JP2001505876A - Mapキナーゼホスファターゼ1(mpk―1)の調節 - Google Patents

Mapキナーゼホスファターゼ1(mpk―1)の調節

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JP2001505876A JP52282298A JP52282298A JP2001505876A JP 2001505876 A JP2001505876 A JP 2001505876A JP 52282298 A JP52282298 A JP 52282298A JP 52282298 A JP52282298 A JP 52282298A JP 2001505876 A JP2001505876 A JP 2001505876A
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Abstract

(57)【要約】 脊椎動物における血管平滑筋細胞の遊走を阻害する方法が開示される。本方法は、血管平滑筋細胞の望ましくない遊走を特徴とする疾患を有する疑いのある脊椎動物を特定する段階、血管平滑筋細胞におけるMKP-1の発現または活性を増強させる物質を提供する段階、および細胞の遊走を阻害するのに十分な量の薬剤をその脊椎動物に投与する段階、を含む。

Description

【発明の詳細な説明】 MAP キナーゼホスファターゼ1(MPK-1)の調節 関連出願に関する言及 本出願は、1996年11月15日に提出された仮出願第60/030,927号による優先権 を請求するものである。 発明の背景 本発明は血管疾患(vascular condition)の治療に関する。 細胞の接着および遊走は、胚形成、組織形態形成、転移および血管閉塞を含む 多くの生理的および病的過程の特徴を表す。ハッテンロッカー(Huttenlocher) ら、Curr.Opin.Cell.Biol.7:697〜706(1995);ラウフェンバーガー(La uffenburger)ら、Cell 84:359〜369(1996)。血管形成術後の再狭窄、移植動 脈症(transplant arteriopathy)、冠動脈バイパス手術後のグラフト狭窄、お よび慢性アテローム性動脈硬化などの血管疾患は、すべて平滑筋細胞(SMC)の 接着および遊走を特徴とする。 マイトジェン活性化プロテインキナーゼホスファターゼ1(MAPキナーゼホスフ アターゼ1、MKP-1)の過剰発現により、インビトロでSMCの増殖が阻害されるこ とが示されている。ライ(Lai)ら、J.Clin.Invest.98:1560〜1567(1996) 。この作用は、MKP-1にSMCの遊走および増殖の際に活性化されるMAPキナーゼを 脱リン酸化する能力があることに起因する可能性がある。MKP-1は当初、酸化ス トレスに曝されたラット線維芽細胞において前初期遺伝子として同定された。MK P-1の過剰発現により、アフリカツメガエル胚における広範囲の細胞遊走を特徴 とする過程である中胚葉芽の誘導が阻害されることも示されている。ゴトウ(Go toh)ら、EMBO J.14:2491〜2498(1995);ラボンヌ(LaBonne)ら、Developm ent 121:1475〜1486(1995)。 MKP-1は、標的蛋白質上のホスホチロシンおよびホスホトレオニン残基の双方 を脱リン酸化する核蛋白質である、二特異性チロシンホスファターゼファミリー のメンバーである。MKP-1および他の二特異性チロシンホスファターゼの基質は 、リン酸化されたチロシンおよびトレオニン残基が隣接している蛋白質に限定さ れる。このような蛋白質にはCDC2、CDK4およびMAPキナーゼが含まれ、これらは いずれ も細胞増殖に関与する遺伝子の発現調節に関与する。MKP-1の発現は、Ca2+、ア ンジオテンシンII、上皮細胞増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)お よびH2O2による影響を受ける。ダフ(Duff)ら、J.Biol.Chem.268:26037〜2 6040。 MKP-1の相同体はマウス(3CH134)およびヒト(CL100)から同定されている。 CL100および3CH134はほぼ同一であり(Ishibashiら、J.Biol.Chem.269:2989 7〜29902(1994))、双方とも人工基質上のホスホチロシン、ホスホトレオニン およびホスホセリンを脱リン酸化する。アレッシ(Alessi)ら、Oncogene 8:20 15〜2020(1993);チャールズ(Charles)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA )90:5292〜5296(1993)。ラット、マウスおよびヒトの遺伝子産物は、それら のMAPキナーゼに対する特異性からMKP-1と総称される。 発明の概要 本発明は、MKP-1発現レベルが異なるSMC、例えば血管平滑筋細胞は、細胞の接 着および遊走が変化しているとの発見に基づく。このため、MKP-1の発現または 活性を変化させる薬剤の投与は、SMCの接着および遊走を特徴とする病的状態の 治療に用いることができる。 本発明は、血管平滑筋細胞の遊走を阻害する方法を特徴とする。本方法は以下 の段階を含む: 血管平滑筋細胞の遊走を特徴とする疾患(condition)を有する疑いのある脊 椎動物の特定; 血管平滑筋細胞におけるMKP-1の発現または活性を増強させる薬剤の提供;お よび その脊椎動物への、細胞の遊走を阻害するために十分な量の薬剤の投与。 薬剤は好ましくは遊走を少なくとも20%、好ましくは50%、より好ましくは75 %または85%、最も好ましくは95%阻害する。 1つの態様において、薬剤はMKP-1をコードする核酸配列である。天然にみら れる核酸配列は、ゲノムDNA、またはmRNAなどのRNA転写物のいずれであってもよ い。 脊椎動物は好ましくは、ヒト、ヒト以外の霊長類、またはイヌ、ネコ、ウシ、 ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ハムスターもしくは ウサギなどの哺乳動物である。治療される疾患としては、例えば血管形成術後の 再狭窄、移植動脈症、冠動脈バイパス手術後のグラフト狭窄または慢性アテロー ム性動脈硬化症が可能である。 また、本発明には、MKP-1の発現または活性を増強させる薬剤を検出するスク リーニングアッセイも含まれる。本アッセイは以下の段階を含む: MKP-1の無細胞調製物を提供して、MKP-1の被験化合物との接触; MKP-1活性の検出; 被験化合物の存在下でMKP-1活性が上昇すれば、被験化合物が血管平滑筋細胞 の遊走の阻害に有用な可能性があることが示される、被験化合物がMKP-1活性を 上昇させるか否かの判定。被験化合物はMKP-1活性を少なくとも20%、好ましく は50%、より好ましくは75%または85%、最も好ましくは95%阻害する。MKP-1 活性は、MKP-1のホスファターゼ活性の基質を用いて検出することができる。 さらに本発明には、血管平滑筋細胞の遊走を阻害する化合物の同定法が含まれ る。本方法は以下の段階を含む: MKP-1を発現する細胞の提供; 細胞の被験化合物との接触; 細胞内でのMKP-1発現の検出;および 被験化合物の存在下でMKP-1活性が上昇すれば、被験化合物が血管平滑筋細胞 の遊走の阻害に有用な可能性があることが示される、細胞における被験化合物の 存在下でMKP-1の発現レベルが上昇するか否かの判定。化合物は発現を少なくと も20%、好ましくは50%、より好ましくは75%または85%、最も好ましくは95% 阻害する。MKP-1の発現は、抗体に基づくアッセイまたは核酸ハイブリダイゼー ションアッセイを用いて検出することができる。 別に特記しない限り、本明細書で用いる科学技術用語はすべて、本発明が属す る分野の当業者が一般に理解しているものと同一の意味を有する。本発明の実践 または試験においては、本明細書に記載したものと同様または同等の材料または 方法を使用することができるが、適した方法および材料は以下で説明する。本明 細書に記載した刊行物、特許出願、特許および他の参考文献はすべて、その全体 が参照として本明細書に組み入れられる。対立が生じた場合には、定義を含め、 本明細書が支配的であると考えられる。さらに、材料、方法および実施例は例示 のみを目的としており、制限を意図したものではない。 本発明のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求の範囲から 明らかになると思われる。 図面の簡単な説明 図1は、接着アッセイにおいてコラーゲンに接着したMKP-1細胞および対照平滑 筋細胞(SMC)の数を示す棒グラフである。 図2は、個々のMKP-1細胞および対照SMCのコラーゲンに反応した細胞の伸展(c ell spreading)を示す一連の連続写真である。 図3は、コラーゲンに反応して伸展したMKP-1細胞および対照SMCの割合を示す 棒グラフである。 図4は、血小板由来増殖因子(PDGF)の存在下および非存在下において、コラ ーゲンに反応して遊走したMKP-1細胞および対照SMCの数を示す棒グラフである。 図5は、PDGFの存在下および非存在下において、コラーゲンに反応して遊走し た3T3/MKP-1細胞および対照3T3細胞の数を示す棒グラフである。 図6は、コラーゲンに反応したMKP-1細胞および対照SMCの遊走に及ぼすα2β1 またはα3β1インテグリンに特異的な抗体の効果を示す棒グラフである。 図7は、PDGFに反応して遊走したMKP-1細胞、C258S/MKP-1細胞および対照SMCの 数を示す棒グラフである。 図8A〜8Eは、チロシンリン酸化を受けた局所接着分子キナーゼ(FAK)(A);F AK(B);パキシリン(C);ビンキュリン(D);およびα-アクチン(E)に特 異的な抗体をプローブとして探索したウエスタンブロットである。 図9は、個々のMKP-1細胞、C258S/MKP-1細胞および対照SMCにおける局所接着 分子複合体を示す一連の写真である。 図10は、個々のMKP-1細胞、C258S/MKP-1細胞および対照SMCにおけるアクチン 構造を示す一連の写真である。 詳細な説明 本発明は、MKP-1が細胞の接着および遊走を調節するとの知見に基づく。平滑 筋 細胞(SMC)またはNIH 3T3細胞においてMKP-1が過剰発現されると、I型コラーゲ ンの存在下において細胞の接着および遊走が増加する。これに対して、I型コラ ーゲンが存在しなければ、SMCにおいてMKP-1が過剰発現されても、血小板由来増 殖因子(PDGF)へと向かうSMCの遊走は減少する。このため、MKP-1の発現または 機能を変化させる薬剤の投与は、望ましくないまたは異常なSMCの接着および遊 走を特徴とする病的状態の治療に用いることができる。望ましくないSMCの接着 および遊走を伴い、MKP-1の発現または機能のレベルの上昇が望まれる疾患には 、血管形成術後の再狭窄、移植動脈症、冠動脈バイパス手術後のグラフト狭窄、 および慢性アテローム性動脈硬化症が含まれる。 材料および方法トランスフェクション SMCにはベクターpcDNA3(Invitrogen)(対照SMC)またはpcDNA3/MKP-1(MKP -1細胞)によるトランスフェクションを施した。ライ(Lai)ら、J.Clin.Inve st.98:1560(1996)。C258S/MKP-1細胞は、プラスミドpcDNA3/MKP-1におい て触媒性残基であるシステイン258がセリンによって置換されたドミナントネガ ティブ変異型MKP-1遺伝子C258Sによるトランスフェクションを施したものである (Laiら、J.Clin.Invest.98:1560〜1567(1996))。トランスフェクショ ンはリポフェクチン(Life Technologies)法により、製造者の指示に従って実 施した。接着アッセイ 細胞は、0.4%仔ウシ胎児血清および300μg/mlのG418を含むダルベッコ改変イ ーグル培地(DMEM)中で24時間にわたり維持した。培養物にトリプシン-EDTAを 添加し、次いで37℃で3分間インキュベートした。剥離した細胞を10%仔ウシ胎 児血清を含むDMEMで1回、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で3回洗浄した。最終洗 浄の後、10%仔ウシ胎児血清および300μg/mlのG418を添加したDMEM中に細胞を 再懸濁した。続いて10μg/cm2のI型コラーゲンをコートした6ウェル組織培養プ レートに細胞を播種し、24時間おいた。最初の総播種数(細胞100,000個)から 非接着細胞の数を引いた値として接着細胞数を算出した。培地中の非接着細胞を 採取して、接着細胞の3回のPBS洗浄の際に剥離した非接着細胞と合わせ、コール ター計数器で非接着細胞の数を算定した。2回の実験で同様の結果が得られた。細胞伸展アッセイ 細胞のトリプシン処理、洗浄および播種は上記の通りに行った。30分後に5〜6 カ所の無作為野において細胞を倍率200倍で撮影し、以前に記載された通りに伸 展細胞数を算出した。リチャードソン(Richardson)ら、Nature380:538〜540 (1996)。簡潔に示せば、伸展細胞は光を反射しない細胞と定義され、非伸展細 胞は光反射性の細胞と定義された。顕微鏡野の各細胞を計数し、細胞150〜200個 を計数することにより、伸展および非伸展細胞の比率を算出した。標準偏差は3 回の別々の実験に由来する。遊走アッセイ 以前に記載された通りに、改変型ボイデンチャンバー(modified Boyden cham ber)を用いた遊走アッセイを実施した。ボーンフェルト(Bornfeldt)ら、J.C lin.Invest.93:1266〜1274(1994)。休止期細胞(quiescent cell)の集団 を作製するために、0.4%仔ウシ血清および300μg/mlのG418を含むDMEM中でSMC を48時間インキュベートした。ポリカーボネート製フィルター(孔径8μm)の下 面を、使用24時間前に100μg/mlのI型コラーゲン(Vitrogen 100)でコートし た。ボイデンチャンバーの下室には種々の濃度のPDGFを含むDMEMを加え、上室に は細胞50,000個/ウェルを加えた。アッセイは組織培養インキュベーター中にて 37℃で実施した。4時間後にボイデンチャンバーのメンブレンフィルターの下面 に接着した細胞を固定し、染色した。遊走しなかった細胞は上部チェンバーの機 械的擦過によって除去した。固定染色した細胞(遊走細胞)を含むフィルターを スライドグラスに載せた。細胞を倍率200倍で計数することにより、ポリカーボ ネート製フィルターを通過した細胞遊走を評価した。 PDGFを介した遊走アッセイのいくつかでは、ポリカーボネート製フィルターを コラーゲンでコートしない点を除き、上記の通りに実験を行った。 いくつかの実験では、細胞をボイデンチャンバーに加える前に、細胞をα2β1 またはα3β1インテグリンのいずれかに特異的な抗体(Dako Corp.)で処理した 。これらの実験では、細胞を1:50に希釈した抗体とともに室温で20分間インキ ュベートした。ノーザン分析 NIH 3T3細胞に、pcDNAベクターのみ(3T3対照細胞)または完全長ヒトMKP-1を 有するpcDNA3(3T3/MKP-1細胞)による安定的トランスフェクションを施した。 これらのベクターはネオマイシン耐性遺伝子を有する。ベクターを組み入れた細 胞をG418(500μg/ml)を含む培地中で選別し、単一の細胞をクローニングした 。特定のクローンから増殖した休止期細胞から全RNAを抽出し、電気泳動および ノーザンブロットを行った。休止期細胞は、RNZol B Plus(Tel-Test Inc.,TX )を用いて、休止期用培地(DMEM、0.4%仔ウシ血清、100単位/mlのペニシリン 、100μg/mlのストレプトマイシン、1%L-グルタミン)中で細胞を48時間培養 することによって得た。ブロットは、32P標識してランダムプライミングを行っ たヒトMKP-1プローブを用いて探索した。免疫沈降およびウエスタンブロッティング コンフルエント細胞(対照SMCおよびMKP-1細胞)を、0.4%仔ウシ胎児血清お よび300μg/mlのG418を添加したDMEM中で24時間培養した。1mMバナジン酸ナト リウムを含むPBSで細胞を3回洗浄し、RIPA緩衝液により4℃、10分間の可溶化処 理を行い、22ゲージ針に細胞可溶化物を5回通過させた。12,000×g、12分間の 遠心処理によって細胞片を除去した。上清を免疫沈降およびウエスタンブロッテ ィングに用いた。抗ホスホチロシン抗体4G10(UBI)を結合させたアガロースビ ーズを用いて、上清(500μg蛋白質)からチロシンリン酸化されたFAKを免疫沈 降させ、抗FAK抗体(Santa Cruz)を用いてECL(Enhanced Chemiluminescence; Amersham)ウエスタンブロット上で検出した。FAKは、抗FAK抗体およびプロテイ ンGビーズにより細胞可溶化物(500μg蛋白質)から免疫沈降させ、抗FAK抗体を 用いてウエスタンブロット上で検出した。細胞可溶化物(20μg蛋白質/レーン )中のパキシリン、ビンキュリンおよびα-アクチンを、それぞれ抗パキシリン 、抗ビンキュリンおよび抗α-アクチン抗体(Dako)を用いてECLウエスタンブロ ット上で検出した。局所接着分子複合体アッセイ 局所接着分子複合体を調べるために、細胞をカバーグラス上に播種し、2%仔 ウシ胎児血清および300μg/mlのG418を添加したDMEM中で培養した。2日間のイ ンキュベーションの後、0.2%Triton-Xを含むPBSにて細胞の透過化処理を行い、 4%パラホルムアルデヒドを含むPBSにて固定した。局所接着分子複合体は、1:1 00に希 釈したウサギ抗ビンキュリン抗体(Sigma)、続いて抗ウサギIg-ローダミンによ る免疫染色によって検出した。蛍光顕微鏡下にて倍率400倍で細胞の観察および 写真撮影を行った。極性の局所接着分子複合体を有する細胞は、局所接着分子複 合体を含まない細胞表面辺縁が25%を超えている細胞、すなわち局所接着分子複 合体が細胞表面辺縁の特定の領域に集中している細胞と定義した。非極性の局所 接着分子複合体を有する細胞は、局所接着分子複合体を含む細胞表面辺縁が75% を超えている細胞と定義した。アクチン構造アッセイ 細胞の培養および可溶化処理を上記の通りに行い、続いてアクチンを検出する ために0.25μg/mlのファロイジン-TRITC(Sigma)で染色した。蛍光顕微鏡下に て倍率200倍で写真を撮影した。極性アクチンフィラメントを有する細胞は、1 つの突出部から別の突出部に向かう縦走アクチンフィラメントがある細胞と定義 した。 結果 MKP-1の機能を検討するために、ラット肺動脈平滑筋細胞(SMC)でヒトMKP-1 を過剰発現させた。トランスフェクションを受けたSMCにおけるMKP-1の発現はノ ーザンブロットハイブリダイゼーション分析によって評価した。野生型MKP-1ま たはC258Sによってトランスフェクトした平滑筋細胞は、トランスフェクトして いない対照細胞よりも発現が4倍(MKP-1)および2.5倍(C258S/MKP-1)に増強 された。 MKP-1を過剰発現するSMC(すなわち「MKP-1細胞」)は、対照SMCと比べて、組 織培養プレート上にコートしたI型コラーゲンに対する接着性が増強した。図1に 示す通り、播種30分後にI型コラーゲンに接着していたMKP-1細胞の数は、コラー ゲンに接着した対照SMCの数の2倍を上回った。 コラーゲンに反応して伸展した細胞も、MKP-1では対照SMCと比べて増加してい た。図2は、コラーゲンをコートした組織培養プレート上に播種した30、60、120 および240分後に位相差顕微鏡下にて倍率100倍で撮影した細胞を示す。播種から 30分後の時点で大部分のMKP-1細胞は光反射性でなく、このことは大部分の細胞 が伸展していることを示す。これに対して、ほとんどの対照SMCはこの時点で光 反射性であり、これはそれらが伸展性でないことを示す。図3に示す通り、MKP-1 細胞 における播種30分後の伸展細胞の比率は対照SMCの約6倍であった。これらの結果 は、MKP-1細胞に認められたコラーゲンに対する接着性の増加と相関している。 MKP-1細胞は、播種120分後までに平坦な上皮細胞様形態に至った。対照SMCが この段階に達するにはさらに長い時間が必要であり、大部分の細胞が平坦な形態 を呈したのは播種240分後であった(図2)。細胞をフィブロネクチンでコートし た培養皿に播種した場合には、MKP-1細胞および対照SMCの伸展の間に有意差は認 められなかった。 MKP-1過剰発現の効果をさらに検討するために、改変型ボイデンチャンバーア ッセイにてMKP-1細胞および対照SMCにおける走触性を測定した。ボーンフェルト (Bornfeldt)ら、J.Clin.Invest.93:1266〜1274(1994)。このアッセイで は上室に細胞を加え、下室には化学誘引物質である血小板由来増殖因子(PDGF) を0〜10ng/mlの範囲で含むDMEMを加えた。2つのチェンバーを隔てるフィルタ ーの下面にはI型コラーゲンによるコーティングを施した。図4に示す通り、PDGF の有無によらず、MKP-1細胞は対照SMCよりボイデンチャンバー下室中の固定I型 コラーゲンへの指向性遊走の顕著な増強を示した。 MKP-1がSMC以外の細胞種の遊走において一定の役割を果たすか否かを検証する ために、NIH 3T3細胞に対して無傷MKP-1遺伝子をコードするDNAによるトランス フェクションを施した。この結果得られた細胞系である3T3/MKP-1は、ノーザン ブロッティングおよびMKP-1プローブに対するハイブリダイゼーションによって 示された通り、MKP-1を過剰発現する。3T3/MKP-1細胞株を上記のボイデンチャ ンバーアッセイにおいて検討した。図5に示す通り、3T3/MKP-1細胞はMKP-1細胞 と同じく対照細胞と比べてコラーゲンへと向かう遊走性の増強を示した。 MKP-1細胞において認められた遊走性の増強は、I型コラーゲンと、細胞表面に あるコラーゲン受容体であるインテグリンとの相互作用に起因する可能性がある 。細胞外マトリックス(ECM)は、インテグリンなどの細胞表面受容体との相互 作用を介して細胞の接着および遊走を促進する。I型コラーゲンのシグナルは、 インテグリンα2β1(コラーゲン受容体)およびα3β1(ECM II受容体)によっ て媒介されうる。ヨシナガ(Yoshinaga)ら、Melanoma Res.3:435〜441(1993 );キーリー(Keely)ら、J.Cell.Sci.(1995)。このため、コラーゲン反 応性の MKP-1細胞の遊走におけるこれらのインテグリンの役割を分析した。上記の材料 および方法の項で説明した通りに、MKP-1細胞および対照SMC細胞をα2β1または α3β1インテグリンに特異的な抗体とともにプレインキュベートし、続いてボイ デンチャンバーアッセイにて調べた。次いで3×高倍率視野(3×HPF)中の細胞 を計数することにより、遊走細胞数を算出した。図6に示す通り、α2β1または α3β1のいずれかに特異的な抗体は、MKP-1細胞の遊走を約50%阻害したが(p< 0.01)、ビトロネクチン受容体(VNR)に特異的な抗体とのインキュベーション は遊走に対して何ら阻害効果を及ぼさなかった。これらの結果は、α2β1および α3β1インテグリンが、コラーゲン反応性のMKP-1細胞の遊走に関与することを 示す。 走化性因子はインテグリンとは異なる経路を介して細胞遊走を刺激する。ラン キン(Rankin)ら、J.Biol.Chem.271:7829〜7834(1996)。このため、ボイ デンチャンバーアッセイを用いて走化性因子誘導性の細胞遊走に及ぼすMKP-1過 剰発現の効果を検討し、その結果を図7に示す。これらの実験ではPDGFを走化性 因子として用いており、コラーゲンは用いなかった。PDGFに反応して遊走したMK P-1細胞数は、調べたすべてのPDGFの濃度(5、10および20ng/ml)で、対照SMC の20%未満であった。遊走したC258S/MKP-1細胞の数ははるかに多く、PDGFの濃 度が高くなるにつれて増加した。これらの結果は、MKP-1の過剰発現によってPDG F誘導性遊走が阻害されることを示す。したがって、MKP-1はインテグリン媒介性 およびPDGF媒介性の細胞遊走の両方に関与する。 ECMによるインテグリンの活性化は、局所接着分子キナーゼ(FAK)の集合およ びチロシンリン酸化をもたらし、これによってFAK関連細胞骨格蛋白質の構築お よび局所接着分子複合体の形成が起こる。パーソンズ(Parsons)ら、J.Cell. Sci.Suppl.18:109〜113(1994)。MKP-1がこの過程に関与するか否かを判定 するために、MKP-1細胞におけるFAKおよびその関連細胞骨格蛋白質を調べた。図 8Aおよび8Bは、抗ホスホチロシン(α-PY)または抗FAK(α-FAK)抗体のいずれ かを用いて細胞を免疫沈降させ、抗FAK抗体を用いるウエスタンブロッティング を行った実験の結果である。図8Bに示す通り、MKP-1細胞、C258S/MKP-1細胞お よび対照SMC細胞は同程度の量のFAKを含む。しかし、対照SMCおよびC258S/MKP- 1細胞はかなりの量のチロシンリン酸化FAKを含んでいたものの、MKP-1細胞の含 有量は対照 SMCで認められた量の約20%に過ぎなかった。C258S/MKP-1細胞は、対照SMCで認 められた量の140%のチロシンリン酸化FAKを含んでいた。免疫沈降に抗FAK抗体 を用い、ウエスタンブロットに抗ホスホチロシン抗体を用いた場合にも同様の結 果が得られた。MKP-1と対照細胞におけるチロシンリン酸化FAK量の差とは対照的 に、骨格筋蛋白であるパキシリン、ビンキュリンおよびα-アクチンの量は、検 討したすべての細胞種において同程度であった(図8C-E)。 このため、MKP-1細胞におけるチロシンリン酸化FAKの量の減少は、PDGFに反応 してのMKP-1細胞における遊走低下およびC258S/MKP-1細胞における遊走増強と 相関づけることができる。これらの結果は、FAKのチロシンリン酸化の低下がMKP -1細胞における遊走性の変化に関与することを示唆する。細胞遊走は接着力と二 相性の関係にあり、最大遊走速度を得るには中程度の範囲の接着力が最適である 。ラウフェンバーガー(Lauffenburger)ら、Cell 84:359〜369(1996);ミッ チソン(Mitchison)ら、Cell 84:371〜379(1996);ディミラ(DiMilla)ら 、J.Biol.Chem.122:729〜737(1993)。FAK欠損および高レベルのFAKチロシ ンリン酸化はいずれも細胞の運動性を阻害することが示されているため、FAKチ ロシンリン酸化の劇的な低下がMKP-1細胞の遊走性を低下させ、一方でI型コラー ゲンを介したインテグリン活性化が部分的にFAKのチロシンリン酸化を回復させ て細胞遊走を促進することが考えられる。 遊走に関する細胞過程がMKP-1過剰発現によって変化するか否かを検証するた めに、局所接着分子分子であるビンキュリンの免疫染色によって局所接着分子複 合体を調べた。図9に示す通り、大部分の対照SMCにおける局所接着分子複合体は 極性の分布を示し(調べた細胞の94%)、細胞の辺縁で主に局在していることが 示された。これに対して、MKP-1細胞における局所接着分子複合体は染色強度が より低く、細胞の辺縁全体にわたって均等に分布して認められた(調べた細胞の 90%)。C258S/MKP-1細胞における接着分子複合体は対照SMCで認められたもの と同様であった。もう1つのフォーカルアドヒージョン成分であるパキシリンの 免疫染色でも同様の結果が得られた。 アクチン構造に及ぼすMKP-1の効果も検討した。図10に示す通り、対照SMCはア クチンフィラメントの極性分布を呈した。これに対して、MKP-1細胞ではアクチ ン フィラメントが非極性の円形から多角形状に構築された(調べた細胞の95%)。 C258S/MKP-1細胞で認められたアクチン構築は、対照SMCで認められたものと同 様であった。これらの結果は、MKP-1細胞におけるFAKチロシンリン酸化の低下に よって下流の細胞骨格構築を極性の低い方向に変化する可能性があることを示す 。このような極性の低下が、MKP-1過剰発現細胞で認められた細胞遊走の変化の 原因である可能性がある。 MKP-1の過剰発現はMAPキナーゼ活性を阻害し、それによりFAKのチロシンリン 酸化を調節するチロシンキナーゼまたはホスファターゼの発現を変化させること によって作用を発揮する可能性がある。FAKのチロシンリン酸化の変化、ならび にMKP-1の過剰発現によって誘導される局所接着分子複合体およびアクチンフィ ラメントの構築の変化が、SMCの接着および遊走の変化の原因である可能性があ る。実施例I:MKP-1活性の阻害剤に関するスクリーニングアッセイ スクリーニングアッセイは、MKP-1の発現または機能を調節する、すなわち増 強または低下させる薬剤を特定するために用いることができる。1つのこのよう なアッセイでは、MKP-1の無細胞調製物を被験化合物と接触させる。続いて調製 物におけるMKP-1活性を、例えばMKP-1のホスファターゼ活性の基質を用いて検出 する。被験化合物の存在下でMKP-1活性が変化すれば、その被験化合物が血管平 滑筋細胞の遊走の調節に有用な可能性があることを示している。 細胞に基づくアッセイは、血管平滑筋細胞の遊走を調節する化合物のスクリー ニングに用いることもできる。1つのこのような方法では、MKP-1発現細胞を被験 化合物と接触させる。MKP-1の発現は細胞において、例えば抗体に基づくアッセ イまたは核酸ハイブリダイゼーションアッセイを用いて検出する。被験化合物の 存在下でMKP-1活性が変化すれば、その被験化合物が血管平滑筋細胞の遊走の調 節に有用な可能性があることを示している。実施例II:MKP-1の阻害剤の治療的投与 バナジン酸ナトリウムもしくはα2β1およびα3β1インテグリンに特異的な抗 体などのMKP-1の既知の阻害剤、または上記のなんらかのスクリーニングアッセ イによって同定されたいかなる薬剤も、細胞遊走を特徴とする疾患を治療するた めに投与することができる。MKP-1の機能または発現を阻害するために用いるこ とが できる他の物質には、MKP-1に特異的な抗体、MKP-1 RNAに特異的なリボザイム、 およびNKP-1遺伝子もしくはmRNAと特異的にハイブリダイズするアンチセンスRNA 分子またはオリゴヌクレオチドが含まれる。 用いる抗体はポリクローナルでもモノクローナルであってもよい。FabまたはF (ab)2断片などの抗体断片を用いることも可能である。抗体はヒトに適応させた ものが好ましい。 アンチセンス分子はDNAまたはRNAのいずれでもよい。これらの分子は細胞内に 直接導入することができる。または、標的平滑筋細胞に入ってアンチセンス分子 を発現する発現ベクターを介してそれらを投与することもできる。 リボザイムとは、RNA分子と結合してそれらを切断するRNA分子のことである。 リボザイムは、細胞の接着および遊走を特徴とする疾患の治療を目的としてMKP- 1発現を阻害するために用いることができる。 細胞遊走に関連した疾患を治療するためには、このような疾患を有する患者を まず特定する。細胞遊走を特徴とする疾患には、血管形成術後の再狭窄、移植動 脈症、冠動脈バイパス手術後のグラフト狭窄、および慢性アテローム性動脈硬化 症が含まれる。阻害剤は1つまたは複数の化合物および薬学的に許容される担体 を含む治療的組成物として投与することができる。薬学的に許容される担体とは 、動物への投与に適した生体適合性溶媒のことである:例、生理食塩液。治療的 有効量の組成物を患者に投与する。治療的有効量とは、処置動物において医学的 に望ましい結果をもたらすことができる、例えば、接着もしくは遊走などの標的 細胞活性を阻害するために必要な程度に、標的遺伝子の発現を阻害またはMKP-1 酵素活性を阻害する量である。 化合物の輸送には、静脈内、肺内、鼻腔内、皮下、筋肉内および腹腔内輸送経 路などの非経口投与を用いることができるが、中でも静脈内投与が好ましい経路 である。ある1人の患者に対する投与量は、患者の体格、体表面積、年齢、投与 しようとする特定の化合物、性別、投与の時間および経路、全身健康状態ならび に同時投与する他の薬剤を含む多くの因子に応じて決まる。実施例III:MKP-1活性を上昇させる薬剤のスクリーニングアッセイ 内因性MKP-1遺伝子が存在する(が、その発現がダウンレギュレートされてい る )血管SMCまたは他の細胞などのSMCは、MKP-1遺伝子の発現の増強を誘導する化 合物または治療戦略を特定するためのスクリーニング用ツールとして用いること ができる。無傷であるが発現されないMKP-1遺伝子を有する他の細胞種も、この スクリーニングアッセイにおいて有用な可能性がある。細胞をインビトロで候補 化合物と接触させ、例えばMKP-1ポリペプチドを検出するためのイムノアッセイ またはハイブリダイゼーションアッセイ(例、ノーザン分析)など既知の方法を 用いてMKP-1の発現量を決定することができる。所定の化合物がMKP-1発現を刺激 することが判明した場合には、続いてそれに関して、その化合物による処置が上 記のボイデンチャンバーアッセイにおけるSMC化学遊走性を阻害するか否かを調 べるための検討をさらに行う。MKP-1発現の刺激ならびにSMCの遊走および接着の 阻止の両方に有効な化合物は、望ましくないSMCの遊走および接着を特徴とする 疾患の治療に有用である。実施例4:MKP-1発現を増強させる薬剤による治療 上記の通り、SMC細胞におけるMKP-1の発現レベルの上昇は、化学誘引物質であ るPDGFへと向かう遊走能の低下と相関している。このため、患者にMKP-1またはM KP-1の生物的活性断片(すなわち、MAPキナーゼを脱リン酸化することができる 断片)による治療を行えば、SMCの望ましくない遊走が阻害されると考えられる 。このため、有用な治療プロトコールは、その蛋白質を薬学的に許容される溶液 中で、0.001から100mg/kg/日の用量で静脈内投与するような方法であるが、最 も有用な範囲はルーチンの薬学的方法を用いて決定されるであろう。筋肉内もし くは皮下への注射、腫瘍部位への直接的な注射または徐放性製剤を含む考案物の 移植などの代替的な輸送経路も可能と考えられる。MKP-1蛋白もしくはMKP-1をコ ードする核酸をリポソームまたはかなりの量の蛋白質が細胞膜を通過しうるよう な別形態の担体中に封入することも可能と思われる。リポソームは、血流内にあ る際に蛋白質を蛋白分解から守るためにも有用と思われる。実施例5:遺伝子治療 MKP-1をコードする発現ベクターをSMCに導入し、それによってトランスフェク ト細胞におけるMKP-1の産生を増強させ、これらの細胞の遊走能を低下させるこ とができる。トランスフェクト細胞はまた、対照細胞に比べて遊走能が低下する こ とも上記で示されている。この所見は、MKP-1 DNAが、SMCの望ましくない遊走を 特徴とする疾患の抑制を補助するための遺伝子治療に有用と考えられることを示 す。遺伝子治療の標準的な方法を用いてもよい:例えば、フリードマン(Friedm ann)、「遺伝病に対する治療法(Therapy for Genetic Disease)」、T.フリー ドマン(T.Friedman)編、Oxford Univ.Press、1991、pp.105〜121。標的細胞 内での発現を可能とする発現制御配列を連結させたMKP-1 cDNAの1コピーを含む ウイルスまたはプラスミドを、望ましくないSMC遊走の部位に局所的または全身 的のいずれかによって患者に導入することが考えられる。MKP-1をコードするト ランスフェクトされたDNAが各標的細胞のゲノム中に安定的に組み入れられない 場合には、治療を定期的に繰り返す必要がある可能性がある。 その他の態様 本発明はその詳細な説明とともに説明してきたが、以上の説明は本発明を例示 するためのものであり、添付した請求の範囲によって規定されるその範囲を制限 するものではないことが理解される必要がある。その他の局面、利点および変更 は以下の請求の範囲に含まれる。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.脊椎動物における血管平滑筋細胞の遊走を阻害する方法であって、 血管平滑筋細胞の望ましくない遊走を特徴とする疾患を有する疑いのある脊椎 動物を同定する段階; 血管平滑筋細胞におけるMKP-1の発現または活性を増強させる薬剤を提供する 段階;および 該遊走を阻害するのに十分な量の薬剤を該脊椎動物へ投与する段階を含む方法 。 2.薬剤が、MKP-1をコードする天然型核酸配列を含む、請求項1記載の方法。 3.脊椎動物が哺乳動物である、請求項1記載の方法。 4.脊椎動物がヒトである、請求項1記載の方法。 5.疾患が血管形成術後再狭窄である、請求項1記載の方法。 6.疾患が移植動脈症である、請求項1記載の方法。 7.疾患が移植片狭窄である、請求項1記載の方法。 8.疾患が慢性アテローム性動脈硬化である、請求項1記載の方法。 9.α2β1インテグリンに対する抗体およびα3β1インテグリンに対する抗体か らなる群より選択される薬剤の投与によって脊椎動物における細胞の遊走を阻害 する方法。 10.血管平滑筋細胞の遊走を阻害する化合物を同定するための方法であって、 MKP-1の無細胞調製物を提供し、該MKP-1を被験化合物と接触させる段階; MKP-1活性を検出する段階; 被験化合物の存在下におけるMKP-1活性の上昇により該被験化合物が血管平滑 筋細胞の遊走を阻害することの指標となる、被験化合物がMKP-1活性を上昇させ るか否かを判定する段階を含む方法。 11.MKP-1活性がリン酸化されたチロシンまたはトレオニン残基を含むMKP-1の基 質を用いて検出される、請求項10記載の方法。 12.血管平滑筋細胞の遊走を阻害する化合物を同定するための方法であって、 MKP-1を発現する細胞を提供する段階; 該細胞を被験化合物と接触させる段階; 該細胞内でのMKP-1発現を検出する段階;および 被験化合物の存在下におけるMKP-1活性の上昇により該被験化合物が血管平滑 筋細胞の遊走を阻害することの指標となる、被験化合物の存在下での該細胞にお けるMKP-1の発現レベルが上昇するか否かを判定する段階を含む方法。 13.MKP-1の発現が抗体に基づくアッセイ法を用いて検出される、請求項16記載 の方法。 14.MKP-1の発現が核酸ハイブリダイゼーションアッセイ法を用いて検出される 、請求項16記載の方法。 15.血管平滑筋細胞の遊走を阻害する化合物を同定するための方法であって、 血管平滑筋細胞の第1および第2の試料を提供する段階; 被験化合物により該第1の試料を処理する段階;および 該第1の試料における発現レベルの方が高いことにより該被験化合物が平滑筋 細胞の遊走を阻害することの指標となる、該第1の試料におけるMKP-1の発現レベ ルと該第2の試料におけるレベルとを比較する段階を含む方法。
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