JP2002275184A - エラグ酸誘導体および薬用物質 - Google Patents

エラグ酸誘導体および薬用物質

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JP2002275184A
JP2002275184A JP2001081107A JP2001081107A JP2002275184A JP 2002275184 A JP2002275184 A JP 2002275184A JP 2001081107 A JP2001081107 A JP 2001081107A JP 2001081107 A JP2001081107 A JP 2001081107A JP 2002275184 A JP2002275184 A JP 2002275184A
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ellagic acid
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JP2001081107A
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Toshio Nishimura
敏男 西村
Shohei Sakuta
庄平 作田
Hiromichi Nagasawa
寛道 長澤
Shinsei Yo
新生 姚
Nozomi Otake
望 大岳
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KAMPOU SCIENCE FOUNDATION
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KAMPOU SCIENCE FOUNDATION
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 投与に際して副作用が十分に抑制される抗腫
瘍活性などの優れた薬理活性を示す物質を提供する。 【解決手段】 雲南風車子(中国名)から単離精製され
た分子式C221813、分子量490のエラグ酸誘導体
である4−(4"−アセチル−α−ラムノピラノシル)
エラグ酸は、抗酸化活性、抗腫瘍活性(特に、アドリア
マイシン耐性白血病に対して有効に効く)、HIVプロ
テアーゼ阻害活性を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な化学構造を
有し、抗腫瘍活性などの種々の薬理活性を示すエラグ酸
誘導体からなる薬用物質に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、種々の抗癌剤が提供され、実際の
医療現場で使用されている。かかる抗ガン剤は、大きく
は、直接的に癌細胞に作用する化学療法剤と、患者の有
する免疫力を強化して癌に対する抵抗力を強める免疫療
法剤とに分けることができる。このうち化学療法剤に属
する抗癌剤の多くは、細胞毒性に基づき抗癌作用を示し
ているが、一般に、かかる細胞毒性に基づく抗癌剤は、
正常細胞と癌細胞の選択毒性が難しい。正常細胞への影
響は、特に、免疫細胞に強く現れ、化学療法で抗癌剤を
投与した場合には、生体全身の免疫力が低下しているこ
とが知られている。
【0003】一方、癌細胞側は、かかる直接的な癌細胞
への作用に対して、耐性を示す酵素を産生し、癌細胞側
の抗癌剤に対する感受性は投与後1年満たないうちに消
失することが知られている。すなわち、癌細胞が、抗癌
剤に対して耐性を示すのである。例えば、人間の血液癌
である白血病に対しては、アドリアマイシン耐性白血病
が難治癌としてよく知られている。かかるアドリアマイ
シン耐性白血病に有効な新規抗癌物質の開発が求められ
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の如く、従来よ
り、種々の新規抗癌物質が開発され、その幾つかは、実
際の治療現場に抗癌剤として投入されている。しかし、
一般に化学療法に使用される抗癌剤は、その殆どが合
成、あるいは半合成により得られたものであり、上記の
如く、その副作用が大きいという問題点が指摘されてい
る。
【0005】一方、上記の如く化学療法剤として使用さ
れている副作用の大きい抗癌剤に対して、漢方医薬の分
野では、生薬の使用を主とする癌治療が積極的に行なわ
れている。かかる漢方医薬の分野では、使用する生薬に
よる副作用は、一般的に、上記化学療法剤で使用される
合成抗癌剤に比べて遥かに小さいか、あるいは皆無であ
ることが知られている。
【0006】そこで、本発明者は、生薬由来の抗癌物質
を見出し、副作用のない、あるいは副作用を十分に抑制
できる抗癌剤の提供が必要と考えた。
【0007】また、近年、イチイ由来のタキソールやカ
ンプテシンなど生薬由来の抗癌剤が、従来の抗癌剤に比
べて副作用が少なく、且つ、幅広く種々の癌に効くこと
が確認され、生薬由来の優れた抗癌物質の提供が強く求
められている。副作用の危険のない抗癌作用のある物質
を見出し、さらにその合成が行なえれば好ましい。
【0008】本発明の目的は、投与に際して副作用が十
分に抑制される抗腫瘍活性などの優れた薬理活性を示す
物質を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、長年にわた
り、生薬由来の抗腫瘍活性物質の探索を行なってきた。
かかる研究で、中国名で雲南風車子と呼ばれる植物から
の抽出物が、極めて優れた抗腫瘍活性などの薬理作用を
示すことを見出し、本発明に至った。
【0010】かかる薬理活性物質は、以下の化学構造式
を有するエラグ酸誘導体であることが確認された。
【0011】
【化7】
【0012】上記化学構造を有するエラグ酸誘導体の化
学名は、4−(α−ラムノピラノシル)エラグ酸であ
る。
【0013】
【化8】
【0014】上記化学構造を有するエラグ酸誘導体の化
学名は、4−(4"−アセチル−α−ラムノピラノシ
ル)エラグ酸である。
【0015】上記2種のエラグ酸誘導体は、上記化学構
造からも明らかなように、以下に示すエラグ酸の糖誘導
体、すなわちラムノピラノシル誘導体である。双方と
も、抗腫瘍活性などの薬理活性を示すが、そのうちアセ
チル化された誘導体を有するエラグ酸誘導体について
は、今までに見出されていない新規な化学構造を有する
新規物質であることが確認された。
【0016】4−(α−ラムノピラノシル)エラグ酸に
ついては、既に、文献においてその化学構造式が記載さ
れた既知の物質であることが分かった。
【0017】本発明に係る4−(4"−アセチル−α−
ラムノピラノシル)エラグ酸は、新規な化学構造を有
し、抗腫瘍活性を示すため抗腫瘍活性物質などの薬用物
質として使用することができる。また、かかるエラグ酸
誘導体は、抗酸化活性、HIVプロテアーゼ阻害活性を
も示すことが確認された。
【0018】本発明に係るエラグ酸誘導体は、単独使用
でも抗酸化活性物質、抗腫瘍活性物質、HIVプロテア
ーゼ阻害活性物質として使用することができるが、他の
物質と混合することにより混合医薬などの組成物として
使用することもできる。
【0019】本発明者は、上記化学構造を有するエラグ
酸誘導体を、植物から、より詳細には雲南風車子(中国
名)という植物から初めて抽出した。雲南風車子は、中
国名であり、正式な和名は未だ付けられていない。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施
例に基づいて詳細に説明する。本発明は、以下の化学構
造を有するエラグ酸誘導体であり、抗酸化活性、抗腫瘍
活性、およびHIVプロテアーゼ阻害活性を示す物質で
ある。かかるエラグ酸誘導体は、中国名で雲南風車子
( Combretum yunnanensis Exell )と呼ばれる植物か
ら抽出、単離されたものであり、新規な化学構造を有し
ている。本発明に係る新規化学構造を有するエラグ酸誘
導体の化学名は、4−(4"−アセチル−α−ラムノピ
ラノシル)エラグ酸である。英語表記は、4-(4"-acetyl
-α-rhamnopyranosyl)ellagic acidである。
【0021】
【実施例】(実施例1)本実施例では、雲南風車子から
の本発明に係るエラグ酸誘導体の抽出、単離、および単
離物質の同定について述べる。
【0022】雲南風車子を60%エタノール溶液で抽出
し、この抽出液35gを蒸留水40lに溶解した。この
溶解液を、HP−20、3Lクロマトカラムを使用して
カラムクロマトグラム法にて分画処理した。分画によ
り、カラムを素通りしたもの(ヌケ)、水洗い、50%
メタノールによる50%メタノール溶出液、100%メ
タノールによる100%メタノール溶出液、および10
0%アセトンによる100%アセトン溶出液が得られ
た。それぞれの溶出分画を、図1に示す。
【0023】次に、100%メタノール溶出物1.5g
を、100%メタノールで、LH−20クロマトカラム
を使用してカラムクロマトグラム法で溶出した。フラコ
レーションした溶出液をUV260nmで吸光度測定し
て分画した。各分画の活性をXTT法で検定した。検定
結果は、図2、3に示すようになった。
【0024】なお、図2、3で、Fr.5、6、Fr.
11、12では、Fr.5、11にそれぞれ沈殿物がみ
られたため、同一試験管番号で、上澄分画物と沈殿分画
物とに分け、沈殿分画物をFr.6、12で示した。
【0025】図2、3からは、活性分画は、Fr.1と
Fr.7のやや高分子量の活性物質群と、それより低分
子量のFr.9〜Fr.14の活性物質群とがあるもの
と推定された。本発明者らは、図3に示すように、低分
子物質群に属し、フラクション収量の大きいFr.10
と、Fr.12について精製を行なった。
【0026】Fr.10を高速液体クロマトグラフィー
により分析した。カラムは、10φ×250mm(Sens
hu Pak PEGASIL ODS)を使用し、20〜100%までメ
タノール濃度を漸次あげて、30分かけ溶出した。流速
は、4ml/minとし、UV260nmで検出した。
その結果、リテンションタイムが16.822分、2
1.746分にそれぞれピークを示すことが確認され
た。
【0027】そこで、リテンションタイム16.822
分、21.746分で、Fr.10の分取を行った。リ
テンションタイム16.822分における分取物を単離
物Aとし、21.746分における分取物を単離物Bと
した。単離物A、Bの各々を精製して、質量分析、NM
R法によりその物質の化学構造を決定して同定した。な
お、NMR法としては、13C―NMR法、 1H―NMR
法、HMBC法、NOESY法を適用した。
【0028】単離物Aの質量スペクトルを図4に、単離
物Bの質量スペクトルを図5に示した。併せて、ブラン
クの質量スペクトルを図6、7にそれぞれ示した。
【0029】Fr.12を高速液体クロマトグラフィー
により分析した。10φ×250mm(Senshu Pak PEG
ASIL ODS)のカラムを使用し、20〜100%までメタ
ノール濃度を漸次あげて、30分かけて溶出した。流速
は、4ml/minとし、UV260nmで検出した。
その結果、リテンションタイム18.968分にピーク
を示すことが確認された。
【0030】そこで、リテンションタイム18.968
分で、Fr.12の分取を行なった。分取物は、単離物
Cとした。単離物Cを精製し、単離物A、Bと同様に、
質量分析、およびNMR法によりその物質の化学構造を
決定した。単離物Cの質量スペクトルを図8に示した。
図8のスペクトルパターンは、既知のエラグ酸の質量ス
ペクトルパターンと同様であることが確認された。
【0031】一方、図4、5の質量スペクトルパターン
にも、図8に示すスペクトルパターンが見られ、単離物
A、Bはエラグ酸誘導体であることが推認された。ま
た、単離物A、B、C(エラグ酸)のNMRスペクトル
を取り、各々の単離物における化学シフトを図9、10
に示した。図には、既知の構造のエラグ酸誘導体、エラ
グ酸の化学シフトも併せて示した。
【0032】図中、文献値1は、図11に示す化学構造
を有する既知のエラグ酸誘導体[4−(α−ラムノピラ
ノシル)エラグ酸:英語表記4-(α-rhamnopyranosyl)ell
agicacid( eschweilenol C )、以下、簡単に物質Dと呼
ぶ場合がある。]に対応する化学シフトであり、J.N
at.Prod.、1998、61、901−906の
表1、2から引用したデータである。文献値2は、図1
2に示す化学構造を有する既知のエラグ酸に対応する化
学シフトであり、Magn.Reson.Chem.、
37、856−859(1999)の表1、2から引用
したデータである。
【0033】図9、10に示すNMRの化学シフトか
ら、単離物Aが、物質Dに対応する文献値1と一致する
ことが分かる。これより、単離物Aは、物質Dと同一化
学構造を有する物質であることが確認された。さらに、
HMBC、NOESYに関する図13、14からも、単
離物Aと物質Dとは、HとCとが同様な相互関係を有し
ていることが確認され、単離物Aが物質Dと同じ化学構
造を有していることが支持される。
【0034】すなわち、単離物Aは、図15に示す化学
構造を有し、分子式C201612で示される4−(α−
ラムノピラノシル)エラグ酸であることが確認された。
英語表記は、4-(α-rhamnopyranosyl)ellagic acid( es
chweilenol Cとも言う)である。
【0035】一方、単離物Bは、C-1〜C-6"まで
は、物質Dに対応する化学シフト値と良好な一致が見ら
れる。単離物Bも物質Dと同様な炭素骨格を有し、一部
のOHがアセチル化されていることが確認される。さら
に、図13から、H−4"、H−5'とC−7"、H−8"
とC−7"との相関関係が確認され、C−4"位のOHが
アセチル化されていることが確認される。図14から
は、H−5、H−1"、H−2"、H−4"、H−5"、H
−6"に関して、物質Dに対応する文献値1との一致性
が確認され、単離物Bがエラグ酸のラムノピラシル誘導
体の炭素骨格を有していることも支持される。
【0036】以上の結果から、単離物Bは、図16に示
す化学構造を有する物質で、分子式C221813、分子
量490のエラグ酸誘導体であることが確認された。化
学名は、4−(4"−アセチル−α−ラムノピラノシ
ル)エラグ酸で、英語表記は、4-(4"-acetyl-α-rhamno
pyranosyl)ellagic acidである。
【0037】上記単離物Bは、図16では、4"-acetyl-
α-rhamnopyranosylを椅子型立体配座で示したが、以下
の化学構造式で表すこともできる。
【0038】
【化9】
【0039】単離物Cについては、図9、10より、図
12にその化学構造式を示すエラグ酸( ellagic acid
)であることが確認された。
【0040】なお、上記質量スペクトルは、JOEL社
製のJMS−SX102/5X102質量分析装置を使
用して測定した。測定条件は、図中に記載した。
【0041】また、NMR測定は、JOEL社製のα−
500型核磁気共鳴装置を使用して行なった。
【0042】(実施例2)本実施例では、ウサギ赤血球
膜ゴースト(590nm:OD値=0.35、ゴースト
のタンパク質濃度1.62mg/ml)を用いて、TB
A法で単離物A、B、Cの抗酸化活性を調べた。
【0043】先ず、以下の要領で、ネガティブコントロ
ール(以下、N.Cと略記)、ポジティブコントロール
(以下、P.Cと略記)、および反応系を調製した。 N.C:ゴースト170μl、低張液10μl、低張液
20μl P.C:ゴースト170μl、t−BuOOH10μ
l、低張液20μl 反応系:ゴースト170μl、t−BuOOH10μ
l、試料20μl 上記N.C、P.C、反応系をそれぞれよく混和して、
37℃で20分間ウォーターバスインキュベータでイン
キュベートした。その後、2.0MのTCA−1.7M
のHClを200μl、0.67MのTBA水溶液40
0μlを加え、よく混合し15分間熱湯中で煮沸した。
煮沸後、氷水中で冷却し、3500rpmで2分間遠心
分離を行なった。
【0044】上澄液を96穴マイクロプレートに1サン
プル2穴、1穴あたり200μlずつとり、540nm
で吸光度をマイクロプレートリーダーで測定して、阻害
率を算出した。その結果を、表1、図17に示した。
【0045】
【表1】
【0046】表1から、本発明に係る単離物Bは、既知
の単離物A、C、およびアスコルビン酸より、抗酸化活
性は劣るものの、抗酸化活性の有無の判断基準とされる
100μg/mlより十分に低い値を示し、有効な抗酸
化活性を示すことが確認された。
【0047】すなわち、図16に示す化学構造を有する
本発明に係る単離物Bは、そのままで抗酸化活性を示し
抗酸化剤として使用することができる。特に、単離物B
は、比較的に分子量が小さいため、注射剤としての適用
も有効に図れる。あるいは、他の成分と混合して使用し
てもよい。
【0048】(実施例3)本実施例では、マウス白血病
細胞(P386/S)、マウスのアドリアマイシン耐性
白血病細胞(P386/ADM)、人白血病細胞(K5
62/S)、人のアドリアマイシン耐性白血病細胞(K
562/ADM)を用いて、MTT法により本発明に係
る単離物A、B、Cの抗腫瘍活性について検証した。
【0049】上記各細胞を30000〜40000/m
lで96穴マイクロプレートに、1穴あたり90μl/
well蒔く。蒔くに際しては、浮遊細胞はサンプルと
同時に10μl入れ、付着細胞は、24時間後にサンプ
ルを10μl入れた。その後、37℃、5%CO2条件
で、インキュベータにて72〜96時間培養した。培養
後、1穴あたり10μlのMTT溶液(4mg/ml)
を入れる。さらに、37℃、5%CO2条件で、インキ
ュベータにて4時間培養した。プレートの底には、不溶
性のフォルマゾンが形成される。
【0050】その後、培地を除去し、DMSOを1穴あ
たり100μl/well入れる。なお、浮遊細胞は、
1500rpmで5分間遠心分離した。プレートミキサ
ーでフォルマゾンがDMSOと均一に溶解するまで攪拌
する。十分に攪拌後、マイクロプレートリーダーにて、
540nmの吸光度を測定し、各細胞の増殖曲線を描
き、この増殖曲線から本発明に係る単離物A、B、Cの
細胞増殖阻害効果を計算した。その結果を、表2および
図18〜21に示した。
【0051】
【表2】
【0052】表2から、マウス白血病細胞、人白血病細
胞の双方に対して、アドリアマイシン耐性白血病に対し
て、本発明に係る単離物Bは、極めて特異的に効くこと
が確認された。特に、人のアドリアマイシン耐性白血病
に対しては、従来より既知のエラグ酸(単離物Cと同
じ)よりも格段にその有効性が認められる。特に、通常
の白血病細胞に対するより、アドリアマイシン耐性白血
病に対しての効果が大きい。従来既知の単離物Aよりも
その効果は大きいことも確認された。
【0053】難治白血病として知られるアドリアマイシ
ン耐性白血病に、本発明に係る単離物Bが有効であるこ
とが本発明者により確認できたことは、極めて意義のあ
ることである。
【0054】図16、あるいは前記〔化9〕などに示す
化学構造を有する本発明に係る単離物Bは、そのままで
アドリアマイシン耐性白血病などの抗腫瘍活性を示す抗
腫瘍剤として使用することができる。特に、単離物B
は、比較的に分子量が小さいため、注射剤としての適用
も有効に図れる。あるいは、他の成分と混合して使用し
てもよい。
【0055】(実施例4)本実施例では、本発明に係る
単離物BのHIVプロテアーゼ阻害活性について検証し
た。実験は、以下の要領で行なった。
【0056】プロテアーゼ(0.02mg/ml)を
2.0μl、基質(1.0mg/ml)を2.0μl、
20mM NaOAc緩衝液(pH4.9)を8.0μl、試
料を3.0μl混合して、37℃で3時間インキュベー
トした。その後、10%TFAを溶離液として、高速液
体クロマトグラフィーで分析した。カラムは、4.6φ
×250mm(Senshu Pak PEGASIL ODS)を使用し、5
〜65%までCH3CN濃度を漸次あげて、20分かけ
溶出した。流速は、1.0ml/minとし、UV28
0nmで検出した。その結果を用いて、阻害率を求め
た。
【0057】
【表3】
【0058】その結果を、表3、および図22に示し
た。本発明に係る単離物Bは、単離物A、Cよりも格段
にHIVプロテアーゼ阻害活性が高く、免疫不全の原因
となるウィルス粒子を形成するHIVプロテアーゼを有
効に阻害することができる。すなわち、本発明に係る単
離物Bは、感染防御性を有するものである。さらには、
エイズに対する有効性もかかるHIVプロテアーゼ阻害
活性より強く示される。
【0059】本発明は、上記実施の形態に限定されるも
のではなく、その要旨を逸脱しない範囲で必要に応じて
変更してもよい。
【0060】例えば、上記説明では、本発明に係る4−
(4"−アセチル−α−ラムノピラノシル)エラグ酸
(単離物B)は、中国名の雲南風車子から単離精製され
ているが、その他の植物から単離されたものでも一向に
構わない。どのような植物から単離されたものでも、4
−(4"−アセチル−α−ラムノピラノシル)エラグ酸
と同一の化学構造を有する物質であればよい。
【0061】さらには、天然物からの単離にこだわるこ
とはなく、化学合成により製造されたものであっても構
わない。本発明に係る単離物の化学合成に関しては、例
えば、エラグ酸と適当な保護基を持つ糖残基などを結合
(グリコシル化)することにより行なえるものと考えら
れる。より詳細には、エラグ酸と、2、3位に保護基を
導入し1位を例えばブロミドとし活性化した4−アセチ
ルラムノース残基を、酢酸水銀などの触媒を用いてグリ
コシド結合させた後、ラムノース残基部分の保護基を外
すなどする方法が考えられる。かかる方法は、合成法の
一例であり、本発明に係る物質がかかる合成方法により
限定されるものではない。
【0062】さらに、本発明において単離された新規物
質は、エラグ酸誘導体の糖残基がアセチル化されたラム
ノピラノシル基であるが、ラムノース以外の糖の誘導体
についても本発明者は、有用な薬効が得られるか研究を
行なっている。
【0063】また、本発明に係る薬用物質は、そのもの
自体で抗酸化活性剤、抗腫瘍活性剤、HIVプロテアー
ゼ阻害活性剤として使用できることは勿論であるが、さ
らには、食品に混ぜて健康食品などの構成成分としての
使用を考えてもよい。あるいは、化粧用基材などに配合
して、化粧品への添加物としての使用を考えてもよい。
また、動物飼育の飼料への添加成分として使用すること
を考えてもよい。
【0064】
【発明の効果】本発明に係る物質は、抗酸化活性を示す
物質として有効に使用することができる。
【0065】本発明に係る物質は、抗腫瘍活性を示す物
質として有効に使用することができる。特に、アドリア
マイシン耐性白血病に強い効果を示す。
【0066】本発明に係る物質は、HIVプロテアーゼ
阻害活性を有するため、免疫不全に関係する感染症など
にも有効に使用することができる。
【0067】本発明に係る物質は、抗酸化活性、坑腫瘍
活性、HIVプロテアーゼ阻害活性を併有しているた
め、例えば、本物質の使用により、それぞれの活性に基
づくそれぞれの治療効果を一つの物質で有効に得ること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】雲南風車子のエタノール抽出物のHP20カラ
ムクロマトグラフによる分取状況を示す表である。
【図2】LH20カラムクロマトグラフ法により分画し
た各活性を示すグラフである。
【図3】図2に示す各分画の収量を示した表である。
【図4】単離物A:4−(α−ラムノピラノシル)エラ
グ酸の質量スペクトルである。
【図5】本発明に係る単離物B:4−(4"−アセチル
−α−ラムノピラノシル)エラグ酸の質量スペクトルで
ある。
【図6】ブランクの質量スペクトルである。
【図7】ブランクの質量スペクトルである。
【図8】単離物C(エラグ酸)の質量スペクトルであ
る。
【図9】13C−NMRの化学シフトを示す表である。
【図10】1H−NMRの化学シフトを示す表である。
【図11】文献値1に対応する物質Dの化学構造式であ
る。
【図12】文献値2に対応するエラグ酸の化学構造式で
ある。
【図13】HMBCのデータを示す表である。
【図14】NOESYのデータを示す表である。
【図15】単離物A:4−(α−ラムノピラノシル)エ
ラグ酸を示す化学構造式である。
【図16】本発明に係る単離物B:4−(4"−アセチ
ル−α−ラムノピラノシル)エラグ酸の化学構造式であ
る。
【図17】単離物の抗酸化活性を示すグラフである。
【図18】単離物のマウス白血病細胞に対する抗腫瘍活
性を示すグラフである。
【図19】単離物のマウスのアドリアマイシン耐性白血
病細胞に対する抗腫瘍活性を示すグラフである。
【図20】単離物の人白血病細胞に対する抗腫瘍活性を
示すグラフである。
【図21】単離物の人のアドリアマイシン耐性白血病細
胞に対する抗腫瘍活性を示すグラフである。
【図22】単離物のHIVプロテアーゼ阻害活性を示す
グラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 43/00 111 A61P 43/00 111 (72)発明者 大岳 望 神奈川県横浜市保土ヶ谷区狩場町464 Fターム(参考) 4C071 AA02 BB01 BB06 CC12 EE07 FF17 HH05 HH08 JJ06 LL01 4C086 AA01 AA02 AA03 CA01 GA17 MA01 MA04 NA06 NA14 ZB26 ZC20 ZC41 4C088 AB12 AC01 BA31 NA06 NA14 ZB26 ZC20 ZC41

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の化学構造式 【化1】 を有することを特徴とするエラグ酸誘導体。
  2. 【請求項2】 以下の化学構造式 【化2】 を有し、抗酸化活性を有することを特徴とする薬用物
    質。
  3. 【請求項3】 以下の化学構造式 【化3】 を有し、抗腫瘍活性を示すことを特徴とする薬用物質。
  4. 【請求項4】 以下の化学構造式 【化4】 を有し、HIVプロテアーゼ阻害性を示すことを特徴と
    する薬用物質。
  5. 【請求項5】 以下の化学構造式 【化5】 を有し、抗酸化活性、抗腫瘍活性、HIVプロテアーゼ
    阻害活性を併有することを特徴とする薬用物質。
  6. 【請求項6】 以下の化学構造式 【化6】 を有する物質を含むことを特徴とする薬用物質。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の薬用物質において、 前記化学構造式を有する物質は、植物から単離されるこ
    とを特徴とする薬用物質。
  8. 【請求項8】 請求項7記載の薬用物質において、 前記植物は、雲南風車子であることを特徴とする薬用物
    質。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012144080A1 (ja) * 2011-04-22 2012-10-26 大学共同利用機関法人自然科学研究機構 皮膚バリア機能改善剤

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WO2012144080A1 (ja) * 2011-04-22 2012-10-26 大学共同利用機関法人自然科学研究機構 皮膚バリア機能改善剤

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