JP2001510340A - プログラムされた細胞死のインデューサー及びインヒビターを同定する方法 - Google Patents

プログラムされた細胞死のインデューサー及びインヒビターを同定する方法

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Abstract

(57)【要約】 無細胞系においてプログラムされた細胞死のインデューサー及びインヒビターを同定する方法を記載する。これらの方法は、プログラムされた細胞死が細胞性蛋白質合成の停止及びeIF−2αのリン酸化を伴い、eIF−2αの脱リン酸化が蛋白質合成の停止を防止するという発見を利用している。

Description

【発明の詳細な説明】 プログラムされた細胞死の インデューサー及びインヒビターを同定する方法 米国政府は、国立癌研究所(CA47451)、国立アレルギー及び感染症研究 所(AI24009)並びに米国公衆衛生局からの助成金に拠ったこの発明に一定 の権利を有する。 発明の背景 プログラムされた細胞死即ちアポトーシスは、活性な細胞機構であり、幾つか の重要な意味を有する。第1に、かかる活性なプロセスが、細胞数並びに細胞の 生物学的活性を調節する付加的手段を与えることができることは明らかである。 第2に、アポトーシスを増強する突然変異又は細胞事象は、未成熟細胞の死を生 じ得る。第3に、特異的な活性な細胞機構に依存する細胞死の形態は、少なくと も潜在的に抑制され得る。最後に、プログラムされた細胞死の阻害は、異常な細 胞生存を生じることが予想され、発癌に寄与することが予想できよう(逆に、腫 瘍細胞の自殺がアポトーシス即ちプログラムされた細胞死により誘導され得るこ とが考えられるが)。 一般に、プログラムされた細胞死は、DNAの核濃縮及びオリゴヌクレオソー ム断片への分解を含む特有の形態的変化を包含する。ある環境においては、アポ トーシスが蛋白質合成の変化により引き起こされ、又は該変化がアポトーシスに 先行することは明白である。例えば、細胞の蛋白質合成は、有意にダウンレギュ レートされ得る。上記のDNA分解は、細胞の生合成活性の停止の数日後に起き る「遅い」プロセスであり得る。アポトーシスは、細胞破壊のための非常にみご となプロセスを与えるようであり、該プロセスにおいて、細胞は、特異的な認識 及びファゴサイトーシスにより処理されてから破裂する。この様式において、細 胞を、組織から、周囲の細胞にダメージを与えずに除去することができる。従っ て、プログラムされた細胞死は、形態的発達、免疫系におけるクローン選択並び に他の組織及び臓器系における正常な細胞の成熟及び死を含む多くの生理学的プ ロセスにとって重要であると思われる。 細胞が環境刺激に応答してアポトーシス即ちプログラムされた細胞死を受け得 るということも示されている。例には、刺激の出現例えば未成熟胸腺細胞に対す る糖質コルチコイドの出現、又は刺激の消失例えばインターロイキン2の成熟リ ンパ球からの撤収若しくはコロニー刺激因子の造血系前駆細胞からの除去が含ま れる(文献の総説としては、Williams,Cell,65:1097-1098[1991]を参照された い)。その上、標的の除去若しくはアクシオトミー(axiotomy)を真似る樹立され た神経細胞培養からの神経成長因子の除去又は他の方法の栄養因子の除去に対す る応答が自殺プログラム又はプログラムされた細胞死を引き起こすことが最近示 された。[Johnson等,Neurobiol.of Aging,10:549-552(1989)参照]。その著者 は、「死のカスケード」又は「死のプログラム」を提案し、栄養因子の欠乏が、 新たなmRNAの転写とそれに続くそのmRNAの死に関係する蛋白質への翻訳 を開始し、該蛋白質が順次的に作用して最終的に「キラー蛋白質」を生成するこ とを構想している。かかる細胞内機構は、上記のアポトーシスの特性例えば有害 物質の放出を伴わず且つ組織の完全性の破壊を伴わない特異的な細胞死とよく適 合する。その上、その著者は、高分子合成のインヒビターが神経成長因子の不在 時にニューロンの死を防止したことを示している。 腫瘍細胞が人為的に誘発されたアポトーシスにより排除され得るという可能性 を探るための研究が行われてきた。抗APO−1モノクローナル抗体は、幾つか のトランスフォームされたヒトB及びT細胞株においてアポトーシスを誘導する 。この抗体は、52kdの表面蛋白質に結合して、正の死の誘導シグナルを真似 ることにより又は生存に必要な因子の活性をブロックすることによって作用する ことができよう。抗FAS抗体は、類似の効果を有する。FAS抗原の遺伝子の 最近のクローニングと配列決定は、それが63キロダルトンの膜貫通レセプター であることを示した。Itoh等,Cell,66:233-243(1991)。 しかしながら、APO−1もFASも、専ら細胞死の引き金として機能すると いうことは、ありそうにない。両者は、全く異なる細胞性応答を別の環境下で活 性化することのできる細胞表面レセプターである。その上、これらの抗原は、腫 瘍細胞に限られず、それらの正常細胞に対する効果は、確かに重要な問題(もは やこれらの抗原を示さない変異体の可能な出現)である。 ある範囲の細胞毒性の薬物(癌の治療で数回使用されるものを含む)により誘導 される細胞死がアポトーシスの形態であることも見出されているということも示 された[Barry等,Biochem.Blopharmacol.,40:2353-2362(1990)]。これは、多く の場合、γ線又はX線照射後の細胞死についても真実である[Williams,Cell,6 5:1097-1098(1991)]。事実、腫瘍細胞においてアポトーシス即ちプログラムされ た細胞死が無いことは、細胞数の生理的制御の回避だけでなく、自然の防御及び 臨床的治療に対する抵抗性に対する寄与においても、基本的に重要なことである 。 bcl−2遺伝子の発現は、アポトーシスによる死を阻止することが示されて いる。bcl−2遺伝子は、最も一般的なヒトのリンパ腫である濾胞性B細胞リ ンパ腫において高率で見出される第14及び第18染色体間の転座のブレークポ イントから単離された。転座は、bcl−2遺伝子と免疫グロブリン重鎖遺伝子 座を集め、B細胞で異所的に増大したbcl−2発現を生じる。続いて、Hender son等[Cell,65:1107-1115(1991)]は、エプスタイン−バールウイルスに感染し た細胞における潜在的膜蛋白質1の発現が感染B細胞のbcl−2遺伝子の発現 の誘導によりプログラムされた細胞死を防止することを示した。Sentman等[Cell ,67:879-888(1991)]は、bcl−2遺伝子の発現が、多くの形態のアポトーシ スを阻止することができることを示した(但し、胸腺における負の選択を阻止し ない)。Strasser等[Cell,67:889-899(1991)]は、bcl−2トランスジーンの 発現がT細胞死を阻害し、胸腺の自己検閲を混乱させることを示した。Clem等[S cience,245:1388-1390(1991)]は、特異的なバキュウロウイルス遺伝子産物を、 昆虫細胞におけるアポトーシスのブロッキングの原因であるとして同定した。Ga gliardini等[Science,263:826-828(1994)]は、crmA遺伝子産物の、神経成 長因子を欠乏させたニワトリの背根神経節細胞におけるアポトーシスを防止する 能力を示した。一層一般的には、Barinaga[Science,263:754-756(1994)]も、ア ポトーシスにおけるbcl−2、Bax(ロング)、bclX(ショート)及びIC Eの役割を論じている。 多くの病気が、神経細胞のアポトーシスと関係付けられてきた。例えば、筋萎 縮性側索硬化症(Lou Gehrig病)は、アポトーシスによる細胞死と関係付けられて きた。Alexianu等,J.Neurochem.63:2365-2368(1994)。棘筋萎縮症は、アポトー シスによる細胞死を生じるアポトーシス阻害性蛋白質の部分的欠失と関係してい る。Roy等,Cell,80.167-178(1995)。ハンチントン病も又、アポトーシスによ る細胞死と関係付けらてきた。Portera-Cailliau等,J.Neurosci 15:3775-3787( 1995)。アポトーシスによる細胞死は又、アルツハイマー病と強く関係している 。Gschwind等,J.Neurochem 65:292-300(1995);及びLaFerla等,Nat.Genet.9:2 1-30(1995)。 従って、アポトーシス即ちプログラムされた細胞死を例えばそれを細胞中(例 えば、腫瘍細胞中)に誘導することにより制御する能力、又はアポトーシス即ち プログラムされた細胞死を阻止する能力(例えば、神経変性疾患例えばアルツハ イマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、棘筋萎縮症等において)が、 現在治療法が殆どない病気において、治療介入を与えるであろうことは明らかで ある。かかる治療制御を達成するためには、スクリーニング法を、プログラムさ れた細胞死を誘導し又は阻止する物質を同定するために利用できるようにしなけ ればならない。 発明の要約 無細胞系においてプログラムされた細胞死のインデューサー及びインヒビター を同定する方法を提供することは、この発明の目的である。一層特に、この発明 は、無細胞系において試験したときに、細胞の蛋白質合成機構のエレメントと相 互作用することによって効果を発揮するプログラムされた細胞死即ちアポトーシ スのインヒビター又はインデューサーを同定する方法に向けられている。 この発明は、プログラムされた細胞死即ちアポトーシスを誘発するある種のス トレスの結果として蛋白質合成を止められた細胞がeIF−2αをリン酸化し又 はその脱リン酸化を防止する能力の増大を示すという観察を利用する。この発明 は又、プログラムされた細胞死を防止することが示された蛋白質例えばγ134 .5及びGADD34がeIF−2αのリン酸化レベルを減じるという観察をも 利用する。 この発明によって、プログラムされた細胞死のインヒビターは、PPIα及び eIF−2αを含む無細胞系において、リン酸化されたeIF−2αのリン酸化 レベルを減じる能力又はeIF−2αのリン酸化を防止する能力によって同定さ れる。 プログラムされた細胞死のインデューサーは、この発明の無細胞系において、 eIF−2αの脱リン酸化を防止する能力、eIF−2αのリン酸化を誘導する 能力及び/又はPKRと相互作用する(例えば、活性化する)能力により同定され る。 この発明の他の目的及び利点は、下記の詳細な説明を図面及び請求の範囲と共 に観れば、当業者には明らかとなろう。 図面の簡単な説明 図1A及び1Bは、感染細胞及び擬似感染細胞抽出物におけるeIF−2αキ ナーゼ活性を示している。 図2A及び2Bは、ホスファターゼ1αのγ134.5及びMyD116との 会合を示している。 図3A及びBは、オカダ酸の存在時及び不在時に示したウイルスを感染させた 細胞の溶解物からの、35S−メチオニンで標識した蛋白質の電気泳動により分離 したオートラジオグラフィーイメージを示している。 図4は、HSV−1(F)、R3616及びR8300に擬似感染した細胞の並 びに感染した細胞の変異物との反応の後に、電気泳動により分離したeIF−2 のオートラジオグラフィーイメージを描いている。 図5A〜Dは、細胞当たり20pFUのHSV−1(F)、R3616又はR8 300に擬似感染したHeLa細胞の及び感染したかかる細胞のS10画分にお けるホスファターゼ活性を示している。図5Aは、擬似感染した又は感染した細 胞の様々な量のS10画分との反応後のeIF−2α中の残留放射能を示してい る。図5Bは、インヒビター2の、S10画分中のホスファターゼ活性によるe IF−2α1α32Pの脱リン酸化の速度に対する効果を示している。図5Cは、32 P−ホスホリラーセホスファターゼ活性を示している。図5Dは、インヒビタ ー2の、32P−ホスホリラーゼホスファターゼ活性の相対的速度に対する効果を 示している。 詳細な説明 単純ヘルペスウイルスは、それらをプログラムされた細胞死の研究に有用にす る特殊な性質を有している(1993年10月14日に公開されたWO93/1 9591及び下記で引用されている参考文献を参照のこと、これらのすべてを参 考として本明細書中に援用する)。1型単純ヘルペスウイルス(HSV−1)は、 機能が、ウイルスDNA合成の開始に続いてすべての蛋白質合成を終了させる宿 主の応答を排除することである遺伝子γ134.5をコードする[Chou等,Proc.N atl.Acad.Sci.USA 89:3266-3270(1992)]。γ134.5遺伝子は、HSV−1D NAの長いユニーク配列に隣接する配列中にマップされ、それ故、ゲノム当たり 2コピー存在する[Chou等,J.Virol.57:629-637(1986)]。HSV−1(F)γ13 4.5にコードされる263アミノ酸の蛋白質は、3つのドメイン、160アミ ノ酸ドメインのアミノ末端ドメイン、3アミノ酸(AlaThrPro)の10反 復、及び73アミノ酸のカルボキシ末端ドメインよりなる[Chou等,J.Virol.64: 1014-1020(1990)]。γ134.5のカルボキシ末端の64アミノ酸のストレッチ は、MyD116として知られるマウスの蛋白質及びGADD34として知られ るチャイニーズハムスターの蛋白質のカルボキシ末端のアミノ酸の対応するスト レッチと相同である[Chou等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3266-3270(1992);Mc Geoch等,Nature(London)353:609(1991)]。MyD116は、インターロイキン6 による最終的分化につき誘導される骨髄性白血病細胞において誘導される一組の 蛋白質の一員である[Lord等,Nucleic Acids Res.18:2823(1990)]。構造的にM yD116と密接に関係しているGADD34も又、DNA損傷又は細胞成長拘 束に続いて誘導される蛋白質のサブセットの1つである[Fornace等,Mol.Cell.B iol.9:4196-4203(1989);Fornace等,Ann.N.Y.Acad.Sci.663:139-153(1992);Zh an等,Mol.Cell.Biol.14.2361-2371(1994)]。 γ134.5の両コピーが不活性化され又は欠失されるヒトの細胞への単純ヘ ルペスウイルスの感染、特に、ヒト神経芽細胞腫の細胞株SK−N−SH又は一 次 ヒト包皮繊維芽細胞への感染は、宿主細胞の蛋白質合成及びウイルスの複製サイ クルの殆ど完全な停止を生じる[Chou等,J.Virol.66:8304-8311(1994)]。この蛋 白質合成の全体的な未成熟な停止は、これらの細胞がウイルスDNA合成のイン ヒビターで処理された場合又はベロ細胞においては、見られない[Chou等,Proc. Natl.Acad.Sci.USA 89:3266-3270(1992)]。 この蛋白質合成の全体的な未成熟な停止を排除する能力は、MyD116蛋白 質に相同なγ134.5蛋白質のカルボキシル末端ドメインにマップされる[Chou 等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:5247-5251(1994)]。実際、MyD116のカル ボキシル末端は、上首尾に、γ134.5の対応するドメインの代わりになる。 γ134.5蛋白質を欠くウイルス又は蛋白質のカルボキシル末端を発現できな いウイルスは、全体的に、HSV−1感染のマウス脳炎モデルにおいて無発病性 である[Chou等,Science 250:1262-1266(1990);Whitley等,J.Clin.Invest.91: 2837-2843(1993);McKie等,J.Gen.Virol.75:733-741(1994)]。 Chou等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:10516-10520(1995)は、これらの観察を 拡張し、野生型又は変異型の感染細胞において、二本鎖RNA依存性プロテイン キナーゼ(PKR)が活性化されることを示した。しかしながら、この蛋白質のカ ルボキシル末端をコードするγ134.5ドメインを欠くγ134.5-変異体が 感染した細胞においてのみ、eIF−2αのαサブユニットがリン酸化された。 プログラムされた細胞死と関係する蛋白質合成の未成熟な停止は、幾つかの興 味深い疑問、即ち何が宿主の応答を引き起こすのか、蛋白質合成を止める機構は 何か、そしてγ134.5が宿主の応答を排除する機構は何かという疑問を持ち 上げる。 以下に示すデータは、(i)MyD116のカルボキシ末端が酵母中のプロテイ ンホスファターゼ1αと相互作用し、MyD116とγ134.5の両者がプロ テインホスファターゼ1αとイン・ビトロで相互作用すること;(ii)感染細胞に おける蛋白質合成がオカダ酸、ホスファターゼ1インヒビターにより強く阻害さ れること;及び(iii)イン・ビトロでリン酸化された精製されたeIF−2のα サブユニットが、野生型の感染細胞のS10画分により、特異的に、擬似感染細 胞の3000倍の速度で脱リン酸化されるが、γ134.5-ウイルスに感染した 細胞 のeIF−2α−Pホスファターゼ活性は、擬似感染細胞のそれよりも低いとい うことを示す。eIF−2α−Pホスファターセ活性は、蛋白質ホスファターゼ インヒビター2に対して感受性である。eIF−2α−Pホスファターゼ活性と 対照的に、擬似感染細胞の抽出物は、[32P]ホスホリラーゼに対して、感染細胞 の抽出物の2倍より高いホスファターゼ活性を示す。これらの結果は、感染細胞 においては、γ134.5がホスファターゼと相互作用し、eIF−2αを脱リ ン酸化して、活性化されたPKRの存在にもかかわらず、継続された蛋白質合成 を可能にすることを示す。GADD34蛋白質は、真核細胞において、類似の機 能を有し得る。二本鎖RNAの蓄積にもかかわらずに蛋白質合成を維持する機構 は、今日まで調べられたウイルスについて記載されたものとは、異なっている。 前記の観察を一層広い状況に置くと、HSV−1に感染した細胞においては、 DNA合成の開始後に、対称的な転写物の蓄積がPKRの活性化を生じる。ウイ ルス蛋白質γ134.5は、PP1αにおそらくそのカルボキシ末端を介して結 合し、その酵素活性を、それ自身により又は他の蛋白質と共に、eIF−2αを 脱リン酸化するように向け直す。結果として、PKRが活性化されているにもか かわらず、蛋白質合成が衰えずに継続される。下記のデータは、この筋書きを支 持する。 野生型及びγ134.5変異型の両方に感染した細胞においては、PKRは、 リン酸化されるが、γ134.5遺伝子の全部又は3’ドメインを欠く変異体に 感染した細胞においてのみ、蛋白質合成が停止され、eIF−2αがリン酸化さ れる。蛋白質合成の停止をブロックするのに必要なγ134.5配列は、遺伝子 の3’ドメイン中にマップされ、機能を失うことなくMyD116の対応するド メイン、マウスGADD34遺伝子で置換され得る。 ここに報告するeIF−2α−Pホスファターゼ活性は、eIF−2α−Pと 以前にγ134.5-ウイルス感染した細胞において記載された蛋白質合成との定 常状態における差異を説明することができる[Chou等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:10516-10520(1995)]。PKRは、擬似感染細胞においては活性化されないの で、観察された中程度のeIF−2α−Pホスファターゼ活性は、蛋白質合成を 阻止するのに必要なeIF−2αのリン酸化の程度を防止するのに十分であろう 。野 生型HSV−1の感染は、PKRの活性化を生じない[Chou等,Proc.Natl.Acad. Sci.USA 92:10516-10520(1995)]が、その効果は、おそらく、eIF−2α−P ホスファターゼにおいて、約3000倍増を超えて対抗するであろう。このeI F−2α−Pホスファターゼ活性における顕著な増加は、γ134.5-変異体の 感染がeIF−2α−Pホスファターゼ活性の減少(これは、PKRの活性化に 際してeIF−2αのリン酸化及び蛋白質合成の阻害を生じる)と関係している ので、γ134.5遺伝子産物の発現によるものである[Chou等,Proc.Natl.Acad .Sci.USA 92:10516-10520(1995)]。 酵母の2ハイブリッド系において、MyD116のカルボキシル末端は、ヒト のPP1αと相互作用した。PP1αとMyD116又はγ134.5蛋白質と の相互作用も又、イン・ビトロのプルダウン実験において示すことができる。擬 似感染又は感染細胞の細胞質画分で測定されるeIF−2αホスファターゼ活性 はPP1に由来するという仮説は、それがインヒビター2に感受性であったとい う観察により強められる。それにもかかわらず、2つの証拠が、この活性がeI F−2αに向け直されたPP1αの改変型を表し得るということを示唆している 。特に、eIF−2α−Pホスファターゼ活性は、擬似感染細胞のものより、イ ンヒビター2に対して一層感受性が低かったし、更に、PP1の既知の機能であ るホスホリラーゼホスファターゼ活性は、未感染細胞において、感染細胞におけ るよりも一層強力であった。 この仕事は又、GADD34の推定上の機能にも光を落とす。上記のように、 マウスGADD34遺伝子のカルボキシル末端(MyD116)は、γ134.5 の対応するドメインに相同であり、それの代わりとなり得る[He等,J.Virol.,70 :84-90(1996)]。PP1αがγ134.5及びMyD116キメラ蛋白質の両方と イン・ビトロで相互作用するということも示されている(下記、参照)。これらの 結果は、GADD34遺伝子の機能の少なくとも1つがγ134.5遺伝子のそ れと類似していること及びγ134.5遺伝子がその哺乳動物細胞の相同物を置 き換えて、普通eIF−2αのリン酸化によって蛋白質合成を完全に破壊するス トレスにもかかわらず蛋白質合成を維持するのに有用であり得るということを主 張している。 最後に、現在までに研究された殆どのウイルスは、二本鎖RNAに結合する蛋 白質、例えば、ワクシニアのE2L[Davies等,J.Virol.67.1688-1692(1993);C arroll等,J.Biol.Chem.268:12837-12842(1993);及びYuwen等,Virology 195:7 32-744(1993)]、レオ及びロタウイルスのα3蛋白質[Langland等,J.Virol.68:3 821-3829(1994);Beattie等,J.Virol.69:499-505(1995);Imani等,Proc.Natl. Acad.Sci.USA 85:7887-7891(1988);及びLloyd等,J.Virol.66:6878-6884(1992) ]及びインフルエンザのNS1蛋白質[Lu等,Virology 214:222-228(1995)]又は PKRをそれに結合することにより不活性化する蛋白質若しくはRNA、例えば 、ワクシニアK3L、エプスタイン−バールウイルスEBERS1及び2[Sharp 等,Nucleic Acids Res.21:4483-4490(1993)]、アデノウイルスVA1RNA[Sh arp等,Nucleic Acids Res.21:4483-4490(1993);及びGhade等,J.Virol.68:413 7-4151(1994)]、インフルエンザウイルス感染細胞p58蛋白質[Lee等,Mol.Cel l.Biol.14:2331-2342(1994)]をコードすることによってeIF−2αのリン酸化 をブロックし、又はPKRを分解する(ポロウイルス)[Black等,J.Virol.67:71- 800(1993)]。HIV−1のTAR配列は、細胞性のTAR結合性蛋白質及びPK Rに結合するようである[McMillan等,Virology 213:413-424(1995);Park等,P roc.Natl.Acad.Sci.USA 91:4713-4717(1994);及びConsentino等Proc.Natl.Acad .Sci.USA 92:9445-9449(1995)]。例外は、イン・ビトロで大いに二本鎖RNAよ りなるにもかかわらずPKRを活性化しない肝炎デルタウイルス[McNair等,J.G en.Virol.75:1371-1378(1994)]及び大型T抗原がPKRのポスト活性化ステップ に作用するシミアンウイルス40[Swaminahan等,J.Virol.219:321-323(1996)] であろう。これらのデータは、HSV−1及びHSV−2が、PKR又は二本鎖 RNAよりもリン酸化されたeIF−2αを標的とすることにより、非常に異な った機構を利用して、蛋白質合成の停止を排除するということを示唆している。 これらの機構の解明は、プログラムされた細胞死のインデューサー及びインヒ ビターの両方のスクリーニングに有用な新規な無細胞の方法を開発する能力を提 供し、かかるプログラムされた細胞死のインヒビター又はインデューサーは、プ ログラムされた細胞死の誘導と関係する病気の予防に有用な治療剤並びに、プロ グラムされた細胞死を誘導することが望ましい病気例えば広範囲の腫瘍形成性疾 患の何れかの治療剤を与えることができる。かかる系は又、ここで論じた及び以 下に例示する機構によって、感染細胞におけるプログラムされた細胞死に影響を 与える抗ウイルス性物質を同定するのにも有用である。下記の実施例は、この発 明の実施を例示するものであり、請求の範囲に列記した発明の範囲を制限するこ とを意図したものではない。 実施例1は、研究に使用した細胞及びウイルスを記載する。 実施例2は、eIF−2αのリン酸化が、R3616(γ134.5-)が感染し た細胞のリボソームに富み、蛋白質合成が停止された画分に存在するキナーゼと 関係していることを示す。これらのデータは又、[γ32P]−ATPとの反応後に 、同画分からのPKRの免疫沈降が幾らかのリン酸化されたポリペプチを生成し たことをも示している。 実施例3は、ヒトのプロテインホスファターゼ1αのクローニング及び発現を 記載している。 実施例4は、eIF−2αホスファターゼ活性の測定を記載している。 実施例5は、ホスホリラーゼ及びホスファターゼの活性の測定を記載している 。 実施例6は、GADD3y(MyD116)の酵母2ハイブリッドアッセイにお けるPP1αとの相互作用及びPP1αの同定を記載している。 実施例7は、MyD116及びγ134.5のイン・ビトロでのPP1αへの 結合を記載している。 実施例8は、感染細胞における蛋白質合成におけるホスファターゼ活性の役割 を記載している。 実施例9は、野生型又はR8300組換えウイルス感染細胞におけるeIF− 2αホスファターゼの活性を記載している。 実施例10は、eIF−2αホスファターゼ活性のPPαインヒビター2に対 する感受性を記載している。 実施例11は、活性化されたホスファターゼ活性がeIF−2αに特異的であ ることを示す。 実施例12は、無細胞系において、プログラムされた細胞死のインデューサー 及びインヒビターを同定する方法を記載している。 実施例1 細胞及びウイルス ベロ細胞、HeLa細胞及びヒトの神経芽細胞腫細胞(SK−N−SH)を、Am erican Type Culture Collection(メリーランド、Rockville,Parklawn Drive 12301在) から入手して、5%(ベロ及びHeLa細胞)及び10%(SK−N−SH細胞)の ウシ胎児血清をそれぞれ補ったダルベッコ改変イーグル培地にて増殖させた。H SV−1(F)は、これらの研究で用いたプロトタイプのHSV−1株である(Eje rcoto等,J.Gen.Virol.2:357-364(1968))。HSV−1組換えR3616は、以 前に記載されている[Chou等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3266-3270(1992);Ch ou等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:5247-5251(1994);Chou等,Science 250:126 2-1266(1990)]。R3616ウイルスは、γ134.5遺伝子の両コピーのコーデ ィングドメインからの1Kbを欠いている。組換えウイルスR8300において 、γ134.5遺伝子のカルボキシル末端ドメインをコードする配列は、He等,J .Virol.70:84-90(1996)に記載されたように、MyD116遺伝子の対応するド メインで置換された。 実施例2 eIF−2αキナーゼ活性は、 γ134.5-ウイルスが感染した細胞のリボソーム画分と結合している Chou等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:10516-10520(1995)に記載された結果を 考慮して、一連の研究を行って、R3616に感染したヒトの神経芽細胞腫細胞 における蛋白質合成の未成熟な停止が翻訳開始因子eIF−2のαサブユニット のeIF−2αキナーゼ活性による修飾(リン酸化)によるものかどうかを測定し た。これらの実験では、HeLa細胞を、eIF−2がこの細胞株の溶解物にお いて一層安定であるらしい限り用いた。HeLa細胞も、現在まで研究された殆 どのヒトの細胞株と同様に、γ134.5-ウイルスに感染した細胞における蛋白 質合成の未成熟の停止によって影響を受ける。 HeLa細胞の複製培養に、HSV−1(F)又はR3616ウイルスを、Chou 等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:10516-10520(1995)に記載されたように、擬似 感 染又は感染させた。感染の7時間後に、これらの細胞を採取して、すべての細胞 質物質(ミトコンドリアを除く)を含むS10画分を、Pollard及びClemensにより 記載された手順(Pollard等,Methods in Molecular Biology:New Nucleic Acid Techniques(Walker,J.M.,編)第5章、47〜60頁、ニュージャージー、Clifton,Huma na Press,(1988))に従って調製した。S100画分(ポストリボソーム)は、S1 0画分から、Beckman SW41ローターにて、4℃で、29,000rpmで3時間 の遠心分離後に調製された上清液体であった。この画分は、殆どの可溶性蛋白質 を含んだが、リボソームを含まなかった。ウサギのeIF−2を、ウサギの網状 赤血球溶解物から、Grass等,J.Biol.Chem.,255:6270-6275(1980)に記載された 方法に従って精製し、これらの抽出物中に存在するeIF−2αキナーゼ活性を 検出するのに用いた。0.2μgのeIF−2を、[γ32P]−ATP(試料当た り100μCi、比活性6000Ci/mモル、NEN,マサチューセッツ、Boston)の存在 下で、S10又はS100画分と、30℃で20分間反応させた。次いで、これ らの反応混合物を、可溶化し、N’N’−ジアリルタルタルジアミドで架橋した 変性用12%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動により分離し、ニトロセルロ ースシート上にトランスファーし、そして以前に記載されたようにしてオートラ ジオグラフィーにかけた(Chou等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:3266-3270(1992) )。図1は、この分析の結果を示している。外因性のeIF−2を加えたレーン は、一番左端に示した。eIF−2αの位置を右に示してある。 図1に示したように、パネルA、eIF−2αサブユニットは、R3616感 染細胞のS10抽出物において甚だしくリン酸化され、野生型細胞又は擬似感染 細胞においては最小限度リン酸化され、そして細胞抽出物の内場合には全くリン 酸化されなかった。これらの結果は、γ134.5-ウイルス感染細胞のS10画 分がeIF−2αキナーゼ活性(これは、擬似感染細胞又は野生型細胞の同様の 抽出物中ではずっと少ないか又はなかった)を含んだことを示している。この活 性は、調べたすべてのS100画分に存在せず、これは、キナーゼ活性がリボソ ームと結合していることを示唆している。外因性eIF−2の不在時には、内因 性eIF−2の最小のリン酸化が細胞内の定常状態のリン酸化及び脱リン酸化プ ロセスのためにすべての抽出物において認められた。 図1、パネルBは、eIF−2αに特異的なモノクローナル抗体で染色した分 離された蛋白質を含むニトロセルロースシートの写真を示している(Scorsone等 ,J.Biol.Chem.262:14538-14543(1987))。適当な二次抗体との反応の後に、ブロ ットを、Promega(ウィスコンシン、Madison在)より提供された呈色試薬で発色させて、 eIF−2αポリペプチドを同定した。矢印は、パネルA中のリン酸化eIF− 2αポリペプチドをパネルB中の抗体染色したeIF−2αポリペプチドと向き を合わせて整列させるために用いた点を示している。図1のパネルB中のデータ は、eIF−2αのレベルがそれを加えたすべての試料において同様であったこ とを示している。 この活性は、擬似感染した又は野生型の感染細胞には、存在しなかった。eI F−2は、Met−tRNAf及びGTPと3成分複合体で結合し、それは、次 いで、リボソームサブユニットと前開始(pre-initiation)複合体にて会合する(M errick,W.C.,Microbiological Reviews 56:291-315(1992);Hershey,J.W.B., Annu.Rev.Biochem.60:717-755(1991))。開始後に、eIF−2は、eIF−2B 、他の翻訳因子の助成により、80S複合体から再循環される。翻訳を調節する 事象の1つは、eIF−2複合体のαサブユニットのリン酸化である。eIF− 2αのリン酸化は、ウイルス感染、熱ショック、重金属、血清、アミノ酸若しく はグルコースの欠乏により引き起こされる成長阻害、細胞ストレスに応答して、 ヘム制御された造血細胞における蛋白質合成の停止と相関する(Hershey,J.W.B. ,Annu.Rev.Biochem.60:717-755(1991);Sarre,T.,BioSystems 22:311-325(19 89))。これらの効果は、eIF−2αのSer51の、PKR(分子量68,00 0のキナーゼで、dsIとしても知られる、自身を自己リン酸化する二本鎖RN A活性化されたeIF−2αキナーゼ)又はHRI(へム制御されるeIF−2α キナーゼ)によるリン酸化とリンクされてきた(Merrick,W.C.,Micro biologica l Reviews 56:291-315(1992);Hershey,J.W.B.,Annu.Rev.Biochem.60:717-755 (1991))。Ser51のリン酸化の蛋白質合成の調節における第一の役割は、Se r51のAlaによる置換がリン酸化を排除して蛋白質合成を維持するという観察 により支持されている(Pathak等,Mol Cell Biol,8:993-995(1988))。 実施例3 ヒトのプロテインホスファターゼα(PP1α)の クローニング及び発現 ヒトのプロテインホスファターゼ1α(PP1α)をコードする1.37Kbの cDNAを含むプラスミドpRB4891を、市販の脳cDNAライブラリー(S tratagene)から単離した。pRB4890を構築するために、MyD116のコ ドン524〜657をコードするBamHI−EcoRI断片を、He等,J.Viro l.70:84-90(1996)により記載された遺伝子のcDNAコピーから、プライマーTG ACTGGATGCAGAGGCGGCTCAGATTGTTC(SEQ ID NO:1)及びAGCGCGCAATTAACCCTCACTAAAG (SEQ ID NO:2)を用いてPCRによって増幅させ、pGBT9(Clontech)のBa mHI−EcoRI部位に挿入して、2ハイブリッド系において、「餌」として 働かせた。PCRの条件は、94℃で2分間、60℃で3分間及び72℃で3分 間を25サイクルであった。キメラのGST−PP1α遺伝子を含むpRB48 92を、PP1αの完全なコード配列(但し、最初のメチオニンコドンを除く)を 含む0.9KbのPCR断片をpGEX4T−1(Pharmacia)のEcoRI−S alI部位に連結することにより構築した。オリゴヌクレオチドプライマーは、 GCACTGAATTCTCCGACAGCGAGAAGCTCAAC(SEQ ID NO:3)及びGCACTGTCGACATCTGGGGCAC AGGGTGGTGT(SEQ ID NO:4)であった。キメラのグルタチオンSトランスフェラー ゼ(GST)−γ134.5のカルボキシル末端ドメイン[GST−γ134.5(C )]を有するpRB4893を構築するために、pRB71からのγ134.5の コドン146〜263をコードするEcoRI−SalI断片及びpGEX4T −1のEcoRI−SalI部位にクローン化した。GSTにイン・フレームで 融合されたMyD116の3’末端の174コドンをコードするAccI−Ec oRI断片[GST−MyD116(C)]を含むpRB4873の構築を、He等, J.Virol.70:84-90(1996)により報告されたように行った。GST−MyD116 (C)、GST−γ134.5(C)及びGST−PP1融合蛋白質の発現を、イソ プロピル−β−D−チオガラクトシドを、プラスミドpRB4873、pRB4 892又はpRB4892でトランスフォームした大腸菌BL21細胞を含む培 地に加えることにより誘導し、次いで、細菌溶解物からの融合蛋白質のアフィニ ティー精 製をグルタチオンと結合体化したアガロースビーズにて行った。 実施例4 eIF−2αのホスファターゼ活性の測定 翻訳開始因子eIF−2を、Gross等,J.Biol.Chem.255:6270-6275(1980)の方 法に従って、ウサギの網状赤血球リボソームから精製した。ヘミン制御された翻 訳リプレッサー(HCR)を、Gross等,Biochem.Biophys.Res.Comm.50:832-838(1 983)に従って、ステップ4まで部分精製した。eIF−2(20pモル又は2. 7μg)をステップ4HCRと、0.02Mトリス−HCl(pH7.5)、40 mMKCl、2.0mM MgCl2及び0.17mM[γ32P]ATP(2〜10 Ci又は74〜370GBq/mモル)(最終容積12μl)中で、25分間、3 4℃で反応させて、リン酸化したeIF−2α及びeIF−2β(それぞれ、e IF−21モル当たり1.0及び0.7モル)を生成した。HeLa細胞を、細 胞当たり20PFUのHSV−1(f)、R3616又はR8300での擬似感染 又は感染の15時間後に採取した。S10画分を、Chou等,Proc.Natl.Acad.Sci .USA 92:10516-10520(1995)に記載されたようにして擬似感染細胞又は感染細胞 の溶解物から調製し、0.02Mトリス−HCl(pH7.5)、50mM KC l、2mM MgCl2及び0.1mM EDTAで最終的容積18μlまで希 釈した。次いで、ATPを終濃度0.8mMまで加えた。34℃で30秒後に、 各試料に、1.2μl(2pモル)のeIF−2(α32P)を加えて、34℃でイン キュベートした。eIF−2(α32P)のリン酸化速度を、Gross等,Biochim.Bio phys.ACTA 740:255-263(1983)の方法により、6.0μlのアリコートを図に示 した時点でSDSを含む溶液中に入れ、その後、記載したように7%変性ポリア クリルアミドゲル上で21時間にわたって44V(3V/cm)で電気泳動にかけ 、クーマシーブルー又は銀で染色し、乾燥しそしてオートラジオグラフィーをと ることによって測定した。eIF−2(α32P)中に残っている32Pを、このバン ドを切り出して、そのチェレンコフ放射を、更にインキュベートすることなく並 行して電気泳動にかけたeIF−2(α32P)の同等のアリコートのものと比較す ることによって定量した。 実施例5 ホスホリラーゼ及びホスファターゼ活性の測定 ホスホリラーゼb(32μg、Sigma)を、0.01Mトリス−HCl(pH7. 5)、2.0mM MgCl2及び0.13mM[γ32P]ATP(3Ci又は11 1GBq/mモル)(最終容積15μl)中で、3.3μgのホスホリラーゼキナ ーゼ(Sigma、ミズーリ、St.Louis)と、34℃で、10分間インキュベートすること によりリン酸化した。脱リン酸化を、4.4μgの[32P]ホスホリラーゼを、実 施例4に記載のように構成されてインキュベートされた試料に最終容積27μl で加えることにより測定した。1.5分、3分、6及び10分の時点で、6.0 μlのアリコートを取り出して、ホスファターゼ活性の測定のために上記のよう に処理した。 実施例6 マウスGADD34蛋白質のカルボキシル末端(MyD116)は、 酵母の2ハイブリッド系においてPP1αと相互作用する プラスミドpRB4890でトランスフォームしてTrp-選択培地で生育さ せている酵母Y190(16)株をヒトの脳cDNAライブラリー(CLONTECH)でト ランスフォームし、25mMの3−アミノトリアゾール(Sigma)の存在下でTr p-/Leu-/His-培地での選択にかけた。プレートしてから5日後に中位 乃至早い成長のコロニーをTrp-/Leu-/His-培地上で再度画線培養し た。このライブラリー由来のプラスミドを、全酵母DNA調製物を用いる大腸菌 HB101のトランスフォーメーションにより回収し、次いで、以前に、Durfee 等,Gene Devel.7:555-569(1993)に記載されたように、Leu-/アンピシリン+ 培地上で選択した。β−ガラクトシダーセについてのフィルターアッセイを、Cl ontechが勧めるように行った。 上に簡単に述べたように、2ハイブリッド系は、関心のある蛋白質と相互作用 する蛋白質をコードする遺伝子のクローニングには、特に有用である。Fields等 ,Nature 340:245-246(1989)及びChien等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:9578-95 82を参照されたい。MyD116のカルボキシル末端は、(i)γ134.5とア ミノ 酸配列相同性を共有し[Chou等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:5247-5251(1994)及 びMcGeoch等,Nature(London)353:609(1991)参照]、(ii)MyD116のカルボ キシル末端は、γ134.5蛋白質のそれを機能的に代行することができ、そし て(iii)MyD116哺乳動物遺伝子のコドンの使用は、HSV−1のそれよりも 酵母のそれに一層近いので、該カルボキシ末端を、2ハイブリッド系の餌として 選択した。スクリーニングした106の酵母のコロニーの内で、唯一つのコロニ ーが、β−ガラクトシダーゼ発現について陽性であった。このコロニーから回収 したcDNAを、融合蛋白質をコードする種々の対照用プラスミドを用いて、酵 母Y190株に再トランスフォームした。これらの研究は、MyD116のカル ボキシル末端のみが単離されたcDNAによりコードされる蛋白質と相互作用す ることを示した。DNA配列分析は、単離されたcDNAがプロテインホスファ ターゼ1α(PP1α)の触媒性サブユニットをコードすることを明らかにした。 Song等,Gene 129:291-295(1993)を参照されたい。 実施例7 MyD116及びγ134.5蛋白質は、両方とも、 イン・ビトロで、PP1αに結合する MyD116とPP1αが酵母において相互作用するという観察を確認して、 拡張するために、実施例3に記載したように構築したキメラのGST−PP1α 遺伝子を大腸菌で発現させた。複製HeLa細胞培養を、10mM Hepes (pH7.6)、250mM NaCL、10mM MgCl2、1%トリトンX −100、0.5mM PMSF及び2mMベンザミディンを含む溶解緩衝液に て細胞当たり10PFUのHSV−1(F)又はR8300での擬似感染又は感染 の18時間後に採取した。氷水上での30分及び低速遠心分離で核を取り出した 後に、上清液をGST−ビーズで予備清澄化し、次いで、GST−ホスファター ゼ1結合したビーズと4℃で一晩反応させた。多数回すすいだ後に、ビーズに結 合した蛋白質を、50mMトリス−HCl(pH7.0)、0.5%β−メルカプ トエタノール、2%SDS及び2.75%シュークロースを含む破壊緩衝液中で 煮沸することにより可溶化し、変性12%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動 に より分離し、ニトロセルロースシートにトランスファーし、そしてブロットを、 γ134.5とR8300により発現されるキメラのγ134.5−MyD116 キメラ蛋白質の両方に存在するAlaThrProに対する抗γ134.5血清 をプローブとして検査した。γ134.5蛋白質の位置及びキメラ蛋白質γ134 .5−MyD116の位置を図2Aに示す。図2Aに示したように、GST−P P1α蛋白質は、HSV−1(F)感染細胞の溶解物からのγ134.5及びR8 300が感染した細胞からの一層ゆっくり移動するγ134.5−MyD116 キメラ蛋白質の両方と結合した。GST単独では、何れの適当な細胞溶解物中の 蛋白質とも反応しなかった。 第2の実験において、精製したPP1αを、GSTを有するビーズと又は、γ1 34.5のアミノ酸146〜263に若しくはMyD116のアミノ酸485 〜657に融合させたGSTよりなるキメラ蛋白質を有するビーズと混合した( 下記の通り)。 ビーズに結合させたGST−PP1α融合蛋白質のアリコートを、25単位の トロンビン(Sigma,ミズーリ、St.Louis)とPBS緩衝塩溶液中で室温で反応させた 。8時間後に、この混合物を卓上遠心機で回し、次いで、PP1αを含むその上 清液を溶解緩衝液に対して透析し、ビーズに結合されたGST、GST−MyD 116(C)若しくはγ134.5(C)と反応させ、そしてパネルAに記載したよ うに処理した。PP1を、抗ホスファターセ1α抗体(Upstate Biotechnology I ncorporated)を用いて検出した。 GST又はキメラ蛋白質に結合した蛋白質を、可溶化し、変性ゲル上での電気 泳動にかけ、そして抗PP1α抗体と反応させた。図2A及び2Bに示したよう に、両キメラ蛋白質(GSTではない)は、見かけ分子量38,000を有し(分 子量マーカーは、示してない)、抗PP1α抗体と反応した蛋白質を下げた。 実施例8 ホスファターゼ活性は、感染細胞における蛋白質合成に必須である ホスファターゼ活性が感染細胞における持続的蛋白質合成に必須であるかどう かを測定するための試験を行った。細胞溶解物からの[35S]メチオニン標識され た蛋白質を、オカダ酸(OA)の存在下で又は不在時に示したウイルスに感染させ た。SK−N−SH細胞を、細胞当たり20PFUのHSV−1(F)、R361 6又はR8300に擬似感染又は感染させた。これらのウイルスにさらしてから 2時間後に、これらの細胞を、オカダ酸(25ng/ml)を補った又は補ってな い199V培地[Ackermann等,J.Virol.58:843-850(1986)]に重層した。感染の 14時間後に、これらの細胞に、メチオニンを欠くが50μCiの[35S]メチオ ニン(比活性>1000Ci/mモル:Amersham)を1時間にわたって補った19 9V培地1mlを1時間にわたって重層し、次いで、採取し、破壊緩衝液中に可 溶化し、変性12%ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動にかけ、ニトロセルロ ースシートにトランスファーし、そして他所[Chou等,Proc.Natl.Acad.Sci.USA ,89:3266-3270(1992)]に記載のようにオートラジオグラフィーにかけた。これ らの結果(図3A)は、オカダ酸が、野生型HSV−1(F)、γ134.5-ウイル スR3616又はR8300組換え体(γ134.5−MyD116キメラ蛋白質 を発現する)に感染した細胞における蛋白質合成を全体的に阻害したことを示し ている。対照的に、オカダ酸は、擬似感染細胞における蛋白質合成に対する見か けの効果を有しなかった。 オカダ酸が何らかの様式で感染細胞におけるγ134.5又はγ134.5−M yD116蛋白質の合成をブロックしたというありふれた仮説を試験するために 、野生型及び組換え型ウイルスに感染した細胞の溶解物を可溶化し、変性ゲルで の電気泳動にかけ、ニトロセルロースシートに電気泳動によりトランスファーし て、γ134.5蛋白質に対する抗体と反応させた。図3Bに示すように、HS V−1(F)又はR8300に感染した細胞の溶解物は、それぞれ、γ134.5 又はγ134.5−MyD116蛋白質を発現した。この抗体は、擬似感染細胞 又はγ134.5-ウイルスに感染した細胞の溶解物と反応しなかった。 実施例9 eIF−2(α32P)ホスファターゼ活性は、野生型又は R8300組換え型ウイルスに感染した細胞において非常に豊富であり、 γ134.5-ウイルスに感染した細胞において有意に減じている γ134.5-ウイルスR3616に感染した細胞における蛋白質合成の停止が eIF−2αホスファターゼ活性のレベルによって決定されるのかどうかを確認 するための実験を行った。S10画分を、感染又は擬似感染したHeLa細胞の 溶解物から調製して、eIF−2(α32P)を脱リン酸化する能力について試験し た。未反応のeIF−2(α32P)(図4、レーン1、14、18)は、eIF−2 α、eIF−2β(矢印)及び少量の分子量39,000の蛋白質(矢印)(eIF −2αから区別される夾雑物)に対応する3つの標識されたバンドを示した[Gros s等,J.Biol.Chem.255:6270-6275(1980)参照]。このeIF−2の、擬似感染細 胞からのS10画分との反応は、eIF−2(α32P)からの放射能の消失の中位 の速度を示した(図4及び図5A〜5D)。このeIF−2(α32P)ホスファター ゼ活性は、γ134.5-ウイルスに感染した細胞において約3倍減少した。鮮明 に対照的に、野生型ウイルス又はR8300変異型ウイルスに感染した細胞のS 10画分は、非常に顕著なレベルのeIF−2(α32P)ホスファターゼ活性を示 したので、事実上すべての加えたeIF−2(α32P)の放射能は、反応の最初の 20秒以内に除去された(図4、レーン2及び11)。このホスファターゼ活性は 、反応混合物をSDS変性溶液と混合した後には続かないということを確かめる ために、それを試験して、eIF−2(α32P)が、SDSと野生型又はR830 0組換え型ウイルスに感染した細胞からのS10画分の混合物に加えた後におい て、全く安定であるということが見出された。 HeLa細胞の野生型又はR8300組換え型のウイルス感染と関係するeI F−2(α32P)ホスファターゼ活性の増加を定量するために、これらの細胞から のS10画分を、eIF−2(α32P)のリン酸化速度が正確に測定できるまで、 漸進的に希釈した。野生型感染細胞のS10画分を600倍希釈したときにのみ eIF−2(α32P)ホスファターゼ活性が正確に測定でき、それは、やはり、擬 似感染細胞より5倍強かった(図4及び図5A〜5D)。これらの発見は、野生型 感染細胞のeIF−2(α32P)ホスファターゼ活性が約3000倍増大したこと を示している。同様の分析は、R8300組換え型ウイルスに感染した細胞にお いては、この活性は、約50倍増大したことを示した(図4及び5A〜5D)。こ れらの試料中の放射能の除去は、それがeIF−2α蛋白質の消失(染色により 測 定する)と関係しない限りは、脱リン酸化に相当し、蛋白質分解を表すものでは なかった。加えて、野生型ウイルスに感染した細胞のS10画分で見られた顕著 に増大したeIF−2(αP)ホスファターゼ活性は、分子量39,000の燐蛋 白質もeIF−2(β32P)も同じ条件下で有意に影響を受けなかった限り、eI F−2αに特異的であり得る(図4)。最後に、図4及び図5A〜5Dに示した結 果は、再現可能であり、擬似感染又は感染したHeLa細胞からの3つのS10 画分の各々についての2つの測定において得られた。 実施例10 eIF−2(αP)ホスファターゼ活性は、 PP1αインヒビター2に対して感受性である eIF−2(α32P)がPP1αによって脱リン酸化されるかどうかを測定する ために、eIF−2(α32P)の脱リン酸化速度を、PP1の公知のインヒビター であるインヒビター2の濃度の関数として測定した。図5、パネルBに示したよ うに、野生型ウイルス又はR8300ウイルスに感染した細胞からのS10画分 中のeIF−2(α32P)ホスファターゼは、同様に、インヒビター2に感受性で あったが、脱リン酸化速度は、それぞれ、約90及び120μg/mlのインヒ ビター2で50%減少していた。これは、活性化されたeIF−2(α32P)ホス ファターゼがPP1に由来することを示唆する。しかしながら、活性化eIF− 2(αP)ホスファターゼの阻害に必要なインヒビター2の濃度は、擬似感染細胞 においてeIF−2(α32P)ホスファターゼを阻害するのに要する濃度よりずっ と高いようであり、細胞抽出物においてPP1αを阻害するのに要する濃度より もずっと高いようである。Coher,Methods in Enzymology 201:389-398(1991)を 参照されたい。これは、γ134.5のHeLa細胞PP1αとの可能な会合に よるといえよう。これは、図4に示した結果により示唆されるように、eIF− 2(αP)に特異的なホスファターゼ活性を生じる。 実施例11 活性化されたホスファターゼ活性は、eIF−2αに特異的である eIF−2(α32P)ホスファターゼが感染細胞において特異的に活性化される ということを確かめるために、擬似感染した又は野生型ウイルスに感染したHe La細胞の溶解物による[32P]ホスホリラーゼ(セリン/スレオニンホスファタ ーゼの公知の基質)の脱リン酸化を調べた。その結果(図5C)は、HSV−1(F )に感染した細胞の32P−ホスホリラーゼホスファターゼ活性が擬似感染細胞の それの1/2でしかないということを示した。野生型ウイルスに感染した細胞に おける32P−ホスホリラーゼの脱リン酸化の原因の活性は、インヒビター2に感 受性である(図5D)。野生型ウイルスに感染した細胞におけるホスホリラーゼホ スファターゼ活性は、擬似感染細胞のそれと比較して有意に減少しているという 観察は、eIF−2(αP)ホスファターゼの活性化の機構がγ134.5遺伝子 産物の細胞性PP1αの一部分との会合(この画分をeIF−2(αP)に特異的 なホスファターゼ活性に変換する)を含み得るということを示唆する。 実施例12 プログラムされた細胞死のインデューサー及び インヒビターの同定のための無細胞系 プログラムされた細胞死がeIF−2αのリン酸化及び蛋白質合成の停止と関 係しており、γ134.5及びGADD34(MyD116)等の蛋白質がPP1 αを向け直してeIF−2αを脱リン酸化することにより蛋白質合成の停止を防 止して、活性化PKRの存在にもかかわらず継続した蛋白質合成を可能にすると いう上記の観察は、プログラムされた細胞死の候補のインデューサー又はインヒ ビターを同定するための無細胞系の調製に利用された。 上記の実施例から明らかなように、この発明によるプログラムされた細胞死の インヒビターを同定するための無細胞系は、リン酸化されたeIF−2α及びP P1αを含む。eIF−2αは、32Pでリン酸化され得る。この系は、更に、細 胞、例えばHeLa細胞、SK−N−SH細胞若しくは他の真核細胞等のポスト リボソーム上清及び/又は適当な緩衝剤を含むことができる。プログラムされた 細胞死の候補のインヒビターを、次いで、この系に導入し、そのeIF−2αリ ン酸化のレベルに対する効果を上記のように測定する。プログラムされた細胞死 のインヒビターを、それらの、eIF−2αのリン酸化レベルを例えばPP1α をeIF−2αを脱リン酸化するように向け直すことにより減じる能力によって 同定する。同様に、プログラムされた細胞死のインヒビターは、それらの、eI F−2αのリン酸化を防止する能力によって同定され得る。プログラムされた細 胞死の候補のインヒビターの能力も又、その無細胞系においてPKRと相互作用 する能力によって同定され得る。 この発明による無細胞系は又、プログラムされた細胞死のインデューサーを同 定するためにも有用である。従って、かかる系は、eIF−2α、PP1α及び 適当なホスフェートドナー例えばATP又はATPアナログを含む。ATPは、 γ32ATPであってよい。この無細胞系は、更に、真核細胞に由来するポストリ ボソーム上清を含むことができる。この無細胞系は、更に、PKRを含むことが できる。かかるインデューサーは、それらの、リン酸化されたeIF−2αのレ ベルを、例えばPP1α又はPKRに、この無細胞系に導入された際に、適当な ホスフェートドナー例えばATP又はATPアナログ(γ32P標識ATPであっ てよい)の存在下でeIF−2αをリン酸化するように指示することによってリ ン酸化し又は維持する能力により同定される。 eIF−2αのリン酸化のレベル、並びにeIF−2αのリン酸化及び脱リン 酸化と関係するホスファターゼ及びホスホリラーゼの活性を、例えば、上記の実 施例4、5及び9に記載したように測定する。ホスファターゼ及び/又はホスホ リラーゼ反応の速度も又、測定することができ、そのデータを、個々の脱リン酸 化及びリン酸化反応を一層完全に特性決定して定量するために、例えば、ミカエ リス−メンテン分析を用いて分析することができる。 この発明によって、インヒビター又はインデューサーの濃度の変更を、これら の物質がそれらの効果を発揮する最適濃度を確認するために、この発明の無細胞 系に導入する。ヒトのPP1α及びeIF−2αは、本発明の実施に好適である 。組換えにより生成されたPP1α及びeIF−2αの利用も又、この発明の範 囲内にある。他の真核又は原核生物由来のeIF−2α及び/又はPP1αのア ナログ又は相同物も又、eIF−2α及びPP1αが組換え法により製造される ならば、この発明の範囲内にある。 この発明の無細胞系で生成されたリン酸化された(標識された)eIF−2αは 、この系の他の成分から電気泳動により又はクロマトグラフィー的方法によって 分離することができる。例として、標識したeIF−2αを、変性ポリアクリル アミドゲル上で分離することができ、その後、分離した成分を例えばナイロン又 はニトロセルロース膜上にトランスファーし、次いで、X線フィルムに露出する ことができる。次いで、リン酸化の相対的レベルを、露光したX線フィルムを現 像してeIF−2αに対応するバンドの密度を例えばデンシトメトリーにより定 量した後に、測定する。このオートラジオグラフは又、バンドを標識したeIF −2αに対応して膜上に局在化させるためにも利用することができ、その後、そ れらを膜から切り出して液体シンチレーションその他の計数方法により計数する ことができる。eIF−2α及びPP1αは、哺乳動物起源のものであってよい 。 上記は、非制限的な例として提出したものであり、添付の請求の範囲に示した 本発明を制限するものと解釈すべきではない。本願中で引用したすべての参考文 献を、参考として、そのまま本明細書中に援用する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY ,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM ,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E S,FI,GB,GE,GH,GM,GW,HU,ID ,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ, LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,M G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT ,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL, TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,VN,Y U,ZW (72)発明者 ビン,ヒー アメリカ合衆国 60637 イリノイ,シカ ゴ,イースト フィフティシックスス ス トリート 934

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.無細胞系においてプログラムされた細胞死のインヒビターを同定する方法で あって、該方法は、下記のステップ: (a)リン酸化されたeIF−2α及びプロテインホスファターゼ1α(PP1 α)を含む無細胞系を用意し; (b)ステップ(a)の無細胞系にプログラムされた細胞死の候補のインヒビター を導入して、その結果生成した混合物をインキュベートし;そして (c)ステップ(b)で生じたeIF−2αのリン酸化レベルを測定する ことを含み、ここに、プログラムされた細胞死のインヒビターは、プログラムさ れた細胞死に伴うeIF−2αのリン酸化レベルの増加を対照と比較して減らし 又は防止する、上記のプログラムされた細胞死のインヒビターを同定する方法。 2.ステップ(a)の無細胞系が、更に、緩衝剤を含む、請求項1に記載の方法。 3.リン酸化されたeIF−2αが、[32P]標識されたeIF−2αである、請 求項1に記載の方法。 4.無細胞系が、哺乳動物細胞由来のポストリボソーム上清を含む、請求項1に 記載の方法。 5.ポストリボソーム上清が、発現可能なγ134.5遺伝子を欠く単純ヘルペ スウイルスに感染した哺乳動物細胞に由来する、請求項4に記載の方法。 6.リン酸化されたeIF−2αが、[32P]標識されたeIF−2αである、請 求項4に記載の方法。 7.リン酸化されたeIF−2αが、eIF−2α、ヘミン制御された翻訳リプ レッサー及びATP又はそのアナログを含む混合物における反応により調製され る、請求項1に記載の方法。 8.混合物が、更に、緩衝剤を含む、請求項7に記載の方法。 9.無細胞系においてプログラムされた細胞死のインデューサーを同定する方法 であって、該方法は、下記のステップ: (a)eIF−2α、プロテインホスファターゼ1α(PP1α)及びATP又は そのアナログを含む無細胞系を用意し; (b)ステップ(a)の無細胞系にプログラムされた細胞死の候補のインデューサ ーを導入して、その結果生成した混合物をインキュベートし;そして (c)ステップ(b)で生じたeIF−2αのリン酸化のレベルを測定する ことを含み、ここに、プログラムされた細胞死のインデューサーは、プログラム された細胞死に伴うeIF−2αのリン酸化レベルの減少を対照と比較して増大 させ又は防止する、上記のプログラムされた細胞死のインデューサーを同定する 方法。 10.ステップ(a)の無細胞系が、更に、緩衝剤を含む、請求項9に記載の方法 。 11.無細胞系が、更に、二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)を含 む、請求項9に記載の方法。 12.ATPが、γ32P標識したATPである、請求項9に記載の方法。 13.無細胞系が、更に、哺乳動物細胞由来のポストリボソーム上清を含む、請 求項9に記載の方法。 14.無細胞系が、更に、二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)を含 む、請求項13に記載の方法。
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