JP2002122597A - 測定対象物の測定用チップ,測定対象物の測定装置及び測定対象物の測定方法 - Google Patents

測定対象物の測定用チップ,測定対象物の測定装置及び測定対象物の測定方法

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JP2002122597A
JP2002122597A JP2001240895A JP2001240895A JP2002122597A JP 2002122597 A JP2002122597 A JP 2002122597A JP 2001240895 A JP2001240895 A JP 2001240895A JP 2001240895 A JP2001240895 A JP 2001240895A JP 2002122597 A JP2002122597 A JP 2002122597A
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Satoru Isomura
哲 磯村
英士 ▲高▼山
Eiji Takayama
Takaaki Munebayashi
孝明 宗林
Mitsuaki Nishino
充晃 西野
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 測定対象物の測定用チップ,測定対象物の測
定装置及び測定対象物の測定方法において、製作を簡便
化でき、測定を効率的且つ精度良く行なえ、さらに汎用
性を拡大できるようにする。 【解決手段】 検体10中の測定対象物を測定するため
の測定用チップ1であって、チップ基板2と、チップ基
板2に設けられ検体10を流通させる溝状の第1流路5
Aと、チップ基板2に設けられ該測定対象物に特異的に
結合する第1の特異的結合物質を有する標識物質12を
流通させる溝状の第2流路5Bと、第1流路5A及び第
2流路5Bが集合してチップ基板2に形成される溝状の
反応流路5と、反応流路5に設けられ該測定対象物と特
異的に結合する第2の特異的結合物質13が固定された
反応部位5Dとをそなえて構成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗原抗体反応のよ
うな特異的な反応を利用して検体中の測定対象物の量を
測定するための、測定対象物の測定用チップ,測定対象
物の測定装置及び測定対象物の測定方法に関し、詳しく
は、測定対象物に特異的に結合する特異的結合物質を、
検体を流通させる反応流路中に固定化して測定を行な
う、測定対象物の測定用チップ,測定対象物の測定装置
及び測定対象物の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、抗体−抗原反応を利用した免
疫測定のように、検体中の測定対象物を測定するための
技術が開発されている。このような技術としては、例え
ば、イムノクロマトグラフ法がある。イムノクロマトグ
ラフの基本原理は次の通りである。すなわち、クロマト
グラフ媒体(例えばニトロセルロース膜等の多孔質膜)
において、マーカにより標識された物質(標識物質)が
固定された第1部位と、測定対象物に特異的に結合する
特異的結合物質が固定化された第2部位とを形成し、測
定対象物を有する液体試料を、第1部位に供給して、測
定対象物と標識物質とを反応させる。そして、この反応
により生じた測定対象物と標識物質との複合物を、毛細
管現象を利用して第2部位に移動させて、この第2部位
に、特異的結合物質−測定対象物−標識物質の複合体を
形成させ、固定化された標識物質による発色に基づいて
測定対象物量を測定するのである。
【0003】このようなイムノクロマトグラフの原理を
応用した技術の一例としては、特開平5−133956
号公報に開示された技術(従来技術1)や特開平9−1
84840号公報に開示された技術(従来技術2)があ
る。従来技術1では、移動層を構成するクロマトグラフ
媒体上における標識粒子の展開移動を、酸素原子含有極
性基を有するビニル系水溶性ポリマの存在下において行
なわせるようにしている。これにより、標識粒子を確実
に且つ速やかに展開移動させることができ、さらに、検
出試薬による標識粒子の感作による効果が長期間持続し
て標識粒子と測定対象物との反応が確実に生じるように
なるので、試料中の測定対象物の濃度が低い場合でも短
時間内に且つ確実に測定対象物を検出できる。
【0004】また、従来技術2では、標識物質と特異的
結合物質とを第1部分の液層中で反応させて複合体を液
層中で形成させ、この複合体を毛細管現象により第2部
分に運ばせて判定部で捕捉させ、判定部における標識物
質に由来する発色の程度に基づいて測定対象物量を測定
するようになっており、このように標識物質と特異的結
合物質とを液層中で反応させることにより、かかる反応
に要する時間を短縮できるようにしている。
【0005】さて、上記のように毛細管現象を利用して
測定対象物を流通させるイムノクロマトグラフ法に対
し、圧力制御や電気浸透力によって測定対象物の流通を
制御しつつ測定を行ないうる測定方法として、内壁に特
異的結合物質が固定されたキャピラリ内に検体を流通さ
せる技術がある。かかる技術としては、例えば、特開昭
60−133368号公報に開示された技術(従来技術
3)や、Biosensors & Bioelectronics 13 (1998) 825-
830(A multi-band capillary immunosensor, K.Misiak
os, S.E. Kakabakos)に開示された技術(従来技術4)
がある。
【0006】従来技術3では、標識物質を捕捉する標識
物捕捉物質を固定した不溶性担体及び標識免疫反応試薬
を保持させた不溶性担体をキャピラリ内に充填し、この
キャピラリ内に検体を吸入して免疫反応を行なわせ、反
応生成物又は標識免疫反応試薬を標識物捕捉物質と結合
させて不動化し、不動化された標識物質を介して検体に
含まれる測定対象物の量を測定するようになっている。
【0007】従来技術4では、特異的結合物質がコーテ
ィングされたキャピラリ内に、蛍光標識された測定対象
物を含む検体を充填し、特異的結合物質と測定対象物と
を反応させた後、未反応物質を洗い流し、このキャピラ
リに特定の波長の光線をキャピラリの軸方向に対して略
垂直に照射し、キャピラリの端部から測定される蛍光量
により、検体中の測定対象物量を測定するようになって
いる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た従来技術1,2のようなイムノクロマトグラフ法で
は、検体の流通を毛細管現象を利用して行なわせている
ため、検体の流速を、検体中の測定対象物,標識物質及
び特定結合物質における反応に適した所定の流速に制御
できないという課題がある。さらに、測定対象物の展開
の場となるクロマトグラフ媒体は一般的に多孔質膜によ
り構成されることが多く、多孔質膜は、透明性が低く、
また、分光分析における光の散乱が大きいため、特異的
対象物と測定対象物との反応物量を正確に測定するのが
困難であるという課題がある。
【0009】また、上述した従来技術3,4のようにキ
ャピラリ内に検体を流通させる技術では、キャピラリの
横断面は閉断面であるため、キャピラリ内の所定の箇所
に限定して、標識物質や特異的結合物質を固定化するこ
とは困難であり、同様に、分析系に適した表面処理をキ
ャピラリ内壁に施工するのが困難であるため、製作に手
間が掛かってしまうという課題がある。また、閉空間で
あるキャピラリ内に特異的結合物質を固定化する方法と
しては、例えば光反応を利用したものがあり、この方法
では、キャピラリ内に特定の光を照射して特異的結合物
質を固定化するようになっている。しかしながら、この
方法では、キャピラリの外壁をなすチップ基板が透過性
のものに限定されてしまうという課題がある。
【0010】また、PCT−WO93/24231号公
報には、チップ基板上に検体を流通させるための溝部
(バリア部)を設け、この溝部において特異結合物質及
び標識物質を所定位置に固定化した後、チップ基板上に
蓋部を積載して溝部を閉断面の横断面を有するキャピラ
リとして構成する技術が開示されている。この技術で
は、溝部の形状(深さや幅長や経路等)を詳細に設定す
ることにより、検体中の測定対象物,特異結合物質及び
標識物質間における反応に対して溝部内の検体の流速を
最適化するようにしている。また、溝部に蓋部を積載し
てキャピラリを構成する前に、特異結合物質及び標識物
質を開放状態の溝部に固定するので、製作を容易に行な
える。
【0011】しかしながら、この技術では、検体中の測
定対象物の種類に応じて(即ち、測定対象物の種類毎
に)、検体の流速が最適な物となるように溝部の形状を
設定/製作する必要があるため、汎用性が極めて低いと
いう課題がある。また、この他、公知の技術として、チ
ップ基板に設けられた一本の溝に、特異的結合物質を固
定化した反応部が形成された測定用チップがある。この
技術では、この溝に、先ず、検体を流して、反応部にお
いて検体中の測定対象物と特異的結合物質との複合体を
生成させ(ステップ1)、その後、溝に標識物質を流通
させて、反応部において測定対象物―特異的結合物質―
標識物質の複合体を生成させ(ステップ2)、反応部に
結合した標識物質量を測定して測定対象物量を測定する
技術がある。しかしながら、この技術では、先ず検体を
流通させた後、標識物質を流通させるので、操作ステッ
プとして2ステップ必要となり、作業効率が悪いという
課題がある。
【0012】また、一般的に、液相と固相との反応の速
度は、液相と液相との反応の速度に比べて極端に遅い。
上記技術では、ステップ1では、反応部に固定された特
異的結合物質(固相)と検体(液層)とが反応し、ま
た、ステップ2では、反応部に固定された特異的結合物
質及び検体中の測定対象物の複合体(固相)と、標識物
質(液層)とが反応する。つまり、液相と固相との反応
が2回必要になるため、測定に要する反応時間が長く、
効率が悪いという課題がある。
【0013】さらに、一つの溝を、検体の流路及び標識
物質の流路として兼用するため、流路内における検体の
流速と標識物質の流速とを最適なものに両立するのが困
難であり、測定効率が低くなってしまう場合もある。本
発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、製作
を簡便化でき、測定を効率的且つ精度良く行なえ、さら
に汎用性を拡大できるようにした、測定対象物の測定用
チップ,測定対象物の測定装置及び測定対象物の測定方
法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1記載
の本発明の測定対象物の測定用チップは、検体中の測定
対象物を測定するための測定用チップであって、チップ
基板と、該チップ基板上に設けられ該検体を流通させる
溝状の第1流路と、該チップ基板上に設けられ該測定対
象物に特異的に結合する第1の特異的結合物質を有する
標識物質を流通させる溝状の第2流路と、該第1流路及
び該第2流路が集合して該チップ基板上に形成される溝
状の反応流路と、該反応流路に設けられ該測定対象物と
特異的に結合する第2の特異的結合物質が固定された反
応部位とをそなえて構成されていることを特徴としてい
る。
【0015】請求項2記載の本発明の測定対象物の測定
用チップは、検体中の測定対象物を測定するための測定
用チップであって、チップ基板と、該チップ基板を被覆
する被覆部材と、該チップ基板と該被覆部材との間に形
成され、該検体を流通させる第1流路と、該チップ基板
と該被覆部材との間に形成され、該測定対象物に特異的
に結合する第1の特異的結合物質を有する標識物質を流
通させる第2流路と、該チップ基板と該被覆部材との間
に形成され、該第1流路及び該第2流路が集合して形成
される反応流路と、該反応流路に面して該チップ基板及
び該被覆部材の少なくとも一方に設けられ、該測定対象
物と特異的に結合する第2の特異的結合物質が固定され
た反応部位とをそなえて構成されていることを特徴とし
ている。
【0016】請求項3記載の本発明の測定対象物の測定
装置は、請求項1又は2記載の測定用チップと、該測定
用チップにおける該検体及び該標識物質の流通を制御す
る流通制御手段と、該反応部位において該第1の特異的
結合物質及び該測定対象物を介して該第2の特異的結合
物質に結合した該標識物質に関する測定を行なう測定手
段とをそなえて構成されていることを特徴としている。
【0017】請求項4記載の本発明の測定対象物の測定
装置は、検体が流通する測定用チップと、該測定用チッ
プにおける該検体の流通を制御する流通制御手段と、測
定手段とをそなえてなる測定対象物の測定装置であっ
て、該測定用チップが、チップ基板と、該チップ基板に
設けられ該検体を流通させる溝状の反応流路と、該検体
中の測定対象物に特異的に結合する第1の特異的結合物
質を有する標識物質と該検体とを混合させるべく該反応
流路内に設けられた混合部位と、該反応流路内において
該混合部位よりも該検体の流通方向下流側に設けられ該
測定対象物に特異的に結合する第2の特異的結合物質が
固定された反応部位とをそなえて構成され、該測定手段
が、該反応部位において該第1の特異的結合物質及び該
測定対象物を介して該第2の特異的結合物質に結合した
該標識物質に関する測定を行なうことを特徴としてい
る。
【0018】請求項5記載の本発明の測定対象物の測定
装置は、検体が流通する測定用チップと、該測定用チッ
プにおける該検体の流通を制御する流通制御手段と、測
定手段とをそなえてなる測定対象物の測定装置であっ
て、該測定用チップが、チップ基板と、該チップ基板を
被覆する被覆部材と、該チップ基板と該被覆部材との間
に形成され該検体を流通させる反応流路と、該検体中の
測定対象物に特異的に結合する第1の特異的結合物質を
有する標識物質と該検体とを混合させるべく該反応流路
に面して該チップ基板及び該被覆部材の少なくとも一方
に設けられた混合部位と、該混合部位よりも該検体の流
通方向下流側において該反応流路に面して該チップ基板
及び該被覆部材の少なくとも一方に設けられ、該測定対
象物に特異的に結合する第2の特異的結合物質が固定さ
れた反応部位とをそなえて構成され、該測定手段が、該
反応部位において該第1の特異的結合物質及び該測定対
象物を介して該第2の特異的結合物質に結合した該標識
物質に関する測定を行なうことを特徴としている。
【0019】請求項6記載の本発明の測定対象物の測定
方法は、請求項1又は2記載の測定用チップを使用し
て、該検体を該第1流路に流通させると略同時に、該標
識物質を該第2流路に流通させ、該反応流路において該
検体と該標識物質とを混合させる第1のステップと、該
検体と該標識物質との混合物を該反応流路の該反応部位
と接触させる第2のステップと、該反応部位において該
第1の特異的結合物質及び該測定対象物を介して該第2
の特異的結合物質に結合した該標識物質に関する測定を
行なう第3のステップとをそなえて構成されていること
を特徴としている。
【0020】請求項7記載の本発明の測定対象物の測定
方法は、請求項4又は5記載の測定対象物の測定用装置
を使用して、該検体の流通状態を該流通制御手段により
制御しながら該検体を該反応流路に流通させることによ
り、該反応流路に配置された該標識物質と該検体とを混
合させる第1のステップと、流通状態を該流通制御手段
により制御された該検体と該標識物質との混合物を、該
反応流路において該反応部位と接触させる第2のステッ
プと、該反応部位において、該第1の特異的結合物質及
び該測定対象物を介して該第2の特異的結合物質に結合
した該標識物質を測定する第3のステップとをそなえて
構成されていることを特徴としている。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態について説明する。 (A)第1実施形態の説明 まず、本発明の第1実施形態としての測定対象物の測定
用チップ,測定対象物の測定装置及び測定対象物の測定
方法について説明する。図1及び図2は本実施形態の測
定対象物の測定用チップ,測定対象物の測定装置及び測
定対象物の測定方法について示す図である。なお、以下
でいう『溝』或いは『溝状の流路』とは、その横断面に
開放部を有するものを意味する。
【0022】本実施形態の測定用チップ1は、図1
(A),(B)に示すように、チップ基板2と、膜状部
材3と、インジェクションボード(蓋部,被覆部材)6
とを下からこの順に積層/重合して構成されている。イ
ンジェクションボード6は、膜状部材3を介してチップ
基板2の表面2Aを覆い、チップ基板2,膜状部材3及
びインジェクションボード6の間に後述する閉断面形状
の流路5が形成されるようになっている。
【0023】チップ基板2は、ここでは、厚さ1mmの
ポリメタクリル酸メチル(pMMA)の板を60mm×
40mmに切断して製作されている。また、膜状部材3
には、厚さ約20μm(=後述する流路5A,5B,5
Cの深さ),幅40mmの市販の紙製両面テープが使用
され、下方のチップ基板2及び上方のインジェクション
ボード6に接着している。
【0024】また、膜状部材3には、ここでは、Y字形
状の孔部4が貫設されている。孔部4の分岐部分4A,
4B及び主部分4Cの流路幅はWA,WB,WCはいずれ
も2mmに設定されている。また、分岐部分4A,4B
の長さLA,LBはそれぞれ14mmに設定され、主部分
4Cの長さLCは30mmに設定されている。なお、流
路WA,WB,WCの幅は、通常3mm以下、好ましくは
1mm以下である。そして、膜状部材3をチップ基板2
に積載することにより、チップ基板2上に溝状の流路
(開放部を有する流路)が形成される。つまり、膜状部
材3の孔部4とチップ基板2の表面2Aとから、検体や
検体中の測定対象物を標識する標識物質を流通させる溝
状の流路が形成されるのである。なお、ここでいうチッ
プ基板2上の溝状の流路とは、このように膜状部材3を
チップ基板2に積載することによりチップ基板2上に形
成されるものだけでなく、チップ基板2に直接形成され
る溝をも含む。
【0025】そして、さらに膜状部材3上にインジェク
ションボード6を載置することによりこの溝状の流路が
密閉され、上述したように閉断面形状の流路5が形成さ
れる。インジェクションボード6についてさらに説明す
ると、インジェクションボード6は、チップ基板2と同
じく、厚さ1mmのポリメタクリル酸メチル(pMM
A)の板を60mm×40mmに切断して製作されてい
る。また、インジェクションボード6には、測定用チッ
プ1への積載時に、流路5Aの上流端に連通するように
検体10を注入するための注入口6Aが、流路5Bの上
流端に連通するように標識物質12を注入するための注
入口6Bがそれぞれ貫設され、同様に、検体10と標識
物質12との混合物を排出するために排出口6Cが、反
応流路5Cの下流端に連通するように貫設されている。
インジェクションボード6を蓋部として測定用チップ1
に積載して流路5を閉断面形状とすることにより、この
流路5内において後述するシリンジポンプ7により検体
10及び標識物質12を安定して流通させることができ
るようになっている。
【0026】なお、注入口6A,6B及び排出口6C
は、幅2mmの流路5にあわせて、直径2mmに形成さ
れている。また、インジェクションボード6の材質とし
ては、ここではポリメタクリル酸メチルが使用されてい
るが、チップ基板2に適用可能な材質として後述するも
のであれば使用できる。さて、流路5は、検体が注入さ
れる第1流路(以下、単に流路ともいう)5Aと、標識
物質が注入される第2流路(以下、単に流路ともいう)
5Bと、これらの流路5A,5Bが集合して形成される
反応流路5Cとからなり、反応流路5Cには、検体中の
測定対象物と特異的に結合する特異的結合物質(第2の
特異的結合物質)が固定化された反応部位5Dが設けら
れている。
【0027】測定対象物が、同時に同種類の特定結合物
質を2個以上結合できる場合、又は、同時に互いに異な
る種類の特定結合物質を2種類以上結合できる場合に
は、反応部位5Dに固定化された特異的結合物質と、特
異的結合物質を有する標識物質とに同時に結合できるた
め、測定に有利な物性を有する標識物質を介して測定対
象物を測定できるようになっている。
【0028】つまり、図2(B)に示すように、標識物
質12は、検体中の測定対象物と特異的に結合する特異
的結合物質(第1の特異的結合物質)12Aを有してお
り、第2流路5Bから注入された標識物質12と、第1
流路5Aから注入された検体中に含まれる図2(A)に
示す測定対象物11とが、流路5A,5Bの合流部位
(混合部位)5Fにおいて、図2(C)に示すように特
異的結合物質12Aを介して結合するようになってい
る。さらに、この測定対象物11と標識物質12との結
合物質は、反応流路5Cの反応部位5Dにおいて、図2
(D)に示すように測定対象物11を介して特異的結合
物質(第2の特異的結合物質)13と結合するようにな
っている。
【0029】したがって、反応部位5Dでは、図2
(D)に示すように、標識物質12(特異的結合物質1
2A),測定対象物11及び特異的結合物質13からな
る複合体が、チップ基板表面2Aに固定されるので、測
定対象物11が例えば透明であるため測定対象物11を
直接測定が困難な場合であっても、標識物質12を介し
て測定対象物11の量を容易に測定できるようになって
いる。
【0030】なお、ここでは、反応流路5Cに対する流
路5Aの傾斜角θAと反応流路5Cに対する流路5Bの
傾斜角θBとは同じ角度に設定されている〔θA=θB,
図1(B)参照〕。以下、チップ基板2,膜状部材3,
測定対象物11,特異的結合物質13について、さらに
説明する。
【0031】先ず、チップ基板2について説明すると、
チップ基板2の材質には、上述したように、ここではポ
リメタクリル酸メチルを使用しているが、固相として十
分に堅固なものであればこれに限定されない。好ましく
は、ガラス及び樹脂であるが、金属や半導体やセラミッ
クス等を使用することもできる。また、チップ基板2
は、膜状部材3とともに流路5を構成するので、検体1
0や標識物質12に対して安定した材質であることが好
ましい。
【0032】さらに、膜状部材3とともに流路5を構成
するチップ基板2の表面2Aに所定の表面処理を施すよ
うにしても良い。このような表面処理は、検体10や標
識物質12に応じて適宜に施工されるものであって、例
えば、チップ基板2が疎水性であり、検体10及び標識
物質12が水溶性のものであれば、酸・アルカリによる
親水処理(表面改質)が考えられる。また、反応部位5
Dに固定化される特異的結合物質13が蛋白質であれ
ば、特異的結合物質13を結合すべく、例えば、カルボ
ジイミド,マレイミド,スクシンイミドによる表面処理
が行なわれる。さらに、非特異吸着(非特異物質が吸着
してしまうこと)を抑制すべく、例えばアルプミンや界
面活性剤や人工高分子による表面処理を行なうようにし
ても良い。
【0033】或いは、表面処理を行なう代わりに、自己
組織化膜,LB膜,無機薄膜又は有機薄膜をチップ基板
2の表面2Aに貼り付けて、流路5内において所定の表
面物性が得られるようにしても良い。次に、膜状部材3
について説明すると、膜状部材3は、ここでは上述した
ように市販の紙製テープにより構成されているが、樹脂
フィルム,紙,金属板,ガラス板等によりなる厚膜又は
薄膜であれば、これに限定されない。また、ここでは、
膜状部材3は両面に接着剤が塗布された両面テープによ
り構成してチップ基板2やインジェクションボード6に
貼り合わせるようにしているが、膜状部材3の結合方法
は、膜状部材3やチップ基板2やインジェクションボー
ド6等の材質等に応じて適宜選択されるもので、接着剤
による接着の他、溶剤・溶解溶媒による貼り合わせ(例
えばプライマによる樹脂接合),拡散接合,陽極接合,
共晶接合,熱融着,レーザ溶融,圧着等がある。或い
は、膜状部材3,チップ基板2,インジェクションボー
ド6の各相互間に、粘着テープや圧着テープや自己吸着
剤を介装するようにしても良い。
【0034】また、膜状部材3,チップ基板2,インジ
ェクションボード6のそれぞれに凹凸を設けこれらの凹
凸をはめ込んで結合したり、膜状部材3,チップ基板
2,インジェクションボード6をクリップで挟み込んで
結合したりする等、物理的に結合しても勿論構わない。
また、膜状部材3の厚みは、即ち流路5の深さであり、
上限としては、一般的には400μm以下であり、好ま
しくは200μm以下である。流路5を流通する検体1
0及び標識物質12は、流路5の底部に固定された特異
的結合物質13と接触し結合するので、流路5が深いほ
ど流路5の底部の特異的結合物質13と接触しない検体
10又は標識物質12が増加してしまうため、膜状部材
3の厚み(流路5の深さ)を上述のように200μm以
下に設定するのが反応効率の点から好ましいのである。
【0035】また、膜状部材3の厚み(流路5の深さ)
は、膜状部材3の製作の容易性及び流路5の底部に固定
された特異的結合物質13の厚みを考慮すると、0.1
μm以上であるのが一般的である。
【0036】次に、検体10及び測定対象物11につい
て説明する。検体10としては、主に医療診断を目的と
したものと環境分析を目的としたものとがあり、医療診
断用としては、生体由来の血液,体液,尿,涙等であ
り、環境分析用としては、海や河川の水,大気を溶解さ
せた溶液等である。また、測定対象物11としては、そ
れに対して特異的に結合する物質(特異的結合物質)が
存在するものであれば限定されず、例えば、蛋白質,有
機物質,脂質,糖,ペプチド,ホルモン,核酸等であ
る。
【0037】次に、特異的結合物質13について説明す
る。特異的結合物質13は、測定対象物11に応じて適
宜決定されるものであり、例えば、イムノグロブリン,
その派生物であるF(ab′)2やFab′やFab,レセプタや酵
素とその派生物,核酸,天然又は人工のペプチド,人工
ポリマ,糖鎖,脂質,無機物質及び有機配位子,ウィル
ス,薬物等である。
【0038】また、特異的結合物質13のチップ基板2
(反応流路5C)への固定化方法としては、特異的結合
物質13を物理的にチップ基板2に吸着させる方法と、
特異的結合物質13を化学的にチップ基板2に結合させ
る方法とがある。物理的な固定化方法としては、特異的
結合物質13を固相(チップ基板2)に直接接触させて
固定化する方法と、先ず他の物質を固相に物理的又は化
学的に固定化し、この物質を介して特異的結合物質13
を固相に吸着させる方法とがある。また、化学的な固定
化方法としては、特異的結合物質13を固相に直接結合
させる方法,固相の表面に存在する官応基を化学的に活
性化させてから特異的結合物質13を結合させる方法,
スペーサ分子を物理的又は化学的に固相に結合させこの
スペーサ分子を介して特異的結合物質13を固相に結合
させる方法がある。
【0039】また、特異的結合物質13をチップ基板2
(反応流路5C)にスポッティングする方法としては、
例えば、スポイトによる滴下,インクジェットプリンタ
の原理を利用したノズル孔による噴射又は滴下,先細状
のピン先による塗布及びスタンプ等がある。さて、本実
施形態の測定装置は、図1に示すように、上記測定用チ
ップ1と、流路5における検体10や標識物質12の流
通を制御するシリンジポンプ(流通制御手段)7と、反
応部位5Dに結合した標識物質12を測定する図示しな
い測定手段とをそなえて構成される。
【0040】また、ここでは、上述したように検体10
等の流通を制御する流通制御手段7としてシリンジポン
プが使用されている。シリンジポンプ7は、外径6mm
のシリコンチューブ7A,PDMS(ポリジメチルシロ
キサン)材により構成されるプレート7Bを介してイン
ジェクションボード6の排出口6C(反応流路5Cの下
流端)に接続され、検体10と標識物質12との流通を
制御するようになっている。流通制御手段は、検体10
と標識物質12との流通を制御できるものであれば、シ
リンジポンプに限定されず、例えば、陽圧式ポンプや陰
圧式ポンプをインジェクションボード6の注入口6A,
6B又は排出口6Cに接続するようにしても良い。
【0041】又は、流通制御手段として、流路5の上流
端及び下流端にそれぞれ電極を取り付け、これらの電極
に異なる電圧をかけることにより検体10及び標識物質
12に電気浸透流を生じさせるようにしても良い。或い
は、流通制御手段として、加熱装置を測定用チップ1に
設け、この加熱装置により流路5に沿って温度勾配を生
じさせるようにしても良い。つまり、かかる温度勾配に
より、流路5に沿って検体10及び標識物質12に比重
差を生じさせ、この比重差により検体10及び標識物質
12を流通させるのである。
【0042】又は、流通制御手段として、注入口6A,
6B及び排出口6Cに電極を取り付けるとともに注入口
6A,6B及び排出口6Cの周辺に金属をコーティング
することにより、流路5の検体10及び標識物質12に
直流電場をかけてイオン(測定対象物11,標識物質1
2)を電気泳動させるようにしても良い。この場合、検
体10の溶媒や標識物質12の溶媒の移動はないので、
インジェクションボード6により流路5を密閉する必要
はない。したがって、インジェクションボード6が不要
となるので、測定用チップは上記チップ基板2及び膜状
部材3から構成されることとなり、チップ基板2及び膜
状部材3により形成される溝(溝状の流路)が、第1流
路5A,第2流路5B及び反応流路5Cとして機能す
る。
【0043】さらに、流通制御手段は、上述した各方法
を複数組み合わせて行なうようにしても良い。さて、測
定手段8は、標識物質の物性に基づき標識物量を測定す
るものであれば何ら限定されず、例えば、吸光,蛍光,
エバネッセント励起蛍光,燐光,化学発光を測定するも
のや、表面プラズモン共鳴,水晶振動子等を利用したも
のが挙げられる。或いは、標識物質12が酵素等の触媒
である場合には、その基質を加えて反応させ、生成物を
検出することで測定を行なうこともある。また、光音響
測定法(特定の光を照射して、放射される音波を測定す
ることにより物質の量を測定する方法)を用いることも
可能である。
【0044】本発明の第1実施形態としての測定対象物
の測定用チップ及び測定対象物の測定装置は、上述のよ
うに構成されているので、以下に示す手順(本発明の第
1実施形態としての測定対象物の測定方法)により測定
対象物の測定が行なわれる。最初に、標識物質12の調
整について説明する。標識物質12は、ここでは、抗ヒ
トFSH−αサブユニット抗体固定化EuLTX(Ab
−EuLTX)で構成される。
【0045】先ず、粒径0.21μmのEu錯体を含む
ポリスチレン粒子(EuLTX)を0.05M MES
(pH6.0)にて希釈し、1%懸濁液を2mL(ミリ
リットル)調整し、1−エチル−3−(3−ジメチルア
ミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)を除
去して洗浄した後、所定量V(ここでは2mL)の0.
05M MES(pH7.0)でEuLTXを分散させ
てから、抗ヒトFSH−αサブユニット抗体(以下、単
に抗体ともいう)を所定量M(ここでは0.8mg)加
え、室温で1時間反応させる。そして、この溶液を遠心
して、未反応の抗体を除去し、BSA含有トリス緩衝液
(0.3%BSA, 0.1M Tris, pH8.
0)を加え、粒子を安定化する。この時、抗体濃度C1
は0.4mg/mLである(C1=M/V=0.8/2
=0.4)。
【0046】そして、室温で30分攪拌してから遠心し
て精製水で洗浄を行なった後、0.05%アジ化ナトリ
ウム液に分散させて、標識物質(Ab−EuLTX)1
2が調整される。なお、この時点で、未結合の抗体濃度
C2は、0.15mg/mLであり、したがって抗体の
固定化率Rは62.5%である〔R=(C1−C2)/C
1×100=(0.4−0.15)/0.4×100〕 そして、図1(A)において、チップ基板2に膜状部材
3を貼り合わせた後、チップ基板2と膜状部材3とによ
り形成される反応流路5Cの所定部位(ここでは、反応
流路5Cの下流端から上流側に10mm離隔した位置)
において、1.1mmg/mLの抗TSH抗体(マウス
IgG)を、特異的結合物質13として2μL(マイク
ロリットル)滴下し、常温・常圧で30分乾燥させた
後、さらに常温で真空乾燥を15分間行なって、反応流
路5Cに固定化し反応部位5Dを形成する。
【0047】そして、インジェクションボード6を膜状
部材3上に貼り合わせた後、検体10として、純水で希
釈され123μIU/mLに調整されたTSH標準品を
100μLだけ注入口6Aから流路5Aに滴下するとと
もに、Ab−EuLTXを純水で100倍に希釈して標
準物質12を調整し、この標準物質12を100μLだ
け注入口6Bから流路5Bに滴下する。次に、インジェ
クションボード6の排出口6Cに接続されたシリンジポ
ンプ7を作動させて、注入口6A,6Bの検体10及び
標識物質12を50μL/分で吸引して反応流路5Cに
向けて流通させる。検体10中の測定対象物11と標識
物質12とは、合流部位5Fで混合され結合し(ステッ
プ1)、その後、反応部位5D上に移動して、反応部位
5Dに固定された特異的結合物質13とさらに結合する
(ステップ2)。そして、上記手順と同じ手順により、
各流路5A,5Bからそれぞれ100μLの純水を吸入
して流路5を洗浄する。
【0048】そして、図示しない測定装置により反応部
位5Dに波長が365nmの紫外線を照射したところ、
反応部位5Dに標識物質12に起因した赤色の蛍光が目
視により観察され、検体10中の測定対象物11が含ま
れていることが測定された(第3ステップ)。したがっ
て、本実施形態の測定対象物の測定用チップ,測定対象
物の測定装置及び測定対象物の測定方法によれば、以下
のような利点がある。
【0049】また、本発明では、検体10中の測定対象
物11と標識体12との反応(第1のステップ,液相と
液相との反応)、及び、測定対象物11及び標識体12
の複合体と反応部位5Dに固定化された特異的結合物質
13との反応(第2のステップ,液相と固相との反応)
が行なわれる。これに対し、特異的結合物質が固定され
た反応部位を有する一本の溝に検体,標識物質をこの順
に順次流通させる上述の従来技術では、検体中に含まれ
る測定対象物と反応部位に固定化された特異的結合物質
との反応(ステップ1,液相と固相との反応)、及び、
反応部位に固定化された特異的結合物質−測定対象物の
複合体と標識物質との反応(ステップ2,液相と固相と
の反応)が行なわれる。
【0050】即ち、かかる従来技術では、液相と固相と
の反応を2回行なわせなければならないのに対し、本発
明では、液相と固相との反応を1回行なわせるだけで良
い。液相と液相との反応は、液相と固相との反応よりも
反応速度が高く、したがって、本発明によれば、従来技
術に比べ、測定に要する時間を短縮して測定を効率的に
行なえるという利点がある。
【0051】また、シリンジポンプ7により、検体10
及び標識物質12の流速を所定流速に制御できるので、
検体10及び標識物質12の流速を、検体10中の測定
対象物11,標識物質12及び特異的結合物質13間の
反応に最適な流速にして反応時間を短縮でき、この点か
らも測定を効率的に行なえるという利点がある。さら
に、測定対象物11の種類に応じてシリンジポンプ7に
より流速を適宜に調整することにより、様々な種類の測
定対象物11を一つの仕様の測定用チップにより測定で
きるという利点がある。
【0052】さらに、シリンジポンプ7により、例え
ば、検体10及び標識物質12の混合物が反応部位5D
に到達する前に一旦流通を停止して、反応部位5Dの特
異的結合物質13と接触する前に検体10及び標識物質
12とを十分に反応さたり、検体10及び標識物質12
の混合物が反応部位5Dに到達した時点で一旦流通を停
止して、反応速度の遅い固相(特異的結合物質13)−
液層(検体10及び標識物質12の混合物)間の反応の
効率を向上させることが可能となる。さらに、本来なら
ば反応部位5Dで特異的結合物質13に結合する測定対
象物11及び標識物質12が未反応のまま反応部位5D
を通過してしまう可能性がある場合には、シリンジポン
プにより、反応部位5Dを通過した測定対象物11及び
標識物質12を逆流させて再び反応部位5Dと接触させ
ることも可能である。
【0053】また、上述したように、特異的結合物質1
3の流路5への固定化が容易であり、測定対象物11及
び標識物質12の流通を多様に制御できるので、測定対
象物11,標識物質12及び特異的結合物質13の反応
系を、洗練することができ、また、多様に設定できると
いう利点もある。さらに、流路5は閉断面構造を有して
キャピラリとして機能するので、従来から広く使用・開
発されているキャピラリを用いた測定方法における分析
技術や流路制御等の様々な技術をそのまま流用できると
いう利点もある。
【0054】また、従来技術の課題として上述したよう
に、イムノクロマトグラフでは原理的に流路(測定対象
物の展開の場)の材質が限定され、キャピラリを用いた
技術では特異的結合物質をキャピラリ内に固定化するた
め流路の材質が製作上限定されてしまうが、本測定用チ
ップ1では、流路5を構成するチップ基板2やインジェ
クションボード6の材質を幅広く選択できる。
【0055】これにより、透過波長やバックグラウンド
ノイズ等の点で分光測定における最適化が可能であるば
かりでなく、例えば、表面プラズモン共鳴のようなチッ
プ基板2に対して表面膜処理を必要とする検出系の使用
や、チップ基板2に水晶振動子のような検出素子の組み
込みを実現できる。さらに、流路5がチップ基板2とイ
ンジェクションボード6との間に構成されているので、
チップ基板2とインジェクションボード6とを組み付け
る前は、未だ反応流路5C(流路5)は開放状態である
ため、反応流路5Cを形成する固相壁面(ここではチッ
プ基板2の所定個所)に容易に特異的結合物質を固定し
て反応部位5Dを設けられるという利点がある。
【0056】なお、上述の実施形態では、チップ基板2
に孔部4が貫設された膜状部材3を貼り付けることによ
りチップ基板2上に流路5を設けるようにしているが、
膜状部材3を貼り付けずにチップ基板2に溝(溝状の流
路)を直接形成するようにしても良い。このように、チ
ップ基板2に溝を直接形成する方法としては、例えば、
切削,研磨等の機械加工や、リソグラフィーを用いて形
態制御した後、ドライエッチング(例えば電子ビーム,
X線照射,DRIE),ウェットエッチング,放電加
工,レーザーアブレーション等のように溝部を形成する
方法や、先ずフォトリソグラフィーによって溝部形状を
マスクに描画してから、この描画に基づいて上述のドラ
イエッチング,ウェットエッチング,放電加工,レーザ
ーアブレーションによりチップ基板2の所定の部位を除
去して溝部を形成する方法や、さらに、スタンパ,圧縮
成型,射出成形等を使用した転写技術がある。
【0057】或いは、チップ基板2を成型する際に同時
に溝を成型することもでき、このようなチップ基板2の
成型方法としては、例えば鋳型による成型がある。ま
た、光硬化性を有する樹脂を使用して光造形によりチッ
プ基板2及びかかる溝を同時に成型することもできる。
このような場合、溝の設計と、チップ基板2及び溝の製
作とを、コンピュータ制御により同時に行なうことも可
能である。
【0058】また、上述した方法を組み合わせてチップ
基板2に溝を成形するようにしても良い。また、上述し
たようにチップ基板2の材質は広く選択できるので、こ
のような溝加工には、この他の公知の微細加工技術を使
用できる。なお、このようにチップ基板2に溝を直接形
成する場合も、膜状部材3をチップ基板2に貼り付けて
流路を形成する場合と同様に、溝の深さは、上限は、反
応効率の点から、400μm以下、好ましくは200μ
m以下であり、下限は、加工の容易性や、底部に固定さ
れる特異的結合物質13の厚みを考慮すると、0.1μ
m以上にするのが一般的である。
【0059】また、この場合も、溝(流路)の幅は、通
常3mm以下、好ましくは1mm以下である。また、図
1(B)に二点鎖線で示すように、ある特殊な条件下で
の測定を行なうべく、例えば緩衝溶液を検体10に注入
させるための緩衝溶液用の流路5Gをさらに設けても良
い。また、図1(B)に二点鎖線で示すように、反応流
路5Cにおいて、反応部位5Dの下流側に流路5Hを設
けても良い。この流路5Hを適切に設けることにより
(具体的には、流路の幅,深さ,反応流路5Cに対する
傾斜角度等を適宜設定することにより)、流路5Cと流
路5Hとを介して、未反応の検体10と標識物質12と
を分離して回収することも可能となる。
【0060】また、上述の実施形態では、特異的結合物
質13,測定対象物11及び標識物質12の複合体にお
ける標識物質12の量を、反応部位5Dにおいて測定す
るようにしているが、検体10及び標識物質12の流通
の完了後に、測定対象物11及び標識物質12の複合体
を、特異的結合物質13から分離して回収し、この回収
した標識物質12の量を測定するようにしても良い。測
定対象物11及び標識物質12の複合体を、特異的結合
物質13から分離するには、例えば、測定対象物11及
び標識物質12の複合体に近似した物質を流して、この
物質と、検体10及び標識物質12の複合体とが置き換
えられるようにすれば良い。
【0061】このような態様が好ましい場合としては、
チップ基板2や膜状部材3等の材質が分光測定に適して
いないため、測定対象物11及び標識物質12の複合体
をチップ基板2から分離させる必要がある場合である。
また、上述の実施形態では、検体10を流通させる流路
5Aの幅WAと、標識物質12を流通させる流路5Bの
幅WBとを同じ長さに設定しているが、幅WAと幅WBと
を異なる長さに設定して流路5Aと流路5Bとで流路断
面積が異なるようにしても良い。流路5Aを流通する検
体10と流路5Bを流通する標識物質12との流量に大
きな差がある場合には、このように流路5Aと流路5B
とで異なる流路断面積に設定するのが有効である。
【0062】つまり、例えば、100μLの検体10と
1μLの標識物質12とをそれぞれ流路5A,5Bに流
通させて測定を行なう場合、検体10と標識物質12と
を均一に混合させて検体10と標識物質12とを反応さ
せることが精度良く測定を行なう上で重要となる。そし
て、検体10と標識物質12とを所定の割合で均一に混
合させるためには、この場合には、検体10と標識物質
12とを単位時間当たりに100:1の割合で混合部位
5Fに流入させる、即ち、流路5Aにおける検体10の
単位時間当たりの流量(以下、これを流速という)FA
と、流路5Bにおける標識物質12の流速FBとの比を
100:1にすれば良い(FA/FB=100/1)。
【0063】本実施形態のように、流路5Aの検体10
と流路5Bの標識物質12とを、1つの流通制御手段
(シリンジポンプ)7により合流部位5F側から吸引す
る場合には、特に、流路5Aと流路5Bとで流路断面積
を同一にして、検体10の流速FAと標識物質12の流
速FBとに大きな差を設定することは技術的に困難であ
るが、流路5Aの幅WAと流路5Bの幅WBとを異なる長
さに設定して、流路5Aと流路5Bとで流路断面積が異
なるようにすることにより、検体10の流速FAと標識
物質12の流速FBとの比を100:1にすることがで
きる。したがって、検体10と標識物質12との間で流
量に大きな差がある場合でも、検体10と標識物質12
とを所定の割合で均一に混合させて精度良く測定を行な
うことができるのである。
【0064】これに対して、従来技術として上述したよ
うに、特異的結合物質の固定された反応部位を有する一
本の溝に、検体,標識物質をこの順に順次流通させる公
知技術では、検体中の測定対象物と標識物質とを効率的
に反応させて精度良く測定を行なうためには、検体,標
識物質が、反応部位と接触して反応しうる時間(=検
体,標識物質が反応部位を通過する時間)を適切なもの
にそれぞれ設定することが重要となる。
【0065】しかしながら、この従来技術において、特
に、例えば上記ケースと同じく100μLの検体と1μ
Lの標識物質とを使用して測定を行なう場合のように検
体の量と標識物質の量とに差があり、且つ、検体と標識
物質とについて反応部位での反応時間が同程度必要な場
合には、検体の流速FA′と標識物質の流速FB′とを異
なるものとする必要がある(この場合、FA′:FB′=
100:1)。
【0066】例えばシリンジポンプのような流通制御手
段を設けることにより、この流通制御手段で検体の流速
と標識物質の流速とを個別に制御して、検体の流速F
A′と標識物質の流速FB′とを異なる値に設定すること
は可能であるが、本例のように、かかる流速差が大きい
場合には、1つの流通制御手段によりこのような広範囲
での流通制御は技術的に困難である。異なる流路間にお
いて、各流路の流路断面積を互いに異なる面積とするこ
とで、同一の流通制御手段により各流路の流速を大きく
異なる速度に制御することは一般的に行なわれているこ
とであるが、この公知技術では、検体及び標識物質の流
路が共用であるため、当然ながら、検体,標識物質のそ
れぞれについて流路断面積を変更することはできない。
勿論、検体の流通を制御するのと標識物質の流通を制御
するのとで異なる仕様の流通制御手段を使用することに
より、検体と標識物質とを大きく異なる流速で制御する
ことも可能であるが、2種類の流通制御手段が必要とな
ってコスト増加を招くため現実的ではない。
【0067】したがって、本測定用チップでは、分岐し
た流路5A,Bを有するので、測定に使用される検体1
0と標識物質12との流量に大きな差がある場合でも、
測定を精度良く行なうことが可能なのである。なお、こ
こでは、流路5A,5Bの深さは、いずれも膜状部材3
の厚みで決定されるため、流路幅WA,WBを異なる長さ
で設定することにより流路5A,5Bで流路断面積が異
なるようにしているが、流路をチップ基板2に直接設け
るような場合には、流路5A,5Bにおいて、流路深さ
を異なる値で設定することにより流路断面積が異なるよ
うにしても良いし、勿論、流路深さ及び流路幅を共に異
なる値で設定しても良いし、流路幅だけを異なる値で設
定しても良い。
【0068】或いは、反応流路5Cに対する流路5Aの
傾斜角θAと、反応流路5Cに対する流路5Bの傾斜角
θBとを異なる角度に設定することにより、検体10が
流路5Aから反応流路5Cに流入する際に受ける抵抗
と、標識物質12が流路5Bから反応流路5Cに流入す
る際に受ける抵抗とが異なるようにして、検体10と標
識物質12とで流速が異なるようにすることも可能であ
る。 (B)第2実施形態の説明 次に、本発明の第2実施形態としての測定対象物の測定
用チップ,測定対象物の測定装置及び測定対象物の測定
方法について説明する。図3は本実施形態の測定対象物
の測定用チップ,測定対象物の測定装置及び測定対象物
の測定方法について示す図である。なお、上述した第1
実施形態と同じ部材については同一の符号を付し説明を
省略する。また、第1実施形態で用いた図2についても
流用して説明する。
【0069】本実施形態の測定用チップ21は、図3
(A),(B)に示すように、チップ基板2と、膜状部
材3と、インジェクションボード(被覆部材)6とを下
からこの順に積層/重合して構成されている。インジェ
クションボード6は、膜状部材3を介してチップ基板2
の表面2Aを覆い、チップ基板2,膜状部材3及びイン
ジェクションボード6の間に閉断面形状の反応流路15
が形成されるようになっている。
【0070】チップ基板2は、ここでは、厚さ1mmの
ポリメタクリル酸メチル(pMMA)の板を60mm×
20mmに切断して製作されている。また、膜状部材3
には、厚さ20μm(=流路15の深さ),幅15mm
の市販の紙製両面テープが使用され、下方にはチップ基
板2が、上方にはインジェクションボード6がそれぞれ
接着されている。また、膜状部材3には、ここでは、幅
(=流路幅)2mm×長さ(=流路長さ)30mmの長
方形の孔部14が貫設されており、膜状部材3をチップ
基板2に積載することにより、膜状部材3の孔部14と
チップ基板2の表面2Aとから溝部が形成され、さら
に、インジェクションボード6により、膜状部材3を介
してチップ基板2の表面2Aを被覆させることにより、
インジェクションボード6と上記溝部とから閉断面形状
の反応流路15が形成される。
【0071】なお、膜状部材3の厚み(流路15の深
さ)は、上述した第1実施形態と同様に、上限は、反応
効率の点から、400μm以下、好ましくは200μm
以下であり、下限は、製作の容易性や、底部に固定され
た特異的結合物質13の厚みを考慮すると、0.1μm
以上にするのが一般的である。また、流路15の幅は、
通常3mm以下、好ましくは1mm以下である。
【0072】インジェクションボード6は、チップ基板
2と同じく、厚さ1mmのポリメタクリル酸メチル(p
MMA)の板を60mm×20mmに切断して製作され
ている。インジェクションボード6には、測定用チップ
1への積載時に、反応流路15の上流端に連通するよう
に検体10を注入するための注入口6Dが貫設され、同
様に、検体10と標識物質12との混合物を排出するた
めに排出口6Eが反応流路15の下流端に連通するよう
に貫設されている。なお、注入口6D及び排出口6E
は、幅2mmの反応流路15にあわせて、直径2mmに
形成されている。
【0073】反応流路15には、標識物質12が配置さ
れた標識部位(混合部位)15Aが形成され、その下流
側に、特異的結合物質13が固定された反応部位15B
が形成されている。これにより、反応流路15を流通す
る検体10は、まず、標識部位15Aで標識物質12と
混合して、図2(C)に示すように検体10中の測定対
象物11と標識物質12との複合体が生成され、その
後、反応部位15Bで図2(D)に示すようにこの複合
体が特異的結合物質13と結合するようになっている。
【0074】反応部位15Bを形成すべく特異的結合物
質13をチップ基板2にスポッティングする方法及びチ
ップ基板2に固定する方法は、第1実施形態の反応部位
5Dにおける特異的結合物質13のチップ基板2へのス
ポッティング方法/固定方法と同一である。また、標識
物質12の反応流路15へのスポッティングは、特異的
結合物質13のスポッティング方法と同様で、例えば、
スポイトによる滴下,インクジェットプリンタの原理を
利用したノズル孔による噴射又は滴下,先細状のピン先
による塗布及びスタンプ等により行なわれる。また、標
識物質12は、検体10が標識部位15Aを流通する際
に検体10と混ざって下流側の反応部位15Bへと流れ
ていかなければならないため、特異的結合物質13とは
異なり、チップ基板2には比較的低い結合度で固定され
ている。固定化方法としては、標識物質12をチップ基
板2に直接吸着させる方法や、チップ基板2に他の物質
をコーティングし、そのコーティング膜に標識物質12
を吸着させる方法や、標識物質12を他の物質と混合し
て吸着させる方法がある。
【0075】そして、本実施形態の測定装置は、図3
(A)に示すように、このような測定用チップ21と、
流路15における検体10や標識物質12の流通を制御
するシリンジポンプ7と、反応部位15Bに結合した標
識物質12を測定する図示しない測定手段とをそなえて
構成される。本発明の第2実施形態としての測定対象物
の測定用チップ及び測定対象物の測定装置は、上述のよ
うに構成されているので、以下に示す手順(本発明の第
2実施形態としての測定対象物の測定方法)により測定
対象物の測定が行なわれる。
【0076】先ず、Ab−EuLTXを上述した第1実
施形態と同様に調整する。そして、図3(A)におい
て、チップ基板2に膜状部材3を貼り合わせた後、チッ
プ基板2と膜状部材3とにより形成される反応流路15
において、所定位置(ここでは、反応流路15Cの下流
端から上流側に10mm離隔した位置)に、1.1mm
g/mLの抗TSH抗体(マウスIgG)を、特異的結
合物質13として2μLだけスポッティングするととも
に、所定位置(ここでは、反応流路15Cの上流端から
下流側に10mm離隔した位置)に、Ab−EuLTX
と10%スクロース溶液とを9:1の割合で混合した溶
液を標識物質12として2μLだけスポッティングす
る。そして、常温・常圧で30分乾燥させた後、さらに
常温で真空乾燥を15分間行なって、反応流路15に、
標識部位15A及び反応部位15Bを形成する。
【0077】そして、インジェクションボード6を膜状
部材3上に貼り合わせた後、検体10として、純水で希
釈され1230μIU/mLに調整されたTSH標準品
を20μLだけ注入口6Dから流路15に滴下する。次
に、インジェクションボード6の排出口6Eに接続され
たシリンジポンプ7を作動させて、注入口6Dの検体1
0を10μL/分で吸引する。
【0078】検体10は、シリンジポンプ7により流通
を制御されながら流路15を流通し、標識部位15Aで
標識物質12と接触すると検体10中の測定対象物11
と標識物質12とが結合する(ステップ1)。そして、
検体10と標識物質12との混合物が、反応部位15B
上に移動すると、測定対象物11と標識物質12との複
合物が、反応部位15Bに固定された特異的結合物質1
3とさらに結合する(ステップ2)。そして、検体10
の流通が完了した後、流路15に20μLの純水を流通
させて流路5を洗浄する。
【0079】そして、図示しない測定装置により波長が
365nmの紫外線を反応部位15Bに照射したとこ
ろ、反応部位15Bにおいて標識物質12に起因した赤
色の蛍光が目視により観察され、検体10中に測定対象
物11が含まれていることが測定された(第3ステッ
プ)。また、検体10としてTSH(測定対象物)を含
まない溶液を使用して、上記と同様の手順で測定を行な
ったところ、反応部位15Bでは蛍光が見られず、検体
10にTSHが含まれていないことを正確に検出でき
た。
【0080】したがって、本実施形態の測定対象物の測
定用チップ,測定対象物の測定装置及び測定対象物の測
定方法によれば、以下のような利点がある。つまり、チ
ップ基板2とインジェクションボード6とを組み付ける
前は、未だ反応流路15は開放状態であるため、反応流
路15Cを形成する固相壁面(ここではチップ基板2の
所定個所)に標識物質12及び特異的結合物質13を容
易に固定できるという利点がある。
【0081】また、シリンジポンプ7により、検体10
及び標識物質12の流速を所定流速に制御できるので、
検体10の流速を測定に最適な流速にでき、反応時間を
短縮して測定を効率的に行なえるという利点がある。ま
た、検体10の流通を停止させたり逆流させたりできる
ので、適宜に流通状態(流速,流通方向等)を制御で
き、測定の態様が広いという利点がある。さらに、流速
を適宜に調整できるので測定対象物11の種類に応じて
シリンジポンプ7により流速を適宜に調整することによ
り、様々な種類の測定対象物11を一つの仕様の測定用
チップにより測定できるという利点がある。
【0082】そして、このように、標識物質12及び特
異的結合物質13の反応流路15への固定化が容易であ
り、検体10の流通を多様に制御できるので、測定対象
物11,標識物質12及び特異的結合物質13の反応系
を、洗練でき、また、多様に設定できるという利点があ
る。さらに、流路15は閉断面構造を有してキャピラリ
として機能するので、従来から広く使用・開発されてい
るキャピラリを用いた測定方法における分析技術や流路
制御等の様々な技術をそのまま流用できるという利点も
ある。
【0083】また、上述したように、イムノクロマトグ
ラフやキャピラリを用いた技術では、流路の材質が限定
されてしまうが、本測定用チップ21では、流路15を
構成するチップ基板2,膜状部材3及びインジェクショ
ンボード6の材質を幅広く選択できるので、分光測定に
おける最適化が可能であるばかりでなく、例えば、表面
プラズモン共鳴のようなチップ基板2に対して表面膜処
理を必要とする検出系の使用や、チップ基板2に水晶振
動子のような検出素子の組み込みを実現できる。
【0084】なお、上述の実施形態では、チップ基板2
に孔部14が貫設された膜状部材3を貼り付けることに
よりチップ基板2上に反応流路15を設けるようにして
いるが、膜状部材3を貼り付けずにチップ基板2に溝部
(流路)を直接形成するようにしても良い。このような
溝部の形成方法は、第1実施形態においてチップ基板2
に直接溝部を形成する手法と同様である。また、溝部の
深さも第1実施形態と同様で、上限は、反応効率の点か
ら、400μm以下、好ましくは200μm以下であ
り、下限は、加工の容易性や、底部に固定された特異的
結合物質13の厚みを考慮すると、0.1μm以上にす
るのが一般的である。
【0085】また、この場合も、流路(溝)の幅は、通
常3mm以下、好ましくは1mm以下である。なお、流
通制御手段7は、上述した第1実施形態と同様にシリン
ジポンプに限定されず、例えば、陽圧式ポンプ,陰圧式
ポンプを使用しても良い。或いは、流路15の上流端及
び下流端にそれぞれ電極を取り付け、これらの電極に異
なる電圧をかけることにより検体10に電気浸透流を生
じさせるようにしても良い。
【0086】又は、流通制御手段として、注入口6D及
び排出口6Eに電極を取り付けるとともに注入口6D及
び排出口6Eの周辺に金属をコーティングすることによ
り、流路15の検体10及び標識物質12に直流電場を
かけてイオン(測定対象物11,標識物質12)を電気
泳動させるようにしても良い。この場合、検体10の溶
媒や標識物質12の溶媒の移動はないので、インジェク
ションボード6により流路15を密閉する必要はない。
したがって、インジェクションボード6が不要となるの
で、測定用チップは上記チップ基板2及び膜状部材3か
ら構成されることとなり、チップ基板2及び膜状部材3
により形成される溝(溝状の流路)が反応流路15とし
て機能する。
【0087】又は、流通制御手段として、加熱装置を測
定用チップ21に設け、この加熱装置により測定用チッ
プ21に生じた温度勾配を利用して検体10及び標識物
質12を流通させるようにしても良い。或いは、これら
の方法を複数組み合わせて行なうようにしても良い。 (3)その他 なお、本発明の測定対象物の測定用チップ,測定対象物
の測定装置及び測定対象物の測定方法は上述した実施形
態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変
形することが可能である。
【0088】例えば、上述の各実施形態では、反応部位
5D,15Bはそれぞれ図1(A)及び図3(A)に示
すようにチップ基板2に設けられているが、反応部位5
D,15Bは反応流路5C,15を形成する固相壁面に
設けられていれば良く、図4(A),(B)に示すよう
に反応部位5D,15Bをインジェクションボード6に
設けても良い。このようにインジェクションボード6に
反応部位5D,15Bを設けるのが好ましい場合として
は、例えば、流路5,15を機械加工によりチップ基板
2に直接形成する場合である。つまり、この場合、チッ
プ基板2の素材として、抗体(第2の特異的結合物質)
の固定化効率にとらわれずに機械加工し易い素材(例え
ばpMMA材)を選択でき、一方、インジェクションボ
ード6の素材に上記固定化効率の良いポリスチレンを選
択することが可能となるのである。
【0089】また、電気化学測定等を行なうべく特に何
らかの素子(例えば電極)をインジェクションボード6
に埋め込む場合は、このインジェクションボード6の構
造がより複雑になってしまわないように、また、素子の
集積度を上げるために、特異的結合物質13は、チップ
基板2に固定化される(反応部位5D,15がチップ基
板2に設けられる)のが望ましい。同様に、上述の第2
実施形態では、標識部位15Aは図3(A)に示すよう
にチップ基板2に設けられているが、標識部位15Aは
反応流路15を形成する固相壁面に設けられていれば良
く、図4(B)に示すようにインジェクションボード6
に設けても良い。
【0090】また、上述の各実施形態では、チップ基板
2とインジェクションボード6との間に流路5を形成す
るにあたって、チップ基板2上に膜状部材3を使用して
(或いは直接に)溝5を形成した例を示したが、図5
(A)に示すようにチップ基板2ではなくインジェクシ
ョンボード6に溝6aを設けても良い。このように溝6
aをインジェクションボード6に形成するのが好ましい
場合としては、例えば光学的な観察をチップ基板2側か
ら行なうべくチップ基板2に透明度の高い石英を用いる
場合である。つまり、石英(チップ基板2)はエッチン
グや掘削等により溝を形成するのが困難であるため、イ
ンジェクションボード6の素材にエッチングや掘削等を
行ないやすい樹脂材を使用すればインジェクションボー
ド6に溝6aを容易に形成できるのである。
【0091】いずれにしても、溝を、チップ基板2及び
インジェクションボード6のどちらに設けるかは、チッ
プ基板2及びインジェクションボード6の材質や測定系
等に併せて適宜選択されるものである。勿論、図5
(B)に示すようにチップ基板2及びインジェクション
ボード6にそれぞれ溝2a,6aを設けるようにしても
良い。
【0092】また、測定対象物の測定装置として、測定
手段の出力結果を出力する印刷機やモニタ等のような測
定結果出力手段をさらにそなえて構成するようにしても
よい。また、上述の第1実施形態では、反応流路5C
に、特異的結合物質が固定化された反応部位5Dを1箇
所だけ設けた構成としているが、互いに異なる種類の特
異的結合物質が固定化された反応部位を反応流路5Cに
複数設けた構成としても良い。この場合、これらの複数
の反応部位を、チップ基板2及びインジェクションボー
ド6の何れか一方だけに設けるようにしても良いし、チ
ップ基板2及びインジェクションボード6の両方に設け
るようにしても良い。
【0093】同様に、上述の第2実施形態では、反応流
路15に、特異的結合物質が固定化された反応部位15
Bを1箇所だけ設けた構成としているが、互いに異なる
種類の特異的結合物質が固定化された反応部位を反応流
路15に複数設けた構成としても良い。この場合、各特
異的結合物質に応じた標識物質が反応流路15に固定化
されて複数又は単数の標識部位が形成される。各標識部
位は、対応する特異的結合物質が固定化された反応部位
よりも上流側に設けられる。この場合、これらの複数の
反応部位及び複数の標識部位を、チップ基板2及びイン
ジェクションボード6の何れか一方だけに設けるように
しても良いし、チップ基板2及びインジェクションボー
ド6の両方に設けるようにしても良い。
【0094】また、上述の各実施形態の測定用チップ
1,21は、それぞれ1つの流路5,15をそなえて構
成されているが、測定用チップ1,21を、標識部位や
反応部位等を有する流路5,15のような流路を複数そ
なえて構成しても良い。この場合、第1実施形態の流路
5と第2実施形態の流路15とのように互いに異なる形
式の流路が混在する構成であっても良い。
【0095】また、上述の実施形態では、検体10に測
定対象物11が含まれているか否かをオンオフ的に検出
するようにしているが、検体10中に測定対象物11が
どれだけ含まれているかを標識物質の蛍光量等から定量
的に測定するようにしてもよい。また、本発明の測定対
象物の測定用チップ,測定対象物の測定装置及び測定対
象物の測定方法は、生体由来の試料(例えば血液や体
液)に含まれる測定対象物を測定/検出する医療診断
や、海・河川や大気等に含まれる環境汚染物質を測定/
検出する環境診断や、各種研究に用いられる測定等に幅
広く適用できるものである。
【0096】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1記載の本
発明の測定対象物の測定用チップ,請求項2記載の本発
明の測定対象物の測定用チップ及び請求項6記載の本発
明の測定対象物の測定用方法によれば、検体を第1流路
に流通させるとともに、測定対象物に特異的に結合する
第1の特異的結合物質を有する標識物質を第2流路に流
通させ、検体と標識物質とを反応流路で合流させて結合
させるので、検体中の測定対象物と標識物質との反応が
液相同士の反応となる。液相同士の反応は、反応速度が
高く反応率も高いので、反応時間を短縮して測定を効率
的に行なえるという利点がある。
【0097】さらに、検体と標識物質とを第1流路と第
2流路とにそれぞれ同時に流通させることにより、検体
と標識物質とを一つの流路に順次流通させるのに比べ測
定に要する時間を短縮でき、この点からも測定を効率的
に行なえるという利点がある。また、第2の特異的結合
物質を反応流路に固定して反応部位を設けるが、少なく
とも製造中において反応流路は外方が開放された状態と
なるので、この開放部から反応流路に第2の特異的結合
物質を固定するのが容易になって、製作を簡便化できる
という利点がある。また、チップ基板の材質を広く選択
できるので、分光測定における最適化を図って測定精度
を向上させることができ、さらに、チップ基板への種々
の検出素子の組み込みが可能となるという利点がある。
【0098】請求項3記載の本発明の測定対象物の測定
装置によれば、流通制御手段により、検体と標識物質の
流通を制御するので、検体及び標識物質の流速を、測定
に最適な流速にして測定を効率的に行なえるという利点
がある。また、適宜に流通状態(流速,流通方向等)を
制御でき、広い態様で測定を行なえるという利点があ
る。さらに、測定対象物の種類に応じて流通制御手段に
より流速を適宜に調整することにより、様々な種類の測
定対象物を一つの仕様の測定用チップにより測定でき、
汎用性を拡大できるという利点がある。
【0099】また、測定用チップの製作が容易であり、
且つ検体及び標識物質の流通を多様に制御できるので、
測定対象物,標識物質及び特異的結合物質の反応系を、
洗練されたものとすることができ、また、多様に設定で
きるという利点がある。請求項4及び5記載の本発明の
測定対象物の測定装置によれば、流通制御手段により、
検体の流通を制御するので、検体の流速を、検体中の測
定対象物,反応流路の混合部位に配置された標識物質,
反応部位に固定された特異的結合物質の間の反応に最適
な流速にして測定を効率的に行なえ、また、適宜に流通
状態を制御できるので、広い態様で測定を行なえ、さら
に、様々な種類の測定対象物を一つの仕様の測定用チッ
プにより測定でき、汎用性を拡大できるという利点があ
る。
【0100】また、請求項3記載の測定対象物の測定装
置と同様に、測定用チップの製作が容易であり、且つ検
体及び標識物質の流通を多様に制御できるので、測定に
かかる反応系を、洗練されたものとすることができ、ま
た、多様に設定できるという利点がある。請求項7記載
の本発明の測定対象物の測定方法によれば、検体の流通
を流通制御手段により制御して、検体の流速を、検体中
の測定対象物,標識物質,反応部位に固定された特異的
結合物質の間の反応に最適なものとすることができるの
で、測定を効率的に行なえ、また、適宜に外部から流通
状態を制御できるので、広い態様で測定を行なえ、さら
に、様々な種類の測定対象物を一つの仕様の測定用チッ
プにより測定でき、汎用性を拡大できるという利点があ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態としての測定対象物の測
定用チップ及び測定対象物の測定装置について示す図で
あり、(A)は測定用チップ及び測定装置の構成を拡大
して示す模式的な斜視分解図、(B)はインジェクショ
ンボード(被覆部材)を外した状態の測定用チップの構
成を拡大して示す模式的な平面図である。
【図2】(A)〜(D)は本発明の第1実施形態として
の測定対象物の測定用チップ,測定対象物の測定装置及
び測定対象物の測定方法における測定原理を説明するた
めの図である。
【図3】本発明の第2実施形態としての測定対象物の測
定用チップ及び測定対象物の測定装置について示す図で
あり、(A)は測定用チップ及び測定装置の構成を拡大
して示す模式的な斜視分解図、(B)はインジェクショ
ンボード(被覆部材)を外した状態の測定用チップの構
成を拡大して示す模式的な平面図である。
【図4】(A),(B)は本発明の他の実施形態として
の測定用チップの構成を拡大して示す模式的な斜視分解
図である。
【図5】(A),(B)は本発明の他の実施形態として
の測定用チップにかかる流路の模式的な横断面図である
〔図1(B)のX−X断面及び図3(B)のY−Y断面
に相当する図である〕。
【符号の説明】
1,21 測定用チップ 2 チップ基板 2a,6a 溝 2A チップ基板の表面 3 膜状部材 4,14 孔部 4A,4B 分岐部分 4C 主要部分 5 流路 5A 第1流路 5B 第2流路 5C,15 反応流路 5D,15B 反応部位 5F 合流部位(混合部位) 5G,5H 流路 6 インジェクションボード(被覆部材) 6A,6B,6D 注入口 6C,6E 排出口 7 シリンジポンプ(流通制御手段) 7A シリコンチューブ 7B プレート 10 検体 11 測定対象物 12 標識物質 12A 特異的結合物質(第1の特異的結合物質) 13 特異的結合物質(第2の特異的結合物質) 15A 標識部位(混合部位)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宗林 孝明 神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1000番地 三菱化学株式会社内 (72)発明者 西野 充晃 神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1000番地 三菱化学株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 検体中の測定対象物を測定するための測
    定用チップであって、 チップ基板と、 該チップ基板上に設けられ該検体を流通させる溝状の第
    1流路と、 該チップ基板上に設けられ該測定対象物に特異的に結合
    する第1の特異的結合物質を有する標識物質を流通させ
    る溝状の第2流路と、 該第1流路及び該第2流路が集合して該チップ基板上に
    形成される溝状の反応流路と、 該反応流路に設けられ該測定対象物と特異的に結合する
    第2の特異的結合物質が固定された反応部位とをそなえ
    て構成されていることを特徴とする、測定対象物の測定
    用チップ。
  2. 【請求項2】 検体中の測定対象物を測定するための測
    定用チップであって、 チップ基板と、 該チップ基板を被覆する被覆部材と、 該チップ基板と該被覆部材との間に形成され、該検体を
    流通させる第1流路と、 該チップ基板と該被覆部材との間に形成され、該測定対
    象物に特異的に結合する第1の特異的結合物質を有する
    標識物質を流通させる第2流路と、 該チップ基板と該被覆部材との間に形成され、該第1流
    路及び該第2流路が集合して形成される反応流路と、 該反応流路に面して該チップ基板及び該被覆部材の少な
    くとも一方に設けられ、該測定対象物と特異的に結合す
    る第2の特異的結合物質が固定された反応部位とをそな
    えて構成されていることを特徴とする、測定対象物の測
    定用チップ。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の測定用チップと、 該測定用チップにおける該検体及び該標識物質の流通を
    制御する流通制御手段と、 該反応部位において該第1の特異的結合物質及び該測定
    対象物を介して該第2の特異的結合物質に結合した該標
    識物質に関する測定を行なう測定手段とをそなえて構成
    されていることを特徴とする、測定対象物の測定装置。
  4. 【請求項4】 検体が流通する測定用チップと、該測定
    用チップにおける該検体の流通を制御する流通制御手段
    と、測定手段とをそなえてなる測定対象物の測定装置で
    あって、 該測定用チップが、 チップ基板と、 該チップ基板に設けられ該検体を流通させる溝状の反応
    流路と、 該検体中の測定対象物に特異的に結合する第1の特異的
    結合物質を有する標識物質と該検体とを混合させるべく
    該反応流路内に設けられた混合部位と、 該反応流路内において該混合部位よりも該検体の流通方
    向下流側に設けられ該測定対象物に特異的に結合する第
    2の特異的結合物質が固定された反応部位とをそなえて
    構成され、 該測定手段が、該反応部位において該第1の特異的結合
    物質及び該測定対象物を介して該第2の特異的結合物質
    に結合した該標識物質に関する測定を行なうことを特徴
    とする、測定対象物の測定装置。
  5. 【請求項5】 検体が流通する測定用チップと、該測定
    用チップにおける該検体の流通を制御する流通制御手段
    と、測定手段とをそなえてなる測定対象物の測定装置で
    あって、 該測定用チップが、 チップ基板と、 該チップ基板を被覆する被覆部材と、 該チップ基板と該被覆部材との間に形成され該検体を流
    通させる反応流路と、 該検体中の測定対象物に特異的に結合する第1の特異的
    結合物質を有する標識物質と該検体とを混合させるべく
    該反応流路に面して該チップ基板及び該被覆部材の少な
    くとも一方に設けられた混合部位と、 該混合部位よりも該検体の流通方向下流側において該反
    応流路に面して該チップ基板及び該被覆部材の少なくと
    も一方に設けられ、該測定対象物に特異的に結合する第
    2の特異的結合物質が固定された反応部位とをそなえて
    構成され、 該測定手段が、該反応部位において該第1の特異的結合
    物質及び該測定対象物を介して該第2の特異的結合物質
    に結合した該標識物質に関する測定を行なうことを特徴
    とする、測定対象物の測定装置。
  6. 【請求項6】 請求項1又は2記載の測定用チップを使
    用して、 該検体を該第1流路に流通させると略同時に、該標識物
    質を該第2流路に流通させ、該反応流路において該検体
    と該標識物質とを混合させる第1のステップと、 該検体と該標識物質との混合物を該反応流路の該反応部
    位と接触させる第2のステップと、 該反応部位において該第1の特異的結合物質及び該測定
    対象物を介して該第2の特異的結合物質に結合した該標
    識物質に関する測定を行なう第3のステップとをそなえ
    て構成されていることを特徴とする、測定対象物の測定
    方法。
  7. 【請求項7】 請求項4又は5記載の測定対象物の測定
    用装置を使用して、 該検体の流通状態を該流通制御手段により制御しながら
    該検体を該反応流路に流通させることにより、該反応流
    路に配置された該標識物質と該検体とを混合させる第1
    のステップと、 流通状態を該流通制御手段により制御された該検体と該
    標識物質との混合物を、該反応流路において該反応部位
    と接触させる第2のステップと、 該反応部位において、該第1の特異的結合物質及び該測
    定対象物を介して該第2の特異的結合物質に結合した該
    標識物質を測定する第3のステップとをそなえて構成さ
    れていることを特徴とする、測定対象物の測定方法。
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