JP2002216102A - 仏像の仮想修復システム - Google Patents

仏像の仮想修復システム

Info

Publication number
JP2002216102A
JP2002216102A JP2001013881A JP2001013881A JP2002216102A JP 2002216102 A JP2002216102 A JP 2002216102A JP 2001013881 A JP2001013881 A JP 2001013881A JP 2001013881 A JP2001013881 A JP 2001013881A JP 2002216102 A JP2002216102 A JP 2002216102A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
image data
tomographic
data
dimensional
virtual
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001013881A
Other languages
English (en)
Inventor
Kazuaki Ohashi
一章 大橋
Takashi Kawai
隆史 河合
Yusuke Sakuraba
裕介 櫻庭
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Waseda University
Original Assignee
Waseda University
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Waseda University filed Critical Waseda University
Priority to JP2001013881A priority Critical patent/JP2002216102A/ja
Publication of JP2002216102A publication Critical patent/JP2002216102A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Analysing Materials By The Use Of Radiation (AREA)
  • Processing Or Creating Images (AREA)
  • Image Processing (AREA)
  • Image Analysis (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 CTによる断層画像及び/又はCGによる3
次元(立体)画像を調べることで、仏像等の木造美術品
の内部構造まで、従来不可能であった部分まで再現で
き、或いは当初の姿を復元し得るデータ保存システムを
提供すること 【解決手段】 CTスキャナを用いて仏像等の所定間隔
の断層画像を取得し(S21)、収集した仏像等の所定
間隔の各断層画像を補正し、断層画像から修復部分のみ
を除去する(S22)。これら複数の2次元断層画像を
積層して3次元立体画像を構築する(S23)。更に、
構築した3次元画像をスムージング等し、不要なポリゴ
ンを削除しデータ量を削減して(S24)、バーチャル
リアリティ(VR)画像へ変換する(S25)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、CT(Compu
ter Tomography)スキャン及びCG(C
omputer Graphics)を用いた美術工芸
品のデータ保存システム、仮想修復(除去)システム、
データベース提供システム、及びバーチャルミュージア
ムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、美術工芸品は、洋の東西を問
わず、人々の観賞に供され、また、宗教上信仰の対象と
なる神仏の像等は、信仰・礼拝の対象となっている。特
に、我国においては、古い年代に製作された仏像は、日
本中に数多く存在する寺や美術館にその実物が載置され
ると共に、その写真や解説が掲載された書物も多く出版
されている。
【0003】我国においては、平安、鎌倉時代等中世に
製作された仏像が多く存在するが、寺社等が火災、戦災
に遭うことより、その仏像も焼失し、後世に再現された
ものも多い。また、現在の姿は当初の仏像を後世に修復
したものであるものが大部分である。そこで、学問上、
その製作年代を推定する必要がある。また、木造美術品
は常に火災によりその実物が焼失してしまう虞れがある
ので、そのデータを保存しておく必要もある。従来は、
写真、書物(文章)、実寸法の計測データ(人間が書い
た寸法表)の3つが、かかるデータ保存方法のすべてで
あった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、例え
ば、実寸法の計測といっても、大きな仏像を計測する
と、計測者ごとにかなりの誤差が生じ、また顔面等の各
部位の計測方法も一様でなく、客観性が担保されていな
い。また、昔或いは現在の書物(文章)については、そ
の文章の解説者(書いた人間)の主観に左右されるのは
致し方なく、客観性は得難い。更に、写真についても、
経年劣化するので、データとしての保存性に問題はあ
る。また、これらでは、仏像の表面のデータは得られて
も、内部のデータは得られない。最近多く普及してきた
デジタルカメラを用いて写真撮影すれば、経年劣化しな
い写真データ(デジタルデータ)は得られるが、仏像の
2次元(平面)のデータしか得られない。
【0005】一方、学問上、仏像の製作年代を推定する
場合等に、仏像のX線写真を撮影し、内部の状態を調べ
る方法も行われている。例えば、釘は、江戸時代のもの
とそれ以前のもの、若しくは平安、鎌倉時代のものでは
全て異なるものが使われているので、どこにどのような
釘が使用されているか等を看ることで製作年代を絞り込
むことができる)。しかしながら、X線写真によって
も、あくまで2次元(平面)のデータしか得られないの
で、内部の状態を十分に看ることはできず、例えば、釘
の特定等も困難である。また、例えば、750年頃〜8
00年頃に「木芯乾漆」と呼ばれる、芯木にうるし等を
厚く塗り重ねていくことで仏像を製作する手法が行われ
ていたが、非常に検査が難しく、構造的なことは、X線
写真によってしか検査できなかった。しかし、この場合
も、X線写真によっても、あくまで2次元(平面)のデ
ータしか得られないので、芯木だけを立体的に浮き出さ
せて看たり、例えば、内部に釘がどのような構造で打ち
込まれているか、を釘だけを浮かび上がらせて立体的に
看ることはできなかった。
【0006】そこで、本発明の第1の課題は、CTによ
る断層画像及び/又はCGによる3次元(立体)画像を
調べることで、仏像等の木造美術品の内部構造まで、従
来不可能であった部分まで再現でき、或いは当初の姿を
復元し得るデータ保存システムを提供することにある。
【0007】また、本発明の第2の課題は、かかるデー
タ保存システムを利用した仏像等の木造美術品の仮想修
復(除去)システム、データベース提供システム、及び
バーチャルミュージアムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明では、美術工芸品を所定間隔で断層状に撮像
して複数の断層画像データを取得し、これら複数の断層
画像データを3次元構築することにより立体画像データ
を取得し、それぞれのデータを再生可能に保存するよう
にした。
【0009】しかして、本発明の請求項1記載のデータ
保存システムは、美術工芸品を所定間隔で断層状に撮像
し、前記美術工芸品の前記所定間隔の複数の断層画像デ
ータを得る断層画像形成ユニットと、前記複数の断層画
像データを3次元構築することにより前記美術工芸品の
立体画像データを得る立体画像形成ユニットと、前記断
層画像データと前記立体画像データとをそれぞれ保存可
能なデータ保存ユニットとを有することを特徴とする。
【0010】また、請求項2記載のデータ保存システム
においては、前記美術工芸品は、木造美術品であること
を特徴とする。
【0011】更に、請求項3記載のデータ保存システム
においては、前記断層画像データと前記立体画像データ
とをそれぞれカラーデータとして形成及び保存可能に構
成されていることを特徴とする。
【0012】一方、請求項4記載の仮想修復除去システ
ムは、製作時の第1の姿が劣化した第2の姿と該劣化し
た第2の姿を修復した現在の第3の姿が想定されている
仏像の少なくとも一部を所定間隔で断層状に撮像し、前
記第3の姿の所定間隔の複数の断層画像データを得る断
層画像取得手段と、前記第3の姿の断層画像データから
修復部分を除去することにより前記第2の姿の断層画像
データを得る修復部分除去手段と、該修復部分を除去し
た断層画像データを積み重ねて前記第2の姿の立体画像
データを得る修復除去立体画像形成手段とを有すること
を特徴とする。
【0013】また、請求項5記載の仮想修復除去システ
ムにおいては、更に、前記第3の姿の所定間隔の複数の
断層画像データを積み重ねて前記第3の姿の立体画像デ
ータを得る修復含有立体画像形成手段をも有することを
特徴とする。
【0014】更に、請求項6記載の研究者向けデータベ
ース提供システムでは、請求項5記載の仮想修復除去シ
ステムを利用し、研究者に修復前の前記第2の姿の立体
画像データと修復後の前記第3の姿の立体画像データの
双方を提供することが可能に構成されていることを特徴
とする。
【0015】更にまた、請求項7記載のバーチャルミュ
ージアムでは、請求項5記載の仮想修復除去システムを
利用し、観賞者に修復前の前記第2の姿の立体画像デー
タと修復後の前記第3の姿の立体画像データの少なくと
も一方を提供することが可能に構成されていることを特
徴とする。
【0016】
【発明の実施形態】以下、本発明の実施の諸形態につい
て図面を参照して説明する。
【0017】まず、図1乃至図4を参照して、本発明の
第1の実施形態に係るデータ保存システムと、その実施
例1としての仏像の仮想修復除去システムについて説明
する。
【0018】図1は、本発明の第1の実施形態に係るデ
ータ保存システムのシステム構成の概略図であり、図2
は、その基本的な処理プロセスを表すフローチャートで
ある。 A.システム構成 本実施形態のデータ保存システムは、仏像等の美術工芸
品を所定間隔で断層状に撮像し、複数の断層画像データ
を得る断層画像形成ユニットとしてのCTスキャンユニ
ット100と、複数の断層画像データを3次元構築する
ことにより仏像等の美術工芸品の立体画像データを得る
立体画像形成ユニットとしての、CGユニット200
と、断層画像データと立体画像データとをそれぞれ保存
可能なデータ保存ユニットとしての記憶装置300とを
有する。
【0019】CTスキャンユニット100は、CTスキ
ャナ102と、このCTスキャナ102に接続されたC
T制御用コンピュータ(内部のCT制御用ソフトウェア
プログラムを含む)104とから成り、CT制御用コン
ピュータ104でCTスキャナ102を制御することに
より、例えば、仏像等の美術工芸品の所定間隔の断層
(スライス)画像を撮像し、そのスライス画像データを
CT制御用コンピュータ104内に取得する。
【0020】CGユニット200は、ワークステーショ
ン202及び、例えば、実施例1で後述するように、C
Tスキャンユニット100が収集した仏像の所定間隔の
複数の断層(スライス)画像を補正し、また、これら複
数の断層(スライス)画像から修復部分のみを除去する
2次元画像処理プログラム、修復した複数の2次元スラ
イス画像を積層することで、立体画像を構築する3次元
画像構築プログラム、この構築した3次元画像をスムー
ジング等のために補正し、或いは不要なポリゴンを削除
する等によりデータ量を削減する3次元画像処理プログ
ラム、この3次元画像データをバーチャルリアリティ
(VR)画像へ変換するVRオーサリングプログラム等
のソフトウェアプログラムを含む。
【0021】記憶装置300は、CTスキャンユニット
100が収集した仏像の所定間隔の複数の断層(スライ
ス)画像データ、CGユニット200が作成する各段階
の画像データ(2次元修復データ乃至は3次元立体画像
データ等)をそれぞれ記憶・保存可能な装置であり、例
えば、CT制御用コンピュータ104やワークステーシ
ョン202に外付けされたハードディスク装置等から成
る。尚、図1では、このような断層画像データと立体画
像データとをそれぞれ保存可能なデータ保存ユニットと
しての記憶装置300を独立したユニット(装置)とし
て示したが、CT制御用コンピュータ104やワークス
テーション202に内臓された記憶装置(ハードディス
ク等)をデータ保存ユニットとして用いても良い。 B.処理プロセス 図2を参照しつつ、本実施形態のデータ保存システムに
よる画像撮影、処理のプロセスについて説明する。
【0022】本実施形態では、まず、CTスキャンユニ
ット100のCTスキャナ102とCT制御用コンピュ
ータ104とを用いて、例えば、仏像等の美術工芸品の
所定間隔の断層(スライス)画像を撮影・取得する(S
21)。次に、CGユニット200のワークステーショ
ン202により、例えば、実施例1で後述するように、
CTスキャンユニット100が収集した仏像の所定間隔
の複数の断層(スライス)画像を補正し、また、これら
複数の断層(スライス)画像から修復部分のみを除去す
る(S22)。続いて、修復した複数の2次元スライス
画像を積層することで、3次元立体画像を構築する(S
23)。更に、この構築した3次元画像をスムージング
等のために補正し、或いは不要なポリゴンを削除する等
によりデータ量を削減する(S24)。そして、この3
次元画像データをバーチャルリアリティ(VR)画像へ
変換する(S25)。 尚、S21でCTスキャンユニ
ット100が収集した仏像等の断層(スライス)画像デ
ータや、CGユニット200が作成する各段階(S22
〜S24)の画像データは、それぞれ記憶装置300に
記憶・保存する(S26)。
【0023】そして、本実施形態のデータ保存システム
に記憶・保存されたデータは、図2に示すように、仏像
等の仮想修復(除去)システム、研究者向けデータベー
ス提供システム、及び一般人向けバーチャルミュージア
ム等の各用途別の処理が可能であり、以下、実施例とし
て、これらにつき説明する。
【0024】[実施例1]仏像の仮想修復(除去)シス
テム 図3は、実施例1の仮想修復除去システムの対象とした
仏像である軍荼利明王像を表す図であり、図4は、実施
例1の仮想修復除去システムの処理の流れを表す各画像
データを示す図である。
【0025】本実施例の特色は、それぞれ本願発明の発
明者の一人である大橋一章の仏教美術の研究と河合隆史
の3次元CGの構築研究の結合にあるが、その出発点
は、同じく発明者の一人である櫻庭裕介が平成7年の阪
神大震災によって被害を蒙った兵庫県下の仏像彫刻を修
理し、この仏像修復に大橋一章が全面協力したことに溯
る。わが国の仏像は、長い歴史の間に何度も修復を受け
てきたが、現在のわが国の文化財保存は、現状維持がそ
の基本的考え方である。従って、過去の修復、例えば、
オリジナルの彫刻作品の表面に分厚く塗られた錆漆を取
り除くことはできない。
【0026】本発明者達は、CTスキャンで撮影した仏
像の断層写真から修復部分を取り除いて当初の姿を見る
ことができるのではないかという点に着眼し、本願発明
を本実施例に適用したのである。現在、我々は、例え
ば、千年も昔に製作され、普通、その後何度か修復を受
けてきた仏像を見ているのである。かかる仏像を外科的
な手段を駆使することなく、後世の修復、即ち、後補部
分を取り除き、当初のオリジナルな姿をCGで再現でき
るとは、従来、誰一人想像すらしていなかった。
【0027】本実施例では、図3に示す軍荼利明王を仮
想修復除去の対象とした。そして、第1回の試験では、
この仏像の頭部だけを、つまり頂から顎・頸・両肩に至
る長さにしておよそ20cmを4mm間隔で60カット
撮影した。この撮影データをもとに20日間をかけて一
枚一枚60カットの断層写真の錆漆を画像処理により取
り除き、錆漆を取り除いた4mm間隔で60枚の断層写
真を3次元構築し、所定の3次元画像処理を施した後、
3次元CG像を得た。このように、今回の実施例では軍
荼利明王の頭部だけであったが、江戸時代の錆漆で塗り
固められた頭部だけを見慣れていた本発明者らの眼前
に、突如修復前の軍荼利明王の顔(頭部)が出現し、一
同声すら出なかった。それは、一皮も二皮も剥けたシャ
ープな目鼻立ちをしていた。たとえ後補部分であって
も、わが国の現在の文化財保護の立場からすれば、それ
らを実際に除去することはできない。しかしながら、コ
ンピュータディスプレイ上には、錆漆を剥いだ修復前の
軍荼利明王の顔(頭部)が存在した。また、3次元(立
体)画像であるため、様々な視点から仏像を観察するこ
とも可能となった。まさしく、仏像(仏教美術)研究の
ための画期的な資料を作ることができたのである。
【0028】図4を参照して、本実施例の仮想修復除去
システムの処理の流れを説明する。
【0029】ここでは、第2回の試験として、軍荼利明
王像の頭部を2mm間隔で撮影した。また、比較例とし
て、後補の錆漆層を含めたまま、断層画像を積み上げて
構築した3次元CG像も作成した。即ち、図4(a)に
示すように、まず、CTスキャンユニット100のCT
スキャナ102とCT制御用コンピュータ104とを用
いて、軍荼利明王像の顔(頭部)の2mm間隔の断層
(スライス)画像を撮影・取得した。図4(b)は、C
Tスキャンを行う断層例であり、図4(c)は、現在の
仏像の姿(写真)を示す。断層(スライス)画像を撮影
・取得したら、次に、CGユニット200のワークステ
ーション202により画像を補正(例えば、デコボコ部
分のスムージング)し、図4(d)に示すように、かか
る画像処理をした断層画像を積み上げて3次元CG像を
構築した。まず、比較例としては、図4(e)に示すよ
うに、現在の断層面、即ち、後補の錆漆層(周囲の黒い
部分)を除去しない断層画像を積み上げ、図4(f)に
示すように、現在の姿(後補の錆漆層を除去していな
い)3次元CG像を構築した。一方、本実施例では、ワ
ークステーション202により補正(例えば、デコボコ
部分のスムージング)した断層画像、即ち、図4(e)
に示した現在の断層面から、画像処理により後補の錆漆
層(周囲の黒い部分)を除去し、図4(g)に示すよう
に、かかる錆漆層を除去した当初の断層画像を作成し、
これら当初の断層画像を積み上げ、図4(h)に示すよ
うに、当初の姿の(後補の錆漆層を除去した)3次元C
G像を構築した。図4(f)と図4(h)の比較から明
らかなように、後補の錆漆層を除去したオリジナルな姿
の仏像の頭部をVR(バーチャルリアリティ)画面上に
見事に再現することができた。
【0030】尚、第3回目の試験として、今度は、軍荼
利明王像の全身を完全にCTスキャナ102にセット
し、全身を1mm間隔で、およそ600カット撮影し
た。4mm間隔や2mm間隔よりも1mm間隔で撮影し
たものが、より緻密な3次元CG像を構築できるのは言
うまでもない。
【0031】以上のように、本実施例によれば、仏像の
2次元(平面)のデータだけでなく、その3次元(立
体)のデータが得られる。しかも、断層(スライス)画
像が得られるので、仏像内部のデータを得られる。そし
て、このような断層(スライス)画像を、学問上、仏像
の製作年代を推定する場合等に利用可能である。即ち、
図4(e)又は(g)に示すように、現在の断層面又は
当初の断層面には、使用木材の年輪が現れるので、かか
る年輪を調べることで、仏像の製作年代の推定が可能で
ある。また、内部に釘が打たれている場合には、それら
の釘だけを浮かび上がらせて3次元的に看ることもでき
るので、それらの釘から仏像の製作年代を絞り込むこと
もできる。しかも、当初製作時の釘と後世に補完された
釘とを峻別し、それぞれの釘だけを立体的に浮き出させ
て看ることも可能であり、それらを全て調べることで、
当初製作時の姿を復元することができ、当初の製作材料
を特定することも可能となる。従って、従来のX線写真
より、はるかに有効に内部の状態を調べることができ
る。前述した「木芯乾漆」の手法が行われた仏像であっ
ても、芯木だけを立体的に浮き出させて看たり、例え
ば、内部に釘がどのような構造で打ち込まれているか、
を釘だけを浮かび上がらせて立体的に看ることもできる
ので、学問上非常に有意義である。
【0032】このように、CTによる断層画像及び/又
はCGによる3次元(立体)画像を調べることで、仏像
等の内部構造の従来不可能であった部分まで再現でき、
或いは当初の姿を復元し得るシステムを提供することが
できる。
【0033】また、CTによる断層画像という2次元の
デジタルデータ及び/又は3次元(立体)画像のデジタ
ルデータとして仏像等のデータを取得・保存できるの
で、経年劣化しない、火災などによる消失の虞れのより
少ない、客観性ある仏像等のデータを保存することが可
能となった。
【0034】[実施例2]研究者向けデータベース提供
システム 図5は、本実施例の研究者向けデータベース提供システ
ムの基本構成を示す図、図6は、図5の研究者向けデー
タベース提供システムにおけるデータベース提供装置の
機能的構成要素を示すブロック図、図7は、本実施例の
研究者向けデータベース提供システムの概念を表す図で
ある。
【0035】図5に示すように、本実施例の研究者向け
データベース提供システムは、研究者向けにデータベー
スを提供するサーバーであるデータベース提供装置11
と、データベース提供装置11によりデータの提供を受
けるユーザ側の複数のコンピュータ装置12とから構成
されており、これらは通信回線を介してインターネット
13に接続されている。本実施例における研究者向けデ
ータベースは、上述した実施例1の仮想修復除去システ
ムを利用し、研究者に修復前の姿の立体画像データと修
復後の立体画像データの双方を提供することが可能に構
成されている。そして、データベース提供装置11は、
このようなデータベースの提供主体が運営している。但
し、データベース提供装置11の運営主体とデータベー
スの提供主体とは、必ずしも同一である必要はなく、例
えば、データベースの提供主体から依頼を受けた第3者
がデータベース提供装置11の運営主体であっても良
い。
【0036】ここで、コンピュータ装置12には、本体
部、ディスプレイ及び入力部から成るパソコンなどの一
般的なコンピュータ装置のみならず、電話や通信機能を
有するテレビなど、あらゆる通信装置が含まれる。
【0037】尚、本実施例では、研究者向けデータベー
ス提供システムは、インターネット13を介して成立し
ているが、インターネット13を利用しない他の種々の
形態、例えば専用回線などによるものにも適用可能であ
る。また、回線には、有線回線、無線回線、衛星回線な
ど、あらゆる回線が含まれる。
【0038】図6に示すように、データベース提供装置
11は、ユーザデータベース11a、画像データ保存部
11b、画像データ表示部11c、料金決済部11d、
発送処理部11eを備えている。ここで、ユーザデータ
ベース11aには、データベースの利用者である登録ユ
ーザの名前、住所、電話番号、クレジットカード番号、
メールアドレス、ユーザID、パスワード等が格納され
ている。但し、少なくとも登録されたユーザを特定し得
るいずれかの情報が格納されていれば良く、その他の情
報については必要に応じて格納される。
【0039】また、画像データ保存部11bには、上述
した実施例1の仮想修復除去システムを利用して作成し
た、修復部分の除去前の断層画像データ、修復部分の除
去後の断層画像データ、修復部分の除去前の3次元立体
画像データ、修復部分の除去後の3次元立体画像データ
等がユーザにより選択可能に格納されている。
【0040】画像データ表示部11cは、当該ユーザが
登録されたユーザであれば、その要求を受け付けて当該
ユーザの選択した上記いずれか又はすべての画像データ
を表示させるようになっている。尚、料金決済部11d
は、ユーザの選択した画像の種類やアクセス時間等から
算出した料金をユーザに通知し、その料金支払いがなさ
れた場合には、その決済も行う(料金支払い及び決済の
方法は、公知の電子マネーの支払い及び決済の方法によ
っても良い)。発送処理部11eは、ユーザが画像のプ
リンタなどによる印刷物の送付を要求した場合に、その
発送処理等を行う。
【0041】本実施例の研究者向けデータベース提供シ
ステムでは、上述した実施例1の仮想修復除去システム
を利用し、研究者に修復前の姿の立体画像データと修復
後の立体画像データの双方を提供することが可能なの
で、研究者は、図7に示すように、コンピュータ装置1
2のディスプレイに修復前の姿の立体画像データ12A
と修復後の立体画像データ12Bの双方を同時に表示さ
せることができる。従って、例えば、過去の修復が適正
になされていない場合など、修復前の姿の立体画像デー
タ12Aを今後の修復の参考にすることもできる。
【0042】[実施例3]一般人向けバーチャルミュー
ジアム 図8は、本実施例の一般人向けバーチャルミュージアム
のバーチャルミュージアム装置の機能的構成要素を示す
ブロック図、図9は、本実施例の一般人向けバーチャル
ミュージアムの概念を表す図である。
【0043】本実施例においても、実施例2の研究者向
けデータベース提供システムに関して図5に示したシス
テムと同様のシステム構成を有するが、図5を引用し、
その図示は省略する。
【0044】図8に示すように、バーチャルミュージア
ム装置81は、入場者受付部81a、画像データ保存部
81b、画像データ表示部81c、料金決済部81d、
発送処理部81eを備えている。ここで、入場者受付部
81aには、インターネット13を介してアクセスして
きた入場者の名前、住所、電話番号、クレジットカード
番号、メールアドレス等が受け付けられ、一時的に保存
される。但し、少なくとも入場者を特定し得るいずれか
の情報が格納されていれば良く、その他の情報について
は必要に応じて格納される。
【0045】また、画像データ保存部81bには、上述
した実施例1の仮想修復除去システムを利用して多くの
仏像等の美術品について作成した、修復部分の除去前の
断層画像データ、修復部分の除去後の断層画像データ、
修復部分の除去前の3次元立体画像データ、修復部分の
除去後の3次元立体画像データ等が入場者により選択可
能に格納されている。
【0046】画像データ表示部81cは、当該入場者の
要求を受け付けてその選択した上記いずれか又はすべて
の画像データを表示させるようになっている。尚、料金
決済部81dは、入場者の選択した画像の種類やアクセ
ス時間等から算出した料金を通知し、その料金支払いが
なされた場合には、その決済も行う(料金支払い及び決
済の方法は、公知の電子マネーの支払い及び決済の方法
によっても良い)。発送処理部11eは、入場者が画像
のプリンタなどによる印刷物の送付を要求した場合に、
その発送処理等を行う。
【0047】本実施例の一般人向けバーチャルミュージ
アムでは、上述した実施例1の仮想修復除去システムを
利用して多くの仏像等の美術品について作成した修復前
の姿の立体画像データと修復後の立体画像データの双方
を入場者に提供することが可能なので、入場者は、図9
に示すように、コンピュータ装置12のディスプレイに
修復前の姿の立体画像データ12Aと修復後の立体画像
データ12Bの双方を同時に表示させることができる。
また、かかる対比画像を複数の仏像12、13、14、
・・・について見ることもできるので、観賞の楽しさが
高くなる。
【0048】尚、本実施例の一般人向けバーチャルミュ
ージアムは、インターネットを介する図5に示したシス
テム構成を有するが、例えば、バーチャルミュージアム
博物館という建物を備え、かかる建物内で入場者に、多
くの仏像等の美術品について作成した2次元(平面)又
は3次元(立体)のバーチャルリアリティ(VR)画像
データを見せても良い。要は、上述した実施例1の仮想
修復除去システムを利用して修復部分の除去前の断層画
像データ、修復部分の除去後の断層画像データ、修復部
分の除去前の3次元立体画像データ、修復部分の除去後
の3次元立体画像データ等を入場者により選択可能に見
せることができれば良い。
【0049】以上、本発明を特定の実施形態について述
べたが、本発明はこれらに限られるものではなく、特許
請求の範囲に記載した範囲内で他の実施形態についても
適用される。
【0050】例えば、上記実施形態では、美術工芸品と
して木造美術品としての仏像を対象としたが、これらに
限られず、ブロンズ像等、材質が木でない対象物にも拡
張可能である。
【0051】また、上記実施形態では、前記断層画像デ
ータと前記立体画像データとをそれぞれモノクロのデー
タとして形成及び保存したが、これらをそれぞれカラー
のデータとして形成及び保存可能に構成しても良い。
【0052】
【発明の効果】以上、本発明によれば、CTによる断層
画像及び/又はCGによる3次元(立体)画像を調べる
ことで、仏像等の木造美術品の内部構造まで、従来不可
能であった部分まで再現でき、或いは当初の姿を復元し
得るデータ保存システムを提供することができる。
【0053】また、かかるデータ保存システムを利用し
た仏像等の木造美術品の仮想修復(除去)システム、デ
ータベース提供システム、及びバーチャルミュージアム
を提供することも可能となり、新たなビジネスの手法を
提案することができ、学問上、産業上大変有意義であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るデータ保存シス
テムのシステム構成の概略図。
【図2】図1に示したデータ保存システムの基本的な処
理プロセスを表すフローチャート。
【図3】実施例1の仮想修復除去システムの対象とした
仏像である軍荼利明王像を表す図。
【図4】実施例1の仮想修復除去システムの処理の流れ
を表す各画像データを示す図。
【図5】実施例2の研究者向けデータベース提供システ
ムの基本構成を示す図
【図6】図5の研究者向けデータベース提供システムに
おけるデータベース提供装置の機能的構成要素を示すブ
ロック図
【図7】実施例2の研究者向けデータベース提供システ
ムの概念を表す図
【図8】実施例3の一般人向けバーチャルミュージアム
のバーチャルミュージアム装置の機能的構成要素を示す
ブロック図
【図9】実施例3の一般人向けバーチャルミュージアム
の概念を表す図
【符号の説明】
100 CTスキャンユニット 200 CGユニット 300 記憶装置 102 CTスキャナ 104 CT制御用コンピュータ 202 ワークステーション
フロントページの続き (72)発明者 櫻庭 裕介 東京都新宿区戸塚町1−104 学校法人早 稲田大学内 Fターム(参考) 2G001 AA01 BA11 CA01 FA06 HA07 HA08 HA13 HA14 HA20 JA11 LA20 5B050 AA06 AA09 BA03 BA06 BA09 BA10 DA02 DA05 EA06 EA19 EA26 FA02 FA06 FA19 5B057 AA09 BA03 CA02 CA08 CA12 CA16 CB02 CB13 CB16 CD14 CE05 DA04 DB03 DB05 DB09

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 美術工芸品を所定間隔で断層状に撮像
    し、前記美術工芸品の前記所定間隔の複数の断層画像デ
    ータを得る断層画像形成ユニットと、 前記複数の断層画像データを3次元構築することにより
    前記美術工芸品の立体画像データを得る立体画像形成ユ
    ニットと、 前記断層画像データと前記立体画像データとをそれぞれ
    保存可能なデータ保存ユニットとを有することを特徴と
    するデータ保存システム。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のデータ保存システムにお
    いて、前記美術工芸品は、木造美術品であることを特徴
    とするデータ保存システム。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載のデータ保存システ
    ムにおいて、前記断層画像データと前記立体画像データ
    とをそれぞれカラーデータとして形成及び保存可能に構
    成されていることを特徴とするデータ保存システム。
  4. 【請求項4】 製作時の第1の姿が劣化した第2の姿と
    該劣化した第2の姿を修復した現在の第3の姿が想定さ
    れている仏像の少なくとも一部を所定間隔で断層状に撮
    像し、前記第3の姿の所定間隔の複数の断層画像データ
    を得る断層画像取得手段と、前記第3の姿の断層画像デ
    ータから修復部分を除去することにより前記第2の姿の
    断層画像データを得る修復部分除去手段と、該修復部分
    を除去した断層画像データを積み重ねて前記第2の姿の
    立体画像データを得る修復除去立体画像形成手段とを有
    することを特徴とする仮想修復除去システム。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の仮想修復除去システムに
    おいて、更に、前記第3の姿の所定間隔の複数の断層画
    像データを積み重ねて前記第3の姿の立体画像データを
    得る修復含有立体画像形成手段をも有することを特徴と
    する仮想修復除去システム。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の仮想修復除去システムを
    利用した研究者向けデータベース提供システムであっ
    て、研究者に修復前の前記第2の姿の立体画像データと
    修復後の前記第3の姿の立体画像データの双方を提供す
    ることが可能に構成されていることを特徴とする研究者
    向けデータベース提供システム。
  7. 【請求項7】 請求項5記載の仮想修復除去システムを
    利用したバーチャルミュージアムであって、観賞者に修
    復前の前記第2の姿の立体画像データと修復後の前記第
    3の姿の立体画像データの少なくとも一方を提供するこ
    とが可能に構成されていることを特徴とするバーチャル
    ミュージアム。
JP2001013881A 2001-01-22 2001-01-22 仏像の仮想修復システム Pending JP2002216102A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001013881A JP2002216102A (ja) 2001-01-22 2001-01-22 仏像の仮想修復システム

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001013881A JP2002216102A (ja) 2001-01-22 2001-01-22 仏像の仮想修復システム

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002216102A true JP2002216102A (ja) 2002-08-02

Family

ID=18880651

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001013881A Pending JP2002216102A (ja) 2001-01-22 2001-01-22 仏像の仮想修復システム

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002216102A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007020873A (ja) * 2005-07-15 2007-02-01 Hitachi Medical Corp 医用画像処理装置及び画像処理プログラム
WO2018139468A1 (ja) 2017-01-25 2018-08-02 HoloEyes株式会社 医療情報仮想現実サーバシステム、医療情報仮想現実プログラム、医療情報仮想現実システム、医療情報仮想現実用データの作成方法、および医療情報仮想現実用データ
CN111861970A (zh) * 2019-04-23 2020-10-30 天和防务技术(北京)有限公司 古文物修复处理方法、装置、计算机设备及存储介质

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007020873A (ja) * 2005-07-15 2007-02-01 Hitachi Medical Corp 医用画像処理装置及び画像処理プログラム
JP4679988B2 (ja) * 2005-07-15 2011-05-11 株式会社日立メディコ 医用画像処理装置及び画像処理プログラム
WO2018139468A1 (ja) 2017-01-25 2018-08-02 HoloEyes株式会社 医療情報仮想現実サーバシステム、医療情報仮想現実プログラム、医療情報仮想現実システム、医療情報仮想現実用データの作成方法、および医療情報仮想現実用データ
CN111861970A (zh) * 2019-04-23 2020-10-30 天和防务技术(北京)有限公司 古文物修复处理方法、装置、计算机设备及存储介质
CN111861970B (zh) * 2019-04-23 2023-11-10 天和防务技术(北京)有限公司 古文物修复处理方法、装置、计算机设备及存储介质

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10497172B2 (en) Photorealistic facial texture inference using deep neural networks
US10248993B2 (en) Systems and methods for generating photo-realistic images of virtual garments overlaid on visual images of photographic subjects
JP3954211B2 (ja) 三次元シーンにおける形状及び模様の復元方法及び装置
Hameeuw et al. New visualization techniques for cuneiform texts and sealings
CN102859991A (zh) 实时剪切视频序列中记录的真实实体的方法
JP2001320579A (ja) 広域精細画像生成方法及びシステム並びにコンピュータ可読記録媒体
JPH11504452A (ja) 2次元投影図に基づいて3次元の対象物を再現し、取り扱うための装置と方法
Dey Potential and limitations of 3D digital methods applied to ancient cultural heritage: insights from a professional 3D practitioner
JP2002216102A (ja) 仏像の仮想修復システム
Miles et al. Photogrammetry and RTI Survey of Hoa Hakananai’a Easter Island Statue
Tweten et al. From Stone to Screen: Digital Revitalization of Ancient Epigraphy.
Kekre et al. Rotation invariant fusion of partial image parts in vista creation using missing view regeneration
US20050157919A1 (en) Investigation of destroyed assemblies and identification of components thereof using texture mapping
Mahajan et al. Image inpainting techniques for removal of object
Pal et al. Digitally reconstructing the Great Parchment Book: 3D recovery of fire-damaged historical documents
Dilley et al. The X-Ray Micro-CT of a Full Parchment Codex to Recover Hidden Text: Morgan Library M. 910, an Early Coptic Acts of the Apostles Manuscript
JP2003006667A (ja) アニメーション化された図形の画像処理方法
KR102116561B1 (ko) 소실 또는 망실된 유적지의 가상 체험을 위한 가상현실 콘텐츠 제작방법
US20070188500A1 (en) Method and system for generation of presentation of house animation using multiple images of house
Feiler et al. Archiving the Memory of the Holocaust
Tomoto et al. Casual real-world VR using light fields
Markovic Authenticity in digital surrogates. Workflow development for generating an authentic digital surrogate for heritage conservation
Khosravi et al. Exeter Cathedral: A colour reconstruction for use in augmented reality devices
Lussu Ultra close-range digital photogrammetry as a tool to preserve, study, and share skeletal remains
KR20190143528A (ko) 인생 기념물 제공 방법