JP2002079561A - 射出成形機の製品良否判別方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 射出成形機における製品良否判別のための設
定作業を簡単に行うことができるような製品良否判別方
法を提供すること。 【解決手段】 射出成形機の成形サイクルにおいて射出
工程から保圧工程に切り替わってからのスクリュ速度を
監視して製品の良否判別を行うものであり、前記スクリ
ュ速度の監視は、前記射出工程から前記保圧工程に切り
替わってから現れる負のスクリュ速度の最大値があらか
じめ定められた範囲内に入っているかで行われ、入って
いれば良品、外れていれば不良品と判別する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形機の製品
良否判別方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】射出成形機においては、得られた製品に
ついて様々な方法で良否の判別が行われる。良否判別方
法の一例をあげると、良品が得られている運転状態でシ
ョット毎に得られるある実績値について過去複数ショッ
ト分の実績値データから中心値を算出し、この中心値に
対して上下にある監視幅（固定値）を設定する。そし
て、ショット毎に（中心値一監視幅）≦実績値≦（中心
値＋監視幅）を満足するかの判定を行い、満足していれ
ば良品、満足していなければ不良品という判別を行って
いる。なお、実績値としては、計量時間、クッション位
置、保圧完了位置、充填ピーク圧、射出ピーク速度、保
圧ピーク速度等がある。通常は、これらの実績値すべて
について、中心値及び監視幅の設定を行い、すべての実
績値について上記の判別を行っている。

【０００３】しかし、上記の方法では、製品が変わる毎
に実績値のばらつきを調査して監視幅を設定する必要が
あり、オペレータには多大な作業量が要求される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、射出成形に
おいては完全な状態で樹脂充填が行われて製品となるこ
とが望ましいが、微小なショートショットが混在するこ
とがある。上記の従来の判別方法は、大きなショートシ
ョットはカバーできるが、微小なショートショットに対
しての判別は難しい。上記の判別方法に代えて、画像処
理による良否判別方法も提供されているがコストがかか
り、製品毎の専用機とならざるを得ず汎用での使用は無
駄が多いのが現状である。

【０００５】そこで、本発明の課題は、射出成形機にお
ける製品良否判別のための設定作業を簡単に行うことが
できるような製品良否判別方法を提供することにある。

【０００６】本発明の他の課題は、上記の製品良否判別
方法を安価で提供できるようにすることにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明による射出成形機
の製品良否判別方法は、射出成形機の１ショット毎に射
出工程から保圧工程に切り替わってからのスクリュ速度
を監視して製品の良否判別を行うことを特徴とする。

【０００８】本製品良否判別方法においては、前記スク
リュ速度の監視は、前記射出工程から前記保圧工程に切
り替わってから現れる負のスクリュ速度の最大値があら
かじめ定められた範囲内に入っているかで行われ、入っ
ていれば良品、外れていれば不良品と判別することを特
徴とする。

【０００９】本製品良否判別方法においては特に、良否
判別は、前記負のスクリュ速度の最大値が小さい方に外
れている場合にはショートショットであると判別し、前
記負のスクリュ速度の最大値が大きい方に外れている場
合にはバリ発生と判別することを特徴とする。

【００１０】本製品良否判別方法においては更に、前記
あらかじめ定められた範囲の設定は、成形条件出しを行
ってＮ（Ｎは正の整数）ショット安定して良品を成形で
きる成形条件を見い出し、各ショットにおいて得られる
前記負のスクリュ速度の最大値を実績値として、（Ｎ＋
１）ショット目からは、その直前のショットから数えて
過去Ｎショット分の実績値データから平均値及び標準偏
差をショット毎に算出し、算出された標準偏差に対し倍
率ｋi を初期設定して（平均値−ｋi ×標準偏差）≦実
績値≦（平均値＋ｋi ×標準偏差）を満足するかの判定
をショット毎に行い、満足した場合には良品、満足しな
ければ不良品という判別を行いながら、標準偏差に対す
る最適倍率ｋo を決定し、以後は、ショット毎に算出さ
れた標準偏差に対し最適倍率ｋo を設定して（平均値−
ｋo ×標準偏差）≦実績値≦（平均値＋ｋo ×標準偏
差）を満足するかの判定をショット毎に行い、満足した
場合には良品、満足しなければ不良品という判別を行う
ことを特徴とする。

【００１１】なお、前記平均値は移動平均値である。

【００１２】本製品良否判別方法においてはまた、異な
る製品を成形する場合であって以前に成形された製品と
重量や形状において近い製品である場合、前記以前に成
形された製品の成形時に得られた最適倍率ｋo を初期設
定の倍率ｋi と設定することを特徴とする。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態につ
いて説明する。本発明による製品良否判別方法を実行す
るために必要な機能は以下の通りである。

【００１４】実績値取得機能：製品良否判別を行うため
には、従来と同様に、種々の実績値を取得することが必
要である。本形態において使用される実績値は、射出工
程から保圧工程に切り替わってから現れる負のスクリュ
速度の最大値である。この実績値は１ショットに１回取
得できる。スクリュ速度は射出モータの速度センサの検
出値あるいはスクリュ位置センサからの位置信号を微分
して測定することができる。いずれにしても、このよう
な機能は従来の射出成形機でも有している。

【００１５】実績値の記憶、表示機能：ショット毎に得
られるスクリュ速度の実績値は、射出成形機の制御装置
に備えられた記憶装置に記憶することができ、必要に応
じて射出成形機に備えられたディスプレイにて表示した
り、プリンタにてプリントアウトすることができる。勿
論、実績値のみならず、１ショット毎のスクリュ速度波
形も表示できる。そして、従来の射出成形機でもこのよ
うな機能を有している。

【００１６】標準偏差計算機能：これは、本発明特有の
機能であり、あるショットにおいてその直前のショット
から数えて過去Ｎショット分の実績値データからその平
均値及び標準偏差がショット毎に算出される。つまり、
平均値及び標準偏差の算出に際しては、Ｎショット分の
実績値データは固定ではなく、ショット毎に１ショット
分だけ実績値データが更新されるようにしている。この
ようにして得られる平均値が移動平均値であることは明
らかである。

【００１７】標準偏差に対する倍率設定機能：これも本
発明特有の機能であり、良好な製品良否判別を行うため
に、上記計算機能で算出された標準偏差そのものではな
く、標準偏差にある倍率ｋを乗算した値を使用するよう
にしている。

【００１８】良否判別機能：後で説明されるように、本
発明特有の判別条件による良否判別が行われる。

【００１９】次に、本発明による製品良否判別の作用に
ついて説明する。本発明により新しい製品に対して製品
良否判別のための設定を行う手順は以下の通りである。

【００２０】手順１：製品良否判別に関係なく、良品が
成形できる成形条件を見つける。すなわち、成形条件出
しを行い、Ｎショット安定して成形できる状態にする。
Ｎは正の整数であり、一例をあげれば３０である。

【００２１】手順２：（Ｎ＋１）ショット目からは、各
ショットにおいて得られる負のスクリュ速度の最大値に
関する実績値について、その直前のショットから数えて
過去Ｎショット分の実績値データから平均値及び標準偏
差をショット毎に算出する。そして、過去の同種の製品
での実績や統計的な知見により、標準偏差に対する倍率
ｋを初期倍率ｋi として設定する。更に、算出された標
準偏差に対し初期倍率ｋi を設定して、 （平均値−ｋi ×標準偏差）≦実績値≦（平均値＋ｋi
×標準偏差） を満足するかの判定をショット毎に行い、満足した場合
には良品、満足しなければ不良品という判別を行いなが
ら、標準偏差に対する最適倍率ｋo を決定する。手順２
のショット数も、一例をあげれば３０ショットである。

【００２２】手順３：以後は、ショット毎に算出された
標準偏差に対し最適倍率ｋo を設定して、 （平均値−ｋo ×標準偏差）≦実績値≦（平均値＋ｋo
×標準偏差） を満足するかの判定をショット毎に行い、満足した場合
には良品、満足しなければ不良品という判別を行う。こ
のように、手順３では、実際に成形・製品良否判別を行
いながら、標準偏差に対する最適な倍率ｋo を見つけ
る。

【００２３】図２は、手順３における平均値と±ｋo ×
標準偏差σとの関係を示す。負のスクリュ速度の最大値
の平均値及び標準偏差σは、常に直前のショットから過
去Ｎショット分の実績値データから算出されるので、平
均値に対する上下の幅、すなわち監視幅が常に変動して
いる。これは、あるショットと別のショットで平均値か
らのはずれ量が同じであっても、過去Ｎショットの標準
偏差が小さい場合には不良と判定され、大きい場合には
良品と判定されることを意味する。言い換えれば、常に
過去Ｎショットのばらつきに対応した監視幅が設定され
ていることになる。

【００２４】図１は、１ショット当たりのスクリュ速度
波形を示す。このような波形は、前に述べたディスプレ
イにて表示可能である。なお、ここでは説明をわかり易
くするために、良品と判別された波形と不良品と判別さ
れた波形とを重ねて示している。

【００２５】図１において、負のスクリュ速度の最大値
（絶対値）が小さい方に外れている場合（不良Ａ）には
ショートショットであると判別される。これは、スクリ
ュ速度が小さくなっている場合、製品内の樹脂密度が良
品の場合に比べて低くなり、その結果、ショートショッ
トになっていると考えられるからである。一方、負のス
クリュ速度の最大値（絶対値）が大きい方に外れている
場合（不良Ｂ）にはバリ発生と判別される。これは、ス
クリュ速度が大きくなっている場合、製品内の樹脂密度
が良品の場合に比べて高くなり、その結果、バリが発生
していると考えられるからである。

【００２６】いずれにしても、不良と判別された製品は
射出成形機に備えられているシュータで分別されたり、
もしくは取り出し機で分別される。

【００２７】

【発明の効果】射出成形機とは別に設置されるコストの
高い画像処理装置を使用せずに、射出成形機単独で製品
良否判別を行うことができ、射出成形機で良、不良がす
ぐに判明し、後工程での製品に対する全数検査が不要と
なるので、生産において大幅にコストが削減される。ま
た、射出成形機における製品良否判別のための設定作業
を簡単に行うことができ、ある製品（ある金型）で決定
した倍率を、他の製品（他の金型）で流用し易くするこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による製品良否判別方法を説明するため
に１ショット当たりのスクリュ速度の波形を示した図で
ある。

【図２】本発明による製品良否判別方法の判定動作を説
明するための図である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 清水 忠三 東京都大田区久が原２丁目11番14号 三共 化成株式会社内 (72)発明者 吉沢 徳夫 東京都大田区久が原２丁目11番14号 三共 化成株式会社内 (72)発明者 高橋 政浩 東京都大田区久が原２丁目11番14号 三共 化成株式会社内 (72)発明者 中沢 修 東京都大田区久が原２丁目11番14号 三共 化成株式会社内 Ｆターム(参考） 4F206 AM32 AM33 AP072 JA07 JD03 JL02 JM04 JM05 JM13 JN11 JN21 JP01 JP12 JP13 JP14

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 射出成形機の１ショット毎に射出工程か
   ら保圧工程に切り替わってからのスクリュ速度を監視し
   て製品の良否判別を行うことを特徴とする射出成形機の
   製品良否判別方法。
2. 【請求項２】 請求項１記載の製品良否判別方法におい
   て、前記スクリュ速度の監視は、前記射出工程から前記
   保圧工程に切り替わってから現れる負のスクリュ速度の
   最大値があらかじめ定められた範囲内に入っているかで
   行われ、入っていれば良品、外れていれば不良品と判別
   することを特徴とする射出成形機の製品良否判別方法。
3. 【請求項３】 請求項１あるいは２記載の製品良否判別
   方法において、良否判別は、前記負のスクリュ速度の最
   大値が小さい方に外れている場合にはショートショット
   であると判別し、前記負のスクリュ速度の最大値が大き
   い方に外れている場合にはバリ発生と判別することを特
   徴とする射出成形機の製品良否判別方法。
4. 【請求項４】 請求項２あるいは３記載の製品良否判別
   方法において、 前記あらかじめ定められた範囲の設定は、 成形条件出しを行ってＮ（Ｎは正の整数）ショット安定
   して良品を成形できる成形条件を見い出し、 各ショットにおいて得られる前記負のスクリュ速度の最
   大値を実績値として、（Ｎ＋１）ショット目からは、そ
   の直前のショットから数えて過去Ｎショット分の実績値
   データから平均値及び標準偏差をショット毎に算出し、 算出された標準偏差に対し倍率ｋi を初期設定して（平
   均値−ｋi ×標準偏差）≦実績値≦（平均値＋ｋi ×標
   準偏差）を満足するかの判定をショット毎に行い、満足
   した場合には良品、満足しなければ不良品という判別を
   行いながら、標準偏差に対する最適倍率ｋo を決定し、 以後は、ショット毎に算出された標準偏差に対し最適倍
   率ｋo を設定して（平均値−ｋo ×標準偏差）≦実績値
   ≦（平均値＋ｋo ×標準偏差）を満足するかの判定をシ
   ョット毎に行い、満足した場合には良品、満足しなけれ
   ば不良品という判別を行うことを特徴とする射出成形機
   の製品良否判別方法。
5. 【請求項５】 請求項４記載の製品良否判別方法におい
   て、前記平均値は移動平均値であることを特徴とする射
   出成形機の製品良否判別方法。
6. 【請求項６】 請求項４あるいは５に記載の製品良否判
   別方法において、異なる製品を成形する場合であって以
   前に成形された製品と重量や形状において近い製品であ
   る場合、前記以前に成形された製品の成形時に得られた
   最適倍率ｋoを初期設定の倍率ｋi と設定することを特
   徴とする射出成形機の製品良否判別方法。