JP2002243551A - 赤外線の検出方法、及び赤外線検出素子 - Google Patents

赤外線の検出方法、及び赤外線検出素子

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JP2002243551A
JP2002243551A JP2001037467A JP2001037467A JP2002243551A JP 2002243551 A JP2002243551 A JP 2002243551A JP 2001037467 A JP2001037467 A JP 2001037467A JP 2001037467 A JP2001037467 A JP 2001037467A JP 2002243551 A JP2002243551 A JP 2002243551A
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resistance
resistance change
hysteresis
variable resistance
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JP2001037467A
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Chiaki Yamawaki
千明 山脇
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Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大きな熱−抵抗変化率を有しながら、温度−
抵抗特性にヒステリシスを有する材料を用いた赤外線の
検出方法を提供すること。 【解決手段】 抵抗変化素子をなす抵抗変化材料とし
て、その温度−抵抗変化特性の少なくとも一部にヒステ
リシスを伴う材料を使用する。そして、検出対象である
赤外線による熱を吸収した状態と、していない状態との
双方で、抵抗変化素子の温度を、初期温度(T10・T
20)からそのヒステリシス温度幅(T11−T10相
当の温度差)を超えて上昇させた後に、再び初期温度ま
で下降させ、初期温度まで下降させた抵抗変化素子の抵
抗値(Rb(T10)・Rbrf)を取得し、上記それ
ぞれの状態毎に取得された抵抗値間の差(ΔRbrfd
et’)から赤外線の変化量を検出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱型赤外線センサ
等の赤外線検出素子に関し、特に、相転移特性を有し、
温度によりその抵抗値が変化する抵抗変化材料(以下、
熱抵抗変化材料と称する場合がある)を用いる検出素
子、該検出素子を備えた二次元撮像装置、並びに赤外線
量の検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】赤外線検知に用いる熱型赤外線センサ
は、1)熱を抵抗変化で検出するボロメータセンサ、
2)熱を熱電対で検出するサーモパイルセンサ、3)熱
を電荷で検出する焦電型センサに分類される。
【0003】近年、シリコンウエハ上にモノリシック形
成ができる利点を生かした、ボロメータセンサが開発・
製造されている。図8に示すように、ボロメータ型の熱
型遠赤外線センサは、赤外線115をダイヤフラム11
4の赤外線吸収層(図示せず)において吸収し、吸収し
た赤外線量に応じた熱に変換する。ダイヤフラム114
に用いられたボロメータ材料(図示せず)は温度により
抵抗値が変化する材料(以下、熱抵抗変化材料と称する
場合がある)であり、ダイヤフラム114が赤外線11
5を吸収して生じた温度変化(温度上昇)をボロメータ
の電気抵抗値の変化量として検出する。
【0004】上記ボロメータ型の熱型遠赤外線センサの
構成につきより具体的に説明すると、図8に示すように
シリコン基板116上にダイヤフラム構造体を設け、細
い脚110・111によりシリコン基板116とダイヤ
フラム114とを熱的に絶縁する。
【0005】ダイヤフラム114にはボロメータ材料
(熱抵抗変化材料)からなる抵抗変化素子が配設され
る。この抵抗変化素子とシリコン基板116とは、脚1
10・111それぞれに沿って設けられた配線により、
端子112・113を介して電気的に接続される。ま
た、シリコン基板116の、ダイヤフラム114と対向
する面上にアルミ等からなる赤外線反射板を設け、該ダ
イヤフラム114の赤外線吸収率を高める場合もある。
【0006】熱抵抗変化材料であるボロメータ材料を用
いた熱型赤外線センサの感度Res(V/W)は以下の
式(1)で表される。
【0007】 Res=η・α・VB・(1−exp(−τi/τT))/G・・・(1) なお、上記式(1)において、ηはセンサの赤外線吸収
率を、αはボロメータ材料の抵抗温度係数を、VBはボ
ロメータ材料からなる抵抗変化素子に印加されるバイア
ス電圧を、τiは積分時間を、τTはセンサの熱時定数
を、Gはセンサの熱コンダクタンスを表す。なお、セン
サの熱容量をHCで表すと、上記熱時定数τT=HC/
Gである。
【0008】上記式(1)より、1)赤外線吸収率ηを
向上させる、2)抵抗温度係数αが大きなボロメータ材
料を使用する、または、3)熱コンダクタンスGを小さ
くすることで、遠赤外線センサの感度を向上可能である
ことが判る。また、熱容量HCを小さくすると、熱時定
数τTが小さくなり、応答特性が向上する。ここで、熱
コンダクタンスGは、以下の式(2)で表される。
【0009】G=ρ・B・H/L・・・(2) なお、式(2)において、ρは熱伝導度を、Bは梁(リ
ード)の幅を、Hは梁(リード)の厚さを、Lは梁(リ
ード)の長さを表す。なお、梁とは図8において脚11
0・111に相当する。また、熱伝導度ρとは、梁の構
造体と配線材料との双方を合わせた熱伝導度である。
【0010】上記のように、熱型遠赤外センサの感度R
esを向上させる一方法として、式(1)に示すよう
に、ボロメータ材料からなる熱抵抗変化膜(抵抗変化素
子)の抵抗温度係数αを高くすることが有効であるとさ
れる。そして、上記熱抵抗変化膜には、従来、酸化バナ
ジウム膜あるいはTi膜が用いられている。
【0011】映像情報メディア学会技術報告(ITE Techn
ical Report Vol.21.No.80.pp13-18) には、様々なバナ
ジウム酸化物における温度と電気伝導度との関係が開示
されている。該資料によると、バナジウムの酸化物は非
常に多く存在するが、室温における抵抗変化率はVO2
膜がもっとも高く、約−2%である。そして、このVO
2 をボロメータ材料として使用した報告がなさている。
また図9にはV−O系(すなわち各種バナジウム酸化
物)化合物の平衡状態図を示す。同図に示されたVO2
化合物は68℃に変態点(相転移点)を有し、この温度
において、αVO 2 とβVO2 との間の可逆的な相転移
が生じる。この相転移は、結晶構造あるいは結晶系の変
化を伴う一次の相転移であるため大きな体積変化が発生
し、また抵抗変化の温度特性にヒステリシスを伴う。な
お、上記文献に示すようにVO2 膜が室温近傍で使用さ
れる場合、上記平衡状態図(図9)によれば、相転移を
生じない温度領域で使用されていることになる。
【0012】これに対し、「Infrared Focal Plane Arr
ay Incorporating Silicon IC Process Compatible Bol
ometer(IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES.VOL.4
3,NO.11,(1996)」では、熱抵抗変化膜にTi材料を用い
ている。
【0013】上記文献によると、Tiの抵抗温度係数α
は0.2〜0.4%/℃と小さいが、ボロメータ素子を
作成した際の1/fノイズがVO2 を用いた場合と比べ
て1/10以下になる。そのため、S/N比(Signal to
Noise ratio) を考慮した場合、抵抗温度係数αが高い
熱抵抗変化膜を用いた場合と等価な効果を得られる旨、
開示されている。上記2つの文献では、抵抗温度係数α
あるいは1/fノイズを考慮した等価的な抵抗温度係数
は、たかだか数%/℃であり、このような材料を通常の
方法で使用する場合には大幅な抵抗温度係数αの増大は
望めない。
【0014】ところで、上記説明のように、VO2 は6
8℃に相転移点を有し、この温度近傍では数度の温度変
化で抵抗値が数桁にわたり変化する。この時の抵抗値変
化を抵抗温度係数αに換算すると−21%程度となり、
ボロメータ素子の感度を従来(上記説明の−2%)の約
10倍に向上することができる。しかしながら、従来こ
のような相転移を示す材料をボロメータ素子に応用し、
相転移点を挟む温度領域内で積極的に使用した例は報告
されていない。これは、相転移特性を有する熱抵抗変化
膜に、以下に示すような問題があるためである。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】特開平11−2711
45号公報の記載によると、相転移特性を有する材料よ
りなるボロメータ素子を、その相転移点を挟む温度領域
で使用した場合、その温度−抵抗変化特性はヒステリシ
スを有するため測定精度の低下を招く。そして、このよ
うなボロメータ素子を二次元赤外線画像を検知する機
器、例えば遠赤外線カメラに用いた場合、ヒステリシス
特性は非線型動作であるため、残像の原因になるとされ
ている。すなわちヒステリシスの非線型応答動作が問題
となっている。
【0016】本発明は、上記の課題を解決するためにな
されたものであって、その目的は、大きな熱−抵抗変化
率を有しながら、温度−抵抗特性にヒステリシスを有す
る材料、例えば相転移を伴う抵抗変化材料を用いた赤外
線検出素子、該検出素子を備えた二次元撮像装置、並び
に、上記抵抗変化材料を用い、そのヒステリシスの影響
を小さくする、すなわち非線型応答動作の影響を小さく
する赤外線の検出方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明にかかる赤外線の
検出方法は、上記の課題を解決するために、温度により
抵抗値が変化する抵抗変化材料からなる抵抗変化素子を
用い、該抵抗変化材料の温度−抵抗変化特性を利用して
赤外線を検出する方法であって、上記抵抗変化材料とし
て、その温度−抵抗変化特性の少なくとも一部にヒステ
リシスを伴う材料を使用し、検出対象である赤外線によ
る熱を吸収した状態と、していない状態との双方で、上
記抵抗変化素子の温度を、初期温度から、上記温度−抵
抗変化特性のヒステリシスループにおける温度上昇時の
メジャーループ上に達する温度を超えるまで上昇させた
後に、再び初期温度まで下降させ、次いで、初期温度ま
で下降させた抵抗変化素子の抵抗値をそれぞれの状態で
取得し、上記それぞれの状態毎に取得された抵抗値間の
差から赤外線の照射量を検出することを特徴としてい
る。
【0018】なお、上記初期温度と、上記温度−抵抗変
化特性のヒステリシスループにおける温度上昇時のメジ
ャーループ上に達する温度との温度差とは、通常は、抵
抗変化素子が示す温度−抵抗変化特性のヒステリシスル
ープにおいて、温度下降側のメジャーループ上の任意の
点から温度を上昇させて、温度上昇側のメジャーループ
上の対応する点に到達させた際の、両点における温度差
の絶対値に相当するものであり、以下この温度差のこと
をヒステリシス温度幅と称する。
【0019】上記の方法によれば、上記抵抗変化素子の
温度を、そのヒステリシス温度幅を超えて上昇させた後
に下降させ、温度を下降させた状態での抵抗変化素子の
抵抗値を取得するので、上記温度−抵抗変化特性の有す
るヒステリシス影響、すなわち、非線型応答動作の影響
を少なくすることが可能となる。また、抵抗変化素子の
有する温度−抵抗変化特性のうち、ヒステリシスを伴う
領域(一般に比較的大きな温度−抵抗変化を示す)を利
用して赤外線量を検出するので、該赤外線量を比較的大
きな抵抗変化として取得可能となる。すなわち、精度の
高い赤外線の検出が可能な方法を提供することができ
る。
【0020】本発明にかかる赤外線の検出方法はまた、
上記の方法を前提として、上記抵抗変化材料として、相
転移特性を有する材料を使用することを特徴としてい
る。
【0021】上記の方法によれば、上記材料は、その相
転移点近傍で大きな熱−抵抗変化特性を示すので、微小
な熱量の変化を抵抗値の大きな変化として取得すること
ができ、高感度な赤外線の検出が可能となる。
【0022】本発明にかかる赤外線の検出方法はまた、
上記の方法を前提として、上記抵抗変化素子の温度を上
昇させる際に、該抵抗変化素子の抵抗値を取得するため
の電源を使用することを特徴としている。
【0023】上記の方法によれば、元来、上記抵抗変化
素子の抵抗値を測定するために設けられている電源を共
用して抵抗変化素子の温度を上昇させるので、追加の構
成を設ける必要がない。
【0024】本発明にかかる赤外線検出素子は、上記の
課題を解決するために、温度により抵抗値が変化し、か
つ、その温度−抵抗変化特性の少なくとも一部にヒステ
リシスを伴う抵抗変化材料から構成される抵抗変化素子
と、上記抵抗変化素子の抵抗値を取得する抵抗値取得手
段と、上記抵抗変化素子の温度を、初期温度から、上記
温度−抵抗変化特性のヒステリシスループにおける温度
上昇時のメジャーループ上に達する温度を超えるまで上
昇させた後に、再び初期温度まで下降させる温度制御手
段と、を備えてなることを特徴としている。
【0025】上記の構成によれば、温度制御手段によ
り、上記抵抗変化素子の温度を、そのヒステリシス温度
幅を超えて上昇させた後に下降させ、続いて、抵抗値取
得手段により、温度を下降させた状態での抵抗変化素子
の抵抗値を取得するので、上記抵抗変化材料の有するヒ
ステリシス影響、すなわち、非線型応答動作の影響を少
なくすることが可能となる。すなわち、精度の高い検出
が可能な赤外線検出素子を提供することができる。
【0026】本発明にかかる赤外線検出素子はまた、以
上の構成を前提として、上記抵抗変化材料が相転移特性
を有する材料であることを特徴としている。
【0027】上記の構成によれば、上記材料は、その相
転移点近傍で大きな熱−抵抗変化特性を示すので、微小
な熱量の変化を抵抗値の大きな変化として取得すること
ができる。すなわち、高感度な検出が可能な赤外線検出
素子を提供することができる。
【0028】本発明にかかる二次元撮像装置は、上記の
課題を解決するために、上記説明の赤外線検出素子を備
えてなることを特徴としている。
【0029】上記の構成によれば、抵抗変化素子の温度
−抵抗変化特性が有するヒステリシスの影響が小さく、
残像の少ない二次元撮像装置を提供することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明にかかる赤外線の検出方法
は、温度により抵抗値が変化し、かつ、その温度−抵抗
変化特性(熱−抵抗変化特性)の少なくとも一部にヒス
テリシスを伴う抵抗変化材料(熱抵抗変化材料)からな
る抵抗変化素子を用いる方法である。さらに、抵抗変化
素子の抵抗値を測定する際に、該抵抗変化素子の温度
を、その温度−抵抗変化特性を示すヒステリシスループ
のヒステリシス温度幅を越えて上昇させ、続いて、該ヒ
ステリシス温度幅を越えて下降(冷却)させる方法であ
る。
【0031】より具体的には、1)検出対象である赤外
線による熱を吸収した状態と、していない状態との双方
で、上記抵抗変化素子の温度を、初期温度からそのヒス
テリシス温度幅を超えて上昇させた後に、再び初期温度
まで下降させ、初期温度まで下降させた抵抗変化素子の
抵抗値をそれぞれの状態で取得し、2)続いて、上記そ
れぞれの状態毎に取得された抵抗値間の差から赤外線の
変化量を検出する方法である。なお、検出対象である上
記赤外線は、一般には例えば、検出対象物(被測定物)
が放射する赤外線に相当する。
【0032】すなわち、本願発明では、上記抵抗変化素
子の温度を、初期温度からそのヒステリシス温度幅を超
えて上昇させた後に、再び初期温度まで下降させるとい
う抵抗変化素子の温度制御動作を、上記赤外線による熱
を吸収した状態と、していない状態との双方(すなわ
ち、検出対象物が存在する状態としない状態との双方)
で行い、検出対象物が放射する赤外線の存在下での抵抗
変化素子の抵抗値、並びに、検出すべき赤外線の非存在
下での抵抗変化素子の抵抗値、をヒステリシスループの
冷却側(温度下降側)の応答特性を用いて取得する。す
なわち、上記温度制御動作により、抵抗変化材料の温度
−抵抗変化特性を表すヒステリシスループを形成し、該
ヒステリシスループの再現性を利用することで、赤外線
検出の再現性を向上させ、抵抗変化材料のヒステリシス
の影響、すなわち非線形応答動作の影響を少なくするこ
とができる。
【0033】上記赤外線による熱を吸収している状態
と、していない状態とのそれぞれにおいて、「抵抗変化
素子の初期温度」とは異なる温度を指す。すなわち、赤
外線による熱を吸収していない状態における「抵抗変化
素子の初期温度」をT(1)とすると、該熱を吸収して
いる状態における「抵抗変化素子の初期温度」は、熱を
吸収した温度分(ΔT(1)>0)上昇した温度、すな
わちT(1)+ΔT(1)となる。なお、これら初期温
度とは、抵抗変化素子の抵抗値測定直前の温度を指し、
以下にも説明するが、必要に応じてペルチェ素子などを
用い、所定の温度範囲内(好適には、温度−抵抗変化特
性にヒステリシスを伴う範囲内)となるように制御され
ている。
【0034】また、上記「ヒステリシス温度幅」とは、
上記初期温度と、上記温度−抵抗変化特性のヒステリシ
スループにおける温度上昇時のメジャーループ上に達す
る温度との温度差に相当するものである。さらに、初期
温度が温度−抵抗変化特性にヒステリシスを伴う範囲内
にあり、かつこの初期温度における温度−抵抗変化特性
が温度下降側でのヒステリシスループに従ったものであ
る場合には、上記「ヒステリシス温度幅」とは、抵抗変
化素子が示す温度−抵抗変化特性のヒステリシスループ
において、温度下降時(温度下降側)のメジャーループ
上の任意の点から温度を上昇させて、温度上昇側のメジ
ャーループ上の対応する点に到達させた際の、両点にお
ける温度差の絶対値に相当するものでもある。以下、図
2に示す、抵抗変化素子の温度−抵抗変化特性ヒステリ
シスループを用いてより具体的に説明する。
【0035】上記温度−抵抗変化特性ヒステリシスルー
プは、そのメジャーループとして、温度TL 〜TH 間に
形成された閉じたループを示す。このメジャーループ
は、温度TL から温度TH へ上昇する際の温度上昇側
(時)の応答20と、温度TH から温度TL へ下降する
際の冷却側(温度下降側(時))の応答21とからな
る。例えば、メジャーループの冷却側の応答21上の任
意の点Oにおける温度を徐々に上昇させると、抵抗変化
素子をなす材料の温度−抵抗変化特性に応じて抵抗値が
減少し、点P’をへて、メジャーループの温度上昇側の
応答20上の点Pに到達する。本発明におけるヒステリ
シス温度幅ΔThisとは、上記点Pにおける温度と点
Oにおける温度との温度差に相当するものである。該ヒ
ステリシス温度幅ΔThisは、抵抗変化素子をなす抵
抗変化材料毎にほぼ固有の値を示す。
【0036】そして、抵抗変化素子の初期温度が、その
温度−抵抗変化特性にヒステリシスを伴う温度領域内
(図2中では、TL 以上TH 未満の温度領域内であり、
マイナーループ上の点であってもよい)にある場合、図
2より明らかなように、上記ヒステリシス温度幅ΔTh
isに相当する温度幅を超えて温度上昇させた後に再び
初期温度まで冷却すれば必ず、一連の温度上昇・冷却動
作における抵抗変化素子の温度−抵抗変化特性を、明確
なヒステリシスを伴う応答反応として得ることができ
る。一例として、抵抗変化素子の温度を、初期温度TA
からヒステリシス温度幅ΔThisに相当する温度幅を
超えた温度TC まで加熱し、再び初期温度T A まで冷却
すれば、その温度−抵抗変化特性は点O→点P→点Q→
点R→点Oを結んでなるマイナーループ22として得る
ことができる。
【0037】一方、抵抗変化素子の温度を、初期温度か
ら上記ヒステリシス温度幅ΔThis以下の温度上昇を
与えた後に再び初期温度まで冷却する場合には、その温
度−抵抗変化特性を、明確なヒステリシスを伴う応答反
応として得られない場合がある。一例として、抵抗変化
素子の温度を、初期温度TA からヒステリシス温度幅Δ
Thisに相当する温度幅未満の温度TB まで加熱し、
再び初期温度TA まで冷却すれば、その温度−抵抗変化
特性は点O→点P’→点Oを結んでなるほぼ直線状のマ
イナーループとしてしか得られない。
【0038】なお、メジャーループ上には、同一の抵抗
値を示す2つの異なる点、並びに同一の温度を示す2つ
の異なる点がそれぞれ存在する。例えば、メジャールー
プ上に位置する点Oと点O’とでは、同一の抵抗値を示
すがその温度は異なっている。そして、両点における温
度差はヒステリシス差(温度)と一般に称されるが、こ
れは本発明におけるヒステリシス温度幅とは相異なるも
のである。
【0039】検出対象である赤外線による熱を吸収した
状態と、していない状態とのそれぞれにおいて、抵抗変
化素子の温度を、初期温度からそのヒステリシス温度幅
を超えて上昇させる方法は、特に限定されるものではな
いが、抵抗変化素子に所定時間の通電を行い、該抵抗変
化素子を自己発熱させる方法がより好ましい。以下にも
図面を用いて詳細に説明するが、抵抗変化素子の抵抗値
の変化から赤外線の変化量を検出する赤外線検出素子に
は、該抵抗変化素子に通電して、その抵抗値を測定する
ための電気回路がもとから設けられている。よって、該
電気回路から抵抗変化素子に対し、通電時間を制御しな
がら電流を付与すれば、追加の構成を設けることなく抵
抗変化素子の温度を所定の温度まで上昇させることがで
きる。
【0040】この方法による抵抗変化素子の温度上昇度
は、抵抗値Rbの抵抗変化素子に、強さIの電流が通電
された場合における自己発熱量(I2 ×Rb);抵抗変
化素子の熱コンダクタンスG;抵抗変化素子の熱容量H
C;を特定すれば算出することができ、算出された温度
上昇度に応じて通電時間を制御すればよい。
【0041】上記抵抗変化素子の温度を、初期温度から
そのヒステリシス温度幅を超えて上昇させれば、該抵抗
変化素子の温度−抵抗変化特性は、温度上昇時のメジャ
ーループであるヒステリシスカーブをその少なくとも一
部として描く。続いて、通電をやめれば、抵抗変化素子
は冷却されて初期温度にまで下降し、温度下降時のヒス
テリシスカーブを描く。このように抵抗変化素子の温度
を、初期温度からそのヒステリシス温度幅を超えて上昇
させ、再び初期温度まで下降させれば、該抵抗変化素子
の温度−抵抗変化特性は再現性の高いヒステリシスルー
プ状となる。
【0042】抵抗変化素子の抵抗値は次の通電タイミン
グとほぼ同時に、すなわち抵抗変化素子の温度が自己発
熱で再び上昇すると同時に測定する。検出対象物の放射
エネルギーによる抵抗変化素子自身の温度上昇は、検出
対象物が有る状態と無い状態とのそれぞれで測定された
上記抵抗値の差分としてあらわれ、この差分から検出対
象物の赤外線放射量(放射エネルギー)を取得できる。
【0043】以上のように、本願発明にかかる方法で
は、温度−抵抗変化特性にヒステリシスを有する抵抗変
化材料からなる抵抗変化素子の、抵抗値および抵抗値変
化量を検出する際に、上記ヒステリシスが発生する温度
範囲内で、該抵抗変化素子の温度を上記ヒステリシス温
度幅を超えて上昇させ、続いて下降させてヒステリシス
ループを再現させる。これにより、該抵抗変化素子のヒ
ステリシス影響、すなわち非線形応答動作による影響を
少なくすることができる。したがって、本願発明を、二
次元赤外線画像を検知する撮像装置、例えば、赤外線カ
メラ(遠赤外線カメラなど含む)に適用した場合には、
赤外線の検知能が高く、かつ、ヒステリシスに起因する
残像の発生が少ない装置を提供可能となる。
【0044】なお、いうまでもないが、抵抗変化素子を
加熱する加熱手段や、該抵抗変化素子を冷却する冷却手
段を別途設けることにより、抵抗変化素子を初期温度か
らそのヒステリシス温度幅以上に上昇させ、再び初期温
度まで下降させることも可能である。
【0045】また、本発明に用いられる抵抗変化材料と
しては、熱−抵抗変化率が大きな材料、例えば、結晶構
造が変化する相転移点を有し、相転移により熱−抵抗変
化率が大きく変化する相変化材料(相転移特性を有する
材料)がより好ましい。このような材料を使用すれば、
微小な熱量の変化が抵抗値の大きな変化としてあらわ
れ、高感度な赤外線検出を実現することが可能となる。
【0046】大きな熱−抵抗変化率を示し、その温度−
抵抗変化特性の少なくとも一部にヒステリシスを伴う抵
抗変化材料として、具体的には、例えば、V2 3 −C
23 や、VO2 のようなバナジウム酸化物を主成分
とする酸化物膜材料;Ti35 ,Ti4 7 ,Ti5
9 ,Ti6 11のようなチタン酸化物を主成分とする
酸化物膜材料;あるいはLa・Sr・MnO,La・C
a・MnOのようなマンガン酸化物を含む酸化物膜材
料;および、上記バナジウム酸化物、チタン酸化物、マ
ンガン酸化物からなる群より選択される少なくとも1種
類の酸化物と、不可避混合物とからなる抵抗変化材料;
等が挙げられる。
【0047】以下、図面を用いて、本願発明にかかる赤
外線検出素子、並びに、赤外線の検出方法についてさら
に詳細に説明を行う。
【0048】図3に示すように、本願発明にかかるボロ
メータ型の熱型赤外線センサ(赤外線検出素子)は、赤
外線15をダイヤフラム14の赤外線吸収層(図示せ
ず)において吸収し、吸収した赤外線量に応じた熱に変
換する。ダイヤフラム14に備えられたボロメータ素子
(図示せず)は温度により抵抗値が変化する抵抗変化材
料からなる素子(抵抗変化素子)であり、ダイヤフラム
14が赤外線15を吸収して生じた温度変化をボロメー
タの電気抵抗値の変化量として検出する。
【0049】上記熱型赤外線センサの構成につきより具
体的に説明すると、図3に示すようにシリコン基板16
上にダイヤフラム構造体を設け、略正方形状のダイヤフ
ラム14の対向する二辺に沿って設けられた細い脚10
・11により、シリコン基板16とダイヤフラム14と
が熱的に絶縁される。換言すれば、脚10・11によ
り、ダイヤフラム14はシリコン基板16から所定の間
隔をおいた状態、つまり浮いた状態で固定されている。
【0050】ダイヤフラム14にはボロメータ素子が配
設される。ボロメータ素子とシリコン基板16とは、脚
10・11それぞれに沿って設けられた配線により、端
子12・13を介して電気的に接続される。また、シリ
コン基板16の、ダイヤフラム14と対向する面上にア
ルミ等からなる赤外線反射板を設け、該ダイヤフラム1
4の赤外線吸収率を高める場合もある。
【0051】上記熱型赤外線センサにおける、ボロメー
タ素子の抵抗値の読み出し回路(抵抗値取得手段)6a
は、例えば、図4(a)のブロック図に示すように、ボ
ロメータ材料からなる抵抗変化素子(ボロメータ素子)
2に電圧を印加する電圧源(電源)4;定電流回路1;
温度によりその抵抗値が変化する抵抗変化素子2;スイ
ッチ素子3a;がこの順に直列的に接続されてなり、ス
イッチ素子3a側の一端(GND)で電気的に接地され
ている。該図において、電圧源4と定電流回路1とは、
スイッチ素子3aが閉じたときに、抵抗変化素子2に一
定の強さの電流を通電するように構成されている。素子
抵抗変化出力5には、抵抗変化素子2の抵抗値に対応す
る信号電圧が出力される。また、スイッチ素子3aのオ
ン・オフのタイミングは、後述する通電時間、冷却時
間、並びに、抵抗変化素子2の構造や特性によって計画
される。
【0052】なお、抵抗変化素子2に電圧を印加する上
記電圧源4、スイッチ素子3aに加え、該スイッチ素子
3aのオン・オフのタイミングを制御する制御回路(図
示せず)を付加し、これらにより温度制御手段を構成し
てもよい。
【0053】また、図4(a)に示す読み出し回路6a
に代えて、図4(b)に示す読み出し回路6bを使用す
ることも可能である。該読み出し回路6bは、読み出し
回路6aの定電流回路部分(定電流回路1)を、固定抵
抗素子7に置き換えたものである。また、電圧源(電圧
値固定)4と固定抵抗素子7との間にはスイッチ素子3
bが付加されている。したがって、スイッチ素子3a・
3bの双方が閉じたときのみに、固定抵抗素子7および
抵抗変化素子2に電流が通電される。抵抗変化素子2の
抵抗変化は、固定抵抗素子7の抵抗値R(固定)と、該
抵抗変化素子2の抵抗値Rb(温度により変化)との抵
抗値分割比により決定される、信号電圧として出力され
る。
【0054】読み出し回路6a・6bから出力された信
号電圧は、図示しない抵抗値−温度変換手段へ、抵抗変
化素子2の抵抗値を示す信号として入力され、例えば、
抵抗変化素子2をなすボロメータ材料の温度−抵抗値変
化特性を利用して、該抵抗変化素子2の温度情報に変換
される。続いて、該温度情報は、図示しない温度−赤外
線量変換手段へ出力され、検出対象物の放射する赤外線
量を表す情報に変換される。なお、抵抗値から温度情報
への変換については、以下に詳細に説明を行う。
【0055】続いて、上記熱型赤外線センサの動作を図
4および図5を用いて説明する。図5中(G)は、図4
(a)に示すスイッチ素子3a、または図4(b)に示
すスイッチ素子3a・3bの動作タイミングを示し、ス
イッチ素子3(読み出し回路6aにおけるスイッチ素子
3a、読み出し回路6bにおけるスイッチ素子3a・3
bに相当)が導通時(ON時)に抵抗変化素子2に所定
の強さIの電流が通電される。このとき、抵抗変化素子
2には、 P=I2 ×Rb・・・(3) なる自己発熱エネルギーPが与えられる。なお、式
(3)において、Rbは、ボロメータ材料からなる抵抗
変化素子2の抵抗値(温度により変化する)を示す。
【0056】但し、読み出し回路が、読み出し回路6a
のように定電流回路であれば、抵抗変化素子2に流れる
電流の強さはIcで一定であるので、上記抵抗値Rbは
温度Tと時間tとの関数となり、上記自己発熱エネルギ
ーは以下に示す式(4) P(T,t)=Ic2 ×Rb(T,t)・・・(4) のように表される。
【0057】一方、読み出し回路が、読み出し回路6b
のように定電圧回路であれば、印加される定電圧をVc
として、上記自己発熱エネルギーは以下に示す式(5) P(T,t) =(Vc/(R+Rb(T,t)))2 ×Rb(T,t)・・・(5) のように表される。なお、上記Rは、前出のように固定
抵抗素子7の抵抗値Rを指す。
【0058】抵抗変化素子2は、この自己発熱エネルギ
ーP(T,t)により温度が上昇する。この状態を図5
中(B)に抵抗変化素子2の温度として示す。スイッチ
素子3が全て閉じている期間(図5中(G)に示すON
時)では、抵抗変化素子2の温度は、初期温度からその
ヒステリシス温度幅を超える温度幅分上昇する。このと
き抵抗変化素子2の抵抗値Rbは、その自己発熱により
変化する。例えば、酸化バナジウム膜材料、あるいは金
属Ti膜材料などの抵抗変化材料では負の特性(温度上
昇で抵抗値低下)の特性を持っている。よって、図5中
(C)に抵抗変化素子2の抵抗値として示すように、そ
の抵抗値は低下する。
【0059】スイッチ素子3のオフの時間にもよるが、
抵抗変化素子2の抵抗値(抵抗変化材料の抵抗値)は、
初期温度時における抵抗値まで低下する。さらに図5中
(D)で示すように、素子抵抗変化出力5は抵抗変化素
子の抵抗値変化を受けて、所定の電圧を出力する。図5
中(E)に示すように、該電圧のサンプリングタイミン
グを、素子温度が上昇する直後のタイミング(このと
き、抵抗変化素子2の温度は実質上昇していない)に設
定すると、図5中(F)に示すようなサンプリング出力
が得られる。
【0060】次にスイッチ素子3をオフにすると、抵抗
変化材料による自己発熱が停止し、放熱により抵抗変化
素子2の温度は低下する(図5中(B)参照)。そし
て、この温度低下にあわせて、抵抗変化素子2の抵抗値
Rbは増加する。なお、この時の素子抵抗変化出力5の
電位は、スイッチ素子3がオフのため不定である(図5
中(D)参照)。
【0061】次に、検出対象物が放射する赤外線を検出
した際の動作を説明する。検出対象物からの赤外線の放
射状況を図5中(A)に示す。時間t1で被測定物から
の赤外線(+)を検知した場合、抵抗変化材料の初期温
度(スイッチ素子3がオンする直前の温度)は、赤外線
を検知する前と比較して該赤外線のエネルギー相当分
(該図中ΔTrfdetで示す)高い温度となる。これ
に応じて、図5中(C)に示すように、抵抗変化素子2
の抵抗値RbはΔRbrfdet’分減少する。そし
て、素子抵抗変化出力5は、図5中(D)および(G)
に示すように、スイッチ素子3がオンされたタイミング
で、抵抗変化素子2の抵抗値変化量ΔRbrfdet’
を表す信号電圧を出力する。すなわち、赤外線の放射を
受けていない状態と比較して、上記抵抗値変化量ΔRb
rfdet’に相当する電圧ΔVrfdet’の電圧低
下を示す電圧信号が出力される。
【0062】サンプリング動作のタイミングは、図5中
(E)に示すように,抵抗変化素子2の温度が上昇し始
めた直後(実質、抵抗変化素子2の温度が初期温度にあ
る状態)に設定して、図5中(F)に示すサンプリング
出力電圧(信号電圧)を得る。該サンプリング出力電圧
は、検出対象物が無い場合と比較して、上記電圧ΔVr
fdet’分の電圧低下(赤外線量を示す)に相当する
信号電圧となる。
【0063】次に、図1、図6、図7を用いて応答の詳
細につき説明を行う。図6中(B)、(F)、(G)は
順に、図5中(B)に示した抵抗変化素子2の温度変
化、図5中(F)に示したサンプリングタイミング、並
びに、図5中(G)に示したスイッチ素子3のオン−オ
フタイミングの一周期分を拡大したものである。なお、
図6中(B)においては、説明の便宜上、検出対象物が
存在する状態と、存在しない状態との双方における抵抗
変化素子2の温度変化を併記し、前者の状態における温
度変化を破線で、また、後者の状態における温度変化を
実線で表している。
【0064】また、図7は抵抗変化素子2をなす抵抗変
化材料の、抵抗値と温度との関係を模式的に示した図で
あり、両者の関係は、ΔThisのヒステリシス温度幅
を有するヒステリシスをその一部に伴う。なお、図7に
はヒステリシスのメジャーループ、並びにマイナールー
プの双方をヒステリシスループとして示している。
【0065】図7に示すような温度−抵抗変化特性を示
す抵抗変化材料として、例えば、VO2 や、V2 3
どのバナジウム酸化物を主成分とする相変化材料(相転
移材料);これらバナジウム酸化物にクロム酸化物を添
加した相変化材料;などが挙げられる。また、バナジウ
ム酸化物にクロム酸化物を添加した相変化材料として
は、クロム酸化物として酸化クロム(III)(すなわち、
Cr2 3 )を含んでなり、材料中におけるVとCrと
の組成比(Crの原子数/Vの原子数×100(%))
が、0.5at%から1.8at%の範囲内にあるもの
が特に好適に使用される。
【0066】図1は、図7に示す応答を拡大し、該応答
を図6と関連づけて説明する説明図である。なお、図1
において、初期温度T10、初期温度T20、温度T1
3、温度T23、温度T11、温度T21、温度T1
2、並びに、温度T22はいずれも、図7に示す温度T
L 〜温度TH の範囲内の温度としているが、温度T12
や温度T22は、温度TH を超える温度であっても構わ
ない。抵抗変化素子2は、温度TL 未満、または温度T
H 以上の温度領域内では温度と抵抗値との関係が一義的
に決まるのに対し、温度TL 以上でかつ温度TH 未満の
温度領域内では、温度と抵抗値との関係にヒステリシス
を伴う。
【0067】はじめに、検出対象物が存在しない場合に
ついて説明する。スイッチ素子3を導通する直前の状態
(図6中t10の直前の状態)においては、抵抗変化素子
2は初期温度T10を示す。この状態は図1では、温度
−抵抗変化特性を表すグラフ上のA点に相当し、この時
の抵抗値はRb(T10)である。
【0068】そして、スイッチ素子3を導通にする(図
6に示すt10からt11の間の期間)と、上述の通り抵抗
変化素子2の温度は上昇する(図6に示す応答1)。こ
のとき、抵抗変化素子2の抵抗値Rbは温度の上昇に従
って低下し、図1に示す温度−抵抗特性グラフ上のB点
を経てC点に至る。なお、B点における抵抗変化素子2
の温度はT11であり、T11−T10の値が、図1に
示すヒステリシスループのヒステリシス温度幅に相当す
る。また、C点における抵抗変化素子2の温度はT12
であり、この温度は、T10を基準として上記ヒステリ
シス温度幅を超えて昇温された温度、すなわちT11を
超えた温度である。
【0069】なお、応答1における上昇温度は、以下に
示すようにtの関数 ΔT(t) =−(P/G)・EXP(−G・t/HC)+(P/G)・・・(6) として表される。
【0070】なお、上記式(6)において、Pは抵抗変
化素子2の自己発熱エネルギー、HCは抵抗変化素子2
の熱容量、Gは抵抗変化素子2の熱コンダクタンス、t
はスイッチ素子3をオンした時間(スイッチオン期間)
を表す。
【0071】上記式(6)を用いれば、抵抗変化素子2
の構造(熱コンダクタンスGや、熱容量HC)、その特
性(抵抗値Rb)、並びに、読み出し回路6a・6b
(図4参照)に適用される条件(電流の強さ:I、印加
される電圧:V、スイッチオン期間:t=t11−t10
を定めることで、抵抗変化素子2の温度を、温度上昇時
のメジャーループ上の点に到達する温度(T11)を超
えて上昇させる条件をもとめることができる。
【0072】次に、スイッチ素子3が開放になり抵抗変
化素子2に電流が供給されないと、素子温度は放熱によ
り低下する。このとき、抵抗変化素子2の抵抗値Rbは
温度の低下に従って上昇し、図1に示す温度−抵抗特性
グラフ上のC点からD点を経てE点(A点と同じ)に至
る。なお、D点における抵抗変化素子2の温度はT13
であり、T12−T13の値が、図1に示すヒステリシ
スループのヒステリシス温度幅に相当する。
【0073】なお、応答2(図6参照)における下降温
度は、以下に示すようにtの関数 ΔT(t)=−T12・EXP(−G・t/HC)・・・(7) として表される。
【0074】なお、上記式(7)において、HCは抵抗
変化素子2の熱容量、Gは抵抗変化素子2の熱コンダク
タンス、tはスイッチ素子3をオフした時間(スイッチ
オフ期間)、T12は下降直前の素子温度を表す。
【0075】そして式(7)を用いて、抵抗変化素子2
の構造(熱コンダクタンスG、熱容量HC)、その特性
(抵抗値Rb)、並びに、読み出し回路6a・6b(図
4参照)に適用される条件(電流の強さ:I、印加され
る電圧:V、スイッチオフ期間:t=t12−t11)を定
めることで、下降直前の素子温度T12を定め、抵抗変
化素子2の温度を再び初期温度T10まで下降させる条
件を求めることができる。
【0076】次に検出対象物の赤外線を検出した場合に
ついて、図1および図6などを用いて説明する。なお、
説明の便宜上、検出対象物が存在していない場合と同じ
温度幅分、抵抗変化素子2の温度を上昇・下降させるも
のとする。すなわち、図1において、T12−T10=
T22−T20である。
【0077】検出対象物の赤外線エネルギーPrfが常
に赤外線検出素子に与えられている場合、応答として
は、前記抵抗変化素子2の自己発熱エネルギーPに赤外
線エネルギーPrfを加算した動作となる。従って、検
出対象物の赤外線を検出していない場合と比較して、抵
抗変化素子2の温度が赤外線エネルギーPrfによりΔ
Trfdetだけ常時上昇した応答を示す。
【0078】すなわち、赤外線を検出した場合には、抵
抗変化素子2の初期温度は、T10からΔTrfdet
分上昇したT20となり、続いて、T12からΔTrf
det分上昇したT22まで温度が上昇された後に、T
13よりΔTrfdet分高い温度であるT23を経て
再び初期温度T20まで冷却される。図1に示す温度−
抵抗変化特性のグラフにおいては点A’を基点とし自己
発熱、冷却のループがA’点→B’点→C’点→D’点
→E’点の順に描かれる。
【0079】検出対象物より放射された赤外線は、ヒス
テリシスの冷却側の応答である、D点→A点を経由した
後のA点における抵抗変化素子2の抵抗値Rb(T1
0)と、D’点→E’点を経由した後のE’点における
抵抗変化素子2の抵抗値Rbrf’との差分ΔRbrf
det’として測定される。これら冷却側の応答は、一
旦、温度上昇時のヒステリシスメジャーループ上を描い
た再現性の高い応答であり、これを利用すれば信頼性の
高い赤外線検出が実現可能となる。
【0080】例えば、ヒステリシスの加熱側の応答のみ
を利用し、放射された赤外線量を、A点における抵抗変
化素子2の抵抗値Rb(T10)と、A’点における抵
抗変化素子2の抵抗値Rbrfとの差分ΔRbrfde
tとして測定することも理論上可能ではあるが、この測
定法では測定精度が一般に低くなる。これは、一般にA
点→A’点へのヒステリシス曲線のみを描かせる場合、
その再現性は低く、測定の度に異なる抵抗値Rbrfが
得られる場合が多いことに起因する。しかも、図1に示
す温度−抵抗変化特性を有する抵抗変化材料では、放射
された赤外線量を表す上記ΔRbrfdetは、ΔRb
rfdet’に比べて著しく小さいので、本願発明にか
かる方法と比較して、微小な測定誤差を無視することが
できない。
【0081】
【発明の効果】本発明にかかる赤外線の検出方法は、以
上のように、温度により抵抗値が変化する抵抗変化素子
を用いて赤外線を検出する方法であって、上記抵抗変化
素子をなす材料として、その温度−抵抗変化特性にヒス
テリシスを伴う材料を使用し、検出対象である赤外線に
よる熱を吸収した状態と、していない状態とで、上記抵
抗変化素子の温度を、初期温度から、温度上昇時のメジ
ャーループ上に達する温度を超えるまで上昇させ、再び
初期温度まで下降させた後に、抵抗変化材料の抵抗値を
取得し、取得された抵抗値間の差から赤外線の変化量を
検出する方法である。
【0082】上記の方法によれば、上記温度−抵抗変化
特性の有するヒステリシス影響、すなわち、非線型応答
動作の影響を少なくすることが可能となる。すなわち、
精度の高い赤外線の検出が実現可能な方法を提供するこ
とができるという効果を奏する。
【0083】本発明にかかる赤外線の検出方法はまた、
上記の方法を前提として、上記抵抗変化材料として、相
転移特性を有する材料を使用する方法である。
【0084】上記の方法によれば、上記材料の相転移点
近傍での大きな熱−抵抗変化特性を利用できるので、高
感度な赤外線の検出が可能となるという効果を加えて奏
する。
【0085】本発明にかかる赤外線の検出方法はまた、
上記の方法を前提として、上記抵抗変化素子の温度を上
昇させる際に、該抵抗変化素子の抵抗値を取得するため
の電源を使用する方法である。
【0086】上記の方法によれば、追加の構成を設ける
ことなく赤外線の高精度な検出が可能となるという効果
を加えて奏する。
【0087】本発明にかかる赤外線検出素子は、以上の
ように、温度により抵抗値が変化し、その温度−抵抗変
化特性にヒステリシスを伴う抵抗変化材料から構成され
る抵抗変化素子と、抵抗変化素子の抵抗値を取得する抵
抗値取得手段と、抵抗変化素子の温度を、初期温度か
ら、温度上昇時のメジャーループ上に達する温度を超え
るまで上昇させた後に、初期温度まで下降させる温度制
御手段と、を備えてなる構成である。
【0088】上記の構成によれば、上記抵抗変化材料の
有するヒステリシス影響、すなわち、非線型応答動作の
影響を少なくすることができ、精度の高い検出が可能な
赤外線検出素子を提供できるという効果を奏する。
【0089】本発明にかかる赤外線検出素子はまた、以
上の構成を前提として、上記抵抗変化材料が相転移特性
を有する材料である構成である。
【0090】上記の構成によれば、上記材料の相転移点
近傍での大きな熱−抵抗変化特性を利用できるので、高
感度な検出が可能な赤外線検出素子を提供できるという
効果を加えて奏する。
【0091】本発明にかかる二次元撮像装置は、以上の
ように、上記説明の赤外線検出素子を備えてなる構成で
ある。
【0092】上記の構成によれば、抵抗変化素子の温度
−抵抗変化特性が有するヒステリシスの影響が小さく、
残像の少ない二次元撮像装置を提供できるという効果を
奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法に用いられる抵抗変化素子の温度
−抵抗変化特性の詳細を示すグラフである。
【図2】本発明における「ヒステリシス温度幅」の定義
を説明する説明図である。
【図3】本発明にかかる赤外線検出素子の概略構成を示
す斜視図である。
【図4】(a)・(b)は、図3に示す赤外線検出素子
の、抵抗値の読み出し回路を示す回路図である。
【図5】図3に示す赤外線検出素子の動作タイミングを
説明する説明図である。
【図6】図5に示す動作タイミングの要部を説明する説
明図である。
【図7】本発明の方法に用いられる抵抗変化素子の温度
−抵抗変化特性の概略を示すグラフである。
【図8】従来の赤外線検出素子の概略構成を示す斜視図
である。
【図9】V−O系化合物の平衡状態を示す図である。
【符号の説明】
2 抵抗変化素子 3a・3b スイッチ素子(温度制御手段) 4 電圧源(電源、温度制御手段) 6a・6b 読み出し回路(抵抗値取得手
段) Rbrf 抵抗変化素子の抵抗値 Rb(T10) 抵抗変化素子の抵抗値 T10 初期温度 T20 初期温度 ΔRbrfdet’ 抵抗値間の差 ΔThis ヒステリシス温度幅
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 37/00 H04N 5/33 H04N 5/33 H01L 27/14 K

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】温度により抵抗値が変化する抵抗変化材料
    からなる抵抗変化素子を用い、該抵抗変化材料の温度−
    抵抗変化特性を利用して赤外線を検出する方法であっ
    て、 上記抵抗変化材料として、その温度−抵抗変化特性の少
    なくとも一部にヒステリシスを伴う材料を使用し、 検出対象である赤外線による熱を吸収した状態と、して
    いない状態との双方で、 上記抵抗変化素子の温度を、初期温度から、上記温度−
    抵抗変化特性のヒステリシスループにおける温度上昇時
    のメジャーループ上に達する温度を超えるまで上昇させ
    た後に、再び初期温度まで下降させ、次いで、 初期温度まで下降させた抵抗変化素子の抵抗値をそれぞ
    れの状態で取得し、 上記それぞれの状態毎に取得された抵抗値間の差から赤
    外線の照射量を検出することを特徴とする赤外線の検出
    方法。
  2. 【請求項2】上記抵抗変化材料として、相転移特性を有
    する材料を使用することを特徴とする請求項1に記載の
    赤外線の検出方法。
  3. 【請求項3】上記抵抗変化素子の温度を上昇させる際
    に、該抵抗変化素子の抵抗値を取得するための電源を使
    用することを特徴とする請求項1または2に記載の赤外
    線の検出方法。
  4. 【請求項4】温度により抵抗値が変化し、かつ、その温
    度−抵抗変化特性の少なくとも一部にヒステリシスを伴
    う抵抗変化材料から構成される抵抗変化素子と、 上記抵抗変化素子の抵抗値を取得する抵抗値取得手段
    と、 上記抵抗変化素子の温度を、初期温度から、上記温度−
    抵抗変化特性のヒステリシスループにおける温度上昇時
    のメジャーループ上に達する温度を超えるまで上昇させ
    た後に、再び初期温度まで下降させる温度制御手段と、
    を備えてなることを特徴とする赤外線検出素子。
  5. 【請求項5】上記抵抗変化材料が相転移特性を有する材
    料であることを特徴とする請求項4に記載の赤外線検出
    素子。
  6. 【請求項6】請求項4または5に記載の赤外線検出素子
    を備えてなることを特徴とする二次元撮像装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100809933B1 (ko) * 2006-10-21 2008-03-06 (주)한비젼 반도체 소자 및 그 제조 방법
JP2009145330A (ja) * 2007-12-12 2009-07-02 Ulis 抵抗型イメージングボロメータを具備する赤外放射を検出する装置、そのボロメータのアレイを具備するシステム、及びそのシステムに統合されるイメージングボロメータを読み出すための方法

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