JP2002035180A - ゴルフクラブヘッド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 プレーヤー側の要望や、製造者側の意図に応
じた特性を有し、しかも、製造が容易なゴルフクラブヘ
ッドを提供する。 【解決手段】 ゴルフクラブヘッドＨ１、Ｈ２、Ｈ３、
Ｈ４の少なくとも一部をポーラス金属から形成する。ポ
ーラス金属は、制御可能な空隙率、穴径及び配置形態を
有していることが望ましい。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、従来のウッドクラ
ブヘッドに代わるメタルヘッド、アイアンクラブヘッ
ド、パタークラブヘッド等のゴルフクラブヘッドに関す
る。

【０００２】

【従来の技術】一般に、ゴルフクラブヘッドは、各種の
金属から形成されており、近年では、スウィートスポッ
トを広げて、打ち易さを改善すると共に、打球の方向安
定性を高めることが要求されている。このような要求に
応えて、クラブヘッドの肉厚を薄くして、その大型化及
び軽量化を図る技術が提案され、実施されている。この
ような技術によれば、クラブヘッドのある程度の大型化
及び軽量化を図ることはできるが、金属材料の強度には
限界があるため、大型化及び軽量化を現状から飛躍的に
遂げることはできなかった。

【０００３】また、近年では、プレイヤーの好みに応じ
た打球感覚が得られるゴルフクラブヘッドの開発が望ま
れている。この種のゴルフクラブヘッドに関しては、ク
ラブヘッドの特定の部分、特に、フェースに、特別な反
発係数を有する金属材料を使用する技術が提案されてい
る。しかし、ゴルフクラブヘッドによって得られる打球
感覚は、使用される金属材料の反発係数によって専ら決
定される一方、クラブヘッドとしての使用に適する金属
材料の種類には限りがある。従って、プレイヤーの好み
に応じた打球感覚を得るために、適切な反発係数を有す
る金属材料を選択することは容易ではなかった。

【０００４】更に、打球時における衝撃を適切に吸収す
るゴルフクラブヘッドの開発が望まれている。この種の
ゴルフクラブヘッドに関しては、クラブヘッドの特定の
部分、特に、フェースに制振材料を使用する技術が提案
されている。しかし、上述した打感の改善に関する問題
と同様に、打球時における衝撃の吸収は、使用される金
属材料の制振特性によって専ら決定される一方、クラブ
ヘッドとしての使用に適する金属材料の種類には限りが
ある。従って、適切な制振効果を得るために、適切な制
振特性を有する金属材料を選択することは容易ではなか
った。

【０００５】また、特開平１１−１５１３３０号公報
は、金属粉末射出成形手段によって得られる多孔質構造
をクラブヘッドのフェースに適用することを開示してい
る（以下、「先行技術」という）。

【０００６】先行技術によれば、打球感覚や打球音をあ
る程度改善することができる。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、先行技
術においては、クラブヘッドのフェースに適用された多
孔質構造は、金属粉末射出成形手段によって得られるた
め、穴径を厳密に制御することはできない。その結果、
得られた多孔質構造の穴径において著しいバラツキを生
じ、しかも、任意の配置形態、特に、規則正しい配置構
造を得ることはできない。そのため、フェース等に強度
の不均一を発生する問題があった。従って、ゴルフクラ
ブヘッドの少なくとも一部として使用される材料とし
て、意図された適切な特性を有する素材を画一的に得る
ことはできず、プレーヤー側の要望や、製造者側の意図
に応じた特性を有するゴルフクラブヘッドを製造するこ
とは困難であった。

【０００８】本発明の目的は、プレーヤー側の要望や、
製造者側の意図に応じた特性を有し、しかも、製造が容
易なゴルフクラブヘッドを提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ために、請求項１の本発明のゴルフクラブヘッド（Ｈ
１、Ｈ２、Ｈ３、Ｈ４）は、少なくとも一部がポーラス
金属から形成されることを特徴とする。本発明におい
て、ポーラス金属とは、特定のガスを溶解した溶融金属
を一方向凝固させることによって得られた金属であり、
一方向に細長く形成された空隙がその長さ方向と実質的
に直交する方向に整列して配置された金属組織をいう。

【００１０】請求項２の本発明は、請求項１のゴルフク
ラブヘッドにおいて、前記ポーラス金属は、制御可能な
空隙率、穴径及び配置形態を有していることを特徴とす
る。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下、本発明の第１実施形態に係
るゴルフクラブヘッドを、図１及び図２を参照して詳述
する。

【００１２】本発明の第１実施形態に係るゴルフクラブ
ヘッドＨ１は、ソールｓ１と、フェースｆ１と、クラウ
ンｃ１と、ホーゼルｈ１とから、従来のウッドクラブヘ
ッドに変わる中空メタルヘッドとして構成される。

【００１３】ソールｓ１、フェースｆ１、クラウンｃ１
及びホーゼルｈ１の連結方法は、従来の中空メタルヘッ
ドの製造工程において採用された連結方法と同一である
ため、その説明を省略する。

【００１４】ソールｓ１及びホーゼルｈ１は、従来の中
空メタルヘッドのソール及びホーゼルと同一の素材、例
えば、通常のチタン、ステンレス等から形成されてい
る。

【００１５】一方、フェースｆ１及びクラウンｃ１は、
それぞれポーラス金属から形成されている。前記ポーラ
ス金属の製造過程において用いるガスの種類及び圧力並
びに凝固条件は、例えば、特開平１０−８８２５４号で
記載されているポーラス金属の製造方法、並びに特開平
１０−２２７６２４号及び特開平１１−１９８１０９号
として出願されているように、生成すべき気孔の径や分
布密度あるいは金属の種類に応じて選択して用いる。こ
のポーラス金属は、ステンレス、鉄、ニッケル、アルミ
ニウム、銅、マグネシウム、コバルト、タングステン、
マンガン、クロム、ベリリウム、チタン等の金属、又
は、その合金を溶融させ、その中に、水素、窒素、アル
ゴン、ヘリウム等のガスを溶解させて、溶融原料を調製
し、これを一方向凝固させることによって得られる。溶
融原料を一方向凝固させる際、過飽和ガス原子が析出し
て、気泡が生成され、これによって、一方向に細長く伸
びる空隙がその長さ方向と実質的に直交する方向に整列
した状態で形成される。

【００１６】上述したポーラス金属の製造工程におい
て、溶融金属の溶融温度、凝固冷却速度、水素ガス圧
力、水素ガスと窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガ
スとの混合体積比・圧力等を変化させることにより、ポ
ーラス金属の空隙率及び穴径を制御することができる。
また、ポーラス金属の冷却は、水冷部を有するハース、
即ち、鋳型内で行われるが、そのハースにおける水冷部
の位置や、溶融金属の凝固方向を変化させることによ
り、空隙の配置形態を制御することができる。例えば、
水冷部を有するハースに流し込んだ溶融金属を下方か
ら、又は、側面から一方向凝固させると、気泡は、それ
ぞれ、下から上へ向かう一方向性多芯状構造を形成する
方向、又は、円周から中心に向かう放射状構造を形成す
る方向に沿って成長する。ポーラス金属の空隙率として
は、８０％以下であれば自由に設定でき、穴径は５μｍ
から約１０ｍｍの範囲で設定可能である。但し、ゴルフ
クラブとしてのヘッドの剛性、重量バランス及び設計自
由度を考慮した時、空隙率は、３０％から５０％の範囲
が適当である。３０％より少なくなると軽量化の効果が
乏しく、特にパターにおいては、打球感の柔らかさが出
なくなる。また、５０％を超えると強度不足となるおそ
れがある。穴径の範囲については、パターの様に打球感
を求めるクラブでは、２０μｍから１ｍｍが適当であ
り、ウッドやアイアンの様に軽量化を求めるクラブで
は、５０μｍから３ｍｍが適当である。

【００１７】このようにして得られたポーラス金属によ
れば、空隙は実質的に相互に平行に形成されるため、ハ
ニカム構造に類似した構造が得られる。その結果、高い
耐圧縮応力が得られ、軽量化が図られているにも拘わら
ず、金属自身の強度が低下することは実質的にない。し
かも、空隙を形成する工程において、窒素ガスを使用す
れば、窒化処理が容易に行われ、軽量且つ大きな強度を
有するポーラス金属が得られる。従って、クラブヘッド
の更なる軽量化及び大型化が実現できる。また、窒化処
理により、表面硬度が増加し、耐摩耗性が向上する。

【００１８】フェースｆ１用のポーラス金属とクラウン
ｃ１用のポーラス金属とは空隙率において相互に異な
る。例えば、フェースｆ１用として、３０％のポーラス
金属を使用する一方、クラウンｃ１用として、５０％の
空隙率を有するポーラス金属を使用すれば、図２に示す
ように、クラブヘッドの重心Ｇを下方に位置させること
ができる。

【００１９】勿論、フェースｆ１及びクラウンｃ１のた
めのそれぞれのポーラス金属の空隙率は、上述した数値
に限定されるものではなく、クラブヘッドＨ１に要求さ
れる特性に応じて変更される。

【００２０】また、上述した第１実施形態においては、
フェースｆ１及びクラウンｃ１のそれぞれの全体がポー
ラス金属から形成されたものとして説明したが、フェー
スｆ１の一部及び／又はクラウンｃ１の一部のみをポー
ラス金属から形成してもよい。

【００２１】このように、フェースｆ１の少なくとも一
部及び／又はクラウンｃ１の少なくとも一部をポーラス
金属から形成し、その空隙率を適切に設定することによ
り、重心Ｇの位置を任意に設定できる。

【００２２】次に、本発明の第２実施形態に係るゴルフ
クラブヘッドを、図３を参照して詳述する。

【００２３】本発明の第２実施形態に係るゴルフクラブ
ヘッドＨ２もまた、ソールｓ２と、フェースｆ２と、ク
ラウンｃ２と、ホーゼルｈ２とから、従来のウッドクラ
ブヘッドに変わる中空メタルヘッドとして構成される。

【００２４】上述した第１実施形態においては、フェー
スｆ１用のポーラス金属とクラウンｃ１用のポーラス金
属とは空隙率において相互に異なるが、第２実施形態に
おいては、フェースｆ２用のポーラス金属及びクラウン
ｃ２用のポーラス金属は相互に同一の空隙率を有してい
る。例えば、フェースｆ２及びクラウンｃ２の双方に５
０％の空隙率を有するポーラス金属を使用すれば、ゴル
フクラブヘッドＨ２全体の軽量化を図ることができる。
勿論、このポーラス金属の空隙率は、上述した数値に限
定されるものではなく、クラブヘッドＨ２に要求される
特性に応じて変更される。

【００２５】その他のゴルフクラブヘッドの基本的な構
造は第１実施形態に係るゴルフクラブヘッドと同一であ
るため、その説明を省略する。

【００２６】尚、上述した第２実施形態において、フェ
ースｆ２及びクラウンｃ２のみならず、ソールｓ２も同
一のポーラス金属から形成してもよい。

【００２７】次に、本発明の第３実施形態に係るゴルフ
クラブヘッドを、図４及び図５を参照して詳述する。

【００２８】本発明の第３実施形態に係るゴルフクラブ
ヘッドＨ３は、ヘッド本体ｍ３と、フェースｆ３とか
ら、パターヘッドとして構成される。

【００２９】ヘッド本体ｍ３は、ステンレス、鉄、ニッ
ケル、アルミニウム、銅、マグネシウム、コバルト、タ
ングステン、マンガン、クロム、ベリリウム、チタン等
の金属、又は、その合金から形成されている。ヘッド本
体ｍ３の上部において、ヒール側に偏った位置には、シ
ャフトを取り付けるための穴ｈ３が形成されている。

【００３０】フェースｆ３は、ヘッド本体ｍ３の前方面
に溶接、接着、圧入及びねじ止め等の固定手段によって
取り付けられている。フェースｆ３は、第１及び第２実
施形態におけると同一のポーラス金属から形成されてい
る。図５から明らかなように、フェースｆ３を形成する
ポーラス金属の空隙は、フェースｆ３の前方に向けて開
口されている。

【００３１】このようにポーラス金属から形成されたフ
ェースｆ３により、任意の打球感覚が得られる。例え
ば、フェースｆ３を形成するポーラス金属の空隙率を約
５０％に設定すれば、よりソフトな打球感覚が得られ
る。一方、ポーラス金属の空隙率を約３０％に設定すれ
ば、上述した打球感覚と従来のパターヘッドによる打球
感覚との中間に位置する打球感覚が得られる。勿論、こ
のポーラス金属の空隙率は、上述した数値に限定される
ものではなく、パターヘッドＨ３に要求される特性に応
じて変更される。

【００３２】次に、本発明の第４実施形態に係るゴルフ
クラブヘッドを、図６を参照して詳述する。

【００３３】本発明の第４実施形態に係るゴルフクラブ
ヘッドＨ４は、ヘッド本体ｍ４と、フェースｆ４とか
ら、アイアンクラブヘッドとして構成される。

【００３４】ヘッド本体ｍ４は、ステンレス、鉄、ニッ
ケル、アルミニウム、銅、マグネシウム、コバルト、タ
ングステン、マンガン、クロム、ベリリウム、チタン等
の金属、又は、その合金から形成されている。ヘッド本
体ｍ４は、そのヒール側端部にホーゼルｈ４を有してお
り、下端にソールｓ４を有している。

【００３５】フェースｆ４は、ヘッド本体ｍ４の前方面
にカシメ、圧入等の固定手段によって取り付けられてい
る。フェースｆ４は、第１乃至第３実施形態におけると
同一のポーラス金属から形成されている。図６及び図７
から明らかなように、フェースｆ４を形成するポーラス
金属の空隙は、フェースｆ４の前方に向けて開口されて
いる。また、図８に示すように、ポーラス金属の空隙
を、フェースｆ４の裏側で後方に向けて開口させても良
い。

【００３６】このようにポーラス金属から形成されたフ
ェースｆ４により、任意の打球感覚が得られると同時
に、非常に大きな内部摩擦を有する制振構造が得られ
る。従って、打球時の衝撃を効果的に吸収でき、打球の
飛距離調整が容易になる。ポーラス金属の空隙率は、要
求される打球感覚及び制振特性に応じて、設定される。

【００３７】

【発明の効果】請求項１の本発明のゴルフクラブヘッド
によれば、少なくとも一部がポーラス金属から形成され
ているので、従来のゴルフクラブヘッドにおける金属と
同一の金属をポーラス金属の原料として使用し、その空
隙率を制御することにより、軽量化が図れ、従来では不
可能であったクラブヘッドの大型化が実現され、しか
も、このクラブヘッドにプレーヤー側の要望や、製造者
側の意図に応じた特性を付与できる。

【００３８】本発明のゴルフクラブヘッドにおいて、請
求項２に記載したように、ポーラス金属が制御可能な空
隙率、穴径及び配置形態を有していれば、プレーヤーの
ニーズに合わせたゴルフクラブヘッドの製造を容易に行
うことができ、また、ゴルフクラブヘッドの大量生産に
おいて、厳密な特性管理が可能になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施形態に係るゴルフクラブヘッ
ドの正面図

【図２】図１のＩＩ−ＩＩ線断面図

【図３】本発明の第２実施形態に係るゴルフクラブヘッ
ドの断面図

【図４】本発明の第３実施形態に係るゴルフクラブヘッ
ドの平面図

【図５】図４に示したゴルフクラブヘッドの正面図

【図６】本発明の第４実施形態に係るゴルフクラブヘッ
ドの正面図

【図７】図６のＶＩＩ−ＶＩＩ線断面図

【図８】図７のゴルフクラブヘッドの変形例を示す断面
図

【符号の説明】

Ｈ１、Ｈ２、Ｈ３、Ｈ４ ゴルフクラブヘッド ｓ１、ｓ２、ｓ４ ソール ｆ１、ｆ２、ｆ３、ｆ４ フェース ｃ１、ｃ２ クラウン ｈ１、ｈ２、ｈ４ ホーゼル ｍ３、ｍ４ ヘッド本体

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 持田 泰 広島県府中市目崎町762番地 リョービ株 式会社内 (72)発明者 石川 宏 東京都千代田区外神田３丁目15番１号 リ ョービ株式会社東京本社内 (72)発明者 坪井 均 東京都千代田区外神田３丁目15番１号 リ ョービ株式会社東京本社内 (72)発明者 中嶋 英雄 大阪府高槻市日吉台五番町６番40号 Ｆターム(参考） 2C002 AA02 AA03 AA04 CH01 CH06 MM04

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも一部がポーラス金属から形成
   されることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
2. 【請求項２】 前記ポーラス金属は、制御可能な空隙
   率、穴径及び配置形態を有していることを特徴とする請
   求項１に記載のゴルフクラブヘッド。