【発明の詳細な説明】
ガラス化による細胞、組織および器官の低温保存用透過性保護剤のローディング
およびアンローディング
産業上の利用分野
本発明は、ガラス化(vitrification)による生物学的試料(細胞および多細胞
試料)の低温保存又は他の目的に必要とされる透過性保護剤の非毒性ローディン
グ(loading)およびアンローディング(unloading)に関する。
発明の背景
凍結による生物学的試料の従来の低温保存は、一般的でなくはない。しかしな
がら、氷晶形成の強い損傷作用により、細胞および多細胞試料の低温保存への低
温貯蔵法の適用が制限される。ガラス化は、氷晶の生成を伴わない冷却中の試料
の凝固を利用する低温保存のための別のアプローチである(Fahy et al.,1984
)。細胞(赤血球、幹細胞、精子等)および多細胞試料(腎臓、心臓等)の、ガ
ラス化による低温保存の信頼できる方法が、現在、必要とされている。しかしな
がら、本発明者(Bronshtein,1995)が指摘した従来の技術のいくつかの一般的
に容認された誤解および欠陥のために、これらの方法の開発はできなかった。
脱水の作用
低温での氷生成は、試料が十分に脱水された場合にのみ、避け得る。しかしな
がら、脱水(dehydration)は、一般的細胞損傷因子としても公知である。脱水の
損傷作用は、ガラス化溶液の濃度の増大に伴って増大し、ガラス化溶液が透過性
保護剤、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール(EG
)、プロピレングリコール、グリセロール等を含有するか否かに大いに依存する
。例えば、細胞は普通は、1mol/lより高い濃度で非透過性溶質のみを含有
する溶液中での平衡化においては生存できない。しかしながら、多くの種類の細
胞が、より高濃度で透過性保護剤を含有する溶液中での平衡化に容易に耐え得る
。これは、保護剤の浸透が脱水損傷から細胞を保護するためである。
ここで、脱水が、実際に非常に有害であり得る細胞容積の低減を意味しない、
ということに留意することが重要である(Marymen,1967,1970)。脱水という用
語は、水の除去、又は浸透圧の増大を意味する。この用語を間違って用いると、
いくつかの誤解を生じる。例えば、下記のように、脱水それ自体は強力な損傷因
子ではない。脱水は、本発明にしたがって行えば、保護因子でさえある。
非透過性溶質の高濃度溶液中での脱水における細胞の損傷は、生物学的高分子
と膜との間に、その間の距離が脱水の結果小さくなった場合に生じる水和力によ
り引き起こされると考えられる(Bryant and Wolfe(1992))。しかしながら、
細胞に透過性保護剤をローディングすると、細胞内の保護剤がこれらの力を減少
させるために、細胞の脱水が防止される、と考えられる。したがって、高浸透圧
に対して脱水中の細胞を保護するには、かなりの量の細胞内の保護剤が必要であ
る。この理由のために、脱水の強力な損傷作用を低減するために、脱水前に透過
性保護剤(ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコール(EG)、
プロピレングリコール、グリセロール等))のローディング溶液中で生物学的試
料を平衡化させる、ということか提案された(Rall and Fahy,1985)。このア
プローチを用いて、RallとFahy(1985)は、ガラス化によりマウス胚を低温保存
した。残念ながら、ローディングによる保護作用は、透過性保護剤を含有するガ
ラス化溶液中の平衡化時間につれて有意に低減する。
RallとFahy(1985)のアプローチは、少量の細胞を含有する種々の試料への適
用に成功した。しかしながら、より大きいそしてより複雑な試料(例えば、ヒト
腎臓、心臓又は肝臓)のガラス化は、主として、透過性保護剤を含有する高濃度
溶液の毒性作用のために、未だ成し遂げられていない。これらの高濃度溶液は、
冷却および加温中の複雑な試料中での氷形成を防止する必要がある。したがって
、毒性のメカニズムをより良く理解するためには、細胞損傷がガラス化溶液中で
の平衡化の時間に依存していることを考慮すべきである。ガラス化による保存を
成功させるには、ガラス化溶液はサイトゾルおよび細胞外中での氷形成、並びに
高濃度ガラス化溶液中での試料の平衡化(水和)に関連した毒性作用の両方をよ
り有効に減少させる必要がある。
ガラス化溶液の見かけの毒性
細胞内の保護剤がサイトゾルをガラス化するのを助ける(Bronshtein,1995)
という一般的な誤った確信、および、細胞内の保護剤には脱水中に細胞を保護す
るために必要とされるものがあるという事実に基づいて、細胞内部への保護剤の
浸透は、望ましいと考えられるかもしれない。文献中で考えられたこの浸透の負
の面は、保護剤の直接的化学毒性に関連する(Fahy et al.,1990)。毒性は保
護剤の濃度(細胞内部の保護剤の量ではなく)に比例すると考えられるため、毒
性を最小限にするために3つの基本的アプローチ(詳細に関しては、Steponkus
et al.,1992のレビューを参照)が提案された。
1)異なる透過性保護剤の混合物を使用すること、
2)「毒性中和剤」として作用する成分を添加すること、又は
3)低濃度でガラスを形成する溶質を同定すること。
しかしながら、Fahy等(1990)は、今日までの毒性についての生化学的試験が
毒性のメカニズムを立証するのに必要な基本的基準を満たしていない、というこ
とを見出した。これは実際には、典型的透過性保護剤(エチレングリコール、プ
ロピレングリコール、グリセロールおよびDMSO)の直接化学毒性が小さい、
ということを意味する。本発明者は、保護剤毒性についての現在の考え方を大き
く修正する必要がある、というFahy等(1990)の結論に同意する。
近年、LangisとSteponkus(1990)は、脱水工程後の単離ライムギプロトプラ
ストの生存が、ガラス化溶液の濃度よりむしろオスモル濃度の関数である、とい
うことを立証した。この観察を基礎にして、Steponkus等(1992)は、より低い
オスモル濃度を有する低毒性溶液を処方するための代替的戦略を考察した。
前記のように、細胞は、透過性保護剤をローディングされた場合に、数分間、
高濃度ガラス化溶液中での脱水を耐え得る。しかしながら、ガラス化溶液中での
長時間の平衡化では、細胞生存数は平衡化時問の増大に伴って減少する。細胞に
透過性保護剤をローディングすると、脱水時間が短い場合にガラス化溶液中での
脱水後に生じる損傷が防止されるため、損傷は主にオスモル濃度に依存すること
が示唆される。しかしながら、脱水後に達する細胞内の保護剤の濃度は、ガラス
化溶液のオスモル濃度の増大に伴って増大するため、既存の実験観察は、脱水胚
の損傷が細胞内の保護剤の濃度増大の結果であるか、あるいは浸透圧の増大の結
果であるのかという疑問には答えない。しかしなから、いずれの場合も、損傷が
脱水時間に伴って増大する理由に関する疑問は答えが得られていない。それは、
多細胞試料の脱水完了に要する時間は個々の細胞の場合よりも実質的に長いため
、非常に重要である。
本発明者の観察(Bronshteyn and Steponkus,1994;Steponkus et al.,1994
)は、ローディング済キイロショウジョウバエ胚に関するエチレングリコールベ
ースのガラス化溶液の見かけの毒性の実質的部分が胚内エチレングリコールの化
学毒性又はガラス化溶液の浸透圧よりむしろエチレングリコール透過(胚内部の
エチレングリコールの量の増大)に関連する、ということを示唆する。ガラス化
溶液中での平衡化中の保護剤の透過の損傷作用は、マウス胚を用いて実施された
試験でも立証された(Zhu et al.,1993;Tachikawa et al.,1993;Kasai et al
.,1990)。この毒性作用は、ローディング済細胞からの水の流出後、細胞内部
の保護剤の浸透圧および濃度が細胞外部とほぼ等しくなるため、保護剤の細胞内
浸透圧又は生化学的毒性の増大に関連しない。
本発明者は、高濃度の保護剤のローディング中の、細胞中への保護剤の透過の
実際の作用が、その後のアンローディング中に起きる細胞損傷の主因であると(
理論に拘束されるものではないが)考える。
細胞内への保護剤透過の動態
KedemとKatchalsky(1958)の古典的研究以後、細胞内部への保護剤透過に関
与する熱力学的力は、ガラス化溶液の組成とは無関係に保護剤濃度の(細胞膜を
介しての)勾配に比例する、ということが一般的に受け入れられた。しかしなが
ら、本発明者(Bronshteyn and Steponkus,1994)は、アミノ酸(グリシンおよ
びグルタミン酸)並びに炭水化物(スクロースおよびソルビトール)がキイロシ
ョウジョウバエ胚へのエチレングリコール透過を有意に減少させる、ということ
を見出した。アミノ酸の防止作用は、1重量%のグルタミン酸+0.5重量%の
グリシンが、42重量%のエチレングリコールを含有するガラス化溶液中で平衡
化で3時間まで平衡化中の胚内部へのエチレングリコール透過を制限したため、
印象的であった。炭水化物の防止作用は、約4分の1であった。これらの観察は
、KedemとKatchalsky(1958)のアプローチが保護剤の化学ポテンシャルに及ぼ
す共存溶質(co-solute)の作用を無視したことを示す。したがって、Kedemと
Katchalsky(1958)のモデル、およびこのモデルを基礎にして得られた定性的結
諭は、ガラス化溶液中での平衡化中の細胞内部への保護剤の透過を分析し、予測
するのに用いることができない。
保護剤とタンパク質との相互作用
Timasheff(1993)は、低温保存中にタンパク質を変性から保護ある種のコー
ティング(シェル)を保護剤が形成するという考えを批評した。彼の批評は、Ge
kko and Timasheff(1981)、Lee and Timasheff(1981)の論文、並びに保護剤
がタンパク質の表面から排除されることを報告するその他の刊行物に基づいてい
た。本発明者(Bronshtein,1995)は、Timasheffと彼の共同研究者の前記の結
論が2つの理由から疑わしいと考える。第一に、Timasheffと彼の共同研究者の
透析実験における熱力学的平衡は、透析袋内部の流体静力学的圧力が袋の外部の
圧力と等しい場合には、得られない。さらに、流体静力学的圧力におけるこの差
の作用は極わずかであるという示唆は誤っている。第二に、アミノ酸は、細胞外
水性溶液中の保護剤の化学ポテンシャルを低減することにより、細胞中への保護
剤の浸透を制限する(Bronshteyn and Steponkus,1994)。したがって、(理論
に拘束されるものではないが)保護剤はタンパク質の表面に吸着し、タンパク質
を水和する水分子に部分的に取って代わる。タンパク質表面で保護剤の分子と置
き換えられる水和の水の量は、保護剤濃度の増大に伴って増大する。
Crowe等(1990)は、凍結および脱水は、脱水中のタンパク質の安定化が糖と
タンパク質との間の引力により生じるということが判明したため、異なるストレ
スベクトルである、と示唆した。本発明者は、(理論に拘束されるものではない
か)タンパク質表面(および生物学的膜)での溶液のガラス化(「シェル」)は
、凍結および乾燥に等しく有効な保護の一般的メカニズムである、と考える。
低温での細胞内非晶質状態の安定性に及ぼす細胞内の保護剤の作用
Steponkus等(1992)は、ガラス化溶液のオスモル濃度の減少が、脱水時間が
数分又はそれ末満である場合には、ガラス化溶液中での脱水の損傷作用を低減さ
せるということを示した。しかしながら、低温保存後に細胞を生存させるには、
細胞外溶液およびサイトゾルの両方を首尾良くガラス化する必要かある。この理
由のために、Steponkus等(1992)は、ローディング工程のためのより良好な保
護剤は、低オスモル濃度を有するガラス化溶液中での脱水後にサイトゾルの安定
なガラス化を可能にするものである、ということを示唆した。この示唆は、細胞
の内部の保護剤の存在がサイトゾルのガラス化を助ける、という一般的確信を反
映していた。しかしながら、本発明者の最近の研究(Bronshtein、準備中)は、
最大凍結脱水化ウシ血清アルブミン(BSA)溶液のガラス化温度がTg=−2
0℃であることを示した。これらの研究では、Tgは、氷融解吸熱の検出可能な
開始の温度として推算された。したがって、タンパク質溶液中のTgは、透過性
保護剤の溶液中のTgよりはるかに高い。これは、保護剤を含有しない脱水化細
胞質の安定性が、同一浸透圧を有する透過性保護剤の溶液の場合よりはるかに高
いことを示唆する。これは、順化ライムギ葉から得られるプロトプラストに関し
て得られた観察(Steponkus et al.,1992;Langis and Steponkus,1990)と一
致する。彼らは、エチレングリコールをローディングしたプロトプラストは、液
体窒素中での保存後に最大生存を達成するには、エチレングリコールをローディ
ングしなかったものより大きい脱水を施されねばならない、ということを見出し
た。本発明者等(Bronshteyn and Steponkus,1993)は、ガラス化溶液中での脱
水後に非ローディングのショウジョウバエ胚での胚内凍結が、5℃/分で冷却中
に、2.125Mエチレングリコールをローディングしたものと比較してかなり
低い温度で起きることを見出した。したがって、従来の見地とは逆に、細胞質中
への低分子保護剤の付加は細胞質の安定性を低減する。
したがって、ガラス化による低温保存のために高濃度の透過性保護剤(PA)
を細胞、多細胞組織、器官および生物にローディング(保護剤の充填および同時
脱水)するための非毒性方法を提供することが、本発明の目的である。本方法は
、試料をガラス化溶液と長期間接触させている間の試料中への保護剤の制御され
た透過を可能にする。その後PAをアンローディング(PAの洗浄および再水和
)し、保存生物学的試料を再構築するための非損傷細胞法を提供し、そしてアン
ローディング(再水和)中に使用するための再水和溶液を提供することも、本方
法の目的である。ローディングおよびアンローディング方法、ガラス化および再
水和溶液はともに、低温保存試料の優れた生存を可能にする。これらの方法およ
び溶液は、前記の従来技術の誤った考えとは逆の理論に基づいている。
発明の要約
本発明は、透過性保護剤での生物学的試料のローディング又はアンローディン
グの毒性作用を最小限にするための方法に関する。本発明は、試料を、透過性保
護剤と、生物学的試料の細胞中に浸透する保護剤の量を制限する非透過性共存溶
質とを含有する溶液と接触させることにより試料にローディングする工程を含む
。本方法によれば、生物学的試料の細胞中に入る保護剤の能力の低減は、細胞外
溶液中の透過性保護剤の化学ポテンシャルを有効に低減する非透過性共存溶質を
添加することにより、最も有効に成し遂げられる。添加される共存溶質の量が多
い程、細胞中に浸透する保護剤の量は少なくなる。しかしながら、細胞の脱水を
防ぐには、細胞内部に或る最小量の保護剤が必要とされる。このため、添加でき
る共存溶質の濃度が限定される。細胞外溶液に添加できる共存溶質の最大濃度は
、細胞内への保護剤の浸透を制限するため、細胞を脱水から保護するのに必要な
保護剤の最小量に依存する。共存溶質の最大濃度は、透過性保護剤、細胞外溶液
の浸透圧および共存溶質の種類のすべての特定の組合せに関して、実験的に定め
ることができる。
本方法はまた、透過性保護剤および非透過性共存溶質の濃度の同時増大(減少
)を伴う透過性保護剤の漸進的又は段階的ローディング(アンローディング)を
包含する。保護剤の与えられた濃度に対して、非透過性共存溶質の濃度はなお細
胞を損傷しない最大可能濃度であるべきである。
水性溶液中の透過性保護剤の化学ポテンシャルを低減する共存溶質としては、
以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
1.アミノ酸:グリシン、アラニン、グルタミン酸、プロリン、バリン、ヒドロ
キシ−1−プロリン、βアミノプロピオン酸、アミノ酪酸、βアミノカプロン酸
、アミノイソ酪酸、N−メチルグリシン、ノルバリン、および0.1mol/l
より高い濃度で水に可溶性であるその他のもの、並びに>0.1mol/lの濃
度で水に可溶性のアミノ酸の誘導体(サルコシン、イミノジ酢酸、ヒドロキシエ
チルグリシン等)。
2.ベタイン:ベタインおよび0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性のそ
の他のベタイン。
3.炭水化物:
a)単糖(アルドースおよびケトース):グリセルアルデヒド、リキソース、
リボース、キシロース、ガラクトース、グルコース、ヘキソース、マンノース、
タロース、ヘプトース、ジヒドロキシアセトン、ペンツロース、ヘキスロース、
ヘプツロース、オクツロース等、およびそれらの誘導体、
b)アミノ糖:3−アミノ−3−デオキシ−D−リボース、キトサミン、フコ
サミン等、
c)アルジトールおよびイノシトール:グリセロール、エリトリトール、アラ
ビニトール、リビトール、マンニトール、イジトール、ベチトール、イノシトー
ル等、
d)>0.1mol/lの濃度で水に可溶性のアルドン酸、ウロン酸およびア
ルダル酸、
e)二糖および多糖(スクロース、トレハロース等)。
4.糖アルコール(ソルビトール等)。
アミノ酸は、水性溶液中の透過性保護剤の化学ポテンシヤルを最も有効に低減
する。
本発明は、ガラス化溶液の濃度並びにローディング、ガラス化溶液中での細胞
平衡化およびアンローディングの回数を、細胞損傷を増大することなく、有意に
増大させる。これは、試料内の浸透圧の勾配を低減することにより、器官に保護
剤をローディング中及びその後の冷却中に起きる多数の問題を解決する。試料中
の細胞の一部があまり脱水されない場合、それは低温で凍結して、損傷されるた
め、これは非常に重要なことである。
低温保存および保護剤の洗浄(アンローディング)後の細胞の水和は、より低
浸透圧を有するが、しかしなお細胞を損傷しない最大濃度の共存溶質(アミノ酸
、ベタイン又は炭水化物)を含有する同一保護剤の溶液中での試料の平衡化(器
官の場合には灌流)により成し遂げられる。アンローディング中の濃度の変化は
、漸進的又は段階的である。これは、保護剤の流出をスピードアップし、再水和
中の細胞容積の増大を制限する。これは、細胞容積が初期細胞容積以上に増大す
る
と細胞を損傷するため、非常に重要なことである。
前記は、保護剤がタンパク質の表面に優先的に引きつけられ(Bronshtein,19
95)、アミノ酸および糖がグリセロール、プロピレングリコール、エチレングリ
コールおよびその他の透過性保護剤の化学ポテンシャルを低減し(Bronshteyn a
nd Steponkus,1994)、保護剤の毒性が細胞内部の保護剤の量の増大に伴って増
大し(Bronshtein,1995)、そして低温での細胞内部の非晶質状態の安定性が細
胞内部の保護剤の量の増大に伴って低減する(Bronshtein,1995)、という本発
明者の最近の発見を反映するものである。
図面の簡単な説明
図1は、赤血球における60%エチレングリコールガラス化溶液の毒性に及ぼ
す共存溶質の作用のプロットを示す。
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、ガラス化による細胞、多細胞試料、および器官の低温保存の改良に
関する。氷形成を避けるために、試料は実質的に脱水される必要がある。脱水は
、細胞内部に生じる高分子間の大きい反発力のために、細胞を損傷する。これら
の力を低減するために、少量の保護剤が存在すべきである。しかしながら、細胞
内部の保護剤の量は、ガラス化溶液の毒性作用を低減し、低温での細胞内部の非
晶質状態の安定性を増大するためにできるだけ低く保持される必要かある。これ
は、0.1〜0.7mol/lの濃度でガラス化溶液中に非透過性共存溶質(ア
ミノ酸、ベタイン、糖等)を含有することにより、達成され得る。
保存後、試料は再水和され、正常生理学的媒質に戻される必要がある。言い換
えれば、細胞内の保護剤は細胞から除去され、水と置き換えられるべきである。
本発明者は、再水和中の損傷は、細胞がガラス化溶液から洗浄(再水和)溶液に
移されるときに、細胞容積が初期細胞容積より増大するために生じる、と考える
。この損傷の可能性を回避するには、再水和溶液中に、アミノ酸、ベタイン、炭
水化物、又は水性溶液中の透過性保護剤の化学ポテンシャルを有効に低減するそ
の他の非透過性共存溶質を含ませなければならない。共存溶質は、0.1〜0.
7
mol/lの濃度で用いられる。さらに高濃度の共存溶質は、細胞内の保護剤の
量をより有効に制限する。しかしながら、この量が極少量になると、脱水細胞は
損傷される可能性がある。
生物学的試料の保存方法は、試料を、透過性保護剤および生物学的試料の細胞
に侵入する保護剤の能力を低減する共存溶質を含む溶液に接触させることにより
、試料にローディングする工程を包含する。保護剤は、一群の一般的透過性保護
剤の1つであって、その例としては、ジメチルスルホキシド、エチレングリコー
ル、プロピレングリコールおよびグリセロールが挙げられるが、これらに限定さ
れない。共存溶質は、下記の多数の種類のうちの1つであり、その例としては、
0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性のアミノ酸およびその誘導体、0.
1mol/lより高い濃度で水に可溶性のベタイン、炭水化物および糖アルコー
ルが挙げられ、炭水化物は、0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性のアル
ドース単糖、ケトース単糖、アミノ糖、アルジトール、イノシトール、アルドン
酸、ウロン酸およびアルダル酸、二糖並びに多糖からなる群から選択されるが、
これらに限定されない。ガラス化溶液中の非透過性共存溶質の総濃度は、好まし
くは0.1〜0.7mol/lであり、細胞を損傷しない最大可能濃度に等しい
。
本発明の方法は、透過性保護剤および非透過性共存溶質の濃度の同時増大を伴
う、透過性保護剤の漸進的および/または段階的ローディングを包含する。非透
過性共存溶質の濃度は、生物学的試料を損傷しない最大可能濃度であるべきであ
る。
具体的には、ローディング工程は、試料を、漸次高くなる濃度の透過性保護剤
および共存溶質と接触させる2つ又はそれ以上の段階で行われる。ローディング
工程は、保護剤および共存溶質の濃度を初期濃度から所望のプロフィールに従っ
て最終濃度に同時的に増加することにより行われる。透過性保護剤の初期濃度は
ゼロである。共存溶質の初期濃度は、好ましくはゼロであるが、共存溶質が試料
を損傷しない限りは、ゼロ以上であってもよい。共存溶質の最終濃度は、試料の
性質、並びに保護剤の選択および濃度によって、経験的に決定される。
保護剤のアンローディングは、漸進的又は段階的に行い得る。ローディング中
の保護剤と共存溶質の濃度の同時増大のプロフィールにおける唯一の制限は、そ
れぞれの要素の濃度が高濃度の保護剤の毒性作用を最小限にするための最適比率
であることである。保護剤および共存溶質の濃度の増大は、手動で又は機械的に
行ってもよく、そして段階的に又は所望のプロフィールにしたがって達成しても
よい。プロフィール曲線の形状は、特定の細胞型に関するプロフィールの経験的
最適化に依存して、線形でも非線形でもよい。
一旦、生物学的試料が保存され、貯蔵されると、それは、試料の生存能力を保
持する目的で、結局は再水和されねばならない。再水和すなわちアンローディン
グ工程は、保存試料中の保護剤を水と置き換えることに関する。試料のアンロー
ディング工程は、保護剤が試料の細胞から除去されるように、保護剤を欠く(よ
り小濃度の保護剤を有する)水性溶液である再水和溶液と試料を接触させること
により行われる。好ましくは、試料は、ローディング工程とは逆の様式でアンロ
ーディングされる。具体的には、再水和溶液は共存溶質および保護剤を含有し、
アンローディング工程は、保護剤と共存溶質の濃度を初期濃度から所望プロフィ
ールにしたがって最終濃度に同時低減することにより行われる。保護剤および共
存溶質の両方の初期濃度は、それそれ、ローディング工程におけるその最終濃度
と等しくても、それより低くてもよい。好ましくは、アンローディング中に用い
られる保護剤および共存溶質は、同一試料のローディング中に用いられるものと
同一である。
再水和又はアンローディング溶液の保護剤および共存溶質は、ローディング又
はガラス化溶液に用いられる同一群の化合物から選択される。保護剤は、一群の
一般的透過性保護剤の1つであって、その例としては、ジメチルスルホキシド、
エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールか挙げられるが
、これらに限定されない。共存溶質は、下記の多数の種類のうちの1つであり、
その例としては、0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性のアミノ酸および
その誘導体、0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性のベタイン、炭水化物
および糖アルコールが挙げられ、炭水化物は0.1mol/lより高い濃度で水
に可溶性のアルドース単糖、ケトース単糖、アミノ糖、アルジトール、イノシト
ール、アルドン酸、ウロン酸およびアルダル酸、二糖並びに多糖からなる群から
選択されるが、これらに限定されない。アンローディング溶液中の非透過性共存
溶
質の総濃度は、好ましくは0.1〜0.7mol/lであって、細胞を損傷しな
い最大可能濃度に等しい。
ローディング工程の場合と同様に、アンローディング工程は、透過性保護剤お
よび非透過性共存溶質の濃度の同時低減を伴う、透過性保護剤の漸進的および/
又は段階的アンローディングを包含する。非透過性共存溶質の初期濃度は、生物
学的試料をなお損傷しない最大可能濃度であるべきである。
具体的には、アンローディング工程はまた、試料を漸進的に低くなる濃度の透
過性保護剤および非透過性共存溶質と接触させる2つ又はそれ以上の段階で行わ
れる。アンローディング工程は、保護剤および共存溶質の濃度を初期濃度から所
望のプロフィールにしたがって最終濃度に同時的に低減することにより行われる
。保護剤および共存溶質の初期濃度は、好ましくはローディング(ガラス化)溶
液中の最終濃度と同一である。透過性保護剤の最終濃度はゼロである。共存溶質
の最終濃度は、共存溶質が試料を損傷しない限りは、ゼロより高くてもよい。
保護剤のローディングは、漸進的又は段階的に行い得る。アンローディング中
の保護剤と共存溶質の濃度の同時低減のプロフィールにおける唯一の制限は、そ
れぞれの要素の濃度が毒性を最小限にし、再水和時の生存能力を最大にするため
の最適比率であることである。保護剤および共存溶質の濃度の低減は、手動で又
は機械的に行われてもよく、そして段階的に又は所望のプロフィールにしたがっ
て達成されてもよい。プロフィール曲線の形状は、特定細胞型に関するプロフィ
ールの経験的最適化に依存して、線形でも非線形でもよい。
実施例1.ジメチルスルホキシド(DMSO)によるラット心臓の漸進的ローデ
ィングおよびアンローディング
材料および方法
心臓外植片の調製:Institute of Laboratory Animal Resourcesにより示され
た「Principles of Laboratory Animal Care」およびInstitute of Laboratory
Animal Resourcesにより調製され、National Institute of Health(NIH Public
ation No.86-23,1985)により出版された「Guide for the Care and Use of La
boratory Animals」にしたがって、動物実験を行った。雄Sprague-Dawleyラット
(300〜350g)を
ナトリウムペントバルビタール(65mg/kg、腹腔内)で麻酔し、ヘパリン
(250u、静注)で凝固防止処理した。
心臓を摘出して、直ちに、(すべてmM)118のNaCl、11のグルコー
ス、25のNaHCO3、4.7のKCl、1.2のMgSO4、1.2のKH2
PO4、0.5のNa−EDTA、および2.5のCaCl2を含有する氷冷クレ
ブス・ヘンゼライト緩衝液(KHB)に浸漬した。大動脈にカニューレを挿入し
、心臓を、95%O2/%CO2で平衡化した36.5℃のKHBを用いて、70
mmHgで9分間、逆行灌流した。100%O2で飽和させたCP−11Eを用
いて60mmHgで2分間、灌流を継続した。CP−11Eの組成(すべてmM
)は、125のNaCl、7のグルコース、1.2のKH2PO4、10のマンニ
トール、15のMgSO4、14のKCl、10のHepes、0.02のED
TA、0.28のCaCl2,pH7.5であった。
DMSOおよびマンニトールのローディングおよび除去:CP−11E洗浄後
、停止心臓を灌流装置に移した(図1)。CP−11EBおよびCP−11E+
DMSO+マンニトールに100%O2を絶えず通気させた。灌流液を、ぜん動
ポンプにより、1ml/分の流量で、大動脈カニューレを介して供給した。2つ
の実験を室温で行った。
実験0:心臓を30重量%DMSOで漸進的にローディングし、直ちにアンロ
ーディングした。共存溶質は使用しなかった。勾配メーカーを用いて、0〜30
%DMSOの線形勾配を生成した。注入継続時間(又は注入溶液の総容量)によ
り、DMSO勾配を制御した。ローディング時間は30分であった。30分間の
ローディングの間、溶液の濃度の増大率は、1%DMSO/分であった。アンロ
ーディングは、ローディング終了と同時に開始した。アンローディング時間は6
0分であった。60分アンローディングの間、DMSO濃度低減の勾配は0.5
重量%/分であった。
実験1:心臓を30重量%DMSOで漸進的にローディングし、直ちにアンロ
ーディングした。勾配メーカーを用いて、0〜30%DMSOおよびO〜3%マ
ンニトールの線形勾配を生成した。注入継続時間(又は注入溶液の総容量)によ
り、DMSO勾配を制御した。ローディング時間は30分であった。30分間ロ
ーディングの間、溶液の濃度の増大率は、1%DMSO/分および0.075%
マンニトール/分であった。アンローディングは、ローディング終了と同時に開
始した。アンローディング時間は60分であった。60分アンローディングの間
、DMSO濃度低減の勾配は0.5重量%/分、マンニトールの最終濃度は1重
量%であった。
実験2:心臓を30重量%DMSOで30分間、漸進的にローディングし、次
いで、30%DMSO+3%マンニトールを用いて30分間灌流し、次いで、6
0分間アンローディング処理した。勾配メーカーを用いて、0〜30%DMSO
および0〜3%マンニトールの線形勾配を生成した。注入継続時間(又は注入溶
液の総容量)により、DMSO勾配を制御した。30分間ローディングの間、濃
度の増大率は、1%DMSO/分および0.075%マンニトール/分であった
。60分アンローディングの間、DMSO濃度低減の勾配は0.5重量%/分、
マンニトールの最終濃度は1重量%であった。
心機能の評価:予備負荷11mmHg、負荷後70mmHgの条件でKHBを
用いて、作動モード再灌流により、心機能を評価した。心拍数(HR、拍/分)
、大動脈および冠動脈流量(AFおよびCF、ml/分)、心拍出量(CO=A
F+CF、ml/分)、収縮期および弛緩期大動脈圧(mmHg)を記録した。
冠動脈抵抗および仕事率を、Neely等,1967(Neely et al."Effect of Prcssure
Development on Oxygen Consumption by the Isolated Rat Heart",Am.J.Ph
ysiology,212:804-12,1967)にしたがって算出した。
結果:DMSOローディングおよびアンローディング中にマンニトールが存在
しない場合(実験0)、心臓は拘縮を発現し、アンローディング後に機能の回復
を示さなかった。ローディング、灌流およびアンローディング中にマンニトール
が存在すると、心臓は柔らかいままで、アンローディング後に実質的機能を回復
した。表Iは、DMSOアンローディング後の心機能の回復を示す。結果は、マ
ンニトールの存在が、高濃度のDMSOおよびローディングおよびアンローディ
ング中の細胞外浸透圧の極端な変化により引き起こされる心臓への損傷を防止し
たことを、明らかに示した。
実施例2:エチレングリコール(EG)によるラット血液の段階的ローディング
およびアンローディング
材料および方法
実施例1に記載した心臓摘出後のラットの外頸静脈から、血液を採取した。
ローディング工程:
工程1:100μlの血液を、100μlの30重量%EG+0.9重量%N
aClと混合した。平衡化時間10分間。
工程2:60重量%EG+0.9重量%NaClとガラス化溶液1g当たり異
なる量のグルタミン酸一ナトリウム塩(GA)との混合物を含有する1000μ
lのガラス化溶液を徐々に(3〜5分間に)工程1で得られた混合物に添加した
。
その後、血液細胞をガラス化溶液中で60分間平衡化させた後、アンローディ
ングした。
アンローディング工程:
工程1:ガラス化溶液中で60分間平衡化後、赤血球を遠心分離(2000g
で5分間)し、0.5mlの上清を各試料から除去し、0.5mlの3重量%G
A+0.9重量%NaClを各試料に添加した。次に、試料を攪拌しながら混合
し、10分間平衡化させた。
工程2:10分間の平衡化後、前記の赤血球を再び遠心分離し、次に0.5m
lの上清を各試料から除去して、0.5mlの3重量%GA+0.9重量%Na
Clを各試料に添加した。次に、試料を攪拌しながら混合し、10分間平衡化さ
せた。
次に赤血球を再び遠心分離して、0.5mlの上清を各試料から収集した。
ガラス化溶液中での平衡化、アンローディングの第1および第2工程後に試料
から収集した上清の遊離ヘモグロビン濃度を用いて、赤血球損傷(溶血)を評価
した。0.5mlの上清を3mlの水に添加した後に390Turner分光光度計(
波長550nm)を用いて、遊離ヘモグロビンの濃度を測定した。上清中のヘモ
グロビン濃度の、100%溶血とした、41.7μの血液と3.5mlの水との
混合物中のヘモグロビン濃度に対する比として、溶血を測定した。
実験は室温で行った。実験に用いた全溶液のpHは7.0であった。
結果:平衡化(実線)、アンローディングの第1(破線)および第2(破線−
点線)工程後の溶血のガラス化溶液中のGAの濃度への依存性を、図1に示す。
図1に示した結果から、共存溶質(GA)の添加は、ガラス化溶液中で赤血球が
損傷するのを防止することが分かる。しかしながら、前記の特許で述べられてい
るように、共存溶質の濃度か高すぎると、損傷が生じ得る。
表1.単離ラット心臓の機能に及ぼす、マンニトールの存在下でのDMSOロ
ーディングおよび除去の効果。対照心機能は、作動モードで30分間、新たに単
離した心臓を灌流することにより決定した。DMSO処理心臓の機能は、実数で
表した。回復は、対照機能のパーセンテージとして表し、括弧内に示した。
参考文献
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成10年6月1日(1998.6.1)
【補正内容】
請求の範囲
1.透過性保護剤と前記透過性保護剤の化学ポテンシャルを効果的に低減させ
るのに適合した非透過性共存溶質とを含有する低温ガラス化溶液による生物学的
試料のローディング及びその後の前記生物学的試料の低温ガラス化を含む、ガラ
ス化法による低温保存を用いた前記生物学的試料の保存方法。
2.前記生物学的試料を再水和溶液に接触させることにより前記生物学的試料
をアンローディングする工程をさらに含む請求の範囲第1項に記載の生物学的試
料の保存方法。
3.前記透過性保護剤が、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロ
ピレングリコールおよびグリセロールからなる群から選択される請求の範囲第1
項に記載の生物学的試料の保存方法。
4.前記非透過性共存溶質が、0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性の
アミノ酸およびその誘導体、0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性のベタ
イン、炭水化物および糖アルコールからなる群から選択され、炭水化物は、0.
1mol/lより高い濃度で水に可溶性のアルドース単糖、ケトース単糖、アミ
ノ糖、アルジトール、イノシトール、アルドン酸、ウロン酸およびアルダル酸、
二糖並びに多糖からなる群から選択される請求の範囲第1項に記載の生物学的試
料の保存方法。
5.低温ガラス化溶液中の前記非透過性共存溶質の総濃度が0.1〜0.7m
ol/lであって、細胞を実質的に損傷しない最大可能濃度に等しい請求の範囲
第1項に記載の生物学的試料の保存方法。
6.前記非透過性共存溶質がアミノ酸である請求の範囲第4項に記載の生物学
的試料の保存方法。
7.さらに、前記生物学的試料が、それそれ増加する濃度を有する一連の前記
低温ガラス化溶液でローディングされる請求の範囲第1項に記載の生物学的試料
の保存方法。
8.ローディング工程が、前記透過性保護剤および前記非透過性共存溶質の濃
度を初期濃度から所望のプロフィールに従って最終濃度に増大させることにより
行われる請求の範囲第1項に記載の生物学的試料の保存方法。
9.非透過性共存溶質および透過性保護剤をさらに含有する再水和溶液と試料
を接触させることにより前記試料をアンローディングする工程をさらに含み、前
記アンローディング工程は所望のプロフィールに従って保護剤と共存溶質の濃度
を低減することにより行われる請求の範囲第1項に記載の生物学的試料の保存方
法。
10.前記共存溶質が、0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性のアミノ
酸およびその誘導体、0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性のベタイン、
炭水化物および糖アルコールからなる群から選択され、炭水化物は、0.1mo
l/lより高い濃度で水に可溶性のアルドース単糖、ケトース単糖、アミノ糖、
アルジトール、イノシトール、アルドン酸、ウロン酸およびアルダル酸、二糖並
びに多糖からなる群から選択される請求の範囲第9項に記載の生物学的試料の保
存方法。
11.ローディング工程が室温又はそれ以上の温度で行われる請求の範囲第1
項に記載の生物学的試料の保存方法。
12.透過性保護剤および前記透過性保護剤の化学ポテンシャルを効果的に低
減するのに適合した非透過性共存溶質を含有する、生物学的試料のガラス化によ
る低温保存用の低温ガラス化溶液。
13.前記透過性保護剤が、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プ
ロピレングリコールおよびグリセロールからなる群から選択される請求の範囲第
12項に記載の低温ガラス化溶液。
14.前記共存溶質が、0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性のアミノ
酸およびその誘導体、0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性のベタイン、
炭水化物および糖アルコールからなる群から選択され、炭水化物は、0.1mo
l/lより高い濃度で水に可溶性のアルドース単糖、ケトース単糖、アミノ糖、
アルジトール、イノシトール、アルドン酸、ウロン酸およびアルダル酸、二糖並
びに多糖からなる群から選択される請求の範囲第12項に記載の低温ガラス化溶
液。
15.透過性保護剤および前記透過性保護剤の化学ポテンシャルを効果的に低
減するのに適合した非透過性共存溶質を含有する、低温ガラス化生物学的試料の
再水和用の再水和溶液。
16.前記透過性保護剤が、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プ
ロピレングリコールおよびグリセロールからなる群から選択される請求の範囲第
15項に記載の再水和溶液。
17.前記共存溶質が、0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性のアミノ
酸およびその誘導体、0.1mol/lより高い濃度で水に可溶性のベタイン、
炭水化物および糖アルコールからなる群から選択され、炭水化物は、0.1mo
l/lより高い濃度で水に可溶性のアルドース単糖、ケトース単糖、アミノ糖、
アルジトール、イノシトール、アルドン酸、ウロン酸およびアルダル酸、二糖並
びに多糖からなる群から選択される請求の範囲第15項に記載の再水和溶液。
18.前記共存溶質の濃度が、室温又はサブゼロの温度で前記試料を損傷しな
い最大値である請求の範囲第17項に記載の再水和溶液。
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フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ
,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU
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CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,G
B,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE,KG
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LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,N
O,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG
,SI,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,
US,UZ,VN,YU