JP2002178147A - 溶接金属の簡易特性予測方法および溶接施工条件決定法 - Google Patents
溶接金属の簡易特性予測方法および溶接施工条件決定法Info
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Abstract
簡単且つ精度良く予測することのできる方法、および目
標とする機械的特性を満たす溶接金属を確保できる最適
な溶接施工条件を簡便に決定することのできる方法を提
供すること。 【解決手段】 溶接によって形成される溶接金属の特性
を予測する方法であって、特定の母材と特定のワイヤを
用いて、種々の溶接条件で溶接を行ったときの冷却速度
と、溶接金属の再熱部および原質部の夫々について機械
的特性との関係を予め調べておくと共に、前記特定の母
材と特定のワイヤを用いて種々の溶接条件で溶接を行な
ったときの再熱部と原質部の断面の面積比を予め調べて
おき、前記特定の母材と特定のワイヤを用いて溶接を行
う際の板厚、入熱量、パス間温度から計算によって求め
られる冷却速度と機械的特性との関係、および溶接条件
と前記再熱部と原質部の面積比との関係を照合すること
により、溶接金属の機械的特性を予測する。
Description
ザー溶接、電子ビーム溶接法などによって溶接を行なう
際に、溶接施工後における溶接金属の特性を溶接施工条
件等によって予測すると共に、得られる溶接金属の機械
的特性を予測し、あるいは更に、目標とする機械的特性
の溶接金属を得ることのできる溶接施工条件を簡便に決
定することのできる方法に関するものである。
の溶接施工に様々な溶接法が適用されている。こうした
溶接施工を実施するに当たり、施工後における溶接金属
の機械的特性を予め予測することは、目標特性を満たす
溶接金属を得る上で重要となる。
ては、例えば特許第2850773号に、サブマージア
ーク溶接を対象として、母材成分、溶接電流、溶接電
圧、溶接速度、ワイヤ成分およびフラックス成分から溶
接金属の組成を予測することで該溶接金属の特性を予測
する技術が提案されている。しかし実際には、母材形状
の違いやパス間温度等に起因する熱履歴によって溶接金
属組織が違ってくるので、溶接金属の特性を精度よく予
測することはできない。
て精度良く予測することは、目標とする特性を得る為の
最適溶接施工条件を決定する上で有用と思われるが、こ
うした技術は現在のところ確立されていない。なお溶接
条件推定法としては、例えば特開平4−143075号
に、サブマージアーク溶接を対象とし、溶込み深さと余
盛量を求め、この溶込み深さと余盛量が目標許容範囲内
に入る様な溶接条件(溶接電流や開先形状)を得ること
を目的とした技術が提案されている。しかしこの技術
は、溶接金属に求められる目標機械特性を得る為の最適
な溶接施工条件を決定するものではない。
は、圧延制御に関して多くの技術が提案されており、例
えば特開平5−87800号公報には、金属組織を考慮
した予測手法が開示されている。即ち母材金属の金属組
織を基に、各金属組織(オーステナイト、フェライト、
セメンタイトなど)に応じて異なった計算法を採用する
と共に、母材板厚方向各位置での冷却速度も考慮して適
正な金属組織を得る方法を開示している。
機械的特性を予測する従来法では、母材成分、溶接電
流、溶接電圧、溶接速度、ワイヤ成分およびフラックス
成分から溶接金属の組成を予測することで特性を予測し
ているが、前述した如く実際には、母材形状の違いやパ
ス間温度に起因する熱履歴により溶接金属の特性が異な
るため、溶接金属の機械的特性を精度よく予測すること
ができない。しかもこの種の従来技術では、母材形状に
よる影響を所定関係式の係数で規定することにより補正
しているが、前述の如く一定の係数を採用しているの
で、母材形状が変わると精度が低下してしまう。こうし
た難点を補うには、母材形状毎に多数の実験を行なって
その都度適正な係数値を決定しなければならず、多大な
労力が強いられる。
であり、その目的は、溶接施工後における溶接金属の機
械的特性を、簡便にしかも精度良く予測することのでき
る方法を提供し、或いは更に、溶接金属の機械的特性が
目標特性を満たす様に最適溶接施工条件を簡便に決定す
ることのできる方法を提供することにある。
のできた本発明にかかる溶接金属の特性予測方法とは、
溶接によって形成される溶接金属の特性を予測する方法
であって、特定の母材と特定のワイヤを用いて、種々の
溶接条件で溶接を行ったときの冷却速度と、溶接金属の
再熱部および原質部の夫々について機械的特性との関係
を予め調べておくと共に、前記特定の母材と特定のワイ
ヤを用いて種々の溶接条件で溶接を行なったときの再熱
部と原質部の断面の面積比を予め調べておき、前記特定
の母材と特定のワイヤを用いて溶接を行う際の板厚、入
熱量、パス間温度から計算によって求められる冷却速度
と機械的特性の関係、および溶接条件と前記再熱部と原
質部の面積比との関係を照合することにより、溶接金属
の機械的特性を予測するところに要旨を有している。
は、多パス溶接において、一旦溶融凝固により形成され
た溶接金属が、それ以後のパスによって溶融されないが
溶接熱によってオーステナイト生成温度域以上に加熱さ
れた部分をいい、その他の部分を原質部という。
予測法は、溶接時の各パスにおける入熱量が一定である
溶接法に好適に適用され、また溶接法としては特にアー
ク溶接法に適用することによって高精度の予測を行なう
ことができるので好ましい。
は、上記方法によって予測される溶接金属の特性が所望
の特性を満足しているかどうかを判断し、該所望の特性
を満足していない場合には、予め設定された溶接施工条
件パラメーターの変更手順に従って溶接施工条件を変更
し、該変更された溶接施工条件を用いて、再度溶接金属
の特性を予測し、予測される溶接金属の特性が前記所望
の特性を満足するまで繰り返し演算を行うことにより、
所望の溶接金属特性を満足する溶接施工条件を決定する
ところに要旨を有している。
接金属部が複雑な熱履歴を受けるので、従来技術の様に
溶接金属の組成を考慮しただけでは溶接金属の特性を精
度良く予測することができない。なぜなら、たとえ組成
が同じであったとしても、その熱履歴により原質部や再
熱部の組織に顕著な違いが生じるからである。
っても、組織の違いにより夫々の機械的特性(特に靭性
値)には著しい差が生じているため、溶接金属の機械的
特性を精度よく予測するには、それぞれの面積分率を考
慮する必要がある。
履歴、特に溶接金属の冷却速度と、溶接条件による原質
部と再熱部の面積分率を予測することで、溶接金属の機
械的特性を従来法よりも簡便に予測可能にしたもので、
これは、原質部と再熱部とで機械的特性に大きな違いが
ある、との知見に基づいている。即ち本発明では、特定
の母材と特定の溶接ワイヤを用いて溶接を行なう場合、
溶接金属の冷却速度と溶接金属(再熱部および原質部)
の機械的特性との間に相関性が認められること、しかも
同冷却条件における溶接金属中の原質部と再熱部の割合
が溶接金属の機械的特性との間にも相関性が認められる
との知見を利用するものである。
組成や熱履歴を考慮することなく、特定の母材と溶接ワ
イヤを用いて溶接を行なうときの冷却速度と機械的特性
の関係、および溶接条件と溶接金属中の原質部と再熱部
の面積比との関係をデータベース化しておき、同じ母材
と溶接ワイヤを用いた場合の冷却条件を確認するだけ
で、溶接金属組成や煩雑で長時間を要する熱履歴の計算
を要することなく、溶接金属の機械的特性をほぼ正確に
予測することに成功したものである。そして上記原質部
と再熱部の面積分率は、板厚、入熱量、パス間温度で整
理でき、また原質部と再熱部の機械的特性は溶接時の冷
却速度によって整理できるのである。
に説明する。図1は、本発明方法を実施する際の手順を
示すフローチャートであり、アーク溶接を実施する場合
を想定している。
タとして母材板厚と入熱量およびパス間温度を採用す
る。アーク溶接の場合、入熱量Qは「Q=IE/V」で
表すことができるので、入熱量に代えて溶接電流と溶接
電圧を採用しても構わない。
式を採用する。
冷却速度であり、Qは入熱量、θ0はパス間温度、hは
母材板厚である。他の定数については、下記表1に示す
値(「溶接工学」佐藤邦彦 理工学社 1979、第4
1頁)を採用した。
算式である。溶接を1パスで行なう場合は、式(1)をそ
のまま使用すればよく、多層盛溶接(多パス溶接)の場
合は、各パス毎に異なる入熱量とパス間温度から冷却速
度を計算すればよい。ただし、通常の多層盛溶接では、
全てのパスで同一の入熱量とするのが一般的であり、ま
たパス間温度としては、予め決められた上限パス間温度
に冷却されるまで待ってから次パス溶接を行なうのが一
般的であるため、この上限パス間温度を代表値として使
用し、各パスの入熱量が同じ場合は、全てのパスで同一
の冷却速度を用いることも可能である。
度を予測しても構わない。更には、例えば下記式(2)で
示される様な3次元熱伝導方程式を用いて、各パスでの
冷却速度を予測することも可能である。
Kは熱伝導度、qは単位体積当たりの溶接トーチからの
入熱、Tは温度、vは溶接速度、ρmは密度を表してい
る。そしてこの様な式を用いた計算を行なうことで、よ
り精緻にパス前温度と冷却速度を知ることができる。他
の溶接法を採用するときは他の経験式を使用すればよ
い。
冷却速度と、予め調べておいた溶接金属再熱部の機械的
特性とを照合し、再熱部の機械的特性を求める。図示す
るフローチャート例では、機械的特性として強度と靭性
値を採用しており、これら各機械的特性計算の順序は任
意である。また、硬さなど他の特性のデータベースを用
意しておけば、他の特性を予測することも可能である。
度と、予め調べておいた溶接金属原質部の機械的特性と
を照合し、原質部の機械的特性を求める。図示例では同
様に機械的特性として強度と靭性値を求めているが、こ
れら各機械的特性計算の順序も任意であり、また、硬さ
など他の特性のデータベースを用意しておけば、他の特
性を予測し得ることも上記と同じである。
部→原質部の順序で計算を行なう例を示したが、この順
序も任意であり、原質部→再熱部の順で計算しても勿論
構わない。
量、パス間温度と、施工される溶接金属の原質部と再熱
部の面積割合によって、所望する溶接金属部分の機械的
特性を計算する。本例では所望する部分として、板厚2
/3の位置、半径6mmの引張試験片採取位置と、板厚
2/3の位置、高さ10mmのシャルピー衝撃試験片採
取位置の2種類を用いた。その他の形状の試験片を用い
る場合には、試験片採取位置に即した面積割合のデータ
ベースを準備しておけばよい。また、溶接部の断面写真
をデータベースとして採取しておき、該断面写真から所
望位置での原質部と再熱部の面積割合を知る方法もあ
る。
を前記原質部と再熱部の面積割合で配分すれば、例えば
後記実施例で詳述する如く、当該位置での溶接金属の強
度や靭性を精度よく予測することができる。
ば、予測される溶接金属の機械的特性が目標特性を満た
しているかどうかを判断することができる。そして、予
測される機械的特性が目標特性を満たしていない場合
は、予め設定されている溶接施工条件(入熱量やパス間
温度など)を変更して再度溶接金属の機械的特性を予測
し、予測される特性が前記目標とする溶接金属特性を満
足するまで繰り返し演算を行なうことにより、目標の溶
接金属特性を満たす溶接施工条件を決定することができ
る。
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更
を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本
発明の技術的範囲に含まれる。
母材形状が変わると熱履歴が変わり予測精度が低下す
る。たとえ母材形状を考慮したとしても、パス間温度等
の施工条件が変われば特性が変化し、溶接金属の特性を
精度良く予測することはできない。
一とし、パス間温度のみを変化させてガスシールドアー
ク溶接法により溶接金属を作製し、その強度(TS)と
靱性(0℃でのVシャルピー衝撃値:vE0)を評価し
た。このときの溶接条件は下記の通りとした。 (溶接条件) 鋼板:SM490 20mmt×175mmw×300m
mL 関先:レ型35° シールドガス:CO2 100%、25リットル/mi
n. 電流−電圧−溶接速度:340A−32V−25cpm 入熱:25kJ/cm 溶接ワイヤ:JIS Z3312(YGW11)(C:0.
07%、Si:0.80%、Mn:1.5%、Ti:0.20%、P<0.03%、S<0.0
3%) ワイヤ径:1.4mmφ パス間温度:350℃または450℃
は、TS=540MPa,vE0=136J、パス間温
度が450℃のときは、TS=498MPa,vE0:
24Jであり、パス間温度が350℃から450℃に変
化しただけでも、衝撃吸収エネルギーで示される靭性値
は、約1/6に低下することが分かる。
は下記表2に示す通りであり、C,Si,Mn,P,
S,Ti,O,Nにおいて有意な差は認められず、組成
データを採用するだけでは特性予測を精度良く行なうこ
とはできなかった。
い、前記図1に示すフローチャートに従って特性予測を
行なったときの、実測した溶接金属の特性を比較した。 (溶接条件) 母材形状:20mmt×175mmw×400mmL 開先形状:レ型35° 母材成分:SM490(C:0.13%、Si:0.30%、Mn:1.2%) ワイヤ成分:JIS Z3312(YGW11)(C:0.
07%、Si:0.80%、Mn:1.5%、Ti:0.20%、P<0.03%、S<0.0
3%) 初期温度:25℃ 溶接速度:28cpm 溶接電流:360A 溶接電圧:39V パス間温度:350℃ シールドガス:CO2 100%,25リットル/mi
n. ワイヤ径:1.4mm
の機械的特性との関係を予め調べるため、下記の条件で
シングルビード試験片を作製し、靭性試験を行った。こ
の際、板厚および初期母材温度を変化させることで、8
00℃から500℃までの間の冷却速度を表3に示す如
く変化させた。ここで準備するデータの数が多いほど、
後の特性予測精度は向上するので、できるだけ多くのデ
ータを採取しておくことが望ましい。各冷却速度におけ
る靭性値(シャルピー衝撃値)を表3に示す。 開先形状:V型45度 母材成分:SM490(C:0.13%、Si:0.30%、Mn:1.2%) ワイヤ成分:JIS Z3312(YGW11)(C:0.
07%、Si:0.80%、Mn:1.5%、Ti:0.20%、P<0.03%、S<0.0
3%) シールドガス:CO2 100%、25リットル/mi
n ワイヤ径:1.4mm
関係を予め調べるため、原質部と同様のシングルビード
試験を採用して熱サイクル試験を行い、靭性試験を行っ
た。冷却速度は、冷却時のガス流量を調整することで表
4に示す如く変化させた。冷却速度範囲は同様に800
℃から500℃までとした。ここで準備するデータの数
も多いほど、後の特性予測精度が向上するので、できる
だけ多くのデータを採取しておくのが望ましい。冷却速
度と靭性値(シャルピー衝撃値)の関係を表4に示す。
の、再熱部と原質部の断面の面積比を調べた。溶接条件
は、下記表5に示す6条件とした。面積比率は、板底か
ら2/3位置、高さ10mmのシャルピー衝撃試験片採
取位置での値である。ただし板厚12mmのものについ
ては、板厚中心位置での面積割合とした。面積比は、ミ
クロエッチングした断面写真から測定した。ここで準備
するデータの数も多いほど、後の特性予測精度が向上す
るため、できるだけ多くのデータを採取しておくのが望
ましい。この時の原質部および再熱部の面積割合を表5
に示す。
す8条件で予測値と実測値を比較したところ、本発明の
予測法が高精度の予測方法であることを確認した。すな
わち最初に、板厚、入熱量、パス間温度から計算によっ
て最終パスの冷却速度を予測した。予測のための冷却速
度計算には前記式(1)を用いた。予測結果は下記表6に
示す通りであった。
熱部および原質部の機械的特性を照合した。この場合、
例えば溶接条件2(入熱:30,000J/cm、板厚:20mm
t、パス間温度:350℃)を例にとると、予測される冷却
速度は4℃/secであるが、表3に示す原質部の靭性デ
ータベースには4℃/secが存在しない。この様な場合
は、8℃/sec=61Jと3℃/sec=34Jを一次補間し、
4℃/secの原質部靭性値を39Jと予測する。再熱部に
ついても同様に、表4に示した5℃/sec=190Jと1
℃/sec=207Jを一次補間し、4℃/secの再熱部靭性
値を194Jと予測する。
て、再熱部と原質部の機械的特性を加重平均し、所望の
部位における機械的特性を予測する。たとえば溶接条件
2を例にとると、原質部と再熱部の面積比率は50%:
50%であるので 39J×50/100+194J×50/100=117J から、溶接条件2の靭性値は117Jであると予測され
る。
ついて照合する溶接条件が存在しない場合は、次の様に
して面積比の予測を行なう。例えば原質部と再熱部の面
積比を知るデータベースは、前記表5に示す如く6条件
のみであり、表6の溶接条件7(入熱:30,000J/cm、板
厚:20mmt、パス間温度:300℃)と同一の溶接条件
が存在しない。この様な場合は、溶接条件2(入熱:3
0,000J/cm、板厚:20mmt、パス間温度:350℃)の
面積比[50%:50%]と溶接条件6(入熱:30,000
J/cm、板厚:20mmt、パス間温度:250℃)の面積比
[55%:45%]のデータを一次補間し、溶接条件7
(入熱:30,000J/cm、板厚:20mmt、パス間温度:3
00℃)の面積比率を52.5%:47.5%と予測す
る。
パーソナルコンピュータで約1秒である。この予測結果
と、上記溶接条件で溶接金属を作製し靭性試験を行なっ
た実測結果は表7に示す通りであり、最大誤差13%で
靭性値を予測できることが確認された。
り予測精度を高めた例) 前記実施例1と同様にして、各冷却速度における原質部
の靭性値(表3)と再熱部の靭性値(表4)を予め求
め、更に種々の溶接条件で溶接を行なった時の再熱部と
原質部の面積割合(表5)を求めておく。
J/cm、板厚:20mmt、パス間温度:350℃)で得た溶
接部の断面写真から、最終パスと最終前パスの2パスに
おける再熱部と原質部の面積比率を求めた。結果は表8
に示す通りであった。
却速度をそれぞれ予測した。なお熱伝導度および密度
は、母材成分およびワイヤ成分から予め用意しておいた
データベースを用いて決定した。
割して計算を行なったところ 最終パスの冷却速度:4.1℃/sec 最終前パスの冷却速度:4.3℃/sec を得た。なお、溶接金属部のメッシュサイズは2mm、
母材部のメッシュサイズは溶接金属部からの距離に比例
して大きくし、メッシュ分割法は直交格子系とした。
却速度予測の精度と計算に要する時間を変えることがで
き、メッシュサイズを細かくするほど精度は向上する
が、計算に要する時間は長くなる。十分な予測精度を確
保するには、メッシュサイズを溶接金属の幅方向・高さ
方向に少なくともパス数以上に分割することが望まし
い。しかし一方で、予測精度は、メッシュサイズが板厚
/(パス数×30)程度でほぼ飽和し、それ以上に細かな
メッシュ分割をしても、いたずらに予測所要時間が延長
するだけであるので、それ以上の再分割は無意味であ
る。
熱部および原質部の機械的特性を照合した。その際、冷
却速度が照合するデータベースに存在しない場合は、前
記実施例1で説明したのと同様にして一次の補間により
機械的特性を予測した。結果を表9に示す。
て、再熱部と原質部の機械的特性を過重平均し、所望部
位での機械的特性を予測したところ、予測結果は11
8.4Jで、予測誤差は5.3%であった。この予測誤
差は、前記実施例1における溶接条件2での予測誤差:
7%に比べて更に小さくなっており、このことから、複
数パス溶接においては、各パスにおける冷却速度から予
測することで精度を更に高め得ることが分かる。
た溶接金属の目標機械的特性が決められている場合は、
上記の様な方法で機械的特性を予測し、予測される該機
械的特性が目標特性を満たしていない場合は、予め設定
されている溶接施工条件(入熱量やパス間温度など)を
変更して再度溶接金属の機械的特性を予測し、予測され
る特性が前記目標とする溶接金属特性を満足するまで繰
り返し演算を行なうことにより、目標の溶接金属特性を
満たす溶接施工条件を決定することができる。
接施工後における溶接金属の機械的特性を簡便にしかも
精度良く予測することができ、あるいは更に、簡便な手
段で溶接金属の機械的特性が目標特性を満たす様な最適
溶接施工条件を決定し得ることになった。
ャート例である。
Claims (4)
- 【請求項1】 溶接によって形成される溶接金属の特性
を予測する方法であって、 特定の母材と特定のワイヤを用いて、種々の溶接条件で
溶接を行ったときの冷却速度と、溶接金属の再熱部およ
び原質部の夫々について機械的特性との関係を予め調べ
ておくと共に、前記特定の母材と特定のワイヤを用いて
種々の溶接条件で溶接を行なったときの再熱部と原質部
の断面の面積比を予め調べておき、 前記特定の母材と特定のワイヤを用いて溶接を行う際の
板厚、入熱量、パス間温度から計算によって求められる
冷却速度と機械的特性との関係、および溶接条件と前記
再熱部と原質部の面積比との関係を照合することによ
り、溶接金属の機械的特性を予測することを特徴とする
溶接金属の特性予測方法。 - 【請求項2】 各パスにおける入熱量が一定である溶接
法に適用されるものである請求項1に記載の特性予測方
法。 - 【請求項3】 アーク溶接法に適用されるものである請
求項1または2に記載の特性予測方法。 - 【請求項4】 前記請求項1〜3のいずれかに記載され
た方法によって予測される溶接金属の特性が所望の特性
を満足しているかどうかを判断し、該所望の特性を満足
していない場合には、予め設定された溶接施工条件パラ
メーターの変更手順に従って溶接施工条件を変更し、該
変更された溶接施工条件を用いて、再度溶接金属の特性
を予測し、予測される溶接金属の特性が前記所望の特性
を満足するまで繰り返し演算を行うことにより、所望の
溶接金属特性を満足する溶接施工条件を決定することを
特徴とする溶接施工条件の決定法。
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