JP2002055684A - フィードバック型能動騒音制御装置 - Google Patents

フィードバック型能動騒音制御装置

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JP2002055684A
JP2002055684A JP2000238788A JP2000238788A JP2002055684A JP 2002055684 A JP2002055684 A JP 2002055684A JP 2000238788 A JP2000238788 A JP 2000238788A JP 2000238788 A JP2000238788 A JP 2000238788A JP 2002055684 A JP2002055684 A JP 2002055684A
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noise
signal
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JP2000238788A
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Minoru Kasama
稔 笠間
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Fuji Xerox Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 システムの安定性と、連続した周波数範囲に
おける一様な騒音低減を両立し、かつ系統的な設計が可
能なフィードバック型能動騒音制御装置を提供する。 【解決手段】 騒音源1を、騒音の波長に比べて断面寸
法が十分小さいダクト2で包囲し、さらにダクト2に二
次音を放射する二次音放射スピーカ3と、誤差検知部4
を設ける。誤差検知部4で検知した音圧の信号は、二次
音生成フィルタ5内の定倍信号処理部6で定倍され、反
転部7で反転されて逆特性信号処理部8に入力される。
逆特性信号処理部8は、二次音放射スピーカ3の入力信
号から誤差検知部4の出力信号に至る電気−音響周波数
応答の所定の周波数範囲における最小位相特性の逆特性
に基づいて信号処理を行う。さらに低周波数域通過信号
処理部9で高域周波数成分を低減させ、高周波数域での
位相の遅れによる発振などの危険性を回避し、システム
の安定性を確保している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、騒音と同振幅、逆
位相の二次音を生成し、これを騒音と干渉させて打ち消
すとともに、干渉後の信号をフィードバックして二次音
の生成に用いるフィードバック型能動騒音制御装置に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】騒音を低減するための技術として、騒音
と同振幅、逆位相の二次音を生成して騒音と干渉させ、
騒音を二次音で打ち消して騒音を低減させる技術が研究
されている。このような技術の応用例として、例えば特
開昭63−503186号公報に示されたイヤープロテ
クターに応用された事例、特開平6−343195号公
報に示されたオーディオ用ヘッドホンに応用された事例
等がある。
【0003】図9は、従来のフィードバック型能動騒音
制御装置を用いたヘッドホンの一例を示す概略構成図で
ある。図中、11はヘッドホン、12はダイヤフラム、
13はマイクロホンである。図9に示す例では、ヘッド
ホン11(あるいはイヤープロテクタ)のダイヤフラム
12と外耳道との間に局所的な密閉空間を形成し、この
密閉空間にダイヤフラム12に近接して小型のマイクロ
ホン13を配置している。このマイクロホン13の信号
に電気的な処理Cを加えて、再生されるべき所望の電気
信号と結合する、いわゆるフィードバック回路を形成す
ることにより、外部雑音及び歪みを著しく減少させた出
力音響信号を得ることができる。
【0004】このような構成では、雑音などの外乱入力
をマイクロホン13で集音し、その外乱入力と同振幅、
逆位相の信号を入力信号に重畳し、ダイヤフラム12か
ら二次音として放出する。これによって外乱入力とダイ
ヤフラム12から放出される音とが干渉し、外乱入力を
打ち消すことができる。そのためリスナには、入力信号
の音のみが聞こえることになる。
【0005】図10は、一般的なフィードバックシステ
ムの一例を示すブロック図である。一般にフィードバッ
クシステムには、出力yへの外乱入力dの影響を抑制す
る効果と、出力yに対するシステムの特性変動の影響を
抑制する効果が知られている。これらの効果は、図10
におけるP(s)、C(s)、H(s)を掛け合わせ
た、いわゆる、このフィードバックシステムにおける一
巡伝達特性G0 (s)=P(s)×C(s)×H(s)
のゲイン特性を大きくするほど高くなることが知られて
いる。しかしながら、一巡伝達特性G0 (s)のゲイン
特性をむやみに大きくすると、システム全体の安定性が
損なわれ、発振してしまう危険性が大きくなるので、外
乱抑制効果、パラメータ変動抑制効果と安定性のトレー
ドオフを取りながら、補償要素C(s)とH(s)の特
性を決定する必要がある。
【0006】能動的騒音制御装置としてフィードバック
回路を形成する場合には、さらに二次音を放射するスピ
ーカからマイクロホンなどの誤差検知手段へと音波が到
達するまでにかかる時間遅れが大きな課題となる。時間
遅れ要素は、一般的に周波数領域において 時間遅れ要素=Exp(−jτω) …(1) で表される。ここで、τは遅れ時間を表し、ωは角周波
数を表す。(1)式は実−虚数平面上において半径1の
大きさを持つ円周上を回転する特性を表している。これ
は、フィードバックシステムの安定性を規定するナイキ
ストの安定判別法から考えると、時間遅れ要素が実−虚
数平面上の(−1,0)を通過する周波数においては、
P(s)×C(s)×H(s)のゲインを1.0以上に
することが出来ないことを意味している。すなわち、シ
ステムに含まれる時間遅れが大きいほど、ある周波数範
囲内において、一巡伝達特性が実−虚数平面上の(−
1,0)を通過する回数は多くなり、補償器の設計がよ
り困難になる。これが、フィードバック型の能動騒音制
御装置が局所的な、すなわち時間遅れが極短時間である
空間内の騒音制御に限定されている原因である。
【0007】上述の図9に示したヘッドホンなどのよう
なごく狭い密閉空間においては、ダイヤフラム12から
マイクロホン13までの距離を非常に短くすることがで
き、時間遅れを非常に短時間とすることができる。しか
し、このような用途以外の用途への応用は難しかった。
【0008】近年では、時間遅れに対する安定性と制御
性能を両立する試みが行われている。例えば、日本機械
学会論文集(C編),Vol.62,No.597,範
ほか,「H制御理論を適用した一次元排気ダクト系の
アクティブノイズコントロール」,pp.157−16
2に示されるように、H制御理論を適用した設計事例
がある。また、日本機械学会論文集(C編),Vol.
65,No.637,佐野ほか,「アクティブ騒音制御
のための音響伝達系のモデリングとPIDフィードバッ
ク制御系の設計法に関する研究」,pp.121−12
7に示されるように、化学プラントのような時間遅れが
大きい制御対象に有効なスミス法を、フィードバック補
償回路の設計に適用した事例なども報告されている。
【0009】しかしながら、いずれの場合にもその効果
は狭帯域のダクト内部の共鳴モードに限定されたもの
で、一部の周波数域では増音してしまう部分もある。す
なわち、上述のような遅れ要素によって、フィーバック
系の安定性を保つためにはゲインをトレードオフする必
要がある。広い周波数領域において一様にゲインを下げ
てしまうと、目的の周波数において目的のゲインが得ら
れないことになり、騒音を打ち消す二次音を生成できな
くなってしまう。また、周波数領域ごとにゲインを調整
すると、位相差が発生してしまう。したがって、騒音の
周波数範囲全体として騒音低減効果を得るためには、周
波数領域ごとにゲインや位相差の調整などを実験的に求
めてゆく必要がある。そのため、連続した広範囲の周波
数において一様な騒音低減効果を得ることは、非常に困
難であった。
【0010】また、日本機械学会論文集(C編),Vo
l.61,No.588,範ほか,「フィードバック制
御による一次元排気ダクト系のアクティブノイズコント
ロール」,pp.118−124には、フィードバック
型の能動騒音制御装置の騒音低減効果は、主に二次音を
放射する二次音放射スピーカの動特性に支配されている
ことも指摘されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した事
情に鑑みてなされたもので、システムの安定性と、連続
した広範囲の周波数における一様な騒音低減を両立し、
かつ系統的なコントローラの設計が可能なフィードバッ
ク型能動騒音制御装置を提供することを目的とするもの
である。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明のフィードバック
型能動騒音制御装置では、消音すべき騒音の波長に比べ
て断面寸法が十分小さい一次元のダクトにより騒音源を
包囲する。このようなダクトでは、騒音の音波は平面波
として扱うことができる。そしてそのダクトに、二次音
を放射する二次音放射スピーカを設けるとともに、二次
音放射スピーカよりも前記騒音源から遠い位置に、二次
音放射スピーカから放射される二次音と騒音が干渉して
生成される合成波の音圧を検知する誤差検知手段を設け
る。さらに二次音生成フィルタによって、誤差検知手段
が検知した音圧に電気的な信号処理を施して二次音用の
信号を生成し、二次音放射スピーカに出力する。このよ
うにしてフィードバック回路を構成している。
【0013】このようなフィードバック回路において、
所定の周波数範囲で一様な騒音低減効果を得るために
は、所定の周波数範囲においてフィードバック回路の一
巡伝達特性G0 (s)の振幅特性が一定であればよい。
しかしながら、G0 (s)には二次音放射スピーカの入
力信号から誤差検知手段までの周波数応答特性P(s)
が含まれているため、その振幅特性は一定とはならな
い。一般的には、P(s)の逆特性(振幅特性を逆数
に、位相特性の正負符号変換をかけたもの)を乗ずれ
ば、G0 (s)の振幅特性を一定にすることが出来る。
しかし、P(s)にはスピーカから放射された音波が、
誤差検知手段に到達するまでの時間遅れが含まれてい
る。すなわち、P(s)を求めるには、誤差検知手段で
得られた信号を利用する場合、誤差検知手段に音が到達
した時点における二次音放射スピーカのコーン表面にお
ける騒音を含む音の信号が必要となる。この二次音放射
スピーカのコーン表面における騒音を含む音の信号は、
誤差検知手段においては未来において検知する音の信号
であるため、P(s)の逆特性を求めるには誤差検知手
段による検知信号の未来値を必要としてしまうことにな
り、実現することが出来ない。
【0014】そこで、まずP(s)の動特性を、所定の
周波数範囲で遅れ成分を含まない最小位相部分Pmin
(s)とそれ以外の部分に分離し、このPmin(s)
の逆特性を有するように二次音生成フィルタを設計す
る。これによって、フィードバック回路の一巡伝達特性
0 (s)は所定の周波数範囲において一定のゲインを
持つことになるため、一様な騒音の低減効果を得ること
ができるようになる。またこのようなフィルタは、二次
音放射スピーカの特性などから容易に設計することがで
き、実験的な試行錯誤を繰り返さなくても実現可能であ
る。
【0015】しかし、このままでは高域の周波数成分に
おいては遅れの影響によって位相差が大きくなり、騒音
を消去できないばかりか、フィードバック系が不安定に
なる恐れがある。そのため、高域周波数成分については
ゲインを低減し、位相差が大きくなる高域の周波数成分
による影響を抑制する。これによってフィードバック系
が発振する等の危険性を回避し、安定した騒音の制御を
行うことが可能になる。なお、騒音の高域周波数成分に
ついては、別途、吸音材などで対応すればよい。
【0016】上述のような二次音生成フィルタは、例え
ば、誤差検知手段で検知した音圧の電気信号を定数倍す
る定倍信号処理手段と、その定倍信号処理手段からの出
力信号を反転する反転手段と、反転手段からの出力信号
に対して信号処理を行う逆特性信号処理手段と、逆特性
信号処理手段の出力信号のうち高域周波数成分を低減す
る低周波数域通過信号処理手段とから構成することがで
きる。逆特性信号処理手段は、上述のように二次音放射
スピーカの入力信号から誤差検知手段の出力信号に至る
電気−音響周波数応答の振幅特性と所定の周波数範囲内
において逆数の関係となる振幅特性を有しているIIR
デジタルフィルタによって構成することができる。この
とき用いるIIRデジタルフィルタは、その分子多項式
は電気−音響周波数応答特性をIIRデジタルフィルタ
としてモデル化した場合の分母多項式に一致させる。ま
た分母多項式は、電気−音響周波数応答特性をIIRデ
ジタルフィルタとしてモデル化した場合の分子多項式の
特性根の中で、特性根の大きさが1.0を越えるものに
ついてはその逆数となる特性根を与え、大きさが1.0
を越えない特性根については同一のものを持つような多
項式に一致させる。
【0017】このような特性のIIRデジタルフィルタ
では、分母多項式中の特性根がすべて1.0を超えない
ため、遅れ成分がなければ安定している。また、このI
IRデジタルフィルタでは、電気−音響周波数応答特性
をIIRデジタルフィルタとしてモデル化した場合の分
子多項式の特性根の中で、特性根の大きさが1.0を越
えるものについてはその逆数となる特性根を与えてい
る。このように逆数となる特性根を与えた場合、ゲイン
については補償される。また、位相については遅れ成分
を除いた最小位相特性となる。
【0018】このようなIIRデジタルフィルタは、二
次音放射スピーカの入力信号から誤差検知手段の出力信
号に至る電気−音響周波数応答の所定の周波数範囲にお
ける最小位相特性の逆特性を有しており、最小位相特性
における二次音の信号を生成することができる。このま
までは遅れ成分によって周波数が高くなるほど位相差が
大きくなるので、低周波数域通過信号処理手段によっ
て、逆特性信号処理手段の出力信号のうち高域周波数成
分を低減して、高域周波数成分によってフィードバック
回路が不安定になるのを防いでいる。
【0019】
【発明の実施の形態】図1は、本発明のフィードバック
型能動騒音制御装置の実施の一形態を示すブロック図で
ある。図中、1は騒音源、2はダクト、3は二次音放射
スピーカ、4は誤差検知部、5は二次音生成フィルタ、
6は定倍信号処理部、7は反転部、8は逆特性信号処理
部、9は低周波数域通過信号処理部である。
【0020】ダクト2は、騒音源1の周囲を囲むように
形成し、その断面の最長の長さは発生する騒音の波長に
比して十分短いものとする。このような構成のダクトで
は、騒音源1から放射される騒音は平面波として近似す
ることができる。
【0021】また、騒音源1から見てダクト2の出口側
の位置に、二次音を放射する二次音放射スピーカ3が配
置されている。この二次音放射スピーカ3からダクト2
出口までの距離は二次音放射スピーカ3から発生する音
波が平面波として近似できる程度の長さ(数cm程度)
があればよい。上述のようにダクト2の断面の最長の長
さを騒音波長よりも十分小さくしていることによって、
ダクト2の内部の音波は全て平面波として扱うことが可
能になるため、二次音放射スピーカ3近傍で実現された
消音効果は、ダクト2の断面内で一様に得ることができ
る。
【0022】この二次音放射スピーカ3の近傍には誤差
検知部4が設置されている。誤差検知部4は、騒音源1
からの騒音と二次音放射スピーカ3からの二次音が干渉
した合成音の音圧を検出する。例えばマイクロホンなど
を含んで構成される。
【0023】誤差検出部4の後段には二次音生成フィル
タ5が配置されている。この二次音生成フィルタ5は、
定倍信号処理部6と、反転部7と、逆特性信号処理部8
と、低周波数域通過信号処理部9とからなっている。定
倍信号処理部6は、誤差検知手段の信号を定数倍する。
反転部7は、定倍信号処理部6からの出力信号を反転す
る。逆特性信号処理部8は、二次音放射スピーカ3の入
力信号から誤差検知部4の出力信号に至る電気−音響周
波数応答の振幅特性と、所定の周波数範囲内における最
小位相特性の逆数の関係となる振幅特性を有し、反転部
7で反転した出力信号に対して信号処理を行う。この逆
特性信号処理部8は、例えば後述するようなIIRデジ
タルフィルタなどによって構成することができる。低周
波数域通過信号処理部9は、逆特性信号処理部8の出力
信号のうち高域周波数成分を低減させる。
【0024】このような構成の二次音生成フィルタ5に
よって、誤差検知部4で検知した信号は定倍信号処理部
6にて定数倍され、さらに反転部7にて−1を乗じられ
て反転され、逆特性信号処理部8に送られる。逆特性信
号処理部8において上述のような特性に応じた信号処理
を施し、低周波数域通過信号処理部9において高域周波
数成分を低減させる。そして、低周波数域通過信号処理
部9の出力信号によって二次音放射スピーカ3を駆動し
て二次音をダクト2内に放射させる。
【0025】ここで、逆特性信号処理部8の実現方法に
ついて以下に詳述する。まず、二次音放射スピーカ3の
入力信号から誤差検知部4の出力信号に至る電気−音響
周波数応答をFFTアナライザなどを用いて測定する。
図2は、二次音放射スピーカ3の入力信号から誤差検知
部4の出力信号に至る電気−音響周波数応答の一例を示
すグラフである。図2に示す周波数応答特性において、
例えば100数十Hzの周波数においてゲインのピーク
があり、また位相は180度反転している。このような
ゲインの大きなピークは、二次音放射スピーカ3の特性
として現れる場合が多い。図2(A)に示すようなゲイ
ン特性が得られた場合、基本的にはこの逆特性を用いた
信号を生成し、干渉させれば騒音は消去できる。しかし
上述のように、フィードバック系の安定性を確保するた
めには、位相が反転するような周波数においてゲインを
1以上にすることができない。すなわち、位相が180
度反転しているような特性を有していると、その周波数
の二次音を放射した場合、騒音を強めるように作用し、
発振してしまう恐れがある。しかし、このような大きな
ゲインのピークを1以下に抑え、すべての周波数域で一
律にゲインを下げると、目標とする騒音の周波数におい
ても所望のゲインが得られなくなってしまう可能性があ
る。
【0026】図2に示したような二次音放射スピーカ3
の入力信号から誤差検知部4の出力信号に至る電気−音
響周波数応答においては、二次音放射スピーカ3から放
射された音が、誤差検知部4に到達するまでの遅れ成分
を含んでいる。そのため、特に図2(B)に示す位相特
性においては大きな変化を示している。本発明では、こ
のような位相特性に大きな影響を及ぼしている遅れ成分
を除く最小位相特性において信号処理を行うように、逆
特性信号処理部8を構成する。
【0027】図2に示すように二次音放射スピーカ3の
入力信号から誤差検知部4の出力信号に至る電気−音響
周波数応答が得られたら、その周波数応答特性をIIR
デジタルフィルタの形に数値モデル化する。図2に示す
周波数応答特性をIIRデジタルモデルに表すと12次
のモデルとして表すことができる。
【0028】一般的にIIRデジタルモデルは、
【数1】 のように分子多項式と分母多項式の比(分数式)によっ
て表される。この式のうち、分子多項式の特性根を「零
点」、分母多項式の特性根を「極」と呼び、デジタルフ
ィルタの特性を決定づける重要な要素として知られてい
る。また、これらの「零点」、及び「極」の大きさが
1.0を越える場合に、それぞれ「不安定零点」、「不
安定極」と呼ぶ。特に「不安定極」が1つでも存在する
場合には、そのデジタルフィルタの出力は発散してしま
うことが知られている。
【0029】図3は、二次音放射スピーカ3の入力信号
から誤差検知部4の出力信号に至る電気−音響周波数応
答特性をIIRデジタルモデルとして表した場合の極及
び零点の分布図である。図2に示す二次音放射スピーカ
3の入力信号から誤差検知部4の出力信号に至る電気−
音響周波数応答から得られたIIRデジタルモデルにお
ける極及び零点を求め、実数−虚数平面上にプロットす
ると図3のようになる。図3において、黒い菱形で示し
た点は極を、黒い三角で示した点は零点を示している。
図3を参照して分かるように、極は全て半径1.0の原
点を中心とする単位円内に存在していることが分かる。
しかし、零点の方は座標(1.01,0)と座標(5.
98,0)に不安定零点が存在していることがわかる。
【0030】このIIRデジタルモデルにおいては、不
安定極が存在していないので安定している。しかし、実
際に騒音を打ち消す二次音を生成するためには、二次音
放射スピーカ3の入力信号から誤差検知部4の出力信号
に至る電気−音響周波数応答の逆特性が必要である。す
なわち、上述のIIRデジタルモデルにおける分母多項
式と分子多項式を入れ替えた逆IIRデジタルモデルが
必要となる。このとき、単純に分母多項式と分子多項式
を入れ替えただけの逆IIRデジタルモデルにおいて
は、もとのIIRデジタルモデルにおける不安定零点が
不安定極となるため、発散してしまうことになる。
【0031】そこで、上述のIIRデジタルモデルにお
いて、分子多項式の特性根の中で、その大きさが1.0
を越えるものについては、その逆数となる特性根を与
え、大きさが1.0を越えない特性根については同一の
ものを持つような多項式に一致するように、新たなII
Rデジタルモデルを設計する。すなわち、図3に示した
不安定零点(1.01,0)は(0.99,0)に、不
安定零点(5.98,0)は(0.167,0)とした
分子多項式を求める。図4は、新たなIIRデジタルモ
デルにおける極及び零点の分布図である。図中の点の表
現は図3と同様である。上述のような不安定零点につい
てはその逆数となる特性根を与えることによって、新た
なIIRデジタルモデルの零点は図4に示すように全て
単位円内に存在するようになる。
【0032】上述のように不安定零点について、その逆
数となる特性根を与える変換操作によって、元のIIR
デジタルモデルの周波数応答特性のうち、周波数に対す
る振幅特性はそのまま新たなIIRデジタルモデルに保
存される。また、位相特性については、元のIIRデジ
タルモデルの位相特性から時間遅れ分を除いた、いわゆ
る「最小位相特性」として実現される。このように、二
次音放射スピーカ3の入力信号から誤差検知部4の出力
信号に至る電気−音響周波数応答から求めた元のIIR
デジタルモデルにおいて、その分子多項式の不安定零点
についてその逆数となる特性根を与えるという、簡単な
操作によって、時間遅れ成分を除いた最小位相特性が得
られることになる。
【0033】上述のようにして得られた新たなIIRデ
ジタルモデルの分子多項式と分母多項式を入れ替えて作
成される逆IIRデジタルモデルは、不安定極を有して
おらず、安定している。また、この逆IIRデジタルモ
デルにおいては、未来値を必要とすることなく信号を処
理することができる。逆特性信号処理部8として、この
ような逆IIRデジタルモデルを実現したIIRデジタ
ルフィルタによって構成することができる。
【0034】このように実現された逆特性信号処理部8
と二次音放射スピーカ3を結合した部分の周波数応答と
して、振幅特性が所定の周波数領域で1.0、位相は周
波数が高くなるにつれて位相角度が遅れていく時間遅れ
成分が残る。これは、逆特性信号処理部8において最小
位相特性と時間遅れ成分を分離し、最小位相特性につい
て信号処理を行っているため、時間遅れ成分については
そのまま残ってしまうためである。
【0035】例えば、二次音放射スピーカ3から誤差検
知部4までの距離を3cm程度にしておけば、1kHz
における位相の遅れは36度に抑制することができる
が、5000Hzで位相は180度付近に達し、システ
ムとして不安定になってしまう。しかしながら、500
0Hzの高周波数領域においては、このような能動的騒
音制御よりも遮音材や吸音材などを使った受動的騒音低
減手法の方が効果的である。そこで、本発明では、高周
波数域においてゲインを抑制する低周波数域通過信号処
理部9を設け、高周波数域では能動的な騒音制御を行わ
ずに受動的騒音低減手法によって騒音を低減することと
している。
【0036】図5は、低周波数域通過信号処理部の周波
数応答特性の一例を示すグラフである。図5(A)はゲ
イン特性を、図5(B)は位相特性をそれぞれ示してい
る。低周波数域通過信号処理部9は、図5(A)に示す
ように、高周波数域においてゲインを低下させている。
これによって、位相差の大きな二次音による発振などを
防止している。なお、低周波数域通過信号処理部9では
位相の調整を行っていないため、図5(B)に示すよう
に、高周波数域において位相は次第に遅れてしまう。も
ちろん、周波数が高くなるに従って位相を進めるように
処理を行い、少しでも位相の遅れを補正するように構成
してもよい。
【0037】図6は、低周波数域通過信号処理部の有無
によるシステムの一巡伝達特性を示すナイキスト線図で
ある。図6に示す例では、定倍信号処理部6において
1.2倍の振幅が与えられている例を示している。この
場合、低周波数域通過信号処理部9を設けない場合に
は、一巡伝達特性は実数軸を通過する際に(−1.0,
0)の点の左側を通過してしまっていた。しかし、低周
波数域通過信号処理部9を設けたことによって、高周波
数域のゲインが抑制され、図6に示すように安定限界値
である(−1,0)の点に対して安定余裕を増やすこと
ができる。これによって、発振の危険性を回避すること
が可能となる。
【0038】以上のように二次音生成フィルタ5を構成
することにより、システムの安定性と、連続した周波数
範囲での騒音低減が可能となる。また、このような二次
音生成フィルタ5を構成する各部は、いずれも二次音放
射スピーカ3の特性が決定されればほぼ一意に決定する
ことが可能であり、従来のように設計者の直感や経験に
頼ること無く設計することができる。この例では二次音
生成フィルタ5を4つの構成要素によって示したが、上
述のような機能を果たすのであればそのうちのいくつか
をまとめて構成することも可能である。
【0039】図7は、従来のフィードバックシステムに
よる騒音低減効果の一例を示すグラフ、図8は、本発明
による騒音低減効果の一例を示すグラフである。図中、
細い実線は消音前のゲインを、太い実線は消音後のゲイ
ンをそれぞれ示している。さらに破線はフィードバック
ゲインを示している。従来のフィードバックシステムで
は、図7に示すように、与えられるフィードバックゲイ
ン(破線)が二次音放射スピーカの特性の影響により周
波数によってばらつきが出ており、低減効果が高い周波
数と増音してしまっている周波数とが混在してしまって
いる。その結果、例えば所定周波数範囲を1kHzとす
ると、1kHz全体の騒音低減量としてみてみた場合、
2dB弱の騒音低減効果しか得られなかった。
【0040】これに対し、本発明による騒音低減では、
図8に破線で示すように全ての周波数にわたって一様な
フィードバックゲインを付加することができる。これに
よって、連続した周波数範囲での騒音低減を実現するこ
とができた。例えば所定周波数範囲を1kHzとする
と、1kHz全体の騒音低減量としても6dBの騒音低
減効果を得ることができた。
【0041】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
のフィードバック型能動騒音制御装置によれば、連続し
た周波数範囲での安定的な消音を可能とすることができ
る。さらにコントローラの設計に試行錯誤的な部分がな
いため、開発コスト、量産コストを大幅に低減すること
が可能である。その結果、低価格で、かつフィードバッ
ク型の利点を活かした極小型の能動騒音制御装置を提供
することができるようになるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のフィードバック型能動騒音制御装置
の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】 二次音放射スピーカの入力信号から誤差検知
部の出力信号に至る電気−音響周波数応答の一例を示す
グラフである。
【図3】 二次音放射スピーカの入力信号から誤差検知
部の出力信号に至る電気−音響周波数応答特性をIIR
デジタルモデルとして表した場合の極及び零点の分布図
である。
【図4】 新たなIIRデジタルモデルにおける極及び
零点の分布図である。
【図5】 低周波数域通過信号処理部の周波数応答特性
の一例を示すグラフである。
【図6】 低周波数域通過信号処理部の有無によるシス
テムの一巡伝達特性を示すナイキスト線図である。
【図7】 従来のフィードバックシステムによる騒音低
減効果の一例を示すグラフである。
【図8】 本発明による騒音低減効果の一例を示すグラ
フである。
【図9】 従来のフィードバック型能動騒音制御装置を
用いたヘッドホンの一例を示す概略構成図である。
【図10】 一般的なフィードバックシステムの一例を
示すブロック図である。
【符号の説明】
1…騒音源、2…ダクト、3…二次音放射スピーカ、4
…誤差検知部、5…二次音生成フィルタ、6…定倍信号
処理部、7…反転部、8…逆特性信号処理部、9…低周
波数域通過信号処理部、11…ヘッドホン、12…ダイ
ヤフラム、13…マイクロホン。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H04R 3/04 101 G10K 11/16 H

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二次音の放射により騒音と干渉させて騒
    音を低減するフィードバック型能動騒音制御装置におい
    て、騒音源を包囲し消音すべき騒音の波長に比べて断面
    寸法が十分小さい一次元のダクトと、該ダクトに設けら
    れ二次音を放射する二次音放射スピーカと、前記二次音
    放射スピーカよりも前記騒音源から遠い位置に設置され
    前記二次音放射スピーカから放射される二次音と騒音が
    干渉して生成される合成波の音圧を検知する誤差検知手
    段と、該誤差検知手段が検知した音圧に電気的な信号処
    理を施して前記二次音用の信号を生成して該二次音放射
    スピーカに出力する二次音生成フィルタを有し、該二次
    音生成フィルタは、前記二次音放射スピーカの入力信号
    から前記誤差検知手段の出力信号に至る電気−音響周波
    数応答の所定の周波数範囲における最小位相特性の逆特
    性に基づいて前記誤差検知手段から出力される電気信号
    に対して信号処理を行うとともに高域周波数成分を低減
    させることを特徴とするフィードバック型能動騒音制御
    装置。
  2. 【請求項2】 前記二次音生成フィルタは、前記誤差検
    知手段で検知した音圧の電気信号を定数倍する定倍信号
    処理手段と、該定倍信号処理手段からの出力信号を反転
    する反転手段と、前記二次音放射スピーカの入力信号か
    ら前記誤差検知手段の出力信号に至る電気−音響周波数
    応答の振幅特性と所定の周波数範囲内において逆数の関
    係となる振幅特性を有し前記反転手段からの出力信号に
    対して信号処理を行う逆特性信号処理手段と、該逆特性
    信号処理手段の出力信号のうち高域周波数成分を低減さ
    せる低周波数域通過信号処理手段とからなり、前記逆特
    性信号処理手段は、IIRデジタルフィルタによって構
    成され、該IIRデジタルフィルタは、その分子多項式
    は前記電気−音響周波数応答特性をIIRデジタルフィ
    ルタとしてモデル化した場合の分母多項式に一致し、か
    つ分母多項式は、前記電気−音響周波数応答特性をII
    Rデジタルフィルタとしてモデル化した場合の分子多項
    式の特性根の中で該特性根の大きさが1.0を越えるも
    のについてはその逆数となる特性根を与え、大きさが
    1.0を越えない特性根については同一のものを持つよ
    うな多項式に一致するように設計されていることを特徴
    とする請求項1に記載のフィードバック型能動騒音制御
    装置。
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