JP2002139609A - 銀の増反射膜およびそれを用いたカラー液晶表示装置 - Google Patents

銀の増反射膜およびそれを用いたカラー液晶表示装置

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JP2002139609A JP2000331296A JP2000331296A JP2002139609A JP 2002139609 A JP2002139609 A JP 2002139609A JP 2000331296 A JP2000331296 A JP 2000331296A JP 2000331296 A JP2000331296 A JP 2000331296A JP 2002139609 A JP2002139609 A JP 2002139609A
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Terubumi Maeno
光史 前野
Mitsuhiro Tanaka
充浩 田中
Yoshiyuki Sagou
由志 佐合
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 色調を改善するためにSiN膜を用いても銀
あるいはその合金膜と剥離しない銀の増反射膜とこの銀
の増反射膜を用いた半透過反射型または反射型液晶表示
装置を提供する。 【解決手段】 液晶表示装置2が備える一方基板6の透
光性基板31の上に、マット層32が形成され、このマ
ット層32の上に半透過反射金属膜である銀の合金膜3
3が形成さる。この銀の合金膜33の上にSiN膜34
が形成され、このSiN膜34の上にSiO2膜35が
形成される。さらにこの上に、カラーフィルタ電着用I
TO膜36が形成される。SiN膜34とカラーフィル
タ電着用ITO膜36との間に、SiO2膜を形成する
ことによって、製造工程で受ける熱などによって発生す
る応力で、銀の合金膜33とSiN膜34との界面に生
じる剥離を防ぐことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、反射光を利用して
表示を行う半透過反射型あるいは反射型カラー液晶表示
装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図7は、従来の半透過反射型カラーST
N液晶表示装置1(以下、液晶表示装置1と略記する)
の断面図である。液晶表示装置1が備える一対の透光性
基板11,21のうち、透光性基板11の一方表面11
a上には、樹脂から成る下地凹凸層(マット層)12
と、この下地凹凸層12に沿って凹凸に形成される半透
過反射金属膜13と、保護膜である酸化シリコン(Si
2)膜15と、赤(R)、緑(G)および青(B)色
のカラーフィルタ17a,17bおよび17cを形成す
るときに電着用電極として用いる電着用透明導電層16
と、前記カラーフィルタ17a,17b,17cおよび
ブラックマトリクス17dと、平坦化膜としてのオーバ
ーコート膜18と、表示用電極としての駆動用ITO
(Indium TinOxide)膜19と、配向膜20がこの順に
形成されている。透光性基板21の一方表面21a上に
は、表示用電極としての駆動用ITO膜22と、トップ
コート層23と、配向膜24とがこの順に形成されてい
る。
【0003】以上のような透光性基板11,21に挟ま
れた部分に液晶9とスペーサ(図示しない)が封入され
る。また、透光性基板11,21の相互に反対側表面に
は、位相差板5,6と偏光板7,8とがこの順でそれぞ
れ配置される。
【0004】また、液晶表示装置1では、偏光板7の位
相差板5とは反対側(表示面の裏側)に図示はしていな
いがバックライトを配置した構成とし、透過光を用いて
表示を行うこともできる。前記バックライトは、導光板
の端面から入射され、導光板内を導かれ、液晶セルに向
かって導光板の片側表面から光が出射されるものであ
る。
【0005】前記SiO2膜15と電着用透明導電層1
6とは、増反射膜としての効果があるように膜厚が設定
されるのが一般的である。また、半透過反射金属膜13
には、銀や銀合金のほかにアルミニウム合金などが用い
られるが、アルミニウム合金に比べ、きわめて高い反射
率を有する銀もしくは銀合金を採用するのが一般的であ
る。しかしながら、銀および銀合金の半透過反射膜は短
波長域の反射率が低いので、反射表示では色調が悪くな
るという問題がある。
【0006】このような問題に鑑み、特開平11−24
07号公報では、可視光領域の反射率をほぼ一定にする
ため、短波長域の反射率を改善した銀の増反射膜および
それを用いた反射型液晶表示装置が開示されている。具
体的には、銀あるいはその合金膜の上に、短波長域の反
射率を増加させるよう屈折率が比較的小さい第1の透光
性膜であるSiO2膜と、この第1の透光性膜の上に、
第1の透光性膜より屈折率が比較的大きい第2の透光性
膜であるITO膜、TiO2膜またはSiN膜を積層す
ることで短波長域の屈折率を改善している。
【0007】一方最近になり、色調、特に白色の色調が
改善されるということで、前記SiO2膜15の代りに
SiN膜を採用して、銀あるいはその合金膜の上にSi
N膜、ITO膜を順に積層した構成を持つ銀の増反射膜
が検討されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記液
晶表示装置1において、SiO2膜15の代りにSiN
膜を用いた半透過反射型カラーSTN液晶表示装置で
は、銀あるいはその合金膜とSiN膜との界面において
剥離が発生するという不具合が生じる。この剥離の原因
を本出願人等が考察した結果、その要因として製造工程
において生じる応力と、樹脂から成るマット層から発生
するガスとが関係しているとの推論を得た。
【0009】まず、製造工程において生じる応力によっ
て剥離が生じる過程ついて説明する。順に積層されるオ
ーバーコート膜、カラーフィルタ、ITO膜、SiN
膜、銀およびその合金膜は、その膜組成から、オーバー
コート膜は軟質、カラーフィルタは軟質、ITO膜は軟
質、SiNは硬質、銀およびその合金膜は硬質であると
それぞれ考えることができる。これらの膜はその形成工
程、特にオーバーコート膜の焼成時やそれ以降の製造工
程で熱によって衝撃を受けるので、それぞれの膜の界面
に応力がかかり、応力の差を吸収できない硬質層と硬質
層が隣接しているSiN膜と銀あるいはその合金膜との
界面にストレスが集中し、剥離が発生してしまうと考え
られる。
【0010】さらに、銀あるいはその合金膜と透光性基
板との間に樹脂から成るマット層が形成されている場
合、硬質である銀あるいはその合金膜とSiN膜とには
上下両方から引張りあるいは押し応力が作用し、マット
層がない場合よりも剥がれやすくなってしまう。
【0011】つぎに、マット層である樹脂膜から発生す
るガスによって剥離が生じる過程について説明する。順
に積層されるカラーフィルタ、ITO膜、SiN膜、マ
ット層は、その膜組成から、カラーフィルタは分子結合
構造が疎であるのでガス透過性はよい、ITO膜は分子
結合構造が疎であるのでガス透過性はよい、SiN膜は
分子結合構造が緻密であるのでガス透過性は極悪であ
る、銀およびその合金膜は分子結合構造が緻密であるの
でガス透過性は悪いがSiN膜ほど緻密ではない、マッ
ト層は樹脂であるのでガス発生しやすいという特徴を持
っている。このため、マット層から発生したガスは、銀
あるいはその合金膜は透過したもののSiN膜を通過す
ることができず、銀あるいはその合金とSiN膜との間
に溜まったガスによって、剥離が発生すると考えられ
る。
【0012】本発明の目的は、色調を改善するためにS
iN膜を用いても銀あるいはその合金膜と剥離しない銀
の増反射膜とこの銀の増反射膜を用いた半透過反射型ま
たは反射型液晶表示装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、基板上に設け
た銀あるいはその合金膜の上に、窒化シリコン膜、IT
O膜をこの順に積層した銀の増反射膜において、前記窒
化シリコン膜とITO膜との間に応力緩和膜を介在させ
たことを特徴とする銀の増反射膜である。
【0014】本発明に従えば、硬質膜である銀あるいは
その合金膜と窒化シリコン膜とを積層しても、窒化シリ
コン膜とITO膜との間に応力緩和膜を設ける構成とし
たことによって、銀あるいはその合金膜と窒化シリコン
膜との界面に集中する応力を分散することが可能とな
る。したがって、銀あるいはその合金膜と窒化シリコン
膜の界面において剥離や割れが発生しない。前記応力緩
和膜としては、たとえば、窒化シリコン膜よりも分子構
造が疎であるものが用いられる。
【0015】また本発明は、前記応力緩和膜が酸化シリ
コン膜であることを特徴とする。本発明に従えば、酸化
シリコン膜は、窒化シリコン膜ほど緻密な分子結合構造
ではないので、応力緩和膜としての機能を持ち、オーバ
ーコート膜、カラーフィルタおよびITO膜の応力歪み
を緩和する。したがって、銀あるいはその合金膜と窒化
シリコン膜との界面において剥離や割れが発生しない。
また、窒化シリコン膜という非常に安定で安価な材料を
使用することができ、製造を容易に行うことができる。
【0016】さらに、このとき、窒化シリコン膜および
酸化シリコン膜の膜厚をそれぞれ調整することによっ
て、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、ITO膜を積層
した膜を増反射膜となるように設計することができる。
窒化シリコン膜およびITO膜を用いた銀の増反射膜と
同様な色調を再現することが可能である。
【0017】また本発明は、前記窒化シリコン膜の厚み
は50Å程度であり、前記酸化シリコン膜の厚みは20
0Å程度であることを特徴とする。
【0018】本発明に従えば、窒化シリコン膜を従来に
比べ薄くすることによって、マット層から発生するガス
は窒化シリコン膜を透過し、また、酸化シリコン膜は窒
化シリコン膜ほど緻密な構造ではないためガスを透過す
るので、特定の界面にガスが溜まることがなくなり、剥
離や割れの発生を防止することが可能になる。また、窒
化シリコン膜および酸化シリコン膜の膜厚は色調など考
慮して前記の膜厚から±30Åの範囲で適宜調整するこ
とですぐれた色調が再現できる。
【0019】また本発明は、液晶を挟持する一対の基板
のうちの一方基板上に設けたマット層と銀あるいはその
合金膜の上に、窒化シリコン膜、ITO膜、カラーフィ
ルタ、オーバーコート膜をこの順に積層し、反射光を利
用して表示を行うカラー液晶表示装置において、前記窒
化シリコン膜とITO膜との間に応力緩和膜を形成した
ことを特徴とするカラー液晶表示装置である。
【0020】本発明に従えば、熱などの衝撃によって応
力を生みやすい樹脂から成るマット層やオーバーコート
膜を銀あるいはその合金膜および窒化シリコン膜の下層
および上層に形成して成るカラー液晶表示装置であって
も、応力緩和膜がマット樹脂層・オーバーコート膜の熱
衝撃の応力を緩和するため、色調改善に窒化シリコン膜
を用いたカラー液晶表示装置の剥離防止が達成される。
【0021】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の一形態の
半透過反射型カラーSTN液晶表示装置2(以下、液晶
表示装置2と略記する)の断面図である。液晶表示装置
2は、カラーフィルタ37a,37b,37c、半透過
反射金属膜である銀の合金膜33および窒化シリコン
(以下、SiNとする)膜34、酸化シリコン(以下、
SiO2とする)膜およびITO(Indium Tin Oxide)
膜から成る銀の増反射膜7を有する一方基板5と、この
基板31に対向して配置される他方基板6との間に液晶
29が挟持されて構成される。
【0022】以下に、液晶表示装置2について更に詳し
く説明する。図2は、図1の液晶表示装置2の一方基板
5を拡大して示す断面図である。前記一方基板5は、透
光性基板31の一方表面31a上に、樹脂から成る下地
凹凸層(マット層)32が形成され、この下地凹凸層3
2の上に凹凸に沿って銀の合金膜33が形成される。こ
の銀の合金膜33の上に保護膜であるSiN膜34およ
びSiO2膜35が形成される。SiO2膜35は、応力
緩和膜であり、前記銀の合金膜33とSiN膜34との
界面に生じる応力を緩和し、剥離を防止する。応力緩和
膜としては、SiO2膜35のように、SiN膜34よ
りも分子結合構造が疎であることが好ましい。SiO2
膜35の上には、赤(R)、緑(G)および青(B)色
のカラーフィルタ37a,37bおよび37cを電着法
を用いて形成するときに、電着用電極として用いるカラ
ーフィルタ電着用ITO膜36が形成される。このカラ
ーフィルタ電着用ITO膜の上に前記カラーフィルタ3
7a,37b,37cおよびブラックマトリクス37d
が形成され、この上に平坦化膜としてのオーバーコート
膜38が形成される。このオーバーコート膜38の上
に、表示用電極としての駆動用ITO膜39が形成さ
れ、この駆動用ITO膜39の上に配向膜40が形成さ
れている。
【0023】前記他方基板6は、透光性基板41の一方
表面41a上に、表示用電極としての駆動用ITO膜4
2と、トップコート層43と、配向膜44とがこの順に
形成されている。
【0024】前記一方基板5および他方基板6を対向し
て配置した間に、液晶29とスペーサ(図示しない)が
封入されて液晶表示装置2が構成される。また、透光性
基板31,41の相互に反対側表面には、位相差板4
5,46と偏光板47,48とがこの順でそれぞれ配置
される。また、液晶表示装置2では、偏光板47の位相
差板45とは反対側に図示はしていないがバックライト
を配置した構成になっている。前記バックライトは、導
光板の端面から入射され、導光板内を導かれ、液晶セル
に向かって導光板の片側表面から光が出射されるもので
ある。
【0025】前記SiN膜34、SiO2膜35、カラ
ーフィルタ電着用ITO膜36は、銀の増反射膜7を構
成する。本実施形態の液晶表示装置2では、銀の合金膜
33の膜厚は360Å、SiN膜34の膜厚は50Å、
SiO2膜35の膜厚は200Å、カラーフィルタ電着
用ITO膜36の膜厚は800Åとした。また、本実施
形態の液晶表示装置2では、半透過反射金属膜として銀
の合金膜33を用いているが、銀の膜を用いてもよい。
【0026】次に、本実施形態の液晶表示装置2の一方
基板5において透光性基板31の一方表面31a上に形
成される銀の合金膜33とSiN膜34との密着力の評
価を行った。表1は、オーバーコート膜38を焼成して
形成した後の密着力の評価の結果を示す。ここで密着力
の評価には、一般的な密着力を評価する方法である碁盤
目テープ剥離試験を用いた。また、比較のためにSiN
膜34とSiO2膜35とを用いる代わりに膜厚が20
0ÅのSiN膜のみを銀の合金膜33およびカラーフィ
ルタ電着用ITO膜36との間に形成した基板について
も同様にして密着力の評価を行った結果も表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】ここで、図3を用いて碁盤目テープ剥離試
験を説明する。図3は、一方基板5においてオーバーコ
ート膜38を焼成して形成した後の平面図を示す。碁盤
目テープ剥離試験とは、図3に示すようにオーバーコー
ト膜38の完成基板表面にカッターナイフで碁盤目状に
傷を入れ(1mm間隔、100マス)、その上にセロテ
ープ(登録商標)を貼付け、真上に素早く剥がす試験で
あり、この試験結果から密着力を評価した。表1で、○
印は剥離が発生したことを表し、×印は剥離が発生しな
かったことを表す。
【0029】表1に示されるように、銀の合金膜33の
保護膜としてSiN膜を単独で用いたときにはオーバー
コート膜39の焼成温度が250℃以上において銀の合
金膜33とSiN膜との界面において剥離が発生するの
に対して、本実施形態の液晶表示装置2では、SiN膜
34とSiO2膜35とを積層させた構造をとることに
よって、270℃においても剥離は発生せず、オーバー
コート膜39の焼成後においても密着力を保っているこ
とがわかる。
【0030】次に、液晶表示装置2の反射光による色調
についての評価を行った。液晶表示装置2の色調につい
ての評価を行う前に、液晶表示装置2との比較を行うた
めに2つの半透過反射型カラーSTN液晶表示装置3,
4(以下、液晶表示装置3,4と略記する)を作成し
た。図4は、液晶表示装置3の一方基板を示す断面図で
あり、図5は、液晶表示装置4の一方基板を示す断面図
である。
【0031】図4に示す液晶表示装置3は、銀の合金膜
53とカラーフィルタ電着用ITO膜56との間にSi
2膜55のみを形成した構成であり、その他の部分は
前記液晶表示装置2と同様である。また、前記液晶表示
装置2と同様な部分には同一の符号を付している。液晶
表示装置3では、銀の合金膜53の膜厚は300Å、S
iO2膜55の膜厚は200Å、カラーフィルタ電着用
ITO膜56の膜厚は850Åとした。
【0032】また、図5に示す液晶表示装置4は、銀の
合金膜63とカラーフィルタ電着用ITO膜66との間
にSiN膜64のみを形成した構成であり、その他の部
分は前記液晶表示装置2と同様である。前記液晶表示装
置2と同様な部分には同一の符号を付している。また、
液晶表示装置4では、銀の合金膜63の膜厚は360
Å、SiN膜64の膜厚は200Å、カラーフィルタ電
着用ITO膜66の膜厚は800Åとした。
【0033】銀の合金膜の33の保護膜としてのSiO
2膜55およびSiN膜64の分光特性を図6に示す。
分光スペクトルの測定は、大塚電子製LCD5000使
用(IMUC)検出)を用いた。図6に示すように、S
iO2膜55では、SiN膜64に対して短波長での吸
収が大きくなっているため、反射光で黄色く色付きが見
られることになる。また、可視光領域において反射率の
ばらつきが少ないSiN膜64を用いた方がSiO2
55を用いるよりも色付きが少ないため、SiN膜64
は色調の点ではSiO2膜55と比較して非常に優れて
いることがわかる。反射光を用いるカラー液晶表示装置
においては、液晶表示パネルの白色化が表示品位の点に
おいて望まれるので、保護膜としてSiO2膜55を単
独で用いる液晶表示装置3は反射表示に適さないことが
わかった。
【0034】つぎに、本実施形態の液晶表示装置2およ
び比較のための液晶表示装置4の色測定を行った結果を
表2に示す。液晶表示装置4においては、SiN膜64
の膜厚を200Å、310Å、400Åとした場合の色
測定結果を示す。反射率測定装置としてミノルタ製の測
色計CM−1000を用いた。反射率測定条件として、
拡散光源およびAR(AntiReflection)フィルムを使用
した。
【0035】
【表2】
【0036】反射光を用いるカラー液晶表示装置におい
ては、色づきが少ない白色化が望まれていることから、
反射光では、CIE(国際照明学会)L空間
における反射b値は小さい方が望ましい。したがっ
て、保護膜としてはSiN膜を単独で用いたときが最も
反射b値が小さく良好な表示が得られることになる。
したがって、液晶表示装置4のSiN膜34の膜厚とし
ては、表2からSiN膜34が厚くなると反射b値が
大きくなり黄色味が増すため、およそ200Åが望まし
い。
【0037】しかしながら、表1に示すように、オーバ
ーコート膜39の焼成温度が250℃以上ではオーバー
コート膜39の焼成時に熱によって衝撃を受け、膜の界
面に応力が生じ、銀の合金膜33と保護膜であるSiN
膜64との界面において剥離が発生してしまう。したが
って、保護膜としてSiN膜を単独で用いることは望ま
しくない。本実施形態の液晶表示装置2では、SiN膜
34およびSiO2膜35の膜厚について検討を行った
結果、SiN膜34の膜厚を50Å、SiO2膜35の
膜厚を200Åとすることによって、膜厚が200Åの
SiN膜64を単独で用いた液晶表示装置4とほぼ同じ
反射b値が得られ、良好な表示が得られることがわか
った。
【0038】ここでSiN膜34およびSiO2膜厚3
5については一例を示したものであり、それぞれの膜厚
については好みの色調に合わせて、この膜厚を大きく離
れない範囲(±30Åの範囲)で調整すればよい。
【0039】表3に本実施形態の液晶表示装置2と比較
のための液晶表示装置3および液晶表示装置4の密着力
および色調の評価結果についてまとめる。表3では、○
印は優れていることを示し、×印は劣っていることを示
し、△印は○印と×印の間の評価であることを示す。
【0040】
【表3】
【0041】表3に示されるように、本実施形態の液晶
表示装置2は密着力、色調のいずれにおいても優れてい
ることがわかる。
【0042】以上のように本発明によれば、色調改善に
SiN膜を用いた半透過反射型カラーSTN液晶表示装
置において、SiN膜とカラーフィルタ電着用ITO膜
との間に応力緩和膜を介在させることによって、半透過
反射金属膜である銀あるいはその合金膜とSiN膜との
剥離防止を達成することが可能となり、信頼性に優れた
液晶表示装置を得ることができる。また、応力緩和膜と
して、SiO2膜が使用でき、新たな設備投資を必要と
しないので、容易に形成することができる。さらに、応
力緩和膜を特定の厚みにすることによって、銀の反射膜
として作用し、優れた表示特性が発揮される。
【0043】また、本実施形態では半透過反射型のカラ
ーSTN液晶表示装置についてのみ述べているが、バッ
クライトなどを用いて透過光によって表示を行わない反
射型のカラー液晶表示装置であっても同様の構成とする
ことで優れた表示特性および信頼性を得ることができ
る。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、銀あるいはその合金膜
と窒化シリコン膜との界面において剥離や割れが発生し
ないので、色調に優れた窒化シリコン膜を用いた銀の増
反射膜を形成することができる。
【0045】また本発明によれば、酸化シリコン膜は、
窒化シリコン膜ほど緻密な分子結合構造ではないので、
応力緩和膜としての機能を持ち、オーバーコート膜、カ
ラーフィルタおよびITO膜の応力歪みを緩和するの
で、銀あるいはその合金膜と窒化シリコン膜との界面に
おいて剥離や割れが発生しない。また、窒化シリコン膜
という非常に安定で安価な材料を使用することができ、
製造を容易に行うことができる。
【0046】さらに、このとき、窒化シリコン膜および
酸化シリコン膜の膜厚をそれぞれ調整することによっ
て、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、ITO膜を積層
した膜を増反射膜となるように設計することができる。
窒化シリコン膜およびITO膜を用いた銀の増反射膜と
同様な色調を再現することが可能である。
【0047】また本発明によれば、窒化シリコン膜を従
来に比べ薄くすることによって、マット層から発生する
ガスは窒化シリコン膜を透過し、また、酸化シリコン膜
は窒化シリコン膜ほど緻密な構造ではないためガスを透
過するので、特定の界面にガスが溜まることがなくな
り、剥離や割れの発生を防止することが可能になる。
【0048】また本発明によれば、熱衝撃によって応力
を生みやすい樹脂から成るマット層やオーバーコート膜
を銀あるいはその合金膜および窒化シリコン膜の下層お
よび上層に形成して成るカラー液晶表示装置であって
も、応力緩和膜がマット樹脂層・オーバーコート膜の熱
衝撃の応力を緩和するため、色調改善に窒化シリコン膜
を用いたカラー液晶表示装置の剥離防止が達成され、表
示特性および信頼性に優れたカラー液晶表示装置が得ら
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の半透過反射型カラーS
TN液晶表示装置2の断面図である。
【図2】図1の半透過反射型カラー液晶表示装置2の一
方基板5を拡大して示す断面図である。
【図3】碁盤目テープ剥離試験で、オーバーコート膜に
形成する碁盤目状の傷を示す平面図である。
【図4】保護膜としてSiO2膜のみを用いた半透過反
射型カラーSTN液晶表示装置3の一方基板の断面図で
ある。
【図5】保護膜としてSiN膜のみを用いた半透過反射
型カラーSTN液晶表示装置4の一方基板の断面図であ
る。
【図6】銀の合金膜の保護膜としてのSiO膜および
SiN膜の分光特性を示す図である。
【図7】従来の半透過反射型カラーSTN液晶表示装置
1の断面図である。
【符号の説明】
1,2,3,4 半透過反射型カラーSTN液晶表示装
置 9,29 液晶 31,41 透明基板 32 下地凹凸層(マット層) 33 銀の合金膜 34,64 SiN膜 35,55 SiO2膜 36 カラーフィルタ電着用ITO膜 37a,37b,37c カラーフィルタ 38 オーバーコート膜(平坦化膜) 39,42 駆動用ITO膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐合 由志 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ャープ株式会社内 Fターム(参考) 2H042 BA03 BA12 BA20 DA04 DA18 DE04 2H091 FA02Y FA08X FA08Z FA11X FA11Z FA14Y FA15Y FA23Z FA35Y FA41Z GA02 GA08 GA16 HA10 LA15 LA30 2K009 BB06 CC02 CC03 EE00

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に設けた銀あるいはその合金膜の
    上に、窒化シリコン膜、ITO膜をこの順に積層した銀
    の増反射膜において、 前記窒化シリコン膜とITO膜との間に応力緩和膜を介
    在させたことを特徴とする銀の増反射膜。
  2. 【請求項2】 前記応力緩和膜が酸化シリコン膜である
    ことを特徴とする請求項1記載の銀の増反射膜。
  3. 【請求項3】 前記窒化シリコン膜の厚みは50Å程度
    であり、前記酸化シリコン膜の厚みは200Å程度であ
    ることを特徴とする請求項2記載の銀の増反射膜。
  4. 【請求項4】 液晶を挟持する一対の基板のうちの一方
    基板上に設けたマット層と銀あるいはその合金膜の上
    に、窒化シリコン膜、ITO膜、カラーフィルタ、オー
    バーコート膜をこの順に積層し、反射光を利用して表示
    を行うカラー液晶表示装置において、 前記窒化シリコン膜とITO膜との間に応力緩和膜を形
    成したことを特徴とするカラー液晶表示装置。
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