【発明の詳細な説明】
ヒドロキシグアニジン類の使用
発明の技術分野
この発明は、各種の疾患の予防と治療および移植する予定になっている臓器の
保護を行うためのヒドロキシグアニジン類の使用に関する。また、この発明は、
前記使用を目的とする、ヒドロキシグアニジン類を含有する医薬組成物に関する
。さらに、この発明は、前記の予防と治療に有用な、ヒドロキシグアニジン類を
含有する医薬の製造に関する。
発明の背景
キサンチンデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.204)とキサンチンオキシダーゼ(EC
1.1.3.22)は、キサンチンおよび尿酸をそれぞれ生成する、ヒポキサンチンお
よびキサンチンなどのプリン類の酸化反応を触媒するモリブデン、鉄−硫黄およ
びフラビンを含有する酵素に密接に関係する(プリツォス(Pritsos)およびガス
タトソン(Gustatson)の1994年の文献ならびにヒル(Hille)およびニシノ(Nishino
)の1995年の文献)。キサンチンオキシダーゼは、可逆的および非可逆的な翻訳
後のプロセスによって、生体内および生体外の両方でキサンチンデヒドロゲナー
ゼから形成されると推定されている。この転化は、スルフヒドリル酸化反応によ
って可逆的に起こすことができ、そしてタンパク質分解法によって非可逆的に起
こすことができる(アマヤ(Amaya)らの1990年の文献;ニシノ
(Nishino)の1994年の文献)。これらの酵素は、各々、約1330個のアミノ酸から
なる二つの同一のサブユニットで構成され、そして、そのアミノ酸配列は、哺乳
類間で、高度に保存されている(アマヤ(Amaya)らの1990年の文献;ライト(Wrig
ht)らの1993年の文献;イチダ(Ichida)らの1993年の文献;ヒル(Hille)とニシノ
(Nishino)の1995年の文献)。本酵素のオキシダーゼ型とデヒドロゲナーゼ型は
、酸素分子とNAD+に対して異なる反応性を示し、前者の酸化剤(oxidant)はオ
キシダーゼ型が好み、そして後者はデヒドロゲナーゼ型が好む(ヒル(Hille)お
よびニシノ(Nishino)の1995年の文献)。酸素が電子受容体として使用されると
、スーパーオキシドラジカル(すなわちスーパーオキシドアニオン)と過酸化水
素が生成するが、両者ともに有害であり組織の損傷を起こしうると考えられてい
る(ヒル(Hille)とニシノ(Nishino)の1995年の文献)。とくに、酸素ラジカルは
、生体内に存在していると有害であると考えられる。なぜならば、それは反応性
を示し、ラジカルが生物の非ラジカル物質と反応すると、新しい潜在性の有害ラ
ジカルが生成するという事実があるからである(クーイ(Kooij)の1994年の文献
)。スーパーオキシドラジカルは、H+と反応してペルヒドロキシルラジカルHO2
・を生成し、このラジカルは、組織の成分と、スーパーオキシドよりかなり速く
反応できる(クーイ(Kooij)の1994年の文献)。さらに、このペルヒドロキシル
ラジカルは過酸化水素を生成するが、それは分解して、極端に反応性のヒドロキ
シルラジカル・OHになる(シャー(Xia)らの1996年の文献)。
キサンチンオキシダーゼとキサンチンデヒドロゲナー
ゼは、酸化基質として酸素を使用してオキシラジカルを生成することができる。
しかし、デヒドロゲナーゼ型の場合は、NAD+が好ましい基質である。したがって
、NAD+の存在下では、酸素の利用が制限される(ソーシュタッド(Saugstad)の19
96年の文献)。
キサンチンデヒドロゲナーゼ/オキシダーゼの病体生理学上の役割
キサンチンデヒドロゲナーゼのそのオキシダーゼ型への転化が増大することは
病的状態と関連があり、その低酸素症と関連する疾患は大きな関心を集めている
。酵素の転化は、以前に血液流を遮断された領域に再潅流(rcperfusion)が行
われた後、組織が再び酸化される間に、スーパーオキシドラジカルが酸素から生
成することによって、組織の損傷に寄与していると考えられている(マックコー
ド(McCord)の1984年の文献;ニシノ(Nishino)の1994年の文献)。この仮説によ
れば、この酵素は、虚血期間にそのオキシダーゼ型に転化する。適切な酸化的リ
ン酸化反応がないとATPは再生できないので、細胞のATPプールも遮断され、虚
血中は、ヒポキサンチンに転化される。しかし、結果として組織が再酸素化され
ると(たとえば、血液循環の回復のため)、キサンチンオキシダーゼは、酸素を
利用し始め、次にヒポキサンチンを酸化してキサンチンにし、そしてキサンチン
を尿酸にして、細胞の損傷を起こす毒性のオキシラジカルを付随して生成する(
ニシノ(Nishino)の1994年の文献;ソーシュタッド(Staugstad)の1996年の文献)
。低酸素症により誘発されるキサンチンデヒドロゲナーゼのキサンチンオキシダ
ーゼへの転化は、実験的に、肝細胞、
クッパー細胞および内皮細胞において示されている(ウィゾレク(Wiezorek)らの
1994年の文献)。キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼ酵素は
、肝臓、腎臓、心臓、中枢神経系、骨格筋、脾臓、副腎、腸、皮膚、腎臓、肺お
よび胎盤などの各種組織中に検出できる(ワーナー(Wajner)とハークネス(Harkn
ess)の1989年の文献;クーイ(Kooij)の1994年の文献)。この酵素が内皮細胞中
に存在し(モリワキ(Moriwaki)らの1993年の文献)かつこれら細胞の損傷は、毛
細血管の漏洩と水腫の生成による再潅流損傷の病理に関与するということに、と
くに関心が集まっている。この種の現象は、たとえば、卒中と高所病における頭
蓋内圧の増大の誘発に関連があり、これらの症状の高い死亡率の理由になってい
る。
キサンチンオキシゲナーゼが誘発するオキシラジカルの生成に関連している他
の異常症状は、心室周囲ロイコマラシア(perventricular leucomalacia)(PVL
)、気管支肺形成異状症(BPD)、および早熟の網膜障害(ROP)などの早産幼児
にみられる合併症である(ラッセル(Russell)らの1995年の文献)。
また、キサンチンデヒドロゲナーゼのキサンチンオキシダーゼへの転化の増大
は、活性化好中球によって、生体外で、内皮細胞中で誘発されることができるこ
とが報告されており(ワカバヤシ(Wakabayashi)らの1995年の文献)、実験証拠
は、キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼが、TNF、γ−イン
ターフェロン、IL-6、IL-1およびデキサメタゾンなどの各種誘発因子の影響下、
原因酵素(causative enzyme)であることを示している(ペッファー(Pfeffer)
らの1994年の文献)。さら
に、ラットのキサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼ遺伝子のプ
ロモーター領域が単離されており、その配列は、転写開始部位の上流のNF-IL6モ
チーフを含むいくつもの可能な調節配列を示唆している(チョー(Chow)らの1994
年の文献)。さらに、マウスを、細菌のリポ多糖またはα−インターフェロンで
前処理するとキサンチンオキシダーゼの活性が増大する(ソーシュタッド(Saugs
tad)の1996年の文献参照)。このように前記の諸結果は、キサンチンデヒドロゲ
ナーゼ/キサンチンオキシゲナーゼの炎症における役割を示している。
この明細書において、用語「原因の(causative)」および/または「誘発さ
れた(induced)」および/または「上向き調節された(upregulated)」は、キ
サンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロゲナーゼ酵素の組織中の含量および
/または活性が、正常レベルと比べて増大するおよび/または増やされることを
意味するものとする。正常レベルとは、この明細書では、健康な個体の対応する
組織に見られるレベルを意味するものとする。
前記病体生理学的役割をになっている以外に、キサンチンオキシダーゼは、他
の各種症状、たとえば、キサンチン尿症、モリブデン補助因子欠乏、痛風、高尿
酸血症、炎症、気道閉塞症、十二指腸潰瘍、関節炎、パーキンソン病、アルツハ
イマー症、パラコート中毒、熱による皮膚の損傷、超高熱、膵炎、成人型呼吸窮
迫症候群、ネフローゼ、アドリアマイシンネフローゼ、マラリア、遠隔臓器損傷
、皮膚ポルフィリン光過敏症、炎症性および自己免疫性リウマチ疾患、リウマチ
様関節炎、アテローム性動脈硬化症、強皮症ならびに腫瘍促進に関与している
ことが示唆されている(クーイ(Kooij)、1994年;サリム(Salim)、1994年;クロ
ーサ(Closa)ら、1994年;サカイ(Sakai)ら、1995年;ミサワ(Misawa)とナカノ(N
akano)、1993年;ミサワ(Misawa)とアライ(Arai)、1993年;シン(Singh)とアジ
ャワル(Aggarwal)、1995年;およびそれらの引用文献参照)。ウイルス感染後(
およびインターフェロンによる治療後)の肝毒性は、キサンチンオキシダーゼの
生成とオキシラジカルの生成が原因であることが報告された(ソーシュタッド(S
augstad)の1996年の文献参照)。
かなりの量のキサンチンオキシダーゼが、たとえば、低酸素症および/または
ショック中、肝臓および腸から循環系に放出され、この循環する酵素活性が、身
体の遠隔の部位や臓器の組織損傷をおこすかもしれないということを、最後に述
べなければならない(ソーシュタッド(Saugstad)の1996年の文献)。
キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼ誘導遊離ラジカルによる
損傷を防止する公知の方法
キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼが前記症状に潜在的に
関与しているため、キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼを妨
害すると考えられる方法またはこれら酵素の作用のため生成する生成物に作用す
る方法が工夫されている。このような方法の一つは、アデノシンデアミナーゼの
阻害剤を使用して、低酸素症発現の(hypoxic episode)後の再潅流中の組織の
損傷を抑制する方法である(シャー(Xia)らの1996年の文献)。この方法は、無
酸素症中に細胞ATPが分解して蓄積されたアデノシンがイノシンを生成する
のを防止することを目的とするものであり、そのイノシンは続いてキサンチンオ
キシダーゼの基質そのものであるヒポキサンチンに変換され、それによってスー
パーオキシドラジカルの生成が促進される。この経路にそって、アデノシンデア
ミナーゼ阻害剤のエリトロ−9−(2−ヒドロキシ−3−ノニル)アデニン(EH
NA)をウサギで実験的に試験した。その結果は、遊離ラジカルの生成は減少し、
かつ対照のウサギと比べてEHNAで処置したウサギの心臓の収縮力が増大すること
を示した(シャー(Xia)らの1996年の文献)。しかし、この方法の一つの欠点は
、本アデノシンデアミナーゼ阻害剤が、低酸素症の発現中にすでに生成したヒポ
キサンチンおよび/またはキサンチンに対してほとんど効果がないことである。
したがって、EHNAは、低酸素の期間の前および/またはその期間中に適用したと
きだけ有効であり、臨床時には現実的な方法でないことが多いと考えられる。
他の試みは、キサンチンオキシダーゼの阻害剤を使用して、ヒポキサンチン/
キサンチンの分解を防止してスーパーオキシドの生成を防止する試みである。キ
サンチンオキシダーゼ阻害剤のアロプリノールとオキシプリノールを、ダス(Da
s)ら(1987年)が、分離したブタの心臓に実験的に用いた。ダス(Das)と共同
研究者が提供したデータによって、低酸素の期間後に心臓を再潅流中、これらの
化合物によって遊離ラジカルの発生が減退することが、強力には裏付けられなか
った。しかし、その後の研究で、ラットの大脳皮質中に、実験的に誘発させた虚
血/再潅流の損傷中、オキシプリノールがラジカルの産生を減少させることが報
告された(フィリス
(Phillis)とセン(Scn)の1993年の文献)。他の試みで、ラットを、脳虚血にする
前にキサンチンオキシダーゼ阻害剤のアムフルチゾール(amflutizole)で予め
処置したところ、脳の再潅流中の遊離ラジカルの放出が強く減少することが見出
された(フィリス(Phillis)らの1994年の文献)。実験動物による生体内の研究
が、オキシプリノールが虚血脳の損傷から防護することを示唆した(リン(Lin)
とフイリス(Phillis)の1992年の文献)。また、最近の臨床試験は、アロプリノ
ールがバイパス移植を実施するときの心臓手術で有用であることを示唆しており
、手術後の回復が改善されかつ脂質の過酸化が減少する(コーラン(Coghlan)ら
、1994年の文献;キャステリ(Castelli)ら、1995年の文献)。
遊離ラジカルは、十二指腸潰瘍に役割をもっていると推測されている。サリム
(Salim)(1994年)は、シメチジンとアロプリノールの組合わせまたはシメチ
ジンとラジカルスカベンジャーのDMSO(ジメチルスルホキシド)の組合わせが、
シメチジンだけを用いた場合より、難治性十二指腸潰瘍がみられる患者が、著し
く良好な治癒を示し再発率が低下したことを報告している。
ここで、EHNA、アロプリノール、オキシプリノールまたはアムフルチゾールの
ような医薬の投与により影響を受けるヒポキサンチンとキサンチンからの尿酸の
生成を防止するブロッカーの使用には制限が存在するかもしれないことを強調し
なければならない。というのは、尿酸は、最も重要な内因性酸化防止剤であり、
組織保護作用を提供することによって生理学的に非常に重要だからである(ソー
シュタッド(Saugstadt)、1996年の文献参照)。
他の方法は、遊離ラジカルと反応してより安定な種を生成できるスピントラッ
プ(spin trap)剤を投与することからなり、スピントラップ剤としては、たと
えば、N−t−ブチル−α−フェニルニトロン(PBN)があり、これは実験動物
の虚血脳の損傷を減らした(フィリス(Phillis)とクルーヘルフマン(Clough-Hel
fman)、1990年;クルーヘルフマン(Clough-Helfman)とフィリス(Phillis)、1991
年の文献)。この方法は、広く利用されることなく、またその後評価されてはい
ないようである。この方法は、ラジカルの生成を妨害せずにラジカルが生成した
ときにそれをトラップするだけである。これは明らかな欠点である。
スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼの誘導体また
はスーパーオキシドジスムターゼ擬似体(mimetic)の投与を試みられている(
クロサ(closa)ら、1993年;ハーデイー(Hardy)ら、1994年;ラダック(Radak)ら
、1995年の文献)。しかし、スーパーオキシドジスムターゼも欠点がある。とい
うのは、スーパーオキシドジムスターゼは投与量が高いと虚血再潅流損傷を増大
させることが知られており、これはFce2+の存在下、毒性の高いヒドロキシルラ
ジカルの産生を促進するスーパーオキシドジスムターゼの性能に基因する作用で
ある(マオ(Mao)ら、1993年の文献)。さらに、ス一パーオキシドジスムターゼ
のようなタンパク質巨大分子をヒトに投与すると、薬学上、薬物動態学上、毒性
学上および免疫学上の多数の合併症が関与するおそれがある。
遊離ラジカルのトラップ剤または破壊剤として有用であることが当該技術分野
で周知の他の薬剤は、DCF(2'
−デオキシコホルマイシン)、カタラーゼ、ビタミンE(α−トコフェロール)
、ビタミンC(アスコルビン酸塩;アスコルビン酸)、グルタチオン、尿酸、N
−アセチルシステイン(NAC)、ジメチルチオウレア(DMU)およびβ−カロテン
類である。
ヒドロキシ尿素、ヒドロキシグアニジンおよびヒドロキシグアニジンの誘導体
ヒドロキシ尿素が抗発癌効果をもっていることは知られている(グッドマン(Go
odman)とギルマン(Gilman)、1970年の文献)。その効果の作用機序は、リボヌク
レオチド類のデオキシリボヌクレオチド類への酵素による転化を阻止することに
よるDNA合成の阻害が原因であると示唆されている(グッドマン(Goodman)とギル
マン(Gilman)、1970年の文献)。1972年に、アダムソン(Adamson)は、ヒドロキ
シグアニジン(N−ヒドロキシグアニジン)も抗腫瘍活性をもっていると報告し
た。いくつものヒドロキシグアニジンアナログをベイリー(Bailey)ら(1973年
)が合成して、抗高血圧効果をもっていることを見出した。
ヒドロキシグアニジンであるグアノキサベンズ(guanoxabenz)の医薬製剤は
、下痢症または動物の下痢を治療するのに適していると特許が請求されている(
欧州特許第011206/A2号)。さらに最近は、N−ヒドロキシグアジニンのいくつ
かの他の誘導体が合成されており、そのうちいくつかが抗ウイルス活性および/
または抗新生物活性を示すと報告された(タイ(Tai)ら、1984年;タン(Tang)ら
、1985年;ワン(Wang)ら、1990年;ダウベル(Doubel)とオリバー(Oliver)、1992
年;コネル(Koneru)
ら、1993年;フイ(Hui)ら、1994年の文献)。これらの抗ウイルス効果と抗新生
物効果は、リボヌクレオチドレダクターゼに対する可能な阻害効果に関連してい
た(ウェックベッカー(Weckbecker)ら、1987年と1988年の文献)。
ヒドロキシグアニジン誘導体類の代謝はほとんど分かっていない。ヒドロキシ
グアニジン自体は、ラットに腹腔内に注射されると代謝されてグアニジンになる
と報告された(ウェイラー(Waler)とウォーカー(Walker)、1959年の文献)。こ
の代謝の機序は分かっていない。
発明の目的
この発明の目的は、キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼの
、ラジカルを生成する性質に関連する症状の、予防治療法を含む治療法を提供す
ることである。
この発明の他の目的は、人体内に酸素ラジカルが生成するのを防止しまたは減
少させる手段と方法を提供することである。
この発明のさらなる目的は、キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシ
ダーゼが仲介する疾患の治療法を提供することである。「キサンチンデヒドロゲ
ナーゼ/キサンチンオキシダーゼ仲介疾患」は、この明細書では、キサンチンデ
ヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼ酵素の触媒作用による酸素誘導遊離ラ
ジカルの発生および/または蓄積によって起こる症状と定義する。キサンチンデ
ヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼ仲介疾患の具体例は、酸素誘導遊離ラ
ジカルによって起こる組織の損傷、臓器の損傷および炎症である。そしてこ
れらのラジカルは、キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼ酵素
の触媒作用によって生成する。この明細書全体を通じて、用語「キサンチンオキ
シダーゼ/キサンチンデヒドロゲナーゼ」は、用語「キサンチンデヒドロゲナー
ゼ/キサンチンオキシダーゼ」と同じ意味をもっている。
この発明のさらに他の目的は、キサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロ
ゲナーゼが仲介する虚血疾患または虚血症状の治療法を提供することである。用
語「キサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロゲナーゼ仲介の虚血疾患また
は虚血症状」は、任意に再酸素化の期間が続く、身体、臓器および/または組織
の虚血が関連するキサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロゲナーゼが仲介
する疾患または症状を意味する。
この発明のその外の目的は、添付する請求の範囲を含むこの発明の以下の説明
から明らかである。
発明の開示
この発明によって、ヒドロキシグアニジン類からグアニジン類への還元反応を
触媒するキサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼ酵素の性能を開
示する。
この知見に基づいて、酵素であるキサンチンデヒドロゲナーゼとキサンチンオ
キシダーゼのラジカルを発生する性質に関連する症状の予防治療を含む治療の手
段と方法を、この発明によって開示する。
この発明は、以下に説明するA、BおよびA、Cと呼ばれる2対の共役反応に
基づいている。
反応Aは新しい化学反応であり、ヒドロキシグアニジン、好ましくはカルビミ
ノヒドロキシグアニジン、とくにアリールカルビミノヒドロキシグニジジンが下
記反応式Aによって還元される。
反応式中、Eはキサンチンデヒドロゲナーゼおよび/またはキサンチンオキシ
ダーゼによる触媒作用を示す。反応Aによる反応を促進する性能を有する、哺乳
類の脾臓サイトゾル中に酵素活性が存在することを実施例1〜3で開示する。
反応Bは公知の化学反応であり、ヒポキサンチンが、キサンチンオキシダーゼ
およびキサンチンデヒドロゲナーゼの存在下、酸素またはNAD+それぞれによって
酸化されてキサンチンになる。
この発明によって、ヒドロキシグアニジン、好ましくはカルビミノヒドロキシ
グアニジンおよび最も好ましくはアリールカルビミノヒドロキシグアニジン(こ
の用語には一般的な意味で、ヘテロアリールカルビミノヒドロキシグアニジンも
含まれる)が、酵素キサンチンオキシダーゼによって触媒される、キサンチンま
たはヒポキサンチンなどのプリンの酸化反応において、酸化剤として酸素に置き
換わる性能を開示する。この発明のこの一面によって、ヒドロキシグアニジンは
反応Aによって2個の電子を受け取って還元され、一方、プリンが、付随して反
応Bによって2個の電子を失って酸化される。
さらに機構が類似しているステップで、キサンチンが酸化されて尿酸になり(
反応C)、もう一つの分子ヒドロキシグアニジンが付随して還元される(反応A
)。 次に、ヒドロキシグアニジン、好ましくはカルビミノヒドロキシグアニジン、
とくにアリールカルビミノヒドロキシグアニジンが、キサンチンデヒドロゲナー
ゼ/オキシダーゼによるキサンチンおよびヒポキサンチンなどのプリン類の酸化
反応を維持する性能を、この発明によって開示する。すなわち、ヒドロキシグア
ニジンの存在下で、プリンの酸化反応は、酸素が存在しなくてもまたは限られた
量の酸素の存在下でも、組織中で進行することができる。この発明のこの一面の
好ましい実施態様を実施例5に示す。
この発明の一面のとくに重要な用途は、全身性または局所性の虚血症状を有す
るヒトを含む動物にヒドロキシグアニジンを投与することである。このような虚
血症状は、臓器などの身体領域への血液供給が不十分なために起こるか、または
組織に循環している血液中の酸素含量が不十分なために起こる。したがって、ヒ
ドロキシグアニジンを投与すると、低酸素領域のATPのプールが激減したときに
低酸素領域にヒポキサンチンおよび/またはキサンチンが蓄積することが防止さ
れる。キサンチンおよびヒポキサンチンが蓄積するのを防止することは、この発
明のとくに重要な一面である。というのは、こうすることによって、たとえば組
織の再酸素化中に、組織を損傷する酸素誘導ラジカルが最終的に発生するのを回
避できるからである。これは、このような症状では還元されたレベルのキサンチ
ンおよび/またはヒポキサンチンが存在していて、キサンチンオキシダーゼ酵素
に対する電子供与体の量が減少しているためである。したがって、ヒドロキシグ
アニジンを投与すると、組織に到達する酸
素が、キサンチンオキシダーゼによって還元されて、有害な酸素誘導ラジカルに
なるのを防止する。したがって、この発明の重要な一面は、ヒドロキシグアニジ
ン、好ましくは、カルビミノヒドロキシグアニジン、とくにアリールカルビミノ
ヒドロキシグアニジンをヒトを含む哺乳類に投与して、イノシン、ヒポキサンチ
ンおよびキサンチンのようなアデニンヌクレオチド類が蓄積するのを防止するこ
とである。
さらに、ヒドロキシグアニジンは、尿酸が、ほかの方式で全く生成しないか、
または組織中に存在する酸素、NADHもしくはほかの電子受容化合物の供給が制限
されているために尿酸の生成が低速度で進行する場合でも、反応式Cによって尿
酸の生成を維持する。この発明のさらに重要な一面は、酸化防止剤の特性と組織
を防護する特性を有する尿酸を付随して生成することである。したがって、この
発明の非常に重要な一面は、ヒドロキシグアニジン、好ましくはカルビミノヒド
ロキシグアニジン、とくにアリールカルビミノヒドロキシグアニジンをヒトを含
む哺乳類に投与して尿酸の生成を維持することである。
組織にヒドロキシグアニジンを投与することからなる、組織中における尿酸の
生成維持を目的とするこの発明のとくに有利な実施態様を実施例10に示す。
この発明のさらに重要な一面は、たとえば、キサンチンまたはヒポキサンチン
などのプリン類の酸化反応中、キサンチンオキシダーゼ酵素が酸素を利用するの
を、ヒドロキシグアニジン、好ましくはカルビミノヒドロキシグアニジン、とく
にアリールカルビミノヒドロキシグア
ニジンが防止および/または妨害して、酸素誘導ラジカルの生成を妨げる性能で
ある。この発明の対応する実施態様は実施例6に開示してある。ヒドロキシグア
ニジン、好ましくはカルビミノヒドロキシグアニジン、とくにアルキルカルビミ
ノヒドロキシグアニジンもしくはアリールカルビミノヒドロキシグアニジンを、
ヒトを含む動物に投与すると、酸素誘導ラジカルの発生が有利に防止されもしく
は減少し、そのラジカルおよびそのラジカルの反応生成物によって起こる組織の
損傷が全般的にもしくは部分的に抑制されて重要な組織防護効果が提供される。
さらに、ヒポキサンチンやキサンチン以外のほかの基質も反応式(B)と(C
)、ヒドロキシグアニジンが受容する電子を供与できる(反応式A)と解される
。とくにNADHなどの内因性基質は、キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオ
キシダーゼから電子を供与して酸素誘導ラジカルの生成に関与している(ハリソ
ン(Harrison):「In Xanthine Oxidase:Enzymology and Pathophysiology」
アールハリソン(R.Harison)およびアール シイ ブレイ(R.C.Bray)編、66 1s
t Meeting Bath、1997年4月9〜11日、Biochem.Soc.Trans.25巻786〜791頁
、1997年)。したがって、この発明のヒドロキシグアニジン類は、電子がキサン
チンやヒポキサンチン以外の基質から移動するときも、遊離ラジカルの発生を防
止するのに有用である。このように、キサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒ
ドロゲナーゼ仲介の疾患もしくは症状を予防するためにヒドロキシグアニジンを
使用することは、ヒドロキシグアニジンが受容する電子を供与する反応(B)と
(C)に限定されない。代わりに、キ
サンチンオキシダーゼの影響下で電子を供与するのに適した基質、たとえばNADH
を使用できる。
さらに、この発明のヒドロキシグアニジン類は、亜硫酸オキシダーゼ、アルデ
ヒドオキシダーゼおよび別の眼球(ocular)オキシダーゼの酵素類の影響下で発
生する酸素誘導ラジカルが発生するのを防止するのに有効であると考えられてい
る(ライト(Wright)およびリパイン(Repinc):「In Xanthine Oxidase:Enzy
mology and Pathophysiology」アールハリソン(R.Harison)およびアール
シイ ブレイ(R.C.Bray)編、66 1st Meeting Bath、1997年4月9〜11日、Bioc
hem.Soc.Trans.25巻799〜804頁、1997年)。というのは、これらの酵素は、
構造がキサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼと類似しているか
らである。これらの酵素はすべて、鉄−硫黄中心を有する同族の一次構造と類似
の組織を有し、フラビタンパク質であり、モリブデン部位をもっている。したが
って、ヒドロキシグアニジン類は、電子を受容することによって、キサンチンデ
ヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼ酵素と同様に、亜硫酸オキシダーゼ、
アルデヒドオキシダーゼおよび別の眼球オキシダーゼに対し類似の方式で相互に
作用し、分子酸素が前記電子を取るのを防止して、スーパーオキシドおよびほか
の酸素誘導遊離ラジカルの発生を防止すると考えられる。したがって、亜硫酸オ
キシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼおよび眼球オキシダーゼによる酸素誘導ラ
ジカルの発生を防止するのにこの発明のヒドロキシグアニジン類を使用すること
もこの発明に含まれる。この特許において、用語「キサンチンオキシダーゼ/キ
サンチンデヒド
ロゲナーゼが仲介する虚血疾患もしくは虚血症状」には、亜硫酸オキシダーゼ、
アルデヒドオキシダーゼおよび眼球オキシダーゼの影響下で酸素誘導ラジカルが
発生することによって起こる疾患もしくは症状も含まれる。
この発明のこれらの側面の具体的実施態様には、ヒドロキシグアニジン、好ま
しくはカルビミノヒドロキシグアニジン、とくにアリールカルビミノヒドロキシ
グアニジンを、組織に投与して組織を防護し、それによって最終的に、組織損傷
の大きさと重症度を低下させるとともに、このような損傷が起こったとしても回
復と治癒を改善することが含まれる。この発明のこの一面の重要な実施例には、
全身性または局所性の低酸素症状がみられ、任意に、その症状に続いて酸素の供
給が増大した期間、たとえば組織の再酸素化を行う治療過程があるヒトに、ヒド
ロキシグアニジン、好ましくはカルビミノヒドロキシグアニジン、とくにアリー
ルカルビミノヒドロキシグアニジンを投与することが含まれている。このような
症状の例は、心筋梗塞、狭心症、脳血管梗塞、心臓不整脈、循環ショック、CNS
の一過性脳虚血発作、動脈閉塞、動脈血栓塞栓症(trombembolism)、絞扼を伴
う腸捻転、精巣捻転症、肺閉塞、バイパス移植を含む心臓手術、たとえば血圧を
下げるため血流を減らして行う局所臓器の手術、動脈血流の部分的もしくは全体
の閉塞、または高所症である。そのほかに、ヒドロキシグアニジン、好ましくは
カルビミノヒドロキシグアニジン、とくにアリールカルビミノヒドロキシグアニ
ジンの投与を含む治療を受けることができるのは早産の幼児であり、その生存率
とその後の生活の長期の能力が改善される。このことは、
とくに、酸素で処置された早産の幼児に見られる。ヒドロキシグアニジンを投与
すると、とくに、心室周囲ロイコマラシア(PVL)、気管支肺形成異状症(BPD)
および早熟の網膜障害(ROP)の発生を予防する。
この発明のほかの重要な一面として、ヒドロキシグアニジン、好ましくはカル
ビミノヒドロキシグアニジン、とくにアリールカルビミノヒドロキシグアニジン
を、低酸素症状が起こる前に、予防投与して、組織の損傷を防いで避けることが
含まれている。この発明の前記一面のとくに重要な例は、狭心症にかかっている
人および/または心筋梗塞および/または心筋梗塞の再発(reinferction of th
e heart)の危険がある人に前記投与を行うことである。
再潅流損傷が起こるほかの具体的な例は、リウマチ様関節炎である(ブレイク(
Blake)ら:「In Xanthine Oxidase:Enzymology and Pathophysiology」アールハリ
ソン(R.Harison)およびアール シイ ブレイ(R.C.Bray)編、66 1st Meeting B
ath、1997年4月9〜11日、Biochem.Soc.Trans.25巻812〜816頁、1997年参照
)。すなわち、関節の炎症が増進している間に、関節圧が毛細血管の潅流圧を超
えると、細血管床(synovial capillary bed)内の血流が閉塞することがある。
しかし、静止中、関節圧力が低下して再潅流が起こることがある。その結果、キ
サンチンオキシダーゼ経路を通じて、酸素誘導ラジカルが直ちに発生する。した
がって、リウマチ様関節炎の場合、関節が反復再潅流損傷症候群になり、これは
、この疾患に見られる持続性炎症と骨のびらんの少なくとも一部分の原因である
。それゆえに、この発明のヒドロキシグアニジ
ン類を投与することは、リウマチ様関節炎を治療するのに有用である。さらに、
リウマチ様関節炎は、キサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロゲナーゼ仲
介虚血疾患の一つである。
再潅流損傷が起こる疾患のさらにほかの具体例は、緑内症である。緑内症は、
眼圧が増大して網膜の血流の混乱または完全停止が生じるために起こる。眼圧が
最終的に低下した場合、キサンチンオキシダーゼが仲介して酸素誘導ラジカルを
産生するので、網膜の再潅流損傷が続いて起こって、網膜の損傷が遅れて起こる
(ロス(Roth)ら、Current Eye Res.、16巻875〜885頁、1997年参照)。したがっ
て、緑内障の場合も、この発明のヒドロキシグアニジンを投与すると陽性の治療
効果がある。したがって、緑内障も、キサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒ
ドロゲナーゼ仲介虚血疾患の一つである。
心臓の再潅流損傷の治療を目的とするこの発明のさらにとくに有利な実施態様
を実施例9に示す。
この発明の前記一面の他の変形として、海水面に比べて酸素圧が実質的に低い
高所などの地域にいるヒトに、ヒドロキシグアニジン、好ましくはカルビミノヒ
ドロキシグアニジン、とくにアリールカルビミノヒドロキシグアニジンを投与す
ることが含まれる。このような投与は、肺水腫および/または脳水腫を起こすな
ど周囲の酸素圧が低い場合の危険な作用を打消すのに有用である。ヒドロキシグ
アニジン、好ましくはカルビミノヒドロキシグアニジン、とくにアリールカルビ
ミノヒドロキシグアニジンの望ましい防護効果は、前記のような低い酸素圧にさ
らされたヒトが、正常な(低い場所または海水面)酸
素圧の環境に戻った後、ある期間投与を続けることによって高めることができる
。
この発明の他の一面によれば、ヒドロキシグアニジン、好ましくはカルビミノ
ヒドロキシグアニジン、とくにアリールカルビミノヒドロキシグアニジンは、ヒ
トを含む同じ種もしくは他の種の他の動物に移植するために、好ましくはヒトを
含む哺乳類である動物から取り出した臓器に投与される。この投与は、臓器が酸
素ラジカルによる組織損傷を起こさぬよう防護するために行われるが、とくに、
その理由は、臓器が新しい宿主の血液と循環接触して再酸素化されるときに前記
損傷を起こすことがあるからである。
この発明のさらに他の一面は、ヒドロキシグアニジン、好ましくはカルビミノ
ヒドロキシグアニジン、とくにアリールカルビミノヒドロキシグアニジンを、酸
素誘導ラジカルの発生に関連する症状を有するヒトに投与することである。とく
にこの投与は、キサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロゲナーゼ酵素によ
るオキシラジカルの発生に関連する症状に適している。オキシラジカル発生の増
大(上向き調節)は、キサンチンオキシダーゼの活性の増大(上向き調節)に関
連する疾患にみられる。この種の疾患としては、不定起源の炎症症状、気道閉塞
、喘息、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病、関節炎、パーキンソン病、
パラコート中毒、熱皮膚損傷、超高熱、膵炎、成人型呼吸窮迫症候群、ネフロー
ゼ、アドリアマイシンネフローゼ、経口X線造影剤の投与に関連する腎臓の損傷
、マラリア、遠隔臓器の損傷、皮膚ポルフィリン光感作、炎症と自己免疫リウマ
チ疾患、リウマ
チ様関節炎、アテローム性動脈硬化症、強皮症、肝炎、ウィルス感染による肝臓
の損傷、増大した頭蓋内圧、脊髄損傷、細菌性骨髄膜炎、インターフェロンを用
いる治療で起こる肝臓の損傷、または他の医薬もしくは非生体内物質を用いる治
療およびキサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼ酵素の上向き調
節された発現を示す症状で起こる肝臓損傷がある。この発明の前記一面の好まし
い変形としては、血液中のキサンチンオキシダーゼの量が(健康な動物またはヒ
トと比べて)増大していることを特徴とする症状を有するヒト、とくに、低酸素
症および/またはショック中で、肝臓および/または腸からキサンチンオキシダ
ーゼを放出しているヒトに前記投与を行うことが含まれる。
この発明のヒドロキシグアニジン類の効果を高めたり効果を付加するために、
遊離ラジカルが起こす作用を低下させたりまたは防止できる他の医薬を組み合わ
せて投与してもよい。このような組合せの例は、ヒドロキシグアニジンを、アデ
ノシンデアミナーゼ阻害剤、たとえばEHNAと組み合わせて投与する例である。他
の例としては、ヒドロキシグアニジン類を、遊離ラジカルスカベンジャー、たと
えばDMSOと組み合わせて、および/またはスピントラップ剤、たとえば、PBNと
組み合わせて、および/またはスーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシ
ドジスムターゼの誘導体またはスーパーオキシドジスムターゼの擬似体と組み合
わせて投与する例がある。
増強効果または相加効果を得るために、本発明のヒドロキシグアニジン類と組
み合わせて投与することが有利
と考えられる他の薬剤は、DCF(2'-デオキシコホルマイシン)、カタラーゼ、ビ
タミンE(α−トコフェロール)、ビタミンC(アスコルビン酸塩;アスコルビ
ン酸)、グルタチオン、尿酸、N-アセチルシステイン(NAC)、ジメチルチオウ
レア(DMU)またはβ−カロテン類である。
本発明のさらに別の面によれば、ヒドロキシグアニジン類が開示される。その
還元反応はキサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼによって触媒
され、ヒドロキシグアニジンは本発明において有用である。
キサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロゲナーゼが仲介する虚血疾患ま
たは虚血症状は、必要に応じて続いて行われる再酸素化後の身体、器官および/
または組織の虚血に関連するキサンチンオキシダーゼ/キサンチンデヒドロゲナ
ーゼが仲介する虚血疾患を意味する。
さらに、本発明のヒドロキシグアニジンの還元生成物[スキーム(A)の化合
物(2)]により、ヒドロキシグアニジン自身により生じる効果に対して増強効
果または相加効果が生じると考えられる。従って、ヒドロキシグアニジンの還元
生成物[スキーム(A)の化合物(2)]を本発明のヒドロキシグアニジンの存
在下で投与することもまた本発明の一部である。
本発明のこれら化合物は、無機酸または有機酸から誘導される薬学的に許容さ
れうる酸付加塩の形態で使用することができる。このような塩には、以下の塩が
含まれるが、これらに限定されない:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、ア
スパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酪酸
塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロ
ペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸
塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタ
ン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ
エタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸
塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩(palmoate)、ペ
クチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、
ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシラ
ート(tosylate)、およびウンデカン酸塩。これらの塩は、化合物の最終的な単
離および精製の途中のその場(in site)において、あるいはその遊離塩基を適
切な有機酸または無機酸と別々に反応させことによって調製することができる。
さらに、本発明の化合物は、投与されたときにそれぞれの遊離化合物が身体内
で放出される、エステルのプロドラッグなどプロドラッグエステルの形態で使用
することができる。そのようなプロドラッグには、たとえば、酢酸エステル、安
息香酸エステル、ピバル酸エステル(pivaloate)など本発明の化合物のエステル
が含まれる。
プロドラッグとして投与する別の形態は、ヒドロキシグアニジンの還元生成物
[スキーム(A)の化合物(2)]の投与である。この場合、代謝による活性化
により、ヒドロキシグアニジン、カルビミノヒドロキシグアニジンまたはアリー
ルカルビミノヒドロキシグアニジンが生成する。
本発明の化合物は、治療的有効量で投与される。「治
療的有効量」は、障害を治療または予防するための化合物の十分な量を意味する
。任意の特定の患者に必要な具体的な治療的有効投与量のレベルは種々の要因に
依存する。このような要因には、治療される障害および障害の重篤度または求め
る防護効果;用いられる具体的な化合物の活性;用いられる具体的な組成物;患
者の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食事;用いられる具体的な化合物
の投与時間、投与経路および排出速度;治療の継続期間;用いられる具体的な化
合物と組み合わせて使用される薬物およびそれと同時に使用される薬物が含まれ
る。
単回用量または分割用量でヒトに投与される本発明の化合物の1日あたりの総
投与量は、たとえば、約0.1〜約100mg/kg体重にするか、あるいはより通常的に
は約0.2〜約50mg/kg体重としてよい。単回用量の組成物は、1日あたりの用量
に達するそのような量またはその分割量を含有してよい。一般に、本発明の治療
法は、そのような治療が必要な患者に1日あたり約20mg〜約2000mgの本発明の化
合物を複数用量または単回用量で投与することを含む。しかし、重篤な場合およ
び/または緊急治療が必要な場合には、1種またはいく種類もの本発明の化合物
10,000mgまでといったより高用量を、連続して投与される複数部分で与えられる
単回用量で投与してよい。単回投薬形態物を製造するためのキャリア物質と組み
合わすことができる有効成分の量は、治療される宿主、具体的な治療および具体
的な投与様式に依存して変化する。
本発明の化合物は、経口的に、非経口的に、吸入スプ
レーにより、直腸的に、または局所的に、従来の非毒性の薬学的に許容されうる
目的とするキャリア、補助薬剤(adjuvants)および賦形剤(vehicles)を含有
する投薬単位処方物で投与することができる。本明細書中で使用される用語の非
経口的(に)は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、胸骨内(intrastemal)
注射、または注入技術が含まれる。経口投与用の液体の投薬形態物は、水などの
不活性希釈剤を含有する薬学的に許容されうる乳剤、マイクロ乳剤、液剤および
懸濁剤が含まれる。そのような組成物は、湿潤剤;乳化剤および懸濁化剤;なら
びに甘味剤、矯味矯臭剤および芳香剤のような補助薬剤も含有していてもよい。
注射可能な製剤、たとえば、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁剤は、公知
技術に従って、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して処方してよ
い。無菌の注射可能な製剤はまた、たとえば1,3-ブタンジオールの溶液として、
非毒性の非経口的に受容可能な希釈液または溶媒の無菌の注射可能な液剤または
懸濁剤であってよい。用いることができる受容可能な賦形剤および溶媒の中には
、水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油
は、溶媒または懸濁媒体として日常的に用いられる。不揮発性油およびオレイン
酸のような脂肪酸を注射剤を製造する際に用いることができる。
注射可能な処方物は、たとえば、細菌またはウイルスを捕獲するフィルターに
よるろ過によって、放射線によって、あるいは滅菌水または他の無菌の注射可能
媒体に使用直前に溶解または分散することができる無菌の固体組成物の形態で滅
菌剤を取り入れることによって滅菌す
ることができる。薬物の吸収を遅らせる様々な方法が当該分野で公知である。た
とえば、薬剤をオイルの溶液または懸濁液として投与することなどである。注射
可能なデポ剤(depot)の形態はまた、薬物およびポリラクチド−ポリグリコリ
ドのような生分解性ポリマーのマイクロカプセルマトリックスを形成させること
によって得ることができる。薬物のポリマーに対する比およびポリマー組成に依
存して、薬物の放出速度を調節することができる。他の生分解性ポリマーの例に
は、ポリオルトエステルおよびポリ酸無水物が含まれる。注射可能なデポ剤はま
た、身体組織と適合し得るリポソームまたはマイクロエマルジョン内に薬物を包
み込むことによって得ることができる。
薬物を直腸投与するための坐薬は、薬物を、当該分野で公知で、そしてそのよ
うな投与に適する融点、すなわち、約30℃の融点を有する適切な非刺激性賦形剤
と混合することによって調製することができる。経口投与するための固体の投薬
形態物には、カプセル、錠剤、ピルおよび顆粒剤を挙げることができる。そのよ
うな固体の投薬形態物において、活性化合物をショ糖、ラクトースまたはデンプ
ンのような少なくとも1つの不活性希釈剤と混合してよい。そのような投薬形態
物もまた、不活性希釈剤以外の付加的な物質、たとえば、ステアリン酸マグネシ
ウムなどの滑剤を含んでいてよい。カプセル、錠剤およびピルの場合、そのよう
な投薬形態物もまた緩衝剤を含んでいてよい。さらに、錠剤およびピルは、腸溶
性のコーティング剤、たとえば、胃ではなく小腸で薬物を放出するコーティング
剤を用いて調製することができる。
経口投与するための錠剤調製については、以下の参考書がとくに参考にされる:
Pharmaceutical Dosage Forms、Vol.1-3、リーバーマン エイら(Liebcrman A
et al.)編、第2版マーセルデッカー(Marcel Dekker)、New York1989-90。
本発明の化合物はまた、局所的に、経皮的に、あるいは軟膏、ペースト、クリ
ーム、ローション、ゲル、粉末剤、液剤、スプレー、パッチまたは吸入剤の形態
での吸入によって投与してよい。本化合物は、無菌条件下、薬学的に許容されう
るキャリアおよび必要とされ得る任意の保存剤または緩衝液と混合される。眼用
処方物もまた本発明の範囲であることが理解される。
本発明の薬剤はまた、リポソームの形態で投与することができる。当該分野で
公知であるように、リポソームは、一般に、リン脂質または他の脂質物質から誘
導される。リポソームは、水性媒体中に分散されるモノラメラ構造またはマルチ
ラメラ構造の液晶によって形成される。非毒性の生理学的に許容されうり、また
代謝可能な脂質で、リポソームを形成し得る任意の脂質を使用することができる
。リポソーム形態の本発明の組成物は、本発明の化合物に加えて、安定化剤、保
存剤および賦形剤などを含有することができる。好ましい脂質は、リン脂質およ
びホスファチジルコリン類(レシチン類)であり、天然品および合成品の両方で
ある。リポソームの形成方法は当該分野において公知である。たとえば、プレス
コット(Prescott)編、Methods in Cell Biology、Vol.XIV、Academic Press
、New York、N.Y.1976(33頁以降)を参照のこと。
本発明の化合物は、単独で、あるいは他の薬剤と組み合わせて投与することが
できる。
キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼの酸化性基質であると
いう能力は、大部分のヒドロキシグアニジン類が有する能力であるため、このク
ラス全体の化合物は本発明において有用であると考えられる。
本発明に従って、特定のヒドロキシグアニジン類が開示される。このようなヒ
ドロキシグアニジンは、キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼ
の作用による酸素ラジカルの生成に関連する症状の予防および治療において有用
である。
好ましいものは、式(7)のカルビミノヒドロキシグアニジンである:
式中、(7)のR1、R2およびR3は互いに独立して、水素、アルキル、アルケ
ニル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテ
ロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、および/または(7)
のR1およびR2を連結する4〜5個の炭素もしくはヘテロ原子の架橋または(7
)のR2およびR3を連結する0〜1個の炭素もしくはヘテロ原子の架橋からなる
群から選択され、その結果、5員環または6員環を生成する架橋の場合には、そ
のような環は必要に応じて、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、シクロア
ルケニル、シクロヘテロアルケニル、アリールまたはヘテロアリールと融合して
よく、(7)のR1、R2
および/またはR3における1個以上の水素は必要に応じて、アルキル、アルケ
ニル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテ
ロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、官能基およ
び/または1個以上の水素がハロゲンまたは官能基に交換されているアルキル、
アルケニル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、シクロアルケニル、シク
ロヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールまたは官能基に交
換されている。
とくに好ましいものは、(7)のR1が、1つまたは数個の官能基、ハロゲン
、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル
、シクロアルケニル、シクロヘテロアルケニルにより置換されたアリールまたは
ヘテロアリールであるアリールカルビミノヒドロキシグアニジンである。
さらにより好ましいものは、以下の式の化合物である:
式中、
R1は−N=CR3R4であり;
R2は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、
シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテ
ロアリール、R3の単結合、およびR3に結合する1個の炭素またはヘテロ原子か
らなる群から選択され;
R3およびR4は互いに独立して、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキ
ル、シクロアルケニル、シクロ
ヘテロアルキル、シクロヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリ
ール、ならびに5員環または6員環を形成する4〜5個の炭素またはヘテロ原子
の架橋からなる群から選択され、この架橋は必要に応じて、シクロアルキル、シ
クロヘテロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルケニル、アリールま
たはヘテロアリールと融合し;
さらに、R3は、R2の単結合、および必要応じてシクロアルキル、シクロヘテ
ロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルケニル、アリールまたはヘテ
ロアリールと融合する5員環または6員環を形成するようにR2に結合する1個
の炭素または1個のヘテロ原子から選択され;
そして、R2、R3、R4の1つまたはいくつかの水素は必要に応じて、独立し
て、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、シクロア
ルケニル、シクロヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、
ハロゲンまたは官能基に交換され、前期アルキル、アルケニル、シクロアルキル
、シクロヘテロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルケニル、アルキ
ニル、アリール、ヘテロアリールまたは官能基の1つ以上の水素は独立して、ハ
ロゲンまたは官能基に交換されている。
しかし、最も好ましいものは、式(1)のカルビミノヒドロキシグアニジンで
ある:
式中、R1は−N=CR3R4であり、その式中、R2、R3、R4は互いに独立して
、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキニ
ル、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択され、この場合、1個または
2個の炭素原子はヘテロ原子に交換されていてもよく、任意の水素はフッ素およ
び/または官能基および/または5員環もしくは6員環を生成するようにR2と
R3、またはR3とR4とを結合する0〜5個の炭素原子の架橋に交換されていて
もよく、そのような環は、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、シクロアル
ケニル、アリール、またはヘテロアリールと融合していてもよく、そして二重結
合を1個もしくは2個含有してもよく、そして1個もしくは2個の炭素原子は、
それぞれ、1個もしくは2個のヘテロ原子に交換されていてもよい。
とくに好ましいものは、(1)のR3が、1個または数個の官能基、アルキル
、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキニルによって置換さ
れたアリールまたはヘテロアリールであるアリールカルビミノヒドロキシグアニ
ジンである。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「アルキル」
には、18個までの炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子の直鎖または分枝鎖
の炭化水素鎖が含まれ、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、
t-ブチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどがある。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「アルケニル
」には、18個までの炭素原子、
好ましくは2〜8個の炭素原子の直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖で、1個または
数個の炭素−炭素の二重結合を含む炭化水素鎖が含まれ、たとえば、プロペニル
、ブテニル、ペンテニルなどがある。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「シクロアル
キル」は、3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素を含有する環状炭化水素
を言い、たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキ
シル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあり、そしてシクロアルキル、シ
クロヘテロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルケニル、アリールお
よびヘテロアリールからなる群から互いに独立して選択される1個または2個の
環と融合していてもよい。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「シクロヘテ
ロアルキル」は、1個または数個の炭素原子がヘテロ原子に交換されているシク
ロアルキルをいう。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「シクロアル
ケニル」は、1個または数個の炭素−炭素二重結合を含有するシクロアルキルを
いい、たとえば、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルなどがある。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「シクロヘテ
ロアルケニル」は、炭素間、炭素およびヘテロ原子の間、またはヘテロ原子間の
結合の1つ以上が二重結合であるシクロヘテロアルキルをいう。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用い
られる用語「アルキニル」は、1個または数個の炭素−炭素の三重結合を含有す
るアルキルをいう。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「アリール」
は、1個以上の水素が必要に応じてハロゲンまたはアルキルオキシによって置換
されていてもよいフェニル、ならびにシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、
シクロアルケニル、シクロヘテロアルケニル、アリールおよびヘテロアリールか
らなる群から互いに独立して選択される1個または2個の環と必要に応じて融合
していてもよいフェニルをいう。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「アリール」
は、1個以上の水素が、アルキル、フッ素化アルキル、アルケニル、フッ素化ア
ルケニル、シクロアルキル、フッ素化シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、
シクロアルケニル、シクロヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロア
リールおよび/または官能基によって置換されていてもよいフェニル、ならびに
シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアル
ケニル、アリールおよび/またはヘテロアリールからなる群から互いに独立して
選択される1個または2個の環と必要に応じて融合していてもよいフェニルをい
う。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「ヘテロアリ
ール」は、5員〜12員の芳香族環、好ましくは5〜6員の芳香族環で、1個以上
のヘテロ原子を含み、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、シクロアルケニ
ル、シクロヘテロアルケニル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から互
いに独立して選
択される1個または2個の環と必要に応じて融合していてもよい芳香族環をいう
。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「ヘテロアリ
ール」は、5員〜12員の芳香族環、好ましくは5〜6員の芳香族環で、1個以上
のヘテロ原子を含み、この場合、1個以上の水素は、アルキル、フッ素化アルキ
ル、アルケニル、フッ素化アルケニル、シクロアルキル、フッ素化シクロアルキ
ル、シクロヘテロアルキル、シクロアルケニル、シクロヘテロアルケニル、アル
キニル、アリール、ヘテロアリールおよび/または官能基によって置換されてい
てもよく、またシクロアルキル、シクロヘテロアルキル、シクロアルケニル、シ
クロヘテロアルケニル、アリールおよび/またはヘテロアリールからなる群から
互いに独立して選択される1個または2個の環と必要に応じて融合していてもよ
い芳香族環をいう。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「ハロゲン」
は、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素をいい、塩素が好ましい。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「ヘテロ原子
」は、チッ素、酸素または硫黄をいい、これらに対して、1個以上の水素が原子
価に従って結合してよく、チッ素の場合、1個の酸素が、必要に応じて、供与体
−受容体結合により窒素に結合することができ、その結果N-オキシドを形成す
る。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「官能基」は
、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、アリールアミ
ノ、ヘ
テロアリールアミノ、ヒドロキシ、アルキルヒドロキシ、フッ素化アルキルヒド
ロキシ、シアノ、カルボキシ、アルキルカルボキシ、カルボキシアルキル、アリ
ールカルボキシ、カルボキシアリール、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシアミノ、
アシル、フッ素化アシル、ニトロソ、スルホニル、スルフィニル、チオ、アルキ
ルチオ、アリールチオ、アミノグアニジノ、アミノヒドロキシグアニジノ、イミ
ノグアニジノ、イミノヒドロキシグアニジノ、グアニジノ、ヒドロキシグアニジ
ノ、グアニジノアミノ、ヒドロキシグアニジノアミノ、ヒドロキシグアニジノイ
ミノまたはグアニジノイミノをいう。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「融合(した
)」は、1個以上の共通した原子を有する2個または3個の環をいい、融合した
環の好ましい最大の数は3である。
それ自体または別の基の一部として本明細書中で用いられる用語「フッ素化」
は、この用語に続く用語の1個または数個の水素がフッ素で置換されていること
をいう。
本発明の最も好ましい化合物は、アリールカルビミノヒドロキシグアニジンま
たはヘテロアリールカルビミノヒドロキシグアニジンから選択され、そのアリー
ル基の水素が、1個または数個のアルキル、アリールオキシ(この場合、置換基
の1個または数個の水素はフッ素により置換されていてもよい)、ハロゲン、ヒ
ドロキシで置換されているものである。
グアノキサベンズおよび以下の化合物もまたとくに好ましく、それら化合物と
してはDWO1、DWO2、DWO3、DWO4、DWO5、DWO6、DWO7、DWO8、LW01、LW04、
LT5、LT7、LT10、LT11、PR1、PR2、PR4、PR5、PR6、PR8、PR10、PR11、PR12、PR
13、PR14、PR15、PR16、PR17、PR18、PR19、PR20、PR21、EN10、EN12、EN18、EN
16、EN20がある。とくに好ましいグアノキサベンズのようなヒドロキシグアニジ
ン類は当該分野で公知である。しかし、最も好ましいものはPR5であり、実施例
7で開示されているように高い活性を有するためである。
本発明はまた、本発明の前記化合物のプロドラッグである化合物に関する。こ
のプロドラッグは、ヒトを含む動物において、ヒドロキシグアニジン、好ましく
はカルビミノヒドロキシグアニジン、最も好ましくはアリールカルビミノヒドロ
キシグアニジンである分子に変換される。
とくに重要なプロドラッグは式(2)の化合物であり、この化合物により、反
応スキーム(D)に従って、本発明の化合物(1)が生成し得る。 さらに、反応スキーム(A)にしたがって本発明のヒドロキシグアニジン(1
)は化合物(2)を生成するので、反応スキーム(D)は本発明のヒドロキシグ
アニジンの再生様式として役に立つ。グアナベンズのグアノキサベンズへの肝臓
シトクロムP450酵素による代謝的変換が最近明らかにされた(クレメント(Cleme
nt)とデメスメーカー(Demesmaeker)、Drug.Metab.Dispos.、1997、25、1266−
1271)。本発明のヒドロキシグアニジン、カルビ
ミノヒドロキシグアニジンまたはアリールカルビミノヒドロキシグアニジンを生
成する式(2)の化合物の大きな能力は、それ故、本発明のヒドロキシグアニジ
ンのとくに有利な特性である。なぜなら、これによって、反応スキーム(A)に
従って消費されるヒドロキシグアニジンが身体内でとぎれることなく再生される
からである。本発明のこの面は、本発明のヒドロキシグアニジンが式(2)のプ
ロドラッグとして、あるいは式(1)のヒドロキシグアニジンそのものとして投
与されるかどうかにかかわらず、有益である。
本発明により、ヒドロキシグアニジン還元活性の検定方法もまた開示される。
この方法の好ましい態様(実施例2)は、公知のヒドロキシグアニジンであるグ
アノキサベンズの特定の特性を利用する。
従って、反応Aに従ってグアノキサベンズを還元すると、グアナベンズと呼ば
れる生成物が生成し、これは、α2−アドレナリン受容体に対するその高い結合
親和性により容易に測定することができる。
実施例3においてさらに示されるように、脾臓のサイトゾル中に存在する酵素
活性を本質的に均一に精製し、キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシ
ダーゼ酵素と同一であることを示しうることを本発明によって明らかにすること
ができる。
以前に説明されているように、ヒポキサンチンおよび
キサンチンなどのプリン類のキサンチンオキシダーゼによる酸化は、酸素の存在
下、スーパーオキシドラジカル(・O2 -)およびより少ない量の過酸化水素(H2
O2)の生成のもとで起こる。以下においては、そのような酸素に基づくラジカ
ル、それはスーパーオキシドラジカル、ペルヒドロキシルラジカルおよびヒドロ
キシルラジカルを含んでおり、それらは、まとめて、酸素誘導ラジカルと呼称す
る。さらに、代わりの用語として、オキシラジカルが使用される、これは、酸素
誘導ラジカルと同一の意味を有するものであるが、必要に応じて変化する。過酸
化水素は、そのようなラジカルの顕著な発生源である。実施例4において、ヒド
ロキシグアニジン類の酵素的還元反応が、ウシミルクから単離されたキサンチン
オキシダーゼによってキサンチン存在下で触媒されることが明らかにされている
。キサンチンの非存在下では、還元は認められない。
本発明の別の面に従って、ヒドロキシグアニジン、好ましくはカルビミノヒド
ロキシグアニジン、最も好ましくはアリールカルビミノヒドロキシグアニジンを
本発明における使用のために選択する方法が開示される。ヒドロキシグアニジン
を、反応Bおよび/または反応Cに共役した反応Aを行うその能力について試験
する際、以下のパラメータ一の1つまたはいくつかが測定される:
・キサンチンオキシダーゼ酵素に対するヒドロキシグアニジンの見かけの親和力
;
・キサンチンオキシダーゼ酵素によるヒドロキシグアニジンの還元反応のKm;
・キサンチンオキシダーゼ酵素によるヒドロキシグアニ
ジンの還元反応の最大速度(Vmax);および
・ヒドロキシグアニジンによってもたらされるキサンチンオキシダーゼ酵素によ
るキサンチンおよび/またはヒポキサンチンの最大酸化速度。
本発明のこの面のいくつかの態様において、前記の能力は酸素の存在下で測定
されるが、他の態様では酸素の非存在下で測定される。
本発明のこの面のなおさらなる態様において、ヒドロキシグアニジンが酸素誘
導ラジカルの生成を減少させる能力が測定される。実施例7において、一連のヒ
ドロキシグアニジン類が、酸素の非存在下、キサンチンオキシダーゼ酵素による
キサンチンの酸化反応を持続する能力に関する例示的な検定法を示す。実施例6
において、オキシラジカルの生成を防止するヒドロキシグアニジンの能力を測定
する例示的な検定法を示す。
本発明のさらなる態様において、ヒドロキシグアニジンが反応Aをうける顕著
な傾向は、ヒドロキシグアニジンの望ましくない特性である。本明細書中で用い
られる「顕著な傾向」は、実施例7で開示されるヒドロキシグアニジンが有する
範囲内にある傾向をいう。顕著な傾向が特定の適用に望ましくない特性であると
いう事実は、ヒドロキシグアニジンの分解速度の増大によるものである。これに
より、ヒトを含む哺乳動物に投与されたとき、ヒドロキシグアニジンの短い半減
期がもたらされる。さらに、スキームAに従って反応をうける顕著な傾向により
、その効果が最も望まれている組織内でヒドロキシグアニジンの低い局所的濃度
が生じてしまう。従って、本発明の化合物の増大した半減期は、特定の環境下で
は有
利となり得る。反応Aの還元反応に関する適度な傾向を呈する本発明の化合物は
、前記の選択基準を使用することによって同定することができる。本明細書中に
記載される適度な能力を示す例示的なヒドロキシグアニジン類はDWO3であり、そ
の構造および特性は実施例7に開示される。
本発明に従って、キサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼのブ
ロック剤を、ヒドロキシグアニジン、とくにカルビミノヒドロキシグアニジン、
最も好ましくはアリールカルビミノヒドロキシグアニジン、その分解を阻害する
ことが望まれるが、それらの共存下で投与することもまた開示される。そのよう
なキサンチンデヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼのブロック剤は、好ま
しくは、アロプリノール、オキシプリノールおよびアムフルチゾールから選択さ
れる。
本特許全体を通して、
「パラコート」は、1,1-ジメチル-4,4-ビピリジニウムをいい、
「アドリアマイシン」は、(8S-cis)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-l
yxo-ヘキソピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ
-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオンをいい、
「アロプリノール」は、1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-オールをいい、
「オキシプリノール」は、1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6-ジオールをいい
、そして
「アムフルチゾール」は、4-アミノ-3-[3-(トリフルオロメチル)-フェニル]-5-
イソチアゾールカルボン酸をいう。
以下の実施例は、本発明のさまざまな具体例の詳細な説明を意図するものであ
り、本発明を限定するものではない。
実施例1
脾臓におけるヒドロキシグアニジンの還元活性の同定粗脾臓サイトゾルの調製
氷冷20μM Tris、1.5mM EDTA、pH7.5中で、ガラス/テフロンホモジナイザー
にて、ラットの脾臓をホモジナイズ(1:10w/v)した。ホモジネートを、30,000
×gにて4℃15分間遠心し、-80℃で凍結保存した。解凍後、上清を70,000×gにて
4℃1時間遠心し、検定(assays)に使用した。
ヒドロキシグアニジン由来の反応生成物の同定
70μMグアノキサベンズ(2(2,6-ジクロロフェニル)メチレン-N-ヒドロキシヒ
ドラジンカルボキシイミダミド)とともに、25mM Tris-HCl、0.75mM EDTAの存在
下に、25℃で粗脾臓サイトゾルをインキュベートした。総量は4mlであった。そ
れから、1、30、60、90または240分後に250μlずつ反応混合物から抜き取り、
そして5分間80℃までウォーターバスで加熱した。ついで、サンプルを遠心分離
し、上清を0.22μmのミリポアフィルターを通して濾過し、その後、濾液の200
μlを40%メタノール、60%10mM酢酸ナトリウム緩衝液、pH4.5で平衡化された
逆相クロマトグラフィーカラム(ウォーターズシメトリーC8(Waters Symmetry C8
))にかけた。溶出速度は0.5ml/minとし、溶出された物質をUVモニターにより260
nmで検出した。別の実験で、本クロマトグラフィ
ー系において、グアノキサベンズおよびグアナベンズは別々に分離されることが
示された。グアノキサベンズの保持時間は約11.5分、そしてグアナベンズでは、
約13分であった。
この実験の結果はインキュベーション時間の増加とともにグアナベンズに相当
するピークが次第により大きくなり、一方、グアノキサベンズに相当するピーク
は相応じてより小さくなった。その結果、1分のインキュベーションの後、UV吸
収のほんの5%がグアナベンズピークに相当し、一方、グアノキサベンズピーク
は95%となった。1時間後、グアナベンズピークがクロマトグラムの吸光度の約
3分の1を占め、そしてグアノキサベンズピークは3分の2を占めることとなっ
た。4時間後、両ピークはおよそ等しいサイズになった。クロマトグラムは、グ
アノキサベンズまたはグアナベンズに相当するピーク以外の顕著なピークは全く
示さなかった。図1に生成物が時間と共に現われる典型的な詳細が示されている
。図1で縦軸は、HPLCのピークに基づく、グアナベンズおよびグアノキサベンズ
のピークのエリア合計に対するグアナベンズピークのエリアのパーセントを示す
。
NMR分析のための酵素反応生成物の調製
NMR研究に十分な生成物を得るため、グアノキサベンズ(500μM)を粗脾臓サイ
トゾルと1時間予めインキュベートした。これらのインキュベーションで、溶媒
にMgCl2(2mM)およびDTT(2mM)を補足した。その理由は、本添加により、酵素
活性が高まることが明らかになったためである。反応混合物の総量は4mlであっ
た。インキュベーションの後、実質的には前記したようにし
て、反応混合物を煮沸し、遠心し、そして濾過し、HPLCカラムヘ産物の少量ずつ
をかけた。結果は、グアナベンズに相当するピークは、カラムから溶出されたUV
を吸収する物質(260nm)の99%以上であることを示した。生成物ピークを含む
画分を集めて凍結乾燥し、ついでMMR分析を行った。
NMRによる反応生成物の特定
NMRスペクトルを、標準5mmプローブおよび微小サンプル観察のための逆立体配
置(inverse configuration)をもつ5mmプローブを備えたJEOL JNM270分光計を
使ってCDCL3中、270.2MHzで記録した。データをDELTAプロセシングパッケージを
使って処理した。グアナベンズおよびグアノキサベンズの参照スペクトルを、そ
れぞれ0.095Mおよび0.090Mの濃度でDMF-d7中にて記録した。サンプル量は0.6ml
とし、標準5mmプローブを用いた。グアノキサベンズの酵素的還元によって生成
された生成物(約80μg)を同じ重水素化された溶媒2滴に溶かし、約0.01Mの濃
度とした。この溶液を内径1mmの毛細管にとり、ついで粘土(modelling clay)
でシールした(溶液が粘土と接触しないように注意し、それによりサンプルの汚
染を防いだ)。毛細管を、標準5mmNMR管中で同軸上に懸濁し、逆検出のために配
置されたプローブmを使ってスペクトルを得た。
HPLC精製後、得られた化合物を1H-NMR分光計を使って分析し、これらの試験結
果を図2に示した。グアナベンズおよびグアノキサベンズ両者のため、対称な1,
2,3-三置換芳香環の典型的なパターンを得た。グアナベンズでは、ブロードなシ
グナルが7.9〜8.7ppmの範囲にわた
り観察され、一方、グアノキサベンズでは、ブロードなシグナルが7.35〜7.45pp
mの範囲にわたり現われた。これらのシグナルは明らかに異なるが、それらは非
常にブロードで少量のサンプルの明確な識別のために使うことはできなかった。
イミンプロトンのシグナルは、グアノキサベンズで8.68ppmにシャープなシング
レット(singlet)として現われ、そしてグアナベンズでは8.52ppmに現われた。こ
れらのシグナルは非常に明確であり、妥当な程度によく分離して現われるため、
それらは生成物の構造の識別に使われてよい。酵素由来のサンプルの1H-NMRは、
グアナベンズの構造としてその構造を確認できる8.513ppmにシャープなシングレ
ットを示した。
図2の詳細は以下のようである。図2には270MHz1H-NMRの7.4〜8.8ppmの範囲
のスペクトルを示しており、Aは、N,N-ジメチルホルムアミド-D7中0.095Mのグ
アナベンズ、Bは、N,N-ジメチルホルムアミド-D7中0.090Mのグアナベンズ、そ
してCは、N,N-ジメチルホルムアミド-D7中0.01Mのグアノキサベンズの酵素処理
で得られた生成物である。
実施例2
ヒドロキシグアニジン還元活性の検定法
本発明の創作に使われたヒドロキシグアニジンアナログには、α2-アドレナリ
ン性受容体に活性を示すものがあった。これらの場合、還元された生成物のα2-
アドレナリン性受容体に対する親和性は一般に天然のヒドロキシグアニジンのも
のとは実質的に異なっていたので、このことにより、ヒドロキシグアニジンから
相当するグアニジンへの転化を予想するための簡易な検定が可能とな
った。どくに、ヒドロキシグアニジンであるグアノキサベンズがこれらの検定に
使われた。なぜならば、その還元生成物であるグアナベンズは、グアノキサベン
ズそれ自身と比べてα2-アドレナリン性受容体に対し、実質的に高い親和性を示
すためである。これらの検定に使われたα2-アドレナリン性受容体を、ヒトHT29
細胞またはラットの脳のいずれかから、以下に記載するようにして得た。
ヒドロキシグアニジンおよびそれらの生成物のバイオアッセイのための膜の調製
HT29膜の調製
HT29細胞を、10%子牛胎児血清、100units/mlペニシリンおよび100μg/mlスト
レプトマイシンを補足したDMEM培地中、75cm2コースター(Costar)細胞培養フ
ラスコにて5%CO2のもと37℃で培養した。細胞膜を、2mM Tris-Cl、1mM EDTAを
含むPBSで2度HT29細胞をリンスすることにより調製した。それから、5mlの同じ
緩衝液へ、細胞をプレートからかきとった。細胞をウルトラーターラックス(ul
tra-Turrax)ホモジナイザー(IKAT25、直径8mmプローブを備えたもの)を使って、
ホモジナイズした。ホモジネートを600×gで5分間遠心し、上清をデカンテーシ
ョンし、ついで、べックマンJ2-21遠心機において、4℃で30,000×gで15分間遠
心した。得られたペレットを50mM Tris-Cl、1.5mM EDTA中に懸濁し、そして、さ
らに使用するまで-80℃で凍結保存した。
ラット大脳皮質膜の調製
体重200〜300gの雄SD系ラットを断頭して、大脳皮質を即座に切開し、そして
モータで稼動するテフロンガ
ラスホモジナイザーを使用して、氷冷した50mM Tris-Cl、5mM EDTA、0.1mM PMSF
(フエニルメチルスルフォニルフルオライド)、10μg/ml大豆トリプシンインヒ
ビターおよび200μg/mlバシトラシン(bacitracin)、pH7.5中でホモジナイズし
た。ホモジネートを500×gでスピンし、そして上清を集め、38,000×gで12分間
遠心した。ペレットを1.5mM EDTA、50mM Tris-Cl pH7.5に2度再懸濁し、そして
再遠心した。最終ペレットを、1.5mM EDTA、50mM Tris-Cl pH7.5で、約2.4mgタ
ンパク質/mlのタンパク質濃度に希釈した。小分けした膜を凍結し、使用するま
で-80℃で保存した。
放射性リガンド結合によるヒドロキシグアニジン還元活性の検定
本検定は、放射性リガンドの結合を使用することによる、α2-アドレナリン性
受容体に対するリガンドの親和性の測定の可能性に基づいている。典型的な実験
では、測定するサンプルの少量ずつを、α2-アドレナリン性受容体に結合するこ
とができる適切な濃度の放射性リガンドと、α2-アドレナリン性受容体が豊富な
膜を含む検定系に添加する。平衡に到達させるため、測定混合物を適切な時間イ
ンキュベートしたあと、膜に結合する放射性リガンドの量を、文献に記載されて
いる、一般に放射性リガンド結合(radioligand binding)と呼ばれる方法を使
ってGF/Cガラスフィルター上で洗浄し、濾過することにより、測定した。α2-ア
ドレナリン性受容体に対する放射性リガンドの結合を阻害するヒドロキシグアニ
ジンとその生成物の能力により、反応混合物のヒドロキシグアニジン/グアニジ
ン活性の測定が構成される。好ましい
ヒドロキシグアニジンは、相当するグアニジンがヒドロキシグアニジンそれ自体
と比較して実質的に異なる親和性を示すものである。そのようなヒドロキシグア
ニジンの最も好ましい例がグアノキサベンズである。
検定の標準法では、ヒドロキシグアニジン還元活性は測定される活性を含む検
定混合物に一定量のグアノキサベンズを添加することにより推定される。反応の
完了後、還元活性は、検定混合物の少量ずつを、反応混合物のα2-アドレナリン
性受容体結合活性を推定する目的を有する放射性リガンド検定系に添加すること
により推定される。
前記検定の単純化された方法では、α2-アドレナリン性受容体結合活性の相対
的な変化を、小分けしたもの単回希釈物を結合検定系に添加し、ついでこの活性
をヒドロキシグアニジン還元活性を含まないブランク検定から得られた小分けし
たものの活性と比較することにより推定する。
検定のより正確な方法では、ヒドロキシグアニジンとグアニジン生成物の混合
物の「見かけの親和性」を、測定する各サンプルに対し、完全な競争曲線を作る
ことによって測定する。これは異なった希釈の反応混合物を放射性リガンド結合
検定系に添加することにより達成される。ヒドロキシグアニジンとグアニジン生
成物の濃度の合計は分かっているので、混合物の「見かけの親和性」は、放射性
リガンド結合データ分析の標準法を使って、放射性リガンド結合データから計算
できる(ウーレン
究の目的のため、反応混合物の見かけの親和性を、放射
性リガンド結合分析のコンピューターソフトウェアパッ
Sweden)を使って競争データから推定した。その際得られるグアニジン生成物の
画分(q)は以下により与えられる。
式中、[P]は反応の完了における反応混合物中の生成物の濃度であり、[S]は、反
応の完了における反応混合物中の基質の濃度であり、[S]+[P]は反応の完了にお
ける基質と生成物の濃度の合計であり、それは反応の開始において反応混合物に
添加される基質の濃度に相当するものであり、Kpは生成物とα2-アドレナリン性
受容体との既知の解離定数であり、Ksは基質とα2-アドレナリン性受容体との既
知の解離定数であり、そしてKmは混合物とα2-アドレナリン性受容体との見かけ
の解離定数である。qが決定されると、酵素反応生成物[P]の濃度が以下の式か
ら計算できる。
[P]=q[S0]
式中[S0]は、反応混合物に存在するヒドロキシグアニジンの初期濃度である(す
なわち、時間0における)。
典型的な検定では、α2-アドレナリン性受容体を含む膜(HT29細胞またはラッ
ト大脳皮質由来)を使用し、そしてα2-アドレナリン性受容体放射性リガンド[3
H]RX821002(Amersham,Buckinghamshire,UK)を使って、α2-アドレナリン性
受容体結合活性を測定した。
基質と生成物の解離定数、KsおよびKpを、天然の化
合物および[3H]RX821002を使い、放射性リガンド結合分
(Wikberg),1991)を適用し、また放射性リガンドデータ分析プログラムを使って
得られたデータについて計算を実行することにより、競争試験において別々に測
定した。
本方法の典型的な適用では、グアノキサベンズ、その還元生成物はグアナベン
ズであるが、を使用した。グアノキサベンズでは、そのKsは4000nMと推定され、
また、還元生成物ではKpは25nMと推定された。
図3は、グアノキサベンズとその還元生成物グアナベンズが、未知の割合で含
まれる2つの異なったサンプルの検定の典型的な結果を示す。これらの試験の目
的のため、70μMのグアノキサベンズを、25mM Tris、0.75mM EDTA、0.25mM DTT
、1mM MgCl2、pH7.5で希釈されたラット脾臓またはラット心臓サイトゾルのいづ
れかと最初にインキュベートした(これらの試験では、実質的に、ラット脾臓サ
イトゾルの調製についての実施例1の記載のようにして組織サイトゾルを調製し
た)。コントロールとして、組織サイトゾルを除いてインキュベートしたものを
用いた。インキュベーションを25℃で1時間行い、その後反応を80℃で5分間加
熱することにより停止させた。それから、サンプルを遠心して変性したタンパク
質を除き、そして得られた上清について、大脳皮質膜、[3H]RX821002を使い、ま
た異なる希釈率の試験サンプルを放射性リガンド検定系に加え、標準放射性リガ
ンド結合検定プロトコルによりKmの測定を行なった(ウーレ
られるように、心臓および脾臓サイトゾルの両者がグア
ノキサベンズとの見かけの親和性を著しく増加した。心臓サイトゾルの試験では
、Kmは259nMと推定され、それはq=0.09に相当するものである(すなわち、グア
ノキサベンズからグアナベンズへの転化率9%;サンプル中のグアナベンズの濃
度は6.3μMである)。脾臓サイトゾルの試験では、Kmは99.5nMと推定され、そ
れはq=0.25に相当するものである(すなわち、グアノキサベンズからグアナベン
ズへの転化率25%;サンプル中のグアナベンズの濃度は17.5μMである)。
検定の単純化された方法では、α2-アドレナリン性受容体を含む膜および[3H]
RX821002放射性リガンドをヒドロキシグアニジン還元活性およびヒドロキシグア
ニジンとともに添加し、ついでその混合物を適切な時間インキュベートした。検
定の本実施において、ヒドロキシグアニジンの還元がKmの測定と同時に起こった
。検定のこの変法の例を実施例4および8に示す。
実施例3
脾臓サイトゾル由来のヒドロキシグアニジン還元活性の精製と活性がキサンチン
デヒドロゲナーゼ/キサンチンオキシダーゼ酵素であることの同定
脾臓サイトゾルの調製
ラット脾臓をガラス/テフロンホモジナイザーで水冷した20mM Tris、1.5mM E
DTA、pH7.5中でホモジナイズした(1:10w/v)。ホモジネートをべックマンJ2
-21(Beckman J2-21)遠心機により4℃15分間30,000×gで遠心し、そして-80℃
で凍結保存した。解凍後、上清を4℃で超遠心機により70,000×gで1時間遠心
した。
酵素活性の検定
酵素活性を実施例2に記載されるようにして推定した。
精製方法
すべての精製方法は0〜4℃で行われた。超遠心で得られた上清を、最初予め20
mM Tris、1.5mM EDTA,pH7.5 で平衡化したDEAEセファロースCL-6Bカラムにかけ
、そして非結合タンパク質を、溶出液中280nmにおける吸収が全く検出されなく
なるまで過剰量の同じ緩衝液で洗浄し除去した。それから、タンパク質を前記の
同じ緩衝液に0〜400mM NaClを加えることにより調製した直線勾配で溶出し、
そして10mlの画分を集めた。ヒドロキシグアニジン還元活性の単一ピークは約10
0mM NaClで溶出した。活性を含む画分を集め、そして直接100mMリン酸カリウム
緩衝液(pH7.5)で平衡化したバイオラドマクロプレップセラミックヒドロキシ
アパタイトカラムにかけた。ヒドロキシアパタイトカラムを、直線勾配100〜400
mMのリン酸カリウム緩衝液で溶出し、酵素活性の単一ピークの溶出がリン酸カ
リウム400mM付近で起こった。活性を示す画分を集め、そして最終的に約1mlの量
となるまでミリポアウルトラフリー15遠心濾過装置(バイオマックス30メンブラ
ン)で濃縮した。この濃縮物の200μlずつを、スーパーデックス200HR10/30カラ
ムにかけ、そして20mM Tris、1.5mM EDTA(pH7.5)で溶出した。ヒドロキシグア
ニジン還元活性を含む画分を集め、ミリポアウルトラフリー15遠心濾過装置を使
って10倍に濃縮し、ついでスーパーデックス200HR10/30カラムに再びかけた。2
度目のスーパーデックス200処理では、酵素活性を示す単一の相対称のUV吸収ピ
ークが溶出された。これらの画分を再び集め、濃縮し、そしてさらに
分析を行なうまで-80℃で保存した。
ゲル電気泳動
最終酵素調製物の純度を6%ゲルを使って、非変性ポリアクリルアミドゲル電
気泳動(PAGE)で調べた。このゲル上で、1つの主要なバンドがクーマシーブル
ーまたは銀染色ののち見られた。精製されたタンパク質の分子量は450kDaと推定
された。
タンパク質配列分析
精製された酵素をレムリ(Laemmli)(1970)の方法に従い8%SDSポリアクリ
ルアミドゲルで電気泳動した。ゲルに添加する前に、試料をサンプルバッファー
中で煮沸した。電気泳動後、タンパク質のバンドをPVDFプロテインシーケンシン
グメンブラン(バイオラド)に転写した。PVDF膜をクーマシーブルーで染色し、
バンドを切り出し、そして自動エドマン分解配列分析器を使ってN末端アミノ酸
配列分析を行なった。1つの主要バンドから、そしてそれは分子量102kDaに
相当したが、8つのアミノ酸の配列がえられた:ANVQLFQE。スイスプロットデー
タベースサーチにより、この配列は、公表されている配列(アマヤ(Amaya)ら、1
990)の543残基に始まる、ラットキサンチンデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.204)お
よびキサンチンオキシダーゼ(EC1.1.3.22)の8個の残基と一致することが明ら
かになった。それゆえ102kDaのバンドはキサンチンデヒドロケナーゼ/キサンチ
ンオキシダーゼ酵素に由来する断片であると結論した。
実施例4
ウシキサンチンオキシダーゼのヒドロキシグアニジン還元活性
種々の濃度のグアノキサベンズを加えて、0.004units/mlのウシミルクキサン
チンオキシダーゼ(Sigma,St.Luis,MO,uSA)、100μMキサンチン、50pMのα2
-アドレナリン性受容体(HT29細胞膜中)、33mM TrisHCl、1mM EDTA、pH7.5を
含む150μlの量の検定混合物を調製し、そして25℃で1時間インキュベートし
て、ウシキサンチンオキシダーゼのヒドロキシグアニジン還元活性を明らかにし
た。コントロールとして、キサンチンを省略した以外は同じ組成の反応混合物を
用いた。GF/Cガラスファイバーフィルター上で濾過し、そして20mlの氷冷50mM
Tris緩衝液(pH7.5)で洗浄することにより、反応を停止させ、そしてそれから
フィルターを放射性活性のカウントに供した。図4にそのような検定から得られ
た結果の典型的な詳細を示す。図4に見られるように、検定系へのキサンチンの
添加により、キサンチンがない場合と比較してグアノキサベンズの見かけの親和
性が約40倍に増加した。キサンチンがない場合のグアノキサベンズの見かけのKd
値は、これらの試験において8800nMであると推定され、そしてキサンチンの存在
する場合は、204nMであると推定された。これらの読みは、キサンチンがない場
合にグアナベンズに転化されるグアノキサベンズがまったくないこと、およびキ
サンチンが存在する場合にはおよそ88%の転化が生ずることに相当した。
実施例5
酸素の存在、非存在下におけるキサンチンオキシダーゼによるキサンチンの酸化
を維持するヒドロキシグアニジンの能力
酸素の存在、非存在下におけるキサンチンの尿酸への
酸化を維持するためのヒドロキシグアニジンの能力を分光光度法を使って検定し
た。この方法では、ウシミルクキサンチンオキシダーゼを嫌気条件のためのヘル
マ(Helma)(登録商標)シーラブルキュベットに注入し、それにより以下のよ
うな試薬を含む1mlの反応混合物を作った:50μMヒドロキシグアニジン、50μM
キサンチン、0.05units/mlウシミルクキサンチンオキシダーゼ、50mM Trisおよ
び1.5mM EDTA;反応混合物のpHは7.5で、そして温度は20℃とした。チッ素で5〜
10分間使用されるすべての溶液を置換して嫌気条件を作り、一方、好気条件は溶
液を空気にさらすことにより作った。尿酸の生成率を一定のインターバルで295n
m(尿酸の最大吸収)での吸光度の増加を測ることにより分光光度法的にモニタ
ーした。図5に、これら試験の典型的な記録を示す。この試験において、ヒドロ
キシグアニジンはグアノキサベンズであった。図に見られるように、グアノキサ
ベンズの添加により20%酸素存在下だけでなく、酸素の非存在下(すなわち、チ
ッ素)においても尿酸の生成率が実質的に増加した。
実施例6
酸素存在下におけるキサンチンオキシダーゼによるスーパーオキシドラジカルの
生成阻害のためのヒドロキシグアニジンの能力
ER4105STダブルキャビティーを備えたブルーカー(Bruker)ER200D-SRC EPR分
光計およびスピントラップ試薬DMPOを使い、実質的にブリティガン(Britigan)
ら(1990)により記載される方法を使うことにより、キサンチンオキシダーゼお
よびキサンチン反応により生成
されたスーパーオキシドのスピン回転(spin adducts)の検出を行なった。すな
わち、プラスチック管に、並べた順番で、以下の最終濃度となるよう試薬:50mM
TrisHCl、1.5mM EDTA、100μMキサンチン、100μMグアノキサベンズ、0.04un
its/mlキサンチンオキシダーゼおよび50μM DMPO、pH7.5、を加えることにより
、総量0.5mlの反応混合物を調製した。コントロールとして、グアノキサベンズ
を省略した以外は同じ組成の反応混合物を用いた。溶媒を、ただちに水性サンプ
ルの標準フラットセルへ移し、室温でスペクトルを記録した。分光計の装置は以
下のようであった:マイクロ波強度3.99mW、調整振幅1.028G、時間定数10.24ms
、調整周波数100kHz、レシーバーゲイン5×104図6にこれら試験の典型的な記録
を示す。図に見られるように、EPRスペクトルはスーパーオキシドに相当する4
本線1:2:2:1シグナル(図6で矢印により示される)を示した。さらに、図に見
られるように、100μMグアノキサベンズの存在により、スーパーオキシドシグ
ナルが約60%減少し、これは、スーパーオキシドの生成を阻害するグアノキサベ
ンズの能力を示す。図に見られるように、EPRスペクトルは付加的な3本線1:1:1
シグナルを含んでいた。この付加的なシグナルはサンプルの調製に使われたディ
スポーザブルな研究用プラスチックから放出された酸化チッ素に相当する不純物
による(ベトナー(Buettner)ら、1991参照)。
実施例7
酸素非存在下におけるキサンチンオキシダーゼによるキサンチンの酸化を維持す
るヒドロキシグアニジン類の能力
キサンチンの酸化を維持するさまざまなヒドロキシグアニジン類の能力を分光
光度法を使って検定した。この方法では、ウシミルクキサンチンオキシダーゼを
嫌気条件のためのヘルマ(Helma)(登録商標)シーラブルキュベットに注入し
、それにより以下のような試薬を含む1mlの反応混合物を作った:50μMヒドロ
キシグアニジン、50μMキサンチン、0.05units/mlウシミルクキサンチンオキシ
ダーゼ、50mM Trisおよび1.5mM EDTA;反応混合物のpHは7.5で、温度は20℃とし
た。チッ素で5〜10分間使用されるすべての溶液を置換して、嫌気条件を作った
。尿酸の生成率を一定のインターバルで295nm(尿酸の最大吸収)での吸光度の
増加を測ることにより分光光度法的にモニターした。キサンチンの酸化を維持す
るヒドロキシグアニジンの相対的な能力を曲線の初期の直線部分の微分から推定
した。ブランクの値を得るため、ヒドロキシグアニジンの溶媒(水)と等しい量
を別の実験で反応混合物に加え、そして吸光度変化の初期の割合を、試験を行な
ったヒドロキシグアニジンの割合の値から差し引いた。この方法にしたがって試
験した典型的なヒドロキシグアニジン類を表1に示す(次のページ参照)。
前記リストにある典型的なヒドロキシグアニジン類のいくつかのものについて
の経時的な吸光度変化相互の関係を図7に示す。図7に見られるようにキサンチ
ンオキシダーゼによるキサンチンの酸化を補助する種々のさまざまなヒドロキシ
グアニジン類の能力は多様である。
本実施例において、本方法により前記リストにある典型的なヒドロキシグアニ
ジン類を検定することにより得
られたキサンチンの酸化の補助率の典型的な初期割合をさらに表2に示す。既知化合物の供給源
ヒドロキシグアニジン:(Pfalz)& Bauer,Inc.;CT,USA,アミノヒドロキシグア
ニジン(1-アミノ-3-ヒドロキシグアニジン)は、カナダ特許No.894265に基づ
いて調製した。「DWO」といわれる化合物は、ドーべル(Doubell)とオリバー(
Oliver),Drug Rcs.,1992,42,65-69に基づいて調製した。グアノベンズはレ
デュー(Ledoux)ら、Therapic,1981,46(2)187-191に基づいて調製した。LW01
およびLW04は、ワン(wang)ら、J.Med.Chem.1990,33,608-614に基づいて
調製した。LT5、LT7、LT10およびLT11は、タイ(Tai)ら、J.Med.Chcm.,1984
,27,236-238に基づいて調製した。PRおよびEN化合物は、実施例11に示される
ように調製した。 実施例8
キサンチンオキシダーゼによるヒドロキシグアニジンの還元を阻害するアロプリ
ノールの能力
ヒドロキシグアニジンの還元を阻害するアロプリノールの能力を示すため、実
質的に、実施例4に記載されるようなプロトコルを使用した。これら試験では、
さまざまな量のグアノキサベンズが検定系に加えられ、最終量が150μlで、最
終濃度が0.004unit/mlのウシミルクキサンチンオキシダーゼ(Sigma,St.Luis
,MO,USA)、100μMキサンチン、20μMアロプリノール、50pMα2−アドレナ
リン性受容体(HT29細胞膜)中、33mM TrisHCl、1mM EDTA、pH7.5のものを含む
検定系を25℃で1時間インキュベートした。コントロールとして、アロプリノー
ルを省略した以外は同じ組成の反応混合物を用いた。
GF/Cガラスファイバーフィルター上で濾過し、そして20mlの氷冷50mM Tris緩
衝液(pH7.5)で洗浄することにより、反応を停止させ、ついでフィルターを放
射性活性のカウントに供した。図8に、そのような測定から得られた結果の典型
的な詳細を示す。図8に見られるように、アロプリノールがない場合に比べて、
アロプリノールの添加によってグアノキサベンズの見かけの親和性は約24分の1
に減少した。これら試験で、キサンチンが存在しないときのグアノキサベンズの
見かけのKdは4900nMであると推測され、キサンチンが存在する場合、204nMで
あると推測された。これらの値は、アロプリノールが存在する場合にはグアナベ
ンズに転化されるグアノキサベンズが全くないこと、およびアロプリノールが存
在しない場合は約88%の転化が起こることに相当した(図8の「-アロプリノー
ル」は、図4の「+キサンチン」と同じデータを表わすことに注意)。
実施例9
心臓において組織保護効果を示すヒドロキシグアニジン(PR5)の能力
実質的にセルイ(Selye)ら、(Angiology,1960,1,398-407)およびキゼミ
ンスキー(Kizeminski)とシャタジー(Chatterjee)(Pharm.Parmacol.Lctt.
1993,345-48)により記載された方法に従い、PR5の組織保護効果を示すために
、心臓再潅流障害のモデルを使用した。本モデルにおいて、ラット心臓の冠状動
脈を閉鎖し、数時間後に再潅流を起こさせた。再潅流の間に、心臓不整脈の場合
が観察される。それらは酸素誘導フリーラジカルの蓄積との関係がよく知られて
いる。PR5で処置した動物お
よび薬剤を投与していない、またはアロプリノールを投与したかのいずれかのコ
ントロール動物において、これらの不整脈がモニターされた。アロプリノールを
コントロールとして用いた。なぜならば、酸素誘導フリーラジカルの発生を防ぐ
ことができる試薬として文献においてよく知られているためである。すなわち、
ラットを、ペントバルビタールナトリウムで麻酔し、圧力15〜20cmH2O、心拍
数60strokes/minの小動物用人工呼吸器を用いて通気した。ECG(electrocardiog
ram)および全身血圧を、それぞれカテーテルで左頚動脈(left carotid artery
)に接続した標準リードIIおよび圧力変換器PR-1500(Narco Bio-Systems,Ho
uston,USA)を用いて、フィジオグラフDMP-4B(Physiograph DMP-4B)(Narco
Bio-Systems,Houston,USA)に記録した。第4肋間部で胸部を切開し、心膜に
切り目を入れ、左冠状動脈の周辺で元の場所に近いところに三角巾(4/0 silk Me
dicor,Budapcst,Hungary)をつけた。シルク結紮をプラスチック管に通し、胸
部を一部閉鎖し、本動物を10分間蘇生させた。ついで0.9%塩化ナトリウムに溶
解したPR-5を、冠状動脈の閉鎖10分前に1、3または10mg/kg体重の投与量で、
静脈注射した。コントロールとして同量の0.9%塩化ナトリウムを用いた。結紮
を引っ張り、心臓の表面に管を押しつけることによって、冠状動脈を10分間閉鎖
した。クランプを除き、結紮の引っ張りを解除することにより、再潅流を始め、
潅流を20分間続けた。心室頻脈および心室細動の継続時間をECGカーブを用いて
測定することにより、20分間の潅流の間に心室の異所性活動を評価した。表2に
結果を示すが、結果は、20分間の再潅流における
心室頻脈および心室細動の全継続時間(または動物の最終的な死まで)の平均±
SEM(単位は秒)として表されている。心室頻脈および心室細動を示した動物の
発生率もまた、心室頻脈および心室細動を示した動物の数として、表2に示され
ている。かっこ内の数字は、全動物数に対する%で表示した発生率に関する。
表2において、スター「*」は、適切な統計試験を用いp<0.05でのコントロー
ルとの有意な差を示す。Alpはアロプリノールを、nは試験動物の数を示す。表
に見られるように、PR5は、死亡率の低下と共に、心室頻脈および心室細動の発
生および継続の有意な低下を起こした。また、10mg/kgのアロプリノールを用い
てもこれらの指標は低下するが、3〜10mg/kgのPR5を用いるより低い程度であっ
た。
実施例10
組織における尿酸の生成を維持するヒドロキシグアニジン(PR5)の能力
以下の方法により、組織における尿酸の生成を維持するヒドロキシグアニジン
(PR5)の能力を示した。50ml三角フラスコ中の7.5mlアルゴン飽和Tris-リンガ
ー緩衝液(4mM KCl、100mM NaCl、2nM CaCl2、2mg/mlグルコースおよび40mM Tr
isHCl、pH7.4)中で、37℃にてラット脾臓組織0.6gをインキュベートし、インキ
ュベーション中、アルゴンの状態を維持するよう注意した。好気性のコントロー
ルとして、緩衝液を空気で飽和し、インキュベーションを空気下で行なう以外は
同じインキュベーションを行なった。30分後フラスコを開き、約1mm角の組織片
を得るため組織を刻んだ。ついで、最終濃度0.5mMのPR5を得るため嫌気性フラス
コの半分までPR5を加え、一方、嫌気性フラスコの残り半分に同量のPR5の溶媒を
加え、両処置についてアルゴン下でさらに60分インキュベーションを継続した。
好気性フラスコでは、組織を刻んだ後、空気下でさらに60分インキュベーション
を継続した。60分のインキュベーションの完了時に、インキュベーション混合物
をナイロンネットを用いて迅速に濾過することによって、組織から放出された尿
酸を含むインキュベーション培養液を回収した。濾液をただちに90〜95℃で10〜
15分間沸騰させ、3000RPMで10分間遠心した。そして、実質的に粒子を含まない
調製物を得るため、ウルトラフリーMCバイオマックス10ミルポアフィルトレーシ
ョン装置を使って5000×gで0.5時間、上清を遠心し、HPLCを用いて尿酸含有量を
分析するまで-20℃で保存した。
尿酸含有量分析のため、前記の調製物を解凍し、2.1×250mm Vvdac RP C18、9
0A、201HS1010カラムを使い、
10mM KH2PO4(A)および50%(v/v)メタノール/水中の10mM KH2PO4(B)の直
線勾配を用いて(両者ともリン酸でpH4.55に調整)、0.05mlずつをウォーターズ
2690セパレーションモジュールにかけた。流速は0.15ml/minであった。クロマ
トグラフを記録するため、フォトダイオードアレイ検出器を用いた。尿酸ピーク
は13分後に溶出され、標準の尿酸レファレンスのスペクトルによって同定された
。
これら試験の結果は以下のようである。元のインキュベーション液中の尿酸量
は、好気性コントロールでは285.7μmol/L、嫌気性コントロールでは17.9μmol
/L、PR5で処理した嫌気性組織では285.5μmol/Lであった。
このように、これら結果は、嫌気性条件の間は好気性コントロールと比較して
、尿酸の生成が約16分の1に減少することを示した。しかしながら、PR5が嫌気
性条件下で存在する場合は、尿酸の生成は完全に好気性コントロールの場合まで
回復した。それゆえ、これら結果は、ヒドロキシグアニジンRP5は組織内の尿酸
生成を維持し得るということを示す。
実施例11
ヒドロキシグアニジンの合成
以下の一般的な方法を用いて、実験#1〜#22において以下に記載されるヒドロ
キシグアニジン類を調製した。等モルのN-ヒドロキシ-N'アミノグアニジンパラ
トルエンスルホン酸または臭化水素および適当なカルボニル化合物を0.1〜1時
間エタノール中で還流し、加熱した。反応をTLCでモニターした。終了後、反応
混合物を冷却した。#1および#5では、冷却後生成物を沈殿させた。他
の実験では、反応混合物を真空で濃縮し、そしてアセトニトリル添加後、生成物
を沈殿させた。#23では、以下に詳細に記載する異なった方法を用いた。
#1:1,4-ビス(N-ヒドロキシグアニジノイミノメチル)ベンゼンブロミド(PR1)
測定値(%):C28.9;H3.9;N26.3
計算値(%):C28.6;H3.8;N26.7
#2:N-(ジフェニルメチレンアミノ)-N'-ヒドロキシグアニジンブロミド(PR2)
測定値(%):C50.7;H4.6;N17.1
計算値(%):C50.2;H4.5;N16.7
#3:N-(シクロヘキシリデンアミノ)−N'−ヒドロキシグアニジントシラート(PR4
)
測定値(%):C49.1;H6.5;N16.6
計算値(%):C49.1;H6.5;N16.4
#4:N-(3,4−ジメトキシ-2-クロロベンジリデンアミノ)-N'-ヒドロキシグアニジ
ントシラート(PR5) 測定値(%):C44.6;H4.9;N11.6
計算値(%):C44.1;H5.0;N12.1
#5:1,3-ビス(N-ヒドロキシグアニジノイミノメチル)ベンゼントシラート塩化物
(PR8)
測定値(%):C40.1;H4.8;N22.5
計算値(%):C40.4;H5.0;N22.2
#6:N-(3-メチルブチリデンアミノ)-N'-ヒドロキシグアニジントシラート(PR10
) 測定値(%):C46.8;H6.7;N17.1
計算値(%):C47.3;H6.7;N17.1
#7:3,4−ジメトキシアセトフェノン-N-ヒドロキシグアニルヒドラゾントシラー
ト(PR11)
測定値(%):C49.7;H5.9;N13.4
計算値(%):C49.9;H5.8;N12.9
#8:N-(フリル-2-メチレンアミノ)-N'-ヒドロキシグアニジントシラート(PR12
) 測定値(%):C44.3;H4.9;N16.2
計算値(%):C44.7;H4.9;N16.0
#9:N-(フェニルエチリデンアミノ)-N'-ヒドロキシグアニジントシラート(PR13
)
測定値(%):C52.3;H5.3;N15.0
計算値(%):C52.7;H5.5;N15.4
#10:N-(3-クロロ-5-トリフルオロメチルピリジル-2-メチレンアミノ)-N'-ヒド
ロキシグアニジントシラート(PR14) 測定値(%):C52.3;H5.3;N15.0
計算値(%):C52.7;H5.5;N15.4
#11:N-[1-(4-クロロフェニル)-ピロリル-2-メチレンアミノ]]-N'-ヒドロキシグ
アニジントシラート(PR15)
測定値(%):C50.2;H4.5;N16.0
計算値(%):C50.7;H4.5;N15.6
#12:N-(チアゾリル-2-メチレンアミノ)-N'-ヒドロキシグアニジントシラート(P
R16) 測定値(%):C39.8;H4.1;N19.8
計算値(%):C40.3;H4.2;N19.6
#13:N-(2,6-ジクロロフェノキシエチリデンアミノ)-N'-ヒドロキシグアニジン臭
化物(PR17)
測定値(%):C30.4;H3.1;N15.8
計算値(%):C30.2;H3.1;N15.6
#14:N-(3-メチルベンゾ[b]チエニル-2-メチレンアミノ)-N'-ヒドロキシグアニジ
ントシラート(PR18) 測定値(%):C50.9;H4.8;N13.7
計算値(%):C51.4;H4.8;N13.3
#15:N-(N-オキシピリジル-4-メチレンアミノ)-N'-ヒドロ
キシグアニジントシラート(PR19)
測定値(%):C43.1;H4.9;N18.1
計算値(%):C43.6;H5.0;N18.2
#16:N-(5-クロロ-1,3-ジメチルピラゾリル-4-メチレンアミノ)-N'-ヒドロキシグ
アニジントシラート(PR20) 測定値(%):C41.7;H4.7;N20.9
計算値(%):C41.7;H4.8;N20.9
#17:N-(フェニルエチニルメチレンアミノ)-N'-ヒドロキシグアニジントシラート
(PR21)
測定値(%):C54.6;H4.7;N15.0
計算値(%):C54.5;H4.8;N15.0
#18:N-(3-ブロモ-4-メトキシベンジリデンアミノ)-N'-ヒドロキシグアニジント
シラート(EN10) 測定値(%):C41.5;H4.2;N12.2
計算値(%):C41.8;H4.4;N11.8
#19:N-(4−トリフルオロメチルベンジリデンアミノ)-N'-
ヒドロキシグアニジントシラート(EN12)
測定値(%):C45.4;H4.5;N13.4
計算値(%):C45.9;H4.1;N13.4
#20:N-(3-フェニルプロペニレンアミノ)-N'-ヒドロキシグアニジントシラート(
EN16) 測定値(%):C53.9;H5.2;N14.3
計算値(%):C54.2;H5.4;N14.9
#21:N-(3-メチル-3-フェニルプロペニレンアミノ)-N'-ヒ
ドロキシグアニジントシラート(EN20)
測定値(%):C55.1;H5.9;N14.1
計算値(%):C55.4;H5.7;N14.4
#22:N-(6−クロロ-7-メチル-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン-3-メチレンアミノ)-N
'-ヒドロキシグアニジントシラート(EN18) 測定値(%):C48.8;H4.4;N11.5
計算値(%):C48.9;H4.1;N12.0
#23:3-ヒドロキシミノ-1,2,4-トリアゾールトシラート(PR6)
ホウ素化トリフルオライドエテレート(10mg)存在下で、トリエチルオルトギ酸塩
(1.5mL)中のN-ヒドロキシ-N'-アミノグアニジントシラート(0.66G;2.5mMol)溶液
を室温で8時間攪拌した。残査を濾過して除去し、生成物をエタノールより結晶
化した。
測定値(%):C39.5;H4.4;N20.6
計算値(%):C39.7;H4.4;N20.6
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
A61K 31/4409 A61K 31/4409
A61P 9/00 A61P 9/00
9/06 9/06
43/00 43/00
111 111
// C07C 281/18 C07C 281/18
C07D 213/61 C07D 213/61
213/89 213/89
249/14 507 249/14 507
311/24 311/24
333/22 333/22
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG
,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT
,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,
CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F
I,GB,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE
,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,
LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,M
X,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE
,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,
UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZW
(72)発明者 ダムブロヴァ、マイヤ
スウェーデン王国、エス―752 39 ウプ
サラ、エリクスベルイスフェーエン 16
(72)発明者 ウフレン、スタファン
スウェーデン王国、エス―753 11 ウプ
サラ、スコルヤタン 31