JP2001356116A - ポリブチレンテレフタレートの劣化度の測定方法 - Google Patents

ポリブチレンテレフタレートの劣化度の測定方法

Info

Publication number
JP2001356116A
JP2001356116A JP2000180025A JP2000180025A JP2001356116A JP 2001356116 A JP2001356116 A JP 2001356116A JP 2000180025 A JP2000180025 A JP 2000180025A JP 2000180025 A JP2000180025 A JP 2000180025A JP 2001356116 A JP2001356116 A JP 2001356116A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
deterioration
amount
sample
polybutylene terephthalate
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2000180025A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3570344B2 (ja
Inventor
Norio Manabe
礼男 真鍋
Yoshimitsu Yokota
義光 横田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Wiring Systems Ltd
Original Assignee
Sumitomo Wiring Systems Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Wiring Systems Ltd filed Critical Sumitomo Wiring Systems Ltd
Priority to JP2000180025A priority Critical patent/JP3570344B2/ja
Publication of JP2001356116A publication Critical patent/JP2001356116A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3570344B2 publication Critical patent/JP3570344B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)
  • Investigating Or Analyzing Non-Biological Materials By The Use Of Chemical Means (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 少量の試料で簡易に迅速に精度よくポリブチ
レンテレフタレートの劣化度を評価できる方法を提供す
る。 【解決手段】 ポリブチレンテレフタレートの劣化によ
り発生する酸無水物を、水酸化テトラメチルアンモニウ
ムの存在下に、熱分解ガスクロマトグラフィ/質量分析
装置により定量することにより、ポリブチレンテレフタ
レートの劣化度を評価する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリブチレンテレ
フタレート(PBT)の劣化度の測定方法に関し、さら
に詳しくは、PBTの熱劣化および/または光劣化によ
り発生する酸無水物を定量分析することにより、PBT
の劣化度を評価する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】PBTは、機械的特性と電気的特性のバ
ランスに優れ、かつ高温使用にも耐えられることなどか
ら、小型軽量化が進む自動車部品、例えばコネクターの
材料として広く用いられている。しかし、高温環境や、
屋外などの過酷な使用環境においては、熱分解、熱酸化
および光酸化劣化による材料劣化が進行する。従って、
その劣化過程を評価する方法が必要となる。
【0003】最近、光酸化劣化に関して、Rivatonら
は、その反応過程において、中間体として無水物が形成
された後、分子鎖が切断され、最終的に末端に主として
−COOHまたは−COHを有する物質が生成し、試料
の深さ方向のその濃度プロファイルをとると、最表面層
から13μmの深さで濃度が最も高く、その後急激に低
下すると報告している(Rivaton, A., Polym. Degrad.
Stab., 1993, 41, 297、Rivaton, A., Die Angewandte
Macromol, Chemie, 1994, 216, 155、Rivaton, A., Ser
re, F. and Gardette, J. L., Polym. Degrad. Stab.,
1998, 62, 127)。Rivatonらの方法は、厚み13μmのフ
ィルムを多層に重ねてプレスした試料中に、光酸化反応
により生じた多種のカルボニル基を、試薬SF4あるい
はNH3等を用いて煩雑な前処理をすることにより、選
択的に反応させ、その誘導体生成物をFT‐IRで測定
する方法である。
【0004】一方、PBTの熱分解に関する報告は多く
あり(例えば、McNeil, I. C. andBounekhel, M., Poly
m. Degrad. Stab., 1991, 34, 187、Passalacqua, V.,
Piloti, F., Zambou, V., Fortunato, B. and Manares
i, P.,Polymer, 1976, 17, 1044、Tanaka, M. and Naka
zawa, S., 繊維学会誌, 1987, 45, 370)、報告された
方法によれば、分子鎖の切断による末端COOH基量や
分子量の変化を測定することにより、PBTの劣化過程
を容易に評価できる。しかし、熱酸化劣化に関しては、
エーテル酸素に対してα位のメチレン基にヒドロペルオ
キシドが生成された後の詳細な反応メカニズムに関する
報告は見当たらない。また、Montaudoらは、直接熱分解
質量分析計を用いPBT及びPETの初期熱劣化メカニ
ズムを検討した結果、分子内反応により無水物として、
-CO-Ph-CO-O-CO-Ph-が生成すると、報告している(Mont
audo, G., Puglish, C. and Samperi,F. Polym. Degra
d. Stab., 1993, 42, 13)。しかし、高真空中、600
℃の高温下での熱分解反応であるため、Montaudoらの方
法は実用性に乏しい。
【0005】以上のことより、光劣化については、試料
の最表面層十数μm中に存在する末端COOH基量を測
定することが重要であることが分かる。COOH基量の
測定方法としては、古くはPohlの滴定法があり、また最
近の分析装置の発展に伴い、顕微FT‐IR、SEC(s
ize exclusion chromatography)が挙げられる。しか
し、これらの測定方法は、試料の量や形状などに制限さ
れるので実用的でない。。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、PB
T中に形成された無水物を分析できる、FT‐IR法に
替わる新規な方法を見出し、PBTの劣化度を評価でき
る方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題は、ポリブチレ
ンテレフタレートの劣化により発生する酸無水物を、水
酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の存在下
に、熱分解ガスクロマトグラフィ/質量分析装置により
定量することにより、ポリブチレンテレフタレートの劣
化度を測定する方法により解決される。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明は、次のような知見に基づ
き完成されたものである。PBTの分解生成物を、TM
AHの存在下、熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分
析(GC/MS)法に付すと、反応生成物として4−メ
トキシ酪酸メチルが得らる。このことにより、酸無水物
の検出あるいは分析が可能であることが分かる。上記の
ような分析方法を用いて、実用的な使用温度である14
0℃から高温の200℃までの温度で所要時間熱劣化さ
せたダンベル試験片の引張強さと反応生成物量及び末端
COOH量との関係を求める。また、同条件下で熱劣化
した、あるいは4ヶ月間屋外暴露したコネクター成型品
のロックの深さ方向の反応生成物量の濃度プロファイル
とロックの曲げ試験による折損割合との関係を求める。
【0009】本発明の測定方法で用いる熱分解ガスクロ
マトグラフィ/質量分析装置は、従来から使用されてい
る装置であってよい。また、分析条件自体も、このよう
装置を用いて行なう分析において採用されている条件で
よい。具体的な条件は、下記実施例に記載するとおりで
ある。
【0010】本発明で用いるTMAHは、市販のもので
よいが、その純度は特に制限されない。また、TMAH
の使用量は、他の測定条件により、適宜定めることがで
きる。
【0011】
【実施例】以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明
する。 実施例1 1.PBT材料及び試料の作製 PBT材料として、大日本インキ化学株式会社製「BT
1000‐S01」を用いた。 1.1 熱劣化試料の作製 PBT材料を120℃で3時間予備乾燥した後、射出成
形機(日精樹脂工業株式会社製PS60E9ASE)を
用いて成形し、JIS‐K7113‐1996に準拠し
た1(1/2)号形ダンベル試験片を作製した。試験片
をギヤオーブン中において、表1に示すような温度と時
間の組み合わせで熱劣化させた。尚、各条件毎にダンベ
ル試験片8本を熱劣化し、その内、3本を引張試験に、
4本を末端COOH量測定に、1本を熱分解GC/MS
測定に用いた。
【0012】
【表1】
【0013】また、上記と同じPBT材料から、上記の
射出成形機を用いて、図1に示すようなコネクター成型
品を成形した。表1の各条件毎に5個ずつ熱劣化させ、
これを後述のロック曲げ試験及び熱分解GC/MS測定
に用いた。
【0014】1.2 屋外曝露試料の作製:上記の射出
成形機で作製した図1に示すコネクターを、屋外に4ヶ
月間放置した。コネクターは毎月5個ずつサンプリング
し、後述のロックの曲げ試験、熱分解GC/MS測定及
び末端COOH基量測定に供した。
【0015】2.熱分解GC/MS装置 ヤナコ製熱分解装置GP−1028(落下式縦型熱分解
炉)を横河電気株式会社製GC装置(HP−6890)
の注入口に取り付けた測定システムを使用し、また検出
器として横河電気株式会社製MS(質量分析)装置(5
973型)を使用した。試料カップには、容量4μlの
白金製カップを用いた。カラムには、Hewlett Packard
製Ultra−1(0.2mmφ×25m,膜厚0.33μmの
架橋型ジメチルシロキサンフィルム)を用いた。分解炉
の温度は250℃に設定し、分解炉とGC注入口間の温
度は250℃に、また注入口温度は280℃に保った。
オーブン温度は、まず50℃で2分保持した後、280
℃まで10℃/minで昇温し、同温度で5分保持した。
キャリヤガスにはヘリウムを用い、スプリット比は10
0:1、カラム流量は0.5ml/minとした。
【0016】3.測定手順 3.1 引張試験 1.1で作製したダンベル試験片につき、引張試験機
(島津製作所株式会社製AGS−100B)を用い、J
IS−K7113−1996に準拠して引張速度20mm
/minで引張試験を行なった。 3.2 コネクターのロック曲げ試験 相手コネクターとの嵌合時にロック部に曲げの力が加わ
る。そこで、図1に示すように、ロック部の片端に一定
荷重10Nを加えた時にロックR部が折損したコネクタ
ーの個数を、同条件で熱劣化した全コネクター数に対す
る割合(%)で示した。
【0017】3.3 末端COOH基の定量 1.1で作製したダンベル試験片及び屋外曝露したコネ
クターから、約1gを切り出し、PBTの良溶媒である
ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)100
ml(セントラル硝子株式会社製)に溶解した後、貧溶
媒のメタノールをHFIPの3倍量加え、PBT樹脂を
沈殿させ、0.5μmのメンブランフィルターで濾過し
た。フィルターケーキを室温で乾燥後、100℃で1時
間乾燥し、デシケーター中で保管した。この試料を用い
て、Pohlの方法(Pohl, H. A. Anal. Chem., 1954,26,
1614)に準じて末端COOH量を測定した。尚、コネク
ターについては試料量が不足するので、ロック部以外よ
りサンプリングした。
【0018】3.4 熱分解GC/MS測定 反応試薬TMAH(25重量%メタノール溶液(ナカラ
イテクス株式会社))の存在下、熱分解GC/MS法によ
り、PBT及びPBTの分解により生じる酸無水物の加
水分解を行なった。ダンベル試験片を冷凍粉砕後、0.
1mgを試料カップに秤取し、TMAH4μlを加えて熱
分解GC/MS測定に供した。
【0019】3.5 試料の深さ方向の劣化の評価 コネクターのロック部をミクロトーム(CRYOSTAT HM500
-0, MICROM Company)で表面より厚み15μm毎に切削
した。その内0〜15μm(最表面層)、15〜30μ
m、30〜45μm、100〜115μm、および20
0〜215μmの深さに相当する各薄片試料より0.1
mgを秤取し、TMAH4μlを加えて熱分解GC/MS
測定に付した。
【0020】測定結果と評価 1.無水物とTMAHとの反応生成物の同定 図2に、180℃で750時間熱劣化させたダンベル試
験片について、TMAH存在下での熱分解GC/MSで
スキャンモードで測定して得た全イオンクロマトグラム
(TIC)を示す。
【0021】保持時間5.76分のMSスペクトルを図
3(a)に示す。これは、分子イオンの(M)+132、
(M-31)+を示すm/z101のアシリウム(acyliu
m)イオン(CH3OCH2CH2CH2C≡O+)、アシリ
ウムイオンからメタノールが脱離したm/z69、マク
ラファーティ(McLafferty)転移で生じたm/z74
(CH3O-C(=O+H)=CH2)、m/z59(CH3
≡O+)、更にメチル基が脱離したm/z117、m/
z45から、メチルエステルに特徴的なMSスペクトル
が得られた。そこで、標準試料として4−メトキシ酪酸
メチル(Aldrich Chemical Company, Inc)を用いて確認
したところ、図3(b)に示すようにMSスペクトルは
一致した。以上の結果から、PBTの分解により生成し
た酸無水物とTMAHとが反応し、反応生成物として4
−メトキシ酪酸メチル(以下、「反応生成物」と記
す。)が生成していることが分かった。
【0022】Revatonらは無水物をアンモニアを用いて
前処理した後、FT‐IRで測定していた(Rivaton,
A., Polym. Degrad. Stab., 1993, 41, 297、Rivaton,
A., Die Angewandte Macromol, Chemie, 1994, 216, 15
5、Rivaton, A., Serre, F. and Gardette, J. L., Pol
ym. Degrad. Stab., 1998, 62, 127)。しかし、本発明
によれば、TMAH存在下での熱分解GC/MS法を用
いることにより、極微量の試料量で容易にかつ迅速にP
BT分解生成物の測定が可能になった。また、PBTの
熱酸化反応においても、光酸化反応と同様に酸無水物が
形成されていることが明らかになった。
【0023】2.反応生成物の検量線の作成 反応生成物の定量は、フラグメントイオンm/z45に
ついて、選択イオン測定(SIM)を行って得られたピ
ーク面積に基づいて行った。図4に、m/z45につい
てSIM測定を行って得た、ピーク面積と標準試料4−
メトキシ酪酸メチルの量との関係を示す。この検量線の
相関係数は0.998であり、良好な直線関係を示し
た。また、反応生成物量の単位は末端COOH基量の単
位と同じ試料重量106g当たりのモル数に換算し、以
後それを用いた。
【0024】3.熱酸化劣化における末端COOH基量
及び反応生成物と引張強さの関係 表1の加熱条件で熱酸化劣化させた試料について、図5
〜7に、引張強さ、反応生成物量および末端COOH量
と劣化時間との関係をそれぞれ示した。劣化時間に対す
る反応生成物量と末端COOH基量は同じ傾向を示し
た。全ての温度について、正の傾きを有する直線関係が
得られ、熱酸化劣化における加熱温度が高くなるほどそ
の傾きも大きくなり、特に200℃で傾きは顕著であっ
た。引張強さは、初期値と比べて、180℃×500時
間までは低下していないが、反応生成物量及び末端CO
OH基量は増加していることより、化学的劣化が進行し
ていることが分かった。また、引張強さが低下し始めた
180℃×750時間における反応生成物量は、引張強
さが大きく低下した200℃×150時間のそれより少
し大きいが、末端COOH基量は引張強さの低下してい
ない200℃×100時間と同じであり、初期値に対し
て各々約2.6倍、46倍であった。引張強さが初期値
の半分(半減期)あるいはそれ以下になった時点での反応
生成物量及び末端COOH基量は、初期値に対して、各
々40〜75倍、3.1〜5.1倍であり、著しく劣化
が進行していた。
【0025】図8に、各温度別に末端COOH基量と反応生
成物との関係を示した。全ての温度において、正の傾き
を有する直線関係が得られ、熱分解と熱酸化が並行して
起こっていることを示している。140〜180℃まで
は温度が高くなると共にその傾きも大きくなっているこ
とにより、熱酸化が熱分解よりも優位に進行しているこ
とが分かる。しかし、200℃での傾きは180℃での
それに対して逆転した。これは、Revatonらの光酸化反
応メカニズムから無水物が分解して末端基が一部COO
Hに変化したことも考えられるが、温度が高いために熱
分解が熱酸化よりも優先的に進行したためと推定され
る。以上の結果から、PBTの熱劣化過程を、従来の末
端COOH基量に加えて反応生成物を定量することによ
り、評価が可能であることが分かった。
【0026】4.熱酸化及び熱分解の反応速度 図9に、反応生成物及び末端COOH基の生成速度と絶
対温度の逆数とのアレニウス・プロットを示す。反応生
成物に関するアレニウス・プロットは、本来なら無水物
とTMAHとの反応生成物の生成速度の温度依存性を表
しているが、ここでは、熱酸化により形成された酸無水
物の生成速度を表していると解釈できる。無水物の生成
速度と温度の逆数との間には一つの直線関係が得られ
た。また、試料106g当たりの生成速度は、140℃
で1.51×10-4モル/時間に対して、180℃では
その約47倍の7.11×10-3モル/時間、200℃
では約280倍の4.21×10-2モル/時間であり、
温度依存性が大きく、活性化エネルギーは155kJmo
l-1であった。この値は、ポリプロピレンについてStiva
laらが温度(120〜150℃)と酸素濃度を変えた条
件で求めた活性化エネルギー92kJmol-1と比べると
高い。これは、主として、ポリプロピレンの一次構造が
易酸化性であることによる。
【0027】一方、末端COOH基の生成速度と温度の
逆数との間では、180℃で変曲線を有する2つの直線
関係が得られた。これは、末端COOH基の生成速度が
180℃までと200℃では何らかの原因により異なる
ことを示している。試料106g当たりの末端COOH
基量の生成速度は、140℃で4.20×10-3モル/
時間に対して、180℃ではその約7倍、200℃では
その約68倍の2.86×10-1モル/時間であった。
また、180℃までの活性化エネルギーは75kJmol
-1であり、180から200℃の間では約2倍であっ
た。180℃までの値は、Passalacqua、Tanakaら(Tan
aka, M. and Nakazawa, S., 繊維学会誌, 1987, 45, 37
0)が不活性ガス中あるいは密閉系で温度を240〜2
80℃まで変えて行った加速劣化試験より求めた活性化
エネルギー172kJmol-1と比べると小さいが、18
0から200℃のそれとはほぼ一致した。
【0028】以上の結果より、反応速度論的な見地か
ら、PBTの劣化過程における熱酸化反応及び熱分解反
応は共に温度依存性があることが分かった。また、3.
で述べたように、140〜180℃では酸化反応が、2
00℃では熱分解反応が優先的に進行することが示唆さ
れた。
【0029】5.コネクターのロックの機械的強度と深
さ方向の劣化特性の関係コネクターのロックの折損割合
は、屋外曝露品の場合、初期品及び1ヶ月暴露品では0%
であったが、2ヶ月、3ヶ月及び4ヶ月暴露後では、そ
れぞれ20%、60%および80%であった。熱劣化の
場合、180℃×1000時間、200℃×150又は
200時間劣化後の折損割合は、それぞれ40%、60
%及び100%であり、これ以外の条件ではロックは折
損しなかった。また、屋外曝露においても、反応生成物
として4−メトキシ酪酸メチルが検出されたことより、
酸無水物が光酸化反応により形成されていることが確認
できた。
【0030】折損したロックと、高温下の条件(1)1
80℃×750時間、(2)220℃×100時間の熱
劣化でも折損しなかったロックについて、表面から深さ
方向へ反応生成物を定量した。それぞれの結果を図10
及び図11に示す。屋外曝露試験では、暴露月数の増加
と共に、厚み15μmの最表面層での反応生成物量が増
加した。また、いずれの月数においても、深さ方向に対
する反応生成物の濃度のプロファイルが同じであった。
即ち、反応生成物は最表面層(厚み15μm)で最も多
いが、45μmまでに急激に減少し、それ以上の深さで
はほぼ一定の低い値を示した。
【0031】また、4ヶ月屋外曝露したコネクターの末
端COOH基量は、初期品の約3割しか増加していなか
った。光酸化における機械的強度の低下は最表面層(厚
み15μm)の反応生成物量と相関関係にあることよ
り、折損メカニズムは、著しい劣化によるクラックが最
表面層に入り、ノッチ効果により折損するものと推定さ
れる。
【0032】熱酸化に関する反応生成物の濃度プロファ
イルは、最表面層(厚み15μm)で最も多く、深さ4
5μmまでの低下が小さく、それ以上の深さでは一層緩
やかに低下している。この濃度プロファイルは最近、Gi
llenら(Clough, R. L. andGillen, K. T., Polym. Deg
rad. Stab., 1993, 41, 11)が提案した酸素透過速度の
低下による酸素浸透律速効果による不均質酸化現象と一
致した。しかし、Barmardら(Barmard, D. and Lewis
P.M., In Natural Rubber Science and Technology、A.
D. Roberts, Oxford University Press, New York, 19
88)、 Mattsonら(Mattson, B. and Stenberg, B., Rub
ber Chem. Le Tech., 1990, 63, 23)の酸化層の深さは
劣化温度が高いほど浅くなるという報告とは、必ずしも
一致しなかった。200℃×100時間の表面の酸化層
は180℃×750時間のそれより浅くなっていない。
機械的強度の低下が大きい200℃×150時間で急激
に表面の酸化層の強さが大きくなると共にその厚みも浅
くなったが、200時間では厚み方向全体に亘り著しく
酸化が進行している。
【0033】尚、光酸化における濃度プロファイルと比
べると、最表面層の濃度が最も多いという点では同じで
あったが、その後の深さ方向の濃度の低下が少ないとい
う点で著しく異なっていた。よって、熱酸化は光酸化に
比べると試料の深さ方向全体にほぼ一様に劣化が進行し
ていることが分かった。また、200℃×150時間ま
たは200時間では、ロックの折損割合が高かった。こ
れは、深さ方向全体の熱酸化による劣化も寄与している
が、主に末端COOH基量の増加に示されるように熱分
解により分子の主鎖が切断され機械的強度が低下したこ
とが原因と考えられる。
【0034】以上のように、光劣化と熱劣化では、機械
的強度の低下メカニズムは異なることが分かった。従っ
て、本発明の方法は、光劣化に関しては、機械的強度の
低下に与えるその影響を知る上で非常に有効であり、熱
劣化では、従来の末端COOH基量を併用することによ
り、PBTの劣化過程を評価することが可能になる。
【0035】
【発明の効果】本発明の方法は、試料形態、配合剤など
に制限されずに、少量の試料で簡易に迅速に精度よくP
BTの劣化度を測定できるため、小型化の進行している
PBT成形品の光及び熱による劣化過程の評価に有効で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例で製造したコネクターの斜視図であ
る。
【図2】 180℃で750時間熱劣化させたダンベル
試験片について、TMAH存在下での熱分解GC/MS
でスキャンモードで測定して得た全イオンクロマトグラ
ム(TIC)である。
【図3】 (a)は実施例でのPBT分解生成物のMS
スペクトルであり、(b)は4−メトキシ酪酸メチル
(標準試料)のMSスペクトルである。
【図4】 実施例における反応生成物のSIM測定にお
けるピーク面積と4−メトキシ酪酸メチルの量との関係
を示すグラフである。
【図5】 実施例において熱劣化させた試料について
の、引張強さと劣化時間との関係を示すグラフである。
【図6】 実施例において熱劣化させた試料について
の、反応生成物量と劣化時間との関係を示すグラフであ
る。
【図7】 実施例において熱劣化させた試料について
の、末端COOH量と劣化時間との関係を示すグラフで
ある。
【図8】 各温度における反応生成物量と末端COOH
量との関係を示すグラフである。
【図9】 反応生成物及び末端COOH基の生成速度と
絶対温度の逆数とのアレニウス・プロットである。
【図10】 屋外暴露後のコネクターのロックにおける
反応生成物量と厚さとの関係を示すグラフである。
【図11】 高温下の条件の熱劣化後のコネクターのロ
ックにおける反応生成物量と厚さとの関係を示すグラフ
である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリブチレンテレフタレートの劣化によ
    り発生する酸無水物を、水酸化テトラメチルアンモニウ
    ムの存在下に、熱分解ガスクロマトグラフィ/質量分析
    装置により定量することにより、ポリブチレンテレフタ
    レートの劣化度を測定する方法。
JP2000180025A 2000-06-15 2000-06-15 ポリブチレンテレフタレートの劣化度の測定方法 Expired - Fee Related JP3570344B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000180025A JP3570344B2 (ja) 2000-06-15 2000-06-15 ポリブチレンテレフタレートの劣化度の測定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000180025A JP3570344B2 (ja) 2000-06-15 2000-06-15 ポリブチレンテレフタレートの劣化度の測定方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001356116A true JP2001356116A (ja) 2001-12-26
JP3570344B2 JP3570344B2 (ja) 2004-09-29

Family

ID=18681195

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000180025A Expired - Fee Related JP3570344B2 (ja) 2000-06-15 2000-06-15 ポリブチレンテレフタレートの劣化度の測定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3570344B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007187469A (ja) * 2006-01-11 2007-07-26 Toyota Motor Corp 樹脂の劣化度測定方法
JP2013029371A (ja) * 2011-07-27 2013-02-07 Sumitomo Wiring Syst Ltd 成形品の熱履歴評価方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007187469A (ja) * 2006-01-11 2007-07-26 Toyota Motor Corp 樹脂の劣化度測定方法
JP2013029371A (ja) * 2011-07-27 2013-02-07 Sumitomo Wiring Syst Ltd 成形品の熱履歴評価方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3570344B2 (ja) 2004-09-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN112557438A (zh) 一种高压交流电缆绝缘用预交联料存储寿命检测方法
Pryde et al. The hydrolytic stability of some commercially available polycarbonates
Manabe et al. The method for analyzing anhydride formed in poly (butylene terephthalate)(PBT) during thermal and photo-degradation processes and applications for evaluation of the extent of degradation
CA2376502A1 (en) Methods for monitoring sulfonyl halide functional group content of materials
JP2001356116A (ja) ポリブチレンテレフタレートの劣化度の測定方法
Koopmans et al. Quantitative determination of the vinylacetate content in ethylene vinyl‐acetate copolymers—a critical review
Ren et al. Effects of silane coupling agents on structure and properties of silica-filled silicone rubber/styrene butadiene rubber composites
Chiarcos et al. Quantification of molecular weight discrimination in grafting to reactions from ultrathin polymer films by matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry
US20030204323A1 (en) Membrane moisture measurement
Lin et al. The grafting reaction of epoxidized natural rubber with carboxyl ionic liquids and the ionic conductivity of solid electrolyte composites
Kurima et al. Direct observation of the thermo-oxidative degradation of PA66 by spin-trapping ESR analysis
Kawashima et al. Prediction of the lifetime of nitrile-butadiene rubber by FT-IR
Archodoulaki et al. Thermo (oxidative) stability of polymeric materials
JP2020046293A (ja) ポリエステルの劣化度評価方法
Montaudo et al. Recent advances in MALDI mass spectrometry of polymers
Mallela et al. Hyperbranched Poly (Glycidol)‐Grafted Silica Nanoparticles for Enhancing Li‐Ion Conductivity of Poly (Ethylene Oxide)
Zhang et al. Toughening of polycarbonate through reactive melt blending: Effect of hydroxyl content and viscosity of hydroxyl-terminated polydimethysiloxane
Borman The effect of temperature and humidity on the long‐term performance of poly (butylene terephthalate) compounds
Sarrabi et al. Real time analysis of volatile organic compounds from polypropylene thermal oxidation using chemical ionization Fourier transform ion cyclotron resonance mass spectrometry
JP2012132690A (ja) 樹脂製品の熱安定性及び劣化度の評価方法
CN111363110A (zh) 一种Co改性高残炭率酚醛树脂的合成方法
JP6089244B2 (ja) 樹脂劣化過程の分析方法並びに合成樹脂材料及びリサイクル樹脂材料の製造方法
JP4159417B2 (ja) ポリアミドの劣化度評価方法
Kelleher et al. Oxidation of ether linked thermoplastics
Eriksson et al. Thermal oxidative stability of heat-stabilised polyamide 66 by differential scanning calorimetry

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040407

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040601

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040614

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees