JP2002243579A - 風洞模型支持装置およびそれを用いた風洞試験装置 - Google Patents

風洞模型支持装置およびそれを用いた風洞試験装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 母機模型や外部搭載物模型を用いた風洞試験
を、空力負荷が大きい領域においても精度よくなし得る
風洞模型支持装置を提供する。 【解決手段】 母機模型2を並進動作させる前後動機構
8を有する母機模型支持機構4と、外部搭載物模型3の
姿勢調整をなす一対の対称に配設された直動アクチュエ
ータ29,29を有する姿勢調整機構24とを備えた外
部搭載物模型支持機構5とを備えてなる風洞模型支持装
置である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は風洞模型支持装置お
よびそれを用いた風洞試験装置に関する。さらに詳しく
は、航空機の外部搭載物の投棄・投下特性を試験・研究
するための風洞模型支持装置およびそれを用いた風洞試
験装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、外部搭載物模型を搭載させた
航空機模型(以下、母機模型という)を、風洞内に姿勢
調節可能に支持して外部搭載物の投棄・投下特性の試験
・研究がなされている。この外部搭載物模型や母機模型
を姿勢調節可能に支持する風洞模型支持装置に関して、
今までに種々の提案がなされている。
【0003】例えば、特開平5−187961号公報に
は、図9に示すように、前部スティング101と央部ス
ティング102とが一方の耳部を他方の2叉部に挿入し
て横ピンボルトで枢着してなる前部関節103と、央部
スティング102と後部スティング104とが一方の耳
部を他方の2叉部に挿入して竪ピンボルトで枢着してな
る後部関節105と、前部関節103、後部関節105
の角度をそれぞれ所望の角度に調節および固定する角度
調節およびロック手段とを備えた風洞模型姿勢角度設定
用スティング100が提案されている。
【0004】また、特開平6−307978号公報に
は、図10に示すように、模型114を取付けるストラ
ット111が内軸112と外軸113の二重管構造とさ
れ、該内軸112と外軸113との上端間に、内軸11
2の上下動または回動に伴い内軸112と外軸113と
の間に生じる相対変位により作動するリンク機構を設
け、リンク機構の作動によりリンク機構の一端に連結し
た模型114の姿勢変角を行うようにしたもので、前記
目的が達成できるとともに、精度の高い模型姿勢変角操
作をなすようにした風洞試験模型支持装置110が提案
されている。
【0005】しかしながら、特開平5−187961号
公報の提案に係るスティング100はシリアルリンク構
造とされているため、剛性が低く、空力負荷が大きくな
るとリンクの歪みが大きくなり、計測精度が低下するお
それがある。
【0006】また、特開平6−307978号公報の提
案に係る風洞試験模型支持装置110は母機中央を垂直
に支持しているため、外部搭載物模型の気流を乱し、外
部搭載物模型の投棄・投下特性を精度よく試験がなし得
ない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる従来技
術の課題に鑑みなされたものであって、母機模型や外部
搭載物模型を用いた風洞試験を、空力負荷が大きい領域
においても精度よくなし得る風洞模型支持装置およびそ
れを用いた風洞試験装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の風洞模型支持装
置は、母機模型を並進動作させる直動機構を有する母機
模型支持機構と、外部搭載物模型の姿勢調整をなす一対
の対称に配設された直動アクチュエータを有する姿勢調
整機構とを備えた外部搭載物模型支持機構とを備えてな
ることを特徴とする。
【0009】本発明の風洞模型支持装置においては、母
機模型が母機模型支持部により直動機構の摺動ブロック
の所定距離斜め下方に位置せしめられてなるのが好まし
い。
【0010】また、本発明の風洞模型支持装置において
は、外部搭載物模型支持機構が直動機構を備え、その直
動機構により姿勢調整機構が昇降させられてなるのが好
ましい。
【0011】さらに、本発明の風洞模型支持装置におい
ては、外部搭載物模型支持機構が主回転機構を備え、そ
の主回転機構により姿勢調整機構が回転させられてなる
のが好ましい。その場合、主回転機構が直動機構により
昇降させられてなるのがさらに好ましい。
【0012】さらに、本発明の風洞模型支持装置におい
ては、主回転機構が姿勢調整機構の下流側に配設され、
直動機構が主回転機構の下流側に配設されてなるのがさ
らに好ましい。
【0013】さらに、本発明の風洞模型支持装置におい
ては、姿勢調整機構が主回転機構からオフセットさせら
れてなるのが好ましい。
【0014】さらに、本発明の風洞模型支持装置におい
ては、一対の対称に配設された直動アクチュエータによ
りピッチ角およびヨー角の調整がされてなるのが好まし
い。その場合、直動アクチュエータが、油圧シリンダと
されてなるのがさらに好ましい。
【0015】さらに、本発明の風洞模型支持装置におい
ては、姿勢調整機構がロール軸および該ロール軸をロー
ルさせるロール機構を備えてなるのが好ましい。その場
合、姿勢調整機構がロール軸および該ロール軸をロール
させるロール機構を備えてなるのがさらに好ましい。
【0016】さらに、本発明の風洞模型支持装置におい
ては、ロール軸が姿勢調整機構から上流に向けて配設さ
れ、そのロール軸の先端に外部搭載物模型が配設されて
なるのが好ましい。
【0017】しかして、本発明の風洞模型支持装置は風
洞試験装置に備えられる。ここで、風洞は、例えば三音
速風洞とされる。
【0018】
【作用】本発明の風洞模型支持装置は、前記の如く構成
されているので、高剛性を維持しながら外部搭載物模型
支持機構を軽量かつコンパクトにできる。また、母機模
型支持機構と外部搭載物模型支持機構との協働により母
機模型と外部搭載物模型との位置調整をなしているの
で、外部搭載物模型支持機構のみにより両者の位置調整
をなす場合に比して誤差の累積を回避できて、位置決め
精度の向上が図られる。
【0019】本発明の風洞模型支持装置の好ましい形態
では、外部搭載物模型の下流に外部搭載物模型支持機構
が配設されるので、外部搭載物模型支持機構により外部
搭載物回りの気流が乱されるおそれが少ない。
【0020】また、本発明の風洞試験装置は、前記風洞
模型支持装置を用いているので、空力負荷が大きい領域
においても、信頼性が高くしかも測定精度の高い風洞試
験がなし得る。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しながら本
発明を実施形態に基づいて説明するが、本発明はかかる
実施形態のみに限定されるものではない。
【0022】本発明の風洞模型支持装置を用いた風洞試
験装置のブロック図を図1に、本発明の風洞模型支持装
置を用いた風洞試験装置の概略正面図を図2に、本発明
の風洞模型支持装置を用いた風洞試験装置の概略側面図
を図3にそれぞれ示す。
【0023】風洞試験装置Aは、内部に三音速、つまり
亜音速、遷音速、超音速の気流を生じさせることができ
る風洞1と、母機模型2と、母機より投下する外部搭載
物、例えば、ミサイル等の模型である外部搭載物模型3
と、これらの模型2、3を可動支持する母機模型支持機
構4および外部搭載物模型支持機構5とからなる風洞模
型支持装置と、制御装置6とを主要構成要素としてな
る。なお、図1中の符号Bは天秤を示す。
【0024】この風洞試験装置Aによる試験は、風洞1
中に所望の流速の気流を生じさせた状態で、母機模型支
持機構4および外部搭載物模型支持機構5とによって、
母機模型2および外部搭載物模型3とを制御装置6の指
令によって所望の位置および姿勢とすることによりなさ
れる。なお、かかる動作をなすための必要な配線、配管
等は、図示はされていないが、風洞1の外部から母機模
型支持機構4および外部搭載物模型支持機構5に敷設さ
れている。
【0025】風洞模型支持装置は、母機模型2と外部搭
載物模型3との気流に対する前後方向の位置関係の調整
を、母機模型2を母機模型支持機構4により前後方向に
移動させることによりなし、母機模型2と外部搭載物模
型3との気流に対する上下方向の位置関係の調整を、外
部搭載物模型3を外部搭載物模型支持機構5により上下
方向に移動させることによりなすようにされている。ま
た、母機模型2と外部搭載物模型3との相対位置の調
整、および外部搭載物模型3のその他の姿勢調整も外部
搭載物模型支持機構5によりなすようにされている。
【0026】具体的には、母機模型支持機構4は、摺動
ブロック9を有する前後動機構8と、この摺動ブロック
9の前端部に装着された母機模型支持部12とからなる
ものとされる。
【0027】前後動機構8は、風洞1の天井部10側
方、例えば図2に示す例では右側方に固定配置され、そ
のレール部11に気流に対して前後方向に摺動自在に摺
動ブロック9が装着されてなる直動機構とされている。
前後動機構8は、摺動ブロック9を摺動せしめるボール
スクリュー、位置検出用のエンコーダおよび減速機を備
えたモータ等の図示されていない前後駆動装置を備えて
なるものとされる。なお、前後動機構8は、天井部10
の両側方、つまり右側方および左側方にそれぞれ固定配
置されてもよい。このように、前後動機構8を天井部1
0中央を避けて配置するのは、外部搭載物模型支持機構
5との干渉を避けるためである。
【0028】母機模型支持部12は、後部母機支持部材
13と、この後部母機支持部材13の前端下部に上端部
が接合された央部母機支持部材14と、この央部母機支
持部材14の下端に後端部上部が接合された前部母機支
持部材15とからなるものとされる。
【0029】後部母機支持部材13は、図3に示すよう
に、前端が円錐状の円筒体とされ、その軸を気流方向に
一致させて配設されている。この後部母機支持部材13
は、その後端が摺動ブロック9の前端部に固着されて気
流方向に摺動自在とされている。
【0030】央部母機支持部材14は、所定長さの前部
中空分割体14aと後部中空分割体14bとからなるも
のとされ、両分割体14a,14bが気流方向に対して
縦列状に配設されている。この両分割体14a,14b
の所定長さは、前後動機構8の前後動による気流の乱れ
の外部搭載物模型3の試験への影響を最小限とできるよ
うに調整されている。
【0031】両分割体14a,14bは、より具体的に
は、それらの下端に接合される前部母機支持部材15が
風洞1の中心軸上に位置するように傾斜させて縦列状に
配設されている(図2参照)。また、前部分割体14a
と後部分割体14bは、明瞭には図示されてはいない
が、それぞれ流線型状に形成されて気流の乱れを最小限
に抑えるようにされている。そして、前部分割体14a
はその上端が後部母機支持部材13の円錐状の前端頭部
下部に接合され、後部分割体14bはその上端が後部母
機支持部材13の円錐状の前端後部下部に接合されてい
る。
【0032】前部母機支持部材15は、円筒体の前部1
5aとこの前部15aの後端に一体的に形成されている
中空体の後部15bとからなるものとされ、その軸を気
流方向に一致させて配設されている。そして、前部15
aの前端に母機模型2の後端が接合され、後部15bの
後端部上部には前部分割体14aおよび後部分割体14
bの下端がそれぞれ固着されている。
【0033】外部搭載物模型支持機構5は、昇降機構1
6と、この昇降機構16により昇降させられる外部搭載
物模型支持部19とからなるものとされる。
【0034】昇降機構16は、外部搭載物模型支持部1
9を保持している保持部材17と、この保持部材17が
接合されている昇降部材20と、この昇降部材20を昇
降させる昇降装置とからなるものとされる。つまり、昇
降部材20は直動機構により昇降させられている。
【0035】保持部材17は後端部が球状とされた円筒
体とされ、昇降部材20に差し込むようにして装着され
ている。
【0036】昇降部材20は平板状部材とされて前後動
機構8の後端部近傍にて風洞1中央において垂直方向に
配設され、その適宜位置に保持部材17が上流に向けて
接合される。風洞1のこの昇降部材20が配設されてい
る個所には、図示はされていないが、その上部および下
部に昇降部材20の昇降を確保するための収納空間が形
成されている。
【0037】昇降装置は、例えば油圧シリンダなどの油
圧駆動装置とされて昇降部材20の上端上方の所定位置
に配設され、その駆動軸の先端が前記昇降部材20の上
端に連結されている。それにより、昇降装置の駆動軸の
進退につれて昇降部材20が昇降する。つまり、駆動軸
が進出することにより昇降部材20が降下する一方、駆
動軸が後退することにより昇降部材20が上昇する(図
3中の矢符参照)。
【0038】しかして、昇降機構16は、前述したよう
に、前後動機構8の後端部近傍に配設されているので、
つまり母機模型2および外部搭載物模型3に対して充分
離れた後方に設置されているので、模型2、3周辺の気
流を乱すおそれはほとんどない。
【0039】外部搭載物模型支持部19は、主回転機構
21と、外部搭載物模型姿勢調整機構(以下、単に姿勢
調整機構という)24と、姿勢調整機構24を主回転機
構21から支持している支持部材31とからなるものと
される。
【0040】主回転機構21は、前端部が円錐体とされ
た円筒体からなる主回転部材22と、位置検出用のエン
コーダおよび減速機を備えたモータ等が内蔵された、主
回転部材22を回転させる主回転部材回転装置23とを
備えてなるものとされ、主回転部材22がその前端を気
流方向に向けた状態で、主回転部材回転装置23が保持
部材17に保持されている。
【0041】姿勢調整機構24は、外部搭載物模型3の
ロール角、ピッチ角およびヨー角を調整するものであっ
て、中空のロール軸26と、このロール軸26をロール
させるロール機構26aが内蔵された中空の中間部材2
5と、この中間部材25の後端と関節部27を介して接
合されている中空の本体部材28と、中間部材25のピ
ッチ角およびヨー角を調整する一対の直動アクチュエー
タ29,29とを備えてなるものとされる。
【0042】ロール軸26は円筒体とされ、その先端に
外部搭載物模型3が接合されるとともに、基端部は中間
部材25に収納され、そして図示はされていないが、そ
の基端はロール機構26aを構成しているモータの駆動
軸に接合されている。ロール機構26aは、図示はされ
ていないが、ロール角検出用のエンコーダなどを備えて
ロール角調整可能とされている。なお、ロール機構26
a自体は、公知構造のものとされている。
【0043】中間部材25は、先端部が円錐台とされた
円筒体とされ、その内部に前述したように、ロール機構
26aが内蔵され、また中間部材25の外周部には軸対
称、例えば軸に関して45度振り分けに直動アクチュエ
ータ29の駆動軸29aの先端部との接合部材25aが
配設されている。この中間部材25は関節部27を介し
てピッチ角およびヨー角が調整自在となるようにして本
体部材28と接合されている。この場合、前述したよう
にロール軸26aの先端に外部搭載物模型3が接合され
ているので、中間部材25のピッチ角およびヨー角を調
整することにより、外部搭載物模型3のピッチ角および
ヨー角の調整がなされることになる。また、関節部27
には、例えばユニバーサルジョイントが用いられる。
【0044】本体部材28は前部28aと後部28bと
からなるものとされ、前部28aは先端部が円錐台状と
された円筒体とされ、後部28bは先端部が円錐台とさ
れ後端部が円錐とされた前部28aより大きな直径を有
する円筒体とされている。
【0045】ただし、後部28bの先端の直径は前部2
8aの円筒体の直径と同一とされている。これにより、
前部28aと後部28bとの接続部に気流の乱れを生じ
させる段差が生ずるのが防止されている。また、後部2
8bの直径が前部28aの直径より大きくされているの
で、支持部材31と接合するための機械的強度が確保さ
れている。
【0046】前部28aの外周部には前記中間部材25
の接合部材25aに対応させて直動アクチュエータ29
の後端部を保持する中空保持部材(以下、単に保持部材
という)28cが一対軸対称、例えば中心線Lに関して
45度振り分けに配設されている。
【0047】直動アクチュエータ29は、例えば油圧シ
リンダとされ、その駆動軸29aの先端部は前記中間部
材25aに配設された接合部材25aに旋回可能に接合
される一方、本体29b後端部は前記本体部材28の前
部28aに配設された保持部材28cに旋回可能に接合
されている。この場合、なお、直動アクチュエータ29
としては、リニアモータとすることもできるが、大きな
駆動力が得られる点から油圧シリンダとされるのが好ま
しい。
【0048】支持部材31は流線型とされた所定高さを
有する中空体とされ、その下端31aが主回転部材22
の先端部に固着され、その上端31bが本体部材28の
後部28bに固着されている。この支持部材31は、支
持の安定性を確保するため、上端部と下端部は中間部3
1cより幅広に形成されている(図3参照)。また、支
持部材31の所定高さは、主回転機構21による気流の
乱れの外部搭載物模型3の試験への影響を最小限とでき
るように調整されている。すなわち、外部搭載物模型3
は主回転機構21から所定距離オフセットさせられてい
る。
【0049】次に、かかる構成とされている風洞模型支
持装置による母機模型2および外部搭載模型3の位置調
整について説明する。なお、母機模型2および外部搭載
模型3の位置調整は制御装置6の指令によりなされる。
【0050】A.母機模型2と外部搭載模型3の相対位
置の調整
【0051】(1)母機模型支持機構4の前後動機構8
により母機模型2を所定速度で前進させ、あるいは後退
させる。この場合、母機模型2は所望位置に静止させら
れてもよい。
【0052】(2)(1)における母機模型2の移動に
合わせて、外部搭載物模型支持機構5の昇降機構16に
より昇降部材20の高さを調整しながら、主回転機構2
1により主回転部材22を所定量回転させて外部搭載模
型3を母機模型2に対して所望位置とする。
【0053】このように、本風洞模型支持装置において
は、並進動作を母機模型支持機構4の前後動機構8によ
りなしているので、並進動作を外部搭載物模型支持機構
5のみによりなした場合に比して、誤差の累積が回避で
きる。また、母機模型支持機構4による並進動作は高剛
性の直動機構である前後動機構8によりなしているの
で、母機模型2を精度よく並進動作させることができ
る。さらに、主回転機構21は外部搭載物模型3を保持
している姿勢調整機構24よりも所定距離離れた位置に
配設されているので、主回転機構21による気流の乱れ
が外部搭載物模型3の試験に影響を与えるおそれも少な
い。その結果、精度のよい試験がなし得る。
【0054】B.外部搭載物模型3のピッチ角およびヨ
ー角の調整
【0055】(1)ピッチ角を調整する場合は、前記A
による母機模型2と外部搭載物模型3との相対位置調整
に合わせて、一対の直動アクチュエータ29,29の駆
動軸29aの双方を同時に中立位置から所定量進出ある
いは後退させる。この場合、駆動軸29aを進出させる
と外部搭載物模型3は上向き姿勢となり、その逆に駆動
軸29bを後退させると外部搭載物模型3は下向き姿勢
となる。なお、当然のことながらピッチ角の調整は単独
でなされてもよい。ここで、中立位置とは、ピッチ角お
よびヨー角が0度となる駆動軸29aの進出位置をい
う。
【0056】(2)ヨー角を調整する場合は、前記Aに
よる母機模型2と外部搭載物模型3との相対位置調整に
合わせて、一対の直動アクチュエータ29,29の一方
の駆動軸29aを中立位置から所定量進出させると同時
に、一対の直動アクチュエータ29,29の一方の駆動
軸29aを中立位置から同量後退させる。この場合、図
4に示す下流側から見て右側の直動アクチュエータ29
Aの駆動軸29aを後退させると同時に、左側の直動ア
クチュエータ29Bの駆動軸29aを進出させると、外
部搭載物模型3は右向き姿勢となり、その逆とすれば、
外部搭載物模型3は左向き姿勢となる。なお、当然のこ
とながらヨー角の調整は単独でなされてもよい。
【0057】このように、本風洞模型支持装置において
は、ピッチ角およびヨー角の調整を軸対称(中心線に対
称)に配設された一対の直動アクチュエータ29,29
によりなすようにしているので、つまりいわゆるパラレ
ルリンクによりなすようにしているので、姿勢調整機構
24の剛性をいわゆるシリアルリンク構造とした場合に
比して高くでき、しかもピッチ角およびヨー角の調整が
姿勢調整機構24の本体部材に保持されている一対の直
動アクチュエータ29,29によりなされているので、
ピッチ角およびヨー角の調整における昇降機構16およ
び主回転機構21の誤差の影響を最小限に抑えることが
できる。それ故、ピッチ角およびヨー角を精度よく調整
できる。また、一対の直動アクチュエータ29,29を
軸対称(中心線に対称)に配設しているので、横軸およ
び縦軸の特性、ならびにピッチ軸およびヨー軸の特性を
ほぼ等しくできる。そのため、撓み校正および制御系の
校正が容易となる。また、気流の乱れの特性もピッチ軸
とヨー軸でほぼ等しくできる。
【0058】C.外部搭載物模型3のロール角の調整
【0059】(1)前記AおよびBの位置調整等に合わ
せて、ロール機構26aによりロール角の調整をなす。
なお、当然のことながらロール角の調整は単独でなされ
てもよい。
【0060】このように、本風洞模型支持装置において
は、ロール角の調整を中間部材25に内蔵されたロール
機構26aによりなすようにしているので、ロール角の
調整における昇降機構16および主回転機構21の誤差
の影響を最小限に抑えることができる。そのため、ロー
ル角を精度よく調整できる。
【0061】しかして、本実施形態の風洞模型支持装置
によれば、母機模型支持機構4と外部搭載物模型支持機
構5により、母機模型2と外部搭載物模型3の位置関係
をなすようにしているので、外部搭載物模型3のみを移
動させて位置調整をなす場合に比して外部搭載物模型支
持機構5をコンパクトにすることができる。また、母機
模型2の並進動作を高剛性の直動機構である前後動機構
8によりなす一方、外部搭載物模型3の昇降を高剛性の
直動機構である昇降機構16によりなしているので、母
機模型2および外部搭載物模型3を高精度に位置決めで
きる。さらに、母機模型支持機構4の前後動機構8およ
び外部搭載物模型支持機構5の昇降装置16を母機模型
2および外部搭載物模型3の後方に位置せしめるととも
に、母機模型2を央部母機支持部材14により前後動機
構8から所定距離下方に位置せしめ、かつ外部搭載物模
型3を支持部材31により主回転機構21から所定の距
離上方に位置せしめているので、前後動機構8ならびに
昇降機構および主回転機構21が、母機模型2および外
部搭載物模型3の周りの気流を乱すおそれもない。その
上、ピッチ角およびヨー角の調整を本体部材28に配設
されたいわゆるパラレルリンクによりなしているので、
昇降機構16および主回転機構21の誤差の累積を排除
できてピッチ角およびヨー角の調整を高精度になし得
る。
【0062】したがって、本発明の風洞模型支持装置を
用いた風洞試験装置Aによれば、信頼性が高く、しかも
高精度の試験がなし得る。
【0063】
【実施例】以下、より具体的な実施例により本発明をよ
り具体的に説明する。
【0064】実施例1および比較例1 シリアルリンク機構(比較例1)および実施形態に用い
られているパラレルリンク機構(実施例1)の引っ張り
試験を行なった結果を図5に示す。図5に示すグラフの
横軸はスティング長手方向位置を示し、縦軸はスティン
グの前記垂直方向のたわみ量を示している。なお、試験
は、支持機構であるスティング取り付け位置から長手方
向距離1350mmの位置に、長手方向に対して垂直方向に23
0kgfの負荷をかけて行った。
【0065】図5に示すように、スティング先端部のた
わみ量は、比較例1のシリアルリンク機構の場合では4.
35mmであり、実施例1のパラレルリンク機構の場合では
1.59mmである。この結果より、実施例1のパラレルリン
ク機構は、比較例1のシリアルリンク機構に比べて弾性
変形の抑制効果が2倍以上であるといえる。それ故、本
実施形態における支持機構によれば、精度よく位置決め
がなし得るといえる。
【0066】実施例2および比較例2 風洞内の空気の流れを2次元理想流体で仮定したときの
流線を図6に示す。図6において、x軸=0mm付近の凸
形状壁はスティング先端に取り付ける模型を、x軸=50
0mm,1000mm付近でy軸方向に突き出た棒状の壁はステ
ィングに取り付けられた気流方向に垂直な部材である。
具体的には、x軸=500mm付近の部材は図10に示す従来
例の外軸113のような模型後方の近い位置に置かれた
部材を想定し、x軸=1000mm付近の部材は図3に示す本実
施形態の一対のアクチュエータ29、29および支持部
材31のような模型後方の充分離れた位置に置かれた部
材を想定している。完全流体はいずれもx軸の負の方向
から流れてくる。図中の流線のうち、実線は模型周りの
流線を、点線は部材周りの流線をそれぞれ示している。
2つの流線が連続になっていないのならば、流線は部材
の影響を受けているということなので、気流が乱れてお
り、投下特性を正確に試験することができない。
【0067】図6(a)は模型から下後方に離れた位置
(x軸=1000mm)に部材が置かれた場合(実施例2)の
流線を示している。一方図6(b)は模型後方直後(x
軸=500mm)の位置に部材が置かれた場合(比較例2)
の流線を示している。
【0068】実施例2の流線は模型周りで一端歪み、一
様に平行流に戻ってから充分して、部材周りで再び歪ん
でいて、流線は連続である。つまり、模型周りの気流に
影響を与えない。それに較べて比較例2の流線は模型周
りで一端歪み、一様に平行流に戻る前に部材周りで歪ん
でいて、流線は不連続である。つまり、模型周りの気流
が乱れていることを示す。この結果から、模型から充分
離した下後方にを設置した場合には、模型周りの気流に
影響を与えないといえる。
【0069】つまり、本実施形態では一対の直動アクチ
ュエータ29,29およびオフセット用の支持部材31
を用いているが、いずれの部材も外部搭載物模型3の下
後方に充分離れて設置されているので、高剛性でありな
おかつ気流の乱れも少なくできる。
【0070】実施例3および比較例3 模型のピッチ軸およびヨー軸周りの変角機構である一対
の直動アクチュエータが中心線に対称に配置されている
場合(実施例3)と、非対称に配置されている場合(比
較例3)との変角速度と位置決め精度の特性実験の結果
を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】図7に比較例3のピッチ角調整用およびヨ
ー角調整用直動アクチュエータ81,82がそれぞれ非
対称に配置されている、つまりピッチ角調整用の直動ア
クチュエータ81が垂直方向に配設される一方、ヨー角
調整用の直動アクチュエータ82が水平方向に配設され
ている模型支持機構80の一例を示す。
【0073】表1に示すように、比較例3の直動アクチ
ュエータ81,82が非対称に配置され、しかも単一の
直動アクチュエータ81(または82)によりピッチ角
(またはヨー角)の調整をなしている場合は、ピッチ軸
とヨー軸の特性に大きな差がある。これは、単一の直動
アクチュエータ81(または82)により調整を行って
いるという機構上の特性に起因するものと解せられる。
一方、実施例3の対称に配設された直動アクチュエータ
29,29の協働によりピッチ角やヨー角の調整をなし
ている場合は、ピッチ軸とヨー軸の特性に差はほとんど
ない。これは、同一の直動アクチュエータ29,29を
対称に配設させそれらを協働させることにより、個々ア
クチュエータ29の特性が中和される結果と解せられ
る。なお、ピッチ軸とヨー軸との特性値に生ずる差は、
組み付け誤差や計測誤差に起因するものと想定される。
【0074】したがって、本実施形態の風洞模型支持装
置は、キャリブレーションや制御系調整が容易になる。
【0075】実施例4および比較例4 母機模型2と外部搭載物模型3との気流方向(前後方
向)に対する位置関係の調整を母機模型支持機構4に担
わせた1軸分離型機構(実施例4)と、6軸すべての位
置決め機構を外部搭載物模型支持機構に担わせた6軸一
体型機構(比較例4)における外部搭載物模型支持機構
の重量を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】表2に示すように、実施例4の1軸分離型
機構とした場合の方が、比較例4の6軸一体型機構とし
た場合に較べて、外部搭載物模型支持機構5を2倍以上
軽量化することができる。
【0078】したがって、本実施形態の風洞模型支持装
置は、母機模型2と外部搭載物模型3との気流方向に対
する位置関係の調整を母機模型支持機構に担わせたの
で、外部搭載物模型支持機構5の大型化および剛性低下
を抑えることができる。
【0079】実施例5および比較例5 直動関節と回転関節との組合せになる姿勢調整機構(実
施例5)および回転関節のみによる姿勢調整機構を図8
に模式図で示す。なお、図8(a)は実施例5を示し、
同(b)は比較例5を示す。
【0080】実施例5および比較例5の第1、2、3、
4関節のそれぞれの変位量を、図8に示すようにそれぞ
れq1、q2、q3、q4とし、模型支持機構先端に取り付
けられた模型のロール角、ピッチ角、ヨー角をそれぞれ
γ、β、αとする。いま、関節変位量にそれぞれΔ
1、Δq2、Δq3、Δq4の誤差があったときの模型の
姿勢の誤差をΔγ、Δβ、Δαであるとする。このと
き、ピッチ姿勢誤差、およびヨー姿勢誤差は運動学計算
により以下のように表される。
【0081】 (q1,q2,q3,q4)=(0,0,0,0)の場合
【0082】 実施例5:Δα=Δq3 Δβ=Δq4 (1)
【0083】 比較例5:Δα=Δq1+Δq3 Δβ=Δq2+Δq4 (2)
【0084】(q1,q2,q3,q4)=(π/4,π/
4,0,0)の場合
【0085】 実施例5:Δα=(Δq2+Δq3)/21/2 Δβ=(−Δq2+Δq3)/21/2 (3)
【0086】 比較例5:Δα=Δq1+Δq3/21/2 Δβ=Δq2+Δq3/2+Δq4/21/2 (4)
【0087】式(1)ないし式(4)より、実施例5に
おいて比較例5に比して、各関節における誤差の累積の
度合いは小さいので、実施例5は比較例5に比して位置
決め精度が高いといえる。
【0088】したがって、昇降機構16を直動としてい
る実施形態においては、外部部搭載物模型3を精度よく
位置決めできる。
【0089】以上、本発明を実施形態および実施例に基
づいて説明してきたが、本発明かかる実施形態および実
施例に限定されるものではなく、種々改変が可能であ
る。例えば、本実施形態および実施例においては、風洞
は三音速風洞とされているが、通常の風洞とされてもよ
い。
【0090】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、高
剛性を維持しながら外部搭載物模型支持機構を軽量かつ
コンパクトにできるという優れた効果が得られる。ま
た、母機模型支持機構と外部搭載物模型支持機構との協
働により母機模型と外部搭載物模型との位置調整をなし
ているので、外部搭載物模型支持機構のみにより両者の
位置調整をなす場合に比して誤差の累積を回避できて、
位置決め精度の向上が図られるという優れた効果も得ら
れる。
【0091】本発明の風洞模型支持装置の好ましい形態
によれば、外部搭載物模型の下流に外部搭載物模型支持
機構が配設されるので、外部搭載物模型支持機構により
外部搭載物回りの気流が乱されるおそれが少ないという
優れた効果も得られる。
【0092】また、本発明の風洞試験装置は、前記風洞
模型支持装置を用いているので、空力負荷が大きい領域
においても、信頼性が高くしかも測定精度の高い風洞試
験がなし得るという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の風洞模型支持装置を用いた風洞試験装
置のブロック図である。
【図2】本発明の風洞模型支持装置を用いた風洞試験装
置の概略正面図である。
【図3】本発明の風洞模型支持装置を用いた風洞試験装
置の概略側面図である。
【図4】本発明の外部搭載物模型支持機構の概略平面図
である。
【図5】実施例1および比較例1に対して引っ張り試験
を行なった測定結果を示す図である。
【図6】風洞内の空気の流れを2次元理想流体で仮定し
たときの流線を示す図であって、同(a)は実施例2の
流線を示し、同(b)は比較例2の流線を示す。
【図7】比較例3の模型支持機構の一例の概略図であ
る。
【図8】外部搭載物模型の模式図であって、同(a)は
実施例5を示し、同(b)は比較例5を示す。
【図9】従来の風洞模型支持装置の説明図である。
【図10】他の従来の風洞模型支持装置の説明図であ
る。
【符号の説明】
1 風洞 2 母機模型 3 外部搭載物模型 4 母機模型支持機構 5 外部搭載物模型支持機構 6 制御装置 8 前後動機構 12 母機模型支持部 16 昇降機構 19 外部搭載物模型支持部 21 回転機構 24 姿勢調整機構 27 関節部 29 直動アクチュエータ A 風洞試験装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 久保田 哲也 明石市川崎町1番1号 川崎重工業株式会 社明石工場内 (72)発明者 志子田 繁一 明石市川崎町1番1号 川崎重工業株式会 社明石工場内 (72)発明者 山口 利男 神戸市中央区東川崎町3丁目1番1号 川 崎重工業株式会社神戸工場内 Fターム(参考) 2G023 AA01 AB26 AC01 AD01

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 母機模型を並進動作させる直動機構を有
    する母機模型支持機構と、外部搭載物模型の姿勢調整を
    なす一対の対称に配設された直動アクチュエータを有す
    る姿勢調整機構を備えた外部搭載物模型支持機構とを備
    えてなることを特徴とする風洞模型支持装置。
  2. 【請求項2】 母機模型が母機模型支持部により、直動
    機構の摺動ブロックの所定距離斜め下方に位置せしめら
    れてなることを特徴とする請求項1記載の風洞模型支持
    装置。
  3. 【請求項3】 外部搭載物模型支持機構が直動機構を備
    え、該直動機構により姿勢調整機構が昇降させられてな
    ることを特徴とする請求項1記載の風洞模型支持装置。
  4. 【請求項4】 外部搭載物模型支持機構が主回転機構を
    備え、該主回転機構により姿勢調整機構が回転させられ
    てなることを特徴とする請求項3記載の風洞模型支持装
    置。
  5. 【請求項5】 主回転機構が直動機構により昇降させら
    れてなることを特徴とする請求項4記載の風洞模型支持
    装置。
  6. 【請求項6】 主回転機構が姿勢調整機構の下流側に配
    設され、直動機構が主回転機構の下流側に配設されてな
    ることを特徴とする請求項5記載の風洞模型支持装置。
  7. 【請求項7】 姿勢調整機構が主回転機構からオフセッ
    トさせられてなることを特徴とする請求項4、5または
    6記載の風洞模型支持装置。
  8. 【請求項8】 一対の対称に配設された直動アクチュエ
    ータによりピッチ角およびヨー角の調整がされてなるこ
    とを特徴とする請求項1記載の風洞模型支持装置。
  9. 【請求項9】 直動アクチュエータが油圧シリンダとさ
    れてなることを特徴とする請求項8記載の風洞模型支持
    装置。
  10. 【請求項10】 姿勢調整機構がロール軸および該ロー
    ル軸をロールさせるロール機構を備えてなることを特徴
    とする請求項8記載の風洞模型支持装置。
  11. 【請求項11】 ロール軸が姿勢調整機構から上流に向
    けて配設され、そのロール軸の先端に外部搭載物模型が
    配設されてなることを特徴とする請求項10記載の風洞
    模型支持装置。
  12. 【請求項12】 請求項1ないし請求項11に記載の風
    洞模型支持装置を備えてなることを特徴とする風洞試験
    装置。
  13. 【請求項13】 風洞が三音速風洞とされてなることを
    特徴とする請求項12記載の風洞試験装置。
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