JP2002068969A - 抗不安剤 - Google Patents

抗不安剤

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伊藤  裕康
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公代 永野
Hiroko Ouchi
広子 大内
Yoshio Yamakoshi
美穂 山越
Misao Sakaniwa
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 この出願発明は、従来の抗不安薬に代わる新
しい抗不安薬を提供することを課題とする。 【解決手段】 この出願発明は、フェネチルアルコール
及び/又はシトロネロールを有効成分とする抗不安、緊
張緩和、精神安定剤に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 この出願発明は、不安神経
症等既知の抗不安薬を必要とする精神神経疾患の治療及
び日常におけるストレス軽減、緊張緩和等の、いわゆ
る、安らぎをもたらす薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】 現代の我々を取り巻く急速な環境の変
化は、その適応に困難を伴うことが多く、それがストレ
スとして心身にしばしば歪みをもたらしている。多くの
人々はうまく適応機制を駆使して解消しているが、それ
を行い得なかった一部の人々はノイローゼや心身症とな
る。近年、精神科領域は言うに及ばず他科領域において
もそれらの患者が増加している。その治療について、精
神療法による心理学的接近とともに、薬物療法による生
物学的接近も現在では非常に重要なものとなってきてい
る。1957年ベンゾジアゼピン系化合物であるクロル
ジアセポキシド及びジアゼパムが開発され、それらは抗
不安薬として位置づけられた。その後抗不安薬開発は目
覚ましい発展を遂げ、今や多くの有用性の高い薬物が日
常臨床で広く使用されている。しかし、今まで開発され
てきたベンゾジアゼピン系抗不安薬は優れた抗不安作用
を示すと同時に、鎮静、筋弛緩、催眠及びアルコールに
よる増強など種々の作用を持っており、それが眠気、ふ
らつき、注意力散漫、アルコール併用による障害等の副
作用として現れ、さらに長期使用の場合には薬物中断時
の身体依存に基づく退薬症候群や乱用の問題も生じてき
た。そこで従来の抗不安薬が持ついろいろな欠点を解消
するために、最近では選択的に不安に作用する薬物の開
発が試みられているが、ベンゾジアゼピン系抗不安薬に
代わるものは未だ開発されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】 現代におけるストレ
ス過多の環境はノイローゼや心身症等抗不安薬を必要と
する疾病を増加させている。しかし、従来のベンゾジア
ゼピン系抗不安薬にはいろいろな短所があるという問題
がある。この出願の発明は、従来の抗不安薬に代わる新
しい抗不安薬を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】 この出願発明は、フェ
ネチルアルコール及び/又はシトロネロールを有効成分
とする抗不安、緊張緩和、精神安定剤、あるいは、バラ
の精油を有効成分とする抗不安、緊張緩和、精神安定剤
に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】 この出願発明のフェネチルアル
コールとシトロネロールはバラの花から得られた精油に
含まれる主要成分であり、つぎに示す化学構造を有して
いる。
【0006】
【化1】
【0007】
【化2】
【0008】この出願発明の薬剤は、内服薬、注射薬、
貼付薬、座薬、吸入薬として使用される。注射薬は、筋
肉注射、皮内注射、皮下注射、静脈注射等によって体内
に注入される。また、貼付薬は、従来使用されている膏
体に混合することにより体内に吸収させる。座薬は、従
来使用されているカカオ脂、グリセロゼラチン、ステア
リン酸ナトリウム、、プロピレングリコールモノステア
レート等に混合することにより体内に吸収させる。吸入
薬は、従来の方法により体内に吸収させるものであっ
て、例えば、水蒸気あるいは空気の中にこの出願発明の
成分を加えることにより鼻孔あるいは口腔より体内に吸
収させる。
【0009】この出願発明のフェネチルアルコール及び
/又はシトロネロールを主成分とする抗不安、緊張緩
和、精神安定剤には、ベンゾジアゼピン系化合物を併用
することができる。また、初期の患者にベンゾジアゼピ
ン系化合物によって投与し、その後この出願発明のフェ
ネチルアルコール及び/又はシトロネロールを主成分と
する抗不安、緊張緩和、精神安定剤を投与してもよい。
【0010】人の抗不安作用の有無を確認するための動
物実験で検討する方法として、コンフリクト試験が広く
用いられている。コンフリクト試験は、さらにゲラー型
とフォーゲル型の2種類がある。ゲラー型コンフリクト
試験とは、実験装置内にあるレバーを押すと餌が与えら
れるようにしマウスにレバー押し行動を行うよう訓練し
た後、餌と同時に電気ショックを与えることにより葛藤
(コンフリクト)状態を設定する方法である。
【0011】充分に訓練をするとマウスは電気ショック
を恐れるために、レバー押し行動を行わなくなる。しか
し、抗不安作用を有する薬物を与えると、そのマウスは
電気ショックにかまわずにレバー押しを行うようにな
る。薬物のこの様な作用をゲラー型コンフリクト試験に
おける抗コンフリクト作用と呼び、人における抗不安作
用を示唆している。
【0012】フォーゲル型コンフリクト試験では、絶水
を施したマウスに水を飲むと電気ショックを与えること
により葛藤(コンフリクト)状態を設定する。抗不安作
用を有する薬物を与えるとそのマウスは電気ショックに
かまわずに水を飲むようになる。この様な作用をフォー
ゲル型コンフリクト試験における抗コンフリクト作用と
呼び、人における抗不安作用を示している。
【0013】ベンゾジアゼピン系抗不安薬の代表である
ジアゼパムをマウスに体重1kg当たり0.5,1あるいは2mg/
kg皮下投与すると、ゲラー型コンフリクト試験において
は、警告期におけるレバー押し頻度が増加する(図1参
照)。なお、各用量について使用した動物は20匹 (N=
20)である。これが抗不安薬が特異的に有する抗不安作
用を反映している、ゲラー型コンフリクト試験における
抗コンフリクト作用である。
【0014】
【実施例】以下、この出願発明を実施例により具体的に
説明するが、この出願発明は、実施例に限られるもので
はない。 実施例1 フェネチルアルコールをオリーブ油に溶解して体重1kg
当たり100, 200, 400mgをマウスに腹腔内投与した。投
与後、ゲラー型コンフリクト試験を実施すると、用量依
存的に抗コンフリクト作用を発現する(図2参照)(N=2
0)。
【0015】実施例2 シトロネロールをオリーブ油に溶解して体重1kg当たり1
00,200,400あるいは600mg をマウスに腹腔内投与した。
投与後、ゲラー型コンフリクト試験を実施すると、用量
依存的に抗コンフリクト作用を発現する(図3参照)。
(N=18)。
【0016】実施例3 フェネチルアルコールを体重1kg 当たり100,200,400あ
るいは800mgを腹腔内投与してフォーゲル型コンフリク
ト試験を実施したところ、ジアゼパムと同様に用量依存
的に飲水によって受ける電気ショックの頻度は増加した
(抗コンフリクト作用(図4))。(N=12)
【0017】実施例4 シトロネロールを体重1kg当たり50,100,200あるいは400
mgを腹腔内投与してフォーゲル型コンフリクト試験を実
施したところ、用量依存的に抗コンフリクト作用が発現
した(図5)。(N=12-18)。従って、本方法によっても
フェネチルアルコールとシトロネロールはジアゼパムと
同様に抗コンフリクト作用を有することが明らかであ
る。
【0018】参考例1 ジアゼパムはベンゾジアゼピン作動薬(アゴニスト)で
あり、その作用はベンゾジアゼピン拮抗薬(アンタゴニ
スト)であるフルマゼニルによって拮抗されることは良
く知られている。それを確かめるために、フォーゲル型
コンフリクト試験におけるジアゼパムの抗コンフリクト
作用に及ぼすフルマゼニルの併用効果を調べた。ジアゼ
パムを体重1kg当たり 0.75 mgを投与すると抗コンフリ
クト作用が発現するが、体重 1kg当たり1mgのフルマゼ
ニルと体重1kg 当たり 0.75mgのジアゼパムを同時に投
与すると抗コンフリクト作用は観察されない(図6)。
(N=29-30)。すなわちジアゼパムの作用がフルマゼニル
によって拮抗された。
【0019】実施例5 ローズオイルを体重1kg当たり400mg投与すると抗コンフ
リクト作用が発現するが、このローズオイルの抗コンフ
リクト作用は体重1kg 当たり1mgのフルマゼニルを同時
に投与しても変化しない。(図7)。(N=22-23)。すな
わち、ローズオイルの抗コンフリクト作用はフルマゼニ
ルによっては拮抗されないことを示している。従って、
フェネチルアルコールとシトロネロールの抗コンフリク
ト作用の発現機序はジアゼパムのそれと異なることを示
している。つまり、フェネチルアルコールとシトロネロ
ールは従来のベンゾジアゼピン系抗不安薬とは大きく異
なる抗不安薬と成りうる。(図7、8)
【0020】参考例1 もう一つのコンフリクト試験であるフォーゲル型コンフ
リクト試験においては、ジアゼパムをマウスに皮下投与
して試験を実施した。体重当たり 0.375, 0.5,0.75ある
いは 1 mg/kg を投与したところ、飲水によってマウス
が受ける電気ショックの頻度は、用量依存的に増加した
(フォーゲル型コンフリクト試験における抗コンフリク
ト作用、図8)。(N=32-33)この様にフェネチルアルコ
ールとシトロネロールは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬
であるジアゼパムと同様に、動物に注射投与すると2種
類の試験において抗コンフリクト作用を示す。すなわ
ち、この2物質は抗不安作用を有することが明らかであ
る。他方、フェネチルアルコールとシトロネロールはベ
ンゾジアゼピン系抗不安薬とは一線を画するものである
ことも明らかである。
【0021】
【発明の効果】 この出願発明のフェネチルアルコール
とシトロネロールあるいはローズオイルは、抗コンフリ
クト作用を示すので、この出願発明によって、新規の抗
不安薬を提供することができる。しかも、今まで開発さ
れてきたベンゾジアゼピン系抗不安薬は優れた抗不安作
用を示すと同時に、鎮静、筋弛緩、催眠及びアルコール
による増強など種々の作用を持っており、それが眠気、
ふらつき、注意力散漫、アルコール併用による障害等の
副作用として現れ、さらに長期使用の場合には薬物中断
時の身体依存に基づく退薬症候群や乱用の問題も生じて
きたが、この出願発明の薬剤はそれらの問題を解決する
ことができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ジアゼパムをマウスに投与したゲラー型コン
フリクト試験
【図2】 フェネチルアルコールをマウスに投与したゲ
ラー型コンフリクト試験
【図3】 シトロネロールをマウスに投与したゲラー型
コンフリクト試験
【図4】 フェネチルアルコールをマウスに投与したフ
ォーゲル型コンフリクト試験
【図5】 シトロネロールをマウスに投与したフォーゲ
ル型コンフリクト試験
【図6】 フルマゼニルとジアゼパムを同時にマウスに
投与したときのと抗コンフリクト作用
【図7】 ローズオイルとフルマゼニルを同時にマウス
に投与したときの抗コンフリクト作用
【図8】 ジアゼパムをマウスに投与したフォーゲル型
コンフリクト試験における抗コンフリクト作用
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 伊藤 裕康 茨城県つくば市小野川16−2 国立環境研 究所内 (72)発明者 永野 公代 茨城県つくば市小野川16−2 国立環境研 究所内 (72)発明者 大内 広子 宮城県伊具郡丸森町(番地無) (72)発明者 山越 美穂 茨城県稲敷郡江戸崎町沼田2650−155 (72)発明者 坂庭 操 茨城県つくば市天王台1−1−1筑波大学 医療短期大学部内 Fターム(参考) 4C076 AA93 BB25 CC01 4C088 AB51 AC03 BA06 BA18 MA52 MA56 MA59 MA63 MA66 NA14 ZA18 4C206 AA01 AA02 CA08 CA11 MA02 MA04 MA72 MA76 MA79 MA83 MA86 NA14 ZA18

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェネチルアルコール及び/又はシトロ
    ネロールを有効成分とすることを特徴とする抗不安、緊
    張緩和、精神安定剤。
  2. 【請求項2】 ローズオイルを有効成分とすることを特
    徴とする抗不安、緊張緩和、精神安定剤。
  3. 【請求項3】 内服薬であることを特徴とする請求項1
    又は2に記載の抗不安、緊張緩和、精神安定剤。
  4. 【請求項4】 注射薬であることを特徴とする請求項1
    又は2に記載の抗不安、緊張緩和、精神安定剤、
  5. 【請求項5】 皮膚あるいは粘膜からの吸収薬であるこ
    とを特徴とする請求項1又は2に記載の抗不安、緊張緩
    和、精神安定剤。
  6. 【請求項6】 吸入薬であることを特徴とする請求項1
    又は2に記載の抗不安、緊張緩和、精神安定剤。
  7. 【請求項7】 香料であることを特徴とする請求項1又
    は2に記載の抗不安、緊張緩和、精神安定剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2006001186A1 (ja) * 2004-06-23 2006-01-05 Nature Technology Inc. 植物精油成分を有効成分とする抗不安薬用組成物、その組成物を含有する経皮吸収型抗不安薬、及びこれらの製造方法
JP2011098898A (ja) * 2009-11-05 2011-05-19 Nippon Menaade Keshohin Kk オキシトシン産生促進剤

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