JP2002020854A - 板状部材でなる成形体およびその製造方法 - Google Patents

板状部材でなる成形体およびその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 テイラード・ブランク法を適用して、板状素
材の歩留まりの向上を図るとともに、一つの部材中に他
の部分に比して強度が十分に高い部分を有する成形体が
確実に得られるようにする。 【解決手段】 所定の仕様について互いに異なる特性を
有する第1板状部材と第2板状部材とを接合して予備成
形体を形成する工程と、上記予備成形体に塑性加工を施
して所定形状の成形体を形成する工程と、熱処理により
上記成形体の特定部位を硬化させる工程とを備えたこと
を特徴とし、また、上記第1板状部材と第2板状部材の
上記塑性加工前における伸び特性の差が所定範囲内に設
定されていることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば自動車等
の車両の車体用のパネル部材や構造部材などのような、
板状部材でなる成形体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に良く知られているように、近年、
自動車等の車両については、車両運行上の経済性向上の
要求に加えて環境問題の観点から燃費性能の向上が強く
求められており、特に、車両重量の大部分を占める車体
について、より一層の軽量化が要求されている。一方、
車両衝突時における乗員保護性能を維持・向上させるた
めには、一定以上の車体強度および車体剛性を確保する
必要がある。このように、自動車の車体には、衝突時の
安全性向上のための車体強度および剛性の確保と燃費性
能向上のための軽量化とを、両立して達成することが求
められている。
【0003】周知のように、車両衝突時の乗員保護性能
を高めるためには、車体のパネル部材や構造部材の形成
に用いる鋼板自体を高強度化するか、若しくは鋼板の板
厚を増したり補強部材を追加的に設けて構造上の強化を
図る必要がある。これらの方法のうち、前者の方法(鋼
板自体の高強度化)については、鋼板のプレス成形等の
塑性加工性確保上の制約から、通常、引張強さ440M
Pa(メガパスカル)クラス(所謂、440MPa鋼板
で、規格上の引張強さの最低値が440MPaに規定さ
れており、実際上は、440〜約500MPa程度の範
囲の引張強さを有している。)までの鋼板しか適用でき
ず、それ以上の高強度の鋼板では成形が極めて困難であ
ることが知られている。しかしながら、上記程度(略5
00MPa以下)の引張強さでは、高強度な鋼板を用い
て薄肉化を図るにしても、車体の軽量化や製造コストの
低減等に関して十分な効果を達成することは難しい。
【0004】ところで、鋼素材に対する熱処理の一種と
して、窒化元素を含有した鋼素材(所謂、窒化鋼)に所
定の熱処理(窒化処理)を施すことによって、内部が比
較的柔らかく表面部分およびその近傍の硬度が非常に高
い鋼部材が得られることは、従来、公知である。この窒
化処理は、本来、部材内部の硬度上昇を抑制しその靭性
を確保した上で表面部の耐摩耗性向上を図るものであ
り、部材全体としての強度向上を目的としたものではな
いのであるが、近年では、車体の軽量化と強度・剛性の
確保とを両立させる観点から、かかる窒化処理を含む表
面熱処理技術を自動車の構造用部材や補強部材などに適
用することが考えられている。例えば、特開平11−2
79685号公報では、衝撃吸収性に優れた高強度プレ
ス成形体を寸法良く且つ低コストで製造することを目的
にして、特定組成の窒化鋼板をプレス加工した後に窒化
処理を施すことが開示されている。
【0005】しかしながら、この従来技術では、たとえ
窒化鋼板をプレス加工した後に窒化処理を施すことによ
り、プレス成形性を確保した上で鋼板自体の高強度化を
図っても、実際には、窒化処理後に得られる強度(引張
強さ)が最高でも700MPa程度と、なお十分ではな
いため、車体の軽量化や製造コストの低減等に関して余
り大きな効果を得ることはできない。
【0006】ところで、鋼板自体の高強度化による(つ
まり、鋼板素材の薄肉化による)車体の軽量化を検討す
る場合、車体構造上、強度だけでなく剛性の確保が重視
される(換言すれば、車体全体の剛性に対する寄与度が
高い)部分については、鋼板自体を高強度化してその強
度を確保したとしても、板厚を薄くすることは剛性確保
上不利になるので、一般的には薄肉化による軽量化の対
象とすることは好ましくなく、車体全体の剛性に対する
寄与度が比較的低くて、且つ、一定以上の強度保持が求
められる部分について、その適用が検討されるべきであ
る。
【0007】また、逆に、車体のパネル部材や構造部材
の形成に用いる鋼板の板厚を増し構造的に強化すること
によって車両衝突時における乗員保護性能の向上を図る
場合、車体全体の剛性に対する寄与度が低い部分につい
てまで板厚を大きくすることは、車体の軽量化および製
造コストを抑制する上で好ましくない。このような観点
から、本来一つのプレス成形体として得られるべき車体
用のパネル部材や構造部材でも、その部分によって異な
る特性を備えることが望まれる場合が少なくない。
【0008】このような要請に関連して、一つの部材中
に他の部分と異なる特性を持った部分を形成する方法と
して、所謂、テイラード・ブランク法が知られている。
このテイラード・ブランク法は、所定の仕様(例えば、
板厚や熱処理特性など)について異なる特性を有するブ
ランク材(板状部材)どうしを、例えば溶接等で接合し
て1枚物の板材(予備成形体)とし、この予備成形体に
プレス等の塑性加工を施して成形体を得るものである。
【0009】この方法を採用することにより、一般に材
料歩留まりの向上が図れるとともに、素材に用いたブラ
ンク材の特性に応じて、特定の仕様に関して、一つの部
材中に他の部分と異なる特性を持った部分を有する成形
体を得ることができる。従って、このテイラード・ブラ
ンク法を自動車の車体の製造に適用することにより、鋼
板材料の歩留まりの向上を図ることができるとともに、
車体の一部を構成する一つの部材について、他の部分と
異なる特性を持った部分を形成することができ、両部分
それぞれが備えるべき特性(例えば、強度,剛性,耐食
性などの特性)並びに車体の軽量化および製造コストの
低減効果を考慮して、鋼板素材の材質,板厚,熱処理特
性,表面処理等の仕様をそれぞれ最適に設定することが
可能になる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来で
は、このテイラード・ブランク法を適用して、他の部分
に比して高強度の部分を有する成形体を製作しようとし
た場合、前述のように、鋼板のプレス成形性確保上の制
約から、引張強さ440MPaクラスまでの鋼板しか適
用できないので、利用範囲が限られ、やはり、車体の軽
量化や製造コストの低減等に関して十分な効果を達成す
ることは難しい。特に、ブランク材どうしを溶接接合し
て塑性加工を行うので、引張強さの大きい素材を用いた
場合には、両ブランク材の機械的特性が大きく異なるこ
とに起因して、この接合部で亀裂・割れ等の不具合が発
生し易く、適用範囲が限られる大きな要因となってい
た。
【0011】そこで、この発明は、テイラード・ブラン
ク法を適用して、板状素材の歩留まりの向上を図るとと
もに、一つの部材中に他の部分に比して強度が十分に高
い部分を有する成形体が確実に得られるようにすること
を基本的な目的としてなされたものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本願発明者らは、テイラ
ード・ブランク法を自動車の車体の製造に適用すること
について鋭意研究および開発を重ねる中で、溶接等で接
合されるブランク材どうしの機械的性質に関し、両者の
伸び特性の差がある程度以上小さく、略同等に近い場合
には、接合後の塑性加工時に亀裂や割れ等の不具合が生
じ難くなることを見出した。
【0013】また、上述のように鋼板自体の高強度化に
よって車体の軽量化や製造コストの低減を図る場合、一
般に、達成される鋼板強度に応じてその効果(特に経済
的効果)に差が出るものであるが、本願発明者らは、図
5に示すように、特定の(1000MPa程度の)引張
強さ値を境にして、得られる経済的効果に著しい差異が
生じることを見出した。すなわち、鋼板の引張強さが1
000MPa程度未満の場合には、引張強さの向上に応
じて車体鋼板の板厚を薄く設定できることによる効果が
得られるだけであるが、鋼板の引張強さが1000MP
a程度以上になると、板厚を薄くできるだけでなく、補
強部材を不要にすることが可能になり、当該補強部材の
削減に伴なって、車体重量の削減や材料費の低減はもと
より、当該部材のための金型費用や組付工数も不要とな
るので、得られる経済効果が著しく大きくなるのであ
る。
【0014】更に、本願発明者らは、この窒化処理技術
の車体鋼板への適用についての研究開発を進める過程
で、窒化処理を施した鋼板の硬度は、鋼板素材自体の違
いや処理条件の違いに応じて、その板厚方向に種々の分
布を有することとなるのであるが、その平均硬さと引張
強さとの間に高い相関性があり、この板厚方向における
平均硬さを所定値とすることにより、それに対応した所
期の引張強さが得られることを見出した。また、平均硬
さが同じであれば、板材の表面部分(表面およびその近
傍部分)と内部中央との硬度差が大きくなるほど引張強
さや伸び特性が低下し、特に、この硬度差が一定の値を
上回ると、これら引張強さおよび伸び特性が急激に落ち
込むことを見出した。
【0015】そこで、本願の第1の発明に係る板状部材
でなる成形体の製造方法は、所定の仕様について互いに
異なる特性を有する第1板状部材と第2板状部材とを接
合して予備成形体を形成する工程と、上記予備成形体に
塑性加工を施して所定形状の成形体を形成する工程と、
熱処理により上記成形体の特定部位を硬化させる工程と
を備えたことを特徴としたものである。
【0016】また、本願の第2の発明は、上記第1の発
明において、上記第1板状部材と第2板状部材の上記塑
性加工前における伸び特性の差が所定範囲内に設定され
ていることを特徴としたものである。
【0017】更に、本願の第3の発明は、上記第1また
は第2の発明において、上記熱処理が窒化処理であり、
上記第1及び第2の板状部材の少なくともいずれか一方
は、窒化元素として、チタニウム(Ti),ニオブ(N
b),ボロン(B),バナジウム(V),アルミニウム
(Al)の少なくとも1種の元素を所定量含有している
ことを特徴としたものである。
【0018】ここに、チタン(Ti)の含有量としては
0.14重量%以上、ニオブ(Nb)の含有量としては
0.1重量%以下、ボロン(B)の含有量としては0.
005重量%以下、バナジウム(V)の含有量としては
0.1重量%以下、また、アルミニウム(Al)含有量
としては0.06重量%以下であることが、それぞれ好
ましい。
【0019】また、更に、本願の第4の発明は、上記第
3の発明において、上記成形体の特定部位は、板厚方向
における平均硬度がビッカース硬さでHv300以上
で、且つ、表面部分と板厚方向における内部中央との硬
度差がビッカース硬さでHv200以下となるように窒
化処理されることを特徴としたものである。
【0020】ここに、上記成形体の特定部位の板厚方向
における平均硬度の下限値をHv300としたのは、上
述のように、板厚を薄くできるだけでなく補強部材を不
要にでき、車体重量の削減や材料費の低減のみならず当
該部材のための金型費用や組付工数も不要とすることに
よって著しく大きい経済効果を得るためには、鋼板の引
張強さを1000MPa程度以上にする必要があるが、
この引張強さを得るためには上記平均硬度をHv300
以上とする必要があるからである。また、上記成形体の
板材表面部分と板厚方向における内部中央との硬度差の
上限値をHv200としたのは、上述のように、板厚方
向における平均硬さが同じでも、鋼板部材の表面部分
(表面およびその近傍部分)と内部中央との硬度差が大
きくなるほど引張強さや伸び特性が低下するが、この硬
度差がHv200を越えると、これら引張強さおよび伸
び特性の低下度合いが急激なものとなるからである。
【0021】また、更に、本願の第5の発明は、上記第
1〜第4の発明のいずれか一において、上記熱処理前
に、上記成形体の上記特定部位以外の部分にマスキング
処理を施すことを特徴としたものである。
【0022】また、更に、本願の第6の発明は、上記第
1〜第4の発明のいずれか一において、上記成形体の上
記特定部位のみを塩浴槽に浸漬させて硬化熱処理を施す
ことを特徴としたものである。
【0023】また、更に、本願の第7の発明に係る板状
部材でなる成形体は、所定の仕様について互いに異なる
特性を有する板状部材どうしを接合して成る予備成形体
を所定形状に塑性加工し、得られた成形体の特定部位を
熱処理によって硬化させたことを特徴としたものであ
る。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添
付図面を参照しながら詳細に説明する。まず、本実施の
形態に係る成形体の素材として用いられる鋼板素材につ
いて説明する。本実施の形態では、成形体の素材鋼板と
して、窒化元素を含有した、所謂、窒化鋼板が用いら
れ、その合金成分としては、下記表1に示す範囲の含有
量(重量%)の鉄鋼基本5元素(C,Si,Mn,P及
びS)と、同じく表1に示す範囲の含有量(重量%)の
窒化元素の少なくとも1種の元素を含有するものとし
た。尚、本明細書において、「窒化処理」と言うとき
は、特にことわらない限り、一般的な窒化処理のみなら
ず軟窒化処理をも含むものとし、塩浴窒化処理を含む液
体窒化処理およびイオン窒化処理を含むガス窒化処理
等、あらゆる種類の窒化および軟窒化処理を含むものと
する。
【0025】
【表1】
【0026】各合金元素の含有量を表1のように規定し
たのは、以下の理由による。すなわち、炭素(C)含有
量の上限値を0.003重量%としたのは、本実施の形
態に係る鋼板素材では、窒化処理により板厚方向におけ
る平均硬度を高めるためにチタン(Ti)やニオブ(N
b)等の窒化元素を添化するが、C含有量が0.003
重量%を越えると、窒化元素と結び付いて炭化物(Ti
CやNiC等)を析出し易くなり、窒化処理前における
塑性加工性を低下させるとともに、窒化元素をより多く
添化する必要が生じるからである。
【0027】珪素(Si)含有量の上限値を0.05重
量%としたのは、Si含有量がこの値を越えると、フェ
ライト組織中への固溶量が多くなって窒化処理前におけ
る塑性加工性を低下させ、また、窒化処理時に窒素
(N)と結び付いて窒化物(SiN)を析出し易くなる
ので、鋼板素材内部までNを進入させて板厚方向におけ
る硬度分布のフラット化を図ることが難しくなるからで
ある。
【0028】マンガン(Mn)含有量の上限値を0.5
重量%としたのは、Mnはフェライト組織中に固溶する
固溶強化元素であり、窒化処理時にNの鋼板素材内部へ
の進入に悪影響を及ぼすとともに、硫黄(S)と結び付
いてMnSを析出し表面疵を引き起こすので、その含有
量を抑制する必要があり、0.5重量%以下とすること
が望ましいからである。
【0029】リン(P)含有量の上限値を0.05重量
%としたのは、Pはフェライト組織中に固溶する固溶強
化元素であり、窒化処理前における塑性加工性を低下さ
せるとともに、窒化処理時にNの鋼板素材内部への進入
に悪影響を及ぼすので、その含有量を抑制する必要があ
り、0.05重量%以下とすることが望ましいからであ
る。
【0030】硫黄(S)含有量の上限値を0.02重量
%としたのは、上述のように、SはMnと結び付いてM
nSを析出し表面疵を引き起こすので、その含有量を抑
制する必要があり、0.02重量%以下とすることが望
ましいからである。
【0031】チタン(Ti)の含有量の下限値を0.1
4重量%としたのは、Tiはフェライト組織中に固溶し
たCやNを析出固定して組織の塑性加工性を高めること
ができ、また、窒化物形成元素であり、0.14重量%
以上添加することで更に高硬度の窒化物(TiN)を析
出し、板厚方向における平均硬さを高めることができ
る。含有量が0.14重量%未満では、その効果が小さ
いからである。
【0032】ニオブ(Nb)は、Tiと同じく、フェラ
イト組織中に固溶したCやNを析出固定して組織の塑性
加工性を高めることができ、また、窒化物形成元素であ
り、これを含有させることで高硬度の窒化物を析出し、
窒化処理により板厚方向における平均硬さを高めること
ができる。好ましくは、Nbを0.04重量%以上含有
させることで、かかる効果をより確実に奏することがで
きる。Nb含有量の上限値を0.1重量%としたのは、
この値を越えてNbを添加してもその効果が飽和するか
らである。
【0033】ボロン(B)は、窒化処理によって窒化物
(BN)を析出し、窒化処理により板厚方向における平
均硬さを高めることができる。好ましくは、Bを0.0
01重量%以上含有させることで、かかる効果をより確
実に奏することができる。B含有量の上限値を0.00
5重量%としたのは、B含有量がこの値を越えると、窒
化処理前における塑性加工性が悪化するからである。
【0034】バナジウム(V)は、Nの拡散を促進し窒
化物(VN)を析出するもので、0(ゼロ:零)重量%
より大の所定量含有させることで、窒化処理により板厚
方向における平均硬さを高めることができるものであ
る。V含有量の上限値を0.1重量%としたのは、V含
有量がこの値を越えると、鋼板の表面側に多量の窒化物
を析出して結果的にNの鋼板内部への進入を阻害し、内
部まで十分に硬化させることができず、板厚方向におけ
る硬度分布をフラットにすることが困難になるからであ
る。
【0035】アルミニウム(Al)は窒化物形成元素で
あり、これを添加することで硬度を高めることができ
る。好ましくは、Alを0.03重量%以上含有させる
ことで、かかる硬度向上効果をより確実に奏することが
できる。Al含有量の上限値を0.06重量%としたの
は、Al含有量がこの値を越えると表面側での硬化が顕
著になり、板厚方向における硬度分布をフラットにする
ことが困難になるからである。
【0036】以上のように、鋼板素材に、窒化元素とし
て、チタニウム(Ti),ニオブ(Nb),ボロン
(B),バナジウム(V),アルミニウム(Al)の少
なくとも1種の元素を所定量含有させることにより、窒
化処理による熱処理効果を確実に得ることが可能になる
のである。尚、以上の窒化元素のうちでは、主としてT
iが用いられ、好ましくは、他の窒化元素(Nb,B,
V,Al)は、必要に応じてこのTiの補助として用い
られる。すなわち、窒化元素として1種類の元素(T
i)を余り多量に添加することが好ましくない場合があ
り得るので、かかる場合には、Tiの含有量をある程度
抑制して他の窒化元素(Nb,B,V,Al)を適量添
加することが好ましい。
【0037】<試験1>本実施の形態に係る成形体およ
び製造法の具体例の説明に先立って、種々の供試材・サ
ンプルを用いて、窒化処理を施して得られる鋼板の種々
の機械的特性や得られる引張強さと経済効果(自動車の
車体の軽量化および製造コスト低減に及ぼす効果)など
を調べるために行なった種々の試験や試算について説明
する。まず、鋼板素材の合金成分が窒化処理後における
板厚方向の硬度分布および平均硬度に及ぼす影響を調べ
る試験1を行った。この試験1に用いた供試材a〜dの
鋼種および材質・板厚ならびに合金成分(基本5元素)
は、表2に示す通りであった。尚、これら供試材の準拠
規格は、日本鉄鋼連盟規格(JFS)である。
【0038】
【表2】
【0039】供試材aは、いわゆる低炭素鋼であり、S
i,Mn,P及びS含有量については上述の表1で示し
た規定範囲に適合しているが、C含有量はかなり多い
(上限値の10倍以上)。また、供試材dは、いわゆる
高張力鋼であり、P及びS以外の合金元素については含
有量が上述の表1で示した規定範囲を大きく越えてお
り、440MPa以上の引張強さを有している。
【0040】尚、供試材bと供試材cとは共に、いわゆ
る極低炭素鋼であり、フェライト組織中に固溶した炭素
(C)及び窒素(N)と結び付いて炭化物および窒化物
を析出させるチタン(Ti)を含有している(通常、極
低炭素鋼では約0.05重量%程度のTiを含有してい
る)が、供試材cの方が供試材bよりも、このTi含有
量が多かった。
【0041】上記各供試材a〜dに対して同一処理条件
でそれぞれ窒化処理(570℃の雰囲気温度でガス軟窒
化処理)を施し、その際、各供試材ごとにその窒化処理
時間を0.5時間(h)〜10.0時間(h)の範囲で
5段階にわたって変えて窒化処理したサンプルを採取
し、板厚方向におけるビッカース硬さ(Hv:測定荷重
200g)の分布をそれぞれ測定した。
【0042】測定結果は、図1〜図4に示す通りであっ
た。この測定結果から良く分かるように、供試材aは、
供試材b及びcに比べてC含有量が多い関係上、窒化処
理前の母材硬度は高いが、窒化処理による硬度の上昇量
は非常に小さい。また、鋼板の表面部分と板厚方向にお
ける中央部分とで硬度差は非常に小さく、板厚方向にお
ける硬度分布は略フラット(平坦)な形状を呈してい
た。窒化処理時間を長くした場合、板厚方向における硬
度分布がよりフラット化する効果が若干認められるが、
硬度レベル(板厚方向における平均硬度)が元々低いの
で、余り顕著なものではない。以上のように、供試材a
の場合には、窒化処理後の板厚方向における平均硬度は
低く、また、板厚方向における硬度分布は略フラットに
なることが分かった。
【0043】供試材bの場合は、窒化処理による硬度上
昇量が、供試材aに比して大きいが供試材cに比べると
小さい。また、鋼板の表面部分と板厚方向における中央
部分とで硬度差は、窒化処理時間が短い場合には大きい
が、処理時間が長くなると非常に小さくなって板厚方向
における硬度分布は略フラット(平坦)な形状を呈して
いる。窒化処理時間を長くすることにより、板厚方向に
おける硬度分布をフラット化する効果が明確に認められ
る。以上のように、供試材bの場合には、一定以上の処
理時間で窒化処理した後の板厚方向における平均硬度は
(供試材aの場合に比べて)若干高くなり、また、板厚
方向における硬度分布は略フラットになることが分かっ
た。
【0044】供試材cの場合は、窒化処理による硬度上
昇量が供試材bに比して更に大きくなっている。これ
は、供試材bに比べてTiの含有量が多いことに因るも
のであると考えられる。また、鋼板の表面部分と板厚方
向における中央部分とで硬度差は、窒化処理時間が短い
場合には非常に大きいが、処理時間が長くなるほど小さ
くなり、6時間以上の処理時間では、板厚方向における
硬度分布は若干の膨らみは残るが全体として略フラット
(平坦)な形状を呈している。この場合も、窒化処理時
間を長くすることにより、板厚方向における硬度分布を
フラット化する効果が明確に認められる。以上のよう
に、供試材cの場合には、一定以上の処理時間で窒化処
理した後の板厚方向における平均硬度は(供試材bの場
合に比べて)高くなり、また、板厚方向における硬度分
布は略フラットになることが分かった。
【0045】供試材dの場合は、窒化処理時間を長くす
ることによって板厚方向における平均硬度としてはかな
り高い値が得られるものの、長時間の窒化処理を行なっ
ても鋼板の板厚方向における中央部分およびその近傍の
硬度上昇が殆ど見られず、鋼板の表面部分と板厚方向に
おける中央部分との硬度差が極めて大きく、板厚方向に
おける硬度分布は全体として逆放物線状を呈している。
これは、合金元素が多量に含まれており、表面近傍で窒
化物を析出させる関係上、Nが鋼板内部にまで進入でき
ず、窒化処理による硬度上昇効果が表面およびその近傍
領域に限られることに因るものと考えられる。以上のよ
うに、供試材dの場合には、一定以上の処理時間で窒化
処理することにより、板厚方向における平均硬度は高く
できるものの、板厚方向における略中央部分およびその
近傍領域の硬度を高めることができず、鋼板の表面部分
と板厚方向における中央部分との硬度差が極めて大きく
なることが分かった。
【0046】尚、以上の硬度測定において、板厚方向に
おける平均硬度の算出は、例えば、板厚方向に所定のプ
ロット幅(例えば、0.05mm幅)でビッカース硬さ
を測定して行き、これら全ての測定値を平均して算出し
た。この代わりに、以上のようにプロットして得られた
各測定値ポイントを結んで硬度分布曲線を描き、この硬
度分布曲線と座標軸(硬さゼロ(0:零)の基準線と板
材の端部を示す一対の基準線)とで囲まれた領域の面積
を算出し、この面積を板厚で割り算して得られた値を平
均硬度としても良い。
【0047】<試験2>次に、窒化処理後における鋼板
の引張強さと板厚方向における平均硬度との相関性を調
べる試験を行った。この試験は、供試材の鋼種や化学組
成あるいは窒化処理条件等を様々に変更して、窒化処理
後の板厚方向における平均硬度が広範囲(略Hv80〜
Hv330程度の範囲)に異なる多数のサンプルを製作
し、これらサンプルの引張強さを測定して上記平均硬度
との相関性を調べた。試験結果は図6に示す通りであ
り、窒化処理後における鋼板の板厚方向における平均硬
度(ビッカース硬さHv:測定荷重200g)と引張強
さとの間には、非常に高い相関性があることが分かっ
た。
【0048】車体パネルや構造部材の形成に用いる鋼板
自体を高強度化することによって車体の軽量化や製造コ
ストの低減を図る場合、達成される鋼板強度に応じてそ
の効果(特に経済的効果)に差が出るものである。そこ
で、プレス成形性確保の観点からは上限値である約44
0MPa以上に鋼板の引張強さを高めた場合に得られる
経済的効果をシミュレーションにより試算した。この試
算は、普通乗用車タイプの自動車の車体を対象として行
なった。
【0049】その結果、図5に示すように、特定の引張
強さ値の近辺(本試算では、略1000MPa近辺)を
境にして、得られる経済的効果に著しい差異が生じるこ
とが分かった。すなわち、鋼板の引張強さが1000M
Pa程度未満の場合には、引張強さの向上に応じて車体
鋼板の板厚を薄く設定できることによる効果が得られる
だけであるが、鋼板の引張強さが1000MPa程度以
上になると、板厚を薄くできるだけでなく、補強部材を
不要にすることが可能になり、当該補強部材の削減に伴
なって、車体重量の削減や材料費の低減はもとより、当
該部材のための金型費用や組付工数も不要となるので、
得られる経済効果が著しく大きくなるのである。そし
て、上記試験2の試験結果(図6)を参照すれば、この
ような大きな経済的効果を達成すべく、鋼板の引張強さ
を略1000MPa程度以上とするためには、板厚方向
における平均硬度は略Hv300以上にすれば良いこと
が分かる。
【0050】<試験3>次に、窒化処理による硬化パタ
ーン、すなわち、窒化処理後の板厚方向における硬度分
布の分布形状が(換言すれば、鋼板の表面部分と板厚方
向における中央部分との硬度差が)鋼板の引張強さや伸
び特性に及ぼす影響を調べる試験を行った。この試験
は、板厚方向における平均硬度が同等(例えば、Hv2
80)で硬化パターンが異なる多数のサンプルを製作
し、これらサンプルの引張強さおよび伸びを測定して上
記硬度差との関係を調べた。
【0051】試験結果は図7(引張強さ)及び図8(伸
び特性)に示す通りであり、引張強さおよび伸び特性の
両方について、鋼板の表面部分と板厚方向における中央
部分との硬度差が大きくなるほど測定値が低下すること
が分かった。これは、鋼板の表面部が内部よりも硬いた
め、鋼板長手方向に引張荷重が作用した際には、基本的
には表面は伸びにくくて内部のみが伸び易く、応力が表
面部に集中して割れ発生を招き、亀裂が急速に伝播する
ことによる強度低下を来すためであると考えられる。ま
た、鋼板の表面部分と板厚方向における中央部分との硬
度差が大きくなることに起因するこのような引張強さの
低下および伸び特性の低下は、特に、上記硬度差がHv
200を越えるとより顕著になることが分かった。
【0052】以上のように、板厚方向における平均硬度
を一定以上に保っても、鋼板の表面部分と板厚方向にお
ける中央部分との硬度差がある程度以上大きい場合に
は、鋼板の引張強さについて平均硬度に対応した所期の
値が得られるとは一概は言えないが、板厚方向の硬化パ
ターンをできるだけフラットな形状にすることにより、
具体的には、鋼板の表面部分と板厚方向における中央部
分との硬度差を略Hv200以下に抑えることにより、
引張強さおよび伸び特性の急激な低下を回避して、より
安定した高強度化を図ることができる。
【0053】前述のように、鋼板の高強度化によって大
きな経済的効果を達成すべく、鋼板の引張強さを略10
00MPa程度以上とするためには、板厚方向における
平均硬度は略Hv300以上で、且つ、表面部分と中央
部分との硬度差をHv200以下にすれば良い。尚、こ
のとき、窒化処理前の鋼板素材としては、窒化処理前に
行なわれるプレス成形等の塑性加工での加工性を良好に
保つ観点から、引張強さが500MPa以下のものが採
用される。
【0054】以上のように、鋼板素材の引張強さを50
0MPa以下とすることにより、窒化処理前におけるプ
レス加工等の塑性加工性を十分に確保できる。また、窒
化処理後の鋼板部材の板厚方向における平均硬度をHv
300以上とすることにより、当該鋼板部材の引張強さ
を1000MPa程度以上にすることができ、非常に大
きい経済効果を得ることができる。例えば、自動車の車
体用のパネル部材や構造部材に適用した場合には、板厚
を薄くできるだけでなく補強部材を不要にでき、車体重
量の削減や材料費の低減のみならず当該部材のための金
型費用や組付工数も不要とすることができ、著しい経済
効果を得ることができる。
【0055】更に、板厚方向における平均硬さが同じで
も、鋼板部材の表面部分(表面およびその近傍部分)と
内部中央との硬度差が大きくなるほど引張強さや伸び特
性が低下するのであるが、上記成形体の鋼板部材表面部
分と板厚方向における内部中央との硬度差をHv200
以下とすることにより、これら引張強さおよび伸び特性
の急激な低下を回避して、より安定した高強度化を達成
することができるのである。
【0056】尚、以上の説明は、鋼板素材(板状の鋼製
素材)についてのものであったが、板状のものに限ら
ず、例えば所定肉厚のパイプ状の鋼製素材などについて
も、その鋼製素材の引張強さを500MPa以下とする
ことにより、また、窒化処理後の鋼製部材の板厚方向に
おける平均硬度をHv300以上とすることにより、更
には、窒化処理後の鋼製部材の表面部分と板厚方向にお
ける内部中央との硬度差をHv200以下とすることに
より、それぞれ上述の板状鋼製素材の場合と同様の効果
が得られるものである。
【0057】次に、以上のような鋼製素材を用い以上の
ような窒化処理を施すことによって製造される鋼製部材
(成形体)の種々の具体例について説明する。尚、以下
の各具体例の説明においては、重複を避けるために繰り
返して記載はしないが、特にことわらない限り、少なく
とも窒化処理を行なう部材もしくは部分に用いられる鋼
製素材は、上記表1に規定された範囲の鉄鋼基本5元素
(C,Si,Mn,P,S)を含有し、また、上述のよ
うに、窒化元素として、チタニウム(Ti),ニオブ
(Nb),ボロン(B),バナジウム(V),アルミニ
ウム(Al)の少なくとも1種の元素を所定量(表1参
照)含有し、更に、上述のように引張強さが500MP
a以下とされたものである。また、窒化処理としては、
上述のように、窒化処理後の鋼製部材の板厚方向におけ
る平均硬度がHv300以上で、更に、窒化処理後の鋼
製部材の表面部分と板厚方向における内部中央との硬度
差がHv200以下となるように、条件設定した上で処
理が行なわれるものである。
【0058】まず、鋼板部材でなる成形体およびその製
造方法の一具体例について、自動車の車体ピラーの補強
部材に適用した場合を例にとって説明する。図9(a)
及び(b)は、自動車の車体側部の略中央部において上
下方向へ伸びるセンタピラーの内部に組み込まれる鋼板
製の補強部材(センタピラー・レインフォースメント:
以下、適宜、センタピラー・レインと略称する。)の窒
化処理前の状態および窒化処理後の状態をそれぞれ模式
的に示す正面説明図である。
【0059】これらの図に示すように、センタピラー・
レイン10(図9(b)参照)は、上下方向へ伸びる本
体部11(レイン本体)と、該レイン本体11の上端部
に設けられ車体の天井側部に位置するルーフレール(不
図示)内に組み込まれる前後方向の上端基部12と、上
記レイン本体11の下端部に設けられ車体のフロア側部
に位置するサイドシル(不図示)内に組み込まれる前後
方向の下端基部13とで構成され、これら各部11,1
2及び13が1枚物の窒化鋼板をプレス加工して一体形
成されている。
【0060】上記センタピラー・レイン10が主要な補
強部材としてその内部に組み込まれるセンタピラー(不
図示)は、周知のように、車両が側方からの衝突(所
謂、側突)を受けた際には、その衝撃エネルギを分散さ
せて乗員保護の役割を果たし得るものであるが、側突時
における折り曲げ変形の変形モードを好適に制御するこ
とによって、乗員の安全性をより高めることができる。
すなわち、センタピラー・レイン10のレイン本体11
は、車室内の乗員シート部(不図示)に対応する部分を
境にして、それよりも上側領域に対応するベルトライン
部分11Uと下側領域に対応するヒンジ部分11Lとで
成っているが、側突時、センタピラーが折れ曲がる際に
は、車室内の乗員位置に対応するベルトライン部分11
Uの車室内への進入が極力抑制されることが好ましい。
換言すれば、このベルトライン部分11Uの下側に位置
するヒンジ部分11Lが、ベルトライン部分11Uに比
して優先的に変形することが好ましい。
【0061】従って、上記ベルトライン部分11Uの直
下側部分11Pを折れ曲がり易くして、側突荷重が入力
された際には、このベルトライン直下側部分11Pで優
先的に折れ曲がり、この直下側部分11Pを起点として
ヒンジ部分11Lが優先的に変形するように、センタピ
ラー・レイン10のレイン本体11が折れ曲がることが
好ましい。このように折れ曲げ時の変形モードを設定す
ることにより、上記ベルトライン部分11Uの車室側へ
の進入を極力抑制して、乗員の安全性をより高めること
ができるのである。
【0062】そこで、本具体例では、センタピラー・レ
イン10の窒化処理前の状態を示すセンタピラー・レイ
ン成形体10’(図9(a)参照)に対して部分的に窒
化処理を施し、高強度化を図りたいベルトライン部分1
1Uを含む高強度化領域10Hと、ベルトライン部分1
1Uに比して優先的に折れ曲がるように設定したいヒン
ジ部分11Lを含む非高強度化領域10Mとの境界を上
記ベルトライン直下側部11Pとした。
【0063】このように設定することにより、上記境界
部分11Pでは、高強度化領域10Hと非高強度化領域
10Mとの強度上の差が生じることになるので、センタ
ピラー・レイン11はこの境界部分11Pで折れ曲がり
易くなる。また、上記ベルトライン直下側部11Pより
上方で高強度化領域10Hに対応するベルトライン部分
11Uが、窒化処理によって高強度化されて変形しにく
くなる一方、上記ベルトライン直下側部11Pより下方
で非高強度化領域10Mに対応するヒンジ部分11L
は、高強度化されないので相対的に変形し易くなる(つ
まり、ベルトライン部分11Uに比して優先的に折れ曲
がる)。
【0064】このような部分窒化処理を行うには、窒化
処理に先立って、上記非高強度化領域10Mをマスキン
グ処理しておけば良い。このマスキング処理は、例え
ば、非高強度化領域10Mを適切な被覆材(例えばメッ
キ皮膜等の皮膜も含む)で覆うことによって行なうこと
ができる。マスキング処理を行なった場合には、ガス窒
化法および塩浴窒化法のいずれの方法でも適用すること
ができる。このように、窒化処理前に上記成形体10の
特定部位10H以外の部分(非特定部位10M)にマス
キング処理を施すことにより、確実かつ簡単に上記成形
体10の特定部位10Hのみを窒化処理で高強度化する
ことができる。
【0065】上記のようなマスキング処理を行なわない
場合には、塩浴窒化法を適用し、高強度化領域10Hの
みを塩浴槽内に浸漬させ、非処理領域10Mは塩浴槽の
外部に保持するようにすれば良い。このように、上記成
形体10の上記特定部位10Hのみを塩浴槽に浸漬させ
て窒化処理を施した場合には、別工程(マスキング工
程)を設ける必要がなしに、確実に上記成形体10の特
定部位10Hのみを窒化処理で高強度化することができ
る。
【0066】以上のように、上記成形体(センタピラー
・レイン10)の特定部位(高強度化領域10H)のみ
が窒化処理で高強度化され、該成形体10が折り曲げ変
形する際には、上記特定部位10Hと非特定部位(非強
度化領域10M)との境界部分11Pを起点にして変形
するので、一体物の成形体10について、例えば節部材
や部分的な補強部材等の別部材を設ける必要無しに、折
り曲げ変形時の変形モードを好適に制御することができ
るのである。
【0067】次に、鋼板部材でなる成形体の他の具体例
について、自動車の車体フレームであるフロントフレー
ムを例にとって説明する。図10は、自動車の車体前部
の左右側部において前後方向へ伸びるフロントフレーム
を模式的に示す斜視図である。この図に示すように、上
記フロントフレーム20は、その断面形状がハット状
(コ字形断面の両端末部に、外側へ張り出すフランジ状
部分が一体化された形状)にプレス成形された対を成す
2枚の鋼板部材20a,20bを、その断面の開口部が
向かい合うように接合して形成されている。
【0068】上記フロントフレーム20は、周知のよう
に、車両が正面衝突した際には、その衝撃エネルギを吸
収して乗員保護の役割を果たし得るものであるが、この
場合には、フレーム20自体が座屈することにより、そ
の座屈過程で衝突エネルギが吸収される。そして、この
ようにフレーム自体の座屈によってエネルギ吸収を行う
場合には、フレーム20ができるだけ折り畳まれるよう
に座屈変形することによって、より効果的なエネルギ吸
収を行なうことができる。
【0069】そこで、本具体例では、窒化鋼板を素材に
用いてフロントフレーム成形体を形成した上で、図10
に示すように、所定幅にそれぞれ設定された複数の高強
度化領域20Hが、非高強度化領域20Mをそれぞれ間
に挟んだ状態で、フレーム20の長手方向に並ぶように
部分窒化処理を施した。尚、このようにプレス成形した
窒化鋼板でフロントフレーム成形体を形成した後に部分
窒化処理を施す代わりに、窒化鋼板をプレス成形した後
に各プレス成形体に部分窒化処理を施し、その後に両者
を接合してフロントフレームを完成するようにしても良
い。
【0070】このような部分窒化処理を行なうことによ
り、フロントフレーム20は、高強度化された部分20
H(高強度化領域)が強化されていない部分20M(非
高強度化領域)を間に挟んで長手方向に配列されること
となり、強度差をもった領域が周期的に(所定幅で)繰
り返して現れることにより、長手方向から衝突荷重が入
力された際には、フレーム20が折り畳まれるように座
屈変形し易くなり、効率良くエネルギ吸収量を高めるこ
とができるのである。
【0071】このような部分窒化処理を行うには、窒化
処理に先立って、上記非処理領域20Mをマスキング処
理しておけば良い。このマスキング処理は、例えば、非
処理領域20Mを適切な被覆材(例えばメッキ皮膜等の
皮膜も含む)で覆うことによって行なうことができる。
このようなマスキング処理を行なった場合には、ガス窒
化法および塩浴窒化法のいずれの方法でも適用すること
ができる。
【0072】上記のように一つの成形体中に他の部分と
強度差をもった部分を形成する方法としては、所謂、テ
イラード・ブランク法により形成された部材を用いる方
法がある。次に、鋼板部材でなる成形体の更に他の具体
例について、図11(a)及び(b)を参照しながら説
明する。本具体例に係るフロントフレーム30(図11
(b)参照)は、図10に示したものと同様に、その断
面形状がハット状にプレス成形された対を成す2枚の鋼
板部材30a,30bを、その断面の開口部が向かい合
うように接合して形成されている。
【0073】このフロントフレーム30は、図11
(a)に示すフロントフレーム成形体30’に所定の硬
化熱処理(本具体例では、例えば窒化処理)を施して得
られたもので、該フロントフレーム成形体30’は、窒
化処理によって高強度化されない第1プレス成形部3
1’と、窒化処理によって高強度化し得る第2プレス成
形部32’とで構成されている。
【0074】すなわち、上記フロントフレーム成形体3
0’は、所謂、テイラード・ブランク法により形成され
たもので、具体的には図示しなかったが、例えば窒化元
素を含有せず窒化処理によって高強度化されない鋼板素
材で成る第1ブランク材(鋼板素材)と、窒化元素を含
有し窒化処理にて高強度化され得る第2ブランク材とを
溶接接合して予備成形体を形成し、こうして得られた1
枚物の板材(予備成形体)をプレス成形することによ
り、上述のように断面形状がハット状をなす鋼板部材3
0a’を作製する。また、これと組み合わされる鋼板部
材30b’を同様の方法で作製し、両者を溶接接合する
ことにより、上記第1プレス成形部31’と第2プレス
成形部32’とを有する上記フロントフレーム成形体3
0’が得られる。
【0075】尚、上記第1プレス成形部31’は、例え
ば、上述のように窒化元素を含有しない鋼板を素材(第
1ブランク材)として形成されても良く、或いは、素材
としては窒化元素を含有した窒化鋼板であっても、所定
の何等かの仕様(例えば、板厚など)が第2ブランク材
とは異なる鋼板を素材(第1ブランク材)として形成さ
れても良い。一方、上記第2プレス成形部32’は、窒
化鋼板を素材(第2ブランク材)として形成され、窒化
処理で高強度化され得る成形体部分を成している。
【0076】この場合には、窒化処理に先立って、上記
第1プレス成形部31’をマスキング処理しておけば良
い。このマスキング処理は、例えば第1プレス成形部3
1’を適切な被覆材(例えばメッキ皮膜等の皮膜も含
む)で覆うことによって行なうことができる。マスキン
グ処理を行なった場合には、ガス窒化法および塩浴窒化
法のいずれの方法でも適用することができる。上記のよ
うなマスキング処理を行わない場合には、塩浴窒化法を
適用し、高強度化すべき第2プレス成形部32’のみを
塩浴槽内に浸漬させ、高強度化しない第1プレス成形部
31’は塩浴槽の外部に保持するようにすれば良い。
【0077】上記第1プレス成形部31’にマスキング
処理を行なう場合、メッキ処理を施してマスキングする
ことが好ましい。自動車の車体下部で使用される部材の
場合、耐食性について厳しい条件が求められるが、窒化
処理のみでは耐食性が十分でないので、第1プレス成形
部31’をメッキ皮膜で覆うことにより、耐食性の向上
を図ることができるからである。
【0078】以上のように、第1プレス成形部31’と
第2プレス成形部32’とで成るフロントフレーム成形
体30’を窒化処理することにより、高強度化されてい
ない領域(非高強度化領域)31と窒化処理で高強度化
された領域(高強度化領域)32とで成るフロントフレ
ーム30が得られるのである。かかるフロントフレーム
30では、非高強度化領域31と高強度化領域32との
境界で強度が大きく異なるので、この境界部分を起点と
して折れ曲がり易く、また、高強度化されていない非高
強度化領域31で折り畳むような座屈が生じて、衝突エ
ネルギを効率良く吸収することが可能になる。
【0079】上記のようにテーラードブランク法で形成
された部材を用いて一つの部材中に他の部分と強度差を
もった部分を形成する場合、一般に、機械的特性が異な
る鋼板素材(ブランク材)どうしが接合されてプレス加
工されるので、両ブランク材のプレス成形性(換言すれ
ば、素材の伸び特性)に差が生じることに起因して、そ
の接合部に亀裂・破断等の不具合が発生する場合があ
る。そこで、本具体例では、伸び特性が略同等な鋼板素
材をブランク材として用意し、これらをテイラード・ブ
ランク法によって一体的な成形体とし、この成形体に窒
化処理を施して、一つの部材中に他の部分と強度差をも
った部分を有する部材を得るようにした。
【0080】本具体例で用いた各ブランク材の鋼種およ
び化学組成等の仕様は、表3に示す通りとした。ブラン
ク材1では、窒化元素の1種であるチタン(Ti)の含
有量については0.05重量%以下としか規定されてお
らず、窒化処理を施しても余り安定した高強度化は期待
できない。一方、ブランク材2の場合には、Tiの含有
量について0.05重量%以上と規定されており、窒化
処理による十分に安定した高強度化が期待できるもので
ある。
【0081】
【表3】
【0082】また、上記各ブランク材1及び2の素材状
態における(つまり、窒化処理前における)機械的特性
(引張強さおよび伸び特性)は、表4の左欄に示す通り
であった。両者の窒化処理前における伸び特性を比較す
ると、50%と55%であり差が5%しかなく、略同等
の伸び特性であると言える。
【0083】
【表4】
【0084】以上のような両ブランク材を用い、テイラ
ード・ブランク法を適用して、例えば図11に示したフ
ロントフレーム30と同じく、一つの部材中に他の部分
と強度差をもった部分を有する部材を製作した。すなわ
ち、まず、上記ブランク材1を素材とする第1ブランク
材と、上記ブランク材2を素材とする第2ブランク材と
を、例えばレーザ溶接にて接合し、こうして得られた1
枚物の板材(予備成形体)を例えばプレス成形して所定
形状の成形体を得た。このとき、両ブランク材の接合部
に亀裂・破断等の不具合が生じることはなかった。
【0085】そして、この成形体に例えばガス軟窒化処
理を施した。具体的には、処理温度570℃に維持され
たNH3ガスとRXガス(吸熱性)との混合ガス(N
3:RX=1:1)雰囲気中で6時間保持する軟窒化
処理を行なった。尚、この熱処理においても、上記第1
及び第2の両ブランク材の接合部に亀裂・破断等の不具
合が生じることはなかった。
【0086】これにより、窒化処理で高強度化されない
第1ブランク材で成る領域(第1ブランク材領域)と、
窒化処理で高強度化され得る第2ブランク材で成る領域
(第2ブランク材領域)とで構成された最終部材が得ら
れた。この最終部材の第1ブランク材領域(ブランク材
1)及び第2ブランク材領域(ブランク材2)の窒化処
理後における機械的特性は表4の右欄に示した通りであ
った。また、ブランク材1及びブランク材2について、
窒化処理前および処理後での伸びに対する引張強さの関
係を図12のグラフに示した。この図12のグラフにお
いて、実線曲線K’及びKが第2ブランク材の窒化処理
前および処理後の特性を示し、破線曲線J’及びJが第
1ブランク材の窒化処理前および処理後の特性を示して
いる。
【0087】この図12及び上記表4から良く分かるよ
うに、ブランク材2(第2ブランク材領域)は、ブラン
ク材1(第1ブランク材領域)に比べて、窒化処理によ
る引張強さの上昇幅が非常に大きくなっており、一つの
部材中に他の部分と十分な強度差をもった部分を有する
成形体が得られた。また、上記第2ブランク領域の引張
強さは窒化処理によって651MPaまで上昇してい
る。この値は、従来ではテイラード・ブランク法を適用
することが到底できなかった引張強度値である。すなわ
ち、本発明方法により、従来ではテイラード・ブランク
法を適用することが到底できなかった高強度の鋼板部材
で成る成形体を同法によって得ることができた。
【0088】以上のように、所定の仕様について互いに
異なる特性を有する板状部材(第1ブランク材と第2ブ
ランク材)どうしを接合し形成した予備成形体にプレス
加工を施した後に、このプレス加工で得られた成形体の
特定部位を熱処理(窒化処理)で硬化させるようにした
ので、熱処理前におけるプレス加工性を十分良好に確保
できる。そして、プレス加工後に行う熱処理によって、
成形体の特定部位に所期の強度を付与することができ
る。すなわち、テイラード・ブランク法を適用して、板
状素材の歩留まりの向上を図るとともに、一つの部材中
に他の部分に比して強度が十分に高い部分を有する成形
体が確実に得ることができる。
【0089】この場合において、特に、上記第1ブラン
ク材と第2ブランク材のプレス加工前における伸び特性
の差が所定範囲内に設定されているので、両者を接合し
た後に行なわれるプレス加工において、亀裂や割れ等の
不具合が生じることを抑制することができるのである。
【0090】次に、上述のようなテイラード・ブランク
法を自動車の車体に適用する場合について説明する。図
13は自動車の車体の主として車室部分の側部(キャブ
サイド)を構成するパネル組立体(キャビサイド・アッ
センブリ)の構造を示す分解斜視図である。この具体例
は、キャブサイド・インナパネル50(車室側部の内側
パネル),キャブサイド・レインフォースメント60
(車室側部の補強部材),リヤピラー・インナパネル7
0(車室側部後側の内側パネル)及びキャブサイド・ア
ウタパネル80(車体側部の外側パネル)の各々につい
て、上述のようなテイラード・ブランク法を適用し、そ
れぞれ最終的に一体化するものである。
【0091】例えば、キャブサイド・インナパネル50
の場合にはL1〜L4の各分割ラインで、キャブサイド
・レインフォースメント60の場合にはL11〜L16
の各分割ラインで、リヤピラー・インナパネル70の場
合にはL21の分割ラインで、キャブサイド・アウタパ
ネル80の場合にはL31〜L34の各分割ラインで、
それぞれ分割されている。
【0092】そして、これら分割ラインで区切られた各
領域毎に、備えるべき特性(例えば、強度,剛性,耐食
性などの特性)並びに車体の軽量化および製造コストの
低減効果を考慮し、鋼板素材の材質,板厚,熱処理,表
面処理等がそれぞれ最適化して設定される。例えば、リ
ヤピラー・インナパネル70の場合には、板厚は一定で
あるが、L21の分割ラインより上側部分は表面処理を
特に施さないが、下側部分については耐食性向上のため
にメッキ処理を施した鋼板が用いられる。また、キャブ
サイド・アウタパネル80の場合には、L31〜L34
の各分割ラインで囲まれた斜線ハッチングを施した領域
については、テイラード・ブランク法を用いて、他の部
分よりも板厚が厚く設定されることが好ましい。
【0093】尚、鋼板自体の高強度化による(つまり、
鋼板素材の薄肉化による)車体の軽量化を検討する場合
には、前述のように、車体構造上、強度だけでなく剛性
の確保が重視される(換言すれば、車体全体の剛性に対
する寄与度が高い)車体部分や構造部材については、鋼
板自体を高強度化してその強度を確保したとしても、板
厚を薄くすることは剛性確保上不利になるので、一般的
には薄肉化による軽量化の対象とすることは好ましくな
く、車体全体の剛性に対する寄与度が比較的低くて、且
つ、一定以上の強度保持が求められる車体部分や構造部
材について、その適用が検討されることが望ましい。
【0094】図14は、自動車のキャビサイド・アッセ
ンブリにテイラード・ブランク法を適用した他の例を示
す分解斜視図である。この具体例では、キャブサイド・
レインフォースメント60,リヤピラー・インナパネル
70及びキャブサイド・アウタパネル80については、
図13で示した例と同じであるが、キャブサイド・イン
ナパネル50’については、分割ラインL1’〜L5’
の5つの分割ラインで分割されており、分割の仕方が図
13で示した例とは異なっている。
【0095】以上のように、自動車の車体の製造にテイ
ラード・ブランク法を適用することにより、各領域毎
(つまり、各ブランク材毎に)に、備えるべき特性(例
えば、強度,剛性,耐食性などの特性)並びに車体の軽
量化および製造コストの低減効果を考慮して、鋼板素材
の材質,板厚,熱処理特性,表面処理等の仕様をそれぞ
れ最適化して設定することができるのである。
【0096】次に、鋼板部材でなる成形体をその内部に
配設した発泡体で補強するようにした具体例について説
明する。図15は、本具体例に係る成形体としての自動
車用の車体フレーム部材の断面構造を示している。上記
フレームを構成するパネル材としては、日本鉄鋼連盟規
格(JFS)に規定されたJSH270C鋼板(表2:
供試材a参照)で前述の窒化元素の少なくとも1種の元
素を所定量含有したものを用いた。また、その板厚は約
1mm程度のものとした。
【0097】この鋼板を用いて、図15に示すように、
片側が開口した断面コ字状にプレス成形されたパネル材
Po(アウタパネル)と平板状のパネル材Pi(インナ
パネル)とを片ハット状に組み合わせ、その重合部分L
fについて60mmピッチでスポット溶接を行って最終
的に組み立てた。尚、図15において仮想線で示すよう
に、フレーム断面内にレインフォースメントRfを配設
したものの場合、このレインフォースメントRfの材料
はフレームFRのパネル材Pi,Poの材料と同じもの
を用いた。この場合、レインフォースメントRfの両端
フランジ部分(不図示)は、両パネル材Pi,Poのフ
ランジ(重合部分Lf)に挟み込んだ上で、三枚重ねに
してスポット溶接で組み立てられる。
【0098】上記フレームFRの閉断面内に充填される
発泡材料としては、以下のようなものが好ましい。ま
た、これら発泡材料の密度をそれぞれ調べた。尚、この
発泡材料の密度は、いずれの材料についても、室温(約
20℃)における値を調べた。 ・発泡ウレタン樹脂(硬度[8kg/cm2]):密度
0.09[g/cm3] ・エポキシ樹脂A:密度0.50[g/cm3] ・エポキシ樹脂B:密度0.50[g/cm3
【0099】尚、上記鋼板製のレインフォースメントR
fで補強する場合を想定すると、図15に示すようにフ
レーム断面内に配設されたレインフォースメントRfの
重量と、当該レインフォースメントRfの配設部分に対
応するフレームFRの容積から、フレーム内換算密度を
算出することができ、本具体例の場合には、このレイン
フォースメントRfのフレーム内換算密度は、0.61
[g/cm3]であった。従って、フレーム部材FRの
軽量化の観点から、その内部に充填される発泡材料の密
度としては、0.60[g/cm3]以下であることが
好ましい。
【0100】本具体例では、上記のフレームFRを作製
するに際し、少なくとも未発泡状態の発泡材料がセット
されるパネル材(例えば、平板状のインナパネル材P
i)に予め窒化処理が施されている。この窒化処理によ
り、インナパネルPiの表面およびその近傍にはポーラ
ス状の表面を有する窒化物が生成されるので、発泡材料
がセットされる領域の表面状態は微視的にポーラス状で
ある。
【0101】そして、この表面およびその近傍がポーラ
ス状のインナパネルPi上に、図16に示すように、未
発泡状態の発泡材料Se’(例えば、エポキシ樹脂)を
セットした後、フレーム体FRを150〜200℃の温
度範囲に加熱する。これにより、図17に示すように、
エポキシ樹脂Seが発泡・膨張し、フレーム体FRの閉
断面全体を隙間無く満たした後に硬化する。このとき、
エポキシ樹脂は、それ自体の接着力でパネル内面に接着
する。尚、この発泡工程での加熱は、フレームFRを塗
装した後に乾燥させる際、その乾燥工程での熱を利用し
て行うことができる。
【0102】このように、熱処理されて表面およびその
近傍がポーラスになった所定領域(インナパネルPi)
に対して発泡材料が発泡硬化させられることにより、熱
処理されていない鋼板に対する場合に比して、大幅に高
い接着力を得ることができる。すなわち、発泡体を充填
して成形体を補強するに際して、比較的簡単な構成で成
形体に対し発泡体を固着させ、しかも、発泡体の充填に
よる高い補強効果を得ることができる。
【0103】フレーム断面内に充填材を充填する際に、
フレームを構成するパネル材の少なくとも一部分と充填
材との間の接着力を高めることにより、フレームが耐え
得る最大曲げモーメントおよびエネルギ吸収性を大幅に
高めることができる。図18は、フレームの静的片持ち
曲げ試験を行う試験装置を模式的に表した説明図であ
る。図17に示される断面形状を備えた所定長さのフレ
ームFRの断面内に充填材Sを充填した上で、このフレ
ームFRの一端を支持板Meに固定し、この支持板Me
を装置基盤Mfに固定する。そして、万能試験機によ
り、フレームFRの他端近傍に圧子Mdを介して静的荷
重Wmを加え、変位および曲げ角度と荷重との関係を測
定し、最大曲げモーメント及び静的エネルギ吸収量を求
めた。
【0104】図19は、種々の充填材を充填したフレー
ムの曲げ角度と曲げモーメントとの関係を示すグラフで
ある。このグラフにおいて、a〜eの各曲線はそれぞれ
以下の充填材を適用したフレームの特性を示している。 ・曲線a:充填材なし(鋼板フレームのみ) ・曲線b:エポキシ樹脂A ・曲線c:エポキシ樹脂B ・曲線d:エポキシ樹脂BでフレームFRのパネル材P
o又はPiとの間に接着剤(剪断強度7.3MPaの車
体シーラ)を適用 ・曲線e:木材(松)
【0105】この図19のグラフから分かるように、い
ずれの曲線についても、曲げ角度がある程度に達するま
では、曲げモーメント値は曲げ角度の増加に伴って立ち
上がるように大きく上昇する。そして、曲線a〜c及び
曲線eについては、それぞれある曲げ角度でピーク(極
大点)を迎え、その後は曲げ角度が増すにつれて曲げモ
ーメントは低下する。曲線a(充填材なしで鋼板フレー
ムのみ)の場合、この低下度合いが特に大きい。
【0106】これに対して、曲線d(エポキシ樹脂B+
接着剤)の場合には、曲げモーメントが大きく上昇した
後でも、曲げ角度の増加に対して曲げモーメントの落ち
込みは見られず、高い曲げモーメント値を維持してい
る。また、最大曲げモーメント値も5つの曲線のうちで
最も大きい。同じ充填材(エポキシ樹脂B)を用いた曲
線cと比較して、曲げ角度の増加に対する傾向および最
大曲げモーメントの大きさの両方について、明確な差が
ある。すなわち、同じ充填材を用いても、この充填材を
フレームのパネル材に対して接着剤で固定することによ
り、フレームの曲げモーメント特性が大きく向上するこ
とが分かる。
【0107】また、図20は、図19と同様の種々の充
填材を充填したフレームの最大曲げモーメント[Nm]
及びエネルギ吸収量[J]を示す棒グラフである。この
グラフにおいて、A〜Eの各欄はそれぞれ以下の充填材
を適用したフレームの特性を示している。また、各欄に
おいて、左側の数値(白抜きの棒グラフ)がフレームの
最大曲げモーメント[Nm]を示し、右側の数値(斜線
ハッチングの棒グラフ)はフレームのエネルギ吸収量
[J]を示している。 ・A欄:充填材なし(鋼板フレームのみ) ・B欄:エポキシ樹脂A ・C欄:エポキシ樹脂B ・D欄:エポキシ樹脂B+接着剤(充填材がエポキシ樹
脂BでフレームFRのパネル材Po又はPiとの間に接
着剤(剪断強度7.2MPaの車体シーラ)を適用した
もの) ・E欄:木材(松)
【0108】この図20のグラフから良く分かるよう
に、フレームのエネルギ吸収量は、エポキシ樹脂B+接
着剤(D欄)を適用したものが最も大きく、同じ充填材
(エポキシ樹脂B)を用いたC欄のエネルギ吸収量と比
べて明確な差がある。すなわち、同じ充填材を用いて
も、この充填材をフレームのパネル材に対して接着剤で
固定することにより、フレームのエネルギ吸収特性が大
きく向上することが分かる。
【0109】図21は、接着剤層の剪断接着強さと最大
曲げモーメントとの関係を示すグラフである。この図2
1のグラフから良く分かるように、接着剤層の剪断接着
強さが大きくなるにつれて最大曲げモーメントも増加す
るが、剪断接着強さが3MPa以上になると、最大曲げ
モーメントの増加度合い(グラフにおける曲線の勾配)
は、それまでに比べて緩やかになる。つまり、接着剤層
の剪断接着強さが3MPa以上であれば、フレームが負
担できる最大曲げモーメントを非常に効果的に増加さ
せ、十分な曲げモーメント値を達成して高いエネルギ吸
収能力を得ることが可能である。従って、接着剤層の剪
断接着強さとしては、3MPa以上であれば良い。ま
た、剪断接着強さが更に大きくなり、7MPa以上にな
ると最大曲げモーメントの増加度合いは飽和する。換言
すれば、剪断接着強さが7MPa以上であれば、ほぼ最
大値に近い曲げモーメント値を得ることができる。従っ
て、接着剤層の剪断接着強さが7MPa以上であること
が更に好ましい。
【0110】尚、本具体例におけるエポキシ樹脂のよう
に、充填材自体が接着性を有している場合には、別途に
接着剤を用いることなく、その接着性を利用して、その
ままフレームのパネル材に接着固定させることができ
る。この場合においても、剪断接着強さが3MPa以上
であることが好ましく、7MPa以上であることが更に
好ましい。
【0111】図22は、フレームFRの発泡材料がセッ
トされるインナパネルPiに熱処理としての窒化処理を
施した具体例(本案実施例)と該処理を行なわなかった
比較例のせん断接着強さを示すグラフである。尚、上記
インナパネルPiの鋼板素材は、共に上述のJSH27
0C鋼板とした。また、このせん断接着強さの測定は、
JIS K 6850「接着剤の引張せん断接着強さ試験
方法」に規定された試験方法に準拠して行なった。この
グラフから良く分かるように、発泡材料がセットされる
板材に窒化処理を施すことにより、発泡体と板材との接
着部分におけるせん断接着強さが大幅に高められること
が確認された。
【0112】以上のように、所定の熱処理元素(窒化元
素)を含有する板状部材に塑性加工を施して所定形状の
成形体(車体用フレーム部材)を形成した後、該成形体
の少なくとも所定領域にに所定の熱処理(窒化処理)を
施すようにしたので、この所定領域について、その表面
および表面近傍に多孔性を有する(所謂、ポーラスな)
金属間化合物が生成される。そして、この所定領域に発
泡材料をセットした後、成形体を加熱して発泡材料を発
泡させるようにしたので、表面およびその近傍がポーラ
スな所定領域に対して発泡体が発泡硬化させられること
により、熱処理されていない鋼板に対する場合に比し
て、大幅に高い接着力を得ることができる。すなわち、
発泡体を充填して成形体を補強するに際して、比較的簡
単な構成で成形体に対し発泡体を固着させ、しかも、発
泡体の充填による高い補強効果を得ることができるので
ある。
【0113】特に、自動車の車体の一部を構成する閉断
面状のフレーム体について、比較的簡単な構成で、当該
車体のフレーム体の強度・剛性および衝撃荷重を受けた
際のエネルギ吸収性の向上を図ることができる。また、
上記発泡材料の密度を0.6[g/cm3]以下とした
ので、鋼板を用いて補強する場合に比べて、軽量で且つ
高いエネルギ吸収能力を得ることができる。また、上記
発泡材料をエポキシ樹脂としたことにより、該樹脂の発
泡性を利用して、成形体内部への充填作業を容易かつ確
実に行うことができる。
【0114】尚、本具体例では、フレームを構成するパ
ネル材として、日本鉄鋼連盟規格(JFS)に規定され
たJSH270C鋼板を母材としこれに前述の窒化元素
の少なくとも1種の元素が所定量含有されたものを用
い、これに窒化処理を施すことにより、少なくともその
所定領域の表面および表面近傍を多孔性(所謂、ポーラ
ス状)とし、この所定領域に発泡材料をセットして発泡
させることにより、非常に高い接着力を発現させて発泡
体の充填による補強効果をより高めるようにしていた
が、上記フレームを構成するパネル材として、上記JS
H270C鋼板の代わりに、JSC260G鋼板(表
2:供試材c参照)を用いることにより、上述の発泡体
とパネル材との接着力向上による補強効果に加えて、前
述したように、パネル材(鋼板)自体が窒化処理によっ
て(JSH270C鋼板に比して)より効果的に高強度
化されるので、上記フレームのより一層の強度向上を図
ることができる。
【0115】次に、流体の加圧力を利用して金属部材を
成形する、所謂、ハイドロフォーム法による金属成形体
の具体例について説明する。図23(a)〜図23
(d)は、上記ハイドロフォーム法を適用して、例え
ば、自動車の車体懸下装置の一部をなす所謂ぺリメータ
フレームを製造する場合における一連の工程を概略的に
示す説明図である。まず、図23(a)に示すように、
閉断面状の金属素材として、真直した所定肉厚の鋼製パ
イプ状部材F1を用意する。このパイプ状部材F1は、
窒化鋼で形成されている。尚、このパイプ状部材F1
は、所定肉厚の平板状鋼板を巻いて溶接によって形成す
ることもできる。次いで、図23(b)に示すように、
このパイプ状部材F1をプレス加工し、成形体(ぺリメ
ータフレーム)の最終形状(図23(c)及び23
(d)参照)に比較的近似した予備成形体F2を形成し
た。
【0116】この予備成形体F2をハイドロフォーム用
の所定の成形型(不図示)内にセットした上で、予備成
形体F2の閉断面内に所定の流体(例えば、油圧用オイ
ル)を供給し、加圧装置(不図示)によって流体を所定
圧力に加圧することにより、その内圧によって上記予備
成形体F2が塑性変形し、成形型の型面形状に沿った形
状の金属成形体F3が得られる(図23(c)参照)。
つまり、予備成形体F2がハイドロフォーム加工されて
金属成形体F3が得られるのである。
【0117】そして、この金属成形体F3の所定部位を
窒化処理によって硬化することにより、特定部位(図2
3(d)における斜線ハッチング部分参照)が窒化処理
によって高強度化されたぺリメータフレームF4が得ら
れる。このように、上記金属成形体(ぺリメータフレー
ムF4)の特定部位のみが熱処理にて硬化されるので、
一体物の金属成形体F4について所望の部分のみを確実
に硬化・高強度化させることができるのである。
【0118】上述のように、特定部位のみを窒化処理に
よって高強度化する方法としては、種々の方法が考えら
れる。上記具体例では、図24(a)及び24(b)に
示すように、塩浴窒化法において、ハイドロフォーム法
で形成した成形体F3の高強度化すべき特定領域Fs
(高強度化領域)のみを塩浴槽S内に浸漬させ、この部
分のみを窒化処理するようにした。このように、上記ハ
イドロフォーム法で形成した成形体F3の特定部位Fs
のみを塩浴槽Sに浸漬させて熱処理を施すようにしたの
で、別工程を設ける必要がなしに、確実に金属成形体F
4の特定部位Fsのみを熱処理で硬化・高強度化させる
ことができる。
【0119】この代わりに、例えば図25(a)〜25
(c)に示すように、窒化処理を施すに先立って、ハイ
ドロフォーム法で形成した成形体F3にマスキング処理
を行ない、つまり、高強度化しない領域(非高強度化領
域)を適切なマスキング材(例えばメッキ皮膜等の皮膜
も含む)で覆い(図(b)におけるクロスハッチング部
分参照)、その後に、ハイドロフォーム法で形成した成
形体F3全体を塩浴槽S内に浸漬させて、マスキング材
で覆われていない高強度化すべき領域Fs(高強度化領
域)のみが窒化処理で高強度化されるるようにしても良
い。このように、熱処理前にハイドロフォーム法で形成
した成形体F3の特定部位Fs以外の部分にマスキング
処理を施すようにしたので、確実かつ簡単に金属成形体
F4の特定部位Fsのみを熱処理で硬化・高強度化させ
ることができる。
【0120】以上のように、本具体例によれば、金属成
形体F4の最終形状に比較的近似した閉断面状の予備成
形体F2を所定の成形型内に配設し、この予備成形体F
2の閉断面空間内に加圧流体を供給することにより、上
記成形型の型形状に沿った金属成形体F3を形成した後
に該金属成形体を熱処理にて硬化するようにしたので、
熱処理前の成形時には塑性加工性を十分良好に確保でき
る。そして、塑性加工後に行う熱処理によって、成形体
F4の特定部位Fsに所期の強度を付与することができ
る。すなわち、所謂ハイドロフォーム法を適用して金属
成形体を得るに際して、強度が十分に高い金属成形体F
4を確実に得ることができるのである。また、この場合
において、上記金属成形体(ぺリメータフレームF4)
の特定部位のみが熱処理にて硬化されるので、一体物の
金属成形体F4について所望の部分のみを確実に硬化・
高強度化させることができるのである。
【0121】尚、本発明は、以上の実施態様や具体例に
限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲に
おいて、種々の変更あるいは設計上の改良等が可能であ
ることは言うまでもない。
【0122】
【発明の効果】本願の第1の発明に係る板状部材でなる
成形体の製造方法によれば、所定の仕様について互いに
異なる特性を有する板状部材どうしを接合し形成した予
備成形体に塑性加工を施した後に、この塑性加工で得ら
れた成形体の特定部位を熱処理で硬化させるようにした
ので、熱処理前における塑性加工性を十分良好に確保で
きる。そして、塑性加工後に行う熱処理によって、成形
体の特定部位に所期の強度を付与することができる。す
なわち、テイラード・ブランク法を適用して、板状素材
の歩留まりの向上を図るとともに、一つの部材中に他の
部分に比して強度が十分に高い部分を有する成形体が確
実に得ることができる。
【0123】また、本願の第2の発明によれば、基本的
には、上記第1の発明と同様の効果を奏することができ
る。特に、上記第1板状部材と第2板状部材の上記塑性
加工前における伸び特性の差が所定範囲内に設定されて
いるので、両者を接合した後に行なわれる塑性加工にお
いて、亀裂や割れ等の不具合が生じることを抑制するこ
とができる。
【0124】更に、本願の第3の発明によれば、基本的
には、上記第1または第2の発明と同様の効果を奏する
ことができる。特に、上記熱処理が窒化処理であり、上
記第1および第2の板状部材の少なくともいずれか一方
は、窒化元素として、チタニウム(Ti),ニオブ(N
b),ボロン(B),バナジウム(V),アルミニウム
(Al)の少なくとも1種の元素を所定量含有している
ので、当該板状部材について窒化処理による熱処理効果
を確実に得ることができる。
【0125】また、更に、本願の第4の発明によれば、
基本的には、上記第3の発明と同様の効果を奏すること
ができる。特に、窒化処理が施される上記成形体の特定
部分は、窒化処理後の鋼板部材の板厚方向における平均
硬度をHv300以上であるので、当該鋼板部材の引張
強さを1000MPa程度以上にすることができ、非常
に大きい経済効果を得ることができる。例えば、自動車
の車体用のパネル部材や構造部材に適用した場合には、
板厚を薄くできるだけでなく補強部材を不要にでき、車
体重量の削減や材料費の低減のみならず当該部材のため
の金型費用や組付工数も不要とすることができ、著しい
経済効果を得ることができる。また、板厚方向における
平均硬さが同じでも、鋼板部材の表面部分(表面および
その近傍部分)と内部中央との硬度差が大きくなるほど
引張強さや伸び特性が低下するが、上記成形体の鋼板部
材表面部分と板厚方向における内部中央との硬度差をH
v200以下としたことにより、これら引張強さおよび
伸び特性の急激な低下を回避して、より安定した高強度
化を達成することができる。
【0126】また、更に、本願の第5の発明によれば、
基本的には、上記第1〜第4の発明のいずれか一と同様
の効果を奏することができる。特に、上記熱処理前に上
記成形体の上記特定部位以外の部分にマスキング処理を
施すようにしたので、確実かつ簡単に上記成形体の特定
部位のみを窒化処理で高強度化することができる。
【0127】また、更に、本願の第6の発明によれば、
基本的には、上記第1〜第4の発明のいずれか一と同様
の効果を奏することができる。特に、上記成形体の上記
特定部位のみを塩浴槽に浸漬させて窒化処理を施すよう
にしたので、別工程を設ける必要なしに、確実に上記成
形体の特定部位のみを窒化処理で高強度化することがで
きる。
【0128】また、更に、本願の第7の発明に係る板状
部材でなる成形体によれば、所定の仕様について互いに
異なる特性を有する板状部材どうしを接合して成る予備
成形体を所定形状に塑性加工し、得られた成形体の特定
部位を熱処理によって硬化させるようにしたので、熱処
理前における塑性加工性を十分良好に確保できる。そし
て、塑性加工後に行う熱処理によって、成形体の特定部
位に所期の強度を付与することができる。すなわち、テ
イラード・ブランク法を適用して、板状素材の歩留まり
の向上を図るとともに、一つの部材中に他の部分に比し
て強度が十分に高い部分を有する成形体が確実に得るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 鋼板素材の合金成分が窒化処理後の板厚方向
における硬度分布および平均硬度に及ぼす影響を調べた
試験の供試材aについての試験結果を示すグラフであ
る。
【図2】 上記試験の供試材bについての試験結果を示
すグラフである。
【図3】 上記試験の供試材cについての試験結果を示
すグラフである。
【図4】 上記試験の供試材dについての試験結果を示
すグラフである。
【図5】 鋼板の引張強さと自動車の車体の軽量化・コ
スト低減効果との関係を概略的に示すグラフである。
【図6】 鋼板の板厚方向における平均硬度と引張強さ
との相関性を示すグラフである。
【図7】 鋼板の板厚方向における硬度差と引張強さと
の関係を示すグラフである。
【図8】 鋼板の板厚方向における硬度差と伸び特性と
の関係を示すグラフである。
【図9】 成形体の具体例としてのセンタピラー・レイ
ンフォースメントを模式的に示す正面説明図である。
【図10】 成形体の他の具体例としてのフロントフレ
ームを模式的に示す斜視図である。
【図11】 成形体の更に他の具体例としてのフロント
フレームを模式的に示す斜視図である。
【図12】 上記更に他の具体例に係るフロントフレー
ムに用いた各ブランク材の窒化処理前および処理後にお
ける伸びに対する引張強さの関係を示すグラフである。
【図13】 自動車のキャビサイド・アッセンブリにテ
イラード・ブランク法を適用した例を示す分解斜視図で
ある。
【図14】 自動車のキャビサイド・アッセンブリにテ
イラード・ブランク法を適用した他の例を示す分解斜視
図である。
【図15】 発泡体で補強される車体フレームの発泡材
料セット前の断面構造を示す説明図である。
【図16】 上記発泡体で補強される車体フレームの発
泡材料セット状態での断面構造を示す説明図である。
【図17】 上記発泡体で補強される車体フレームの発
泡材料が発泡した後の断面構造を示す説明図である。
【図18】 車体フレームの静的片持ち曲げ試験を行う
試験装置を模式的に表した説明図である。
【図19】 上記片持ち曲げ試験における各種充填材入
りフレームの曲げ角度と曲げモーメントの関係を示すグ
ラフである。
【図20】 上記片持ち曲げ試験における各種充填材入
りフレームの最大曲げモーメントとエネルギ吸収量を示
すグラフである。
【図21】 接着剤層の剪断接着強さと最大曲げモーメ
ントとの関係を示すグラフである。
【図22】 フレームの所定領域に熱処理を施した具体
例と熱処理を行なわなかった比較例のせん断接着強さを
示すグラフである。
【図23】 ハイドロフォーム法による金属成形体の製
造方法を説明するための一連の工程説明図である。
【図24】 ハイドロフォーム法による金属成形体の製
造方法における部分窒化処理を説明するための一連の工
程説明図である。
【図25】 上記製造方法における部分窒化処理の他の
例を説明するための一連の工程説明図である。
【符号の説明】
10…センタピラー・レインフォースメント 10H,20H,32…高強度化領域 10M,20M,31…非高強度化領域 20,30…フロントフレーム F1…パイプ状部材 F2…予備成形体(ハイドロフォーム前) F3…成形体(ハイドロフォーム後) F4…ぺリメータフレーム(金属成形体:窒化処理後) FR…フレーム体 Pi…インナパネル S…塩浴槽 Se…発泡体(発泡硬化後) Se’…発泡材料(発泡硬化前)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B21D 26/02 B21D 26/02 A

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の仕様について互いに異なる特性を
    有する第1板状部材と第2板状部材とを接合して予備成
    形体を形成する工程と、 上記予備成形体に塑性加工を施して所定形状の成形体を
    形成する工程と、 熱処理により上記成形体の特定部位を硬化させる工程
    と、を備えたことを特徴とする板状部材でなる成形体の
    製造方法。
  2. 【請求項2】 上記第1板状部材と第2板状部材の上記
    塑性加工前における伸び特性の差が所定範囲内に設定さ
    れていることを特徴とする請求項1記載の板状部材でな
    る成形体の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記熱処理が窒化処理であり、上記第1
    及び第2の板状部材の少なくともいずれか一方は、窒化
    元素として、チタニウム(Ti),ニオブ(Nb),ボ
    ロン(B),バナジウム(V),アルミニウム(Al)
    の少なくとも1種の元素を所定量含有していることを特
    徴とする請求項1または請求項2に記載の板状部材でな
    る成形体の製造方法。
  4. 【請求項4】 上記成形体の特定部位は、板厚方向にお
    ける平均硬度がビッカース硬さでHv300以上で、且
    つ、表面部分と板厚方向における内部中央との硬度差が
    ビッカース硬さでHv200以下となるように窒化処理
    されることを特徴とする請求項3記載の板状部材を用い
    た成形体の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記熱処理前に、上記成形体の上記特定
    部位以外の部分にマスキング処理を施すことを特徴とす
    る請求項1〜請求項4のいずれか一に記載の板状部材で
    なる成形体の製造方法。
  6. 【請求項6】 上記成形体の上記特定部位のみを塩浴槽
    に浸漬させて硬化熱処理を施すことを特徴とする請求項
    1〜請求項4のいずれか一に記載の板状部材でなる成形
    体の製造方法。
  7. 【請求項7】 所定の仕様について互いに異なる特性を
    有する板状部材どうしを接合して成る予備成形体を所定
    形状に塑性加工し、得られた成形体の特定部位を熱処理
    によって硬化させたことを特徴とする板状部材でなる成
    形体。
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