分解性プラスチ
ックとして、多くの製品に廉価で応用することができる
新たな生分解性プラスチック材料と、その製造方法及び
製品とを提供することにある。

【００１３】

【課題を解決するための手段】上記目的によるこの発明
の生分解性プラスチック材料は、グルコマンナンとパル
プとの複合物からなり、その比率がグルコマンナン１：
パルプ０．５〜１０からなる、というものである。

【００１４】またこの発明の製造方法は、こんにゃく粉
を加水したパルプに添加し、攪拌によりこんにやく粉中
のグルコマンナンを充分に膨潤させてから脱水及び乾燥
して、パルプとグルコマンナンとを土中で分解消失るす
るプラスチック材料に複合化してなる、というものであ
る。

【００１５】

【発明の実施の形態】パルプを水に分散させたのち、余
剰の水を脱水して、そこにこんにゃく粉を加える。これ
を十分に攪拌して混ぜ合わせてから放置し、こんにゃく
粉中のグルコマンナンを充分に膨潤させる。この際のパ
ルプとグルコマンナンの比率は、グルコマンナン１：パ
ルプ０．５〜１０が好ましい。放置時間の経過後、水分
１０％程度まで乾燥して、パルプとグルコマンナンの複
合物による生分解プラスチツクを得る。

【００１６】この生分解プラスチックは、適宜の手段に
より粉末、フレーク、ペレット等に二次加工し、それを
成形材料として製品の成形に使用される。それ以外にも
Ｔダイのスリットから加熱ロール上に押出して成形した
フィルム又はシートを、成形材料として二次加工せず
に、その状態で使用することもできる。

【００１７】製品の成形に当たっては、上記成形材料を
水に溶かして使用する。その際の水量は成形材料の２〜
４倍量でよく、それを充分に攪拌してから成形型に流し
入れて加圧し、その状態を維持しながら加熱乾燥するだ
けで、所望の製品に成形することができる。

【００１８】上記のようにパルプとグルコマンナンとの
複合化による生分解性プラスチック材料では、加水ある
いは加湿により水分調整を行ったのち、成形型やＴダイ
などにより成形して乾燥しするだけで、任意形態の製品
を容易に得ることができるので、製品の成形過程でグル
コマンナンを膨潤させる手間が省け、成形作業は加水あ
るいは加湿だけで済むことから、作業効率が著しく向上
する。また成形に際する添加水量も少なく済むため、乾
燥による体積変化も小さく抑えることができ、乾燥に要
する時間やエネルギーも節約することができる。

【００１９】さらにパルプとグルコマンナンは、加水あ
るいは加湿によって容易に可塑化し、構造的にはグルコ
マンナンの分子がパルプを被覆したような状態にあるの
で、そこに加えられた圧力により、グレコマンナンがパ
ルプ相互を一体的に結着するようになって、製品の形態
を構成するとともに、乾燥によりきわめて強靱でしなや
かな状態を維持するようになるので、使用中での破損が
殆どなく、その反面、全体が天然物由来の生分解プラス
チックにより形成されることになるので、廃棄後には形
態を問わず土中で分解し易く、３ケ月程で分解消失す
る。

【００２０】

【実施例】［ＮＯ１，簡易皿］バガスパルプ１０ｋｇを
水１０００Ｌに分散させたのち、金網を通して余剰の水
分を脱水し、全量を３００Ｌに調整する。これに、こん
にゃく粉１０ｋｇを加えて撹拌したのち１時間放置し
て、こんにゃく粉中のグルコマンナンを充分に膨潤させ
る。これに８０％メタノール１５０Ｌを加え、ミキサー
で撹拌してバガスパルプとグルコマンナンの混合物を析
出させる。遠心脱水機で脱水したのち、流動乾燥機にて
水分１０％程度まで乾燥させ、ミキサーで粉砕してバガ
スパルプとグルコマンナンの複合粉末にする。この複合
粉末に４倍量の水を加えて混練したのち、直径２０ｃｍ
の皿型に流し入れて加圧し、その状態を維持しながら加
熱乾燥すると、強靱でしなやかな肉厚１．０ｍｍ程の簡
易皿が得られる。

【００２１】［ＮＯ２，簡易皿］バガスパルプ１０ｋｇ
を水１０００Ｌに分散させたのち、金網を通して余剰の
水を脱水し、全量を３００Ｌに調整する。これに、こん
にゃく粉１０ｋｇを加えて撹拌したのち１時間放置し
て、こんにゃく粉中のグルコマンナンを充分に膨潤させ
る。これをスリット１ｍｍ×１ｍのＴダイより加熱ロー
ル上に押出し、複数の加熱ロール上を接触通過させて水
分１０％程度まで乾燥させ、バガスパルプとグルコマン
ナンの厚さ１．０ｍｍの複合フィルムに成形する。この
複合フィルムを粉砕機で粉砕し、バガスパルプとグルコ
マンナンの複合粉末を得る。この複合粉末に４倍量の水
を加えて混練したのち、直径２０ｃｍの皿型に入れて加
圧し、その状態を維持しながら加熱乾燥すると、強靱で
しなやかな肉厚１．０ｍｍ程の簡易皿が得られる。

【００２２】［ＮＯ３，簡易コップ］バガスパルプ１０
ｋｇを水１０００Ｌに分散させたのち、金網を通して余
剰の水を脱水し、全量を３００Ｌに調整する。これに、
こんにゃく粉１０ｋｇを加えて撹拌したのち１時間放置
して、こんにゃく粉中のグルコマンナンを充分に膨潤さ
せる。これをスリット１ｍｍ×１ｍのＴダイより加熱ロ
ール上に押出し、複数の加熱ロール上を接触通過させて
水分１０％程度まで乾燥させ、バガスパルプとグルコマ
ンナンの複合フィルムに成形する。このフィルムをカッ
ターで粉砕してバガスパルプとグルコマンナンの複合フ
レークとする。この複合フレークに３倍量の水を加えて
混練したのち、コップ型に流し入れて加圧し、その状態
を維持しながら加熱乾燥すると、強靱でしなやかな肉厚
１．０ｍｍ程の簡易コップが得られる。さらに簡易コッ
プに１％水酸化カリウム溶液を塗布し、これを自然乾燥
すると、飲用に使用可能な耐水性を有する簡易コップと
なる。

【００２３】上記実施例による簡易皿及び簡易コップ
は、何れも取扱中に簡単に破れたり壊れたりすることは
なく、その目的に応じた使用に充分に耐えるものであっ
た。その反面、土に混ぜて放置したところ、３ヶ月程度
でその殆どが土中に分解消失した。また燃やしてみたと
ころ、有害なガスの発生もなかった。これにより埋立処
分しても問題はなく、また焼却処分にも差し支えないこ
とが確認された。

【００２４】［ＮＯ４，育苗ポット］バガスパルプ１０
ｋｇを水１０００Ｌに分散させたのち、金網を通して余
剰の水を脱水し、全量を３００Ｌに調整する。これに、
こんにゃく粉５ｋｇを加えて撹拌したのち１時間放置し
て、こんにゃく粉中のグルコマンナンを充分に膨潤させ
る。これをスリット１ｍｍ×１ｍのＴダイより加熱ロー
ル上に押出し、複数の加熱ロール上を接触通過させて水
分１０％程度まで乾燥させ、バガスパルプとグルコマン
ナンの複合フィルムに成形する。この複合フィルムをカ
ッターで粉砕して、バガスパルプとグルコマンナンの複
合フレークとする。この複合フレークに２倍量の水を加
えて混練したのち、ポット型に流し入れて加圧し、その
状態を維持しながら加熱乾燥すると、強靱でしなやかな
肉厚１．０ｍｍ程の育苗ポットが得られる。さらに育苗
ポットに１％水酸化カリウム溶液を塗布し、これを自然
乾燥すると耐水性を有する育苗ポットとなった。

【００２５】この育苗ポットをハウス内に置いて育苗を
行ったところ、育苗期間中に自然に破損することはな
く、育苗期間後の苗の植え込みに際しても丈夫で底抜け
などの損傷も起こらず、その反面、苗と一緒に土に埋め
た後は、その殆どが３ケ月程度で土中に分解消失してい
た。

【００２６】［ＮＯ５，農業用フィルム］木材パルプ１
０ｋｇを水１０００Ｌに分散させたのち、金網を通して
余剰の水脱水し、全量を３００Ｌに調整する。これに、
こんにゃく粉１０ｋｇを加えて撹拌したのち１時間放置
して、こんにゃく粉中のグルコマンナンを充分に膨潤さ
せる。これをスリット１ｍｍ×１ｍのＴダイより加熱ロ
ール上に押出し、複数の加熱ロール上を接触通過させて
水分１０％程度まで乾燥させると、強靱でしなやかな厚
さ０．２ｍｍ程の木材パルプとグルコマンナンの複合フ
ィルムが得られた。さらに複合フィルムを、８０℃に加
温した１％水酸化カリウム溶液の中に１分間浸漬し、水
で洗浄してから熱風乾燥すると、耐水性を有する複合フ
ィルムとなった。

【００２７】この複合フィルムを農業用マルチフィルム
として、植物の生育に使用したところ、土中の水分の蒸
発や肥料の散逸が抑制され、収穫後にそのまま土に混ぜ
て置いたところ、その殆どが３ヶ月程度で土中に分解消
失した。これにより収穫後のフィルム回収作業や処分に
掛かる手間が減り省力となった。

【００２８】［ＮＯ６、袋用フィルム］バガスパルプ１
０ｋｇを水１０００Ｌに分散させたのちに、こんにゃく
粉１０ｋｇを加えて撹拌したのち１時間放置して、こん
にゃく粉中のグルコマンナンを充分に膨潤させた。これ
をスリット３ｍｍ×１ｍのＴダイより加熱ロール上に押
出し、複数の加熱ロール上を接触通過させて水分１０％
程度まで乾燥させると、強靱でしなやかな厚さ０．０６
ｍｍ程のバガスパルプとグルコマンナンの複合フィルム
を得た。さらに複合フィルムを、８０℃に加温した１％
水酸化カリウム溶液の中に１分間浸漬し、水で洗浄して
から熱風乾燥すると、耐水性を有する複合フィルムとな
った。

【００２９】この複合フィルムを買い物袋に製袋して使
用したが、内容物を入れて持ち歩いても破れることがな
く、水に濡れて底抜けするようなこともなかった。その
反面、土に混ぜて放置したところ３ヶ月程度でその殆ど
が土中に分解消失した。また燃やしてみたところ、有害
なガスの発生もなかった。これによりそのまま埋立処分
しても問題はなく、また焼却処分にも差し支えないこと
が確認された。

【００３０】［ＮＯ７，ゴミ袋］バガスパルプ１０ｋｇ
を水１０００Ｌに分散させたのち、金網を通して余剰の
水脱水し、全量を３００Ｌに調整する。これに、こんに
ゃく粉１ｋｇを加えて撹拌したのち１時間放置して、こ
んにゃく粉中のグルコマンナンを充分に膨潤させる。こ
れをスリット１ｍｍ×１ｍのＴダイより加熱ロール上に
押出し、複数の加熱ロール上を接触通過させて水分１０
％程度まで乾燥させると、強靱でしなやかな厚さ０．０
５ｍｍ程のバガスパルプとグルコマンナンの複合フィル
ムが得られた。さらに複合フィルムを、８０℃に加温し
た１％水酸化カリウム溶液の中に１分間浸漬し、水で洗
浄してから熱風乾燥すると、耐水性を有する複合フィル
ムとなった。

【００３１】この複合フィルムをゴミ袋に製袋して使用
したが、水に濡れても底抜けするようなこともなかっ
た。その反面、ゴミを入れたまま土に混ぜて放置したと
ころ３ヶ月程度でその殆どが土中に分解消失した。また
燃やしてみたところ、有害なガスの発生もなかった。こ
れによりそのまま埋立処分しても問題はなく、また焼却
処分にも差し支えないことが確認された。

【００３２】［ＮＯ８、ゴルフティー］バガスパルプ１
０ｋｇを水１０００Ｌに分散させたのちに、こんにゃく
粉２０ｋｇを加えて撹拌したのち１時間放置して、こん
にゃく粉中のグルコマンナンを充分に膨潤させた。これ
をスリット１ｍｍ×１ｍのＴダイより加熱ロール上に押
出し、複数の加熱ロール上を接触通過させて水分１０％
程度まで乾燥さて、バガスパルプとグルコマンナンの複
合フィルムを得た。この複合フィルムを粉砕機で粉砕し
てバガスパルプとグルコマンナンの複合粉末を得た。こ
の複合粉末に対して３倍量の水を加えた後、ゴルフティ
ーの成形型に流し入れて加圧し、その状態を維持しなが
ら加熱乾燥すると、強靱でしなやかなゴルフティーが得
られる。このゴルフティーに１％水酸化カリウム溶液を
塗布し、これを自然乾燥して耐水性を付与すると、使用
に充分に耐える強度のゴルフティーットとなった。

【００３３】このゴルフティーをゴルフ場の芝の上に放
置して置いたところ、約３ケ月で分解した。これにより
ゴルフプレー中に紛失しても長く残らず、自然に分解消
失することからゴルフ場の環境に対し悪影響を与えるこ
とのない無公害ゴルフティーとして使用できる。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 グルコマンナンとパルプとの複合物から
   なり、その比率がグルコマンナン１：パルプ０．５〜１
   ０からなることを特徴とする生分解性プラスチック材
   料。
2. 【請求項２】 こんにゃく粉を加水したパルプに添加
   し、攪拌によりこんにやく粉中のグルコマンナンを充分
   に膨潤させてから脱水及び乾燥して、パルプとグルコマ
   ンナンとを土中で分解消失るするプラスチック材料に複
   合化してなることを特徴とする生分解性プラスチック材
   料製造方法。
3. 【請求項３】 請求項１記載の生分解性プラスチック材
   料からなることを特徴とする生分解性プラスチック製
   品。