JP2002251205A - フィードバック制御方法 - Google Patents

フィードバック制御方法

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JP2002251205A JP2002027190A JP2002027190A JP2002251205A JP 2002251205 A JP2002251205 A JP 2002251205A JP 2002027190 A JP2002027190 A JP 2002027190A JP 2002027190 A JP2002027190 A JP 2002027190A JP 2002251205 A JP2002251205 A JP 2002251205A
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】制御対象物の状態量を変数とする線形関数の値
を零するように制御入力を生成するフィードバック制御
方法において、線形関数の値の零への収束の収束速応性
や収束安定性を高めることが可能なフィードバック制御
方法を提供する。 【解決手段】制御対象物の状態量を変数とする線形関数
σの値を零に収束させるように生成される制御入力は、
その構成成分として線形関数σの値に応じた成分と線形
関数σの値の積分値に応じた成分とを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フィードバック制
御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、制御対象物の複数の状態量(例え
ば、制御対象物の変位、変位速度等)を所望の目標状態
量に制御する場合には、例えばPID制御や最適レギュ
レータ等を用いたフィードバック制御が一般に行われて
いる。
【0003】しかしながら、PID制御等の従来の制御
手法では、外乱や、制御対象物の特性変化等に対する状
態量の収束の速応性や安定性を十分に確保することが困
難なものとなっていた。また、最適レギュレータにあっ
ては、制御に際して制御対象物のモデルを構築する必要
があり、そのモデルと実際の制御対象物との誤差(モデ
ル誤差)が制御対象物の動的な特性変化等によってある
程度大きくなっていくと、状態量の収束の速応性や安定
性を十分に確保することが困難である。
【0004】このため、近年では、例えば現代制御のス
ライディングモード制御のように、制御対象物の複数の
状態量を変数とする線形関数を用いて、制御対象物の状
態量を制御することが行われるようになってきている。
【0005】前記スライディングモード制御は、制御対
象物の複数の状態量を変数とする線形関数により表され
る超平面(図7参照)をあらかじめ構築しておき、それ
らの状態量をハイゲイン制御によって、超平面上に高速
で収束させ(線形関数の値を零に収束させる)、さら
に、所謂、等価制御入力によって、状態量を超平面上に
拘束しつつ超平面上の所要の平衡点(目標状態量に対応
する点)に収束させる、可変構造型のフィードバック制
御手法である。
【0006】このようなスライディングモード制御は、
制御対象の複数の状態量が超平面上に収束してしまえ
ば、外乱等の影響をほとんど受けずに、超平面上の平衡
点に状態量を安定に収束させることができるという優れ
た特性をもっている。従って、外乱等に対する状態量の
収束の速応性やその安定性を高めることが可能である。
【0007】ところで、かかるスライディングモード制
御により制御対象物の状態量を制御する場合、その収束
の速応性や安定性を十分に確保する上では、状態量の超
平面上への収束速応性や収束安定性を可能な限り高める
ことが望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる背景に
鑑み、制御対象物の制御すべき複数の状態量を変数とす
る線形関数によりあらかじめ設定された超平面に該状態
量を収束させるフィードバック制御方法において、状態
量の超平面への収束の収束速応性や収束安定性を高める
ことが可能なフィードバック制御方法を提供することを
目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のフィードバック
制御方法は、かかる目的を達成するために、。そして、
特に、制御対象物の制御すべき複数の状態量を変数とす
る線形関数によりあらかじめ設定された超平面に該状態
量を収束させるフィードバック制御方法において、前記
線形関数の値に応じた制御入力と該線形関数の値の積分
値に応じた制御入力とにより前記状態量を前記超平面に
収束させるようにしたことを特徴とする。
【0010】かかる本発明によれば、前記状態量の超平
面への収束の収束速応性や収束安定性を高めることがで
きる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の一実施形態を図1乃至図
17を参照して説明する。尚、本実施形態では、内燃機
関の空燃比制御をスライディングモード制御を用いて行
う場合を例にとって説明する。
【0012】図1を参照して、1は本実施形態において
スライディングモード制御を用いて空燃比制御を行う例
えば4気筒のエンジン(内燃機関)であり、このエンジ
ン1の各気筒毎の排気管2はエンジン1の近傍で単一の
主排気管3に集合され、この主排気管3に二つの三元触
媒装置4,5が上流側から順に介装されている。尚、下
流側の触媒装置5はこれを省略してもよい。
【0013】このエンジンシステムの空燃比制御を行う
本実施形態の空燃比制御装置は、触媒装置4の上流側で
エンジン1の各気筒毎の排気管2の集合箇所に設けられ
た第1排気ガスセンサとしての広域空燃比センサ6と、
触媒装置4の下流側(触媒装置5の上流側)で主排気管
3に設けられた第2排気ガスセンサとしてのO2センサ
(酸素濃度センサ)7と、これらのセンサ6,7の出力
等に基づき後述の制御を行う制御ユニット8とにより構
成されている。尚、制御ユニット8には、前記広域空燃
比センサ6やO2センサ7の他に、図示しない回転数セ
ンサや吸気圧センサ、冷却水温センサ等の各種のセンサ
の検出信号が与えられるようになっている。
【0014】広域空燃比センサ6は、O2センサにより
構成されたものであり、触媒装置4の上流側の排気管2
の集合箇所における排気ガスの空燃比を示す酸素濃度
(これはエンジン1に供給された混合気の空燃比に相当
する)に応じたレベルの信号を出力する。この場合、広
域空燃比センサ6の出力信号は、制御ユニット8に設け
られたフィルタ9を介して高周波ノイズが除去された後
にリニアライザ10によって、排気ガスの酸素濃度(空
燃比)の広い範囲にわたって、それに比例したレベルの
信号に変換される。以下、本実施形態では、出力信号を
このようにリニアライズしてなる広域空燃比センサ6を
LAFセンサ6と称する。
【0015】また、触媒装置4の下流側のO2センサ7
は、触媒装置4を通過した排気ガスの酸素濃度(触媒装
置4を通過した後の排気ガスの空燃比)に応じたレベル
の信号を出力する。この場合、このO2センサ7の出力
信号は、図2に示すように、エンジン1に供給される空
燃比(排気ガスの空燃比)が所定の適正値の近傍範囲に
存するような状態で、その排気ガスが触媒装置4を通過
した後の酸素濃度にほぼ比例した高感度な変化を生じる
ものとなっている。尚、O2センサ7の出力信号は制御
ユニット8に設けられたフィルタ11により高周波ノイ
ズが除去される。
【0016】制御ユニット8はマイクロコンピュータを
用いて構成されたものであり、その主要な機能的構成と
して、エンジン1への基本燃料噴射量Timを求める基本
燃料噴射量算出部12と、エンジン1の排気還流率(エ
ンジン1の吸入空気中に含まれる排気ガスの割合)や、
エンジン1の図示しないキャニスタのパージ時にエンジ
ン1に供給される燃料のパージ量、エンジン1の冷却水
温、吸気温等を考慮して基本燃料噴射量Timを補正する
ための第1補正係数KTOTALを求める第1補正係数算出部
13と、LAFセンサ6の箇所の目標空燃比からその目
標空燃比に対応したエンジン1の吸入空気の充填効率を
考慮して基本燃料噴射量Timを補正するための第2補正
係数KCMDMを求める第2補正係数算出部14と、エンジ
ン1の基準空燃比KBS(LAFセンサ6の箇所の基準空
燃比)を設定する基準空燃比設定部15と、その基準空
燃比KBSをO2センサ7の出力に基づき補正してLAFセ
ンサ6の箇所の目標空燃比KCMDを求める目標空燃比算出
部16と、この目標空燃比KCMDにLAFセンサ6の箇所
の空燃比を収束させるようにエンジン1の燃料噴射量
(燃料供給量)をLAFセンサ6の出力に基づきフィー
ドバック制御するフィードバック制御部17とを備えて
いる。
【0017】この場合、基本燃料噴射量算出部12は、
エンジン1の回転数と吸気圧とから、それらにより規定
される基準の燃料噴射量をあらかじめ設定されたマップ
を用いて求め、その基準の燃料噴射量をエンジン1の図
示しないスロットル弁の有効開口面積に応じて補正する
ことで基本燃料噴射量Timを算出する。
【0018】尚、このような基本燃料噴射量Timや、前
記第1補正係数KTOTAL、第2補正係数KCMDMの具体的な
算出手法は、特開平5−79374号公報等に本願出願
人が開示しているので、ここでは詳細な説明を省略す
る。また、第1補正係数KTOTAL及び第2補正係数KCMDM
による基本燃料噴射量Timの補正は、第1補正係数KTOT
AL及び第2補正係数KCMDMを基本燃料噴射量Timに乗算
することで行われ、これにより要求燃料噴射量Tcylが
得られる。
【0019】また、基準空燃比設定部15は、エンジン
1の回転数と吸気圧とから、それらにより規定されるエ
ンジン1の基準空燃比KBSをあらかじめ設定されたマッ
プを用いて求める。
【0020】目標空燃比算出部16は、LAFセンサ6
の箇所からO2センサ7の箇所にかけての主排気管3の
触媒装置4を含む排気系(図1で参照符号Aを付した部
分)の状態量(詳しくはO2センサ7の箇所での酸素濃
度の値、及びその変化量もしくは変化速度等の変化度
合)を該排気系Aに存するむだ時間を考慮して推定する
状態予測部18と、その状態予測部18により推定され
た状態量に基づき本発明に係わる適応スライディングモ
ード制御を用いて前記基準空燃比KBSの補正量を求める
適応スライディングモード制御部19とを具備し、求め
られた補正量により基準空燃比KBSを補正する(補正量
を基準空燃比KBSに加算する)ことで、前記目標空燃比K
CMDを算出する。かかる目標空燃比算出部16の状態予
測部18及び適応スライディングモード制御部19の詳
細は後述する。
【0021】フィードバック制御部17は、本実施形態
では、LAFセンサ6の検出空燃比が前記目標空燃比に
収束するように、エンジン1の各気筒への全体的な燃料
噴射量をフィードバック制御する大局的フィードバック
制御部20と、エンジン1の各気筒毎の燃料噴射量をフ
ィードバック制御する局所的フィードバック制御部21
とにより構成されている。
【0022】ここで、大局的フィードバック制御部20
は、LAFセンサ6の検出空燃比が目標空燃比に収束す
るように、前記要求燃料噴射量Tcylを補正するフィー
ドバック補正係数KFBを求めるものである。この場合、
大局的フィードバック制御部20は、LAFセンサ6の
検出空燃比と目標空燃比とからそれらの偏差が解消する
ように周知のPID制御を用いてフィードバック補正係
数KFBを求めるPID制御部22と、LAFセンサ6の
検出空燃比と目標空燃比とからエンジン1の運転状態の
変化や特性変化等の動的変化を考慮してフィードバック
補正係数KFBを適応的に求める漸化式形式の制御器であ
る適応制御部23(図ではSTRと称している)とをそ
れぞれ独立的に具備している。そして、大局的フィード
バック制御部20は、それらのPID制御部22及び適
応制御部23により各別に求められるフィードバック補
正係数KFBを切換部24で適宜、切り換えて、いずれか
一方のフィードバック補正係数KFBを前記要求燃料噴射
量Tcylに乗算してこれを補正する。以下、PID制御
部22によるフィードバック補正係数KFBをKLAFと称
し、適応制御部23によるフィードバック補正係数KFB
をKSTRと称する。かかる大局的フィードバック制御部2
0の詳細は後述する。
【0023】尚、LAFセンサ6の出力は、PID制御
部22と適応制御部23とに、それぞれの制御特性に合
わせた周波数帯域のフィルタ24,25を介して入力さ
れる。
【0024】一方、局所的フィードバック制御部21
は、LAFセンサ6の検出空燃比(エンジン1の気筒毎
の排気管2の集合部の空燃比)から、各気筒毎の実空燃
比#nA/F(n=1,2,3,4) を推定するオブザーバ26と、こ
のオブザーバ26により推定された各気筒毎の実空燃比
#nA/F から各気筒毎の空燃比のばらつきを解消するよ
う、PID制御を用いて各気筒毎の燃料噴射量のフィー
ドバック補正係数#nKLAFをそれぞれ求める複数(気筒数
個)のPID制御部27とを具備する。
【0025】ここで、オブザーバ26は、それを簡単に
説明すると、各気筒毎の実空燃比#nA/Fの推定を次のよ
うに行うものである。すなわち、エンジン1からLAF
センサ6にかけてのシステムを、各気筒毎の実空燃比#n
A/Fを入力として、排気管2の集合部にLAFセンサ6
により検出される空燃比を出力するシステムと考え、こ
れを、LAFセンサ6の検出応答遅れ(例えば一次遅
れ)や、排気管2の集合部の空燃比に対する各気筒毎の
空燃比の時間的寄与度を考慮して、モデル化する。そし
て、そのモデルの基で、LAFセンサ6の検出空燃比か
ら、逆算的に各気筒毎の実空燃比#nA/F を推定する。
【0026】尚、このようなオブザーバ26は、本願出
願人が例えば特開平7−83094号公報に詳細に開示
しているので、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0027】また、局所的フィードバック制御部21の
各PID制御部27は、LAFセンサ6の検出空燃比
を、前回のサイクルタイムで各PID制御部27により
求められたフィードバック補正係数#nKLAFの全気筒につ
いての平均値により除算してなる値を各気筒の空燃比の
目標値として、その目標値とオブザーバ26により求め
られた各気筒毎の実空燃比#nA/Fとの偏差が解消するよ
うに、今回サイクルタイムにおける、各気筒毎のフィー
ドバック補正係数#nKLAFを求める。そして、局所的フィ
ードバック制御部21は、前記要求燃料噴射量Tcylに
大局的フィードバック制御部20のフィードバック補正
係数KFBを乗算・補正してなる値に、各気筒毎のフィー
ドバック補正係数#nKLAFを乗算することで、各気筒の出
力燃料噴射量#nTout(n=1,2,3,4)を求める。
【0028】このようにして求められた各気筒の出力燃
料噴射量#nToutは、制御ユニット8に備えた付着補正
部28により吸気管の壁面付着を考慮した補正が各気筒
毎になされた後、エンジン1の図示しない燃料噴射装置
に与えられ、その付着補正がなされた出力燃料噴射量#n
Toutで、エンジン1の各気筒への燃料噴射が行われる
ようになっている。尚、上記付着補正については、本願
出願人が例えば特開平8−21273号公報に詳細に開
示しているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0029】次に、前記目標空燃比算出部16の状態予
測部18及び適応スライディングモード制御部19を詳
細に説明する。
【0030】本実施形態では、目標空燃比算出部16
は、触媒装置4の下流側のO2センサ7の箇所における
排気ガスの酸素濃度を触媒装置4の排気ガス浄化能力が
最大となる所定の適正値に整定させるように、前記基準
空燃比KBSを補正して、触媒装置4の上流側のLAFセ
ンサ6の箇所における目標空燃比KCMDを求めるものであ
り、LAFセンサ6の箇所からO2センサ7の箇所にか
けての主排気管3の触媒装置4を含む排気系A(図1参
照)を制御対象(プラント)としている。そして、上記
のように基準空燃比KBSを補正するための補正量を、状
態予測部18及び適応スライディングモード制御部19
により、制御対象である上記排気系Aに存するむだ時間
を考慮して適応スライディングモード制御を用いて求め
るものである。尚、以下の説明に際して、LAFセンサ
6の箇所の空燃比をCAT前A/Fと称し、O2センサ
7の箇所の酸素濃度をCAT後A/Fと称する。
【0031】上記のように制御対象である排気系A(以
下、対象排気系Aという)にむだ時間を考慮した適応ス
ライディングモード制御を適用するために、本実施形態
では、まず、対象排気系Aを図3に示すようにむだ時間
を含むバネマス系(二次遅れ系)によりモデリングし
た。
【0032】図3において、このバネマス系では、質量
体29(この質量Mは“1”とする)がバネ定数Kのバ
ネ30と減衰係数Cの減衰器31とにより支持されてお
り、質量体29に加わる加振力がCAT前A/Fに相当
するものとし、その加振力による質量体29の変位量x
1がCAT後A/Fに相当するものとする。また、CA
T前A/Fは、前記フィードバック制御部17等により
制御可能な空燃比成分u(ここでは単に入力uと称す
る)と、ノイズ等の制御不能な空燃比成分L(ここでは
外乱Lと称する)との総和(加算したもの)であるとす
る。そして、これらの入力u及び外乱Lには、排気系A
のむだ時間dが含まれるものとし、むだ時間d前の入力
u(t−d)及び外乱L(t−d)がこのバネマス系の
加振力として入力されるのとする。
【0033】このようなバネマス系モデルにおいて、質
量体29の変位量に相当するCAT後A/Fの値を
1、その変化速度をx2とすると、そのモデルの状態方
程式は、前記バネ定数K、減衰係数C等を用いて次式
(1)により表される。
【0034】
【数1】
【0035】そして、この状態方程式(1)をブロック
図で示すと、図4に示すように対象排気系Aのプラント
モデルが得られる。尚、同図において“s”はラプラス
演算子である。
【0036】本実施形態の状態予測部18及び適応スラ
イディングモード制御部19は、このような対象排気系
Aのプラントモデルの基で構築されたものであり、以下
にこれらの詳細を説明する。
【0037】まず、状態予測部18は、後に詳細を説明
する適応スライディングモード制御部19による適応ス
ライディングモード制御に際して、対象排気系Aのむだ
時間dを補償するためのものであり、LAFセンサ6に
より検出されるCAT前A/FとO2センサ7により検
出されるCAT後A/Fとから、現在までのCAT前A
/Fに対応して排気系Aのむだ時間d後にO2センサ7
により検出されるCAT後A/Fの状態量を推定するも
のである。ここで、上記状態量は、本実施形態では、O
2センサ7により検出されるCAT後A/Fの値(実際
にはO2センサの出力レベル)と、そのCAT後A/F
の変化量もしくは変化速度(実際にはO2センサの出力
レベルの変化量もしくは変化速度)との二つである。
【0038】状態予測部18は、このような推定を行う
ために、次のような処理を行うように構築されている。
【0039】すなわち、状態予測部18は、前記図4の
プラントモデルからむだ時間項(図4の“e-ds”で表
された部分)を省き、且つ、前記各定数C,K,bをそ
れぞれあらかじめ定めた設定値CM,KM,bMで置き換
えてなる図5に示す遅れ要素のモデル(プラントモデ
ル)を用いて、前記の推定を行う。この場合、図5の遅
れ要素のモデルでは、前記式(1)に対応する状態方程
式は、次式(2)により表される。
【0040】
【数2】
【0041】ここで、図6及び式(2)において、
1M,x2Mは、図5のプラントモデルにおけるCAT後
A/Fの値、及びその変化量もしくは変化速度(状態
量)である。尚、上記設定値CM,KM,bMは実験等に
基づき定める。
【0042】そして、状態予測部18は、この式(2)
の入力U(t)として、前記LAFセンサ6により実際に
検出されたCAT前A/Fを用いて、状態方程式(2)
を時系列で解き、上記状態量x1M,x2Mを求める。さら
に、この求めた状態量x1M,x2Mと現在時刻tのCAT
後A/Fの状態量x1,x2とから次式(3)により、現
在時刻tからむだ時間d後の前記CAT後A/Fの状態
量の推定値x1ハット(=CAT後A/Fの推定値)、
2ハット(=CAT後A/Fの変化量もしくは変化速
度の推定値)を求める。
【0043】
【数3】
【0044】ここで、式(3)において、“eAt”は状
態方程式(2)を解いた時に得られる行列指数関数であ
り、“dM”は対象排気系Aのむだ時間dの設定値(同
定値)である。この場合、むだ時間dMは実際のむだ時
間dと同じか、もしくは大きめの値に設定されている
(dM≧d)。また、式(3)の第1項では、O2センサ
7の出力により実際に得られた状態量x1,x2(CAT
後A/Fの値、及びその変化量もしくは変化速度)を用
いる。
【0045】上式(3)において、右辺第1項は、現在
時刻tから対象排気系Aのむだ時間d後の時刻t+dま
での間で対象排気系Aに入力される入力U(時刻t−d
から時刻tまでのCAT前A/F)が“0”である場合
に、むだ時間d後にO2センサ7により検出されるCA
T後A/Fの状態量を推定する演算項である。
【0046】また、式(3)の右辺第2項及び第3項
は、現在時刻tからむだ時間d後の時刻t+dまでの間
で対象排気系Aに入力される入力U(時刻t−dから時
刻tまでのCAT前A/F)によるむだ時間d後のO2
センサ7により検出されるCAT後A/Fの状態量の変
化量を推定する演算項である。
【0047】このような推定演算を行う状態予測部18
は、それをブロック図で表すと、図6に示すように構成
されている。すなわち、該状態予測部18は、その構成
を大別すると前記式(3)の右辺第1項の推定演算を行
う推定部32と、前記状態方程式(2)を解く演算や式
(3)の右辺第2項及び第3項の推定演算を行う推定部
33とにより構成されている。
【0048】そして、推定部32には、前記の推定演算
を行うために、O2センサ7の出力から実際に得られる
状態量(CAT後A/Fの値x1、及びその変化量もし
くは変化速度x2)が与えられる。この場合、O2センサ
7の出力により得られる状態量は必要に応じて要素34
によりフィルタリングやスケーリングが施されて、推定
部32に与えられる。尚、図6では、説明の便宜上、O
2センサ7から直接的にCAT後A/Fの値x1、及びそ
の変化量もしくは変化速度x2の両者が与えられるよう
に記載したが、実際には、CAT後A/Fの変化量もし
くは変化速度x 2は、制御ユニット8内で演算により求
められる。
【0049】また、推定部33には、前記の推定演算を
行うために、LAFセンサ6の出力から実際に得られる
CAT前A/Fが前記入力U(=u+L)として与えら
れる。この場合、LAFセンサ6の出力により得られる
CAT前A/Fは必要に応じて要素35によりフィルタ
リングやスケーリングが施されて、推定部33に与えら
れる。
【0050】そして、状態予測部18は、各推定部3
2,33により求められた値を加算し、それを、むだ時
間d後にO2センサ7により検出されるCAT後A/F
の状態量の推定値x1ハット,x2ハットとして適応スラ
イディングモード制御部19に出力する。この場合、各
推定部32,33により求められた値は、それぞれ必要
に応じて要素36,37によりフィルタリングやスケー
リングが施された後に加算され、さらに、その加算結果
(むだ時間d後のCAT後A/Fの状態量の推定値x1
ハット,x2ハット)も、必要に応じて要素38により
フィルタリングやスケーリングが施された後に適応スラ
イディングモード制御部19に出力される。以下、前記
推定値x1ハット,x2ハットを推定状態量x1ハット,
2ハットと称する。
【0051】次に、適応スライディングモード制御部1
9を詳説する。
【0052】ここで、まず、一般的なスライディングモ
ード制御について図7を参照して簡単に説明しておく。
【0053】スライディングモード制御は、可変構造型
のフィードバック制御手法であり、この制御手法におい
ては、例えば制御対象の状態量をx1,x2の二つとした
場合、これらの状態量x1,x2を変数とする線形関数σ
=s1 1+s2 2(s1,s2は係数)を用いて、σ=
0により表される超平面Hをあらかじめ設計しておく。
この超平面Hは位相空間が二次系の場合は、しばしば切
換線(S)と呼ばれ、線形関数σは切換関数と呼ばれて
いる。位相空間の次数が大きくなると、切換線から切換
面となり、さらには幾何学的に図示できなくなる超平面
になる。尚、超平面はすべり面と呼ばれることもある。
【0054】そして、例えば図7の点Pで示すように、
状態量x1,x2がσ≠0となっている場合に、所謂、到
達則に従って、状態量x1,x2をハイゲイン制御によっ
て超平面H(σ=0)上に高速で収束させ(モード
1)、さらに所謂、等価制御入力によって、状態量
1,x2を超平面H上に拘束しつつ超平面H上の平衡点
(収束点、x1=x2=0の点)に収束させる(モード
2)ものである。
【0055】このようなスライディングモード制御にお
いては、状態量x1,x2を超平面H上に収束させさえす
れば、等価制御入力によって、外乱等の影響を受けるこ
となく、極めて安定に状態量x1,x2を超平面H上の平
衡点に収束させることができるという特性をもってい
る。従って、上記モード1において状態量x1,x2をい
かにして安定に超平面H上に収束させるかが重要な課題
となる。この場合、外乱等の影響があると、一般には、
前記到達則だけでは、状態量x1,x2を超平面H上に安
定に収束させることが困難である。このため、近年で
は、例えばコロナ社により1994年10月20日に発
刊された「スライディングモード制御 −非線形ロバス
ト制御の設計理論−」と題する文献の第134頁〜第1
35頁に見られるように、到達則に加えて、外乱の影響
を排除しつつ状態量を超平面上に収束させるための適応
則を用いた適応スライディングモード制御という手法が
提案されている。
【0056】本実施形態の前記適応スライディングモー
ド制御部19は、このような適応スライディングモード
制御を用いて、前記CAT後A/Fの推定状態量x1
ット,x2ハットから、前記基準目標空燃比の補正量を
算出するものであり、次のように構築されている。
【0057】まず、適応スライディングモード制御部1
9の適応スライディングモード制御に必要な超平面及び
前記等価制御入力の構築について説明する。
【0058】本実施形態では、適応スライディングモー
ド制御部19は、CAT後A/Fを所定の適正値に整定
させるように基準空燃比KBSの補正量を求めるものであ
るので、前記CAT後A/Fの推定状態量x1ハット,
2ハット(CAT後A/Fのむだ時間d後の値の推定
値、及びその変化量もしくは変化速度の推定値)の目標
値(すなわち収束させるべき値)を、それぞれ“適正
値”及び“0”とする。
【0059】そこで、上記適正値の値をqとして、適応
スライディングモード制御を行うための超平面を次式
(4)の線形関数により表す。
【0060】
【数4】
【0061】一方、前記推定状態量x1ハット,x2ハッ
トを用いた場合、対象排気系Aのむだ時間dは状態予測
部18により補償されるので、この場合の対象排気系A
のプラントモデルは、図5に示した形で、同図の状態量
1M,x2Mを推定状態量x1ハット,x2ハットで置き換
えたもので表される。
【0062】従って、そのプラントモデルの状態方程式
は次式(5)で表される。
【0063】
【数5】
【0064】ここで、状態方程式(5)において、式
(4)に基づき次式(6)で表される線形変換を行い、
【0065】
【数6】
【0066】さらに、外乱Lを“0”と置くと、次式
(7)が得られる。
【0067】
【数7】
【0068】ここで、式(4)により表される超平面を
用いてスライディングモード制御を行う場合、前述の如
く、推定状態量x1ハット,x2ハットを超平面上に拘束
しつつその超平面上の平衡点に収束させる前記モード2
では、次式(8)の条件を満たさなければならない。
【0069】
【数8】
【0070】従って、前記式(7)から前記モード2で
必要な等価制御入力ueq(=u)は、次式(9)により
表される。
【0071】
【数9】
【0072】次に、この等価制御入力ueqによって、推
定状態量x1ハット,x2ハットを超平面上に拘束した状
態では、σ=0であるので、式(7)の下段式から次式
(10)が得られる。
【0073】
【数10】
【0074】ここで、簡略化のためにs1=k,s2=1
(k=s1/s2)とし、また、推定状態量x1ハットの
目標値q(適正値)が時刻t<0では“0”(一定値)
で、時刻t≧0では“q”(一定値)となるステップ関
数入力であることを考慮して、式(10)をラプラス変
換すると、次式(11)が得られる。
【0075】
【数11】
【0076】式(11)において、X1ハットは、推定
状態量x1ハットをラプラス変換したもので、sはラプ
ラス演算子である。
【0077】故に、式(11)を逆ラプラス変換する
と、推定状態量x1ハットは、時間軸上で、次式(1
2)により表される。
【0078】
【数12】
【0079】従って、式(12)において、k>0(s
1>0,s2=1)とすれば、推定状態量x1ハットは、
t→∞で目標値qに収束する。尚、このことは、式(1
1)の特性根−k(制御系の極)が、図8に示すよう
に、複素平面上の安定領域(極の実部が負となる領域)
に配置されることを意味する。
【0080】よって、本実施形態で用いる超平面は、次
式(13)により設定する。
【0081】
【数13】
【0082】尚、式(13)のkの具体的な値は、各種
実験やシミュレーションに基づき、基本的には推定状態
量x1ハット,x2ハットが超平面上に迅速に(略最短時
間で)収束するように設定する。また、このkの値は、
本発明を適用した本実施形態では、適宜、変更するよう
にしているのであるが、これについては後述する。ま
た、本実施形態では、適応スライディングモード制御部
19を、サーボ型コントローラとして構築したため、推
定状態量x1ハットの目標値qをq≠0としているが、
レギュレータ型のコントローラとして構築する場合に
は、推定状態量x1ハットの目標値を“0”として本実
施形態と同様に構築することができる。
【0083】次に、本実施形態の適応スライディングモ
ード制御部19における適応スライディングモード制御
の到達則は、上記のように構築された超平面σ=0を用
いて以下のように構築されている。
【0084】スライディングモード制御の到達則は、線
形関数σを超平面(σ=0)に収束させるための制御則
であり、この到達則には、種々のものが公知となってい
る。そして、本実施形態では、それらの到達則のうち、
最も超平面への収束時間が短い加速率則を採用した。
【0085】この加速率則では、σの動特性(σの値の
時間的変化率)が次式(14)により表されるように制
御する。
【0086】
【数14】
【0087】式(14)において、J,αは、あらかじ
め設定する正の定数であり、特に0<α<1である。ま
た、sgn(σ)は、σの符号関数で、σ<0のときsgn(σ)
=−1、σ=0のときsgn(σ)=0、σ>0のときsgn
(σ)=1である。
【0088】ここで、前記式(13)を時間微分し、さ
らに、外乱L=0として、前記状態方程式(5)を用い
ると、次式(15)が得られる。
【0089】
【数15】
【0090】従って、式(14)と式(15)とから、
対象排気系Aへの入力usl(=u)は、次式(16)と
なる。
【0091】
【数16】
【0092】この式(16)により表される対象排気系
Aへの入力uslが、本実施形態において、外乱L=0と
した場合に、CAT後A/Fを適正値qに整定させるた
めに対象排気系Aに与えるべき入力(CAT前A/F)
である。ここで、上式(16)の第1項及び第2項は、
σ=0の時、すなわち、推定状態量x1ハット,x2ハッ
トが超平面上に収束したとき、前記式(9)により表さ
れた等価制御入力ueqと一致する。すなわち、
【0093】
【数17】
【0094】尚、このことは、式(9)においてs1
2=kとし、さらに式(13)をい用いてqをx1ハッ
ト,x2ハットにより表して、それを式(9)に代入す
れば、明らかとなる。
【0095】また、式(16)の第3項は、外乱L=0
とした場合に、前記の到達則に従って、推定状態量x1
ハット,x2ハットを超平面上に収束させるための制御
入力を示すものである。以下、この到達則に基づく制御
入力を到達制御入力urchと称する。すなわち、
【0096】
【数18】
【0097】次に、本実施形態の適応スライディングモ
ード制御部19における適応スライディングモード制御
の適応則は、以下のように構築されている。
【0098】前述のように、本実施形態における超平面
や等価制御入力ueq、到達制御入力urchの構築は、外
乱L=0との前提の基で行ったが、対象排気系Aには、
実際には種々の外乱が存在し、また、上記超平面等を構
築する上で用いたプラントモデルには、実際の対象排気
系Aに対してモデル誤差が存在する。この場合、推定状
態量x1ハット,x2ハットが超平面上に収束すれば、前
記の等価制御入力ueqによって、推定状態量x1ハッ
ト,x2ハットは、外乱やモデル誤差の影響を受けるこ
となく、超平面上の平衡点に収束するのであるが、超平
面上に収束していない段階にあっては、前記到達則によ
る到達制御入力urchでは、推定状態量x1ハット,x2
ハットを超平面に収束させることができない。
【0099】本実施形態の適応スライディングモード制
御部19で用いる適応則は、このような不都合を解消す
るためのものである。
【0100】本実施形態では、適応スライディングモー
ド制御部19に適応則を構築するにあたって、外乱Lが
時間や推定状態量x1ハット,x2ハットに依存すること
なく不変なものであるとし、次式(19)により表せる
前記線形関数σの積算項uad pを適応則項(以下、uadp
を適応制御入力と称する)として、前記式(16)の右
辺に付加し、対象排気系Aへの最終的な入力uslとして
求めることとした。
【0101】
【数19】
【0102】従って、適応則を用いた対象排気系Aへの
入力uslは、次式(20)により求められる。
【0103】
【数20】
【0104】尚、この式(20)は、適応スライディン
グモード制御の最も簡単な形式のものであり、さらに発
展させた適応則を用いることも可能である。
【0105】本実施形態の適応スライディングモード制
御部19は、式(20)の演算を行うことで、対象排気
系Aへの入力uslを求める。この場合、本実施形態で
は、推定状態量x1ハットを適正値qに整定させる(x1
ハット=q,x2ハット=0とする)ように、前記基準
空燃比K BS を補正し、それによって間接的にCAT後
A/Fを適正値qに整定させるものであるので、適応ス
ライディングモード制御部19は、式(20)により求
められる入力uslを基準空燃比KBS の補正量として出力
する。以下、式(20)により求められる入力uslを基
準空燃比補正量u slと称する。
【0106】以上のように構築された適応スライディン
グモード制御部19は、それをブロック図で表すと、図
9に示すように構成されている。すなわち、該適応スラ
イディングモード制御部19は、その主要な構成とし
て、前記等価制御入力ueqを求める等価制御入力演算部
39と、前記到達制御入力urch及び適応制御入力uadp
の総和unl(=urch+uadp、以下、非線形入力と称す
る)を求める非線形入力演算部40とを具備し、これら
の演算部39,40に、状態予測部18により求められ
た推定状態量x1ハット,x2ハットが前記要素38を介
して与えられる。
【0107】そして、適応スライディングモード制御部
19は、基本的には、これらの演算部39,40により
求められた等価制御入力ueqと、非線形入力unlとを加
算してなる前記基準空燃比補正量usl(=ueq+unl
を出力し、それが必要に応じて要素41によってスケー
リングやフィルタリングが施された後、図示しないメモ
リに保持される。この場合、基準空燃比補正量uslの算
出は、あらかじめ定められた所定周期(一定周期)のサ
イクルタイムで行われるようになっている。
【0108】また、この適応スライディングモード制御
部19や前記状態予測部18を具備した前記目標空燃比
算出部16は、上記メモリに保持された基準空燃比補正
量u slを基準空燃比KBSに加算することで、該基準空燃
比KBSを補正して前記目標空燃比KCMDを求める。この場
合、目標空燃比算出手段16による目標空燃比KCMDの算
出は、適応スライディングモード制御部19による基準
空燃比補正量uslの算出とは非同期で、エンジン1のク
ランク角周期(所謂TDC)に同期して行われるのであ
るが、これについては後述する。
【0109】前記図9に示したようにように、本実施形
態の適応スライディングモード制御部19は、前記演算
部39,40の他に、さらに適応スライディングモード
制御の安定性を判別する安定性判別部42と、その判別
結果に応じて基準空燃比KBSの補正を制限する補正制限
部43とを具備している。
【0110】ここで、安定性判別部42は、前記基準空
燃比補正量uslの算出が行われる毎に、図16のフロー
チャートに示すように安定性の判別を行う。すなわち、
安定性判別部42は、まず、前記式(13)で表される
線形関数σ(これは、図9に示す非線形入力演算部40
により求められる)の時間的変化率σドット(σの時間
微分値)を求める(STEP16−1)。そして、線形
関数σの絶対値があらかじめ定めた所定値σ1よりも大
きいか(|σ|>σ1)、または、σドットの値があら
かじめ定めた所定値σ2(>0)よりも大きいか(σド
ット>σ2)を判断する(STEP16−2)。この判
断で、|σ|>σ1またはσドット>σ2であれば(ST
EP16−2でYES)、安定性判別部42は、適応ス
ライディングモード制御が不安定であると判別して(S
TEP16−3)今回の安定性判別を終了する。尚、こ
の場合に、不安定と判断される状態は、前記推定状態量
1ハット,x2ハットが超平面σ=0から大きく離間し
ているか、または、超平面σ=0から離間する方向に大
きな時間的変化を生じている状態である。
【0111】STEP16−2の条件を満たしていない
場合には(STEP16−2でNO)、次に安定性判別
部42は、σの値とσドットの値との積σ・σドット
(これはσに関するリアプノフ関数σ2/2の時間微分
関数に相当する)がこれに対応してあらかじめ定めた所
定値a(≧0)よりも大きいか(σ・σドット>a)を
判断する(STEP16−4)。この判断で、σ・σド
ット>aであれば、(STEP16−4でYES)、安
定性判別部42は、適応スライディングモード制御が不
安定であると判別して(STEP16−3)、今回の安
定性判別を終了する。そして、STEP16−4の条件
を満たしていない場合には、安定性判別部42は、適応
スライディングモード制御が安定であると判別して(S
TEP16−5)今回の安定性判別を終了する。尚、こ
の場合、不安定と判断される状態は、σ2が増加する側
で、前記推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面(σ
=0)から離間する方向へ変移している状態である。
【0112】尚、本実施形態では、STEP16−2、
STEP16−4の二つの条件で安定性を判別するよう
にしたが、どちらか一方のみで判別してもよく、さらに
は、STEP16−2の中の一つの条件のみで判別して
もよい。
【0113】このような安定性判別部42による適応ス
ライディングモード制御の安定性判別により、推定状態
量x1ハット,x2ハットが超平面σ=0に収束しない虞
れのある状況では、制御が不安定であると判断されるこ
ととなる。
【0114】そして、前記補正制限部43は、安定性判
別部42により、適応スライディングモード制御が不安
定であると判別された場合には、今回のサイクルタイム
で適応スライディングモード制御部19により算出され
た前記基準空燃比補正量uslの出力を阻止して、適応ス
ライディングモード制御部19の出力を前回のサイクル
タイムで算出された基準空燃比補正量uslに保持し、こ
れにより、該基準空燃比補正量uslによる基準空燃比KB
Sの補正を制限する。
【0115】また、安定性判別部42により、制御が安
定であると判別された場合には、補正制限部43は、今
回のサイクルタイムで算出された前記基準空燃比補正量
slをそのまま出力せしめる。
【0116】尚、本実施形態では、適応スライディング
モード制御が不安定である場合に、基準空燃比補正量u
slを前回のサイクルタイムで算出された基準空燃比補正
量u slに保持して基準空燃比KBSの補正を制限するよう
にしたが、適応スライディングモード制御が不安定であ
る場合に、基準空燃比補正量uslを強制的に“0”とし
て(基準空燃比KBSの補正を行わないようにする)、そ
の補正を制限するようにしてもよい。
【0117】ところで、本実施形態で用いる適応スライ
ディングモード制御において、前記推定状態量x1ハッ
ト,x2ハットが前記式(13)の超平面σ=0又はそ
の近傍(σ≒0)に収束した段階において、推定状態量
1ハット,x2ハットの目標値“q”,“0”(超平面
の平衡点)への収束の安定性は、該超平面σ=0の傾き
が大きい程、換言すれば、式(13)中の係数k(>
0)の値が大きい程、高くなる。このことは、前記図8
に示した制御系の極−kが実軸の負方向で大きくなる
程、系の安定性が高まることと等価である。また、前記
式(12)から明らかなように、係数kの値が大きいほ
ど、超平面上では、推定状態量x1ハット,x2ハットの
目標値“q”,“0”への収束時間も短くなる(速応性
が高まる)。従って、この観点からすれば、係数kは、
その値をなるべく大きなものに設定することが好まし
い。
【0118】しかるに、式(13)中の係数kの値を大
きくしすぎると、推定状態量x1ハット,x2ハットが超
平面σ=0に収束していない段階では、同式(13)か
ら明らかなように、線形関数σの値も大きなものとな
り、従って、推定状態量x1ハット,x2ハットを超平面
上に収束させるための前記非線形入力unl(=urch
adp)も大きなものとなる(式(18),(19)参
照)。そして、該非線形入力unlが過大なものとなる
と、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面に対し振
動的な応答を生じたりして、超平面上への収束時間が長
くなってしまい、その収束安定性や速応性が低下する。
従って、この観点からすれば、係数kの値はあまり大き
なものとすることは好ましくない。
【0119】そこで、本実施形態の適応スライディング
モード制御部19は前述の構成に加えて、さらに、前記
図9に示したように、式(13)中の係数kの値を可変
とすることで適応スライディングモード制御の超平面を
可変とする超平面可変制御部44(超平面設定手段)を
具備している。
【0120】この場合、本実施形態の超平面可変制御部
44は、次のようにして、適応スライディングモード制
御の超平面を可変制御する。
【0121】すなわち、本実施形態では、超平面可変制
御部44は、現在の前記係数kの値を用いて前記線形関
数σの値を推定状態量x1ハット,x2ハットから前記式
(13)に従って求め、求めたσの値の絶対値|σ|の
大きさに応じて、次式(21)のようにあらかじめ定義
されたパラメータfの値を求める。
【0122】
【数21】
【0123】ここで、上式(21)において、σlimit
は、現在の推定状態量x1ハット,x 2ハットに対応した
線形関数σが、超平面σ=0とほぼ一致している状態で
あるか否か、すなわち、推定状態量x1ハット,x2ハッ
トが超平面σ=0にほぼ収束しているか否かを判断する
ためにあらかじめ定めた所定の閾値である。
【0124】そして、超平面可変制御部44は、このよ
うにして定まるパラメータfの値を適応スライディング
モード制御のサイクルタイム毎に積算して、次式(2
2)に示すようにその積算値sum(f)を求め、
【0125】
【数22】
【0126】その求めた積算値sum(f)から次式
(23)により今回の係数kの値を決定する。
【0127】
【数23】
【0128】上式(23)において、k0は、超平面を
規定する係数kの初期値(>0)であり、γは係数kの
値の変化速度を調整するための所定のゲイン係数であ
る。初期値k0は、前記推定状態量x1ハット,x2ハッ
トが超平面σ=0に最も短い時間で収束するように設定
されている。
【0129】超平面可変制御部44は、このようにして
式(23)により求めた係数kの値を、前記等価制御入
力演算部39や、非線形入力演算部40、安定性判別部
42にそれらの前述の演算や判別を行うための係数kの
値として与える。
【0130】尚、本実施形態では、係数kの値が負の値
となったり、初期値k0よりも小さくなるのを防止する
ために、式(22)により求められる積算値sum
(f)がsum(f)<0である場合には、式(23)
におけるsum(f)の値を強制的に“0”として補正
係数kを求める(この場合、k=k0となる)。また、
係数kの値が過剰に大きくなり過ぎると、係数kの値を
減少させるべき場合に、その減少が遅れることなるの
で、これを回避するために、式(22)により求められ
る積算値sum(f)があらかじめ定めた所定値αより
も大きくなった場合には、式(23)におけるsum
(f)の値を強制的に“α”として補正係数kを求める
(この場合、k=k0+α=係数kの上限値となる) このようにして求められる係数kは、推定状態量x1
ット,x2ハットが超平面σ=0に収束していない段階
では、前記パラメータfの値が初期値k0の近傍で変動
し、従って、該初期値k0を前述のように設定しておく
ことで、推定状態量x1ハット,x2ハットを超平面σ=
0にほぼ最短時間で収束させることができることとな
る。そして、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面
σ=0にほぼ収束した段階では、前記パラメータfの値
がほぼ定常的に“1”に固定されるため、係数kの値が
徐々に増加する。従って、推定状態量x1ハット,x2
ットが超平面σ=0にほぼ収束した段階では、本実施形
態の適応スライディングモード制御に使用する超平面
は、図10に示すように、傾きが次第に増加され、これ
により、前述のように推定状態量x1ハット,x2ハット
の目標値“q”,“0”(超平面の平衡点)への収束の
安定性が高められると同時に、その収束が短時間で行わ
れる(速応性が高まる)こととなる。尚、このように係
数kの値を次第に大きくしていくということは、前記図
8の複素平面上で制御系の極−kを実軸Reの負方向の
安定領域側へと移動させていくことと等価である。
【0131】尚、超平面を可変とするための係数kの値
の設定の仕方は、上記の態様に限られるものではなく、
例えば式(21)で用いたパラメータfの値として、
“1”及び“−1”以外の組み合わせ(“2”と“−
1”、“1”と“−2”等)を用いてもよい。このよう
な組み合わせを用いることで、線形関数σの値が超平面
σ=0にほぼ一致したか否かで超平面の変化速度を異な
らせることが可能となる。さらに、パラメータfの値を
線形関数σの値の関数として与え、線形関数σの値に応
じて超平面を変化させるようにしてもよい。また、式
(23)のγの値を、式(22)により求められる値の
変化方向(増加傾向か減少傾向か)に応じて異ならせる
ことや、γの値を線形関数σの値に応じて変更すること
も可能である。このように超平面を可変化する手法は、
その制御対象に応じて最適なものを選択することが可能
で、係数kの具体的な求め方は、制御の安定性や速応性
を考慮して実験等を通じて定めればよい。
【0132】以上説明した内容が、本実施形態で用いる
適応スライディングモード制御の詳細である。
【0133】次に、前記図1で示した大局的フィードバ
ック制御部20に具備した前記適応制御部23を詳説す
る。
【0134】同図1を参照して、大局的フィードバック
制御部20は、前述のようにLAFセンサ6の箇所の空
燃比(CAT前A/F)を、目標空燃比算出部16によ
り前述の通り求められる目標空燃比KCMDに収束させるよ
うにフィードバック制御を行うものであるが、このと
き、このようなフィードバック制御を周知のPID制御
だけで行うようにすると、エンジン1の運転状態の変化
や経年的特性変化等、動的な挙動変化に対して、安定し
た制御性を確保することが困難である。
【0135】このため、本実施形態の大局的フィードバ
ック制御部20では、周知のPID制御を行うPID制
御部22と共に、上記のような動的な挙動変化を補償す
ることができる適応制御部23を具備し、それらの制御
部22,23により各別に求められるフィードバック補
正係数KFBを切り換えてフィードバック制御を行うよう
にしている。
【0136】この場合、上記適応制御部23は、I.
D.ランダウ等により提唱されているパラメータ調整則
を用いて、図11に示すように、複数の適応パラメータ
を設定するパラメータ調整部45と、設定された適応パ
ラメータを用いて前記フィードバック補正係数KSTRを算
出する補正係数算出部46とにより構成されている。
【0137】ここで、パラメータ調整部45について説
明すると、ランダウ等の調整則では、離散系の制御対象
の伝達関数B(Z-1)/A(Z-1)の分母分子の多項式
を一般的に次式(24),(25)のようにおいたと
き、パラメータ調整部45が設定する適応パラメータθ
ハット(j)(jは制御サイクルの番数を示す。以下、同
様)は、式(26)のようにベクトル(転置ベクトル)
で表される。また、パラメータ調整部45への入力ζ
(j)は、式(27)のように表される。この場合、本実
施形態では、フィードバック制御部20の制御対象であ
るエンジン1が一次系で3制御サイクル分のむだ時間d
p(エンジン1の燃焼サイクルの3サイクル分の時間)
を持つプラントと考え、式(24)〜式(27)でm=
n=1,dp=3とし、設定する適応パラメータはs0
1,r2,r3,b0の5個とした(図11参照)。尚、
式(27)の上段式及び中段式におけるus,ysは、そ
れぞれ、制御対象への制御入力(操作量)及び制御対象
の出力(制御量)を一般的に表したものであるが、本実
施形態では、上記制御入力はフィードバック補正係数KS
TR、制御対象(エンジン1)の出力は前記LAFセンサ
6により実際に検出されるCAT前A/F(これを以
下、KACTと称する)であるので、パラメータ調整部45
への入力をζ(j)は、式(27)の下段式により表す
(図11参照)。
【0138】
【数24】
【0139】
【数25】
【0140】
【数26】
【0141】
【数27】
【0142】ここで、前記式(26)に示される適応パ
ラメータθハットは、適応制御部23のゲインを決定す
るスカラ量要素b0ハット-1(j)、操作量を用いて表現さ
れる制御要素BRハット(Z-1,j)、及び制御量を用
いて表現される制御要素S(Z-1,j)からなり、それ
ぞれ、次式(28)〜(30)により表現される(図1
1の補正係数算出部46のブロック図を参照)。
【0143】
【数28】
【0144】
【数29】
【0145】
【数30】
【0146】パラメータ調整部45は、これらのスカラ
量要素や制御要素の各係数を設定して式26に示す適応
パラメータθハットとして補正係数算出部46に与える
もので、現在から過去に渡る操作量としてのフィードバ
ック補正係数KSTRと制御量であるCAT前A/F(=KA
CT)とを用いて、CAT前A/Fが前記目標空燃比に一
致するように、適応パラメータθハットを算出する。
【0147】この場合、具体的には、適応パラメータθ
ハットは、次式(31)により算出する。
【0148】
【数31】
【0149】同式(31)において、Γ(j)は、適応パ
ラメータθハットの設定速度を決定するゲイン行列(m
+n+dp)、eアスタリスク(j)は、適応パラメータθ
ハットの推定誤差を示すもので、それぞれ式(32),
(33)のような漸化式で表される。
【0150】
【数32】
【0151】
【数33】
【0152】ここで、式(33)中の“D(Z-1)”
は、収束性を調整するための、漸近安定な多項式であ
り、本実施形態ではD(Z-1)=1としている。
【0153】尚、式(33)のλ1(j),λ2(j)の選び方
により、種々の具体的なアルゴリズムが得られる。例え
ば、λ1(j)=1、λ2(j)=λ(0<λ<2)とすると、
漸減ゲインアルゴリズム(λ=1の場合には最小自乗
法)、λ1(j)=λ1(0<λ1<1)、λ2(j)=λ2(0
<λ2<λ)とすると、可変ゲインアルゴリズム(λ2
1の場合には重み付き最小自乗法)、λ1(j)/λ2(j)=
ηとおき、λ3を式(34)のように表したとき、λ
1(j)=λ3とすると、固定トレースアルゴリズムとな
る。ここで、式(34)中の“trΓ(0)”は、行列Γ
(0)のトレース関数で、行列Γ(0)の対角成分の和(スカ
ラー量)である。また、λ1(j)=1、λ2(j)=0のと
き、固定ゲインアルゴリズムとなる。この場合は、式
(32)から明らかな如く、Γ(j)=Γ(j-1)となり、よ
ってΓ(j)は固定値となる。エンジン1の燃料噴射ある
いは空燃比等の時変プラントでは、漸減ゲインアルゴリ
ズム、可変ゲインアルゴリズム、固定ゲインアルゴリズ
ム、および固定トレースアルゴリズムのいずれもが適し
ている。
【0154】
【数34】
【0155】前述のようにパラメータ調整部45に設定
される適応パラメータθハット(s 0,r1,r2,r3
0)と、前記目標空燃比算出部16により前述の通り
算出される目標空燃比KCMDMとを用いて、補正係数算出
部46は、次式(35)の漸化式により、フィードバッ
ク補正係数KSTRを求める。図11の補正係数算出部46
は、同式(35)の演算をブロック図で表したものであ
る。
【0156】
【数35】
【0157】ここで、同式(35)中の“d'”は、前
記目標空燃比KCMDに対応するCAT前A/FがLAFセ
ンサ6により検出されるまでのむだ時間であり、このむ
だ時間d'は、本実施形態ではクランク角周期(所謂T
DC)を単位として12サイクル分の時間(=4・
p)である。
【0158】このように構築された適応制御部23は、
前述したことから明らかなように、制御対象であるエン
ジン1の動的な挙動変化を考慮した漸化式形式の制御器
であり、換言すれば、エンジン1の動的な挙動変化を補
償するために、漸化式形式で記述された制御器である。
そして、より詳しくは、漸化式形式の適応パラメータ調
整機構を備えた制御器と定義することができる。
【0159】尚、この種の漸化式形式の制御器は、所
謂、最適レギュレータを用いて構築する場合もあるが、
この場合には、一般にはパラメータ調整機構は備えられ
ていない。
【0160】以上が、本実施形態で採用した適応制御部
23の詳細である。
【0161】尚、適応制御部23と共に、大局的フィー
ドバック制御部20に具備したPID制御部22は、一
般のPID制御と同様に、LAFセンサ6により検出さ
れるCAT前空燃比(KACT)と、その目標空燃比KCMDと
の偏差から、比例項(P項)、積分項(I項)及び微分
項(D項)を算出し、それらの各項の総和をフィードバ
ック補正係数KLAFとして算出する。この場合、本実施形
態では、フィードバック補正係数KLAFを燃料噴射量に乗
算して該燃料噴射量を補正するので、CAT前空燃比
(KACT)と、その目標空燃比KCMDとの偏差が“0”のと
きに、フィードバック補正係数KLAFを“1”とするた
め、積分項(I項)の初期値を“1”としている。ま
た、比例項、積分項及び微分項のゲインは、エンジン1
の回転数と吸気圧とから、あらかじめ定められたマップ
を用いて決定される。
【0162】また、大局的フィードバック制御部20の
前記切換部24は、エンジン1の冷却水温の低温時や、
高速回転運転時、吸気圧の低圧時等、エンジン1の燃焼
が不安定なものとなりやすい場合、あるいは、目標空燃
比KCMDの変化が大きい時や、空燃比のフィードバック制
御の開始直後等、これに応じたLAFセンサ6の検出空
燃比KACTが、そのLAFセンサ6の応答遅れ等によっ
て、信頼性に欠ける場合、あるいは、エンジン1のアイ
ドル運転時のようエンジン1の運転状態が極めて安定し
ていて、適応制御部23による高ゲイン制御を必要とし
ない場合には、PID制御部22により求められるフィ
ードバック補正係数KLAFを燃料噴射量を補正するための
フィードバック補正係数KFBとして出力し、上記のよう
な場合以外の状態で、適応制御部23により求められる
フィードバック補正係数KSTRを燃料噴射量を補正するた
めのフィードバック補正係数KFBとして出力する。これ
は、適応制御部23が、高ゲイン制御で、LAFセンサ
6による検出されるCAT前A/Fを急速に目標空燃比
KCMDに収束させるように機能するため、上記のようにエ
ンジン1の燃焼が不安定となったり、LAFセンサ6の
検出空燃比KACTの信頼性に欠ける等の場合に、適応制御
部23のフィードバック補正係数KSTRを用いると、かえ
って空燃比の制御が不安定なものとなる虞れがあるから
である。
【0163】このような切換部24の作動は、例えば特
願平7−227303号に本願出願人が詳細に開示して
いるので、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0164】次に、本実施形態の空燃比制御装置の全体
的作動を説明する。
【0165】図1及び図13のフローチャートを参照し
て、まず、エンジン1の各気筒毎の出力燃料噴射量#nT
out(n=1,2,3,4)の算出について説明すると、制御ユニッ
ト8は、各気筒毎の出力燃料噴射量#nToutをエンジン
1のクランク角周期と同期したサイクルタイムで次のよ
うな算出処理を行う。
【0166】まず、前記LAFセンサ6及びO2センサ
7を含む各種センサの出力が読み込まれた後(STEP
13−1)、基本燃料噴射量算出部12によって、前述
の如くエンジン1の回転数及び吸気圧に対応する燃料噴
射量をスロットル弁の有効開口面積に応じて補正してな
る基本燃料噴射量Timが求められる(STEP13−
2)。さらに、第1補正係数算出部13によって、エン
ジン1の冷却水温やキャニスタのパージ量等に応じた第
1補正係数KTOTALが算出され(STEP13−3)、ま
た、基準空燃比設定部15によって、エンジン1の回転
数及び吸気圧に応じた基準空燃比KBSが設定される(S
TEP13−4)。
【0167】次いで、目標空燃比算出部16において、
適応スライディングモード制御部19によって算出され
た基準空燃比補正量uslが図示しないメモリから読みだ
され(STEP13−5)、この基準空燃比補正量usl
をSTEP13−4で設定された基準空燃比KBSに加算
して、該基準空燃比KBSを補正することで、目標空燃比K
CMDが求められる(STEP13−6)。
【0168】また、局所的フィードバック制御部21に
おいて、オブザーバ26によりLAFセンサ6の出力か
ら推定された各気筒毎の実空燃比#nA/Fに基づき、PI
D制御部27により、各気筒毎のばらつきを解消するよ
うにフィードバック補正係数#nKLAFが算出され(STE
P13−7)、さらに、大局的フィードバック制御部2
0により、フィードバック補正係数KFB が算出される
(STEP13−8)。
【0169】この場合、フィードバック補正係数KFBの
算出は、前記STEP13−1で読み込まれた各種セン
サの出力や、STEP13−6で求められた目標空燃比
KCMDを用いて、図14のフローチャートに示すように行
われる。すなわち、適応制御部23と、PID制御部2
2とにより、それぞれLAFセンサ6により検出された
CAT前A/Fを目標空燃比KCMDに収束させるようにフ
ィードバック補正係数KSTR及びKLAFが求められる(ST
EP14−1,14−2)。そして、前述のように切換
部24において、エンジン1の燃焼やLAFセンサ6の
検出空燃比が不安定なものとなりやすい状態であるか否
か等により、適応制御を行うべき運転領域であるか否か
が判断され(STEP14−3)、適応制御を行うべき
運転領域では、適応制御部23により求められたフィー
ドバック補正係数KSTRが、エンジン1の燃料噴射量を補
正するためのフィードバック補正係数KFB として求めら
れ(STEP14−4)、PID制御を行うべき運転領
域では、PID制御部22により求められたフィードバ
ック補正係数KLAFが、フィードバック補正係数KFBとし
て求められる(STEP14−5)。
【0170】尚、この場合、フィードバック補正係数KF
Bを、フィードバック補正係数KLAFからフィードバック
補正係数KSTRに切り換える際には、該補正係数KFBの急
変を回避するために、適応制御部23は、今回のサイク
ルタイムに限り、補正係数KFB(=KSTR)を前回の補正
係数KFB(=KLAF)に保持するように、補正係数KSTRを
求める。同様に、補正係数KFBを、補正係数KSTRから補
正係数KLAFに切り換える際には、PID制御部22は、
自身が前回のサイクルタイムで求めた補正係数KLAFが、
前回の補正係数KFB(=KSTR)であったものとして、今
回の補正係数KLAFを算出する。
【0171】図13に戻って、前述のフィードバック補
正係数KFBの算出後、さらに、前記STEP13−6で
求められた目標空燃比KCMDに応じた第2補正係数KCMDM
が第2補正係数算出部14により算出される(STEP
13−9)。
【0172】次いで、制御ユニット8は、前述のように
求められた基本燃料噴射量Timに、第1補正係数KTOTA
L、第2補正係数KCMDM、フィードバック補正係数KFB、
及び各気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAFを乗算す
ることで、各気筒毎の出力燃料噴射量#nToutを求める
(STEP13−10)。そして、この各気筒毎の出力
燃料噴射量#nToutが、付着補正部28によって、エン
ジン1の吸気管の壁面付着を考慮した補正を施した後
(STEP13−11)、エンジン1の図示しない燃料
噴射装置に出力される(STEP13−12)。
【0173】そして、エンジン1にあっては、各気筒毎
の出力燃料噴射量#nToutに従って、各気筒への燃料噴
射が行われる。
【0174】以上のような各気筒毎の出力燃料噴射量#n
Toutの算出及びそれに応じたエンジン1への燃料噴射
がエンジン1のクランク角周期に同期したサイクルタイ
ムで逐次行われ、これによりLAFセンサ6により検出
されるCAT前A/Fが、目標空燃比算出部16により
算出された目標空燃比KCMDに収束するように、エンジン
1の運転状態が制御される。この場合、特に、フィード
バック補正係数KFBとして、適応制御部23により求め
たフィードバック補正係数KSTRを使用している状態で
は、エンジン1の運転状態の変化や特性変化等の挙動変
化に対して、高い安定性を有して、CAT前A/Fが迅
速に目標空燃比KCMDに収束制御される。
【0175】一方、前記STEP13−5で読みだされ
る基準空燃比uslは、所定周期(一定周期)のサイクル
タイム毎に、図15のフローチャートに示すように求め
られる。
【0176】すなわち、図6、図9及び図15を参照し
て、LAFセンサ6及びO2センサ7の出力が読み込ま
れた後(STEP15−1)、状態予測部18により、
対象排気系Aのむだ時間d後のCAT後A/Fの推定状
態量x1ハット及びx2ハット(CAT後A/Fの値の推
定値、及びその変化量もしくは変化速度の推定値)が前
記式(2),(3)に従って求められる(STEP15
−2)。
【0177】次いで、適応スライディングモード制御部
19において、超平面可変制御部44により前述の通り
前記係数kの値が設定された後(STEP15−3)、
等価制御入力演算部39により前記式(17)に従って
等価制御入力ueqが算出される(STEP15−4)。
さらに、非線形入力算出部19により、線形関数σの値
が式(13)に従って算出された後(STEP15−
5)、適応制御入力uad p(適応則項)が前記式(1
9)に従って算出される(STEP15−6)。
【0178】さらに、非線形入力演算部40において、
線形関数σの絶対値があらかじめ定めた微小な所定値ε
と比較され(STEP15−7)、このとき、|σ|>
εであれば、到達制御入力urch(到達則項)が前記式
(18)に従って算出される(STEP15−8)。ま
た、|σ|≦εであれば、すなわち、推定状態量x1
ット,x2ハットがほぼ超平面上に収束している状態で
は、到達制御入力urchを強制的に“0”とする(ST
EP15−9)。
【0179】次いで、基準空燃比補正量uslが、上記の
ように求められた等価制御入力ueq、到達制御入力u
rch及び適応制御入力uadpから前記式(20)に従って
算出される(STEP15−10)。
【0180】次いで、前記安定性判別部42により、前
述の図16のフローチャートに従って適応スライディン
グモード制御の安定性が判別され(STEP15−1
1)、この判別結果が“安定”であれば(STEP15
−12でYES)、STEP15−10で求められた基
準空燃比補正量uslが前記補正制限部43を介して出力
される(STEP15−13)。また、上記判別結果が
“不安定”であれば(STEP15−12でNO)、前
回のサイクルタイムで求められた基準空燃比補正量usl
が今回の基準空燃比補正量uslとされ(STEP15−
14)、それが、STEP15−13で出力される。
尚、STEP15−13で出力された基準空燃比補正量
slは図示しないメモリに保持され、それが、前記図1
3のSTEP13−5において読みだされて(この読み
出し手法については、後に説明を行う)、目標空燃比KC
MDの算出に使用される。
【0181】このようにして、適応スライディングモー
ド制御部19により求められる基準空燃比補正量u
slは、前述の如く、O2センサ7により検出されるCA
T後A/Fを所定の適正値qに収束させるように求めら
れるものであるので、この基準空燃比補正量uslにより
基準空燃比KBSを補正してなる目標空燃比KCMDに、CA
T前A/Fを前記フィードバック制御部17によりフィ
ードバック制御を行うことで、CAT後A/Fが、フィ
ードバック制御部17によるフィードバック制御を介し
て間接的に、適正値qに制御される。
【0182】この場合、適応スライディングモード制御
部19により行うスイライディングモード制御は、所定
の適正値qに整定させるべきCAT後A/Fの状態量
(CAT後A/Fの値及びその変化速度)が前記超平面
上に収束しさえすれば、前記等価制御入力ueqによって
外乱や制御対象のモデル誤差等の影響を受けることな
く、該状態量が超平面上の平衡点(収束点)に安定に収
束させることができるという特性を持っている。従っ
て、CAT後A/Fの状態量を前記超平面上に収束させ
さえすれば、エンジン1の運転状態の変化や、触媒装置
4の経年劣化等によらずにCAT後A/Fを適正値qに
整定させることができる。
【0183】そして、CAT後A/Fの状態量を前記超
平面上に収束させるに際しては、本実施形態では、適応
則を用いて外乱等の影響を考慮した適応スライディング
モード制御を採用しているため、CAT後A/Fの状態
量が超平面上に収束していない段階では、外乱やモデル
誤差の影響を極力小さいものとして、安定に該状態量を
超平面上に収束させることができる。
【0184】この場合、スライディングモード制御の制
御対象である対象排気系Aには一般に比較的長いむだ時
間dが存在し、このむだ時間dは制御の不安定さを招く
虞れがある。しかるに、本実施形態では、基準空燃比補
正量uslを適応スライディングモード制御を用いて求め
るに際して、O2センサ7によりリアルタイムで検出さ
れるCAT後A/Fの状態量をそのまま用いるのではな
く、上記むだ時間dを状態予測部18により補償してな
る推定状態量x1ハット,x2ハットを用いるため、極め
て安定してそれらの推定状態量x1ハット,x2ハットを
超平面上に収束させることができる。そして、推定状態
量x1ハット,x2ハットが超平面上に収束してしまえ
ば、スライディングモード制御が本来有する特性によっ
て、そのらの推定状態量x1ハット,x2ハットの推定誤
差も吸収されてしまう。
【0185】従って、本実施形態の空燃比制御装置によ
れば、CAT後A/Fを、エンジン1の運転状態の変化
や触媒装置4の劣化、外乱、モデル誤差等によらずに、
極めて高い精度で適正値qに整定させることができ、こ
れにより、エンジン1の空燃比を、触媒装置4の排気ガ
ス浄化能力が最大限に発揮されるような空燃比に制御す
ることができ、最適なエミッション性を確保することが
できる。
【0186】また、本実施形態では、前記超平面可変制
御部44によって、CAT後A/Fの推定状態量x1
ット,x2ハットの超平面への収束状況に応じて、その
超平面を規定する係数kを変更して、該超平面を可変と
しているので、推定状態量x1ハット,x2ハットの超平
面への収束を短時間で安定して行うことができると同時
に、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面に収束し
た状態でも、推定状態量x1ハット,x2ハットを超平面
上の平衡点、すなわち、x1ハット,x2ハットの目標状
態量であるx1ハット=q,x2ハット=0となる収束点
に短時間で安定して収束させることができる。従って、
CAT後A/Fを短い収束時間(高い速応性)で且つ高
度な安定性で迅速に適正値qに整定させることができ
る。
【0187】ところで、本実施形態において、前記フィ
ードバック制御部17による出力燃料噴射量#nTo utの
算出(各補正係数の算出や目標空燃比の算出を含む)
は、エンジン1の回転に同期して行う必要があることか
ら、前述の如くクランク角周期に同期したサイクルタイ
ムで行われる。従って、出力燃料噴射量#nToutの算出
タイミングは、図12の上段に示すように示すように一
定の時間間隔では行われず、不規則な時間間隔となる。
【0188】一方、適応スライディングモード制御部1
9による基準空燃比補正量uslの算出は、同図12の下
段に示すように所定周期CTのサイクルタイムで行われ
て、算出された基準空燃比補正量uslが図示しないメモ
リに保持される。そして、メモリに保持された基準空燃
比補正量uslは、基準空燃比補正量uslが新たに求めら
れる毎に更新される。従って、基準空燃比補正量usl
算出及びその保持のタイミングは、出力燃料噴射量#nT
outの算出と非同期なものとなる。この場合、本実施形
態では、基準空燃比補正量uslの算出の周期CTは、通
常のクランク角周期よりも長いものとされている。
【0189】このように本実施形態では、基準空燃比補
正量uslの算出を、出力燃料噴射量#nToutの算出と非
同期で行うようにしているため、基準空燃比補正量usl
を用いて目標空燃比KCMDを算出し、さらに出力燃料噴射
量#nToutを算出する処理は次のように行っている。
【0190】すなわち、同図12に示すように、目標空
燃比KCMDを算出し、さらに出力燃料噴射量#nToutを算
出する際には、それ以前で最新に適応スライディングモ
ード制御部19により算出されてメモリに保持された基
準空燃比補正量uslを用いる。但し、この場合、出力燃
料噴射量#nToutの算出タイミングと、基準空燃比補正
量uslの算出タイミングとがたまたま一致した場合に
は、既にメモリに保持されている基準空燃比補正量usl
を用いて出力燃料噴射量#nToutを算出し、その後に、
新たに求められた基準空燃比補正量uslをメモリに保持
させる。
【0191】このように、基準空燃比補正量uslの算出
を、出力燃料噴射量#nToutの算出とをそれぞれ独立し
たサイクルタイムで行うようにすることで、適応スライ
ディングモード制御部19とフィードバック制御部17
とをそれぞれの制御特性や制御対象に適合したサイクル
タイムで、演算処理を行うことができる。特に、適応ス
ライディングモード制御部19による基準空燃比補正量
slの算出を対象排気系Aに存する比較的長いむだ時間
dと応答遅れ時間に対応して、比較的長い周期CTのサ
イクルタイムで行うようにすることで、サイクルタイム
が一定ならば式(3)におけるdMは一定で良いため、
その演算負荷が軽減されると共に、基準空燃比補正量u
slの算出をその演算誤差を排除しつつ高精度で行うこと
ができる。そして、その結果、CAT後A/Fの適正値
qへの整定の精度を高めることができる。
【0192】次に、本実施形態の空燃比制御装置による
制御のシミュレーションについて説明する。
【0193】本願発明者等は、本実施形態の空燃比制御
装置において、図17(a)に示すようにCAT前A/
Fに外乱Lを与えたときの、CAT後A/Fの収束性に
ついてシミュレーションを行った。その結果を図17
(b)に示す。また、これと比較するために、基準空燃
比補正量を従来のPID制御を用いて求めた場合につい
ても、同様のシミュレーションを行った。その結果を図
17(c)に示す。
【0194】図17(b)に見られるように、本実施形
態によれば、CAT前A/Fは外乱Lによらずに極めて
精度よく適正値qに整定し、また、適正値qに収束する
までの時間も短時間で済む。
【0195】これに対して、従来のPID制御を用いた
場合には、CAT後A/Fが適正値qに対して変動を生
じ、該適正値qに精度よく収束させることができないも
のとなった。
【0196】このことから、本実施形態の空燃比制御装
置では、基準空燃比補正量の算出に適応スライディング
モード制御を用いることで、外乱等によらずに極めて高
い精度でCAT後A/Fを適正値qに整定させることが
できることが判る。
【0197】次に、本発明の他の実施形態を図18を参
照して説明する。尚、本実施形態は前述の図1の空燃比
制御装置の一部のみを変更したものであるので、同一構
成部分については、図1のものと同一の参照符号を付し
て詳細な説明を省略する。
【0198】図18を参照して、本実施形態の空燃比制
御装置は、大局的フィードバック制御部20の構成のみ
を図1のものと異なるものとしたものであり、この大局
的フィードバック制御部20は、図1のものと同様にP
ID制御部22、適応制御部23及び切換部24を具備
する一方、LAFセンサ6から前記フィルタ24,25
を介してそれぞれ得られるCAT前A/F(=KACT)を
それぞれ前記目標空燃比算出部16により前述の通り算
出される目標空燃比KCMDにより除算する(CAT前A/
Fと目標空燃比KCMDとの比KACT/KCMDを求める)除算部
47,48と、その比KACT/KCMDの目標値(=1)を設
定する目標値設定部49とを備えている。この場合、除
算部47,48により比KACT/KCMDを求めるに際して
は、LAFセンサ6から得られるCAT前A/F(=KA
CT)と目標空燃比算出部16により算出される目標空燃
比KCMDとの間に前記式(35)に示したむだ時間d’が
存在するため、各除算部47,48には、目標空燃比KC
MDがむだ時間d’分の調整を行うむだ時間調整部50を
介して与えられるようになっている。
【0199】そして、除算部47,48によりそれぞれ
求められた比KACT/KC MDがPID制御部22及び適応
制御部23に与えられると共に、その比の値の目標値
(=1)が目標値設定部49からPID制御部22及び
適応制御部23に与えられ、該PID制御部22及び適
応制御部23は、それぞれ与えられた比KACT/KCMDが目
標値(=1)に一致するように、図1のものと同様にフ
ィードバック補正係数KLAF,KSTRを求めるようにしてい
る。この場合、適応制御部23は、前記式(35)中の
“KCMD(j-d')”と“KACT(j)”をそれぞれ“1”、“KAC
T/KCMD”で置き換えた形の漸化式によりフィードバッ
ク補正係数KSTRを求めることとなる。
【0200】他の構成は、図1のものと全く同一であ
る。
【0201】このような大局的フィードバック制御部2
0を備えた本実施形態の空燃比制御装置では、適応スラ
イディングモード制御を用いて補正してなる目標空燃比
KCMDとLAFセンサ6により検出されるCAT前A/F
との比KACT/KCMDが“1”に一致するように、換言すれ
ば、目標空燃比KCMDとCAT前A/Fとが一致するよう
にフィードバック補正係数KFB(=KLAFまたはKSTR)が
大局的フィードバック制御部20により求められるの
で、図1のものと同様の作用効果を奏することはもちろ
んである。そして、さらに、大局的フィードバック制御
部20がフィードバック補正係数KFB求める際の目標値
が“1”に固定されるため、図1のもののように、目標
空燃比KCMD(これは時々刻々変動する)を目標値とする
場合に較べて大局的フィードバック制御部20による制
御の安定性が向上する。特に、大局的フィードバック制
御部20の適応制御部23にあっては、目標値が固定さ
れることで、前述したような適応パラメータθの変化が
小さくなるため、該適応制御部23の安定性が大幅に向
上する。
【0202】尚、本実施形態では、目標空燃比KCMDとL
AFセンサ6により検出されるCAT前A/Fとの比KA
CT/KCMDを目標値“1”に収束させるようにしたが、目
標空燃比KCMDとLAFセンサ6により検出されるCAT
前A/Fとの偏差を求め、その偏差がなくなるように
(偏差の目標値を“0”とする)制御してもよい。さら
には、スライディングモード制御部19の出力uslによ
り直接的にCAT前A/Fの検出値を補正し、それを別
途求めた目標値に一致させるように制御することも可能
である。
【0203】また、以上説明した各実施形態では、第1
排気ガスセンサとして、広域空燃比センサ(LAFセン
サ)6を用いたが、第1排気ガスセンサは排気ガスの空
燃比を検出できるものであれば、通常のO2センサ等、
他の形式のセンサを用いてもよい。
【0204】また、前記各実施形態では、第2排気ガス
センサとして酸素濃度センサ(O2センサ)7を用いた
が、第2排気ガスセンサは、制御すべき触媒装置下流の
排気ガスの特定成分の濃度を検出できるセンサであれ
ば、他のセンサを用いてもよい。すなわち、例えば触媒
装置下流の排気ガス中の一酸化炭素(CO)を制御する
場合はCOセンサ、窒素酸化物(NOX)を制御する場
合にはNOXセンサ、炭化水素(HC)を制御する場合
にはHCセンサを用いる。三元触媒装置を使用した場合
には、上記のいずれのガス成分の濃度を検出するように
しても、触媒装置の浄化性能を最大限に発揮させるよう
に制御することができる。また、還元触媒装置や酸化触
媒装置を用いた場合には、浄化したいガス成分を直接検
出することで、浄化性能の向上を図ることができる。
【0205】また、前記各実施形態では、内燃機関の空
燃比をスライディングモード制御を用いて制御するもの
を説明したが、本発明はこれに限らず、任意の制御対象
物の状態量を制御する場合に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した内燃機関の空燃比制御装置の
一実施形態の全体的システム構成図。
【図2】図1の空燃比制御装置で使用するO2 センサの
出力特性図。
【図3】図1の空燃比制御装置における制御対象のモデ
ルを説明するための説明図。
【図4】図3のモデルのブロック図。
【図5】図1の空燃比制御装置の状態予測部内の推定部
に使用するモデルのブロック図。
【図6】図1の空燃比制御装置における状態予測部のブ
ロック図。
【図7】スライディングモード制御を説明するための説
明図。
【図8】図1の空燃比制御装置における制御系の極配置
を示す説明図。
【図9】図1の空燃比制御装置における適応スライディ
ングモード制御部のブロック図。
【図10】図9の適応スライディングモード制御部が使
用する超平面の説明図。
【図11】図1の空燃比制御装置における適応制御部の
ブロック図。
【図12】図1の空燃比制御装置における出力燃料噴射
量と基準空燃比補正量との算出タイミングを説明するた
めの説明図。
【図13】図1の空燃比制御装置の作動を説明するため
のフローチャート。
【図14】図1の空燃比制御装置の作動を説明するため
のフローチャート。
【図15】図1の空燃比制御装置の作動を説明するため
のフローチャート。
【図16】図1の空燃比制御装置の作動を説明するため
のフローチャート。
【図17】図1の空燃比制御装置と従来の装置とのシミ
ュレーション結果を示す説明図。
【図18】本発明のスライディングモード制御方法を適
用した内燃機関の空燃比制御装置の他の実施形態の全体
的システム構成図。
【符号の説明】
A…制御対象物(排気系)、σ…線形関数。
フロントページの続き (72)発明者 花田 晃平 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 Fターム(参考) 3G084 BA09 DA05 EB11 FA11 FA20 FA30 FA33 3G301 HA13 JA18 MA01 ND01 ND45 PA07Z PD09A PD09Z PE01Z PE08Z 5H004 GA02 GA03 GA07 GA10 GA14 GA17 GB12 HA13 HB01 HB03 HB04 HB08 JB09 KA74 KC28 KC35 KC38 KC43 KC46 LA02 LA03

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】制御対象物の制御すべき複数の状態量を変
    数とする線形関数によりあらかじめ設定された超平面に
    該状態量を収束させるフィードバック制御方法におい
    て、 前記線形関数の値に応じた制御入力と該線形関数の値の
    積分値に応じた制御入力とにより前記状態量を前記超平
    面に収束させるようにしたことを特徴とするフィードバ
    ック制御方法。
  2. 【請求項2】前記フィードバック制御はスライディング
    モード制御であることを特徴とする請求項1記載のフィ
    ードバック制御方法。
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JP2014070600A (ja) * 2012-09-28 2014-04-21 Honda Motor Co Ltd 空燃比制御装置

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