JP2002145606A - 層間化合物及びその製造方法 - Google Patents

層間化合物及びその製造方法

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JP2002145606A
JP2002145606A JP2001254781A JP2001254781A JP2002145606A JP 2002145606 A JP2002145606 A JP 2002145606A JP 2001254781 A JP2001254781 A JP 2001254781A JP 2001254781 A JP2001254781 A JP 2001254781A JP 2002145606 A JP2002145606 A JP 2002145606A
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JP2001254781A
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English (en)
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Atsushi Satsuma
篤 薩摩
Tadashi Hattori
忠 服部
Shinichi Komai
慎一 駒井
Yoshitaka Kijima
由貴 木島
Takuya Okura
拓也 大倉
Yuichi Kamiya
裕一 神谷
Eiichiro Nishikawa
瑛一郎 西川
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Tonen Chemical Corp
Eneos Corp
Original Assignee
Tonen Sekiyu Kagaku KK
Tonen Chemical Corp
Nippon Petrochemicals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 バナジウム、リン及び酸素を基本組成とする
層状化合物の層間に金属錯体がインターカレートしてい
るな層間化合物、及び該層間化合物を製造するための方
法を提供する。 【解決手段】 バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
する層状化合物の層間に金属錯体がインターカレートし
ている層間化合物、及びバナジウム、リン及び酸素を基
本組成とする層状化合物の層間にアルコールがインター
カレートしている層間化合物と金属錯体とを溶媒の存在
下に加熱することにより、上記層状化合物の層間に金属
錯体がインターカレートしている層間化合物を製造する
方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、層間に金属錯体が
インターカレートしている、バナジウム、リン及び酸素
を基本組成とする層間化合物並びにその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
する層状化合物として、リン酸バナジル、リン酸水素バ
ナジル0.5水和物等が知られている。リン酸水素バナ
ジル0.5水和物(VOHPO4・0.5H2O)は、ブ
タン酸化反応による無水マレイン酸製造のための触媒と
して用いられるピロリン酸ジバナジル[(VO)22
7]の前駆体として広く知られている。
【0003】これら層状化合物の層間に有機化合物をイ
ンターカレートすることにより、層間距離の広げられた
物質が得られることが知られている。
【0004】Inorg.Chem.21,3820(1982)又はChe
m.Lett.31(1993)には、ピリジン又はピロールを層
間にインターカレートした物質が開示されている。米国
特許第4,418,003号明細書は、ブタンから無水マレイン
酸を製造するために適したバナジウムリン触媒を製造す
る方法を開示しており、そのなかでバナジウムリン層状
化合物の層間にメタノールがインターカレートされたこ
とを示唆している。また、特開平9-295802号公報には、
VOHPO4・nH2OのHを二価金属イオンで交換し
た、金属イオン交換バナジウムリン複合酸化物が記載さ
れている。
【0005】バナジウム、リン及び酸素を基本組成とす
る層状化合物の層間に金属錯体がインターカレートして
いるところの層間化合物及びその製造法は未だ知られて
いない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、バナジウ
ム、リン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間に
金属錯体がインターカレートしているところの新規な層
間化合物、及び該層間化合物を製造するための新規な方
法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)バナジ
ウム、リン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間
に金属錯体がインターカレートしているところの層間化
合物である。
【0008】好ましい態様として、(2)リン酸水素バ
ナジル0.5水和物[(VO)(HOP)O3・0.5
2O]層状化合物に存在するPOHの一部又は全部が
モノアルコールのリン酸エステル構造の一部POR(R
は該モノアルコールの残基である)により置き換えられ
ており、かつ上記化合物に存在するH2Oの一部又は全
部がモノアルコールにより置き換えられている構造を有
する層間化合物のPORの一部若しくは全部、及び/又
はモノアルコールの一部若しくは全部が金属錯体により
置き換えられている構造を有するところの層間化合物、
(3)モノアルコールが、炭素数1〜12個の第一級脂
肪族モノアルコール、炭素数3〜8個の第二級脂肪族モ
ノアルコール、炭素数5〜8個の脂環族モノアルコール
及び炭素数7〜12個の芳香族モノアルコールから選ば
れるところの上記(2)記載の層間化合物、(4)第一
級脂肪族モノアルコールが、メタノール、エタノール、
1‐プロパノール、1‐ブタノール、イソブタノール、
イソペンタノール、ネオペンタノール、2‐メチル‐1
‐ブタノール、1‐ペンタノール、1‐ヘキサノール及
び1‐オクタノールから選ばれ、第二級脂肪族モノアル
コールが、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペ
ンタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール及び
2−オクタノールから選ばれ、脂環族モノアルコール
が、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、4−メ
チルシクロヘキサノール、3−メチルシクロペンタノー
ル及び3−エチルシクロペンタノールから選ばれ、芳香
族モノアルコールが、ベンジルアルコール及び2‐フェ
ニルエチルアルコールから選ばれるところの上記(3)
記載の層間化合物、(5)金属錯体が、アセチルアセト
ン金属錯体及びシクロペンタジエニル金属錯体から選ば
れる一つ又はそれ以上である上記(1)〜(4)のいず
れか一つに記載の層間化合物、(6)金属錯体が、アセ
チルアセトン鉄、アセチルアセトンジルコニウム、アセ
チルアセトンガリウム、アセチルアセトンコバルト、ア
セチルアセトンマンガン、アセチルアセトンチタン、ア
セチルアセトンアルミニウム、アセチルアセトンカリウ
ム、アセチルアセトンカルシウム、アセチルアセトンモ
リブデン、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセト
ン銅、アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンセリア
及びフェロセンから選ばれる一つ又はそれ以上である上
記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の層間化合物、
(7)金属錯体が、アセチルアセトン鉄、アセチルアセ
トンジルコニウム、アセチルアセトンガリウム、アセチ
ルアセトンコバルト、アセチルアセトンマンガン、アセ
チルアセトンチタン、アセチルアセトンアルミニウム及
びフェロセンから選ばれる一つ又はそれ以上である上記
(1)〜(4)のいずれか一つに記載の層間化合物、
(8)モノアルコールがベンジルアルコールであり、か
つ金属錯体がアセチルアセトン鉄又はフェロセンである
ところの上記(2)記載の層間化合物、(9)モノアル
コールが1‐ヘキサノールであり、かつ金属錯体がアセ
チルアセトンジルコニウム、アセチルアセトンガリウ
ム、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトンマン
ガン、アセチルアセトンチタン、アセチルアセトンアル
ミニウム又はアセチルアセトン鉄であるところの上記
(2)記載の層間化合物を挙げることができる。
【0009】また、本発明は、(10)バナジウム、リ
ン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間にアルコ
ールがインターカレートしているところの層間化合物を
金属錯体と共に溶媒の存在下に加熱することにより、上
記層状化合物の層間に金属錯体がインターカレートして
いるところの層間化合物を製造する方法である。
【0010】好ましい態様として、(11)金属錯体
が、アセチルアセトン金属錯体及びシクロペンタジエニ
ル金属錯体から選ばれる一つ又はそれ以上である上記
(10)記載の方法、(12)金属錯体が、アセチルア
セトン鉄、アセチルアセトンジルコニウム、アセチルア
セトンガリウム、アセチルアセトンコバルト、アセチル
アセトンマンガン、アセチルアセトンチタン、アセチル
アセトンアルミニウム、アセチルアセトンカリウム、ア
セチルアセトンカルシウム、アセチルアセトンモリブデ
ン、アセチルアセトンニッケル、アセチルアセトン銅、
アセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトンセリア及びフ
ェロセンから選ばれる一つ又はそれ以上である上記(1
0)記載の方法、(13)金属錯体が、アセチルアセト
ン鉄、アセチルアセトンジルコニウム、アセチルアセト
ンガリウム、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセ
トンマンガン、アセチルアセトンチタン、アセチルアセ
トンアルミニウム及びフェロセンから選ばれる一つ又は
それ以上である上記(10)記載の方法、(14)溶媒
が、トルエン、ベンジルアルコール、ヘキサン又はシク
ロヘキサンであるところの上記(10)〜(13)のい
ずれか一つに記載の方法、(15)溶媒がトルエンであ
り、かつ金属錯体がアセチルアセトン鉄、アセチルアセ
トンジルコニウム、アセチルアセトンガリウム、アセチ
ルアセトンコバルト、アセチルアセトンマンガン、アセ
チルアセトンチタン、アセチルアセトンアルミニウム又
はフェロセンであるところの上記(10)記載の方法、
(16)溶媒がベンジルアルコールであり、かつ金属錯
体がアセチルアセトン鉄であるところの上記(10)記
載の方法、(17)金属錯体が、上記のバナジウム、リ
ン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間にアルコ
ールがインターカレートしているところの層間化合物に
含まれるバナジウム原子に対する金属錯体に含まれる金
属原子のモル比で0.001〜10の量で使用される上
記(10)〜(16)のいずれか一つに記載の方法、
(18)バナジウム、リン及び酸素を基本組成とする層
状化合物の層間にインターカレートしているアルコール
がモノアルコールであるところの上記(10)〜(1
7)のいずれか一つに記載の方法、(19)モノアルコ
ールが、炭素数1〜12個の第一級脂肪族モノアルコー
ル、炭素数3〜8個の第二級脂肪族モノアルコール、炭
素数5〜8個の脂環族モノアルコール及び炭素数7〜1
2個の芳香族モノアルコールから選ばれるところの上記
(18)記載の方法、(20)第一級脂肪族モノアルコ
ールが、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、
1‐ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、
ネオペンタノール、2‐メチル‐1‐ブタノール、1‐
ペンタノール、1‐ヘキサノール及び1‐オクタノール
から選ばれ、第二級脂肪族モノアルコールが、2−プロ
パノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、2−ヘ
キサノール、2−ヘプタノール及び2−オクタノールか
ら選ばれ、脂環族モノアルコールが、シクロペンタノー
ル、シクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノー
ル、3−メチルシクロペンタノール及び3−エチルシク
ロペンタノールから選ばれ、芳香族モノアルコールが、
ベンジルアルコール及び2‐フェニルエチルアルコール
から選ばれるところの上記(18)記載の方法を挙げる
ことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の層間化合物は、バナジウ
ム、リン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間に
アルコールがインターカレートしているところの層間化
合物を金属錯体と共に溶媒の存在下に加熱する方法によ
り製造することができる。
【0012】上記の方法において使用する、バナジウ
ム、リン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間に
モノアルコールがインターカレートしているところの層
間化合物は、本出願人により既に出願された特願平11
−319860号及び特願2000−178741号に
記載された方法により製造することができる。
【0013】即ち、バナジウムの原子価が5価未満4価
以上であるバナジウム酸化物、五酸化リン及びモノアル
コールを反応せしめて、バナジウム、リン及び酸素を基
本組成とする層状化合物の層間にモノアルコールがイン
ターカレートしているところの層間化合物を製造する方
法(特願平11−319860号)、及びバナジウム、
リン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間にモノ
アルコールがインターカレートしているところの層間化
合物を製造する方法において、バナジウムの原子価が5
価以下4価以上であるバナジウム酸化物、五酸化リン及
びモノアルコールを加圧下で反応せしめることを特徴と
する方法(特願2000−178741号)である。
【0014】上記の層間化合物を製造する方法に使用さ
れるバナジウム酸化物は、大気圧下の反応においては、
バナジウムの原子価が5価未満4価以上のものであり、
好ましくは4.5価のものであり、特に好ましくはV4
9である。加圧下の反応においては、上記のバナジウ
ム酸化物の他、バナジウムの原子価が5価のものも使用
し得る。
【0015】該原子価が5価未満4価以上、好ましくは
4.5価のバナジウム酸化物を製造する方法に特に制限
はない。例えば、5価のバナジウム化合物を一部還元し
て、バナジウムの原子価を5価未満4価以上、好ましく
は4.5価まで還元する方法により得られる。該還元
は、気相又は液相で行うことができ、好ましくは液相で
行われる。気相還元においては、還元剤として、例え
ば、水素、ブテン、ブタジエン、二酸化硫黄等が使用さ
れる。一方、液相還元においては、還元剤として、好ま
しくは有機媒体が使用される。該有機媒体としては、例
えば、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、イ
ソプロパノール、1‐ブタノール、2‐ブタノール、イ
ソブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、
又はベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオン
アルデヒド等のアルデヒド類、ヒドラジン類、蓚酸等が
挙げられる。好ましくはアルコール類が使用され、とり
わけイソブタノール、ベンジルアルコールが好ましい。
5価のバナジウム化合物としては、例えば、五酸化バナ
ジウム、バナジン酸アンモニウム等が挙げられ、好まし
くは五酸化バナジウムが使用される。
【0016】上記の還元法として例えば、5価のバナジ
ウム化合物例えば五酸化バナジウムを、アルコール例え
ばイソブタノール及び/又はベンジルアルコール溶媒中
に混合し、該混合物をリフラックス条件下で好ましくは
0.5〜80時間、更に好ましくは1〜10時間加熱し
て還元を行い、次いで濾過後、例えばアセトン、メタノ
ール、エタノール等の低沸点溶剤により洗浄し乾燥する
方法が挙げられる。
【0017】このようにして得られたバナジウムの原子
価が5価未満4価以上、好ましくは4.5価のバナジウ
ム酸化物、特に好ましくはV49を、五酸化リン及びモ
ノアルコールと反応させることにより、バナジウム、リ
ン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間にモノア
ルコールがインターカレートしている層間化合物を製造
することができる。
【0018】インターカレートされるモノアルコール
は、好ましくは炭素数1〜12個、特に好ましくは炭素
数1〜8個の第一級脂肪族モノアルコール、好ましくは
炭素数3〜8個の第二級脂肪族モノアルコール、好まし
くは炭素数5〜8個の脂環族モノアルコール、及び好ま
しくは炭素数7〜12個の芳香族モノアルコールから選
ばれる。第一級脂肪族モノアルコールとしては好ましく
は、メタノール、エタノール、1‐プロパノール、1‐
ブタノール、イソブタノール、イソペンタノール、ネオ
ペンタノール、2‐メチル‐1‐ブタノール、1‐ペン
タノール、1‐ヘキサノール又は1‐オクタノール等が
使用され、第二級脂肪族モノアルコールとしては好まし
くは、2‐プロパノール、2‐ブタノール、2−ペンタ
ノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール又は2−
オクタノール等が使用され、脂環族モノアルコールとし
ては好ましくは、シクロペンタノール、シクロヘキサノ
ール、4−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシク
ロペンタノール又は3−エチルシクロペンタノール等が
使用され、芳香族モノアルコールとしては好ましくは、
ベンジルアルコール、2‐フェニルエチルアルコール等
が使用される。
【0019】上記の方法において、使用するモノアルコ
ールの量は、バナジウム1モルに対して、上限が好まし
くは1000モル、特に好ましくは100モルであり、
下限が好ましくは3モル、特に好ましくは5モルであ
る。上記下限未満では、十分にモノアルコールをインタ
ーカレートすることができない。また、五酸化リンの使
用量は、バナジウム原子に対するリン原子の比で、上限
が好ましくは3、特に好ましくは1.5であり、下限が
好ましくは0.7、特に好ましくは1である。上記下限
未満では、十分にモノアルコールをインターカレートす
ることができない。
【0020】モノアルコールをインターカレートした層
間化合物を製造する方法としては、例えば、バナジウム
の原子価が5価のバナジウム酸化物(加圧下での反応に
のみ使用される)、あるいは上記のようにして得た、バ
ナジウムの原子価が5価未満4価以上、好ましくは4.
5価のバナジウム酸化物、特に好ましくはV49と、モ
ノアルコールとを混合し、次いで該混合物に五酸化リン
を加えた後(但し、上記の三種の物質を混合する順序に
特に制限はない)、好ましくはリフラックス条件下、よ
り好ましくは加圧下で反応を行い、濾過後、例えばアセ
トン、メタノール、エタノール等の低沸点溶剤により洗
浄し乾燥する方法、あるいはモノアルコールと五酸化リ
ンとの反応生成物に、バナジウムの原子価が5価のバナ
ジウム酸化物(加圧下での反応にのみ使用される)、あ
るいはバナジウムの原子価が5価未満4価以上、好まし
くは4.5価のバナジウム酸化物、特に好ましくはV4
9を加えて、好ましくはリフラックス条件下、より好
ましくは加圧下で反応を行い、濾過後、例えばアセト
ン、メタノール、エタノール等の低沸点溶剤により洗浄
し乾燥する方法が挙げられる。また、5価のバナジウム
化合物例えば五酸化バナジウムを、モノアルコール例え
ばベンジルアルコール中に混合し、リフラックス条件下
で還元を行った後、該混合物に、更にモノアルコール及
び五酸化リンを加えて、好ましくはリフラックス条件
下、より好ましくは加圧下で反応を行って製造すること
もできる。上記いずれの場合にも、反応は、好ましくは
大気圧下、即ち使用するアルコールのリフラックス条件
下、より好ましくは加圧下で反応することができる。加
圧下での反応において、反応圧力は使用するモノアルコ
ールの種類により異なるが、上限が好ましくは10MP
a、より好ましくは4MPa、特に好ましくは1MPa
であり、下限が好ましくは大気圧を超える圧力、より好
ましくは0.10MPa、特に好ましくは0.20MP
aである。上記下限未満では、モノアルコールをインタ
ーカレートするために比較的長時間を必要とし、上記上
限を超えては、装置コストが高くなる。上記加圧下での
反応における反応温度は、使用するモノアルコールの種
類及び反応圧力に依存し、使用するモノアルコールが液
体状態を維持し得る限り特に制限はない。該反応温度の
下限は、好ましくは使用するモノアルコールの大気圧に
おける沸点+1℃、より好ましくは使用するモノアルコ
ールの大気圧における沸点+3℃であり、上限は、好ま
しくは使用するモノアルコールの大気圧における沸点+
175℃、より好ましくは使用するモノアルコールの大
気圧における沸点+135℃、特に好ましくは使用する
モノアルコールの大気圧における沸点+70℃である。
反応時間は、反応圧力及び反応温度に依存し、大気圧下
及び加圧下における反応のいずれにおいても、好ましく
は0.1〜100時間、より好ましくは1〜60時間、
特に好ましくは1〜30時間である。上記下限未満で
は、モノアルコールをインターカレートできず、上記上
限を超えては、製造コストが高くなると共に、操作が煩
雑となる。
【0021】上記の方法により、本発明に用いるバナジ
ウム、リン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間
にモノアルコールがインターカレートしているところの
層間化合物を得ることができる。該層間化合物は、リン
酸水素バナジル0.5水和物[(VO)(HOP)O3
・0.5H2O]層状化合物に存在するPOHの一部又
は全部がモノアルコールのリン酸エステル構造の一部P
OR(Rは該モノアルコールの残基である)により置き
換えられており、かつ上記化合物に存在するH2Oの一
部又は全部がモノアルコール(ROH)により置き換え
られている構造を有するものである。
【0022】とりわけ、上記の方法によれば、バナジウ
ム、リン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間
に、第二級脂肪族モノアルコール、好ましくは炭素数3
〜8個の第二級脂肪族モノアルコール、より好ましくは
2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノー
ル、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール若しくは2−
オクタノール、脂環族モノアルコール、好ましくは炭素
数5〜8個の脂環族モノアルコール、より好ましくはシ
クロペンタノール、シクロヘキサノール、4−メチルシ
クロヘキサノール、3−メチルシクロペンタノール若し
くは3−エチルシクロペンタノール、又は芳香族モノア
ルコール、好ましくは炭素数7〜12個の芳香族モノア
ルコール、より好ましくはベンジルアルコール、2‐フ
ェニルエチルアルコールをインターカレートすることが
できる。
【0023】上記の方法により得られる層間化合物の層
間距離は、インターカレートされるモノアルコールの種
類により決定され、少なくとも9.0オングストロームで
あり、好ましくは9.0〜25.0オングストロームで
ある。とりわけ、第二級脂肪族アルコールがインターカ
レートしている層間化合物においては、好ましくは10
〜15オングストロームであり、脂環族モノアルコール
がインターカレートしている層間化合物においては、好
ましくは10〜15オングストロームであり、そして芳
香族モノアルコールがインターカレートしている層間化
合物においては、好ましくは15〜25オングストロー
ムである。
【0024】上記の方法により製造された層間化合物に
おいて、モノアルコールが層間にインターカレートされ
ていることは、X線回折により、リン酸水素バナジル
0.5水和物の(0 0 1)面の回折ピークの代りに、
2θが2〜10°の間に層間距離が開いたことを示す回
折ピークが確認されること、該層間距離が使用するモノ
アルコールの炭素原子数の増加にほぼ比例して増加する
こと及び該層間距離が使用するモノアルコールの分子サ
イズの増加にほぼ比例して増加すること、本発明の層間
化合物(モノアルコールがインターカレートしている層
間化合物)の赤外吸収スペクトルにおいて、リン酸水素
バナジル0.5水和物に存在しないPOCに帰属される
吸収及び孤立COHに帰属される吸収が存在すること、
熱分析により、存在するモノアルコールに起因すると考
えられる低温側の重量減少及びエステル結合しているモ
ノアルコールの燃焼に起因すると考えられる高温側の重
量減少が確認されること、並びに元素分析値から推定し
た構造式が上記の熱分析による重量減少量とほぼ一致す
ることにより確認される。
【0025】また、本発明の方法においては、バナジウ
ム、リン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間に
ジオールがインターカレートしているところの層間化合
物を使用することもできる。該層間化合物及びその製造
方法は公知であり、特開平8−259208号公報に記
載されている。
【0026】本発明の方法においてインターカレートさ
れる金属錯体は、アセチルアセトン金属錯体及びシクロ
ペンタジエニル金属錯体から選ばれる。アセチルアセト
ン金属錯体としては、好ましくはアセチルアセトン鉄、
アセチルアセトンジルコニウム、アセチルアセトンガリ
ウム、アセチルアセトンコバルト、アセチルアセトンマ
ンガン、アセチルアセトンチタン、アセチルアセトンア
ルミニウム、アセチルアセトンカリウム、アセチルアセ
トンカルシウム、アセチルアセトンモリブデン、アセチ
ルアセトンニッケル、アセチルアセトン銅、アセチルア
セトン亜鉛、アセチルアセトンセリア等が挙げられ、シ
クロペンタジエニル金属錯体としては、好ましくはフェ
ロセン等が挙げられる。特に好ましくは、アセチルアセ
トン鉄、アセチルアセトンジルコニウム、アセチルアセ
トンガリウム、アセチルアセトンコバルト、アセチルア
セトンマンガン、アセチルアセトンチタン、アセチルア
セトンアルミニウム及びフェロセンが使用される。上記
の金属錯体の一種のみを使用すれば、一種の金属錯体が
インターカレートしている層間化合物を製造することが
でき、あるいは上記の金属錯体の二種以上を同時に使用
すれば、二種以上の金属錯体がインターカレートしてい
るところの層間化合物を製造することもできる。
【0027】本発明の方法において、上記の金属錯体
は、バナジウム、リン及び酸素を基本組成とする層状化
合物の層間にモノアルコールがインターカレートしてい
るところの層間化合物に含まれるバナジウム原子に対す
る金属錯体に含まれる金属原子のモル比で、上限が好ま
しくは10、より好ましくは5、特に好ましくは1であ
り、下限が好ましくは0.001、より好ましくは0.
01、特に好ましくは0.05であるように使用され
る。上記下限未満では、十分な量の金属錯体をインター
カレートすることができない。
【0028】本発明の方法において使用する溶媒として
は、例えば、トルエン、キシレン、ベンジルアルコー
ル、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。溶媒は
金属錯体を溶解し得るものであれば特に限定されない
が、極性は低いほうが好ましい。溶媒の使用量は、金属
錯体の重量に対して、好ましくは3重量倍以上、より好
ましくは5重量倍以上、特に好ましくは10〜100重
量倍である。溶媒量が少なすぎると、操作性が悪化す
る。溶媒量が多すぎると、経済的に不利になるばかりで
なく、層間に金属錯体を良好にインターカレートするこ
とができない。
【0029】上記の層間化合物と金属錯体との溶媒の存
在下における加熱は、大気圧下又は加圧下のいずれにお
いても実施することができる。加熱温度は使用する溶媒
の沸点及び使用する金属錯体の分解温度に依存するが、
上限が金属錯体の分解温度未満であり、好ましくは(使
用する溶媒の沸点−30℃)〜(使用する溶媒の沸点近
傍)、特に好ましくは使用する溶媒の沸点近傍である。
また、加熱時間は、好ましくは0.1〜100時間、特
に好ましくは1〜10時間である。
【0030】本発明の方法により、バナジウム、リン及
び酸素を基本組成とする層状化合物の層間に金属錯体が
インターカレートしているところの層間化合物を製造す
ることができる。好ましくは該層間化合物は、リン酸水
素バナジル0.5水和物[(VO)(HOP)O3
0.5H2O]層状化合物に存在するPOHの一部又は
全部がモノアルコールのリン酸エステル構造の一部PO
R(Rは該モノアルコールの残基である)により置き換
えられており、かつ上記化合物に存在するH2Oの一部
又は全部がモノアルコール(ROH)により置き換えら
れている構造を有する層間化合物のPORの一部若しく
は全部、及び/又はモノアルコールの一部若しくは全部
が金属錯体により置き換えられている構造を有してい
る。好ましくは、モノアルコールがベンジルアルコール
であり、かつ金属錯体がアセチルアセトン鉄又はフェロ
センである層間化合物、あるいはモノアルコールが1‐
ヘキサノールであり、かつ金属錯体がアセチルアセトン
ジルコニウム、アセチルアセトンガリウム、アセチルア
セトンコバルト、アセチルアセトンマンガン、アセチル
アセトンチタン、アセチルアセトンアルミニウム又はア
セチルアセトン鉄である層間化合物が挙げられる。
【0031】本発明の層間化合物は、ブタン酸化反応に
よる無水マレイン酸製造用触媒等としてのピロリン酸ジ
バナジル[(VO)227]の前駆体として使用し得
るほか、その層間隔が広いことから、この層間を利用し
た吸着剤、分離剤として利用できるばかりでなく、モノ
マーをこの層間で反応させてポリマーの分子量を制御す
るためにも使用し得る。触媒として使用するには、リン
酸水素バナジル0.5水和物と同様に、窒素又は空気中
又はブタン酸化反応雰囲気下において焼成して調製され
る。本発明の層間化合物をシランカップリング剤やアル
ミニウムのポリカチオン等により層間を架橋処理した後
に焼成すれば層間隔の広い多孔質材料、例えば吸着剤、
分離剤として、あるいは触媒としても使用することがで
きる。
【0032】以下、本発明を実施例により更に詳細に説
明するが、本発明はこれら実施例により限定されるもの
ではない。
【0033】
【実施例】実施例における各測定は下記のようにして実
施した。
【0034】<X線回折(XRD)>X線源としてCu
‐Kα線を使用した。使用した装置は、理学電機株式会
社製、RINT−1200である。
【0035】<赤外分析(IR)>測定試料をKBrで
1重量%に希釈した後、ディスク状に加圧成形して使用
した。測定は透過法により実施した。使用した装置は、
パーキンエルマー model1600である。
【0036】<熱分析>100ミリリットル/分の空気
気流中において、5℃/分の昇温速度で測定した。使用
した装置は、セイコー電子工業株式会社製 TG/DT
A−200である。
【0037】<透過型電子顕微鏡(TEM)>金属錯体
がインターカレートした層間化合物を厚さ70nmの薄
片状に切断し、測定に供した。使用した装置は、日本電
子株式会社製 JEM−2010である。
【0038】<エネルギー分散型分光計(EDS)>T
EM写真撮影後、その部分のEDSマッピングを行っ
た。使用した装置は、Noran社製 EDSアナライ
ザー VoyagerIIIである。
【0039】<走査型電子顕微鏡(SEM)>使用した
装置は、株式会社 日立製作所製 HITACH S−8
00Sである。
【0040】<X線光電子分光(XPS)>使用した装
置は、株式会社 島津製作所製 ESCA−3300であ
る。
【0041】
【実施例1】<バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
する層状化合物の層間にベンジルアルコールがインター
カレートしている層間化合物の製造>
【0042】五酸化バナジウム14.56g(0.08モル)をイ
ソブタノール90ミリリットル(0.98モル)及びベンジル
アルコール60ミリリットル(0.58モル)の混合溶媒中に
懸濁し、リフラックス条件下(123℃)に3時間加熱して
五酸化バナジウムを還元した後、室温に冷却した。次い
で、沈殿物を濾別し、アセトン100ミリリットルで洗浄
した後、室温で一晩乾燥して黒色固体を得た。この黒色
固体の12.02gをベンジルアルコール150ミリリットル
(1.45モル)中に懸濁し、これに、トルエン40ミリリッ
トルに五酸化リン10.59g(0.074モル)を懸濁した液を
攪拌下に室温で添加した。添加後、該懸濁液を攪拌しつ
つ105℃にて6時間加熱して反応せしめた後、室温に冷却
した。次いで、沈殿物を濾別し、アセトン100ミリリッ
トルで洗浄した後、室温で一晩乾燥した。
【0043】得られた水色固体のバナジウムの原子価は
4価であった。該化合物とリン酸水素バナジル0.5水
和物のX線回折(図1及び図2)より、該化合物では回
折ピークが2θ=5.0°に存在し、層間距離が17.
8オングストロームであり、一方、リン酸水素バナジル
0.5水和物では回折ピークが2θ=15.8°に存在
し、層間距離が5.4オングストロームである。該化合
物では、層間距離が、リン酸水素バナジル0.5水和物
に比べて広がっていることが分かった。
【0044】該化合物とリン酸水素バナジル0.5水和
物の赤外線吸収スペクトル(図3及び図4)より、該化
合物にはPOCに帰属される吸収(744cm-1、1026 c
m-1)及び孤立COHに帰属される吸収(3496cm-1)が
存在するが、リン酸水素バナジル0.5水和物にはこれ
らに帰属される吸収は存在しないことが分かった。
【0045】該化合物の熱分析結果(図5)から、層間
に存在しているベンジルアルコール及び水に起因すると
考えられる低温側の重量減少約13.8重量%及びエス
テル結合しているベンジルアルコールに起因すると考え
られる重量減少約37.0重量%が認められた。また、
該化合物の元素分析値(V:18.4重量%、P:1
0.4重量%、O:30.4重量%、H:3.7重量
%、C:37.0重量%)から構造式を推定すると、V
O(C65CH2OP)1.0(HOP)03・0.22
(C65CH2OH)・0.94(H2O)となる。低温
側の重量減少によりベンジルアルコール及び水[0.2
2(C65CH2OH)・0.94(H2O)]が脱離し
て[VO(C65CH2OP)1.0(HOP)03]にな
るとすれば重量減少の理論値は13.9重量%となる。
高温側の重量減少によりエステル結合しているベンジル
アルコールが燃焼して[VOPO4]になるとすれば重
量減少の理論値は30.5重量%となる。
【0046】以上の結果から、該化合物は、バナジウ
ム、リン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間
に、ベンジルアルコールがリン酸エステル及びベンジル
アルコールの形態でインターカレートしていると認めら
れる。
【0047】<バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
する層状化合物の層間にアセチルアセトン鉄がインター
カレートしている層間化合物の製造>
【0048】アセチルアセトン鉄[Fe(C5H7O2)3]1.95g
(5.53ミリモル)をトルエン36ミリリットルに室温で溶
解させた。該溶液に、上記のベンジルアルコールがイン
ターカレートしている層間化合物4.00g(14.4ミリモ
ル)を添加した(仕込み時のFe/Vのモル比は0.38であ
る)。続いて、該混合物を攪拌しながらリフラックス条
件下(105℃)に3時間加熱した。次いで、室温まで冷却
し、沈殿物を濾別し、アセトン40ミリリットルで洗浄し
た後、室温で一晩乾燥して生成物を得た。
【0049】該生成物のX線回折(図6)より、該生成
物の回折ピークは2θ=6.0°に存在し、層間距離が
14.6オングストロームであることが分かった。該生
成物の層間距離は、リン酸水素バナジル0.5水和物に
比べて広がっている。
【0050】該生成物のTEM分析(図7)より、その
像に縞模様が観察されることから該生成物が層状構造を
保持していることが分かった。また、該縞模様の間隔は
約15オングストロームであり、X線回折から求められ
た層間距離と良い一致を示した。
【0051】これらのことから、該生成物が層状構造を
有し、かつその層間距離が約15オングストロームであ
って、リン酸水素バナジル0.5水和物に比べて広がっ
ていることが確認された。
【0052】該生成物の元素組成は元素分析により求め
た。その結果、P/V=1.007、Fe/V=0.085であ
った。該Fe/V比は、仕込Fe/V比の0.38に比べて低い
が、相当量の鉄が該生成物中に取り込まれていることを
示している。
【0053】該生成物のEDS分析(図9)より、鉄は
該生成物の一部分に偏析しているものではなく、バナジ
ウム及びリンと同様に結晶中に一様に分布していること
が分かった。図9において、白い箇所が原子の濃度が高
い部分を示している。なお、図8には、上記のEDS分
析を行った生成物の同一部分についてTEMで撮影した
実像を示した。
【0054】以上の結果から、取り込まれた鉄は該生成
物の結晶の表面に偏在しているのではなく、結晶内にほ
ぼ均一に分布していることが分かった。従って、バナジ
ウム、リン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間
に、アセチルアセトン鉄がインターカレートしていると
考えられる。
【0055】また、該生成物のXPS分析による該生成
物表面のFe/V組成比の実測値は0.178であり、これ
は、該生成物中に存在する鉄の全てが結晶の外表面にあ
ると仮定して算出したFe/V組成比の計算値0.733に
比べて著しく小さい。従って、これからも鉄は該生成物
の結晶の外表面に偏在しているのではなく、層間にイン
ターカレートされていると考えられる。ここで、上記の
計算値は下記の計算方法によるものである。まず、該生
成物の層方向の厚みをSEMにより実測し(750オン
グストローム)、1層の距離(14.6オングストロー
ム)から層方向の層数(51.4層)を計算した。縦方
向の微小体積中にバナジウムが51.4原子(1層に1
原子)存在すると仮定し、上記の元素分析から求めたFe
/V=0.085から該微小体積中の鉄の数(4.4個)
を計算した。鉄は、該微小体積の上下面に均等に存在し
(2.20個づつ)、バナジウムは、光電子脱出深さ
(約30オングストローム)から3層目までがXPSで
検出されると仮定して、微小体積中に存在する鉄が全て
その表面に存在するとしたときのFe/V(2.20/3=
0.733)を算出した。
【0056】
【実施例2】アセチルアセトン鉄に代えて、フェロセン
1.028g(5.53ミリモル)を使用した以外は、実施例1と
同じく実施した。
【0057】該生成物のX線回折(図10)より、該生
成物の回折ピークは2θ=6.6°に存在し、層間距離
が13.3オングストロームであることが分かった。該
生成物の層間距離は、リン酸水素バナジル0.5水和物
に比べて広がっている。
【0058】該生成物のEDS分析(図示せず)より、
鉄は、バナジウム及びリンと同様に結晶中に一様に分布
していることが分かった。元素分析の結果、Fe/V=0.
023であった。
【0059】また、該生成物のXPS分析による該生成
物表面のFe/V組成比の実測値は0.088であり、これ
は、該生成物中に存在する鉄の全てが結晶の外表面にあ
ると仮定して算出したFe/V組成比の計算値0.231に
比べて著しく小さい。
【0060】以上より、鉄は該生成物の外表面に偏在し
ているのではなく、結晶中に一様に分布していて層間に
インターカレートしていると考えられる。
【0061】
【実施例3】アセチルアセトン鉄との反応に使用する溶
媒を、トルエンからベンジルアルコールに代えた以外
は、実施例1と同じく実施した。
【0062】該生成物のX線回折(図11)より、該生
成物の回折ピークは2θ=6.6°に存在し、層間距離
が13.3オングストロームであることが分かった。該
生成物の層間距離は、リン酸水素バナジル0.5水和物
に比べて広がっている。
【0063】該生成物のEDS分析(図示せず)より、
鉄は、バナジウム及びリンと同様に結晶中に一様に分布
していることが分かった。元素分析の結果、Fe/V=0.
020であった。
【0064】また、該生成物のXPS分析による該生成
物表面のFe/V組成比の実測値は0.087であり、これ
は、該生成物中に存在する鉄の全てが結晶の外表面にあ
ると仮定して算出したFe/V組成比の計算値0.150に
比べて著しく小さい。
【0065】以上より、鉄は該生成物の外表面に偏在し
ているのではなく、結晶中に一様に分布していて層間に
インターカレートしていると考えられる。
【0066】
【実施例4】<バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
する層状化合物の層間に1−ヘキサノールがインターカ
レートしている層間化合物の製造>
【0067】五酸化バナジウム14.56g(0.08モル)をイ
ソブタノール90ミリリットル(0.98モル)及びベンジル
アルコール60ミリリットル(0.58モル)の混合溶媒中に
懸濁し、リフラックス条件下(123℃)に3時間加熱して
五酸化バナジウムを還元した後、室温に冷却した。次い
で、沈殿物を濾別し、アセトン100ミリリットルで洗浄
した後、室温で一晩乾燥して黒色固体を得た。この黒色
固体の12.02gを1−ヘキサノール150ミリリットル(1.1
9モル)中に懸濁し、これに、トルエン40ミリリットル
に五酸化リン10.59g(0.074モル)を懸濁した液を攪拌
下に室温で添加した。添加後、該懸濁液を攪拌しつつ10
5℃にて6時間加熱して反応せしめた後、室温に冷却し
た。次いで、沈殿物を濾別し、アセトン100ミリリット
ルで洗浄した後、室温で一晩乾燥した。
【0068】得られた水色固体のバナジウムの原子価は
4価であった。該化合物とリン酸水素バナジル0.5水
和物のX線回折(図12及び図2)より、該化合物では
回折ピークが2θ=5.0°に存在し、層間距離が1
7.6オングストロームであり、一方、リン酸水素バナ
ジル0.5水和物では回折ピークが2θ=15.8°に
存在し、層間距離が5.4オングストロームである。該
化合物では、層間距離が、リン酸水素バナジル0.5水
和物に比べて広がっていることが分かった。
【0069】該化合物とリン酸水素バナジル0.5水和
物の赤外線吸収スペクトル(図13及び図4)より、該
化合物にはPOCに帰属される吸収(800cm-1、1024 cm
-1)及び孤立COHに帰属される吸収(3536cm-1、3601
cm-1)が存在するが、リン酸水素バナジル0.5水和物
にはこれらに帰属される吸収は存在しないことが分かっ
た。
【0070】該化合物の熱分析結果(図14)から、層
間に存在している1−ヘキサノールに起因すると考えら
れる低温側の重量減少約19.5重量%(250℃未
満)及びエステル結合している1−ヘキサノールに起因
すると考えられる高温側の重量減少約21.8重量%
(250℃以上)が認められた。また、該化合物の元素
分析値(V:19.3重量%、P:12.0重量%、
O:30.5重量%、H:6.0重量%、C:32.2
重量%)から構造式を推定すると、VO(C613
P)0.6(HOP)0.4PO3・0.5(C613OH)と
なる。低温側の重量減少により1−ヘキサノール[0.
5(C613OH)]が脱離して[VO(C613OP)
0.6(HOP)0.4PO3]になるとすれば重量減少の理
論値は19.3重量%となる。高温側の重量減少により
エステル結合している1−ヘキサノールが燃焼して[V
OPO4]になるとすれば重量減少の理論値は22.5
重量%となる。
【0071】以上の結果から、該化合物は、バナジウ
ム、リン及び酸素を基本組成とする層状化合物の層間
に、1−ヘキサノールがリン酸エステル及び1−ヘキサ
ノールの形態でインターカレートしていると認められ
る。
【0072】<バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
する層状化合物の層間にアセチルアセトンジルコニウム
がインターカレートしている層間化合物の製造>
【0073】アセチルアセトンジルコニウム[Zr(C5H7O
2)4]0.921g(1.89ミリモル)をトルエン15ミリリット
ルに室温で溶解させた。該溶液に、上記の1−ヘキサノ
ールがインターカレートしている層間化合物1.00g(3.7
8ミリモル)を添加した(仕込み時のZr/Vのモル比は0.5
である)。続いて、該混合物を攪拌しながら80℃に3時
間加熱した。次いで、室温まで冷却し、沈殿物を濾別
し、アセトン10ミリリットルで洗浄した後、室温で一晩
乾燥して生成物を得た。
【0074】該生成物のX線回折(図15のZr)よ
り、該生成物の回折ピークは2θ=5.28°に存在
し、層間距離が16.7オングストロームであることが
分かった。2θ=5.28°の回折線を(001)面か
らの回折と考えると、(002)面及び(003)面の
高次の回折ピークが夫々2θ=10.6°及び2θ=1
6.0°に観察される。これは、該生成物が層状構造を
保持していることを示している。即ち、該生成物は層状
構造を有し、かつその層間距離が16.7オングストロ
ームであって、リン酸水素バナジル0.5水和物に比べ
て広がっていることが確認された。
【0075】該生成物の元素組成は元素分析により求め
た。その結果、P/V=1.23、Zr/V=0.110であっ
た。Zr/V比は、仕込Zr/V比の0.5に比べて低いが、相
当量のジルコニウムが該生成物中に取り込まれているこ
とを示している。
【0076】該生成物のEDS分析(図示せず)より、
ジルコニウムは、バナジウム及びリンと同様に結晶中に
一様に分布していることが分かった。また、該生成物の
XPS分析による該生成物表面のZr/V組成比の実測値は
0.67であり、これは、該生成物中に存在するジルコ
ニウムの全てが結晶の外表面にあると仮定して算出した
Zr/V組成比の計算値1.65に比べて著しく小さい。従
って、これからジルコニウムは該生成物の結晶の外表面
に偏在しているのではなく、結晶中に一様に分布してい
て層間にインターカレートされていると考えられる。こ
こで、上記の計算値は下記の計算方法によるものであ
る。まず、該生成物の層方向の厚みをSEMにより実測
し(1500オングストローム)、1層の距離(16.
7オングストローム)から層方向の層数(89.8層)
を計算した。縦方向の微小体積中にバナジウムが89.
8原子(1層に1原子)存在すると仮定し、上記の元素
分析から求めたZr/V=0.110から該微小体積中の鉄
の数(9.88個)を計算した。バナジウムは、該微小
体積の上下面に均等に存在し(4.94個づつ)、バナ
ジウムは、光電子脱出深さ(約30オングストローム)
から3層目までがXPSで検出されると仮定して、微小
体積中に存在する鉄が全てその表面に存在するとしたと
きのZr/V(4.94/3=1.65)を算出した。
【0077】
【実施例5】<バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
する層状化合物の層間にアセチルアセトンガリウムがイ
ンターカレートしている層間化合物の製造>
【0078】アセチルアセトンジルコニウムに代えて、
アセチルアセトンガリウム[Ga(C5H7O2)3]0.699g(1.8
9ミリモル)を使用した以外は、実施例4と同じく実施
した。
【0079】該生成物のX線回折(図15のGa)よ
り、該生成物の回折ピークは2θ=5.24°に存在
し、層間距離が16.8オングストロームであることが
分かった。また、アセチルアセトンジルコニウムと同様
に該生成物は層状構造を保持していた。該生成物は層状
構造を有し、かつその層間距離が16.8オングストロ
ームであって、リン酸水素バナジル0.5水和物に比べ
て広がっていることが確認された。
【0080】該生成物の元素組成は元素分析により求め
た。その結果、P/V=1.19、Ga/V=0.086であっ
た。Ga/V比は、仕込Ga/V比の0.5に比べて低いが、相
当量のガリウムが該生成物中に取り込まれていることを
示している。
【0081】該生成物のEDS分析(図示せず)より、
ガリウムは、バナジウム及びリンと同様に結晶中に一様
に分布していることが分かった。また、該生成物のXP
S分析による該生成物表面のGa/V組成比の実測値は0.
14であり、これは、該生成物中に存在するガリウムの
全てが結晶の外表面にあると仮定して算出したGa/V組成
比の計算値1.28に比べて著しく小さい。従って、こ
れからガリウムは該生成物の結晶の外表面に偏在してい
るのではなく、結晶中に一様に分布していて層間にイン
ターカレートされていると考えられる。上記の計算値は
実施例4と同様にして計算したものである。ここで、該
生成物の層方向の厚みのSEMによる実測値は1500
オングストロームであった。
【0082】
【実施例6】<バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
する層状化合物の層間にアセチルアセトンコバルトがイ
ンターカレートしている層間化合物の製造>
【0083】アセチルアセトンジルコニウムに代えて、
アセチルアセトンコバルト[Co(C5H7O2)2・2H2O]0.554
g(1.89ミリモル)を使用した以外は、実施例4と同じ
く実施した。
【0084】該生成物のX線回折(図15のCo)よ
り、該生成物の回折ピークは2θ=5.30°に存在
し、層間距離が16.6オングストロームであることが
分かった。また、アセチルアセトンジルコニウムと同様
に該生成物は層状構造を保持していた。該生成物は層状
構造を有し、かつその層間距離が16.6オングストロ
ームであって、リン酸水素バナジル0.5水和物に比べ
て広がっていることが確認された。
【0085】該生成物の元素組成は元素分析により求め
た。その結果、P/V=0.97、Co/V=0.134であった。Co/V
比は、仕込Co/V比の0.5に比べて低いが、相当量のコ
バルトが該生成物中に取り込まれていることを示してい
る。
【0086】該生成物のEDS分析(図示せず)より、
コバルトは、バナジウム及びリンと同様に結晶中に一様
に分布していることが分かった。該生成物のXPS分析
による該生成物表面のCo/V組成比の実測値は0.39で
あり、これは、該生成物中に存在するコバルトの全てが
結晶の外表面にあると仮定して算出したCo/V 組成比の
計算値2.02に比べて著しく小さい。従って、これか
らコバルトは該生成物の結晶の外表面に偏在しているの
ではなく、結晶中に一様に分布していて層間にインター
カレートされていると考えられる。上記の計算値は実施
例4と同様にして計算したものである。ここで、該生成
物の層方向の厚みのSEMによる実測値は1500オン
グストロームであった。
【0087】
【実施例7】<バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
する層状化合物の層間にアセチルアセトンマンガンがイ
ンターカレートしている層間化合物の製造>
【0088】アセチルアセトンジルコニウムに代えて、
アセチルアセトンマンガン[Mn(C5H7O2)2]0.478g(1.8
9ミリモル)を使用した以外は、実施例4と同じく実施
した。
【0089】該生成物のX線回折(図15のMn)よ
り、該生成物の回折ピークは2θ=5.06°に存在
し、層間距離が17.4オングストロームであることが
分かった。また、アセチルアセトンジルコニウムと同様
に該生成物は層状構造を保持していた。該生成物は層状
構造を有し、かつその層間距離が17.4オングストロ
ームであって、リン酸水素バナジル0.5水和物に比べ
て広がっていることが確認された。
【0090】該生成物の元素組成は元素分析により求め
た。その結果、P/V=0.98、Mn/V=0.275であった。Mn/V比
は、仕込Mn/V比の0.5に比べて低いが、相当量のマン
ガンが該生成物中に取り込まれていることを示してい
る。
【0091】該生成物のEDS分析(図示せず)より、
マンガンは、バナジウム及びリンと同様に結晶中に一様
に分布していることが分かった。また、該生成物のXP
S分析による該生成物表面のMn/V組成比の実測値は0.
65であり、これは、該生成物中に存在するマンガンの
全てが結晶の外表面にあると仮定して算出したMn/V組成
比の計算値3.95に比べて著しく小さい。従って、こ
れからマンガンは該生成物の結晶の外表面に偏在してい
るのではなく、結晶中に一様に分布していて層間にイン
ターカレートされていると考えられる。上記の計算値は
実施例4と同様にして計算したものである。ここで、該
生成物の層方向の厚みのSEMによる実測値は1500
オングストロームであった。
【0092】
【実施例8】<バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
する層状化合物の層間にアセチルアセトンチタンがイン
ターカレートしている層間化合物の製造>
【0093】アセチルアセトンジルコニウムに代えて、
アセチルアセトンチタン[TiO(C5H7O 2)2]0.495g(1.89
ミリモル)を使用した以外は、実施例4と同じく実施し
た。
【0094】該生成物のX線回折(図15のTi)よ
り、該生成物の回折ピークは2θ=5.32°に存在
し、層間距離が16.6オングストロームであることが
分かった。また、アセチルアセトンジルコニウムと同様
に該生成物は層状構造を保持していた。該生成物は層状
構造を有し、かつその層間距離が16.6オングストロ
ームであって、リン酸水素バナジル0.5水和物に比べ
て広がっていることが確認された。
【0095】該生成物の元素組成は元素分析により求め
た。その結果、P/V=1.21、Ti/V=0.126であった。Ti/V比
は、仕込Ti/V比の0.5に比べて低いが、相当量のチタ
ンが該生成物中に取り込まれていることを示している。
【0096】該生成物のEDS分析(図示せず)より、
ガリウムは、バナジウム及びリンと同様に結晶中に一様
に分布していることが分かった。また、該生成物のXP
S分析による該生成物表面のTi/V組成比の実測値は0.
37であり、これは、該生成物中に存在するチタンの全
てが結晶の外表面にあると仮定して算出したTi/V組成比
の計算値1.90に比べて著しく小さい。従って、これ
からチタンは該生成物の結晶の外表面に偏在しているの
ではなく、結晶中に一様に分布していて層間にインター
カレートされていると考えられる。上記の計算値は実施
例4と同様にして計算したものである。ここで、該生成
物の層方向の厚みのSEMによる実測値は1500オン
グストロームであった。
【0097】
【実施例9】<バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
する層状化合物の層間にアセチルアセトンアルミニウム
がインターカレートしている層間化合物の製造>
【0098】アセチルアセトンジルコニウムに代えて、
アセチルアセトンアルミニウム[Al(C5H7O2)3]0.612g
(1.89ミリモル)を使用した以外は、実施例4と同じく
実施した。
【0099】該生成物のX線回折(図15のAl)よ
り、該生成物の回折ピークは2θ=5.28°に存在
し、層間距離が16.7オングストロームであることが
分かった。また、アセチルアセトンジルコニウムと同様
に該生成物は層状構造を保持していた。該生成物は層状
構造を有し、かつその層間距離が16.7ングストロー
ムであって、リン酸水素バナジル0.5水和物に比べて
広がっていることが確認された。
【0100】該生成物の元素組成は元素分析により求め
た。その結果、P/V=1.19、Al/V=0.068であった。Al/V比
は、仕込Al/V比の0.5に比べて低いが、相当量のアル
ミニウムが該生成物中に取り込まれていることを示して
いる。
【0101】該生成物のEDS分析(図示せず)より、
アルミニウムは、バナジウム及びリンと同様に結晶中に
一様に分布していることが分かった。また、該生成物の
XPS分析による該生成物表面のAl/V組成比の実測値は
0.36であり、これは、該生成物中に存在するアルミ
ニウムの全てが結晶の外表面にあると仮定して算出した
Al/V組成比の計算値1.02に比べて著しく小さい。従
って、これからアルミニウムは該生成物の結晶の外表面
に偏在しているのではなく、結晶中に一様に分布してい
て層間にインターカレートされていると考えられる。上
記の計算値は実施例4と同様にして計算したものであ
る。ここで、該生成物の層方向の厚みのSEMによる実
測値は1500オングストロームであった。
【0102】
【実施例10】<バナジウム、リン及び酸素を基本組成
とする層状化合物の層間にアセチルアセトン鉄がインタ
ーカレートしている層間化合物の製造>
【0103】アセチルアセトンジルコニウムに代えて、
アセチルアセトン鉄[Fe(C5H7O2)3]0.667g(1.89ミリ
モル)を使用した以外は、実施例4と同じく実施した。
【0104】該生成物のX線回折(図15のFe)よ
り、該生成物の回折ピークは2θ=4.19°に存在
し、層間距離が17.0オングストロームであることが
分かった。また、アセチルアセトンジルコニウムと同様
に該生成物は層状構造を保持していた。該生成物は層状
構造を有し、かつその層間距離が17.0ングストロー
ムであって、リン酸水素バナジル0.5水和物に比べて
広がっていることが確認された。
【0105】該生成物の元素組成は元素分析により求め
た。その結果、P/V=1.05、Fe/V=0.077であった。Fe/V比
は、仕込Fe/V比の0.5に比べて低いが、相当量の鉄が
該生成物中に取り込まれていることを示している。
【0106】該生成物のEDS分析(図示せず)より、
鉄は、バナジウム及びリンと同様に結晶中に一様に分布
していることが分かった。また、該生成物のXPS分析
による該生成物表面のFe/V組成比の実測値は0.062
であり、これは、該生成物中に存在する鉄の全てが結晶
の外表面にあると仮定して算出したFe/V組成比の計算値
1.02に比べて著しく小さい。従って、これから鉄は
該生成物の結晶の外表面に偏在しているのではなく、結
晶中に一様に分布していて層間にインターカレートされ
ていると考えられる。上記の計算値は実施例4と同様に
して計算したものである。ここで、該生成物の層方向の
厚みのSEMによる実測値は1500オングストローム
であった。
【発明の効果】本発明は、バナジウム、リン及び酸素を
基本組成とする層状化合物の層間に金属錯体がインター
カレートしているところの新規な層間化合物、及び該層
間化合物を製造するための新規な方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1において得られたベンジルアルコール
がインターカレートしている層間化合物のX線回折パタ
ーンを示す。
【図2】リン酸水素バナジル0.5水和物のX線回折パ
ターンを示す。
【図3】実施例1において得られたベンジルアルコール
がインターカレートしている層間化合物の赤外線吸収ス
ペクトルを示す。
【図4】リン酸水素バナジル0.5水和物の赤外線吸収
スペクトルを示す。
【図5】実施例1において得られたベンジルアルコール
がインターカレートしている層間化合物の加熱温度と重
量減少の関係を示した図である。
【図6】実施例1において得られたアセチルアセトン鉄
がインターカレートしている層間化合物のX線回折パタ
ーンを示す。
【図7】実施例1において得られたアセチルアセトン鉄
がインターカレートしている層間化合物の透過型電子顕
微鏡による結晶構造を示す。
【図8】実施例1において得られたアセチルアセトン鉄
がインターカレートしている層間化合物の透過型電子顕
微鏡による結晶構造を示す。
【図9】実施例1において得られたアセチルアセトン鉄
がインターカレートしている層間化合物のエネルギー分
散型分光計による結晶構造を示す。
【図10】実施例2において得られたフェロセンがイン
ターカレートしている層間化合物のX線回折パターンを
示す。
【図11】実施例3において得られたアセチルアセトン
鉄がインターカレートしている層間化合物のX線回折パ
ターンを示す。
【図12】実施例4において得られた1−ヘキサノール
がインターカレートしている層間化合物のX線回折パタ
ーンを示す。
【図13】実施例4において得られた1−ヘキサノール
がインターカレートしている層間化合物の赤外線吸収ス
ペクトルを示す。
【図14】実施例4において得られた1−ヘキサノール
がインターカレートしている層間化合物の加熱温度と重
量減少の関係を示した図である。
【図15】実施例4〜10において得られた各層間化合
物のX線回折パターンを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 駒井 慎一 愛知県名古屋市千種区不老町 名古屋大学 大学院内 (72)発明者 木島 由貴 愛知県名古屋市千種区不老町 名古屋大学 大学院内 (72)発明者 大倉 拓也 愛知県名古屋市千種区不老町 名古屋大学 大学院内 (72)発明者 神谷 裕一 神奈川県横浜市港北区下田町5−8 東燃 日吉アパート132号 (72)発明者 西川 瑛一郎 埼玉県入間郡三芳町北永井862番地37 Fターム(参考) 4H006 AA03 AB40

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
    する層状化合物の層間に金属錯体がインターカレートし
    ているところの層間化合物。
  2. 【請求項2】 バナジウム、リン及び酸素を基本組成と
    する層状化合物の層間にアルコールがインターカレート
    しているところの層間化合物を金属錯体と共に溶媒の存
    在下に加熱することにより、上記層状化合物の層間に金
    属錯体がインターカレートしているところの層間化合物
    を製造する方法。
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