JP2002220647A - ナノ結晶化素子の製造方法及びナノ結晶化素子 - Google Patents

ナノ結晶化素子の製造方法及びナノ結晶化素子

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JP2002220647A JP2001290107A JP2001290107A JP2002220647A JP 2002220647 A JP2002220647 A JP 2002220647A JP 2001290107 A JP2001290107 A JP 2001290107A JP 2001290107 A JP2001290107 A JP 2001290107A JP 2002220647 A JP2002220647 A JP 2002220647A
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矢吉 肥後
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和希 高島
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Rikogaku Shinkokai
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アモルファス状態の微細な素材を形成し、こ
のアモルファス素材の所定の箇所をナノ結晶化するのに
適した微細な処理方法を提供する。 【解決手段】 原子を熱力学的に非平衡の条件で凝集さ
せ熱力学的に準安定状態のアモルファス素材を形成し、
前記アモルファスの素材に応力を加えてナノ結晶を析出
させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアモルファス素材に
ナノ結晶を析出させたナノ結晶化素子の製造方法、及び
このようにして製造されたナノ結晶化素子に関する。
【0002】
【従来の技術】アモルファス材料の原子配列には、短距
離秩序が見出されるが長距離秩序は見出されない。この
ためアモルファス材料は、短距離秩序が見出される点で
結晶質の材料と共通点を有しているが、長距離秩序が見
出されない点で結晶質の材料とは異なっている。こうし
たアモルファス材料はその物理的あるいは化学的性質に
おいて結晶質と顕著な相違を示し、アモルファス材料の
こうした性質が巧みに利用されて、多くの応用がなされ
ている。
【0003】近年、アモルファス材料の中で著しい発展
を遂げたものとして、アモルファス金属合金(先端材料
事典、工業調査会刊(1995)、pp.110-113参照)とアモル
ファス半導体(アドバンストエレクトロニクスシリーズ
I-2、アモルファス半導体、培風館刊(1994)参照)を挙
げることができる。
【0004】アモルファス金属合金は、その構造上の特
徴により結晶質材料に比べて幅広く組成を選択すること
ができることや、電気抵抗が高く磁性体として高透磁率
が得られるなど、アモルファス材料特有の有利な性質が
利用され、磁気ヘッドや磁気コアなどの磁性材料とし
て、あるいは光磁気記録材料として幅広く用いられてい
る(アドバンストエレクトロニクスシリーズI-6、アド
バンスト・マグネティクス、培風館刊(1994) pp.106-14
8参照)。またアモルファス合金材料は強靭であるなど
の優れた機械的性質を利用した応用がなされている。
【0005】他方、アモルファス半導体の中でもアモル
ファスシリコンは、太陽電池、液晶ディスプレイ駆動用
の薄膜トランジスタなどとして実用化されている有用な
材料である。これらのアモルファス半導体は、低い温度
で膜形成ができるという点で、結晶質の材料に比べて製
造上で有利である。この利点を生かし、より少ない消費
エネルギーでより広い面積の、しかも良質な膜形成がな
され、実用に供されている。
【0006】アモルファス材料はスパッタリングや蒸着
などの方法で、気相からの凝縮により、あるいは水溶液
からめっきを行うことによって薄膜状に形成する方法で
製造することができる。またアモルファス金属合金の場
合は、溶融状態から急冷することによっても製造され
る。
【0007】ところでアモルファス材料は熱力学的には
非平衡の準安定状態にあり、平衡状態にあるものではな
い。このためアモルファス材料を熱処理することによ
り、結晶化させることができる。この性質を利用してア
モルファス材料を熱処理することによって、ナノメータ
(10−9m)サイズの微細な結晶をアモルファス材料中
に析出させたり、あるいはアモルファス相をナノ結晶相
に変換して、アモルファス合金よりもさらに優れた特性
やアモルファス合金と異なる新しい特性を持つ材料を追
求することが行われている。
【0008】例えば特開平1-110707号公報には、単ロー
ルに溶湯を当てて急冷する方法で作ったFe系のアモルフ
ァス合金のリボンを熱処理し、アモルファス相にα-Fe
の微細な結晶(ナノ結晶)を生成させることによって磁
気特性を向上させた磁心の発明が開示されている。
【0009】しかしながら、実際の各種デバイス製造工
程においては、アモルファス材料の結晶化に熱処理の工
程を用いることが許されない場合や望ましくない場合が
少なくない。例えばアモルファス材料を用いた素子と、
温度上昇の許されない他の素子とを一体で製造するデバ
イスの製造プロセスにおいて、アモルファス材料を用い
た素子の特定の位置にナノ結晶を生成させることが望ま
しいとしても、デバイス全体を熱処理するプロセスを適
用することはできない。
【0010】特に最近では、マイクロバイオメディカル
デバイスやマイクロフォトニックスデバイスなどのマイ
クロマシン(Micro-Sized Machine. Micromachine)や
マイクロエレクトロメカニカルシステム(Micro-Electr
o-Mechanical System)において、非常に微小な可動素
子で長期の耐久性が要求されるようになった。この場合
にデバイス全体に処理を施すことはできないので、デバ
イスの可動素子の可動部だけを強化する処理が望まれる
ようになった。
【0011】レーザビームなどを用いて、所定の箇所を
選択的に加熱して熱処理する方法も考えられるが、熱処
理による結晶化には所定の時間を要することから、例え
所定の箇所のみの局所的な加熱を行おうとしても、熱処
理の間に熱が周囲に拡散してしまうという問題点に遭遇
する。
【0012】さらに材料の特性は結晶の方位に依存する
ことから、アモルファス材料にナノ結晶を生成させる場
合には、生成させるナノ結晶の方位を制御でき、方位を
揃えることができることが好ましい。しかしながら、熱
処理を用いるだけでは生成するナノ結晶粒子の方位は制
御することができない。
【0013】一方、熱力学的安定度の低いアモルファス
薄膜では、応力負荷を与えることにより結晶化が生じる
ことが知られており、こうした結晶化はアモルファス膜
の物性や機械的性質を変化させてしまうので、好ましく
ないものと考えられていた。本発明者とその共同研究者
は、アモルファス合金膜に応力を加えて塑性変形を行
い、変形後のアモルファス合金膜が実際に結晶化してい
ることを見出し、その機構の解明手段として、せん断変
形による結晶の生成についての分子力学的シミュレーシ
ョンによる研究を行った(Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 3
9 (2000) pp. L611-L613)。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、アモ
ルファス材料を処理してナノ結晶化する手段として有用
であるものの、熱処理を用いる方法は最近におけるマイ
クロマシンやマイクロエレクトロメカニカルシステムの
ように、非常に微小且つ微細な素子の製造の場合には、
この方法が適用できなくなるという新たな問題点が生じ
てきた。
【0015】そこで本発明者はこのような新たな問題点
を念頭におき、上述のアモルファス材料が応力によって
結晶化する現象について、新たな視点で研究を進めた結
果、従来は好ましくない現象とされてきた応力によって
結晶化する現象を積極的に利用することを着想するに至
った。そしてこの現象を積極的に利用することにより、
従来の熱処理を用いたナノ結晶化材料の製造方法では達
成することのできなかった所定の箇所を選択的にナノ結
晶化することや、生成する隣接ナノ結晶の方位を揃え制
御することができることを見出し、さらに研究を推進し
た結果、本発明を完成させることができた。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明のナノ結晶材料の
製造方法は、準安定状態のアモルファス素材に、前記ア
モルファスの素材に応力を加えてナノ結晶を析出させる
工程を備えたことを特徴とする。
【0017】本発明は、熱力学的に準安定状態のアモル
ファスの素材に応力を与えることによって、アモルファ
スを構成する原子に局所的にわずかな移動をさせるだけ
でアモルファス相にナノ結晶を生成させるものである。
このため、本発明においては熱力学的に準安定状態のア
モルファス素材について、その安定度の制御されたもの
を用いることが好ましい。
【0018】本発明によれば、アモルファス素材の特定
の箇所にのみ応力を加えることによりナノ結晶を析出さ
せ、アモルファス素材の残りの部分はアモルファスの状
態を保つようにすることができる。このようにしてアモ
ルファス素材の結晶化を行うことにより、材料の強度を
高めることができる。
【0019】また本発明によれば、アモルファス素材に
加える応力を選ぶことにより、析出するナノ結晶の結晶
方位を特定の方向に揃えることができる。ここに応力は
テンソル量なので、アモルファス素材の各部に加える応
力テンソルの主軸とその主値とを選んで、析出する結晶
粒子が特定の方位に揃うようにすればよい。
【0020】このような本発明の応力を与えて結晶化す
る方法は、析出する結晶の方位を揃えることができる点
においても、単に加熱昇温して結晶化する方法では得ら
れない利点を有している。
【0021】本発明によれば、マイクロマシンなどの素
子において応力の強く加わる部分だけを局所的に結晶化
して強度を高め、他の箇所はナノ結晶の生成をさせない
で、そのままに保つようにすることができる。
【0022】例えば光を反射するミラー部と応力の加わ
る変形部とを有するアモルファスシリコンで形成された
光スイッチ素子に対して、変形部を結晶化することによ
り強化する一方で、ミラー部は結晶化を行わずアモルフ
ァス状態を保つことにより、平坦な鏡面を維持すること
ができる。
【0023】このように、本発明のナノ結晶素子の製造
方法は、アモルファス素材そのものがフィルム状または
繊維状をなす場合に特に好ましく適用でき、その特徴を
生かすことができる。
【0024】また本発明のナノ結晶化素子は、アモルフ
ァス素材をナノ結晶化して機械的に強化した変形部と、
アモルファス状態を保った非変形部とを有していること
を特徴とするものである。
【0025】本発明のナノ結晶化素子を用いれば、素子
のうち機械的強度の必要な箇所が強化されている一方
で、アモルファス状態が好ましい箇所はアモルファス状
態がそのまま保たれているので、例えば光スイッチやそ
の他のマイクロエレクトロメカニカルデバイスやマイク
ロマシンの可動部などの機能素子として好ましく用いる
ことができる。
【0026】本発明において、アモルファス素材は磁性
を有するものであってもよい。本発明により、強磁性を
有するアモルファス素材に応力を与えてナノ結晶化する
ことができる。こうすることによって磁気特性や機械的
特性の向上や特性の変化(軟磁性と硬磁性)が可能とな
る。また本発明によれば所定の箇所だけのナノ結晶化を
行うこともできる。
【0027】また本発明においては、アモルファス素材
が常磁性であって、アモルファス素材に応力を加えるこ
とによって、アモルファス相中に強磁性のナノ結晶粒子
を析出させるものであってもよい。例えば常磁性を有す
るNi-Pのアモルファス素材に応力を与え、強磁性を有す
る金属Niのナノ結晶を析出させることができる。
【0028】この方法により、常磁性体に強磁性粒子を
析出させた素子を製造することができ、例えば素子の一
部のみを強磁性にしたナノ結晶化素子を製造して、磁気
的に操作可能なマイクロマシンの素子などに用いること
ができる。
【0029】また本発明においては、アモルファス素材
に応力を加える方法として、イオン打ち込み装置を用
い、イオンを加速してアモルファスの表面に打ち込むこ
とによってナノ結晶化するイオン打込み法を特に好まし
く用いることができる。
【0030】アモルファス素材の表面にイオンが打込ま
れると、その表面部ににナノ結晶の析出を得ることがで
きる。これはイオンが打込まれることによって表面部に
応力が発生し、上述の場合と同様にナノ結晶の析出が得
られるものと考えられる。
【0031】イオン打込み装置を利用すれば、イオン種
の選択、打込むイオンの運動エネルギー、打込み量など
の各打込み条件を任意に選択できるので、アモルファス
素材をナノ結晶化するのに非常に好都合である。この方
法を用い、イオンビームを絞ることによって、アモルフ
ァス素材の所定の箇所だけに打込みを行って、所定の箇
所だけを結晶化することや、イオンの打ち込みの深さを
調整することによって、所定の表面層だけに応力を加
え、表面層だけをナノ結晶化することができる点でも好
都合である。
【0032】イオン打込み法によれば、イオン打込み装
置のイオンビームを絞り、対象とする領域にわたって掃
引することにより、掃引した領域をナノ結晶化すること
ができる。しかもビームの入射角と掃引の方向を選ぶこ
とによって、結晶化するナノ結晶粒子の方位を制御する
ことが可能である。
【0033】さらにイオンビームの掃引の間隔を選ぶこ
とにより、結晶化状態やその分布を細かく制御すること
ができる。加えてイオンを打込む条件を制御することに
より、ナノ結晶のサイズを調整することも可能である。
【0034】イオン打込み法には、アモルファス素材に
応力を与えてナノ結晶化を可能にするという特徴に加え
て、アモルファス素材の化学組成、打込むイオン種およ
びその打込み量を選ぶことにより、イオンの打ち込まれ
た層の化学組成を設定できるという特徴がある。従って
本発明により、このようにして形成される化学組成とし
ては、従来の溶融して合金化するなどの方法では得るこ
とのできなかった組成が可能となり、これによって新た
な材料設計が可能となった。また厚さ方向の結晶化の度
合やイオン打込みム利用について、所定の分布を持たせ
ることも可能となった。
【0035】本発明の磁気記録媒体の製造方法は、表面
層に磁性原子を有するアモルファス層を備えた基体の表
面にイオンビームを打ち込むことにより、前記アモルフ
ァス層の少なくとも表面部に微小領域に分けられた強磁
性領域を生成することを特徴とする。
【0036】例えばアモルファス素材が磁性原子を含有
する常磁性体であり、これにイオン打ち込みを行なうこ
とにより、強磁性を有するナノ結晶粒子を析出させるこ
とができる。この場合に、打込むイオンとしてCoなどの
遷移金属イオンを用い、強磁性を有するナノ結晶粒子の
組成を調整することができる。また希土類イオンを打ち
込んで磁気特性を調整することもできる。
【0037】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施の形態を述べ
る。
【0038】本発明におけるアモルファス素材は、原子
を熱力学的に非平衡の条件で凝集させて熱力学的に準安
定のアモルファス状態の得られたものを用いればよい。
そのようなアモルファス素材としては、スパッタリン
グ、蒸着、各種CVDなどの気相から薄膜状に原子を凝集
させる方法によるもの、あるいは水溶液からめっきを行
うことによって薄膜状に原子を凝集させたものを用いる
ことができる。
【0039】なおアモルファス素材が金属合金の場合に
は、スパッタリング、蒸着、CVD、めっきなどの上記薄
膜形成の方法によって製造したものが好ましいが、この
ほかに溶融状態から急冷してリボン状に形成する方法で
作製したものを用いることも可能である。またアモルフ
ァス素材がアモルファスシリコン膜の場合は水素化シリ
コンガスを用いたプラズマCVDのほか光CVD、熱CVDなど
を用いた各種CVDや反応性スパッタリングなどの方法を
用いて形成することができる。
【0040】このようにして形成するアモルファス素子
の非平衡準安定状態における安定性の程度は、素材の組
成、例えば素材がアモルファス金属合金の場合にはNi-P
中のP含有量やFeCo-B中のB含有量など、また素材がアモ
ルファスシリコンの場合にはSi-H中のH含有量を選ぶこ
とによって制御することができる。またアモルファスの
生成条件を選ぶことによっても制御することができる。
本発明のアモルファス素材の応力印加による結晶化の程
度は、このようして制御された非平衡準安定状態のアモ
ルフアス素材の安定性を制御することによって調整する
ことができる。
【0041】本発明においてアモルファス素材に加える
応力は特に限定されないが、その大きさは素子の使用時
に通常加わる応力よりも大きいことが好ましく、また材
料の破壊に至る応力よりも小さな応力でなければならな
い。そして応力の印加に伴う微小な原子移動によってア
モルファス中に微細な結晶を生成させる応力であればよ
い。先に述べたように、応力によるナノ結晶化の程度
は、用いるアモルファス素材の成分組成やアモルファス
生成条件を選んで非平衡準安定状態にあるアモルフアス
素材の安定性の程度を制御することにより、調整するこ
とができる。
【0042】本発明においてアモルファス素材に加える
応力の形としては、平面ひずみを発生させる応力、ある
いは平面応力を主成分とする応力、ねじりおよびそれら
を複合した応力を用いることが好ましい。平面ひずみを
つくる応力を印加することにより、生成する結晶粒子の
方位を平面ひずみの面の方位に揃えることができる。応
力を与えてナノ結晶を析出させることによって、近接す
る結晶粒子は、単に一つの結晶軸の方位を揃えるだけで
はなく、互いの対応する各結晶軸を共に揃えることがで
きる。従って生成するナノ結晶の方位が揃うことによる
顕著な効果が得られる。
【0043】本発明において、アモルファス素材中にナ
ノ結晶を生成させるための応力印加時間は特に制限され
るものではないが、本発明ではナノ結晶化の機構として
長時間を要する原子の拡散は主要な役割を果していない
ので、ナノ結晶は短時間に生成させることができ、この
ため応力印加時間は例えば分ないし秒のオーダーあるい
はそれ以下とすることが可能である点に本発明の一つの
特徴がある。
【0044】本発明においては、応力による結晶化の工
程を、アモルファス素材の温度を適度に上昇させた条件
で行うことができる。アモルファス素材の温度を上昇さ
せた状態で応力を加えて結晶化を行うと、生成する結晶
粒子を大きくすることができるので、こうすることによ
って、生成する結晶粒子の大きさを制御することができ
る。
【0045】本発明におけるナノ結晶は、平均径が1nm
より大きく1000nm未満であることが好ましい。平均径が
この範囲より小さいと、結晶としての性質を十分に得る
ことが困難となり、またこの範囲より大きいと、ナノ結
晶の特徴である材料の強度を高めることが困難となり、
高密度の磁気記録材料を得ることも困難となる。より好
ましいナノ結晶の平均径は10nm以上100nm以下である。
【0046】本発明において、アモルファス素材の特定
箇所に応力を印加する方法としては、応力印加冶具を直
接にアモルファス素材の特定の箇所に接触させ、機械的
応力を加える方法を用いることができる。またアモルフ
ァス素材に超音波を印加し、超音波の干渉によりアモル
ファス素材の特定の箇所に応力を発生させる方法を用い
ることもできる。さらにアモルファス素材の一部にレー
ザ照射して熱膨張を生じさせることによりアモルファス
素材の特定の箇所に応力を発生させる方法を用いること
もできる。
【0047】また本発明において、アモルファス素材に
応力を加えて結晶化を行う工程を、局所的に温度を高め
て行うことができる。加熱の手段としては、例えばレー
ザビームがアモルファス素子の所定の箇所にのみ照射さ
れるように絞り込んだレーザによる照射を用いることが
できる。
【0048】本発明においては、アモルファス素材の表
面に、イオンビーム打ち込み器を用いたイオン打込みの
工程を用いることによって、その表面に応力を与え、ナ
ノ結晶化する方法を特に好ましく用いることができる。
【0049】このイオン打込み法に用いるイオン打込み
装置は、半導体に不純物ドープや微細加工を行うための
半導体製造プロセス装置として広く用いられてきたこと
から、その技術が十分に確立されており、(例えばVLSI
製造技術 日経BP社 1989年刊、 VLSIプロセス装置ハ
ンドブック 工業調査会 1990年刊、 超微細加工技術
オーム社 1997年刊など参照)装置としても洗練され
たものが利用でき、その新しい応用のための条件がよく
整えられている。実際、イオン打込み装置の新しい応用
として、アモルファス素材にイオン打込みを行ってアモ
ルファス素材のナノ結晶化を行うには、イオン種の選
択、打込むイオンの運動エネルギー、打込み量などの各
打込み条件を選択することが望まれるが、イオン打込み
装置ではその選択が容易であり、この目的に好都合であ
ることがわかった。また、この方法を用いればイオンビ
ーム絞ることにより、アモルファス素材の所定の箇所だ
け打込みを行って所定の箇所のみを結晶化することや、
所定の表面層だけにイオンが打ち込まれるようにして、
所定の表面層だけに応力を加え、表面層だけをナノ結晶
化することができる点でも好都合であることがわかっ
た。なお、金属イオンなどの陽イオンは正電荷を有して
いるので正電荷を運んでくるが、アモルファス素材が金
属の場合はその電荷が容易に放電できるので電荷の蓄積
は容易に回避できる。またアモルファス素材が絶縁性の
高い場合には例えば電子を与えて中和すればよい。
【0050】イオン打込み法によれば、イオン打込み装
置のイオンビームを対象とするアモルファス素材の領域
にわたって掃引することにより、その領域をナノ結晶化
することができる。そしてビームの入射角と掃引の方向
を選ぶことによって、結晶化するナノ結晶粒子の方位を
制御可能であり、さらにビーム間隔を揃えることによ
り、その結晶化状態を細かく制御できる。
【0051】アモルファス素材の具体例として、Ni-
Pのアモルファス素材についての実験では、液体窒素温
度(77K)でイオン打込みを行った場合には結晶化が
見出されなかったが、アモルファス素材の温度を140
K以上にすると数nmないし10nmの粒子サイズが得
られ、アモルファス素材の温度を150℃(423K)
程度まで高めても粒子サイズがあまり変化しないとい
う、興味ある結果を得ている。従ってアモルファス素材
の温度は精密な制御を行わず、例えば室温で処理するこ
とによっても、安定したサイズのナノ粒子を得ることが
できる。なお、イオンビームの加速電圧や打込む粒子の
量などの制御によって、ナノ粒子のサイズなど結晶化状
態の制御が可能である。
【0052】イオン打込み法では、加速できるすべての
イオンを打ち込みの対象とすることができる。イオン打
込み法では、アモルファス素材に応力を与えてナノ結晶
化を可能にするだけでなく、アモルファス素材の化学組
成、打込むイオン種およびその打込み量を選ぶことによ
り、イオンの打ち込まれた層の化学組成を設定できると
いう特徴がある。本発明により、このようにして形成さ
れる化学組成としては、従来の溶融して合金化するなど
の方法では得ることのできなかった組成が可能となり、
これによって新たな材料設計が可能となった。また厚さ
方向の結晶化の度合やイオン打込みム利用について、所
定の分布を持たせることも可能となった。
【0053】この場合に、打込むイオンは単一種とする
こともできるが、複数種のイオンを打込むこともでき
る。その方法としては、例えばイオン打込みを繰り返す
方法や複数のイオン源からのイオンビームを照射する方
法を用いることができる。この場合に、複数種のイオン
の打込み深さを変えることによって、表面から深さ方向
に化学組成を異ならせることも可能である。
【0054】このように本発明におけるイオン打ち込み
を用いたアモルファス素材の特性制御によれば、ナノ結
晶化に加えてその化学組成制御が可能であるため、例え
ば磁性体の磁気特性である飽和磁化、保磁力、透磁率な
どを、ナノメータのオーダーの微小サイズで大きく変化
させることが可能となった。しかも掃引を行なえば広い
面積の処理が可能である。従ってビットサイズがナノメ
ータのオーダーの高密度の記録であり、記録容量がTB
(テラバイト)に達する大容量の磁気記録媒体の基礎技
術を得ることができた。またこのイオン打ち込み技術
は、この高密度記録に用いる狭ギャップの磁気ヘッドの
加工技術としての利用が可能である。
【0055】また本発明におけるイオン打ち込みを用い
たアモルファス素材の特性制御によれば、ナノ結晶化に
加えてその化学組成制御が可能であり、処理する個所を
任意に絞り込むことができるので、マイクロマシンの部
品などを、加工の容易な状態で加工し形成した後、イオ
ン打ち込みによって必要な箇所を強化することが可能と
なった。
【0056】本発明においては、アモルファス素材に応
力を加えて結晶化した後に、必要に応じて適度の熱処理
を行ってもよい。熱処理の手段としては、例えば上記レ
ーザ照射を用い、アモルファス素子の所定の箇所にのみ
照射を行う方法を用いることができる。
【0057】本発明は、マイクロマシンやマイクロエレ
クトロメカニカルシステムに好適なナノ結晶化素子を提
供する。マイクロマシンやマイクロエレクトロメカニカ
ルシステムのサイズは微小化が進み、素子の大きさとし
てミリメータ、ミクロンメータ領域からナノメータ領域
へと進んでおり、上述の本発明の素子の製造方法はこう
した微小サイズの素子の製造に適するものである。マイ
クロマシンやマイクロエレクトロのメカニカルシステム
の素子の製造においては、フォトリソグラフィー技法や
各種エッチング技法を駆使した表面マイクロマシーニン
グのプロセスと組み合わせて、上述した本発明の製造方
法を用いることができる。
【0058】また本発明のナノ結晶化素子の製造方法に
おいては、こうした技法のほかに収束イオンビーム加工
を用いることができる。収束イオンビーム加工を用いる
ことにより、従来は困難であった微細加工を精度よく行
うことができる。
【0059】本発明は、磁性を有するアモルファスを用
いた素子、例えば磁気ヘッドの製造に用いることができ
る。スパッタなどの方法で形成した磁気ヘッドコアに対
し、本発明の方法を用いれば磁気ヘッドの特性を決める
主要な部分、例えば磁気ギャップの近傍のみをナノ結晶
化して特性を向上させることができる。
【0060】本発明の方法を用いれば、応力を与えるこ
とによって所定の箇所のみをナノ結晶化することができ
るので、これによって磁気特性を空間的に任意のパター
ンで変化させた磁性体が製造でき、磁性体の新たな用途
が見込まれる。特にアモルファス状態では常磁性であっ
て、応力を加えることによりアモルファス相中に強磁性
のナノ結晶粒子を析出させることのできる材料(例えば
Ni-P)を用いれば、磁気特性の空間的変化の顕著な材料
を得ることができる。また高密度の磁気記録媒体の製造
が可能である。
【0061】次に本発明の実施例を述べる。 (実施例1)無電解めっきにより、Al-Mg基板上に厚さ1
2μmのNi-Pアモルファス合金薄膜を形成した。このNi-P
のアモルファス薄膜を基板からはずし、このアモルファ
ス薄膜から、図1の電子顕微鏡写真に示す長さ50μm、幅
10μmのカンチレバー(片持ち梁)形状のアモルファス
膜サンプルを収束イオンビーム加工機を用いて切り出し
た。
【0062】このサンプルに対して、室温、大気中にて
矢印で示した曲げ荷重の負荷を与えたところ、図2の電
子顕微鏡写真に示すように塑性変形した。この変形後の
サンプルから、図3に示す位置と方位にて、電子線回折
および透過電子顕微鏡察のための試料片の採取を、収束
イオンビーム加工機を用いて行った。
【0063】このサンプルの電子線回折パターンを図4
(a)に示す。図4(a)の電子線回折パターンには、アモル
ファス構造を示すハローリングに加えて、結晶相からの
反射がスポット状に得られていることがわかる。
【0064】次に図4(a)の電子線回折パターンから結像
させた暗視野像の電子顕微鏡写真を図4(b)に示す。図4
(b)から、結晶相がサイズ50nm程度のナノ結晶から形成
されていることがわかる。比較のためにアモルファス薄
膜サンプルに曲げ荷重負荷を与える前の電子線回折パタ
ーンと電子顕微鏡写真をそれぞれ図5の(a)および(b)に
示す。図5(a)の電子線回折パターンはアモルファス構造
を示すハローリングのみであり、また図5(b)の電子顕微
鏡写真には結晶相は見られない。
【0065】図4(a)の電子線回折パターンから、結晶
相の結晶構造を同定した結果、結晶構造は面心立方格子
(FCC)であり、観察面がFCCの(111)面と平行であっ
た。そして結晶相からの反射がスポット状であり、電子
ビームの径は結晶のサイズである50nmよりも十分に大き
いことから、近接する結晶は一つの主軸だけでなく複数
の主軸をそれぞれ揃えていることがわかる。
【0066】このようにして、アモルファスに応力負荷
を与えて微細な結晶の生成、即ちナノ結晶化を行うこと
ができ、しかも応力の大きさや方位を制御することによ
り、析出する結晶の方位を制御することができることが
わかる。
【0067】このナノ結晶化によって機械的に強化され
たカンチレバー形状のNi-Pは、マイクロマシンやマイク
ロエレクトロメカニカルシステムに用いられる可動素子
として用いることができる。
【0068】実施例1において、無電解めっきによって
形成したアモルファス膜は常磁性体であり、これに応力
負荷を与えて生成されたFCC構造のナノ結晶は強磁性を
有する金属ニッケルであった。実施例1によれば、常磁
性のアモルファス素材に応力を与えることにより、常磁
性体の中に強磁性を有する微小粒子を生成することがで
き、しかもその方位を揃えることができる。従ってこの
方法を用いれば、高密度の磁気記録媒体の製造が可能で
ある。
【0069】(実施例2)図6は本発明の実施例におけ
るアモルファスアルミ合金の一部をナノ結晶化して構成
した微小光スイッチの素子の要部であるミラー素子の製
造工程を模式的に示す図である。
【0070】この図6の(a)に示すように、シリコンウ
エーハ61の上に酸化シリコン膜62をプラズマCVDによっ
て形成し、次いで酸化シリコン膜にレジストを塗布し、
露光、現像、エッチングの方法により、図6(b)に示すよ
うに酸化シリコン膜の一部をパターン状に除去した。
【0071】次にこの一部がパターン状に除去された酸
化シリコン膜上にアモルファスアルミ合金(Cu含有のAl
合金)の膜をスパッタによって形成した。次いでこのア
モルファスアルミ合金膜にレジストを塗布し、露光、現
像、エッチングする方法により、アモルファスアルミ合
金膜の一部を除去して図6(c)に示したような梁の長さ20
μm、幅4μm、厚さ2.5のカンチレバー形状のアモルファ
スアルミ合金のパターン63aを形成した。さらにエッチ
ングを行って図6(d)に示すように酸化シリコン層を除去
することによって強化処理前のミラー素子63bを得た。
続いてこの強化前のミラー素子63bの屈曲部631bに曲げ
荷重の応力を加えることによって、この部分にナノ結晶
化部64を形成し、図6(e)に示すように機械的に強化され
たミラー素子63を得た。図6(e)において、ミラー素子63
はアモルファス状態で平坦面のミラー部632と、基板に
接続されナノ結晶化されて強化された屈曲部631とを有
している。
【0072】このミラー素子63には導電性を付与し、そ
のミラー部632の近傍を電極とすることができる。そし
てもう一つの電極をこのミラー素子のミラー部に対向さ
せて配置すれば、電極間の吸引力や反発力を利用してミ
ラー素子を駆動することができる。またミラー素子の電
気的な駆動と共に適当なストッパを設ければ、ミラー素
子は例えば二つの停止位置の間をスイッチさせることが
できる。このスイッチを光路の分岐に配置すれば、この
分岐において光の進路を切り換える光スイッチとして動
作させることができる。
【0073】このミラー素子63をこうした光スイッチに
用いた場合には、屈曲部631の変形により動作させるこ
とができ、屈曲部631はナノ結晶化によって機械的に強
化されているので安定且つ耐久性が良好である。またミ
ラー部632はアモルファス状態の良好な表面性を保って
いるので光の反射率はきわめて良好である。
【0074】(実施例3)試料として、Al-Ni基板上に
無電解メッキ法により作製した厚さ12μmのNiが11.5wt
%のNi-Pアモルファス合金薄膜を形成した。図7(a)に
アモルファス薄膜の透過型電子顕微鏡写真を示す。この
Ni-P合金薄膜の電子線回折像を示す図7(b)にはアモル
ファス構造を示すハローパターンのみが観察され、高分
解能像にも結晶相は観察されなかつた。
【0075】次にこのNi-Pアモルファス合金薄膜に対
し、図8(a)に模式的に示したイオンビーム打込み機か
ら35kVで加速されたGaイオンの集束イオンビーム装置に
よって、試験片厚さが約100 nmとなるまで加工を行っ
た。なお図8(b)にはイオンビームの集束を行わないイ
オンビーム打込み機を併せて示した。
【0076】図8(a)において、イオン源81aから放出
されたイオンは電源82aの発生する電圧によって加速さ
れ、83aの質量分析器によつてイオン種が選択され、84a
の加速管で電源85aの電圧で加速され、86aの集束レンズ
で集束され,87aの中性ビームトラップおよびゲートを
経て88a1のYスキャナ、89のビームトラップ、88a2のXス
キャナを経て試料80aにイオンが打ち込まれる。図8
(b)はビーム集束の機能を省略したほかは同様の装置
であって、イオン源81bから放出されたイオンは電源82b
の発生する電圧によって加速され、83bの質量分析器に
よつてイオン種が選択され、84bの加速管で電源85bの電
圧で加速され、88a1のYスキャナ、88a2のXスキャナを経
て試料80aにイオンが打ち込まれる。
【0077】図9は、このNi-Pアモルファス試料の集束
イオンビームによる加工と加工された試料の電子線によ
る観察の形態を模式的に示したものである。図10はこの
集束イオンビーム加工材の暗視野像(a)および制限視野
電子線回折像(b)を示す。電子線回折像図10 (b)には、
ハローパターンに加えて、結晶像からの回折斑点が認め
られる。しかもこの結晶相からの反射が多結晶を示すデ
バイ・リングになっておらず、この視野内にある結晶が
互いに同じ方位を有していることを示し、結晶相の粒子
は互いの結晶方位を揃えることができることを示してい
る。
【0078】また、この回折パターンから結像させた暗
視野像を解析した結果、結晶粒径が約5 nmのナノ結晶相
が試料中に高密度に析出していることが明らかとなっ
た。また電子線回折パターンの解析の結果、結晶相はFC
C構造を有しており、観察面がFCCの(111)面と平行とな
る結晶方位関係の存在が確認された。従って集束イオン
ビーム加工時のビーム入射方向と得られたナノ結晶相の
方位には、特定の方位関係が存在していることがわかっ
た。このことから、集束イオンビーム加工を用いること
により、方位の揃ったナノ結晶を析出でき、しかもその
方位を制御することが可能であることがわかった。
【0079】(実施例4)次に上記Gaイオンの集束イオ
ンビームの照射方向をNi-Pアモルファス膜面に対する角
度を微小角とし、この集束イオンビームでNi-P膜面を一
定間隔で直線的に掃引することによって、Ni-P膜面への
Gaイオン打込みを行った。この結果、図11の透過型電子
顕微鏡写真に示すように、Ni-P膜面をFCC構造の(111)
面とし、集束イオンビームの掃引方向を[110]方向とす
るナノ結晶を析出させることができた。図11において白
い部分が析出した結晶であり、矢印の方向が掃引方向で
あるとともに、確認されたナノ結晶の[110]方位であ
る。また、この試料の磁気特性測定の結果、このナノ結
晶化によって試料に磁性が生じたことが確認された。
【0080】(実施例5)上記Gaイオンの集束イオンビ
ームの照射方向をNi-Pアモルファス膜面に対し45°の角
度とし、この集束イオンビームでNi-P膜面を一定間隔で
直線的に掃引することによって、Ni-P膜面へのGaイオン
打込みを行った。この結果、図13の透過型電子顕微鏡写
真に示すように、Ni-P膜面をFCC構造の(211)面とし、
集束イオンビームの掃引方向を[110]方向とするナノ結
晶を析出させることができた。図11において白い部分が
析出した結晶であり、矢印の方向が掃引方向であるとと
もに、確認されたナノ結晶の[110]方位である。また、
この試料の磁気特性測定の結果、このナノ結晶化によっ
て試料に磁性が生じたことが確認された。
【0081】このようにイオンビームとアモルファス面
との間の角度を選ぶことにより、析出するナノ結晶はさ
まざまの結晶方位に制御可能であることがわかった。
【0082】(実施例6)Ni-Pアモルファス合金薄膜に
対し、図8(b)に模式的に示したイオンビーム打込み機
により、イオン打込みを行った。このイオンビーム打込
み機は加速電圧は図8(a)のものと同様であるが、イ
オンビームの集束を行わないものである。このイオン打
ち込み機によつて、図14の透過型電子顕微鏡写真に示す
ように、Ni-P膜面に結晶の析出が得られた。図14におい
て白い部分が析出した結晶である。図14の左上に示され
た小さな図は、この試料の電子線回折の結果を示すもの
で、図15はこれを拡大して示したものである。この電子
線回折の結果から、これらのナノ結晶は、FCC構造で結
晶方位が互いにランダムとみなすことができることがわ
かった。また、この試料の磁気特性測定の結果、このナ
ノ結晶化によって試料に磁性が生じたことが確認され
た。
【0083】なお、上記実施例ではアモルファス素材に
打ち込むイオンとして便宜上Gaイオンを用いた例を示し
たが、本発明においては加速可能でアモルファス素材に
打ち込むことにより本発明の作用効果の得られるすべて
のイオンが本発明の範囲に属することは勿論である。
【0084】
【発明の効果】本発明によれば、熱処理によらずにアモ
ルファス材料のナノ結晶化を行うことができるので、例
えば加熱が好ましくないアモルファス材料に対してナノ
結晶化処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Ni-Pアモルファス膜のサンプルを示す図であ
る。
【図2】 応力負荷を与えて塑性変形させたNi-P膜のサ
ンプルを示す図である。
【図3】 応力負荷を与えて塑性変形させたNi-P膜か
ら、電子線回折および透過電子顕微鏡察のための試料片
の採取する位置と方位を示す図である。
【図4】(a)は採取した試料片の電子線回折パターンを
示す図であり、(b)は電子線回折パターンから結像させ
た暗視野像の電子顕微鏡写真である。
【図5】 (a)はNi-Pアモルファス薄膜サンプルの曲げ
荷重負かを与える前の電子線回折パターンを示す図であ
り、(b)はその電子顕微鏡写真である。
【図6】 アモルファスアルミ合金の一部をナノ結晶化
して構成した微小光スイッチの素子の要部であるミラー
素子の製造工程を模式的に示す図である。
【図7】 (A)はNi-Pアモルファス薄膜の透過型電
子顕微鏡写真、(B)はその電子線回折像を示す図であ
る。
【図8】 イオンビーム打込みを模式的に示した図であ
る。
【図9】 Ni-Pアモルファス試料の集束イオンビームに
よる加工と加工された試料の電子線による観察の形態を
模式的に示した図である。
【図10】 集束イオンビーム加工されたNi-Pアモルフ
ァス試料の暗視野像(A)および制限視野電子線回折像
(B)を示す。
【図11】 GaイオンのアモルファスNi-P膜面に対する
打込み角度を微小角とし、Ni-P膜面を矢印の方向に一定
間隔で直線的に掃引してGaイオン打込みを行った試料の
透過型電子顕微鏡写真である。
【図12】 GaイオンのNi-Pアモルファス膜面に対する
打込み角度を微小角とし、Ni-P膜面を矢印の方向に一定
間隔で直線的に掃引してGaイオン打込みを行った試料の
電子線回折パターンである。
【図13】 GaイオンのNi-Pアモルファス膜面に対する
打込み角度を45°とし、Ni-P膜面を矢印の方向に一定間
隔で直線的に掃引してGaイオン打込みを行った試料の透
過型電子顕微鏡写真である。
【図14】 ナノ結晶粒子の方位がランダムに析出した
Ni-P試料の電子顕微鏡写真である。
【図15】 ナノ結晶粒子の方位がランダムに析出した
Ni-P試料の電子線回折パターンである。
【符号の説明】
61…シリコンウエーハ、62…酸化シリコン膜、63…ミラ
ー素子、63a…アモルファスアルミ合金のパターン、63b
…強化処理前のミラー素子、631, 631a…屈曲部、632…
ミラー部、64…ナノ結晶化部 80a,80b……試料、81a, 81b……イオン源、82a,82b……
電源、83a,83b……質量分析器、84a,84b……加速管、85
a,85b……電源、86a……集束レンズ、87a……中性ビー
ムトラップおよびゲート、88a1,88b1……Yスキャナ、89
a……ビームトラップ、88a2,88b2……Xスキャナ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B82B 3/00 B82B 3/00 5E040 C22C 45/04 C22C 45/04 C C22F 3/00 C22F 3/00 G02B 26/08 G02B 26/08 E G11B 5/64 G11B 5/64 5/84 5/84 Z H01F 1/047 5/127 Y // G11B 5/127 5/187 F 5/187 H01F 1/06 J Fターム(参考) 2H041 AA14 AA16 AB14 AC06 AZ02 AZ08 5D006 BB01 BB07 EA03 5D093 FA12 HA14 HA17 HA18 HA19 JA01 JC06 JC12 5D111 BB48 FF04 FF14 FF39 FF42 FF49 JJ04 JJ05 JJ08 5D112 AA05 BB01 BB07 EE01 GA23 5E040 BD03 CA06 HB16

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 準安定状態のアモルファス素材に応力を
    加えることによりナノ結晶を析出させる工程を備えたこ
    とを特徴とするナノ結晶化素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記ナノ結晶の析出をアモルファス素材
    の特定の箇所にのみ応力を加えてナノ結晶を析出させ、
    前記アモルファス素材の残りの部分はアモルファスの状
    態を保つことを特徴とする前記請求項1記載のナノ結晶
    化素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記アモルファス素材に加える前記応力
    を選ぶことにより析出する前記ナノ結晶の結晶方位を特
    定の方向に揃えることを特徴とする請求項1または2の
    いずれか1項記載のナノ結晶化素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記アモルファス素材がフィルム状また
    は繊維状であることを特徴とする請求項1ないし3のい
    ずれか1項記載のナノ結晶化素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記ナノ結晶化素子が光を反射するミラ
    ー部と応力によって変形する変形部とを有する光スイッ
    チ素子であり、前記変形部をアモルファス素材のナノ結
    晶化により強化し、前記ミラー部はナノ結晶化を行わず
    アモルファス状態を保つことにより鏡面の状態を維持す
    ることを特徴とする請求項4記載のナノ結晶化素子の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 アモルファス素材をナノ結晶化して機械
    的に強化した変形部と、アモルファス状態を保った非変
    形部とを有していることを特徴とするナノ結晶化素子。
  7. 【請求項7】 前記アモルファス素材が強磁性を具備し
    たことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記
    載のナノ結晶素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記アモルファス素材が磁性原子を含有
    する常磁性体であり、析出させる前記ナノ結晶が強磁性
    を有する結晶であることを特徴とする請求項1ないし3
    のいずれか1項記載のナノ結晶素子の製造方法。
  9. 【請求項9】 アモルファス素材にイオンビームを打ち
    込むことにより、ナノ結晶化することを特徴とするナノ
    結晶化素子の製造方法。
  10. 【請求項10】 表面層に磁性原子を有するアモルファ
    ス層を備えた基体の表面にイオンビームを打ち込むこと
    により、前記アモルファス層の少なくとも表面部に微小
    領域に分けられた強磁性領域を生成することを特徴とす
    る磁気記録媒体の製造方法。
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