JP2001515838A - 弾薬のための赤外線トレーサ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 燃焼により本質的に赤外線だけを発光する発火組成物は、少なくとも一種の過酸化物成分、その過酸化物成分よりも強力な酸化剤、クーラント、結合剤、及び珪素を含む。一つの態様として、過酸化物成分は過酸化ストロンチウムと過酸化バリウムとの混合物であり、過酸化物成分よりも強力な酸化剤は硝酸バリウムであり、クーラントは炭酸マグネシウムであり、結合剤はカルシウムレゾネートであり、珪素は最低９９．９％の純度を有する。この発火組成物は赤外線トレーサの燃焼性成分として有用である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 本発明は、米国陸軍によって与えられた契約番号ＤＡＡＤ０５−９６−Ｃ−９
０１６の下で開発された。この発明の権利はその契約の条項によって与えられて
いるように、譲受人が保有する。

【０００２】 本発明は、赤外線を放出するトレーサ組成物に関する。特に、トレーサ組成物
と粒径との組合せは燃焼時間を伸ばし、可視光の放出を減ずる。

【０００３】 燃焼性トレーサ組成物の入った砲弾殻は、適切な発射弾道を決定するため砲撃
手によって用いられている。或る種のトレーサ組成物は赤外線標識を有する。燃
焼するとそのトレーサ組成物は２．５〜１４μの典型的な波長を有する赤外線を
発する。トレーサの燃焼放出光の極めて僅かな部分しか可視光範囲に入らない。
砲撃手又は砲撃手とチームになった監視者は、放出赤外線に敏感な夜間透視ゴー
グル又は他の装置により赤外線の発光を見ることができる。可視光スペクトルに
入る発光が存在しないと、敵にとって砲撃手の位置を決定するのは困難になる。

【０００４】 米国陸軍によって開発された一つの赤外線トレーサ組成物は、Ｒ−４４０とし
て指定されている。この組成物、即ち、過酸化バリウム、過酸化ストロンチウム
、カルシウムレゾネート（calcium resonate）及び炭酸マグネシウムの混合物は
、ドリス・ジュニャー（Doris, Jr.）による米国特許第３，６７７，８４２号明
細書に記載されている。

【０００５】 Ｒ−４４０配合物は極めて急速に燃焼する傾向がある。標準の３０ミリ砲弾に
含まれる体積のトレーサ組成物は、約５秒で消費される。最近の砲弾軌道は、時
々５秒を越える飛行時間を必要とし、Ｒ−４４０トレーサ混合物の効果性を減ず
る。更に、Ｒ−４４０トレーサ混合物の燃焼放出光は、部分的に可視光スペクト
ルに入り、時には砲撃手を危険に落とし入れる。

【０００６】 ニールソン（Nielson）による米国特許第５,６３９,９８４号明細書には、本 質的に可視光の発光を含まないと記載されている燃焼放出光をもつ人目に付かな
い赤外線トレーサ組成物が記載されている。この組成物は、アルカリ性金属化合
物、燃焼速度触媒、少なくとも一種の過酸化物、及び結合剤の混合物を含有する
。

【０００７】 その特許第５，６３９，９８４号に記載の組成物は、溶媒蒸発法により５００
μ〜８００μの粒径の粒子に成形されている。そのような「湿式」法は時間がか
かり、トレーサ混合物のコストを増大する。更にそのトレーサ混合物は、Ｒ−４
４０トレーサ混合物と同じか又は速く燃焼する。

【０００８】 従って、経済的に製造できると共に、Ｒ−４４０より優れた燃焼速度を有する
実質的に可視光を含まず赤外線を放出するトレーサ組成物に対する必要性が依然
として存在している。

【０００９】 従って、本発明の目的は、燃焼により実質的に完全に赤外線を出す燃焼性トレ
ーサ混合物を与えることである。トレーサ組成物が酸化剤、燃料及び燃焼速度調
節剤の混合物であることは本発明の特徴である。トレーサ混合物の各成分は、特
定の量及び特定の粒径で与えられている。本発明の別の特徴は、溶媒を添加する
必要なく、トレーサ組成物の成分が完全に乾式混合され、次に圧搾されているこ
とである。

【００１０】 本発明のトレーサ組成物の利点の中には、組成物がＲ−４４０よりもかなり長
い燃焼時間を有し、実質的に赤外線スペクトル内に入る光を出すと言う点がある
。更に別の利点は、乾式処理により、トレーサ組成物を大量に経済的に製造する
ことができることである。

【００１１】 本発明により、燃焼時に実質的に赤外線を放出する発火組成物が与えられる。
その組成物は、少なくとも一種の過酸化物成分約２０〜約９０重量％、前記過酸
化物成分よりも一層強力な酸化剤約１〜約２０重量％、燃焼速度調節剤約５〜約
１５重量％、結合剤約５〜約１５重量％、及び珪素約０．１〜約１１重量％から
本質的になる。

【００１２】 上述の目的及び特徴及び利点は、次の明細書及び図面から一層明らかになるで
あろう。

【００１３】 本発明の発火組成物は、第一の成分として少なくとも一種の過酸化物成分を有
する。適当な過酸化物成分には、過酸化ストロンチウム、過酸化バリウム、過酸
化カリウム、過酸化アンモニウム、過酸化ナトリウム及びそれらの混合物が含ま
れ、過酸化ストロンチウム、過酸化バリウム、及びそれらの混合物が好ましい。
過酸化物成分含有量は、少なくとも約３５重量％であって約９０重量％未満であ
るのがよい。もし過酸化物成分が約３５％未満であるか又は９０％より多い量で
存在すると、酸素対燃料比が、適切な発火又は燃焼特性を保持しなくなる。過酸
化物成分は、過酸化ストロンチウム及び過酸化バリウムの混合物のように一種よ
り多い過酸化物からなっていいてもよい。一つのトレーサ組成物の例は、過酸化
ストロンチウム及び過酸化バリウムを、約１：１の重量比で含んでいる。

【００１４】 第二成分は、過酸化物成分よりも強力な酸化剤である。強力な酸化剤は、トレ
ーサの可視光放出を増大することなく、更に赤外線検出装置を圧倒する赤外線放
出の許容できない大きな増大を与えることなく、燃焼の信頼性を増大する。好ま
しい強力な酸化剤は硝酸バリウムである。他の適当な強力な酸化剤には、過塩素
酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸
グアニジン及び硝酸ストロンチウムが含まれる。

【００１５】 強力な酸化剤の最少量は約１％である。１％未満の濃度では、点火の信頼性が
疑わしくなる。強力の酸化剤の濃度が約２０％を越えると、燃焼生成物が目で見
えるようになる。

【００１６】 発火組成物の次の成分は、約５％〜約１５％の量で存在するクーラントである
。一つの好ましいクーラントは炭酸マグネシウムである。他の適当なクーラント
には、蓚酸アンモニウム、蓚酸ストロンチウム、蓚酸ナトリウム、蓚酸バリウム
、蓚酸カルシウム、及びそれらの混合物のような蓚酸系の化合物が含まれる。

【００１７】 クーラント含有量が約５％未満であると、燃焼生成物は目で見えるようになる
。クーラント含有量が約１５％を越えると、トレーサ組成物は燃焼特性が悪くな
る。

【００１８】 結合剤は、粒状で与えられる発火組成物の他の成分を一緒に維持する。結合剤
は、約５８６ＭＰａ（８５，０００ｐｓｉ）より低い圧力で他の成分へ適合する
ように選択する。一つの好ましい結合剤はカルシウムレゾネートである。他の適
当な結合剤には、ポリウレタン及びエポキシのような重合体が含まれる。これら
の結合剤はトレーサ材料の構造的一体性を増大する。

【００１９】 結合剤は、約５％〜約１５％の量で存在する。結合剤含有量が約５％未満であ
るか、約１５％を越えると、結合剤は、飛行中のトレーサ組成物の一体性を維持
できなくなり、トレーサの崩壊を起こすことがある。

【００２０】 発火組成物の別の成分は、少なくとも９８重量％の純度を有し、好ましくは９
９．９重量％を越える純度を有する珪素である。珪素は無定形状態になっている
のが好ましい。珪素の中の不純物は燃焼で可視光を生ずる傾向があるので、高純
度の珪素が必要である。

【００２１】 珪素はトレーサ組成物の燃焼強度を効果的に増大し、燃焼の信頼性を改善する
。珪素は約０．１％〜約１５％の量で存在するのが好ましい。珪素含有量が０．
１％未満であると、トレーサ組成物の燃焼は不安定になる。その含有量が１５％
を越えると、トレーサ組成物は急速に燃焼する。

【００２２】 発光組成物の成分は、比較的小さな粒子として与える。粒子は不規則な形をし
ているので、粒径は粒子を篩に通し、粒子が通り抜ける篩の最大番号を判定する
ことにより決定する。過酸化物成分については、粒子は１００番の篩を通過し、
約１４９μの最大粒径を持つべきである。過酸化物成分よりも強力な酸化剤は、
過酸化物成分よりも僅かに小さく、約１０５μの最大粒径のために１４０メッシ
ュの篩を通過すべきである。クーラントは幾らか大きく、約４００μの最大粒径
のために３５メッシュの篩を通過する。結合剤は約１７７μの最大粒径のために
８０メッシュの篩を通過し、珪素は約１４９μの最大粒径のために１００メッシ
ュの篩を通過するべきである。

【００２３】 発光組成物の成分について比較的小さな粒子を使用することにより、成分をよ
く混合することと、発光組成物の全体に亙って一貫した燃焼速度を与えることと
の両方を促進する。成分はそれらの希望の性質に従って組合せ、円錐混合機か又
は同様なもので、実質的に均一な組成物が得られるまで混合する。典型的には約
３０分〜約２時間混合することにより希望の均一度が達成される。トレーサ成分
は乾式で混合してもよく、或は溶媒を含有させて湿式で混合し、後で蒸発させて
もよい。

【００２４】 次にトレーサ混合物を圧搾して希望の口径の砲弾殻中へ詰める。砲弾殻は鋼で
、圧搾は二段階法で油圧プレスにより行うのが好ましい。第一の圧力でトレーサ
混合物の約半分を詰め、次に第二の半分を殻に添加し、２番目の一層低い圧力で
圧搾する。最初の部分の圧力を増大すると、その部分の燃焼速度が低下する。圧
搾圧力の例は、第一の部分については５８６ＭＰａ（８５，０００ｐｓｉ）、第
二部分については４９６ＭＰａ（７２，０００ｐｓｉ）である。砲弾を発射する
と、推進剤により発射された高温ガスによりトレーサ組成物が点火する。

【００２５】 赤外線を放出する好ましい発火組成物は、 過酸化ストロンチウム： １９．５〜４９．５重量％ 過酸化バリウム： １９．５〜４９．５重量％ 炭酸マグネシウム： ５〜１５重量％ カルシウムレゾネート： ５〜１５重量％ 珪素： ０．１〜１１重量％ 硝酸バリウム： １〜２０重量％ から本質的になる。

【００２６】 トレーサのための一層好ましい組成は、で、 過酸化ストロンチウム： ３２〜３６重量％ 過酸化バリウム： ３２〜３６重量％ 炭酸マグネシウム： ８〜１２重量％ カルシウムレゾネート： ８〜１２重量％ 珪素： ０．５〜１．５重量％ 硝酸バリウム： ８〜１２重量％ である。

【００２７】 本発明のトレーサ組成物の利点は、次の諸例から一層明らかになるであろう。

【００２８】 例 過酸化ストロンチウム３４．５重量％、過酸化バリウム３４．４重量％、炭酸
マグネシウム１０重量％、カルシウムレゾネート１０重量％、珪素１重量％、及
び硝酸バリウム１０重量％からなる公称組成（nominal composition）を有し、 上で特定化した粒径を有するトレーサ組成物の均一な混合物を、３０ミリの鋼砲
弾殻中へ油圧で詰めた。各殻は２４０ｇの重さをもち、約５．５ｇのトレーサ組
成物を入れた。２０個の砲弾からなる一つのグループを＋６０℃（＋１４０°Ｆ
）に加熱し、２０個の砲弾からなる第二のグループを−３２℃（−２５°Ｆ）に
冷却し、その温度で最低２時間維持し、平衡状態に到達させた。次に弾丸を発射
し、発射しなかったものの％を記録した。

【００２９】 次に燃焼時間を、ストップウォッチを用いて赤外線コーグルを付けた監視人に
より。赤外線発光が現れてからその発光が終わるまでの時間を測定することによ
り決定した。赤外線ゴーグルを付けていない別の監視人は、可視光線スペクトル
中の発光が存在するか否かを決定した。結果は表１に示す通りである。

【００３０】

【表１】

【００３１】 次に、本発明のトレーサ組成物をＲ−４４０及び米国特許第５，６３９，９８
４号明細書に記載されている組成物の両方と比較した。表２に示すように、本発
明のトレーサ組成物は、従来の両方の組成物に対する改良になっている。

【００３２】

【表２】

【００３３】 本発明により、上述の目的、特徴及び利点を全て満足するトレーサ組成物が与
えられていることは明らかである。本発明をその特定の態様に関連して記述して
きたが、上の記述を参考にして当業者には多くの選択肢、修正及び変更が明らか
になることは明白である。従って、そのような選択肢、修正及び変更は、特許請
求の範囲の本質及び広い範囲内に入るものである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 テリー、ジャレット、エル アメリカ合衆国 イリノイ、カーボンデー ル、 イー、シンディ 606 (72)発明者 タッカー、マーク、エイ アメリカ合衆国 イリノイ、ブンコムベ、 テキサス イースタン ロード 810 (72)発明者 ボーン、フランク、エム アメリカ合衆国 イリノイ、カーターベイ ル、 マリリン ドライブ 107

Claims (12)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 燃焼時に実質的に赤外線を放出する発火組成物において、 少なくとも一種の過酸化物成分約１５〜約９０重量％、 前記過酸化物成分よりも一層強力な酸化剤約１〜約２０重量％、 クーラント約５〜約１５重量％、 結合剤約５〜約１５重量％、及び 珪素約０．１〜約１５重量％、 から本質的になる、上記発火組成物。
2. 【請求項２】 少なくとも一種の過酸化物成分が、過酸化ストロンチウム、
   過酸化バリウム、過酸化カリウム、過酸化アンモニウム、過酸化ナトリウム及び
   それらの混合物から選択されている、請求項１記載の発火組成物。
3. 【請求項３】 少なくとも一種の過酸化物成分が、過酸化ストロンチウム及
   び過酸化バリウムの混合物である、請求項２記載の発火組成物。
4. 【請求項４】 過酸化物成分よりも強力な酸化剤が、硝酸バリウム、過塩素
   酸アンモニウム、過塩素酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸
   グアニジン、硝酸ストロンチウム、及びそれらの混合物から選択されている、請
   求項１記載の発火組成物。
5. 【請求項５】 過酸化物成分よりも強力な酸化剤が硝酸バリウムである、請
   求項４記載の発火組成物。
6. 【請求項６】 クーラントが、炭酸マグネシウム、蓚酸アンモニウム、蓚酸
   ストロンチウム、蓚酸ナトリウム、蓚酸バリウム、蓚酸カルシウム、及びそれら
   の混合物から選択されている、請求項１記載の発火組成物。
7. 【請求項７】 クーラントが炭酸マグネシウムである、請求項６記載の発火
   組成物。
8. 【請求項８】 結合剤が、カルシウムレゾネート、ポリウレタン及びエポキ
   シからなる群から選択されている、請求項１記載の発火組成物。
9. 【請求項９】 結合剤がカルシウムレゾネートである、請求項８記載の発火
   組成物。
10. 【請求項１０】 少なくとも一種の過酸化物成分が、約１４９μの最大粒径
    を有し、過酸化物組成物よりも強力な酸化剤が約１０５μの最大粒径を有し、着
    色剤が約４００μの最大粒径を有し、結合剤が約１７７μの最大粒径を有し、珪
    素が約１４９μの最大粒径を有する、請求項１〜９のいずれか１項に記載の発火
    組成物。
11. 【請求項１１】 燃焼時に実質的に赤外線を放出する発火組成物において、 過酸化ストロンチウム約１９〜４９重量％、 過酸化バリウム約１９〜約４９重量％、 炭酸マグネシウム約５〜約１５重量％、 カルシウムレゾネート約５〜約１５重量％、 の珪素約０．１〜約１５重量％、及び の硝酸バリウム約１〜約２０重量％、 から本質的になる、上記発火組成物。
12. 【請求項１２】 過酸化ストロンチウム、過酸化バリウム及び珪素が、約１
    ４９μの最大粒径を有し、過酸化バリウムが約１０５μの最大粒径を有し、炭酸
    マグネシウムが約４００μの最大粒径を有し、カルシウムレジネートが約１７７
    μの最大粒径を有する、請求項１１記載の発火組成物。