JP2002165595A - テロメレース活性測定方法 - Google Patents

テロメレース活性測定方法

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JP2002165595A
JP2002165595A JP2000363301A JP2000363301A JP2002165595A JP 2002165595 A JP2002165595 A JP 2002165595A JP 2000363301 A JP2000363301 A JP 2000363301A JP 2000363301 A JP2000363301 A JP 2000363301A JP 2002165595 A JP2002165595 A JP 2002165595A
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Naozumi Harada
直純 原田
Hideo Nakamura
中村  秀男
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Mitsubishi Pharma Corp
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Mitsubishi Pharma Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生きた細胞内のテロメレース活性測定方法を
提供する。 【解決手段】 以下の工程を含む、生きた細胞内のヒト
・テロメレース活性測定方法とする:(A)ヒト・テロ
メレース伸長用オリゴDNAプライマーを、カチオン脂
質キャリアにより生きた細胞に導入し、細胞内テロメレ
ースによりヒト・テロメア配列TTAGGGの繰り返し配列か
らなるDNA配列を前記ヒト・テロメレース伸長用オリ
ゴDNAプライマーの3’末端に伸長させてヒト・テロ
メレース反応産物を調製する工程、(B)ヒト・テロメ
レース反応産物を細胞内から抽出し、該ヒト・テロメレ
ース反応産物と、センス・プライマーとアンチセンス・
プライマーとを用いて、PCRを利用したストレッチP
CR法により増幅してPCR産物を得る工程、(C)前
記(B)工程で得られたPCR産物を定量する工程。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、癌細胞に特徴的な
RNA依存性DNAポリメラーゼ(テロメレース)の生
細胞内における活性の測定方法及びテロメレース阻害剤
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】動物細胞などの真核細胞染色体の線状D
NAの両末端はテロメアと呼ばれ、特殊なDNA配列と
それに結合する蛋白質からなる複雑な高次構造をとって
いる。テロメアDNAは、チミン(T)及びグアニン
(G)(反対鎖はアデニン(A)及びシトシン(C))
の豊富な特徴的な繰返し配列からなる。例えば脊椎動物
細胞染色体のテロメアDNAはTTAGGG(反対鎖はCCCTA
A)の6塩基の繰り返しで構成されており、ヒト体細胞
のテロメア配列の平均長は2〜20キロ塩基対であるこ
とが知られている。
【0003】テロメア構造はエキソヌクレアーゼによる
染色体の消化や染色体同士の末端融合を防ぐことで染色
体の安定化に寄与していると考えられている。また、染
色体の空間配置を規定する「錨」としても機能している
と推測されている。このように重要な機能を担うテロメ
アだが、次に述べるような「末端複製問題(end replic
ation problem)」により細胞分裂に伴い短縮・消耗し
ていく。即ち、線状二本鎖DNA両端の同時複製の過程
では、染色体DNAの3’末端をプライマーとして5’
→3’DNAポリメラーゼにより連続的に複製されるD
NA鎖(リーディング鎖)に対し、他方のDNA鎖(ラ
ギング鎖)では短いRNAをプライマーとして用いた断
続的な複製となる。ラギング鎖の5’最末端のRNAプ
ライマーはDNAに置き換えられないので、細胞分裂を
繰り返す度に一方の娘細胞の5’末端が次第に短縮する
ことになる。
【0004】実際、正常細胞では細胞分裂を重ねるにつ
れてテロメア配列が短縮し、その平均長は細胞の継代回
数と相関すること、継代を経るにつれて細胞分裂能が低
下し、最終的には分裂を停止した「老化」細胞となるこ
とが知られている。このように、正常細胞が分裂を停止
する一因はテロメアにあり、細胞分裂に伴うその短縮化
が染色体の不安定化を引き起こし、次いでこれを感知す
る何らかの機構によって細胞分裂の停止に至ると推測さ
れている。テロメアはいわば細胞の寿命(分裂回数)を
規定するタイマーとしての働きも有していることにな
る。
【0005】ところが癌細胞、または癌遺伝子の導入な
どにより実験的に得た不死化細胞では継代に伴う増殖停
止現象は認められていない。そこで癌細胞並びに不死化
細胞のテロメア長と細胞分裂の関係を調べたところ、こ
れらの細胞ではテロメア配列は短いが、細胞分裂を重ね
てもその平均長は変化しないことが明らかにされた。従
って、癌細胞や不死化細胞では何らかの因子がテロメア
短縮化を防ぎ、これらの細胞が(理論的には)無限に増
殖することを可能にしていると予想された。
【0006】ヒト癌細胞の無限増殖能の責任因子とし
て、テロメア配列を合成・伸長させるRNA依存性DN
Aポリメラーゼ(テロメレース)が同定されている。活
性に必要なサブユニットとしてテロメアDNA配列に相
補的な配列を含む鋳型RNA(ヒトではhTR)と、こ
れを基にしてテロメアDNAの一本鎖を延長するDNA
ポリメラーゼサブユニット(ヒトではhTERT)から
成る逆転写酵素の一種である。動物細胞ではイン・ビト
ロでのヒト細胞の不死化過程におけるテロメレースの活
性の変化が調べられており、癌遺伝子を導入された培養
細胞の継代初期にはテロメレース活性は検出されなかっ
たが、継代後期に出現した無限増殖能を獲得した細胞集
団において、テロメレース活性が検出されることが明ら
かになった(Counter, EMBO J, 11, 1921, 1992)。
【0007】また、実際のヒト癌細胞のほとんどにテロ
メレース活性が検出される一方で、多くの正常細胞では
テロメレース活性は検出されない(Autexier and Greid
er,Trends Biochem.Sci, 21, 387, 1996)。さらに、ヒ
ト子宮頚癌由来Hela細胞においてhTRのアンチセ
ンスDNAを発現させることでテロメレース活性を低下
させると、その細胞は何回か分裂した後、死滅した(Fe
ng et al., Science, 269, 1236, 1995)。これらのこ
とから、ヒト癌細胞はその成立過程においてテロメレー
ス活性の発現によりテロメア配列の短縮化を免れ、無限
増殖能を獲得するのではないかと推測されている。
【0008】以上述べたように、ヒト癌の発癌過程やヒ
ト癌細胞の悪性形質維持へのテロメレースの関わりが強
く疑われており、その阻害剤は癌細胞の無限増殖能を失
わしめる新しい抗癌剤になると期待されている。そこで
テロメレース阻害剤を発見するためのテロメレース活性
測定法の開発が求められている。
【0009】ヒト・テロメレース活性の測定法として
は、ヒト癌細胞抽出物や部分精製したテロメレースに対
し、基質となるヒトのテロメア配列TTAGGGを数単位繰返
したDNA配列の一本鎖オリゴヌクレオチド、デオキシ
チミジン三リン酸(dTTP)、デオキシアデノシン三
リン酸(dATP)、及び32P標識デオキシグアノシン
三リン酸(dGTP)を加え保温した後、TTAGGGの繰返
し配列が数回〜数百回にわたって合成・付加された様々
な長さの一本鎖DNA生成物(ヒト・テロメレース反応
産物)をポリアクリルアミド電気泳動にて直接的に検出
・解析する方法がある(Morin GB, Cell, 59, 521, 198
9)。しかし、この方法では高放射活性の3 2P標識dG
TPを使用し、電気泳動ゲルを長期にわたってX線フィ
ルムに露光する必要があるなど大変煩雑であるため阻害
剤の評価法、特に多検体スクリーニング法としては適さ
ない。
【0010】その後、上記方法によりイン・ビトロでヒ
ト・テロメレースが合成したテロメレース反応産物をpo
lymerase chain reaction(以下PCR)を用いて増幅
できることが示されている(Morin GB, Nature, 353, 4
54, 1991)。この知見に基づき、PCRを応用したスト
レッチPCR(Tatematsu et al., Oncogene, 13, 226
5, 1996)やテロメリック・リピート・アンプリフィケ
イション・プロトコール(以下TRAP)(Kim et a
l., Science, 353, 454, 1994)が開発され、ヒト・テ
ロメレース活性の迅速・高感度な測定が可能になった。
これらの方法はヒト・テロメレースと細胞増殖、分化、
老化、癌などの関わりといった分子生物学・細胞生物学
的課題の解析手段としてだけでなく、ヒト・テロメレー
ス阻害剤の薬理学的評価法としても応用され、現在では
いくつかの阻害剤が見いだされている(Hayakawa et a
l., Biochemistry, 38, 11501, 1999, Naasani et al.,
CancerRes., 59, 4004,1999, Perry et al., J. Med.
Chem., 41, 3253, 1998)。
【0011】このように試験管内での酵素阻害活性を指
標として見いだされたヒト・テロメレース阻害剤につい
て、実際にヒト生細胞内においてもテロメレースを阻害
できるかどうかを知ることは重要である。例えば、試験
管内ではテロメレース阻害活性が確認されている、ある
化合物において、次に癌細胞の増殖抑制のような薬理学
的効果が認められたとき、それが細胞内テロメレースの
阻害に基づくものかどうかを確認することは、その化合
物の抗癌剤としての薬効及び作用機序を証明する上で重
要である。また、阻害様式が可逆性のテロメレース阻害
剤の場合は、細胞に投与したのち細胞からテロメレース
を抽出・活性測定する方法では、抽出段階で希釈などに
より阻害が解除されてしまうと予想される。こうした可
逆性阻害剤を評価するときは、生細胞内のテロメレース
活性の変化を追跡するしかない。
【0012】生きたヒト細胞内のテロメレース活性を測
定する方法はすでに報告があり、大屋敷らのin situ
TRAP法(Ohyashiki K et al., Cancer. Res., 57,
2100,1997)、並びにNaasaniらの方法(Naasani I. et
al., Biochem. Biophys. Res. Commun, 249, 391, 199
8)がそれである。しかし、これらの方法にはいくつか
の難点がある。例えばin situ TRAP法は、プレパ
ラート上で培養したヒト生細胞に蛍光標識したヒト・テ
ロメレースの伸長用オリゴDNAプライマーを投与し、
細胞内でテロメレース反応を行った後固定化し、プレパ
ラートのままTRAP法に供する。この方法ではPCR
の際プレパラートを用いるため処理量が限られており、
また細胞内の全蛍光シグナルを検出した画像が結果とな
るためバックグランドが高く、定量性も低い。一方、Na
asaniらの方法はヒト細胞にヒト・テロメレースの伸長
用オリゴDNAプライマーを導入し、生きた細胞内でテ
ロメレース反応を行い、後にテロメレース反応産物を抽
出して通常のTRAP法により増幅・定量するものであ
る。この方法ではPCR以降の工程は従来のTRAP法
と同様であるため、処理量や結果の定量性もTRAP法
と同等である。しかし、テロメレースの伸長用プライマ
ー導入の際、ストレプトリシンOという薬剤により生細
胞を一時的・強制的に透過性にしているため、この工程
において細胞にダメージを与えている可能性を否定でき
ない。またストレプトリシンOによる生細胞の透過処理
工程はこの薬剤の品質に左右される為、再現が難しい場
合があり、安定な測定法とは言い難い。そこで簡便かつ
安定で定量性にも優れた生細胞内テロメレース活性測定
法の開発が望まれている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、生き
た細胞内のテロメレース活性、特に生きたヒト・細胞内
のヒト・テロメレース活性を定量性よく簡便かつ安定に
測定できる方法を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべく鋭意努力した結果、テロメレースの基質とな
る伸長用オリゴDNAプライマーを生きた細胞に導入す
る際、カチオン脂質などのキャリアを用いた「リポフェ
クション」による導入法が簡便・安定で細胞にも穏やか
であることを見いだした。この工程とストレッチPCR
法を組み合わせることで、生きた細胞内のテロメレース
活性を測定できることを見出し、本発明を完成させるに
至った。
【0015】即ち本発明は、以下の通りである。 (1)以下の工程を含む、生きた細胞内のヒト・テロメ
レース活性の測定方法である。 (A)5’末端側にある第1のタグ配列、及びヒト・テ
ロメア配列TTAGGG以外の繰返し配列からなる3’末端側
合成開始配列とを含むヒト・テロメレース伸長用オリゴ
DNAプライマーを、カチオン脂質キャリアにより生き
た細胞に導入し、細胞内テロメレースによりヒト・テロ
メア配列TTAGGGの繰り返し配列からなるDNA配列を前
記ヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプライマーの
3’末端に伸長させてヒト・テロメレース反応産物を調
製する工程、(B)前記工程(A)で得られたヒト・テ
ロメレース反応産物を細胞内から抽出し、該ヒト・テロ
メレース反応産物と、センス・プライマーとしての前記
ヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプライマーと、
アンチセンス・プライマーとしての、第1のタグ配列と
相補性がなく5’末端側にある第2のタグ配列及びヒト
・テロメア配列の相補配列CCCTAAの繰返し配列からなる
3’末端側DNA配列を含むアンチセンス・オリゴDN
Aプライマーとを用いて、PCRを利用したストレッチ
PCR法により増幅してPCR産物を得る工程、(C)
前記(B)工程で得られたPCR産物を定量する工程。 (2)前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプラ
イマーのヒト・テロメア配列TTAGGG以外の繰返し配列か
らなる3’末端側合成開始配列は、TTGGGGの繰り返し配
列からなる(1)の測定方法。 (3)前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプラ
イマーのヒト・テロメア配列TTAGGG以外の繰返し配列か
らなる3’末端側合成開始配列は、TTGGGGを少なくとも
3回繰り返した配列からなる(1)又は(2)の測定方
法。 (4)前記アンチセンス・オリゴDNAプライマーは、
ヒト・テロメア配列の相補配列CCCTAAを少なくとも3回
繰り返した配列からなるDNA配列を含むオリゴDNA
プライマーである(1)〜(3)のいずれかの測定方
法。 (5)前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプラ
イマーがpTG3(5'-GTAAAACGACGGCCAGTTTGGGGTTGGGG
TTGGGGTTG-3')(配列番号1)であり、アンチセンス・
オリゴDNAプライマーがpTAGγ(5'-CAGGAAACAGC
TATGACCCCTAACCCTAACCCTAACCCT-3')(配列番号2)で
ある(1)〜(4)のいずれかの測定方法。 (6)前記生きた細胞は、生きたヒト細胞であることを
特徴とする(1)〜(5)のいずれかのヒト・テロメレ
ース活性測定方法。 (7)上記(1)〜(6)のいずれかのテロメレース活
性測定方法を用いた悪性新生物性疾患、細胞増殖性疾患
または炎症の判定方法。 (8)5’末端側にある第1のタグ配列、及びヒト・テ
ロメア配列TTAGGG以外の繰返し配列からなる3’末端側
合成開始配列とを含み、ヒト・テロメア配列TTAGGGの繰
り返し配列からなるDNA配列を3’末端に伸長させる
ためのヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプライマ
ー。 (9)前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプラ
イマーのヒト・テロメア配列TTAGGG以外の繰返し配列か
らなる3’末端側合成開始配列は、TTGGGGの繰り返し配
列からなる(8)のヒト・テロメレース伸長用オリゴD
NAプライマー。 (10)前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプ
ライマーのヒト・テロメア配列TTAGGG以外の繰返し配列
からなる3’末端側合成開始配列は、TTGGGGを少なくと
も3回繰り返した配列からなる(8)のヒト・テロメレ
ース伸長用オリゴDNAプライマー。 (11)上記(8)〜(10)のいずれかのヒト・テロ
メレース伸長用オリゴDNAプライマーと、前記第1の
タグ配列と相補性がなく5’末端側にある第2のタグ配
列及びヒト・テロメア配列の相補配列CCCTAAの繰返し配
列からなる3’末端側DNA配列を含むアンチセンス・
オリゴDNAプライマーとのプライマーセット。 (12)前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプ
ライマーがpTG3(5'-GTAAAACGACGGCCAGTTTGGGGTTGG
GGTTGGGGTTG-3')(配列番号1)であり、アンチセンス
・オリゴDNAプライマーがpTAGγ(5'-CAGGAAACA
GCTATGACCCCTAACCCTAACCCTAACCCT-3')(配列番号2)
である(11)のプライマーセット。 (13)下記工程を含む、テロメレース阻害剤の製造方
法。(D)上記(1)〜(6)のいずれかのヒト・テロ
メレース活性測定方法を用いて、テロメレース阻害活性
を有する物質をスクリーニングする工程、(E)前記
(D)工程で得られるテロメレース阻害活性を有する物
質を用いてテロメレース阻害剤を製剤化する工程。 (14)テロメレース阻害活性を有する物質が細胞内に
投与された後に活性を発現するものであることを特徴と
する(13)のテロメレース阻害剤の製造方法。 (15)テロメレース阻害活性を有する物質を用いて、
テロメレース阻害剤を製造する方法において、上記
(1)〜(6)のいずれかのヒト・テロメレース活性測
定方法を用いて、テロメレース阻害活性を測定し、テロ
メレース阻害活性を確認する工程を含むテロメレース阻
害剤の製造方法。 (16)テロメレース阻害活性を有する物質が細胞内に
投与された後に活性を発現するものであることを特徴と
する(15)のテロメレース阻害剤の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】<1>本発明のヒト・テロメレー
ス活性測定方法 本発明において、テロメレースとはテロメア配列の繰返
し配列を伸長させる機能を有するRNA依存性DNAポ
リメラーゼのことである。テロメレースは、ヒトを含む
哺乳類動物などの多細胞真核生物、あるいは酵母や原生
動物などの単細胞真核生物由来のものが知られている
が、本発明の方法は、これらのテロメレースの内、ヒト
・テロメレースの細胞内活性測定に好適な方法である。
【0017】以下、本発明のヒト・テロメレース活性測
定方法を工程ごとに具体的に説明する。 (1)被検細胞の培養 まず、前記(A)工程の前に被検細胞の培養を行う。
【0018】被検細胞は、マウス、ラット、ウサギ等の
生きた動物細胞が挙げられるが、好ましくは生きたヒト
細胞であり、いずれもテロメレース活性陽性であれば特
に限定されない。
【0019】被検細胞は、実験前日に動物血清や抗生物
質を含む適切な培養液に適切な細胞濃度で懸濁して、培
養用ディッシュまたはプレートに播き込む。多検体の評
価にあたっては96穴プレートなどを用いるのが望まし
い。
【0020】血球由来のヒト細胞のように、浮遊性の細
胞の場合はそのまま浮遊培養を行うが、接着性のヒト細
胞の場合はディッシュまたはプレートに接着・伸展する
まで適切な時間、培養を続ける。その際、接着能力が弱
い接着性ヒト細胞については、接着度を高めるためポリ
リジンやコラーゲン、フィブロネクチンなどでディッシ
ュやプレートをあらかじめコートしておくことも好まし
い。 (2)A工程(ヒト・テロメレース伸長用プライマーの
被検細胞への導入とテロメレース伸長反応) A工程は、5’末端側にある第1のタグ配列、及びヒト
・テロメア配列TTAGGG以外の繰返し配列からなる3’末
端側合成開始配列とを含むヒト・テロメレース伸長用オ
リゴDNAプライマーを、カチオン脂質キャリアにより
生きた細胞に導入し、細胞内テロメレースによりヒト・
テロメア配列TTAGGGの繰り返し配列からなるDNA配列
を前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプライマ
ーの3’末端に伸長させてヒト・テロメレース反応産物
を調製する工程である。
【0021】本発明において「タグ配列」とは、後のP
CRの際にテロメレース反応産物の5’末端または3’
末端から増幅させることのできる配列であれば制限され
ず、上記伸長用オリゴDNAプライマーの5’末端にあ
る「第1のタグ配列」としては、例えば、GTAAAACGACGG
CCAGT(配列番号1に示すうち塩基番号1〜17)が挙
げられる。
【0022】また、上記伸長用オリゴDNAプライマー
の3’末端側合成開始配列は、ヒト・テロメレースが認
識しテロメア配列を伸長させる配列であれば何でも良
く、ヒト・テロメア配列TTAGGG以外の繰返し配列からな
り、テロメア配列の繰返し配列を3’末端に伸長させる
配列であれば特に制限はない。本発明においては、前記
3’末端側合成開始配列は、TTGGGGの繰返し配列からな
ることが好ましく、更にはTTGGGGを少なくとも3回繰返
した配列からなることが好ましい。
【0023】TTGGGGの繰返し配列とは、TTGGGGを数回繰
り返した配列であり、3’末端はTTGGGGの一部であって
も良い。
【0024】上述の5’末端にある第1のタグ配列と
3’末端側合成開始配列とを有するヒト・テロメレース
伸長用オリゴDNAプライマーとして、具体的にはpT
G3(5'-GTAAAACGACGGCCAGTTTGGGGTTGGGGTTGGGGTTG-
3')(配列番号1)が好ましく用いられる。
【0025】また、用いるヒト・テロメレース伸長用オ
リゴDNAプライマーについては、例えばその5’末端
をビオチンやジゴキシゲニンなどで標識しておけば、の
ちにそれらに対する特異的レセプター(例えばビオチン
の場合はアビジン)を用いて細胞由来の挟雑物との分離
を容易にすることができることから好ましい。
【0026】また、ヒト・テロメレース伸長用オリゴD
NAプライマーの結合様式をホスホロチオエート結合な
どにすることも好ましく、該結合のオリゴDNAプライ
マーを用いれば、細胞内のDNA分解酵素に対し耐性に
なるため、細胞内テロメレース反応産物の回収率が増
加、検出が容易になる。
【0027】本発明の伸長用オリゴDNAプライマー
は、通常の化学合成法により製造することができる。
【0028】本発明において、生きた被検細胞へのヒト
・テロメレース伸長用オリゴDNAプライマーの導入
は、リポフェクション法により行う。その為の試薬とし
ては、カチオン脂質キャリアが用いられ、具体的にはリ
ポフェクチン、リポフェクトアミン(以上ライフテック
オリエンタル社)、スーパーフェクト、エフェクテン
(以上キアゲン社)、FuGENE6(ロシュ・ダイア
グノティクス社)などが市販されているが、細胞に一本
鎖オリゴDNAを導入できるリポフェクション用試薬な
らこの限りではない。
【0029】ヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプ
ライマーの導入効率を高めたり、リポフェクションによ
る細胞へのダメージを抑えるために、あらかじめ細胞を
洗浄したり無血清培地に交換するなどの処理を行っても
良い。
【0030】被検細胞への導入方法としては、例えば以
下の方法により行える。
【0031】上述のリポフェクション試薬とヒト・テロ
メレース伸長用オリゴDNAプライマーの複合体を通常
の方法により作成し、これを被検ヒト細胞に加える。そ
のまま一定時間培養を継続し細胞内テロメレース反応を
行ってヒト・テロメレース反応産物を調製するが、用い
るリポフェクション試薬によっては、培地中のリポフェ
クション試薬とヒト・テロメレース伸長用オリゴDNA
プライマーの複合体の除去を行っても良い。
【0032】これらの操作は全てリポフェクション試薬
の説明書に従うが、条件を至適化するため工程を適宜改
変しても良い。 (3)B工程(細胞内テロメレース反応産物の抽出とテ
ロメレース反応産物のストレッチPCRによる増幅) B工程は、前記A工程で得られたヒト・テロメレース反
応産物を細胞内から抽出し、該ヒト・テロメレース反応
産物と、センス・プライマーとしての前記ヒト・テロメ
レース伸長用オリゴDNAプライマーと、アンチセンス
・プライマーとしての、第1のタグ配列と相補性がなく
5’末端側にある第2のタグ配列及びヒト・テロメア配
列の相補配列CCCTAAの繰返し配列からなる3’末端側D
NA配列を含むアンチセンス・オリゴDNAプライマー
とを用いて、PCRを利用したストレッチPCR法によ
り増幅してPCR産物を得る工程である。
【0033】具体的には以下の通りである。
【0034】上記(2)の後、細胞を可溶化して細胞内
テロメレース反応産物を抽出・回収する。その方法とし
ては細胞内テロメレース反応産物だけを選択的に抽出で
きるものが望ましいが、例えばHirtの方法(Hirt
B., J. Mol. Biol., 26, 365,1967)なら、細胞内の比
較的低分子のDNAだけを可溶性成分として抽出し、染
色体DNAのような高分子DNAは不溶物として除去す
ることができる。
【0035】これを必要に応じてフェノール/クロロ
フォルム抽出及び/またはエタノール沈澱といった通常
の方法、一本鎖オリゴDNAプライマーの相補配列を
利用した核酸ハイブリダイゼション、ビオチンやジゴ
キシゲニンで標識されたヒト・テロメレース伸長用プラ
イマーの場合は、それぞれアビジンや抗ジゴキシゲニン
抗体などの適当なレセプターを用いた特異的分離、抗
DNA抗体を用いた分離、などによって細胞内テロメレ
ース反応産物を精製する。
【0036】また、テロメレース伸長反応を行う際、各
検体についてヒト・テロメレース伸長用DNAプライマ
ーを含まないで同様に操作した陰性対照群を設定するこ
とにより、染色体DNAの混入などによる疑陽性反応を
除外する判断を下すことが可能となるので、そのような
工程を含むことは本発明の望ましい態様である。
【0037】その後、下記の方法によりPCR増幅を行
う。
【0038】上記(2)に示した工程において、被検ヒ
ト細胞内にヒト・テロメレースが存在すれば、ヒト・テ
ロメレース伸長用オリゴDNAプライマーの3’末端か
らヒト・テロメア配列の繰返し配列が合成・伸長され
る。しかし、ヒト・テロメレースを発現していると言わ
れるヒト癌細胞においても、その酵素活性は見かけ上と
ても低いものなので、PCR法を用いてテロメレース反
応産物を検出可能な量に増幅することが必要となる。
【0039】PCR法による増幅に用いられるセンス・
プライマーとしては、前記のヒト・テロメレース伸長用
オリゴDNAプライマーを用いる。
【0040】そして、アンチセンス・プライマーとして
は、前記伸長用オリゴDNAプライマーとはアニールせ
ず、ヒト・テロメレースにより産生したヒト・テロメア
配列TTAGGGの繰返し配列にはアニールするものが用いら
れる。具体的には、例えば、5’末端側にある第2のタ
グ配列、及びヒト・テロメア配列の相補配列CCCTAAの繰
返し配列からなる3’末端側DNA配列を含むアンチセ
ンス・オリゴDNAプライマーを用いる。
【0041】CCCTAAの繰返し配列とは、CCCTAAを数回繰
返した配列であり、3’末端はCCCTAAの一部であっても
良い。特に3’末端がTであると伸長用オリゴDNAプ
ライマーにアニールしないために好ましい。
【0042】上記アンチセンス・オリゴDNAプライマ
ーの5’末端にある「第2のタグ配列」とは、上記第1
のタグ配列と相補性がないものであれば特に制限はな
く、例えば、CAGGAAACAGCTATGAC(配列番号2に示すう
ち塩基番号1〜17)が挙げられる。
【0043】アンチセンス・プライマーとして、5’末
端側に第2のタグ配列を有し、ヒト・テロメア配列の相
補配列CCCTAAを少なくとも3回繰り返した配列からなる
DNA配列を含むアンチセンス・オリゴDNAプライマ
ーが好ましく、具体的にはpTAGγ(5'-CAGGAAACAGC
TATGACCCCTAACCCTAACCCTAACCCT-3')(配列番号2)が
より好ましく用いられる。
【0044】本発明におけるアンチセンス・オリゴDN
Aプライマーは、通常の化学合成法で製造することがで
きる。
【0045】本発明におけるPCR法による増幅は、上
記ヒト・テロメレース産物、上記センス・プライマー及
びアンチセンス・プライマーを用いて通常の方法で行え
ば良い。 (4)C工程(PCR産物の検出) C工程は、上記B工程で得られたPCR産物を測定する
工程である。
【0046】本発明においてPCR増幅を行う際、後に
検出・測定するために、PCR産物の長さや量をPCR
増幅時に基質となるデオキシリボヌクレオチド三リン酸
(dTTP、dATP、dGTP、dCTP:以下dN
TPと総称)のうちいくつかの放射性同位体を適当な割
合で加えてPCR産物を放射能(RI)標識することが
出来るが、ジゴキシゲニン、フルオレッセイン、ビオチ
ンといった低分子化合物で標識したdNTP(例えばジ
ゴキシゲニン−dUTP)を用いてPCR産物を標識
(非RI標識)することが好ましい。また、用いられる
オリゴDNAプライマーの5’末端を32P−ATP及
びポリヌクレオチドキナーゼを用いてリン酸化したも
の、または上記低分子化合物で化学修飾したものでPC
R産物を標識してもよい。これらの標識法は通常の方法
により達成できる。
【0047】RI標識されたPCR産物については、必
要に応じて精製処理を施した後、尿素変性または非変性
ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動した後オートラジオ
グラフィやイメージアナライザーにて長さ、量の解析を
行うことができる。
【0048】また、非RI標識のPCR産物については
電気泳動後、2本鎖DNAだけを特異的に検出できるサ
イバーグリーンI(モレキュラ・プローブス社)などの
蛍光試薬を用いて可視化・定量することが可能である。
また、例えばナイロン膜に転写したPCR産物を各々の
標識化合物に対するプローブ(例えば抗ジゴキシゲニン
抗体)を用いて可視化し同様に解析することが出来る。
同様に非RI標識PCR産物をELISAプレートなど
に固定化し、標識化合物に対する特異的抗体(例えば抗
ジゴキシゲニン抗体)を用いたELISA法により検出
・定量することも可能である。
【0049】また、多検体評価時などに用いる簡便定量
法としては、液相中でも2本鎖DNAだけを特異的に検
出・定量できる蛍光試薬、例えばピコグリーン(モレキ
ュラ・プローブス社)を用いれば良く、この場合はPC
R産物の標識や精製は必要ない。 <2>本発明の悪性新生物性疾患の判定方法 本発明のヒト・テロメレース活性測定方法により、被検
細胞、特にヒト細胞がガン細胞であるかどうかの判定、
つまり悪性新生物性疾患、細胞増殖性疾患か否かの判定
ができる。
【0050】また、本発明のヒト・テロメレース活性測
定方法により、被検者又はその組織の細胞がテロメレー
ス活性を示さない場合は、それは炎症であると予測され
る。 <3>本発明のテロメレース阻害剤の製造方法 本発明は、下記工程を含む、テロメレース阻害剤の製造
方法である。(D)本発明のヒト・テロメレース活性測
定方法を用いて、テロメレース阻害活性を有する物質を
スクリーニングする工程、(E)前記(D)工程で得ら
れるテロメレース阻害活性を有する物質を用いてテロメ
レース阻害剤を製剤化する工程。
【0051】「スクリーニングする工程」において、テ
ロメレース阻害活性を有する物質を含む分離源として、
微生物の培養液、菌体、植物エキス等を用いることがで
きる。
【0052】上記スクリーニング工程で得られるテロメ
レース阻害活性を有する物質を、テロメレース阻害活性
を指標として、該分離源から精製等して、通常の医薬の
製剤化の手法を用いてテロメレース阻害剤を製剤化すれ
ば良い。
【0053】また、本発明のヒト・テロメレース活性測
定方法を用いた前記スクリーニングする工程において得
られたテロメレース阻害活性を有する物質の構造が同定
されれば、該物質を、化学合成法や購入する等の他の方
法で入手することも可能である。
【0054】また、本発明は、テロメレース阻害活性を
有する物質を用いて、テロメレース阻害剤を製造する方
法において、本発明のヒト・テロメレース活性測定方法
を用いて、テロメレース阻害活性を測定し、テロメレー
ス阻害活性を確認する工程を含むテロメレース阻害剤の
製造方法である。確認する工程においては、テロメレー
ス阻害活性を有する物質が目的のテロメレース活性を有
するか否かの確認をするが、更に、医薬製剤として適当
なテロメレース活性に調整する工程を含むことは好まし
い。該方法により、テロメレース阻害剤の品質管理等を
行える。
【0055】上述のように本発明のヒト・テロメレース
活性測定方法により、テロメレース阻害活性のある物質
(テロメレース阻害剤)を試験・評価することができる
ので、本発明のヒト・テロメレース活性測定方法をテロ
メレース阻害剤の製造工程に組み込むことにより、抗癌
剤として有用なテロメレース阻害剤を得ることができ
る。
【0056】なお、本発明のテロメレース阻害剤の製造
方法において、「テロメレース阻害活性を有する物質」
は、細胞内に投与された後に代謝されてテロメレース阻
害活性を発現するものでもよく、所謂プロドラックにつ
いても適用できる。
【0057】また、本発明の生きた細胞内におけるヒト
・テロメレース活性測定方法を用いると、例えばある化
合物が示す癌細胞の増殖抑制のような薬理学的効果が、
細胞内テロメレースの阻害に基づくものかどうかを判定
することができる。
【0058】また、可逆的テロメレース阻害剤の場合は
細胞に投与しても、従来のストレッチPCRやTRAP
法では細胞からのテロメレース反応産物の抽出・テロメ
レース活性測定工程において希釈などにより阻害が解除
されてしまうと予想される。こうした可逆性阻害剤の細
胞内テロメレース阻害活性を評価するときは、生細胞内
のテロメレース活性の変化を測定するしかなく、本発明
はその測定に有用である。
【0059】さらには試験管内でテロメレースの阻害活
性が確認されているにもかかわらず、生細胞内のテロメ
レースを阻害できないと本発明により判定される化合物
の場合、細胞内への取り込み、代謝、排出などの薬物動
態的問題があると予想される。本発明はそのような手が
かりを与えるのにも有用である。
【0060】また、こうした阻害剤評価のみならず、増
殖刺激や細胞周期、細胞老化などの生命現象に伴う細胞
内テロメレース活性の変化を追跡する目的でも本発明は
有用である。
【0061】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例
によって限定されるものではない。 <テロメレース活性陽性および陰性ヒト細胞における細
胞内テロメレース活性の測定> (1)ヒト細胞の培養 従来のストレッチPCR法を用いてテロメレース活性陽
性と判定された、ヒト子宮頚癌由来Hela S3細
胞、ヒト結腸癌由来PA−1細胞、ヒト乳癌由来SKB
R−3細胞、ヒト大腸癌由来HCT−116細胞、及び
テロメレース活性陰性と判定されたヒト繊維芽細胞由来
WI−38、さらにWI−38の不死化細胞株であるV
A−13、ヒト血管内皮細胞(HUVEC)の7種をそ
れぞれ2万5千個/ウェルの濃度で96ウェル培養プレ
ートに播き、それぞれ適切な培地で一晩培養した。
【0062】HUVECは東洋紡より、それ以外はAmer
ican Type Culture Collectionより購入した。それぞれ
のカタログ番号は、Hela S3細胞(CCL2.
2)、PA−1細胞(CRL1572)、SKBR−3
細胞(HTB30)、HCT−116細胞(CCL24
7)、WI−38(CCL75)、VA−13(CCL
75.1)である。
【0063】WI−38、VA−13、HUVECの場
合は接着性を高めるためコラーゲンをコートした96ウ
ェル培養プレート(岩城硝子)を用いた。 (2)リポフェクションによるヒト・テロメレース伸長
用オリゴDNAプライマーのヒト細胞への導入と細胞内
テロメレース伸長反応 それぞれの細胞を血清不含ダルベッコ最少必須培地(D
MEM)で洗浄した。その間、リポフェクチン(ライフ
テックオリエンタル社)の説明書に従い、リポフェクチ
ンとテロメレース伸長用オリゴDNAプライマー:b−
SpTG3(5’ビオチン標識された、ホスホロチオエ
ート結合型のpTG3(5'-GTAAAACGACGGCCAGTTTGGGGTT
GGGGTTGGGGTTG-3')(配列番号1))とリポフェクチン
との複合体を作成した。
【0064】この複合体溶液80μlを各ウェルに添加
し、37℃、5%CO2の条件下で5時間、細胞内への伸長反
応用プライマーの導入を行った。陰性対照として伸長用
オリゴDNAプライマーを含まないで同様に操作を行っ
た細胞を設置した。
【0065】次いで複合体溶液を除去し、通常の培地に
交換して37℃、5%CO2の条件下で15時間、細胞内テロ
メレース反応を行った。 (3)細胞内テロメレース反応産物の抽出 細胞内テロメレース反応を行わせた細胞に、50μlの細
胞溶解液(20mMのTris−HCl(pH7.5)、0.5%の
SDS、10mMのEDTA、10mMのNaCl、0.5mg/mlの
プロナーゼK)を加え、37℃で20分インキュベートし
た。この内40μlを別の容器に移し、10μlの5MのNaC
lを加え良く混和したのち、4℃で一晩放置した。
【0066】次いで10000×g、4℃で30分遠心分離を行
い、染色体DNAなどを含む不溶性画分を除去した。得
られた可溶性画分を細胞内テロメレース反応産物溶液と
した。 (4)ストレッチPCRによる細胞内テロメレース反応
産物の増幅とその定量 ストレプトアビジン(ライフテックオリエンタル社)を
共有結合させたポリカーボネート製96ウェルPCRプ
レート(コーニング社)に、細胞内テロメレース反応産
物溶液20μlを添加し、37℃で30分保温したのち蒸留水
で洗浄した。
【0067】25μl/ウェルのPCR反応液[即ち20mM
のTris−HCl(pH 8.3)、75mMのKCl、0.005%
のW−1(界面活性剤)、1.5mMのMgCl2、1μMのp
TG3(センス・プライマー)、1μMのpTAGγ(ア
ンチセンス・プライマー:5'-CAGGAAACAGCTATGACCCCTAA
CCCTAACCCTAACCCT-3'(配列番号2))、50μMのdAT
P、50μMのdGTP、50μMのdCTP、50μMのdT
TP、1U/25μlのTaq DNAポリメレースからなる
反応液](以上、ライフテックオリエンタル社)を加
え、PCRサーマルサイクラーMP(宝酒造)を用いて
PCRを行った(93℃1分、69℃1分、72℃2分を30サイ
クル)。
【0068】PCR終了後、滅菌水を100μl加えて計12
5μlとした。このうち100μlを96ウェル黒色プレート
(住友ベークライト)に移し、200倍希釈したピコグリ
ーン溶液(モレキュラ・プローブス社)を100μl加え5
分間放置した後、励起波長485nm、吸収波長538nmにおけ
る蛍光強度を蛍光プレートリーダー・フルオロスキャン
II(大日本製薬)にて測定した。
【0069】その結果、図1に示すようにテロメレース
活性陽性細胞と言われるHelaS3、PA−1、SK
BR−3、HCT−116からは細胞内テロメレース反
応産物が検出され、テロメレース活性陰性細胞であるW
I−38、VA−13、HUVECからは細胞内テロメ
レース反応産物は検出されなかった。
【0070】
【発明の効果】本発明により、生きた細胞内、特に生き
たヒト細胞内のテロメレース活性を検出・定量すること
ができる。特に本発明の方法では生きた細胞へのテロメ
レース伸長反応用プライマーの導入方法としてリポフェ
クション法を採用しているため、従来のin situ TRA
P法やNaasaniらの方法(Naasani I. et al., Biochem.
Biophys. Res. Commun., 249, 391, 1998)と比較して
簡便・迅速であり多検体評価に好適であるという特徴が
ある。
【0071】更に全行程を96穴プレートを用いて操作
することによって、処理量を飛躍的に増大させることが
でき、本発明の方法は、悪性新生物性疾患等の判定に利
用できる。
【0072】また、本発明によりテロメレース阻害剤の
大量スクリーニングおよび品質の評価などに応用可能で
ある。
【0073】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Mitsubishi-Tokyo Pharmaceuticals, Inc.(三菱東京製薬株式会社) <120> テロメレース活性測定方法 <130> YK00024 <160> 2 <210> 1 <211> 38 <212> nucleic acid <213> Artificial Sequence <220> <223> Sense primer <400> 1 gtaaaacgac ggccagtttg gggttggggt tggggttg 38 <210> 2 <211> 39 <212> nucleic acid <213> Artificial Sequence <220> <223> Antisense primer <400> 2 caggaaacag ctatgacccc taaccctaac cctaacct 39
【図面の簡単な説明】
【図1】 テロメレース抽出液においてはテロメレース
活性陽性または陰性と判定された各種ヒト細胞の細胞内
テロメレース活性を測定した結果である。PCR増幅用
のアンチセンス・プライマー/センス・プライマーを加
えない場合をプライマー(−)、加えた場合をプライマ
ー(+)と示した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 BA11 CA01 GA13 HA11 4B063 QA05 QQ02 QQ34 QQ95 QR08 QR32 QR42 QR59 QR62 QS02 QS25 QS32 QS34 QX02 4C084 AA27 NA14 ZB262 ZC202

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の工程を含む、生きた細胞内のヒト
    ・テロメレース活性測定方法: (A)5’末端側にある第1のタグ配列、及びヒト・テ
    ロメア配列TTAGGG以外の繰返し配列からなる3’末端側
    合成開始配列とを含むヒト・テロメレース伸長用オリゴ
    DNAプライマーを、カチオン脂質キャリアにより生き
    た細胞に導入し、細胞内テロメレースによりヒト・テロ
    メア配列TTAGGGの繰り返し配列からなるDNA配列を前
    記ヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプライマーの
    3’末端に伸長させてヒト・テロメレース反応産物を調
    製する工程、(B)前記工程(A)で得られたヒト・テ
    ロメレース反応産物を細胞内から抽出し、該ヒト・テロ
    メレース反応産物と、センス・プライマーとしての前記
    ヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプライマーと、
    アンチセンス・プライマーとしての、第1のタグ配列と
    相補性がなく5’末端側にある第2のタグ配列及びヒト
    ・テロメア配列の相補配列CCCTAAの繰返し配列からなる
    3’末端側DNA配列を含むアンチセンス・オリゴDN
    Aプライマーとを用いて、PCRを利用したストレッチ
    PCR法により増幅してPCR産物を得る工程、(C)
    前記(B)工程で得られたPCR産物を測定する工程。
  2. 【請求項2】 前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴD
    NAプライマーのヒト・テロメア配列TTAGGG以外の繰返
    し配列からなる3’末端側合成開始配列は、TTGGGGの繰
    り返し配列からなる請求項1に記載のヒト・テロメレー
    ス活性測定方法。
  3. 【請求項3】 前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴD
    NAプライマーのヒト・テロメア配列TTAGGG以外の繰返
    し配列からなる3’末端側合成開始配列は、TTGGGGを少
    なくとも3回繰り返した配列からなる請求項1又は2に
    記載のヒト・テロメレース活性測定方法。
  4. 【請求項4】 前記アンチセンス・オリゴDNAプライ
    マーは、ヒト・テロメア配列の相補配列CCCTAAを少なく
    とも3回繰り返した配列からなるDNA配列を含むオリ
    ゴDNAプライマーである請求項1〜3のいずれか一項
    に記載のヒト・テロメレース活性測定方法。
  5. 【請求項5】 前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴD
    NAプライマーがpTG3(5'-GTAAAACGACGGCCAGTTTGG
    GGTTGGGGTTGGGGTTG-3')(配列番号1)であり、アンチ
    センス・オリゴDNAプライマーがpTAGγ(5'-CAG
    GAAACAGCTATGACCCCTAACCCTAACCCTAACCCT-3')(配列番
    号2)である請求項1〜4のいずれか一項に記載のヒト
    ・テロメレース活性測定方法。
  6. 【請求項6】 前記生きた細胞は、生きたヒト細胞であ
    ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載
    のヒト・テロメレース活性測定方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか一項に記載のヒ
    ト・テロメレース活性測定方法を用いた悪性新生物性疾
    患、細胞増殖性疾患または炎症の判定方法。
  8. 【請求項8】 5’末端側にある第1のタグ配列、及び
    ヒト・テロメア配列TTAGGG以外の繰返し配列からなる
    3’末端側合成開始配列とを含む、ヒト・テロメア配列
    TTAGGGの繰り返し配列からなるDNA配列を3’末端に
    伸長させるためのヒト・テロメレース伸長用オリゴDN
    Aプライマー。
  9. 【請求項9】 前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴD
    NAプライマーのヒト・テロメア配列TTAGGG以外の繰返
    し配列からなる3’末端側合成開始配列は、TTGGGGの繰
    り返し配列からなる請求項8に記載のヒト・テロメレー
    ス伸長用オリゴDNAプライマー。
  10. 【請求項10】 前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴ
    DNAプライマーのヒト・テロメア配列TTAGGG以外の繰
    返し配列からなる3’末端側合成開始配列は、TTGGGGを
    少なくとも3回繰り返した配列からなる請求項8に記載
    のヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプライマー。
  11. 【請求項11】 請求項8〜10のいずれか一項に記載
    のヒト・テロメレース伸長用オリゴDNAプライマー
    と、前記第1のタグ配列と相補性がなく5’末端側にあ
    る第2のタグ配列及びヒト・テロメア配列の相補配列CC
    CTAAの繰返し配列からなる3’末端側DNA配列を含む
    アンチセンス・オリゴDNAプライマーとのプライマー
    セット。
  12. 【請求項12】 前記ヒト・テロメレース伸長用オリゴ
    DNAプライマーがpTG3(5'-GTAAAACGACGGCCAGTTT
    GGGGTTGGGGTTGGGGTTG-3')(配列番号1)であり、アン
    チセンス・オリゴDNAプライマーがpTAGγ(5'-C
    AGGAAACAGCTATGACCCCTAACCCTAACCCTAACCCT-3')(配列
    番号2)である請求項11に記載のプライマーセット。
  13. 【請求項13】 下記工程を含む、テロメレース阻害剤
    の製造方法。(D)請求項1〜6のいずれか一項に記載
    のヒト・テロメレース活性測定方法を用いて、テロメレ
    ース阻害活性を有する物質をスクリーニングする工程、
    (E)前記(D)工程で得られるテロメレース阻害活性
    を有する物質を用いてテロメレース阻害剤を製剤化する
    工程。
  14. 【請求項14】 テロメレース阻害活性を有する物質が
    細胞内に投与された後に活性を発現するものであること
    を特徴とする請求項13に記載のテロメレース阻害剤の
    製造方法。
  15. 【請求項15】 テロメレース阻害活性を有する物質を
    用いて、テロメレース阻害剤を製造する方法において、
    請求項1〜6のいずれか一項に記載のヒト・テロメレー
    ス活性測定方法を用いて、テロメレース阻害活性を測定
    し、テロメレース阻害活性を確認する工程を含むテロメ
    レース阻害剤の製造方法。
  16. 【請求項16】 テロメレース阻害活性を有する物質が
    細胞内に投与された後に活性を発現するものであること
    を特徴とする請求項15に記載のテロメレース阻害剤の
    製造方法。
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WO2006001174A1 (ja) * 2004-06-24 2006-01-05 Riken 生体組織切片を用いるテロメラーゼ活性の測定方法
JP2014197008A (ja) * 2005-04-01 2014-10-16 メドベット サイエンス ピーティーワイ. リミティッド 診断法および治療法ならびにそれに有用な薬剤

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