JP2002247952A - ケーキ用乳化起泡剤 - Google Patents

ケーキ用乳化起泡剤

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薫 筒井
Yoshiro Miyamoto
佳郎 宮本
Mitsuhiro Sakamoto
光宏 阪本
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Sakamoto Yakuhin Kogyo Co Ltd
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(57)【要約】 【課題】 油脂の配合、生地調製条件の不適などにより
生起する芯生成に代表される品質の低下を防止し、起泡
力に優れ、口溶けが良好で食感の優れたケーキを得るこ
とのできるケーキ用乳化起泡剤を提供すること。 【解決手段】 炭素数16〜24の飽和脂肪酸からなる
HLBが9以上のポリグリセリン脂肪酸エステルを必須
成分として含有することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はケーキ用乳化起泡剤
に関し、詳しくは油脂の配合、膨張剤の過剰使用、また
は生地調製時のミキシング不足、低温でのミキシングな
ど調製条件の不適などにより生起する芯生成に代表され
る品質の低下を防止し、芯抑制効果に優れたケーキ用乳
化起泡剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】スポンジケーキ類の生地調製法として
は、従来、卵黄と卵白を別々に起泡させた後に両者を合
わせ、最後に小麦粉を軽く合わせる別立て法と、全卵を
起泡させた後に小麦粉を合わせる共立て法が知られてい
る。この手法で品質の優れたケーキを得るにはかなりの
熟練を要し、また大量生産に対応することも困難であっ
た。
【0003】乳化剤を使用して、高品質のスポンジケー
キを容易に大量生産する手法がかなり以前から検討さ
れ、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エス
テル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンにエチルアルコ
ール、グリセリン、プロピレングリコールの一種以上を
加えて可溶化した後、さらにソルビトール水溶液を配合
した製剤を使用すれば、全卵、ショ糖、小麦粉などを同
時にミキサーに投入して撹拌してもケーキ生地が容易に
調製できる手法が特許として開示されている(特公昭4
0−24504)。
【0004】この場合、起泡をもたらす主たる乳化剤は
グリセリン飽和脂肪酸モノエステルであり、このように
して調製された乳化起泡剤の特徴は、グリセリン飽和脂
肪酸モノエステルが起泡力を発揮するα結晶に保持する
ことにある。その後もグリセリン飽和脂肪酸モノエステ
ルのα結晶を長期間保持することを目的として、プロピ
レングリコール脂肪酸エステルを配剤した特許が開示さ
れている(特公昭45−29412)。
【0005】このように一般に、スポンジケーキ用乳化
起泡剤は、食品添加物として認められているショ糖脂肪
酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂
肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルの
一種以上をプロピレングリコール、グリセリン、ソルビ
トール、エチルアルコール、糖類、水等の存在下で加熱
混合し冷却後ペースト状を呈している。
【0006】このようにして調製されたスポンジケーキ
用乳化起泡剤を使用すれば、小麦粉、砂糖、全卵、水、
油等を同時に投入してミキシングするオールイン法で、
容易にケーキ生地を調製することができる。しかしシリ
コンが混入した油の使用、膨張剤の過剰配剤、低温ミキ
シング、ミキシング不足などの条件下では焼成後のケー
キ内層に生焼け状の芯を生成することがある。
【0007】乳化起泡剤に配剤する乳化剤の種類、配合
比を考慮することにより、上記のような条件下でも芯の
生成を抑制することができる。すなわち親水性のショ糖
脂肪酸エステルの配剤比を高くすることにより芯の生成
を抑制できることが一般に知られている。しかし、その
場合、起泡性をもたらす主成分であるグリセリン飽和脂
肪酸モノエステルの配剤比が相対的に低下するので、該
乳化起泡剤の起泡力は低減し、希望する生地比重とする
ためには、該乳化起泡剤の使用量を多くしなければなら
ない。また、親水性のショ糖脂肪酸エステルの配剤比を
高くした乳化起泡剤を使用したケーキは重い食感とな
る。
【0008】さらに、ショ糖ベヘン酸エステルを一成分
として含有する手法が特許として開示されている(特公
昭64−7734)。しかし、一般にショ糖ベヘン酸エ
ステルは親油性であるため親水性のショ糖脂肪酸エステ
ルをもともと高い比率で配剤しておかないと、ショ糖ベ
ヘン酸エステルを配剤することにより、乳化起泡剤が白
濁したり分離してしまい起泡剤としての機能そのものが
阻害されてしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】親水性のショ糖脂肪酸
エステルは上述のとおり、芯生成を抑制する機能を有す
ると同時に、α結晶化したグリセリン飽和脂肪酸エステ
ルを長期安定化する機能も有する。しかし多量に配剤す
るとケーキの食感が重くなる傾向があるので、α結晶化
したグリセリン飽和脂肪酸エステルを安定化するに要す
る最少量(グリセリン飽和脂肪酸モノエステル:親水性
ショ糖脂肪酸エステル=10:3.5〜5.0)に抑
え、食感を損わずにしかも前述のような不適な生地調製
条件でも芯生成を抑制できる乳化剤を種々検索した。
【0010】本発明の目的は、油脂の配合、生地調製条
件の不適などにより生起する芯生成に代表される品質の
低下を防止し、芯抑制効果と起泡力に優れ、口溶けが良
好で食感の優れたケーキを得ることのできるケーキ用乳
化起泡剤を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を
解決するために以下に述べる手段を採用する。本発明の
ケーキ用乳化起泡剤は、炭素数16〜24の飽和脂肪酸
からなるポリグリセリン脂肪酸エステルを必須成分とし
て含有することを特徴とする。
【0012】また、本発明のケーキ用乳化起泡剤は、H
LBが9以上であるポリグリセリン脂肪酸エステルを必
須成分として含有することを特徴とする。
【0013】本発明は上記のような条件を具備したポリ
グリセリン脂肪酸エステルの優れた芯抑制力に着目して
なされたものであるが、先ず、乳化起泡剤の基本配合と
して親水性ショ糖脂肪酸エステルを配剤せず、作為的に
芯を生成しやすい乳化剤配合比の製剤を調製し、それに
芯を抑制するとされている各種乳化剤を配剤し、芯抑制
力を対比した。その結果、本発明のポリグリセリン脂肪
酸エステルが最も優れた芯抑制力を示した。
【0014】対比用乳化起泡剤とケーキの配合比は次の
とおり。 (1)対比用基本乳化起泡剤配合 対照区 対比区 グリセリンモノステアリン酸エステル 14.0% 12.6% ソルビタンモノステアリン酸エステル 6.0% 5.4% 対比用乳化剤 0.0% 2.0% エタノール 10.0% 10.0% ソルビトール液 35.0% 35.0% 水 35.0% 35.0%
【0015】この場合、乳化剤の合計量を20%となる
ように調整した。すなわち対比用各種乳化剤を2%配剤
した場合には、グリセリンモノステアリン酸エステルと
ソルビタンモノステアリン酸エステルは対照区に配剤し
た比率で18%に低減した。対比用乳化剤としては、従
来より芯抑制効果が知られている親水性ショ糖ステアリ
ン酸エステル、親油性ショ糖ベヘン酸エステルに加え、
ポリグリセリンステアリン酸エステル(HLB13)、
ポリグリセリンステアリン酸エステル(HLB7)、ポ
リグリセリンベヘン酸エステル(HLB9)、ポリグリ
セリンミリスチン酸エステル(HLB11)を対比し
た。親油性ショ糖ベヘン酸エステル配剤区はペーストが
白濁分離してしまったので、この系における対比試験は
行わなかった。
【0016】(2)ケーキ配合 一級薄力粉 100 全卵 150 上白糖 110 コーンサラダ油 20 水 30 膨張剤 1 各種乳化起泡剤 8
【0017】(3)生地調製法 縦型ミキサーを使用し、オールイン法で低速30秒間、
中速8分間ミキシングした。
【0018】(4)焼成条件 6号のデコ型に生地350gを充填し、上火175℃、
下火165℃で35分間焼成した。
【0019】
【表1】
【0020】(5)結果 この表1に示す結果から明らかなように、本発明品であ
るポリグリセリンステアリン酸エステル(HLB13)
およびポリグリセリンベヘン酸エステル(HLB9)は
芯の抑制効果が高く、したがってケーキ容積も大きく、
食感も良好であった。この系において本発明品は配合比
を1%に低減しても芯は生起せず、逆に親水性ショ糖ス
テアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エス
テル(HLB7)、ポリグリセリンミリスチン酸エステ
ル(HLB11)では、芯を完全に抑制するには4〜5
%の配剤を要した。その場合、親水性ショ糖ステアリン
酸エステル配剤区では、出来あがりケーキの食感は重
く、ポリグリセリンステアリン酸エステル(HLB
7)、ポリグリセリンミリスチン酸エステル(HLB1
1)配剤区ではザラつきが目立った。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態につい
て詳述する。本発明に使用されるポリグリセリン脂肪酸
エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸がエステル化した
もので、使用する脂肪酸は、炭素数16〜24の飽和脂
肪酸、より好ましくは炭素数18〜22の飽和脂肪酸の
1種類単独又は2種類以上を適宜組み合わせたエステル
が使用できる。使用するポリグリセリンは水酸基価から
算出した平均重合度が3〜10、好ましくは6〜10で
ある。ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは9以上
である必要があり、HLBが9以下であると芯の抑制効
果が低下するため好ましくない。
【0022】基本的に配剤されているグリセリン飽和脂
肪酸モノエステルと親水性ショ糖飽和脂肪酸エステルの
配剤比に左右されるが、本発明のポリグリセリン脂肪酸
エステルの乳化起泡剤中の配剤比は、芯抑制効果と食感
の点から0.5〜10%であり、好ましくは1〜5%で
ある。0.5%以下では芯抑制効果が不十分であり、1
0%以上でも芯抑制効果が著しく向上することはない。
【0023】
【実施例】以下に本発明の一実施例を示すが、本発明は
これらの実施例に限定されるものではない。前述のよう
に、乳化起泡剤に起泡性を付与する成分は主としてα結
晶化したグリセリン飽和脂肪酸モノエステルである。こ
の結晶系を安定して長期間保持するには、親水性ショ糖
飽和脂肪酸エステルの共存が必須であり、安定な製剤と
して市販するには、グリセリン飽和脂肪酸モノエステル
10に対して親水性ショ糖飽和脂肪酸エステルを3.5
〜5.0は配剤しなければならない。
【0024】したがってグリセリン飽和脂肪酸モノエス
テル10に対して親水性ショ糖飽和脂肪酸エステルを4
配剤し、それに本発明のポリグリセリン脂肪酸エステル
を変量併用して製ケーキ性を対比し実施例とした。また
芯抑制効果を判然とするために、膨張剤を過剰に配剤
し、全卵、上白糖の比率も高くし作為的に芯が生成しや
すい次のような生地配合とし、生地調製法、焼成条件は
前述の手法に従って行った。
【0025】実施例対比用生地配合 一級薄力粉 100 全卵 160 上白糖 130 コーンサラダ油 10 水 25 牛乳 10 膨張剤 5 各種乳化起泡剤 8
【0026】下記の表2の実施例1〜3及び比較例1〜
3に示すように乳化剤量を20%になるように調整して
乳化起泡剤を作成し、それらを使用して上記の生地配合
のケーキを作成し製ケーキ性を対比した。
【0027】
【表2】
【0028】前記実施例1〜3及び比較例1〜3から明
らかなように、ポリグリセリンステアリン酸エステル
(HLB13)では5%の配剤で芯は生成しないので、
乳化起泡剤の起泡力の主剤であるグリセリンモノステア
リン酸エステルの配剤比を高く保持できるので、該乳化
起泡剤の起泡性は高く、したがって容積が大きく、食感
も良好なケーキを得ることができる。
【0029】これに対しポリグリセリンステアリン酸エ
ステル(HLB7)、親水性ショ糖ステアリン酸エステ
ルではそれぞれ9%、10%の配剤でも芯が残存する。
それらの乳化剤をさらに多量配剤すれば芯は抑制される
が、乳化起泡剤の起泡力の主剤であるグリセリンモノス
テアリン酸エステルの相対的な配剤比が必然的に低減す
るので、起泡性は低下する。したがって、所期の生地比
重とするためには該乳化起泡剤の使用量を多くしなけれ
ばならなくなる。そしてこうして得られたケーキの食感
は重く、口溶けが悪かったり、ザラついたものとなる。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
乳化起泡剤を使用してオールイン法によりケーキ生地を
調製する場合、油脂の配合、シリコンの混入、膨張剤の
過剰使用、生地調製条件の不適などにより生起する芯生
成に代表される品質の低下を防止し、尚且つ起泡性に優
れ、口溶けが良好で食感の優れたケーキを得るケーキ用
乳化起泡剤を提供することができる。
フロントページの続き (72)発明者 筒井 薫 東京都調布市染地2丁目6番地3 旭東化 学産業株式会社開発研究所内 (72)発明者 宮本 佳郎 兵庫県赤穂市木津1325番93号 阪本薬品工 業株式会社赤穂研究室内 (72)発明者 阪本 光宏 兵庫県赤穂市木津1325番93号 阪本薬品工 業株式会社赤穂研究室内 Fターム(参考) 4B014 GB12 GK12 GL06 GP04 4D077 AA02 AB08 AC01 AC07 BA04 BA15 DD08X DD08Y DD36X DD36Y DE02X DE02Y DE07X DE07Y DE08X DE08Y DE09X DE09Y

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素数16〜24の飽和脂肪酸からなる
    ポリグリセリン脂肪酸エステルを必須成分として含有す
    ることを特徴とする芯抑制効果に優れたケーキ用乳化起
    泡剤。
  2. 【請求項2】 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのH
    LBが9以上である請求項1に記載のケーキ用乳化起泡
    剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009095247A (ja) * 2007-10-12 2009-05-07 Adeka Corp ケーキ用起泡性乳化剤組成物
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