JP2002117796A - 荷電粒子ビーム装置および集束イオンビーム装置 - Google Patents

荷電粒子ビーム装置および集束イオンビーム装置

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JP2002117796A
JP2002117796A JP2000310026A JP2000310026A JP2002117796A JP 2002117796 A JP2002117796 A JP 2002117796A JP 2000310026 A JP2000310026 A JP 2000310026A JP 2000310026 A JP2000310026 A JP 2000310026A JP 2002117796 A JP2002117796 A JP 2002117796A
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deflector
ion beam
electrostatic deflector
power supply
charged particle
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Kiyoshi Sakaguchi
清志 坂口
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Jeol Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 静電偏向電源に乗っているノイズ成分による
イオンビームへの影響を軽減して、性能のよい荷電粒子
ビーム装置およびFIB装置を提供すること。 【解決手段】 静電偏向器を多段に分割して、走査倍率
に応じて印加する静電偏向器の実効の面積を切換えるこ
とによって、偏向感度(偏向の変移距離/偏向電圧)を
変えて、ノイズ成分による影響を軽減する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、集束イオンビーム
装置等の荷電粒子ビーム装置に関し、詳しくは静電型偏
向器に関する。
【0002】
【従来の技術】図1は、最も一般的な集束イオンビーム
(focused ion beam, FIB)装置を説明する図であ
る。図1において、1はイオンビームを放射する液体金
属イオン源のエミッタ、2はイオンの放射を制御するた
めのサプレッサ電極、3はイオンをエミッタから引き出
すための引き出し電極、4はイオンを加速するための加
速電極、5はコンデンサレンズ、6はイオンビーム電流
を制限するための絞り、Wは試料、7はイオンビームを
試料Wにフォーカスさせるための対物レンズ、8は試料
Wを載置する試料ステージである。コンデンサレンズ5
および対物レンズ7は、例えば、3枚の電極から成る静
電型のレンズが用いられる。更に、10はイオンビーム
を静電的に偏向して、イオンビームを試料W上で二次元
的に走査するための偏向器、11は偏向器10に走査電
圧を印加するための偏向電源、12は偏向電源11を制
御するための制御コンピュータである。なお、エミッタ
1から試料W直前までを、一般にイオン光学系あるいは
イオン照射系と呼び、真空容器中に配置される。
【0003】次に、このような構成の動作について簡単
に説明する。まず、図示しない加速電圧電源から加速電
圧Vacc(例えば50kV)が供給され、エミッタ1と
アース間に印加される。同じく図示しない引き出し電圧
電源からエミッタ1から見て負の電圧(例えば−5k
V)が供給され、引き出し電極3に印加され、エミッタ
1からイオンビームを引き出す。このとき、同じく図示
しないサプレッサ電圧電源からエミッタ1と同程度の電
圧(例えば±1kV)が供給され、サプレッサ電極2に
印加され、エミッタ1から引き出されるイオンビームI
Bの放出量(エミッション電流)を制御する。更に、アー
ス電位にある加速電極4によって、イオンビームIBは
所定のエネルギ(例えば50keV)が与えられる。
【0004】続いて、同じく図示しないコンデンサレン
ズ電源から所定の電圧がコンデンサレンズ5に供給さ
れ、コンデンサレンズ5はイオンビームIBを集束す
る。この印加する電圧を適当に選ぶことによって、絞り
6の絞りの穴径と相まって、イオンビーム電流の値が決
定される。更に、図示しない対物レンズ電源からは対物
レンズ7に所定の電圧が供給・印加され、対物レンズ7
はイオンビームを試料W上にフォーカスさせて照射す
る。
【0005】このようなイオンビームIBは、偏向器1
0によって偏向され、試料W上の所望の位置に照射され
る。即ち、制御コンピュータ12は、所望の走査倍率や
所望のシフト量に従って、偏向電源11に指令を出す。
偏向電源11は、制御コンピュータ12からの指令に従
って、所定の電圧を偏向器10に印加する。偏向器10
は、その印加電圧に従って、イオンビームIBを偏向さ
せて、試料W上の所望の位置に照射する。
【0006】なお、ここで走査倍率(あるいは単に倍
率)とは、イオンビームIBを試料W上で2次元的に走
査してこのとき試料Wから発生する信号を検出して形成
する走査顕微鏡像を表示する際の像の表示幅Dとその表
示幅に対応する試料上のイオンビームIBの走査幅Lの
比で表される(図13参照)。偏向器10に印加する走
査のための電圧は、通常、図14(a)および図14
(b)の如き鋸歯状波を用いる。ここで、横軸は時間、
縦軸は電圧を表す。試料W上のX−Y平面の一方向(例
えばY方向)には図14(a)の鋸歯状波、もう一方向
には図14(b)の鋸歯状波を用いて、テレビのラスタ
の如く試料W上の一定の範囲(面積)の平面を走査す
る。走査の間、印加電圧は−VからVまで周期的に変化
するが、走査のための印加電圧という場合の電圧は、ピ
ーク値のV(場合によってはピークツーピーク値の2・
V)を指す。
【0007】また、シフト(あるいはイメージシフト)
とは、走査顕微鏡像の視野を偏向器によって2次元的に
移動させることをいう。図14(c)および(d)に示
すように、走査のための鋸歯状波に、ある電圧Vsy、
Vsxを重畳させて偏向器に印加すればよい。一般に、
偏向器10は、上記の如き走査機能とシフト機能を合わ
せて行わせることができる。
【0008】試料Wは、図示しない試料交換室を通し
て、試料ステージ8に載置される。試料ステージ8は、
例えば少なくとも水平面内でXおよびY方向に試料Wを
駆動・移動させることができるようになっている。この
ように試料ステージ8を駆動して、試料W上の任意の位
置をイオンビームIBの照射位置に移動させることがで
きる。そして一般には、おおよその位置決めには試料ス
テージ8を駆動して行い、細かな位置決めはシフト機能
即ち偏向器10によって行う。
【0009】図2および図3は従来の偏向器の近傍の構
成と動作を説明するための図である。図4は偏向器を構
成する偏向子(あるいは偏向電極)を説明するための図
である。図5は2段偏向方式の偏向器の動作を説明する
ための図である。図2は、対物レンズ7の下流側(以
下、イオン源側を上流と呼び、試料側を下流と呼ぶ)に
偏向器10が配置した1段偏向方式の偏向器の例であ
る。図2において、10は偏向器である。対物レンズ7
の主面の中心を通過したイオンビームIBは偏向器10
によって偏向され、試料W上で、イオンビームIBの照
射位置が距離Lだけ移動する。図3は、対物レンズ7の
上流側に偏向器10を配置した例であって、2段偏向方
式の偏向器の例である。図3において、10Uは上流側
の偏向器であって上段偏向器と呼び、10Lは下流側の
偏向器であって下段偏向器と呼ぶ。イオンビームIBは
上段偏向器10Uで偏向され、続いて下段偏向器10L
で上段偏向器10Uでの偏向方向とは逆方向に偏向され
る。このとき、イオンビームIBが常に対物レンズ7の
主面の中心を通過するように、上段偏向器10Uの偏向
量と下段偏向器10Lの偏向量の比率を調整しておく。
この調整によって、下段偏向器10Lの偏向量の絶対値
は、上段偏向器10Uでの偏向量の絶対値の2倍前後の
比率となる。従って、偏向されたイオンビームIBは対
物レンズ7の主面の中心を通りかつ主面に対して傾いて
照射されるので、試料W上で、イオンビームIBの照射
位置が距離Lだけ移動する。
【0010】図4(a)は静電4極子型の偏向器10を
イオンビームの光軸方向から見た図である。図4(a)
において、xはX−Y平面のX方向の軸を表し、yはY
方向の軸を表す。X1は光軸中心から見てX方向に配置
された偏向子(偏向電極)、X2は光軸中心から見てX
の逆方向に配置された偏向子、Y1は光軸中心から見て
Y方向に配置された偏向子、Y2は光軸中心から見てY
の逆方向に配置された偏向子である。このように、静電
4極子型の場合の偏向器10は、4つの偏向子X1、X
2、Y1、Y2から成っている。偏向電源11からX
1、X2、Y1、Y2の各偏向子に、それぞれVx、−
Vx、Vy、−Vyの電圧を印加する。このように、互
いに対向する偏向子(X1とX2あるいはY1とY2)
には電圧の絶対値は同じで極性が異なる電圧が印加され
る。このような電圧が印加されると、イオンビームIB
は印加電圧VxおよびVyに対応して偏向される。
【0011】図4(b)は静電8極子型の偏向器10を
イオンビームの光軸方向から見た図である。図4(b)
において、xはX−Y平面のX方向の軸を表し、yはY
方向の軸を表す。X1は光軸中心から見てX方向に配置
された偏向子、X2は光軸中心から見てXの逆方向に配
置された偏向子、Y1は光軸中心から見てY方向に配置
された偏向子、Y2は光軸中心から見てYの逆方向に配
置された偏向子であり、XY1は光軸中心から見てXと
Yの中間の方向に配置された偏向子、XY2は光軸中心
から見て上記XY1の逆方向に配置された偏向子、YX
1は光軸中心から見てYと−Xの中間方向に配置された
偏向子、YX2は光軸中心から見て上記YX1の逆方向
に配置された偏向子である。このように、静電8極子型
の場合の偏向器10は、8つの偏向子X1、X2、Y
1、Y2、XY1、XY2、YX1、YX2から成って
いる。偏向電源11からX1、X2、Y1、Y2、XY
1、XY2、YX1、YX2の各偏向子に、それぞれV
x、−Vx、Vy、−Vy、(Vx+Vy)/√2、
(−Vx−Vy)/√2、(−Vx+Vy)/√2、
(Vx−Vy)/√2の偏向電圧を印加する。この場合
も、互いに対向する偏向子には電圧の絶対値は同じで極
性が異なる電圧が印加される。このような電圧が印加さ
れると、イオンビームIBは印加電圧VxおよびVyに
対応して偏向される。
【0012】図5は、図3の2段偏向方式の偏向器の場
合のイオンビームIBの軌道を説明する一例である。図
5において、横軸はイオンビームIBの光軸に沿った距
離Zを表しており、上段偏向器10Uの上流側の端部を
原点としている。縦軸はイオンビームIBの光軸を中心
として、例えばX方向の距離を表している。この例で
は、まず、イオンビームIBの光軸の−10mmの位置
に絞り6が配置されている。偏向器10は上段偏向器1
0U、下段偏向器10L共に内径を3mm、上段偏向器
10Uおよび下段偏向器10LのZ方向の長さを共に2
0mmとし、両者の間隔を10mm空けて配置されてい
る。また、下段偏向器10Lの下流側の端部から10m
m離れた位置に対物レンズ7の主面がくるように配置
し、更に、10mm下流側に試料Wが配置されている。
上段偏向器10Uに印加する電圧をVupper、下段偏向
器10Lに印加する電圧をVlowerと表すものとする。
【0013】まず、図5の例において、イオンビームI
Bが光軸の中心を通って上段偏向器10Uに垂直に入射
した場合について考える。この例においては、 Rtilt=Vlower/Vupper=−2.50 (1) を満たすとき、図5で「tilt」と表した軌道をとる。こ
の軌道は、光軸の中心を通って上段偏向器10Uに垂直
に入射したイオンビームIBが上段偏向器10Uである
量の偏向を受け、下段偏向器10Lで逆方向にほぼ2倍
の偏向を受けて振り戻され、対物レンズ7の主面の位置
で光軸と交差するようになっている。このようにして、
イオンビームIBは試料W上で光軸の中心位置から所定
の距離Lだけ離れた位置に照射されることになる。この
「tilt」軌道を用いることによって、走査機能とシフト
機能とを実施することができる。これが2段偏向方式の
偏向器の場合の基本的な動作である。このような偏向方
式を「振り戻し式の偏向方式」ということがある。
【0014】次に、イオンビームIBが光軸とある傾斜
角をもって上段偏向器10Uに斜めに入射した場合につ
いて考える。この例においては、 Ralign=Vlower/Vupper=−0.667 (2) を満たすとき、図5で「align」と表した軌道をとる。
この軌道は、斜めに上段偏向器10Uに入射したイオン
ビームIBが上段偏向器10Uである量の偏向を受け、
下段偏向器10Lで逆方向にほぼ1/2程度の偏向を受
けて振り戻され、対物レンズ7の主面の位置で光軸と一
致するようになっている。この「align」軌道を用いる
ことによって、偏向器10より上流のイオン光学系の光
学軸と偏向器10より下流のイオン光学系の光学軸との
不一致を調整することができる。
【0015】そこで一般には、上段偏向器10Uと下段
偏向器10Lの印加する偏向電圧VupperとVlowerは、
上記走査のための印加電圧Vscanとシフトのための印加
電圧Vshiftと光学軸調整のための印加電圧Valignとを
重畳するようにする。即ち、 Vupper=Vscan+Vshift+Valign (3 ) Vlower=Rtilt・(Vscan+Vshift)+Ralign・Valign ( 4) である。
【0016】また、静電型偏向器では、偏向器の感度f
を定義することができる。感度fは、偏向器に印加する
単位電圧当りの試料W上でのイオンビームIBの変移の
距離で表される。印加する電圧をV、試料W上で偏向さ
れる距離をLと表せば、 f=L/V (5) である。更に、走査に用いる鋸歯状波のピークツーピー
クの電圧をVp-p、試料W上での走査幅をLp-pとすれ
ば、 f=L/V=Lp-p/Vp-p (6) である。従って、走査像の表示幅をD、倍率をMと表せ
ば、M=D/Lp-pであるから、 f=D/(M・Vp-p) (7) となる。あるいは、 Vp-p=D/(f・M) (8) である。ただし、以下の記載においては、走査幅を単に
Lと表し、電圧Vp-pあるいはVp-p/2を単にVと表
す。
【0017】さて、このようにして試料W上に照射され
るイオンビームIBは、コンデンサレンズや対物レンズ
によって、細く絞られその太さは10nm以下に達す
る。このような装置において、偏向器10に印加する偏
向電源11の印加電圧にノイズ成分が含まれていると、
イオンビームIBはノイズ成分に比例して変動してしま
う。感度fの偏向器において、ピークツーピークで表さ
れる電圧ノイズΔVの影響によってイオンビームIBの
ビーム径の劣化(ビーム径が見掛け上太くなる)量Δd
は、おおよそ Δd=f・ΔV/√2 (9) で表されるといってよい。従って、電圧ノイズΔVによ
るイオンビームIBのビーム径の劣化を軽減するには、
偏向器の感度fを低くすればよいことが分かる。しか
し、単に感度fを低くしただけでは、低倍率の走査像が
実現できなくなるとか、低倍率の走査像の場合に異常に
高い偏向電圧を用いなければならい等の問題があり、何
らかの工夫が要求される。
【0018】ただし、このような偏向電源11の印加電
圧に含まれる電圧ノイズΔVによるイオンビームIBの
ビーム径の劣化は、高倍率のときには問題となるが、低
倍率のときには問題とはならない。例えば、劣化が1n
m程度であって、画素数が1000×1000である走
査像を100mm角に表示したとすると、倍率がさほど
高くはない1000倍のとき1画素当りの試料上の大き
さは100nm×100nmであり、1nm程度の劣化
は画素内に埋もれてしまうので十分無視できる。しか
し、倍率が高倍の10万倍になれば、1画素の大きさと
劣化の度合いとが同等の大きさとなり無視できなくな
る。
【0019】このようなノイズ成分によるイオンビーム
IBの変動は、イオン光学系の性能向上即ちイオンビー
ムIBが細く絞られるに伴って無視できなくなり、FI
B装置の総合的な性能向上の隘路となってきた。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる状況
に対処すべくなされたものであって、偏向電源からのノ
イズ成分によって、荷電粒子ビームあるいはイオンビー
ムに与える影響の少ない静電偏向器を用いることによっ
て、性能を向上させた荷電粒子ビーム照射系およびFI
B照射系を提供することを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
本発明の荷電粒子ビーム装置は、荷電粒子ビームを発生
し取り出す荷電粒子源と、発生し取り出した荷電粒子ビ
ームにエネルギーを与える加速手段と、加速された荷電
粒子ビームを集束して試料上に照射するレンズと、荷電
粒子ビームを前記試料上で走査するための静電偏向器と
を備える荷電粒子ビーム装置において、前記静電偏向器
は、荷電粒子ビームの軸に沿って複数段配置され、前記
静電偏向器のうちの少なくとも1段を選択する選択手段
と、前記選択された静電偏向器に所定の電圧を印加する
電源手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】また、本発明の集束イオンビーム装置は、
イオンビームを発生し取り出すイオン源と、発生し取り
出したイオンビームにエネルギーを与える加速電極と、
加速されたイオンビームを集束して試料上に照射するレ
ンズと、イオンビームを前記試料上で走査するための静
電偏向器とを備える集束イオンビーム装置において、前
記静電偏向器は、イオンビームの軸に沿って複数段配置
され、前記静電偏向器のうちの少なくとも1段を選択す
る選択手段と、前記選択された静電偏向器に所定の電圧
を印加する電源手段とを備えたことを特徴とする。
【0023】あるいは、イオンビームを発生し取り出す
イオン源と、発生し取り出したイオンビームにエネルギ
ーを与える加速電極と、加速されたイオンビームを集束
して試料上に照射するレンズと、イオンビームを前記試
料上で走査するための静電偏向器とを備え、該静電偏向
器は上段と下段の2段の静電偏向器から成り、該上段静
電偏向器と該下段静電偏向器に印加する電圧の極性が互
いに異なるようになした集束イオンビーム装置におい
て、前記上段静電偏向器は、イオンビームの軸に沿って
複数段配置され、前記上段静電偏向器のうちの少なくと
も1段を選択する第1の選択手段と、前記選択された上
段静電偏向器に所定の電圧を印加する第1の電源手段
と、前記下段静電偏向器は、イオンビームの軸に沿って
複数段配置され、前記下段静電偏向器のうちの少なくと
も1段を選択する第2の選択手段と、前記選択された下
段静電偏向器に所定の電圧を印加する第2の電源手段と
を備えたことを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図を用いて
説明する。図6は本発明に係る1段偏向方式の偏向器の
場合の構成の例を説明する図、図7は本発明に係る1段
偏向方式の偏向器の寸法等の具体的な一例を説明する
図、図8は本発明に係る1段偏向方式の偏向器の他の例
を説明する図、図9は本発明に係る2段偏向方式の偏向
器の一例を説明する図である。図10は本発明に係る2
段偏向方式の偏向器の他の例を説明する図である。図1
1は本発明に係る図6の1段偏向方式の変形の例を説明
する図、図12は本発明に係る図9の2段偏向方式の変
形の例を説明する図である。
【0025】(実施の形態1)図6において、101
は、偏向器10の各偏向子(例えば4極子型であれば、
X1、X2、Y1、Y2)を、イオンビームIBの光軸
に対して垂直なある面のところで、上流側と下流側とに
2分割した偏向子で構成された上流側の偏向器であり、
102は、下流側の偏向器である。11は偏向電源、1
2は制御コンピュータ、SWはスイッチである。スイッ
チSWは、走査の倍率Mのある値を閾値Mtとして、状
態「low」と状態「high」とに切換えられるように制御
コンピュータ12によって制御される。状態「low」
は、M≦Mtの場合であって、偏向器101と偏向器1
02とが共に偏向電源11と接続されている状態であ
り、状態「high」は、M>Mtの場合であって、偏向器
102は偏向電源11と接続されているが、偏向器10
1は偏向電源11とは接続されずアースに落とされてい
る状態である。なお、偏向器をアースに落とす場合、ス
イッチを配置する位置やアースに落とす位置は、できる
だけ偏向器が配置されている近傍となるようにして、こ
の部分でノイズを拾うようなことがないようにすべきで
ある。
【0026】更に、ここでいう「偏向器をアースに落と
す」とは、厳密にいえば、図1に示す装置のように加速
電極4がアース電位である場合に限る。従って、イオン
光学系がアースから浮かせている装置や複数の加速電極
(減速電極を含む)を有する装置などでは、厳密には、
「アースに落とすべき」偏向器は偏向器の上流の直近の
加速電極(減速電極を含む)の電位と同電位とすること
が必要である。あるいは、動作的にいえば、「アースに
落とすべき」偏向器はイオンビームIBに偏向を与えな
いような電位と同電位とすることが必要である。
【0027】図7において、偏向器101および102
の内径を共に4mm、偏向器101のイオンビームIB
の光軸方向の長さを19.5mm、偏向器102のイオ
ンビームIBの光軸方向の長さを9.5mmとしてい
る。そして、偏向器101と偏向器102とのイオンビ
ームIBの光軸方向の間隔を1mmとして配置され、こ
れらが一体となって偏向器10が構成されるようになっ
ている。更に、偏向器102の下流側の端部から10m
m離れて試料Wが配置されている。上記の如くの構成に
おいては、スイッチSWを「low」とした場合の偏向器
の感度flowは、 flow=0.9734 (1−1) スイッチSWを「high」とした場合の偏向器の感度fhi
ghは、 fhigh=0.1868 (1−2) である。ただし、ここでの感度は、偏向器の内径を4m
m、偏向器のイオンビームIBの光軸方向の長さを30
mm(=19.5mm+9.5mm+1mm)としたと
きの感度を1として、相対的に表した値である。
【0028】次に、このような構成の動作について説明
する。まず、走査の倍率Mが閾値Mt以下の場合の動作
について説明する。図6において、制御コンピュータ1
2は、倍率値が閾値Mt以下であることを認識すると、
スイッチSWを「low」側に倒して、偏向器101と偏
向器102とを接続する。更に、制御コンピュータ12
は、状態が「low」であることと倍率値あるいは電圧値
を偏向電源11に伝える。この情報を基に偏向電源11
は、状態が「low」である場合の倍率値に対応する偏向
電圧を発生して、偏向器101の各偏向子と102の各
偏向子とに印加する。走査のための印加電圧Vは、感度
fを考慮して、 V=D/(flow・M) (1−3) である。
【0029】この状態は、偏向器101と偏向器102
との間隔1mmを無視すれば、イオンビームIBの光軸
方向の長さが19.5mm+9.5mmの、長さ約30
mmのひとつの偏向器として動作することを表してい
る。このようにして印加された電圧に従って、イオンビ
ームIBは偏向を受け、試料W上で所定の位置に照射さ
れる。このときの電圧ノイズΔVの影響によるイオンビ
ームIBのビーム径の劣化(ビーム径が太くなる)量Δ
dlowは、おおよそ Δdlow=flow・ΔV/√2 =0.9734・ΔV/√2 (1−4) である。
【0030】次に、走査の倍率Mが閾値Mtを超える場
合の動作について説明する。図6において、制御コンピ
ュータ11は、倍率値が閾値Mtを超えていることを認
識すると、スイッチSWを「high」側に倒して、偏向器
101と偏向器102とを切り離し、偏向器101の各
偏向子をアースに落とす。更に、制御コンピュータ12
は、状態が「high」であることと倍率値あるいは電圧値
を偏向電源11に伝える。この情報を基に偏向電源11
は、状態が「high」である場合の倍率値に対応する偏向
電圧を発生して、偏向器102の各偏向子に印加する。
走査のための印加電圧Vは、感度fを考慮して、 V=D/(fhigh・M) (1−5) である。
【0031】この状態は、イオンビームIBの光軸方向
の長さが19.5mmのアース電位の単なる円筒(この
円筒はアース電位であるのでイオンビームIBに影響を
与えない)の下流側に間隔1mmを空けて配置された、
長さ9.5mmのひとつの偏向器だけが動作することを
表している。このようにして印加された電圧に従って、
イオンビームIBは偏向を受け、試料W上で所定の位置
に照射される。このときの電圧ノイズΔVの影響による
イオンビームIBのビーム径の劣化(ビーム径が太くな
る)量Δdhighは、おおよそ Δdhigh=fhigh・ΔV/√2 =0.1868・ΔV/√2 (1−6) である。
【0032】従って、スイッチSWを状態「high」から
状態「low」に切換えることによって、電圧ノイズΔV
の影響によるイオンビームIBのビーム径の劣化(ビー
ム径が太くなる)量の比率は、 fhigh/flow=0.1919 (1−7) となり、おおよそ1/5に軽減することができる。
【0033】ところで、上記の比fhigh/flowは、分
割する偏向器101のイオンビームIBの光軸方向の長
さと偏向器102のイオンビームIBの光軸方向の長さ
との比を大きくすることによって、任意に小さくするこ
とができる。しかし常識的には、電圧ノイズによって劣
化の影響が現れる近傍の倍率を閾値Mt と設定するのが
効果的と考えられる。例えば、1万倍で劣化の影響が現
れるとして、閾値Mt=10000と設定すれば、上記
の例(図6および図7)では1万倍以上では劣化の影響
が1/5に軽減できる。しかしながら、倍率がもっと高
くなって5万倍になれば、再び劣化の影響が現れてく
る。次の実施の形態はそのような場合のための発明であ
る。
【0034】(実施の形態2)図8は、偏向器10を多
段に分割した実施例である。101は偏向器の各偏向子
(例えば4極子型であれば、X1、X2、Y1、Y2)
を、イオンビームIBの光軸に対して垂直な(n−1)
個の面で分割したうちの最も上流側の偏向器であり、1
02は上流側から2番目の偏向器、103は上流側から
3番目の偏向器、・・・、10nは上流側からn番目即
ち最も下流側の偏向器である。
【0035】11は偏向電源、12は制御コンピュータ
である。SW1は、状態「low」のとき偏向器101を
偏向電源11と接続し、状態「high」のとき偏向器10
1を偏向電源11から切離しアースに落とす切換えスイ
ッチ、SW2は、状態「low」のとき偏向器102を偏
向電源11と接続し、状態「high」のとき偏向器102
を偏向電源11から切離しアースに落とす切換えスイッ
チ、・・・、SW(n−1)は、状態「low」のとき偏
向器10(n−1)を偏向電源11と接続し、状態「hi
gh」のとき偏向器10(n−1)を偏向電源11から切
離しアースに落とす切換えスイッチである。13は、制
御コンピュータ12の指令に従ってスイッチSW1〜S
W(n−1)の状態を「low」または「high」に切換え
るスイッチコントローラである。
【0036】更に、制御コンピュータ12には、(n−
1)個の閾値Mt1、Mt2、Mt3、・・・、Mt
(n−1)およびn個の感度f1、f2、f3、・・
・、fnが設定されている。なお、ここで、 Mt1<Mt2<Mt3<・・・<Mt(n−1) (2−1) であり、 f1>f2>f3>・・・>fn (2−2) である。また、i番目の偏向器10iと、i番目のスイ
ッチSWiと、i番目の閾値Mtiと、i番目の感度f
iは互いに対応している。ただし、n番目の偏向器10
nと対応するスイッチと閾値は存在しない。
【0037】このような構成の動作について説明する。
制御コンピュータ12は、走査の倍率Mと閾値Mt1〜
Mt(n−1)とを比較し、倍率値が閾値以下であるか
超えているかを認識して、各スイッチSWiを倍率値M
が閾値Mti以下であれば「low」側に倒し、倍率値Mが
閾値Mtiを超えていれば「high」側に倒す。更に、制
御コンピュータ12は、倍率値あるいは電圧値を偏向電
源11に伝える。この情報を基に偏向電源11は、倍率
値に対応する偏向電圧を発生して、各スイッチSWiに
よって接続されている偏向器の各偏向子に印加する。印
加される電圧Vは、倍率MがM≦Mt1のとき、 V=D/(f1・M) (2−3) となり、倍率MがMt(i−1)<M≦Mti(i=2
〜(n−1))のとき、 V=D/(fi・M) (2−4) となり、倍率MがMt(n−1)<Mのとき、 V=D/(fn・M) (2−5) となる。印加された電圧に従って、イオンビームIBは
偏向を受け、試料W上で所定の位置に照射される。
【0038】そして、i番目の感度fiに対応する倍率
Mのときの電圧ノイズΔVの影響によるイオンビームI
Bのビーム径の劣化(ビーム径が太くなる)量Δdi
は、おおよそ Δdi=fi・ΔV/√2 (2−6) である。一方、感度fiは、f1>f2>f3>・・・
>fnであるから、劣化量Δdiは、倍率が高くなるに
伴い閾値Mtiのところでステップ状に感度fiに比例
して、 Δd1>Δd2>Δd3>・・・>Δdn (2−7) と減少する。
【0039】(実施の形態3)図9は、本発明を、振り
戻し方式の2段偏向方式の偏向器に応用した場合の構成
と動作を説明する図である。偏向器10は上段偏向器1
0Uと下段偏向器10Lから成り、更に、上段偏向器1
0Uと下段偏向器10Lはそれぞれ2つの偏向器に分割
されている。即ち、10U1は上段偏向器10Uの分割
された上流側の偏向器、10U2は上段偏向器10Uの
分割された下流側の偏向器、10L1は下段偏向器10
Lの分割された上流側の偏向器、10L2は下段偏向器
10Lの分割された下流側の偏向器である。11Uは上
段偏向器に偏向電圧を印加するための上段偏向電源、1
1Lは下段偏向器に偏向電圧を印加するための下段偏向
電源、12は制御コンピュータ、SWUおよびSWLは
スイッチである。スイッチSWUおよびSWLは、走査
の倍率Mのある値を閾値Mtとして、状態「low」と状
態「high」とに切換えられるように制御コンピュータ1
2によって制御される。状態「low」は、M≦Mtの場
合であって、偏向器10U1と偏向器10U2とが共に
上段偏向電源11Uと接続され、かつ偏向器10L1と
偏向器10L2とが共に下段偏向電源11Lと接続され
ている状態である。この状態における感度fはflowで
ある。状態「high」は、M>Mtの場合であって、偏向
器10U2は上段偏向電源11Uと接続されているが、
偏向器10U1は上段偏向電源11Uから切離されアー
スに落とされ、かつ偏向器10L2は下段偏向電源11
Lと接続されているが、偏向器10L1は下段偏向電源
11Lから切離されアースに落とされている状態であ
る。この状態における感度fはfhighであって、 flow>fhigh (3−1) の関係にある。
【0040】このような構成の動作について説明する。
図9において、制御コンピュータ12は、倍率値Mと閾
値Mtとを比較し、倍率値Mが閾値Mt以下であれば、ス
イッチSWUおよびSWLとを共に「low」側に倒し
て、偏向器10U1と偏向器10U2とを接続し、かつ
偏向器10L1と偏向器10L2とを接続する。更に、
制御コンピュータ12は、状態が「low」であることと
倍率値あるいは電圧値を上段偏向電源11Uと下段偏向
電源11Lとに伝える。この情報を基に上段偏向電源1
1Uは、状態が「low」である場合の倍率値に対応する
偏向電圧を発生して、偏向器10U1の各偏向子と偏向
器10U2の各偏向子とに印加する。走査のための印加
電圧Vupperは、感度fを考慮して、 Vupper=D/(flow・M) (3−2) である。ただし、シフトのための印加電圧Vshiftと光
学軸調整のための印加電圧Valignは説明の都合上無視
している。
【0041】同様に、この情報を基に下段偏向電源11
Lは、状態が「low」である場合の倍率値に対応する偏
向電圧を発生して、偏向器10L1の各偏向子と偏向器
10L2の各偏向子とに印加する。走査のための印加電
圧Vlowerは、感度fを考慮して、 Vlower=D・Rtilt(low)/(flow・M) (3−3) である。ここでRtilt(low)は、2段偏向方式におい
て、状態「low」のとき上段偏向器で偏向されたビーム
が下段偏向器で正確に「振り戻される」ための定数であ
って、偏向器の寸法によって決まる。なお、上式では、
シフトのための印加電圧Vshiftと光学軸調整のための
印加電圧Valignは説明の都合上無視している。
【0042】この状態は、偏向器10U1と偏向器10
U2とがひとつの上段偏向器10Uとして動作し、かつ
偏向器10L1と偏向器10L2とがひとつの下段偏向
器10Lとして動作することを表している。このように
して印加された電圧に従って、イオンビームIBは偏向
を受け、試料W上で所定の位置に照射される。
【0043】このときの電圧ノイズΔVの影響によるイ
オンビームIBのビーム径の劣化(ビーム径が太くな
る)量Δdlowは、おおよそ Δdlow=flow・ΔV/√2 (3−4) である。
【0044】次に、走査の倍率Mが閾値Mtを超える場
合の動作について説明する。図9において、制御コンピ
ュータ11は、倍率値Mが閾値Mtを超えていることを
認識すると、スイッチSWUおよびSWLとを共に「hi
gh」側に倒して、偏向器10U1と偏向器10U2とを
切り離し、偏向器10U1の各偏向子をアースに落と
し、かつ偏向器10L1と偏向器10L2とを切り離
し、偏向器10L1の各偏向子をアースに落とす。更
に、制御コンピュータ12は、状態が「high」であるこ
とと倍率値あるいは電圧値を上段偏向電源11Uと下段
偏向電源11Lとに伝える。この情報を基に上段偏向電
源11Uは、状態が「high」である場合の倍率値に対応
する偏向電圧を発生して、偏向器10U2の各偏向子に
印加し、同様にこの情報を基に下段偏向電源11Lは、
状態が「high」である場合の倍率値に対応する偏向電圧
を発生して、偏向器10L2の各偏向子に印加する。走
査のための印加電圧VupperとVlowerは、感度fを考慮
して、 Vupper=D/(fhigh・M) (3−5) Vlower=D・Rtilt(high)/(fhigh・M) (3−6 ) である。ここでもRtilt(high)は、2段偏向方式におい
て、状態「high」のとき上段偏向器で偏向されたビーム
が下段偏向器で正確に「振り戻される」ための定数であ
って、偏向器の寸法によって決まる。また、上式では、
シフトのための印加電圧Vshiftと光学軸調整のための
印加電圧Valignは説明の都合上無視している。
【0045】この状態は、偏向器10U1あるいは偏向
器10L1はアース電位の単なる円筒(この円筒はアー
ス電位であるのでイオンビームIBに影響を与えない)
であり、その下流側の偏向器10U2あるいは偏向器1
0L2がそれぞれひとつの偏向器として動作することを
表している。このようにして印加された電圧に従って、
イオンビームIBは偏向を受け、試料W上で所定の位置
に照射される。
【0046】このときの電圧ノイズΔVの影響によるイ
オンビームIBのビーム径の劣化(ビーム径が太くな
る)量Δdhighは、おおよそ Δdhigh=fhigh・ΔV/√2 (3−7) である。
【0047】感度fはflow>fhighの関係にあるか
ら、スイッチSWを状態「high」から状態「low」に切
換えることによって、電圧ノイズΔVの影響によるイオ
ンビームIBのビーム径の劣化(ビーム径が太くなる)
量は、 Δdlow> Δdhigh (3−8) となり、感度fに比例して軽減することができる。
【0048】(実施の形態4)図10は、振り戻し方式
の2段偏向方式の偏向器を多段に分割した場合の構成と
動作を説明する図である。偏向器10は上段偏向器10
Uと下段偏向器10Lから成り、更に、上段偏向器10
Uと下段偏向器10Lはそれぞれ多段の偏向器に分割さ
れている。即ち、10U1は上段偏向器10Uの分割さ
れた上流側から1番目の偏向器、10U2は上段偏向器
10Uの分割された上流側から2番目の偏向器、・・
・、10Unは上流側からn番目即ち上段偏向器10U
の最も下流側の偏向器であり、10L1は下段偏向器1
0Lの分割された上流側から1番目の偏向器、10L2
は下段偏向器10Lの分割された上流側から2番目の偏
向器、・・・、10Lnは上流側からn番目即ち下段偏
向器10Lの最も下流側の偏向器である。
【0049】11Uは上段偏向電源、11Lは下段偏向
電源、12は制御コンピュータである。SWU1は、状
態「low」のとき偏向器10U1を上段偏向電源11U
と接続し、状態「high」のとき偏向器10U1を上段偏
向電源11Uから切離しアースに落とす切換えスイッ
チ、SWU2は、状態「low」のとき偏向器10U2を
上段偏向電源11Uと接続し、状態「high」のとき偏向
器10U2を上段偏向電源11Uから切離しアースに落
とす切換えスイッチ、・・・、SWU(n−1)は、状
態「low」のとき偏向器10U(n−1)を上段偏向電
源11Uと接続し、状態「high」のとき偏向器10U
(n−1)を上段偏向電源11Uから切離しアースに落
とす切換えスイッチである。SWL1は、状態「low」
のとき偏向器10L1を下段偏向電源11Lと接続し、
状態「high」のとき偏向器10L1を下段偏向電源11
Lから切離しアースに落とす切換えスイッチ、SWL2
は、状態「low」のとき偏向器10L2を下段偏向電源1
1Lと接続し、状態「high」のとき偏向器10L2を下
段偏向電源11Lから切離しアースに落とす切換えスイ
ッチ、・・・、SWL(n−1)は、状態「low」のと
き偏向器10L(n−1)を下段偏向電源11Lと接続
し、状態「high」のとき偏向器10L(n−1)を下段
偏向電源11Lから切離しアースに落とす切換えスイッ
チである。13は、制御コンピュータ12の指令に従っ
てスイッチSWU1〜SWU(n−1)およびSWL1
〜SWL(n−1)の状態をそれぞれ「low」または「h
igh」に切換えるスイッチコントローラである。
【0050】更に、制御コンピュータ12には、(n−
1)個の閾値Mt1、Mt2、Mt3、・・・、Mt
(n−1)およびn個の感度f1、f2、f3、・・
・、fnが設定されている。なお、ここで、 Mt1<Mt2<Mt3<・・・<Mt(n−1) (4−1) であり、 f1>f2>f3>・・・>fn (4−2) である。また、i番目の偏向器10iと、i番目のスイ
ッチSWUiおよびSWLiと、i番目の閾値Mti
と、i番目の感度fiは互いに対応している。ただし、
n番目の偏向器10nと対応するスイッチと閾値は存在
しない。
【0051】このような構成の動作について説明する。
制御コンピュータ12は、走査の倍率Mと閾値Mt1〜
Mt(n−1)とを比較し、倍率値が閾値以下であるか
超えているかを認識して、各スイッチSWUiおよびS
WLiとを倍率値Mが閾値Mti以下であれば「low」側
に倒し、倍率値Mが閾値Mtiを超えていれば「high」
側に倒す。更に、制御コンピュータ12は、倍率値ある
いは電圧値を上段偏向電源11Uと下段偏向電源11L
とに伝える。この情報を基に上段偏向電源11Uは、倍
率値に対応する偏向電圧を発生して、各スイッチSWU
iによって接続されている偏向器の各偏向子に印加す
る。走査のための印加電圧Vupperは、感度fiを考慮
して、 Vupper=D/(fi・M) (4−3) である。ただし、シフトのための印加電圧Vshiftと光
学軸調整のための印加電圧Valignは説明の都合上無視
している。
【0052】同様に、この情報を基に下段偏向電源11
Lは、倍率値に対応する偏向電圧を発生して、各スイッ
チSWLiによって接続されている偏向器の各偏向子に
印加する。走査のための印加電圧Vlowerは、感度fi
を考慮して、 Vlower=D・Rtilt(i)/(fi・M) (4−4 ) である。ここでRtilt(i)は、2段偏向方式において、
感度fiのとき上段偏向器で偏向されたビームが下段偏
向器で正確に「振り戻される」ための定数であって、偏
向器の寸法によって決まる。なお、上式では、シフトの
ための印加電圧Vshiftと光学軸調整のための印加電圧
Valignは説明の都合上無視している。このようにして
印加された電圧に従って、イオンビームIBは偏向を受
け、試料W上で所定の位置に照射される。
【0053】そして、i番目の感度fiに対応する倍率
Mのときの電圧ノイズΔVの影響によるイオンビームI
Bのビーム径の劣化(ビーム径が太くなる)量Δdi
は、おおよそ Δdi=fi・ΔV/√2 (4−5) である。一方、感度fiは、f1>f2>f3>・・・
>fnであるから、劣化量Δdiは、倍率が高くなるに
伴い閾値Mtiのところでステップ状に感度fiに比例
して、 Δd1>Δd2>Δd3>・・・>Δdn (4−6) と減少する。
【0054】(実施の形態5)図11は、図6の偏向器
の変形例を示す図である。図6においては、分割された
偏向器101の内径寸法と102の内径寸法とは同じで
あるとした。これに対して、図11においては、偏向器
101の内径寸法と102の内径寸法とを異なるように
したものである。
【0055】一般的にいえば、偏向器と試料間の距離が
同じであるとすれば、偏向器の内径寸法が小さく、偏向
器のビーム方向の長さが長いほど、偏向感度は大きくな
る。しかしながら、偏向器の内径を小さくすると、偏向
器の収差が大きくなり、偏向器のビーム方向の長さを大
きくすると装置が大きくなってしまう。一方、走査像は
低い倍率の像も観察できないと実用上不便であるから、
ある一定の低倍が実現できるように、偏向器の感度はあ
る程度の高い感度も必要である。なお、偏向器の収差と
は、走査画像を歪ませたり、イオンビームIBに影響を
与えて非点やビーム径の増大を招くものであり、収差の
影響は、イオンビームIBの軌道が偏向器の中心軸から
外れるに従い大きくなる。図11は、このような問題を
解決するための実施の形態の例である。
【0056】図11において、101は偏向器10の各
偏向子(例えば4極子型であれば、X1、X2、Y1、
Y2)を、イオンビームIBの光軸に対して垂直なある
面のところで、上流側と下流側とに2分割した偏向子で
構成された上流側の偏向器であり、102は下流側の偏
向器である。偏向器101の内径は偏向器102より小
さくしている。11は偏向電源、12は制御コンピュー
タ、SWはスイッチである。スイッチSWは、走査の倍
率Mのある値を閾値Mtとして、状態「low」と状態「h
igh」とに切換えられるように制御コンピュータ12に
よって制御される。状態「low」は、M≦Mtの場合で
あって、偏向器101と偏向器102とが共に偏向電源
11と接続されている状態であり、状態「high」は、M
>Mtの場合であって、偏向器102は偏向電源11と
接続されているが、偏向器101は偏向電源11とは接
続されずアースに落とされている状態である。更に、状
態「low」のこきの感度をflow、状態「high」のこきの
感度をfhighと表し、 flow>fhigh (5−1) の関係にある。
【0057】このような構成の動作について説明する。
まず、走査の倍率Mが閾値Mt以下の場合の動作につい
て説明する。図11において、制御コンピュータ12
は、倍率値が閾値Mt以下であることを認識すると、ス
イッチSWを「low」側に倒して、径が小さく感度の高
い偏向器101と径が大きく感度の低い偏向器102と
を接続する。更に、制御コンピュータ12は、状態が
「low」であることと倍率値あるいは電圧値を偏向電源
11に伝える。この情報を基に偏向電源11は、状態が
「low」である場合の倍率値に対応する偏向電圧を発生
して、偏向器101の各偏向子と102の各偏向子とに
印加する。走査のための印加電圧Vは、感度fを考慮し
て、 V=D/(flow・M) (5−2) である。
【0058】このとき、イオンビームIBは、まず偏向
器101の中心軸に入射し偏向を受けて出射する。次い
で偏向器101を出射したイオンビームIBは偏向器1
02に入射するが、イオンビームIBは偏向器102の
中心軸から外れて入射する。偏向器102に入射したイ
オンビームIBは偏向器102によって更に偏向を受け
て出射する。このように、偏向器101内を通過するイ
オンビームIBは偏向器の中心軸に近い軌道であるの
で、偏向器101の収差は大きくとも、その影響は小さ
い。一方、偏向器102内を通過するイオンビームIB
は中心軸から外れているので偏向器の収差の影響は大き
くなるが、偏向器102の径が大きく収差は小さいの
で、結局、収差の影響は小さくできる。
【0059】このときの電圧ノイズΔVの影響によるイ
オンビームIBのビーム径の劣化(ビーム径が太くな
る)量Δdlowは、おおよそ Δdlow=flow・ΔV/√2 (5−3) である。
【0060】次に、走査の倍率Mが閾値Mtを超える場
合の動作について説明する。図11において、制御コン
ピュータ11は、倍率値が閾値Mtを超えていることを
認識すると、スイッチSWを「high」側に倒して、偏向
器101と偏向器102とを切り離し、径が小さく感度
の高い偏向器101の各偏向子をアースに落とす。更
に、制御コンピュータ12は、状態が「high」であるこ
とと倍率値あるいは電圧値を偏向電源11に伝える。こ
の情報を基に偏向電源11は、状態が「high」である場
合の倍率値に対応する偏向電圧を発生して、偏向器10
2の各偏向子に印加する。走査のための印加電圧Vは、
感度fを考慮して、 V=D/(fhigh・M) (5−4) である。
【0061】このとき、イオンビームIBは、まず偏向
器101の中心軸に入射し偏向を受けずにそのまま出射
する。次いで偏向器101を通過したイオンビームIB
は偏向器102に入射するが、イオンビームIBは偏向
器102の中心軸に入射する。偏向器102に入射した
イオンビームIBは偏向器102によって偏向を受けて
中心軸からやや外れて出射する。このように、偏向器1
01内を通過するイオンビームIBは何ら影響を受け
ず、偏向器102内を通過するイオンビームIBは中心
軸に入射し、偏向を受けてやや中心軸から外れて出射す
るが、中心軸からの外れは小さくかつ偏向器102の径
が大きく収差は小さいので、結局、収差の影響は十分に
小さくできる。
【0062】このときの電圧ノイズΔVの影響によるイ
オンビームIBのビーム径の劣化(ビーム径が太くな
る)量Δdhighは、おおよそ Δdhigh=fhigh・ΔV/√2 (5−5) である。
【0063】このようにして、スイッチSWを状態「hi
gh」から状態「low」に切換えることによって、感度f
はflow>fhighの関係にあるから、電圧ノイズΔVの
影響によるイオンビームIBのビーム径の劣化(ビーム
径が太くなる)量は、 Δdlow> Δdhigh (5−6) となり、感度fに比例してfhigh/flowと軽減するこ
とができると共に偏向器10をコンパクトにしても、収
差の影響を小さくできる。
【0064】(実施の形態6)図12は、図9の振り戻
し方式の2段偏向方式の偏向器の変形例を示す図であ
る。図9においては、分割された偏向器10U1、10
U2、10L1、10L2の内径寸法は同じであるとし
た。これに対して、図12においては、偏向器10U1
の内径寸法と10U2の内径寸法とを異なるようにし、
偏向器10L1の内径寸法と10L2の内径寸法とを異
なるようにしたものである。
【0065】図12において、偏向器10は上段偏向器
10Uと下段偏向器10Lから成り、更に、上段偏向器
10Uと下段偏向器10Lはそれぞれ2つの偏向器に分
割されている。即ち、10U1は上段偏向器10Uの分
割された上流側の偏向器、10U2は上段偏向器10U
の分割された下流側の偏向器、10L1は下段偏向器1
0Lの分割された上流側の偏向器、10L2は下段偏向
器10Lの分割された下流側の偏向器である。偏向器1
0U1の内径は偏向器10U2より小さくし、偏向器1
0L1の内径は偏向器10L2より大きくしている。更
に、下段偏向器10Lは上段偏向器10Uよりも内径お
よび長さ共に大き目にしている。即ち、偏向器10L1
は偏向器10U2より大きく、偏向器10L2は偏向器
10U1より大きくしている。下段偏向器10Lの長さ
を上段偏向器10Uよりも長くしている理由は、相対的
に内径を大きくしたことによって感度が低下したことを
補うことと、元来2段偏向方式では、下段偏向器の方が
高い感度を必要とするからである。
【0066】11Uは上段偏向器に偏向電圧を印加する
ための上段偏向電源、11Lは下段偏向器に偏向電圧を
印加するための下段偏向電源、12は制御コンピュー
タ、SWUおよびSWLはスイッチである。スイッチS
WUおよびSWLは、走査の倍率Mのある値を閾値Mt
として、状態「low」と状態「high」とに切換えられる
ように制御コンピュータ12によって制御される。状態
「low」は、M≦Mtの場合であって、偏向器10U1
と偏向器10U2とが共に上段偏向電源11Uと接続さ
れ、かつ偏向器10L1と偏向器10L2とが共に下段
偏向電源11Lと接続されている状態である。この状態
における感度fはflowである。状態「high」は、M>
Mtの場合であって、偏向器10U2は上段偏向電源1
1Uと接続されているが、偏向器10U1は上段偏向電
源11Uから切離されアースに落とされ、かつ偏向器1
0L1は下段偏向電源11Lと接続されているが、偏向
器10L2は下段偏向電源11Lから切離されアースに
落とされている状態である。この状態における感度fは
fhighであって、 flow>fhigh (6−1) の関係にある。なお、先の図9の下段偏向器10Lにお
いては、状態「high」において切離されアースに落とさ
れのは偏向器10L1であったが、図12においては、
状態「high」において切離されアースに落とされのは偏
向器10L2である。
【0067】このような構成の動作について説明する。
図12において、制御コンピュータ12は、倍率値Mと
閾値Mtとを比較し、倍率値Mが閾値Mt以下であれば、
スイッチSWUおよびSWLとを共に「low」側に倒し
て、偏向器10U1と偏向器10U2とを接続し、かつ
偏向器10L1と偏向器10L2とを接続する。更に、
制御コンピュータ12は、状態が「low」であることと
倍率値あるいは電圧値を上段偏向電源11Uと下段偏向
電源11Lとに伝える。この情報を基に上段偏向電源1
1Uは、状態が「low」である場合の倍率値に対応する
偏向電圧を発生して、偏向器10U1の各偏向子と偏向
器10U2の各偏向子とに印加する。走査のための印加
電圧Vupperは、感度fを考慮して、 Vupper=D/(flow・M) (6−2) である。ただし、シフトのための印加電圧Vshiftと光
学軸調整のための印加電圧Valignは説明の都合上無視
している。
【0068】同様に、この情報を基に下段偏向電源11
Lは、状態が「low」である場合の倍率値に対応する偏
向電圧を発生して、偏向器10L1の各偏向子と偏向器
10L2の各偏向子とに印加する。走査のための印加電
圧Vlowerは、感度fを考慮して、 Vlower=D・Rtilt(low)/(flow・M) (6−3) である。ここでRtilt(low)は、2段偏向方式におい
て、状態「low」のとき上段偏向器で偏向されたビーム
が下段偏向器で正確に「振り戻される」ための定数であ
って、偏向器の寸法によって決まる。なお、上式では、
シフトのための印加電圧Vshiftと光学軸調整のための
印加電圧Valignは説明の都合上無視している。
【0069】この状態は、偏向器10U1と偏向器10
U2とがひとつの上段偏向器10Uとして動作し、かつ
偏向器10L1と偏向器10L2とがひとつの下段偏向
器10Lとして動作することを表している。このように
して印加された電圧に従って、イオンビームIBは偏向
を受け、試料W上で所定の位置に照射される。
【0070】このときの電圧ノイズΔVの影響によるイ
オンビームIBのビーム径の劣化(ビーム径が太くな
る)量Δdlowは、おおよそ Δdlow=flow・ΔV/√2 (6−4) である。
【0071】このとき、イオンビームIBは、まず偏向
器10U1の中心軸に入射し偏向を受けて出射する。次
いで偏向器10U1を出射したイオンビームIBは偏向
器10U2に入射するが、イオンビームIBは偏向器1
0U2の中心軸から外れて入射する。偏向器10U2に
入射したイオンビームIBは偏向器10U2によって更
に偏向を受けて出射する。偏向器10U2を出射したイ
オンビームIBは偏向器10L1に入射するが、このと
きイオンビームIBは偏向器10L1の中心軸から更に
外れて入射する。偏向器10L1に入射したイオンビー
ムIBは偏向器10L1によって、逆方向に振り戻され
るように偏向されて出射する。次いで偏向器10L1を
出射したイオンビームIBは偏向器10L2に入射する
が、このときイオンビームIBは偏向器10L2の中心
軸に近づくように入射する。偏向器10L2に入射した
イオンビームIBは偏向器10L2によって更に中心軸
に近づくような偏向を受けて出射する。
【0072】このように、偏向器10U1内を通過する
イオンビームIBは偏向器の中心軸に近い軌道であるの
で、偏向器10U1の収差は大きくとも、その影響は小
さい。次いで、偏向器10U2内を通過するイオンビー
ムIBは中心軸から外れているので偏向器の収差の影響
は大きくなるが、偏向器10U2の径が大きく収差は小
さいので、結局、収差の影響は小さくできる。更に続い
て、偏向器10L1に入射するイオンビームIBは偏向
器の中心軸を外れているが、偏向器10L1の径が大き
く収差は小さいので、収差の影響は小さく、また更に続
いて、偏向器10L2内を通過するイオンビームIBは
偏向器の中心軸に近づいた軌道であるので、偏向器10
L2の収差は大きくとも、その影響は小さくできる。
【0073】次に、走査の倍率Mが閾値Mtを超える場
合の動作について説明する。図12において、制御コン
ピュータ11は、倍率値Mが閾値Mtを超えていること
を認識すると、スイッチSWUおよびSWLとを共に
「high」側に倒して、偏向器10U1と偏向器10U2
とを切り離し、偏向器10U1の各偏向子をアースに落
とし、かつ偏向器10L1と偏向器10L2とを切り離
し、偏向器10L2の各偏向子をアースに落とす。更
に、制御コンピュータ12は、状態が「high」であるこ
とと倍率値あるいは電圧値を上段偏向電源11Uと下段
偏向電源11Lとに伝える。この情報を基に上段偏向電
源11Uは、状態が「high」である場合の倍率値に対応
する偏向電圧を発生して、偏向器10U2の各偏向子に
印加し、同様にこの情報を基に下段偏向電源11Lは、
状態が「high」である場合の倍率値に対応する偏向電圧
を発生して、偏向器10L1の各偏向子に印加する。走
査のための印加電圧VupperとVlowerは、感度fを考慮
して、 Vupper=D/(fhigh・M) (6−5) Vlower=D・Rtilt(high)/(fhigh・M) (6−6 ) である。ここでもRtilt(high)は、2段偏向方式におい
て、状態「high」のとき上段偏向器で偏向されたビーム
が下段偏向器で正確に「振り戻される」ための定数であ
って、偏向器の寸法によって決まる。また、上式では、
シフトのための印加電圧Vshiftと光学軸調整のための
印加電圧Valignは説明の都合上無視している。
【0074】この状態は、偏向器10U1あるいは偏向
器10L2はアース電位の単なる円筒(この円筒はアー
ス電位であるのでイオンビームIBに影響を与えない)
であり、偏向器10U2あるいは偏向器10L1がそれ
ぞれひとつの偏向器として動作することを表している。
このようにして印加された電圧に従って、イオンビーム
IBは偏向を受け、試料W上で所定の位置に照射され
る。
【0075】このとき、イオンビームIBは、まず偏向
器10U1の中心軸上に入射し偏向を受けずにそのまま
通過する。次いで偏向器10U1を通過したイオンビー
ムIBは偏向器10U2に入射するが、イオンビームI
Bは偏向器10U2の中心軸に入射する。偏向器10U
2に入射したイオンビームIBは偏向器10U2によっ
て偏向を受けて中心軸からやや外れて出射する。このよ
うに、偏向器10U1内を通過するイオンビームIBは
何ら影響を受けず、偏向器10U2内を通過するイオン
ビームIBは中心軸に入射し、偏向を受けてやや中心軸
から外れて出射するが、中心軸からの外れは小さくかつ
偏向器10U2の径が大きく収差は小さいので、結局、
収差の影響は十分に小さくできる。
【0076】続いて、イオンビームIBは、偏向器10
L1の中心軸から外れて入射し逆方向に振り戻されるよ
うに偏向を受けて出射する。次いで偏向器10L1を出
射したイオンビームIBは偏向器10L2に入射する
が、偏向器10L2は稼動していないので、イオンビー
ムIBは偏向を受けずにそのまま通過する。このよう
に、偏向器10L1内を通過するイオンビームIBは中
心軸から外れているが、偏向器10L1の径が大きく収
差は小さいので、結局、収差の影響は十分に小さくでき
る。
【0077】このときの電圧ノイズΔVの影響によるイ
オンビームIBのビーム径の劣化(ビーム径が太くな
る)量Δdhighは、おおよそ Δdhigh=fhigh・ΔV/√2 (6−7) である。
【0078】このようにして、スイッチSWを状態「hi
gh」から状態「low」に切換えることによって、感度f
はflow>fhighの関係にあるから、電圧ノイズΔVの
影響によるイオンビームIBのビーム径の劣化(ビーム
径が太くなる)量は、 Δdlow> Δdhigh (6−8) となり、感度fに比例してfhigh/flowと軽減するこ
とができると共に偏向器10をコンパクトにしても、収
差の影響を小さくできる。
【0079】以上のごとく本発明について詳細に記載し
たが、本発明は上記記載に限定されるものではない。例
えば、上記では、円筒形の静電偏向器について説明した
が、平行平板形の静電偏向器であってもよい。また、例
えば図8(実施の形態2)においては、説明の都合で、
倍率が高くなるに伴って分割された偏向器を上流から順
に偏向電源から切離してアースに落とすように記述して
いるが、このような偏向器の選択(偏向器を偏向電源と
接続するかアースに落とすかの選択)は、上記の逆の順
番でもランダムな選択方法であってもよい。同様に、偏
向器の選択を倍率Mと閾値Mtとの比較で行うように説明
したが、走査幅Lと走査幅Lに基づいた閾値Ltとの比
較で行うようにしてもよい。更にまた、上記では、偏向
器の内径を異にする例として、図6と図9の場合の変形
として説明したが、図8と図10の多段分割の場合にお
いても偏向器の内径を異にする構成が可能である。
【0080】更に、上記では、イオンビームを用いた装
置の静電偏向器について述べたが、電子ビームを用いた
電子顕微鏡、電子ビーム描画機などの装置であっても静
電型の偏向器であれば同様に応用できる。
【0081】
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のFIB装置の一例を説明する図
【図2】従来の静電偏向器の一例を説明する図
【図3】従来の静電偏向器の他の一例を説明する図
【図4】静電偏向器を構成する偏向子の例を説明する図
【図5】2段偏向型静電偏向器の軌道を説明する図
【図6】本発明に係る静電偏向器の例を説明する図
【図7】本発明に係る図5の具体的な寸法例を説明する
【図8】本発明に係る他の例を説明する図
【図9】本発明に係る2段偏向方式の静電偏向器の例を
説明する図
【図10】本発明に係る2段偏向方式の静電偏向器の他
の例を説明する図
【図11】本発明に係る図6の変形例を説明する図
【図12】本発明に係る図9の変形例を説明する図
【図13】倍率を説明する図
【図14】走査のために印加する電圧を説明する図
【符号の説明】
1…エミッタ、2…サプレッサ電極、3…引き出し電
極、4…加速電極、5…コンデンサレンズ、6…絞り、
7…対物レンズ、8…試料ステージ、10…偏向器、W
…試料、11…偏向電源、12…制御コンピュータ、S
W…スイッチ、13…スイッチコントローラ、10U…
上段偏向器、10L…下段偏向器、11U…上段偏向電
源、11L…下段偏向電源、SWU…スイッチ、SWL
…スイッチ

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】荷電粒子ビームを発生し取り出す荷電粒子
    源と、発生し取り出した荷電粒子ビームにエネルギーを
    与える加速手段と、加速された荷電粒子ビームを集束し
    て試料上に照射するレンズと、荷電粒子ビームを前記試
    料上で走査するための静電偏向器とを備える荷電粒子ビ
    ーム装置において、前記静電偏向器は、荷電粒子ビーム
    の軸に沿って複数段配置され、前記静電偏向器のうちの
    少なくとも1段を選択する選択手段と、前記選択された
    静電偏向器に所定の電圧を印加する電源手段とを備えた
    ことを特徴とする荷電粒子ビーム装置。
  2. 【請求項2】前記選択手段は、荷電粒子ビームを前記試
    料上で走査する際の走査倍率の値あるいは走査幅の値に
    依存して、使用する静電偏向器を選択するようになした
    ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム装置。
  3. 【請求項3】単一の電源手段から、前記選択された静電
    偏向器に電圧が供給されることを特徴とする請求項1あ
    るいは2記載の荷電粒子ビーム装置。
  4. 【請求項4】前記選択された静電偏向器に印加する電圧
    値は、各選択された静電偏向器において同一であるよう
    になしたことを特徴とする請求項1あるいは2記載の荷
    電粒子ビーム装置。
  5. 【請求項5】前記選択された静電偏向器は、互いに電気
    的に接続されるようになしたことを特徴とする請求項1
    あるいは2記載の荷電粒子ビーム装置。
  6. 【請求項6】前記選択された静電偏向器以外の静電偏向
    器は、荷電粒子ビームを偏向しないように設定すること
    を特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の荷電粒子
    ビーム装置。
  7. 【請求項7】イオンビームを発生し取り出すイオン源
    と、発生し取り出したイオンビームにエネルギーを与え
    る加速電極と、加速されたイオンビームを集束して試料
    上に照射するレンズと、イオンビームを前記試料上で走
    査するための静電偏向器とを備える集束イオンビーム装
    置において、前記静電偏向器は、イオンビームの軸に沿
    って複数段配置され、前記静電偏向器のうちの少なくと
    も1段を選択する選択手段と、前記選択された静電偏向
    器に所定の電圧を印加する電源手段とを備えたことを特
    徴とする集束イオンビーム装置。
  8. 【請求項8】前記選択手段は、イオンビームを前記試料
    上で走査する際の走査倍率の値あるいは走査幅の値に依
    存して、使用する静電偏向器を選択するようになしたこ
    とを特徴とする請求項7記載の集束イオンビーム装置。
  9. 【請求項9】単一の電源手段から、前記選択された静電
    偏向器に電圧が供給されることを特徴とする請求項7あ
    るいは8記載の集束イオンビーム装置。
  10. 【請求項10】前記選択された静電偏向器に印加する電
    圧値は、各選択された静電偏向器において同一であるよ
    うになしたことを特徴とする請求項7あるいは8記載の
    集束イオンビーム装置。
  11. 【請求項11】前記選択された静電偏向器は、互いに電
    気的に接続されるようになしたことを特徴とする請求項
    7あるいは8記載の集束イオンビーム装置。
  12. 【請求項12】前記選択された静電偏向器以外の静電偏
    向器は、荷電粒子ビームを偏向しないように設定するこ
    とを特徴とする請求項7乃至11の何れかに記載の集束
    イオンビーム装置。
  13. 【請求項13】イオンビームを発生し取り出すイオン源
    と、発生し取り出したイオンビームにエネルギーを与え
    る加速電極と、加速されたイオンビームを集束して試料
    上に照射するレンズと、イオンビームを前記試料上で走
    査するための静電偏向器とを備え、該静電偏向器は上段
    と下段の2段の静電偏向器から成り、該上段静電偏向器
    と該下段静電偏向器に印加する電圧の極性が互いに異な
    るようになした集束イオンビーム装置において、前記上
    段静電偏向器は、イオンビームの軸に沿って複数段配置
    され、前記上段静電偏向器のうちの少なくとも1段を選
    択する第1の選択手段と、前記選択された上段静電偏向
    器に所定の電圧を印加する第1の電源手段と、前記下段
    静電偏向器は、イオンビームの軸に沿って複数段配置さ
    れ、前記下段静電偏向器のうちの少なくとも1段を選択
    する第2の選択手段と、前記選択された下段静電偏向器
    に所定の電圧を印加する第2の電源手段とを備えたこと
    を特徴とする集束イオンビーム装置。
  14. 【請求項14】前記選択手段は、イオンビームを前記試
    料上で走査する際の走査倍率の値あるいは走査幅の値に
    依存して、使用する静電偏向器を選択するようになした
    ことを特徴とする請求項13記載の集束イオンビーム装
    置。
  15. 【請求項15】単一の電源手段から、前記選択された静
    電偏向器に電圧が供給されることを特徴とする請求項1
    3あるいは14記載の集束イオンビーム装置。
  16. 【請求項16】前記選択された静電偏向器に印加する電
    圧値は、各選択された静電偏向器において同一であるよ
    うになしたことを特徴とする請求項13あるいは14記
    載の集束イオンビーム装置。
  17. 【請求項17】前記選択された静電偏向器は、互いに電
    気的に接続されるようになしたことを特徴とする請求項
    13あるいは14記載の集束イオンビーム装置。
  18. 【請求項18】前記選択された静電偏向器以外の静電偏
    向器は、荷電粒子ビームを偏向しないように設定するこ
    とを特徴とする請求項13乃至17の何れかに記載の集
    束イオンビーム装置。
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