JP2001503144A - インピーダンス測定を使用するセンサー - Google Patents

インピーダンス測定を使用するセンサー

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Abstract

(57)【要約】 センサーは、アナライト種と相互作用でき、導電性ポリマーと組み合わせた、固定化した親和性要素であって、親和性要素とアナライトの相互作用がポリマーの電気的特性における変化を誘導するようになっている親和性要素を有する。ポリマーにAC信号が加えられ、相互作用から生じるインピーダンスの変化を測定する。インピーダンスは、ポリマーとアナライトに対するインピーダンス変化と周波数との間の関係のピークに対応する周波数において測定する。この測定は、インピーダンスの実数部または虚部を用いて行う。ポリマーは、インピーダンスを測定する2つの電極間を橋渡しする層の形態であってよい。2つの電極は、一緒に交互配列電極アッセンブリを構成してよい。

Description

【発明の詳細な説明】 インピーダンス測定を使用するセンサー 本発明は、センサー、より詳しくはバイオセンサーに関するが、それに限定さ れるものではない。 バイオセンサーは、サンプル中においてアナライト(analyte、分析対象)が 存在することを確認するおよび/またはアナライトの量を測定するために用いら れる。典型的には、バイオセンサーは、測定すべきアナライトに対して特異的で あり、それと相互作用してサンプル中のアナライトの存在および/またはアナラ イトの量を指示する検知可能な変化をもたらすバイオ要素(例えば酵素)を有し て成る。バイオセンサーの特定の例は、酵素電極システムを有して成り、それに よって、アナライトに関して適当なレドックス酵素の触媒反応が電気化学的に検 知可能な電気活性種を生成する。バイオ要素としてグルコースオキシダーゼを使 用するグルコースセンサーは、酵素電極システムの特定の例である。ここでは、 グルコースがグルコースオキシダーゼを介して酸素により酸化されてグルコン酸 および過酸化水素が生じる。オキシダーゼ酵素に基づくシステムは、バイオセン サーに特に適当である。それは、酸素がメディエーター(即ち、酵素の活性部位 から電極に電子を輸送するもの)として作用し、追加の試薬を必要としない(即 ち、リエージェントレス・システム(reagentless system)である)からである 。しかしながら、必ずしも全てのアナライトに対応するオキシダーゼ酵素が存在 するわけではなく、従って、このシステムを使用して測定できる基質の数が制限 される。デヒドロゲナーゼ酵素は、オキシダーゼより種類が多く、従って、より 広範囲な種類のアナライトをバイオセンサーにより測定できる。しかしながら、 デヒドロゲナーゼ酵素の主たる欠点は、酸素が媒介種(電子受容種)として作用 できず、その代わりに、溶解性ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD (P)+/NAD(P)H)補因子が電子受容体/供与体として作用する必要が あるということである。従って、デヒドロゲナーゼ酵素に基づくバイオセンサー システムは、リエージェントレスではなく、これが、実際の適用を制限する。 薄い界面活性ポリマーの導電性層を使用してバイオセンサーを形成することが ヨーロッパ特許第402917号から知られており、この層に、特定の結合ペア の要素を結合してよい。アナライトの特定の結合ペアの要素層への結合は、層の 電気的特性を変え、それによってアナライトの検知が可能となる。この層により 橋渡し(ブリッジ)された対の電極の間にDC電圧を加え、電圧の変化を測定す る。別法では、非特異性マトリックス効果によるバックグラウンドノイズを除去 するために、交流電流による測定を使用してもよい。残念ながら、層の電気的特 性の測定される変化は比較的小さいので、そのようなバイオセンサーの感度は限 られている。 本発明の目的は、上述の欠点を解消または緩和することである。 本発明によれば、アナライト種と相互作用でき、導電性ポリマーと組み合わさ れた固定化親和性要素であって、親和性要素およびアナライトの相互作用がポリ マーの電気的特性の変化を誘導するようになっている要素、ポリマーにAC信号 を加える手段、および加えた信号に対するポリマーの応答を検知して誘導された 変化を検知する手段を有して成るセンサーであって、検知手段は、ポリマーおよ びアナライトについての周波数とインピーダンス変化との間の関係のピークに対 応する周波数においてポリマーのインピーダンスを測定する手段を有して成るセ ンサーを提供する。 本発明は、インピーダンスの変化は、周波数に大きく依存し、従って、アナラ イトに遭遇したことによって生じるインピーダンスの変化がピークを示す1また はそれ以上の周波数におけるAC信号に対するインピーダンスを測定することに よって感度は、大きく高められ得るという知見に基づく。 本発明のセンサーは、アナライトと固定化親和性要素との間の相互作用を増幅 し、また、変換する導電性ポリマーを使用する。親和性要素とのアナライトの相 互作用の間、導電性ポリマーの電気化学的特性は変化し、インピーダンス変化の 測定によりその変化を検知する。従って、アナライト種の相互作用は、測定可能 な信号に直接的に変換され、従来の酵素電極の場合のような電気活性生成物の生 成が不必要となる。親和性要素および着目しているアナライト種の種類、ならび に導電性ポリマーの構造によって、アナライトの存在によって生じる電気的特性 の変化の性質が決まる。変化が例えば主として容量性である場合、測定されるイ ンピーダンスの虚数部は、所定の周波数においてピークを示す場合が多く、従っ て、インピーダンスの虚数部を所定の周波数においてモニターする必要がある。 逆に、変化が主として抵抗性である場合、インピーダンスの実数部をモニターす るのがより適当である場合がある。 導電性ポリマーは、有機の半導電性材料であり、これは、酸化、プロトン化お よびポリマー鎖の配向の程度を変えることによって、導電性状態、半導電性状態 および絶縁性状態の間にわたって可逆的に切り替えることができる。本発明のセ ンサーにおいて、ポリマーと固定化親和性要素との間の局所的な静電気的相互作 用を変えてポリマーの配向の変化をもたらす(従って、電気的性質、即ち、電荷 移動度変化をもたらす)と我々が考えているのは、親和性要素とのアナライトの 相互作用である。 親和性要素は、好ましくはマクロモレキュール(高分子)である。 好ましくは、本発明のセンサーは、バイオセンサーであり、従って、親和性要 素は、バイオ要素であり、例えばキナーゼまたはデヒドロゲナーゼであり、ピル ベート(pyruvate)の測定にはL(+)乳酸デヒドロゲナーゼが適当である。別 法では、親和性要素は、抗体、抗原、レクチンまたはレセプターであってよい。 ポリマーは、間でインピーダンスを測定する2つの電極を橋渡し(ブリッジ) する層の形態であってよい。2つの電極は、一緒になって相互に入り込んだ電極 アッセンブリ(interdigitated electrode assembly、交互配置電極アッセンブ リ)を規定してよい。このポリマー層は、5μm以下の厚さを有してよく、固定 化した結合剤を含むか、あるいはその層を有してよい。親和性要素は、電極から 離れた側において導電性ポリマー層に設けたゲル層内にトラップされていてよく 、このゲルの厚さは50μm以下である。別法では、親和性要素は、導電性ポリ マー内で固定化されていてよい。 導電性ポリマーは、ポリ(3−メチルチオフェン)またはポリ(ピロール)で あってよい。 従って、1つの態様において、親和性分子は酵素であり、それによって、アナ ライトの相互作用の間、蛋白質構造の静電ポテンシャルの微妙な変化が、ポリマ ーフィルムと接触している局所環境の変化をもたらし、支持している導電性ポリ マーのインピーダンスを測定することにより、この変化を測定することができる 。 親和性要素として使用できる酵素は、2またはそれ以上の要素が酵素触媒活性 を達成することを必要とするものである。即ち、酵素とのアナライトの相互作用 を検知するには、触媒活性が生じてはならず、酵素は単に親和性部位として(即 ち、抗体−抗原相互作用と同様に)作用する必要がある。例えば、デヒドロゲナ ーゼ酵素は、説明するセンサーにおいて使用できる種類の特定の酵素であり、そ れにより、溶解性NAD(P)+/NAD(P)H補因子の不存在下、基質(ア ナライト)と酵素の親和性部位との間の相互作用が測定される。ラクテート(la ctate)、ピルベート、シトレート(citrate)およびマレート(malate)用のデ ヒドロゲナーゼは、使用できる酵素の例である。別の種類の酵素は、アナライト およびホスフェート供与ATPの双方が触媒活性に必要であるキナーゼである。 ATPによりグルコースのリン酸化を触媒するヘキソキナーゼが例である。グル コースの不存在下、導電性ポリマーフィルム上に固定化されたヘキソキナーゼと のATPの相互作用は、ポリマーの導電性を変化させる。オキシダーゼ、リパー ゼ、ヒドラターゼおよびプロテイナーゼのような他の酵素の使用は、これらのシ ステムが2種類の性質を有する基質(dual substrate)の添加を必要としないの で、制限される場合がある。例えば、オキシダーゼの場合、アナライトの添加は 、酸素を全部排除しない限り、酵素の触媒活性を発現させる。そのような環境に おいて、酵素は親和性部位としてではなく、触媒的に作用し、説明するようなセ ンサーの種類から除外される。しかしながら、オキシダーゼは、FAD補欠分子 族(基質から酸素への電子輸送に寄与するもの)を除去する(アポ酵素)場合に は、使用できる。そのような環境下では、分子酸素と相互作用できないので、酵 素は基質に対する親和性部位として作用する。 親和性分子が、酵素ではなく、抗体、抗原、レクチンおよびレセプターである 場合、アナライトと親和性部位との間の相互作用は、標準的な分析に現在使用さ れているインジケーターラベル(例えば、ラジオアイソトープ、酵素抱合体)を 必要とするマルチステップ・プロトコルとは異なって、直接検出できる。農薬 (例えば、ジニトロフェノール誘導体)、抗てんかん薬(フェニトイン)および 禁止されている麻薬(例えばモルヒネ、ヘロイン)のような小さな分子の検出に 抗体を使用できる。別法では、目的物は、蛋白質(アルブミン)またはホルモン (黄体形成ホルモン)であってもよい。レクチン基質は、糖残基、例えばグルコ ース/デキストリン結合用のコンカナバリンAであってよい。 抗体またはレセプターの検出には、対応する抗原が親和性要素として作用でき る。例えば、黄体形成ホルモンを固定化することができ、溶液中の抗黄体形成ホ ルモンの検出に使用できる。低分子量抗原(例えば麻薬)は、導電性ポリマーの 表面への分離の共有結合が保証されるのであれば、親和性分子として使用できる 。これにより、抗体/レセプターの相互作用が可能となり、更に、親和性分子の 保持が確保される。 これまでの検討では、導電性ポリマーの種類は、固定化親和性分子とのアナラ イトの相互作用の検出に影響を与えるということが判っている。例えば、L(+ )乳酸デヒロドゲナーゼを使用した場合、(ポリ(ピロール)およびポリ(アニ リン)と対照的に)ポリ(3−メチルチオフェン)が固定化L(+)乳酸デヒド ロゲナーゼとのピルベートアナライトの相互作用を検出するのに適当である。更 に別の例では、固定化抗体(抗黄体形成ホルモン)との黄体形成ホルモンの相互 作用は、ポリ(ピロール)が支持導電性ポリマーである場合には、検知できる。 導電性ポリマーフィルムの明らかの種々の感度の理由は、現時点では明らかで はない。しかしながら、導電性ポリマーの性質が異なることに着目する必要があ る。例えば、ポリ(3−メチルチオフェン)は、ポリ(ピロール)と比較すると より規則正しく、よりフレキシブルな構造を有し、これが、センサーの感度を決 定する要因であり得る。親和性分子およびアナライトの性質もセンサーの信号に 寄与し得る。即ち、アナライトの物理的大きさおよび親和性分子において誘導さ れる変化の程度は、全て観測される応答に寄与すると考えられる。 好ましくは、使用する導電性ポリマーは、エレクトロ重合(electropolymeris ation)・プロセスの間、親和性分子の固定化を可能にする必要がある。これに より、応答の大きさに影響を与え得る、ポリマーフィルムと バイオ親和性分子との間の断続的な接触がもたらされる。従って、ポリ(ピロー ル)は、中性の水性条件下でエレクトロ重合を実施できるので、従って、ポリマ ーが形成される間、親和性分子を取り込む(トラップする)ことができるので、 好ましい。3−メチルチオフェンの重合は、酸性の非水性条件で実施する必要が あり、これは、バイオ親和性分子の安定性を危うくする。従って、バイオ親和性 分子の固定化は、予め形成した導電性フィルム上におけるゲルのトラップによっ て引き続いて実施することができる。従って、使用する導電性ポリマーの種類は 、バイオ親和性分子へのアナライトのアクセス、導電性ポリマーフィルムとバイ オ親和性分子との間の親和度(または適合性)およびアナライト相互作用を伝え る支持導電性ポリマーの性質の間の折衷案である。 従って、使用する導電性ポリマーの種類は、モニターすべきバイオ親和性分子 /アナライトの種類に依存すると予想できる。 使用する測定テクニックは、インピーダンス・スペクトロスコピーである。広 い周波数範囲(典型的には100kHz−0.01Hz)にわたる測定により、 導電性ポリマーフィルムの異なる境界領域およびバルク領域を特徴付けることが 可能となる。インピーダンスデータは、種々の形態で示すことができ、それらは いずれも周波数スペクトルの部分に異なる重み付けをすることができる。従って 、インピーダンス関数またはパラメーターを使用することにより、固定化親和性 分子とのアナライトの相互作用の間の導電性ポリマーの挙動における変化を強調 /増幅することができる。これは、記録される応答が電気的性質の総和である( 即ち、過程を分離できない)アンペロメトリーのような技術では不可能である。 表面電位(電荷)を測定してきたが、これは、アナライトと親和性要素との間の 相互作用を特定する実行可能な選ばれた方法では恐らくなく、この方法では、電 荷を有する分子のみを評価できる。 親和性分子の固定化は、エレクトロ重合プロセスの間に、導電性ポリマーフィ ルム内にトラップすることにより実施するのが好ましい。重合に必要な条件(即 ち、酸性有機相)のためにこれを行うことができない場合、親和性分子を予備形 成した導電性ポリマーフィルム上に吸着させてよい。その後、吸着させた親和性 分子を、上に配置するゲル様ポリマー、特にヒドロゲルにより「取り付けて(ま たは固定して)」よく、それにより、アナライトを輸送する水の取り込みおよび その後の固定化親和性分子との相互作用が可能となる。典型的なヒドロゲルは、 ポリ(アクリルアミド)である。親和性分子表面のリシル残基の導電性ポリマー 誘導体に対する共有結合も、固定化技術として排除されるものではない。 本発明のセンサーは、相互に入り込む電極を有して成るのが最も好ましく、そ れによって、導電性ポリマー層またはフィルムが電極の指状部(ディジット)を 離間させているギャップを橋渡しする。親和性分子は、橋渡ししているフィルム 内にトラップされていても、あるいは電極から離れた、導電性ポリマー層の側に 固定化してもよい。 導電性ポリマーの厚さは、相互に入り込む電極間のギャップ(10μm)を橋 渡しするのに十分である必要がある。ポリマー層の応答に与えるフィルムの厚さ の影響は、最終的には確定していないが、5μm以上の導電性ポリマーフィルム は、不安定で相互に入り込んだ電極表面から剥離し易いことが判った。 ゲル層を通過する溶質の迅速な移動を確保するために、ゲルの厚さは、50μ m以下であるのが好ましいが、200pmまで可能である。重要なことは、適切 な親和性要素が導電性ポリマーが接触していることである。 導電性ポリマーは、エレクトロ重合により好都合に製造できる。 以下の限定的ではない実施例および実施例の結果を示す図面である図1〜8に より本発明を説明する。 実施例1 交互配置型金電極(IDE、Interdigitated gold electrode)(7mm×7 mm(電極コンタクトパッドを含む)、ディジットの厚さ10μm、間隔15μ m、一方のパッドに接続された25個および他方のパッドに接続された25個、 合計50個のディジットを有する)を用いて、L(+)乳酸デヒドロゲナーゼ( LDH)の固定化層を組み込んでセンサーを作製し、モデルシステムとした。L DHは、電子供与体として作用するNADH補因子によるピルベートの可逆的還 元を触媒する。 0.1MのHClO4および0.1Mの3−メチルチオフェンを含む脱気した アセトニトリル溶液からのエレクトロ重合によりポリ(3−メチルチオフェン) をIDE上に付着させた。エレクトロ重合は、スキャン速度100mV/sにて −0.4−1.5Vの間でスキャンさせたポテンシャルにより実施した。 LDH(250ユニット)をポリ(3−メチルチオフェン)被覆IDEの表面 に吸着させた。次に、1μlのTMEDを含む5μlのアクリルアミド/ビス− アクリルアミド(10%w/v)を被覆IDEの表面に適用した。アクリルアミ ド/ビス−アクリルアミドの重合は、5μlの過硫酸アンモニウム(10%w/ v)を加えて実施した。重合プロセスは2分以内で終わり、強い粘着性のフィル ムが得られる。 得られたセンサーを幾つかの試験に使用した。 固定化プロセスの間にLDHが、変性しなかったことを証明するために、UV 分光光度計を使用してセンサーの酵素活性を測定した。分析物は、1mMのNA DHを含むリン酸塩緩衝液(pH6、50mM)から成った。IDEを反応混合 物中に浸漬して、5mMのピルビン酸ナトリウムを加えて反応を開始した。NA DH酸化を340nmにて記録した。反応混合物中に電極が存在しない状態で対 照実験を実施した。結果を図1に示すが、時間と共にNADHによる吸収が低下 していることから、固定化酵素はその活性を維持していたことを明らかに示して いる。 PARC273ポテンショスタットに接続したVoltech周波数応答アナ ライザーを使用して、種々のインピーダンス測定を実施した。測定は、N2によ り予め脱酸素したリン酸塩緩衝液(pH6、50mM、50mMのKCl含有) 中にて実施した。20mVの振幅にて1Hzの出発周波数から酵素IDE電極の インピーダンスを測定し、100,000Hzで終了した。周波数応答アナライ ザーから得られた生データは、出力電圧:入力電圧の比として示され、これをイ ンピーダンスの実数部(Zr)および虚数部(Zim)の算出に使用し、これら から全インピーダンス(IZI)を求めた。 変性IDEをピルベートに曝すことにより、比(従って、インピーダンス)が 低下したが、これは、特に低周波数領域において、導電性が増加していることを 意味する。同じデータのZim対周波数をプロットすると、特定の周波数におけ る分散/緩和(dispersion/relaxation)(即ち、ピーク)が得られ、その周波 数をインピーダンスを取り出すために使用した。分散/緩和は導電性ポリマー内 で起こっている特定のプロセスを示唆するので、そのような周波数を選択した。 図2は、ピルベートに対するセンサーの応答に与えるバイアス・ポテンシャル の影響を示す。測定は、塩含有リン酸塩緩衝液(saline phosphate buffer、pH 6、50mM、50mMのKCl含有)にて実施した。各ポテンシャルにおいて 変性IDEのインピーダンスが定常状態になるまで放置し、1mMのピルビン酸 ナトリウムに対する応答を記録した。−0.4V(vs SCE)よりプラス側 のポテンシャルにおいて、ポリマーのインピーダンス(抵抗)の低下が認められ た(図2)が、負のより大きいポテンシャル下では、ピルベートの添加の結果、 ポリマーの導電性は低くなった。しかしながら、−0.4V(vs SCE)の 使用は、インピーダンスプロットの最良の分解能を与えた。酵素を含まない変性 IDEは、同じポテンシャル範囲で、比較的無視し得るインピーダンス変化を示 した(図2)。従って、図2は、ポリマーの導電性は、加えるバイアスポテンシ ャルを変えることによって変調できることを示す。 インピーダンス変化の大きさは、浸漬する溶液のpHにも影響されたが、最適 な応答は、pH5.5において観測された。 図3は、ピルベート(1mM)およびNADH(0.25mM)に対する変性 IDEの動的応答を示す。ピルベートの添加の後、ポリマーインピーダンスが急 激に低下し、それが定常状態値に達することが認められた(図3)。これは、固 定化LDHに対するピルベートの結合が平衡プロセスであることを暗示している 。NADH補因子の添加は、インピーダンスを更に低下させたが、これは、(酵 素反応の過程において生成する)NAD+によるポリマーの酸化のためであろう 。 図4は、センサーのインピーダンス変化に与えるピルベート濃度の影響を示す 。0.5mMのピルビン酸ナトリウムを逐次加えて、キャリブレーション工程を 実施した。キャリブレーションカーブから、センサーは、酵素の相互作用の飽和 が生じると考えられる2mMのピルベートまでは線形範囲を有することが判った 。 塩含有リン酸塩緩衝液中にピルベート(1mM)の存在下(A)および不存在 下(B)におけるセンサーの矩形波ボルタンモグラム(voltammmograms、電圧− 電流線図、図5)は、インピーダンス変化が非ファラデープロセスである(即 ち、ピルベートの存在下で記録されたピーク電流において増加が存在しない)こ とを示す。これは、LDHのレドックス中心から支持導電性ポリマーへの電子の 直接的な移動の可能性を除去する。ファラデー反応の不存在下、ピルベートの固 定化LDHとの相互作用の間に観測されたポリマーインピーダンスの変化は、導 電性ポリマー鎖の再配向のためであり得るということを示しているというのはも っともらしい。ポリマー表面に固定化された酵素がバルクの導電性ポリマーの性 質にどのように影響を与えることができるのかは依然として明確ではない。 使用する固定化ゲルのタイプは、センサーのピルベート応答に影響を与えた。 ポリアクリルアミドを熱硬化性ゲル、ポリ(ビニルアルコール)に置換すると、 (ポリ(アクリルアミド)を使用した場合に認められたような、インピーダンス の減少とは対照的に)インピーダンスの増加が観測された。応答におけるこのよ うな大きな変化の理由は、不明確なままであるが、ポリ(アクリルアミド)およ びポリ(ビニルアルコール)の場合、導電性ポリマーフィルムとの相互作用が異 なるからであろうということが最も可能性が大きい。即ち、ゲル相の導電性ポリ マーとの相互作用は、バイオ親和性分子との相互作用の性質に影響を与える。ゲ ル相としてポリ(ビニルアルコール)を使用することに関する問題点は、安定性 の問題であり、水溶液に長期間曝すと、ゲル層がIDE被覆電極から剥離する。 この点に関して、ポリ(アクリルアミド)は、ヒドロゲルの好ましい選択肢であ る。 実施例2 上述のセンサーにおいて有用である酵素の種類の別の例を、ヘキソキナーゼを 使用して実施する検討により説明する。ヘキソキナーゼは、ATPによるグルコ ースのリン酸化を触媒する。LDHに代えて250ユニットのヘキソキナーゼを 使用したことを除いて、先に説明したのと同様にセンサーフォーマットを使用し た。図6は、固定化ヘキソキナーゼを含むポリ(3−メチルチオフェン)被覆電 極のATPに対する応答を示す。ATPを加えることにより、(ピルベート/L DH相互作用の場合における減少とは対照的に)インピーダンス(抵抗)が増加 したことが判る。酵素の部位の飽和は、非常に小さいATP濃度(0.05mM 以下)で起こるが、これは、ATP基質に対する酵素の親和性定常部(affinity constants)によるものであることが考えられる。ピルベート/LDHとATP /ヘキソキナーゼとの間で応答が異なるのは、幾つかの要因によるものであろう 。例えば、種々の酵素が交互再配向の影響(alternate re-orientation effects )を受け得る。 LDHおよびヘキソキナーゼのモデルシステムは、説明したセンサーフォーマ ットを使用して、適当な酵素の使用により別のアナライトを検知できることを例 証する。 実施例3 同様のセンサーフォーマットを用いて、黄体形成ホルモン(生殖ホルモン)に ついてのリエージェントレス免疫センサーを実施した。即ち、IDEを橋渡しす る導電性ポリマー(黄体形成ホルモンに対する抗体を含む)のインピーダンス変 化を測定した。この実施例における重要な相違点は、ポリ(ピロール)中にトラ ップされた抗体を使用して応答を記録することが可能であったということである 。ポリ(ピロール)を使用することにより、抗体安定性と両立する中性の水性条 件下で重合プロセスを実施できるという理由で、ポリマー形成の間の抗体のトラ ップが可能となった。黄体形成ホルモンセンサーの場合では、上に位置するゲル 相は、黄体形成ホルモン抗原の固定化抗体への拡散を制限しないと考えられる。 黄体形成ホルモン抗原にセンサーを曝し、支持ポリ(ピロール)ポリマーのイ ンピーダンス特性における変化を記録した。これらの変化を図7および図8に示 す。図7は、曝す前(t=0)および曝してから15分後(t=15)における 周波数範囲にわたるインピーダンスの実数部を示し、図8は、同じ環境における 虚数部を示す。曝す前は、10Hz〜100Hzの周波数範囲において虚数部に は大きなピークが存在し、曝した後ではピークが消滅していることが判る。従っ て、システムの感度を最大限にするには、この範囲内の1またはそれ以上の周波 数にて測定を実施する。選択した精密な周波数は、曝す前後の測定値の間で生じ る変化を最大限にするように選択できる。 従って、図8は、ポリマーにおける変化は、(緩和点(relaxation point)と も呼ぶことができる)ピークの大きさおよび位置における変化によって強調され ることを示す。この緩和ピークの両側の周波数でもより大きな応答を得ることが できるが、そのような応答は、導電性ポリマーと組み合わせた親和性要素との相 互作用に依存しないプロセスにより少なくとも部分的には生じる。全体としての センサーの構造は、種々の電気的特性を示す一連の層から形成されていると考え ることができる。第1層は、溶液:ポリマー界面に対応し、第1層のインピーダ ンスは、ポリマーに入ってくるおよび出ていくイオンの移動度の関数である。こ のプロセスは、その性質が典型的には容量性である。第2層はポリマー自体であ り、その電気的特性は主として重要である。第3層は、電極:ポリマー界面であ り、このインピーダンス特性は、ポリマーと電極との間で電子が移動することを 含むプロセスに依存する。これは主として抵抗的プロセスである。交互配置電極 フォーマットを使用することにより、ポリマー:溶液界面の寄与が最小限になる 。説明した実施例において、ポリマーにおいて起こるプロセスは、中程度の周波 数範囲を引用して確認できる。低い周波数に着目すれば、例えばアナライトが入 ることにより生じる溶液の変化による実質的な寄与が検知される。しかしながら 、図7および図8に示すよりも遥かに広い周波数範囲を、ポリマープロセスに関 する他のピークを確認するために適用できることを指摘しておく。 図7に示された実施例におけるインピーダンスの実数部は周波数に影響される ピークを示していないことが判る。従って、この実施例では、インピーダンスの 虚数部に重点的に注目することには意味がある。しかしながら、他の実施例では 、ピークはインピーダンスの実数部において生じることがあり、そのような実施 例では、インピーダンスの虚数部より実数部の測定をすることになるであろう。 本発明のセンサーは、所定のポリマー、親和性要素およびアナライトの性質に 対して、基本的には高い感度を示すように調整(チューニング)される。センサ ーは、決まった所定の周波数においてポリマーに信号を加え、その周波数におい て常に測定を実施するように、特定のアナライトに対して最大限の感度を示すよ うに予備調整(プレチューニング)してもよい。別法では、本発明のセンサーは 、自己−チューニングできる。即ち、広範囲の周波数をポリマーに適用して、セ ンサーをアナライトに曝した後の時間にわたってインピーダンスの実数部および 虚数部の変化を記録し、周波数と測定インピーダンスとの間の関係におけるピー クに対応する周波数において記録されたデータを解析するソフトウエアが提供さ れ る。その場合、未知のアナライトを確認(または特定)する目的で、得られたデ ータを、既知のアナライトに曝したセンサーの応答を示す情報のデータベースと 比較してよい。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項 【提出日】平成10年11月20日(1998.11.20) 【補正内容】 数をインピーダンスを取り出すために使用した。分散/緩和は導電性ポリマー内 で起こっている特定のプロセスを示唆するので、そのような周波数を選択した。 図2は、ピルベートに対するセンサーの応答に与えるバイアス・ポテンシャル の影響を示す。測定は、塩含有リン酸塩緩衝液(saline phosphate buffer、pH 6、50mM、50mMのKCl含有)にて実施した。各ポテンシャルにおいて 変性IDEのインピーダンスが定常状態になるまで放置し、1mMのピルビン酸 ナトリウムに対する応答を記録した。−0.4V(vs SCE)よりプラス側 のポテンシャルにおいて、ポリマーのインピーダンス(抵抗)の低下が認められ た(図2)が、負のより大きいポテンシャル下では、ピルベートの添加の結果、 ポリマーの導電性は低くなった。しかしながら、−0.4V(vs SCE)の 使用は、インピーダンスプロットの最良の分解能を与えた。酵素を含まない変性 IDEは、同じポテンシャル範囲で、比較的無視し得るインピーダンス変化を示 した(図2)。従って、図2は、ポリマーの導電性は、加えるバイアスポテンシ ャルを変えることによって変調できることを示す。 インピーダンス変化の大きさは、浸漬する溶液のpHにも影響されたが、最適 な応答は、pH5.5において観測された。 図3は、ピルベート(1mM)およびNADH(0.25mM)に対する変性 IDEの動的応答を示す。ピルベートの添加の後、ポリマーインピーダンスが急 激に低下し、それが定常状態値に達することが認められた(図3)。これは、固 定化LDHに対するピルベートの結合が平衡プロセスであることを暗示している 。NADH補因子の添加は、インピーダンスを更に低下させたが、これは、(酵 素反応の過程において生成する)NAD+によるポリマーの酸化のためであろう 。 図4は、ポリ(メチル)LDH交互配置電極のpHに対する抵抗変化の依存性 を示す。 塩含有リン酸塩緩衝液中にピルベート(1mM)の存在下(A)および不存在 下(B)におけるセンサーの矩形波ボルタンモグラム(voltammmograms、電圧− 電流線図、図5)は、インピーダンス変化が非ファラデープロセスである(即 請求の範囲 1.所定のアナライト種と相互作用でき、導電性ポリマーと組み合わせた、固 定化した親和性要素であって、親和性要素とアナライトの相互作用がポリマーの 電気的特性における変化を誘導するようになっている親和性要素、ポリマーにA C信号を適用する手段、および適用した信号に対するポリマーの応答を検知して 誘導された変化を検知する手段を有して成るセンサーであって、検知する手段は 、ポリマーおよび所定のアナライトについてのインピーダンス変化と周波数との 関係におけるピークに対応する周波数においてポリマーのインピーダンスを測定 する手段を有して成るセンサー。 2.インピーダンスの虚数部を、虚数部と周波数との関係においてピークが存 在する周波数にて測定する請求の範囲1に記載のセンサー。 3.インピーダンスの実数部を、実数部と周波数との関係においてピークが存 在する周波数にて測定する請求の範囲1または2に記載のセンサー。 4.ポリマーは、インピーダンスを測定する2つの電極の間を橋渡しする層の 形態である請求の範囲1〜3のいずれかに記載のセンサー。 5.2つの電極は、交互配置電極アッセンブリを一緒に規定する請求の範囲4 に記載のセンサー。 6.ポリマー層は5μm以下の厚さを有する請求の範囲4または5に記載のセ ンサー。 7.導電性ポリマーの層は、固定化された結合剤を含むか、その層を組み込む 請求の範囲4、5または6に記載のセンサー。 8.電極から遠い導電性ポリマー層の側に設けられたゲル層内に親和性要素が トラップされ、ゲルの厚さは50μm以下である請求の範囲7に記載のセンサー 。 9.親和性要素は導電性ポリマー内に固定化されている請求の範囲1〜8のい ずれかに記載のセンサー。 10.親和性要素は、導電性ポリマー上に設けられたゲル内にトラップするこ とにより固定化されている請求の範囲1〜7のいずれかに記載のセンサー。 11.導電性ポリマーは、ポリ(3−メチルチオフェン)である請求の範囲1 【図1】 【図3】【図4】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG ,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT ,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA, CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F I,GB,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE ,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS, LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,M X,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE ,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT, UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 ウォーリナー,キース・スチュアート・ロ バート イギリス、エヌジー10・4ジェイキュー、 ノッティンガムシャー、ロング・イート ン、ウェリントン・ストリート183番

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.アナライト種と相互作用でき、導電性ポリマーと組み合わせた、固定化し た親和性要素であって、親和性要素とアナライトの相互作用がポリマーの電気的 特性における変化を誘導するようになっている親和性要素、ポリマーにAC信号 を適用する手段、および適用した信号に対するポリマーの応答を検知して誘導さ れた変化を検知する手段を有して成るセンサーであって、検知する手段は、ポリ マーおよびアナライトについてのインピーダンス変化と周波数との関係における ピークに対応する周波数においてポリマーのインピーダンスを測定する手段を有 して成るセンサー。 2.インピーダンスの虚数部を、虚数部と周波数との関係においてピークが存 在する周波数にて測定する請求の範囲1に記載のセンサー。 3.インピーダンスの実数部を、実数部と周波数との関係においてピークが存 在する周波数にて測定する請求の範囲1または2に記載のセンサー。 4.ポリマーは、インピーダンスを測定する2つの電極の間を橋渡しする層の 形態である請求の範囲1〜3のいずれかに記載のセンサー。 5.2つの電極は、交互配置電極アッセンブリを一緒に規定する請求の範囲4 に記載のセンサー。 6.ポリマー層は5μm以下の厚さを有する請求の範囲4または5に記載のセ ンサー。 7.導電性ポリマーの層は、固定化された結合剤を含むか、その層を組み込む 請求の範囲4、5または6に記載のセンサー。 8.電極から遠い導電性ポリマー層の側に設けられたゲル層内に親和性要素が トラップされ、ゲルの厚さは50μm以下である請求の範囲7に記載のセンサー 。 9.親和性要素は導電性ポリマー内に固定化されている請求の範囲1〜8のい ずれかに記載のセンサー。 10.親和性要素は、導電性ポリマー上に設けられたゲル内にトラップするこ とにより固定化されている請求の範囲1〜7のいずれかに記載のセンサー。 11.導電性ポリマーは、ポリ(3−メチルチオフェン)である請求の範囲1 〜10のいずれかに記載のセンサー。 12.親和性要素は、高分子である請求の範囲1〜11のいずれかに記載のセ ンサー。 13.親和性要素は、バイオ要素である請求の範囲1〜12のいずれかに記載 のセンサー。 14.バイオ要素は酵素である請求の範囲13に記載のセンサー。 15.酵素はキナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、またはピルベートの測定に適 当なL(+)乳酸デヒドロゲナーゼである請求の範囲14に記載のセンサー。 16.親和性要素は、抗体、抗原、レクチンまたはレセプターである請求の範 囲13に記載のセンサー。 17.導電性ポリマーはポリ(ピロール)である請求の範囲15に記載のセン サー。 18.アナライト種と相互作用でき、導電性ポリマーと組み合わせた、固定化 した親和性要素であって、親和性要素とアナライトの相互作用がポリマーの電気 的特性における変化を誘導するようになっている親和性要素、ポリマーにAC信 号を適用する手段、および適用した信号に対するポリマーの応答を検知して誘導 された変化を検知する手段を有して成るセンサーの感度を高める方法であって、 広範囲の周波数にわたってポリマーのインピーダンスを測定し、アナライトにポ リマーを曝して生じるインピーダンス変化と周波数との関係における少なくとも 1つのピークを検知し、検知した少なくとも1つのピークに対応する1またはそ れ以上の周波数にてセンサーを操作する方法。
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