JP2002114797A - 三重鎖核酸を形成するための調製物 - Google Patents

三重鎖核酸を形成するための調製物

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JP2002114797A JP2000308897A JP2000308897A JP2002114797A JP 2002114797 A JP2002114797 A JP 2002114797A JP 2000308897 A JP2000308897 A JP 2000308897A JP 2000308897 A JP2000308897 A JP 2000308897A JP 2002114797 A JP2002114797 A JP 2002114797A
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Shuho Torigoe
秀峰 鳥越
Toshihiro Akaike
敏宏 赤池
Atsushi Maruyama
厚 丸山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 三重鎖核酸形成反応を生理的条件下で効率的
に促進するための手段の提供。 【解決手段】 単鎖核酸が二重鎖DNAあるいはRNA
における特定部位のヌクレオチド配列に結合して三重鎖
核酸を形成する反応を生体内と同等の条件で約1000
0倍効率的に促進するための、ホスホロアミデート骨格
を有する単鎖核酸とカチオン性高分子とを有効成分とす
る調製物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二重鎖核酸の特定
部位に三重鎖核酸構造を形成するための調製物に関す
る。本発明によれば、生理的条件下で三重鎖核酸の形成
を促進しそして/または安定性を向上することができ
る。
【0002】
【従来の技術】片方の鎖におけるヌクレオチド配列がA
またはGのプリン塩基のみから成り、反対の鎖のヌクレ
オチド配列がT、CまたはUのピリミジン塩基のみから
成る二重鎖DNAあるいはRNA上の特定部位のヌクレ
オチド配列に、T、CまたはUのピリミジン塩基のみか
ら成る単鎖核酸が結合する時に、三重鎖核酸が形成され
ることは既知である(Curr.Opin.Struct.Biol.,3,
345-356;Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struct.,23,
541-576;Annu.Rev.Biochem.,64,65-95;Curr.Opi
n.Struct.Biol.,6,327-333など)。
【0003】この三重鎖核酸形成は、人工的に遺伝子の
発現を制御する際に利用可能である。具体的には、ゲノ
ムDNAなどの二重鎖DNAあるいはRNA上の特定部
位のヌクレオチド配列に対して、単鎖核酸を外部から加
えて三重鎖核酸を形成させると、形成された三重鎖核酸
の立体障害により、二重鎖DNAあるいはRNAへのD
NA結合性タンパク質の結合が調整される。こうして、
遺伝子の複製および転写過程を制御することが可能であ
る。また三重鎖核酸形成は、二重鎖DNAあるいはRN
Aの部位特異的切断にも利用可能である。具体的には、
二重鎖DNAあるいはRNA上の特定部位のヌクレオチ
ド配列に対して、末端に核酸切断用の官能基を結合した
単鎖核酸を外部から加えて三重鎖核酸を形成させ、核酸
切断用の官能基で二重鎖DNAあるいはRNAの特定の
部位を化学的に切断するか、あるいは酵素を用いて三重
鎖と二重鎖との境界領域を消化することが可能である。
これは、ゲノムDNAなどの大きい二重鎖DNAあるい
はRNAをマッピングするのに有効である。さらには、
単鎖核酸を適当な固相に固定して、標的とする二重鎖核
酸との三重鎖核酸の形成を介する核酸のアッセイにも三
重鎖核酸の形成は有用であろう。
【0004】このように三重鎖核酸形成は幅広い応用範
囲が期待され、注目を集めている。しかし、三重鎖核酸
が生理的条件下(pH6〜8)、特定のカチオンの存在
下で非常に形成されにくく、また、形成されたとしても
極めて不安定であるため、三重鎖核酸形成の幅広い応用
範囲への利用が制限されている。より具体的には、外部
から加える単鎖核酸のシトシン(C)塩基がプロトン化
しないと、二重鎖DNAあるいはRNA上の特定部位の
グアニン(G):シトシン(C)塩基対合に単鎖核酸が
結合して三重鎖核酸を形成できないことから、生体内と
異なる酸性条件下でのみ三重鎖核酸は安定に形成でき、
生体と同等の中性条件下では、一般に、三重鎖核酸は形
成できない(Methods Enzymol.,211,180-191(199
2);Biochemistry,31,10995-11003(1992);Biochemi
stry,32,8963-8969(1993))。
【0005】生体と同等の中性条件下における三重鎖核
酸の不安定性を克服するために、これまでにいくつかの
試みがなされてきた。例えば、生体と同等の中性条件下
でシトシン(C)塩基よりもプロトン化しやすい5−メ
チルシトシン(Nucleic AcidsRes.,12,6603-6614(19
84);J.Am.Chem.Soc.,111,3059-3061(1989);Nuc
leic Acids Res.,19,5625-5631(1991))をはじめと
する人工的に化学修飾した塩基(J.Am.Chem.Soc.,1
13,4032-4033(1991);Proc.Natl.Acad. Sci.US
A,89,3761-3764(1992);J.Am.Chem.Soc.,114,1
470-1478(1992);Biochemistry,32,3249-3254(199
3))が開発され、これらの塩基を導入した単鎖核酸
が、生体と同等の中性条件下での三重鎖核酸形成に使用
された。また、DNAにインターカレイトする低分子有
機化合物を末端に結合した単鎖核酸が、生体と同等の中
性条件下での三重鎖核酸形成に使用された(Proc.Nat
l.Acad. Sci.USA,88,6023-6027(1991);Biochem
istry,33,4187-4196(1994))。さらに、スペルミン
やスペルミジンなどのカチオン性ポリアミンを安定化剤
として共存させて、生体と同等の中性条件下での三重鎖
核酸形成が試みられた(Biochemistry,30,4455-4459
(1991))。しかし、たとえばスペルミンを共存させて
も生体と同等の中性条件下での三重鎖核酸形成が約2−
3倍しか効率的に促進されないなど(J.Biol.Chem.,
274,6161-6167(1999))、これらの方法では生体と同
等の中性条件下における三重鎖核酸の形成の促進および
安定性の向上について十分な効果が得られていない。
【0006】一方、最近、単鎖核酸のホスホロアミデー
ト骨格修飾が、三重鎖核酸の安定化を生体内と同等の条
件下で顕著に高めることが報告された(Proc.Natl.Ac
ad.Sci.USA,92,5798-5802(1995);Proc.Natl.Ac
ad.Sci.USA,93,4365-4369(1996))。
【0007】さらに、最近、本発明者をはじめとする研
究者らにより、特定の櫛形のコポリマーが、三重鎖核酸
の形成を促進し、そして安定性を生体内と同等の条件下
で約100倍効率的に高めることが報告された(Biocon
jugate Chem.,8,3-6(1997);Bioconjugate Chem.,
9,292-299(1998);Nucleic Acids Res.,26,3949-39
54(1998);J.Biol.Chem.,274,6161-6167(199
9))。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、さらなる三重
鎖核酸の形成の促進および安定性の向上が図れる手段に
対するニーズは依然として存在する。したがって、本発
明は単鎖核酸が二重鎖DNAあるいはRNAにおける特
定部位のヌクレオチド配列に結合して三重鎖核酸を形成
する反応を行うに際し、これまで必要とした酸性などの
生体内(または生理的条件)と異なる条件を必要とする
ことなく、中性などの生体内と同等の条件下で反応を行
うことを可能とし、また三重鎖核酸形成に必要な単鎖核
酸濃度を低減させるなど、その他の形成反応条件の緩和
を可能とするような手段を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述したように、単鎖核
酸のホスホロアミデート骨格修飾が、生体内と同等の条
件下で三重鎖核酸の安定性を向上することが知られてい
る。また、上述したように、櫛形コポリマーも、生体内
と同等の条件下で三重鎖核酸の形成および安定化を促進
することも知られている。本発明者らは、この単鎖核酸
のホスホロアミデート骨格修飾と櫛形コポリマーとを同
時に使用した場合に、それぞれが有する作用に対し相互
に悪影響を及ぼすことなく、三重鎖核酸の形成および安
定化を生体内と同等の条件下で、相乗的に約10000
倍効率的に促進しうることを、今回、見い出した。
【0010】すなわち、本発明はかような知見に基づく
ものである。
【0011】したがって、本発明によれば、単鎖核酸を
含んで成る、二重鎖DNAあるいはRNAの特定部位で
三重鎖核酸を形成するための調製物であって、該単鎖核
酸が該特定部位における片方のヌクレオチド配列と塩基
対を形成しうる塩基を有し、かつホスホロアミデート骨
核を有するものであり、そしてカチオン性高分子を該単
鎖核酸と組み合わさった形態でさらなる有効成分として
含んでなる三重鎖核酸を形成するための調製物が提供さ
れる。
【0012】本発明によれば、単鎖核酸が二重鎖DNA
あるいはRNAにおける特定部位のヌクレオチド配列に
結合して三重鎖核酸を形成する反応を生体内と同等の条
件下で約10000倍効率的に促進し、かつ、形成した
三重鎖核酸の安定性も著しく向上させることができる。
【0013】
【発明を実施するための好ましい態様】二重鎖DNAあ
るいはRNAとは、相補的な塩基(またはヌクレオチ
ド)対、例えば、DNAでは、アデニン(A)とチミン
(T)およびグアニン(G)とシトシン(C)、RNA
では、Aとウラシル(U)およびGとCとの対合により
形成されるDNA間で、あるいはRNA間で形成された
高次構造を保ちうる鎖を意味する。本発明の文脈上、こ
のようなDNAあるいはRNAは、生体成分から単離さ
れたものであっても、また単離されることなく、生体組
織中に存在するものであってもよい。勿論のこと、合成
された二重鎖DNAあるいはRNAも包含される。
【0014】かような二重鎖DNAあるいはRNAにお
ける特定部位は、直鎖状になったDNAあるいはRNA
の末端部位あるいは中間部位等のいかなる部位であって
もよい。そして、該部位におけるヌクレオチド配列は、
片方の鎖のヌクレオチド配列が本質的にAまたはGのプ
リン塩基から成り、反対の鎖のヌクレオチド配列が本質
的にT、CまたはUのピリミジン塩基から成る場合をい
う。「本質的に・・・から成る」とは、該ヌクレオチド
配列が、必ずしも、100%記載した塩基で構成されて
いることを意味するものではなく、本発明に従って、単
鎖核酸と有意に安定な三重鎖核酸を形成することができ
る程度(例えば、80%以上、好ましくは90%以上、
より好ましくは95%以上)に上記の塩基によって占め
られていることを意味する。この特定部位は、通常、二
重鎖DNAあるいはRNAの一部であるが、全てであっ
てもよい。
【0015】ホスホロアミデート骨格を有する単鎖核酸
とは、通常のホスホジエステル骨格のリン原子に結合す
る5′末端側の酸素原子をNH基に置換した下記の構造
式で表されるN3′→P5′ホスホロアミデート修飾骨
格を有する単鎖核酸をいう。この単鎖核酸におけるヌク
レオチド配列は、それらが、上記特定部位のヌクレオチ
ド配列と塩基対を形成しうるT、CまたはUのピリミジ
ン塩基から本質的に成る。かような単鎖核酸は、本発明
に従って三重鎖を形成できる限り、三重鎖形成の目的に
応じて、適当な薬物(例えば、フラレン、ブレオマイシ
ン、EDTA等の金属キレート剤)が、その末端もしく
は末端近傍に結合していてもよく、さらには末端で適当
な固相担体に結合していてもよい。
【0016】
【化2】
【0017】N3′→P5′ホスホロアミデート修飾骨
格(以下、NP修飾骨格と略記する) カチオン性高分子は、カチオン性ホモポリマーあるいは
コポリマーが親水性高分子で側鎖修飾された櫛形のグラ
フト型構造を有するものが好ましい。このカチオン性ホ
モポリマーあるいはコポリマーとしては、上記三重鎖核
酸形成反応に資するものであればいかなるポリマーであ
ってもよいが、例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジ
ン等の塩基性アミノ酸、グルコサミン等のアミノ糖、エ
チレンイミン等のアルキレンイミン、ジエチルアミノエ
チルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクレノ
ート等N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アク
リレートの合成モノマー等のカチオン性基を形成しうる
モノマーに由来するカチオン性ホモポリマーおよびコポ
リマーを挙げることができる。また、この親水性高分子
グラフト側鎖としては、ポリエチレングリコール等の水
溶性ポリアルキレングリコール、デキストラン、プルラ
ン、アミロース、アラビノガラクタン等の水溶性多糖、
セリン、アスパラギン、グルタミン、スレオニン等の親
水性アミノ酸を含む水溶性ポリアミノ酸、アクリルアミ
ドおよびその誘導体をモノマーとして用い合成される水
溶性高分子、メタクリル酸及びアクリル酸並びにその誘
導体(例、ヒドロキシエチルメタクリレート)をモノマ
ーとして用い合成される水溶性高分子、ポリビニルアル
コール及びその誘導体からなる群より選ばれる1種以上
の水溶性高分子により形成されるものを挙げることがで
きる。
【0018】より好ましいカチオン性高分子としては、
限定されるものでないが、例えば Bioconjugate Chem.
9,292-299(1998)に記載されているような下記の一般
的な構造式で表されるものを挙げることができる。
【0019】
【化3】
【0020】(上式中、mは1〜100の整数であり、
xは5〜200の整数であり、そしてnは0.01〜
0.3である)で表されるデキストラン側鎖修飾ポリ
(L−リジン)。(以下、PLL−g−Dexと略記す
る) かようなカチオン性高分子の分子量、また、親水性高分
子側鎖それ自体の鎖長およびグラフトの程度は、具体的
な使用目的により最適な値が変動するので限定できない
が、当業者であれば実験を行うことによって各最適値を
選択することができるであろう。
【0021】本発明に従えば、上記のNP修飾骨格を有
する単鎖核酸を含有し、カチオン性高分子が該単鎖核酸
と組み合わさった形態でさらに含まれる調製物が提供さ
れる。「組み合わさった形態で」とは、単鎖核酸とカチ
オン性高分子とが、必ずしも単一調製物中に存在するの
ではなく、分離して存在するが、三重鎖形成に際しては
一緒に作用するような形態にあることを意味する。かよ
うな調製物が単一調製物の場合、目的とする三重鎖核酸
形成反応に悪影響を及ぼさない限り、合成された単鎖核
酸の粗製物あるいは精製された単鎖核酸と、合成された
高分子の粗製物あるいは精製された高分子と、必要によ
り、緩衝液、生理食塩水等から構成することができる。
また、高分子は1種または2種以上の混合物であっても
よい。
【0022】本発明に従うカチオン性高分子は、三重鎖
核酸形成反応においては、一般的に、形成反応に供され
る総(NP修飾骨格を有する単鎖+二重鎖)核酸におけ
るアニオン性リン酸基に対するカチオン性基の荷電比が
0.1以上、好ましくは0.5〜1000となるように
選ばれる。一方、形成反応に供される二重鎖DNAある
いはRNAに対するNP修飾骨格を有する単鎖核酸のモ
ル比率は1を超えるように選ばれる。
【0023】本発明に従う上記のNP修飾骨格を有する
単鎖核酸とカチオン性高分子との組み合わさった調製物
は、三重鎖核酸の形成を促進し、そして安定性を効率良
く向上させる。そのため、従来、三重鎖核酸の形成およ
び安定化に酸性などの生体内と異なる条件を必要として
いたが、本発明の調製物は中性などの生体内と同等の条
件で三重鎖核酸の形成および安定化を可能とする点で有
用である。また、従来、三重鎖核酸形成反応は生物細胞
等に悪影響が生じない生理的に許容できる温度(例え
ば、約5℃〜40℃)よりは低い温度を必要としていた
が、本発明の調製物は生理的に許容できる温度(約5℃
〜40℃)を含むより高い温度範囲で三重鎖核酸形成反
応を行うことを可能とする点で有用である。
【0024】本発明に従う上記のNP修飾骨格を有する
単鎖核酸とカチオン性高分子との組み合わさった調製物
は、上記の生理的条件下で三重鎖核酸を効率良く形成す
る。NP修飾骨格を有する単鎖核酸のオリゴヌクレオチ
ドは、5mer以上であれば理論上いかなる鎖長のもの
でもよい。しかし、好ましくは7mer以上、より好ま
しくは14mer以上で、上限は、一般に50mer以
下である。本発明の調製物は、従来三重鎖核酸形成に必
要としていた単鎖核酸の鎖長よりも著しく短い鎖長で三
重鎖核酸形成反応を可能とする点で有用である。また、
三重鎖核酸形成に必要な単鎖核酸濃度を約10000分
の1に低減きる点で有用である。
【0025】また、三重鎖核酸形成による遺伝子発現制
御機能や部位特異的切断機能などを向上させる上で、本
発明によるNP修飾骨格を有する単鎖核酸とカチオン性
高分子とを有効成分とする調製物は有用である。さら
に、ゲノムDNA二重鎖上の特定部位のヌクレオチド配
列と三重鎖核酸を形成させることにより、DNA結合性
タンパク質の結合を調整し、複製および転写過程を制御
する上でも有用である。
【0026】
【実施例】以下、理解を容易にするために、二重鎖オリ
ゴヌクレオチドとNP修飾骨格を有する単鎖オリゴヌク
レオチドとの間の三重鎖核酸形成反応をカチオン性高分
子共存下で行った実例を挙げて本発明を具体的に説明す
る。しかし、これらの反応は長鎖のDNAあるいはRN
AとNP修飾骨格を有する単鎖核酸との間でカチオン性
高分子を共存させることによっても、同様に起こるもの
と理解されている。
【0027】実施例1:NP修飾骨格を有する単鎖核酸
とカチオン性高分子との同時使用による、生体内と同等
の条件における三重鎖核酸形成の促進(電気泳動による
解析) 下記表−1のオリゴヌクレオチドのうち、Pyr15
T,Pur23A,Pyr23T,Pyr15NSの粗
製品を日清紡株式会社から購入し、高速液体クロマトグ
ラフィーにより精製した。また、Pyr15NPの精製
品を米国のLynx社から購入した。UV分光光度計
(JASCO Ubest−30)にてUV吸収測定を
することにより、DNA濃度を決定した。二重鎖DNA
の相補的配列を有するPur23A,Pyr23Tをほ
ぼ等モル混合し、90℃に加熱後、徐冷してアニ−リン
グし、余剰の単鎖DNAを除去するためにハイドロキシ
アパタイトカラム(KOKEN)で精製し、二重鎖DN
Aを調製した。
【0028】
【表1】
【0029】PLL−g−Dexは、この合成、精製、
分析を Bioconjugate Chem.8,3-6(1997)に従って行
って得られたカチオン性ポリマーを用いた。
【0030】電気泳動による三重鎖核酸形成反応の解析
は J.Biol.Chem.,274、6161-6167(1999)に従って
以下の手順で行った。50mMTris−酢酸(pH
7.0)、100mM塩化ナトリウム、10mM塩化マ
グネシウムの緩衝液中、32Pでラジオアイソトープ標識
した二重鎖DNA(Pur23A・Pyr23T)(約
10pg)に対して、最終的に図1の濃度になるように
一連の濃度の単鎖DNA(Pyr15TあるいはPyr
15NP)を加える。さらに非特異的な単鎖DNA(P
yr15NS)を加えて、各試料溶液中の最終的な単鎖
DNAの合計(Pyr15T+Pyr15NSあるいは
Pyr15NP+Pyr15NS)の濃度が10μMに
なるようにする。さらにカチオン性高分子を加える実験
群に対しては、最終的に4μMの濃度になるようにPL
L−g−Dexを加える。(これは、カチオン性高分子
中アミノ基のDNA中リン酸基に対するモル比([アミ
ノ基]cationic polymer/[リン酸基]DNAの荷電比)
が2であることに相当する。)この各試料溶液9μlを
37℃で6時間インキュベートした後、DNAとポリマ
ーを解離させる目的で、サケ精子DNA(6mg/m
l、1μl)を添加した。三重鎖核酸形成効率は、各試
料溶液を50mMTris−酢酸(pH7.0)、10
mM塩化マグネシウムの緩衝液中15%ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動(8V/cm、4℃、16時間)し、
ラジオアイソトープ標識された二重鎖DNAと三重鎖核
酸のバンドの濃さをバイオイメージングアナライザー
(FUJIXBAS2000)で解析することにより求
めた。
【0031】結果を図1に示す。二重鎖DNAと三重鎖
核酸のバンドの位置を各々DとTで示してある。50%
の二重鎖DNAが三重鎖核酸を形成する単鎖核酸の濃度
は、PLL−g−Dex非共存下Pyr15Tの場合に
は約10-6Mであり、PLL−g−Dex共存下Pyr
15Tの場合およびPLL−g−Dex非共存下Pyr
15NPの場合には約10-8Mであるのに対して、PL
L−g−Dex共存下Pyr15NPの場合には約10
-10Mである。つまり、PLL−g−Dex共存下で単
鎖核酸としてPyr15NPを用いると三重鎖核酸形成
効率が最も高いこと、また、PLL−g−Dex非共存
下で単鎖核酸としてPyr15Tを用いた時に比較して
三重鎖核酸形成効率が約10000倍上昇していること
が明らかである。
【0032】実施例2:NP修飾骨格を有する単鎖核酸
とカチオン性高分子との同時使用による、生体内と同等
の条件下における三重鎖核酸の熱安定性の促進 緩衝液A(10mMカコジル酸−カコジル酸ナトリウム
(pH6.8)、200mM塩化ナトリウム、20mM
塩化マグネシウム)中、二重鎖DNA(Pur23A・
Pyr23T、実施例1と同じ)と単鎖DNA(Pyr
15TあるいはPyr15NP、実施例1と同じ)とを
各々最終濃度が1μMになるように混合する。カチオン
性高分子を加える実験群に対しては、1.7μMの濃度
になるようにPLL−g−Dexをさらに添加する。
(これは、カチオン性高分子中アミノ基のDNA中リン
酸基に対するモル比([アミノ基]cationic polymer
[リン酸基]DNAの荷電比)が2であることに相当す
る。)この各試料溶液3.5mlを4℃で12時間以上
インキュベートした後、1cm四角型セルに入れ、UV
分光光度計(JASCO Ubest−30)のペルチ
ェ式セルホルダー(EHC−363)にセットする。
0.5℃/分の速度で20℃から90℃まで温度を上昇
させながら、260nmにおける核酸の吸光度の変化を
モニターする。
【0033】結果を図2に示す。PLL−g−Dex非
共存下Pyr15Tの場合およびPLL−g−Dex共
存下Pyr15Tの場合には2段階の吸光度の増加が見
られ、低温領域の吸光度の増加が(三重鎖核酸→二重鎖
DNA+単鎖核酸)の融解に相当し、高温領域の吸光度
の増加が(二重鎖DNA→単鎖核酸2分子)の融解に相
当する。一方、PLL−g−Dex非共存下Pyr15
NPの場合およびPLL−g−Dex共存下Pyr15
NPの場合には1段階の吸光度の増加しか見られず、
(三重鎖核酸→単鎖核酸3分子)の融解に相当する。図
よりPLL−g−Dex共存下Pyr15NPの場合
に、三重鎖核酸の融解曲線が最も高温側にあり、三重鎖
核酸の融解が最も高い温度で起こることが明らかであ
る。つまり、PLL−g−Dex共存下で単鎖核酸とし
てPyr15NPを用いると、三重鎖核酸の熱安定性が
最も高いことになる。
【0034】吸光度の温度に対する一次微分を温度に対
してプロットし、このプロットのピークの温度を融解温
度と定義し、熱安定性の指標とした。(三重鎖核酸→二
重鎖DNA+単鎖核酸)の融解温度をTm1とし、(二重
鎖DNA→単鎖核酸2分子)の融解温度をTm2とし、
(三重鎖核酸→単鎖核酸3分子)の場合は一つの融解温
度としてまとめたのが下記表−2である。
【0035】
【表2】
【0036】この表より、PLL−g−Dex共存下で
単鎖核酸としてPyr15NPを用いると、三重鎖核酸
の熱安定性が最も高いことが明らかである。
【0037】実施例3:NP修飾骨格を有する単鎖核酸
とカチオン性高分子との同時使用による、生体内と同等
の条件における三重鎖核酸形成の促進(生体分子間相互
作用解析装置による速度論的解析) 生体分子間相互作用解析装置による三重鎖核酸形成反応
の解析はJ.Biol. Chem.,274,6161-6167(1999)に従
って以下の手順で行った。上記の文献の方法により、生
体分子間相互作用解析装置(Affinity Sen
sors,IAsys Plus)のカルボキシメチル
デキストランキュベットに、まずストレプトアビジンタ
ンパク質を固定化し、次に5′末端をビオチンで標識し
たPyr23T(実施例1と同じ)をこれに結合させ、
さらにPur23A(実施例1と同じ)を相補鎖として
これにハイブリダイズさせる。以上によりキュベット中
に二重鎖DNA(Pur23A・Pyr23T)が固定
化される。これに対して、緩衝液A(実施例2参照)中
に溶かした一連の濃度の単鎖DNA(Pyr15Tある
いはPyr15NP、実施例1と同じ)を加え、25℃
において三重鎖核酸の形成過程を単鎖DNAの結合量
(図3、4の縦軸)として装置でモニターする。カチオ
ン性高分子を加える実験群に対しては、上記の単鎖DN
Aを溶かした緩衝液A(実施例2参照)中に38μMの
濃度になるようにPLL−g−Dexを添加しておく。
三重鎖核酸の形成過程を30分間装置でモニターした
後、反応溶液を捨て、代わりに緩衝液A(実施例2参
照)を加えて、三重鎖核酸の解離過程を装置でモニター
する。
【0038】結果を図3に示す。PLL−g−Dex共
存下で単鎖核酸としてPyr15NPを用いると、30
分間での単鎖DNAの結合量が最も多い、つまり三重鎖
核酸形成効率が最も高いことが明らかである。
【0039】キュベット中に固定化した二重鎖DNA
(Pur23A・Pyr23T)に対して、PLL−g
−Dex非共存下の緩衝液A(実施例2参照)中に溶か
した一連の濃度のPyr15NPを加え、25℃におい
て三重鎖核酸の形成曲線を装置でモニターしたのが図4
である。Pyr15NPの濃度が上昇すると、30分間
における三重鎖核酸の形成量が増加するのがわかる。各
々の三重鎖核酸の形成曲線をAnalytical Biochemistr
y,212,457-468(1993)に記載された理論式で解析す
ると、Pyr15NPの各々の濃度に対してon−ra
te定数(kon)を求めることができる。Pyr15N
Pの各々の濃度に対して、各々の濃度のkonをプロット
したのが図5であり、フィッティングした直線の傾きが
三重鎖核酸形成の結合速度定数(kassoc)である。一
方、各々の三重鎖核酸の解離曲線をAnalytical Biochem
istry,212,457-468(1993)に記載された理論式で解
析すると、off−rate定数(koff)を求めるこ
とができる。Pyr15NPの複数の濃度に対してk
offを求め、これらを平均した値が三重鎖核酸形成の解
離速度定数(kdissoc)である。三重鎖核酸形成効率を
示す指標となる結合定数(K a)は、konのkoffに対す
る比(kon/koff)として求められる。以上の一連の
解析を残りの3つの場合、つまりPLL−g−Dex非
共存下Pyr15Tの場合、PLL−g−Dex共存下
Pyr15Tの場合、PLL−g−Dex共存下Pyr
15NPの場合についても行い、結果をまとめたのが下
記表−3である。
【0040】
【表3】
【0041】この表より、PLL−g−Dex共存下で
単鎖核酸としてPyr15NPを用いると、三重鎖核酸
形成反応のKaが最も大きく、三重鎖核酸形成効率が最
も高いこと、また、PLL−g−Dex非共存下で単鎖
核酸としてPyr15Tを用いた時に比較して三重鎖核
酸形成効率が約10000倍上昇していることが明らか
である。さらに、この最も高い三重鎖核酸形成効率はk
assocが最も大きいこととkdissocが最も小さいこと、
つまり三重鎖核酸が形成しやすいことと解離しにくいこ
ととの双方によることが明らかである。
【0042】
【発明の効果】以上のとおり本発明によれば、単鎖核酸
が二重鎖DNAあるいはRNAにおける特定部位のヌク
レオチド配列に結合して三重鎖核酸を形成する反応を行
うに当たり、これまで必要とした酸性などの生体内と異
なる条件を必要とすることなく、中性などの生体内と同
等の条件で反応を行うことを可能とし、また三重鎖核酸
形成に必要な単鎖核酸濃度を約10000分の1に低減
して非特異的な結合を押さえることにより反応の効率を
向上させ、さらには三重鎖核酸形成による遺伝子発現制
御機能や部位特異的切断機能などの向上を可能にする。
【0043】
【配列表】 <110> 丸山厚 Atsushi,Maruyama <120> 三重鎖核酸を形成するための調製物 <130> <160> 4 <210> 1 <211> 15 <212> DNA <213> Artificial Sequence <400> 1 ctcttctttt ctttc 15 <210> 2 <211> 23 <212> DNA <213> Artificial Sequence <400> 2 gcgcgagaag aaaagaaagc cgg 23 <210> 3 <211> 23 <212> DNA <213> Artificial Sequence <400> 3 ccggctttct tttcttctcg cgc 23 <210> 4 <211> 15 <212> DNA <213> Artificial Sequence <400> 4 tctcctcccc tccct 15
【図面の簡単な説明】
【図1】生体内と同等の条件における三重鎖核酸形成
を、電気泳動によって解析した結果を示す図面に代る写
真である。PLL−g−Dex共存下で単鎖核酸として
Pyr15NPを用いると三重鎖核酸形成効率が最も高
いこと、また、PLL−g−Dex非共存下で単鎖核酸
としてPyr15Tを用いた時に比較して三重鎖核酸形
成効率が約10000倍上昇していることを示す図であ
る。
【図2】生体内と同等の条件における三重鎖核酸の熱安
定性を、温度変化に伴う260nmにおける核酸の吸光
度の変化で解析した結果を示す。PLL−g−Dex共
存下で単鎖核酸としてPyr15NPを用いると、三重
鎖核酸の融解が最も高い温度で起こり、三重鎖核酸の熱
安定性が最も高いことを示す図である。
【図3】生体内と同等の条件における三重鎖核酸形成
を、生体分子間相互作用解析装置により速度論的見地か
ら解析した結果を示す。PLL−g−Dex共存下で単
鎖核酸としてPyr15NPを用いると、30分間での
単鎖DNAの結合量が最も多い、つまり三重鎖核酸形成
効率が最も高いことを示す図である。
【図4】キュベット中に固定化した二重鎖DNA(Pu
r23A・Pyr23T)に対して、PLL−g−De
x非共存下の一連の濃度のPyr15NPを加え、三重
鎖核酸形成を生体分子間相互作用解析装置でモニターし
た結果を示す。Pyr15NPの濃度が上昇すると、3
0分間における三重鎖核酸の形成量が増加するのがわか
る。
【図5】Pyr15NPの各々の濃度に対して、各々の
濃度の三重鎖核酸形成のkonをプロットしたものであ
る。フィッティングした直線の傾きが三重鎖核酸形成の
結合速度定数(kassoc)である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 101/12 C08L 101/12 C12N 15/09 ZNA C12N 15/00 ZNAA Fターム(参考) 4B024 AA11 AA20 CA01 CA09 HA12 4C057 BB02 BB05 CC01 DD01 MM02 MM04 4C090 AA07 AA08 BA08 BA97 BB92 CA46 DA06 DA11 DA32 4J001 DA01 DB01 DB02 DB07 DD05 DD14 DD20 EA14 EA33 EA37 EE25C EE26C EE28C EE30C EE38C EE44C EE54C FA03 FB01 FC01 JA20 4J002 AA00W AD00X BG07W BN17W CL02W CM01W CM04W GB00 GE00 GT00

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 単鎖核酸を含んで成る、二重鎖DNAあ
    るいはRNAの特定部位で三重鎖核酸を形成するための
    調製物であって、該単鎖核酸が該特定部位における片方
    のヌクレオチド配列と塩基対を形成しうる塩基を有し、
    かつホスホロアミデート骨核を有するものであり、そし
    てカチオン性高分子を該単鎖核酸と組み合わさった形態
    でさらなる有効成分として含んでなる三重鎖核酸を形成
    するための調製物。
  2. 【請求項2】 該片方のヌクレオチド配列が本質的にA
    またはGのプリン塩基から成り、単鎖核酸におけるこれ
    らの塩基と塩基対を形成しうる塩基が、それぞれTまた
    はCもしくはUのピリミジン塩基である請求項1記載の
    調製物。
  3. 【請求項3】 単鎖核酸とカチオン性高分子とが単一の
    調製物中に含まれている請求項1または2記載の調製
    物。
  4. 【請求項4】 カチオン性高分子が、塩基性アミノ酸、
    アミノ糖、アルキレンイミンおよびN,N−ジアルキル
    アミノアルキル(メタ)アクリレートから成る群より選
    ばれる1種または2種以上のモノマーに由来し、そして
    場合によって、複数の親水性高分子側鎖を有していても
    よい請求項1〜3のいずれかに記載の調製物。
  5. 【請求項5】 カチオン性高分子がポリリジンに由来す
    る主鎖と、デキストランまたはポリエチレングリコール
    に由来するグラフト型側鎖とから構成される請求項1記
    載の調製物。
  6. 【請求項6】 カチオン性高分子が、式 【化1】 (上式中、mは1〜100の整数であり、xは5〜20
    0の整数であり、そしてnは0.01〜0.3であ
    る。)で表されるデキストラン側鎖修飾α−ポリ(リジ
    ン)である請求項1記載の調製物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004096892A1 (ja) * 2003-04-25 2004-11-11 Japan Science And Technology Agency 物質を捕捉する機能を有する機能性ポリマー、当該ポリマーを含む物質捕捉用試薬キット、および当該ポリマーを利用した物質の回収方法
JP2017505104A (ja) * 2013-11-08 2017-02-16 デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド インビボにおける薬剤送達のための核酸ナノ構造体
US11254972B2 (en) 2016-08-02 2022-02-22 President And Fellows Of Harvard College Crisscross cooperative self-assembly
US11414694B2 (en) 2016-03-11 2022-08-16 Children's Medical Center Corporation Nucleic acid nanoswitch catenanes

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