JP2001311613A - スペックル干渉の画像解析における位相アンラッピング方法 - Google Patents

スペックル干渉の画像解析における位相アンラッピング方法

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JP2001311613A
JP2001311613A JP2000293085A JP2000293085A JP2001311613A JP 2001311613 A JP2001311613 A JP 2001311613A JP 2000293085 A JP2000293085 A JP 2000293085A JP 2000293085 A JP2000293085 A JP 2000293085A JP 2001311613 A JP2001311613 A JP 2001311613A
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Satoru Toyooka
了 豊岡
Widiastuti Lini
ウィディアストゥティ リニ
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Fuji Photo Optical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 動的被観察体の位相情報を和差法により求め
るスペックル干渉の画像解析における位相アンラッピン
グ方法において、ラッピングされた被観察体の位相分布
曲線における、ラッピングに係る反転位置を、強度差I
subの極小点および強度和Iaddの極小点から求め
ることにより、スペックルノイズの影響を排除して、高
精度にアンラッピング処理を行う。 【構成】 ラッピングされた位相曲線φ´に対しては、
強度差Isub曲線(細い実線)の極小値から折れ曲が
り点位置A、C、Eが、強度差Iadd曲線(破線)の
極小値から折れ曲がり点位置B、Dがそれぞれ見つけら
れるので、位置A-Bの第1領域については位相値φ´
を、位置B-Cの第2領域については位相値2π-φ´
を、位置C-Dの第3領域については位相値2π+φ´
を、位置D-Eの第4領域については位相値4π-φ´
を、各々位相値φとして位相アンラッピング処理を行
い、本来の位相曲線φを得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スペックル干渉画
像解析における位相アンラッピング方法に関し、詳しく
は、動的物体の時間的変形に対するスペックル干渉画像
を解析することにより得られた位相分布において、所定
位相内にラッピングされた位相分布を連続的に接続する
スペックル干渉の画像解析における位相アンラッピング
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】被検体の表面形状を測定するために、位
相分布(表面形状分布)を簡単に求めたいという要求
は、近年の技術の高度化に伴い光学分野や電子分野を中
心に非常に強いものとなっている。特に、干渉測定にお
いて、このような被検体の位相分布を求める手法につい
ては、位相シフト法とフーリエ変換法を用いたものが従
来より一般に知られている。位相シフト法(縞走査法と
も称される)とは、干渉計の物体光と参照光の間に、一
般には2πを整数分の一に分割した位相角だけ位相差を
与えるもので、2πをN等分したN枚の干渉縞画像は下記
(1)式で与えられる。
【0003】
【数2】 ここで、φ(x,y)は求めようとする位相である。また、
は平均強度、γは干渉縞の可視度(モデュレーショ
ン)であり、いずれも未知量である。φ(x,y)を解析的
に求めるためには、N=3であればよい。N>3では、未知
数の数より方程式の数が多くなるが、Iとγは一般に
ゆらぎをともなう量であると考えられるので、φ(x,y)
の最小二乗法的な意味において最適値が求められる。簡
単な例として、N=4の場合は、
【0004】
【数3】 より求められる。次に、フーリエ変換法について説明す
る。干渉計の一方の光路をy軸周りに微小角θだけ傾け
ると、下記(3)式で与えられる強度分布が得られる。
【0005】
【数4】 ここで、f=sinθ/λは、光路を傾けたことによって
生じたキャリア縞の空間周波数である。上記(3)式を
x方向にフーリエ変換すると、下記(4)式が求まる。
【0006】
【数5】 この(4)式の右辺は、fが十分大きければ空間周波
数軸上で3つの項が分離することを示している。ここ
で、右辺の第2項のみを取り出し、他の項をカットする
フィルタに通すと、下記(5)式が得られる。
【0007】
【数6】 この(5)式の右辺の実部と虚部の比から、下記(6)
式が求められる。
【0008】
【数7】 上述した従来の2方法は、いずれも、求めようとする未
知量φ(x,y)が他の未知量I、γとは無関係に求めら
れる。位相値は[−π、π]の間の主値として求められ
る。位相シフト法の場合について、線形的に位相が変化
する場合のデータの現われ方を図5に示す。上記(6)
式の分母が余弦関数、分子が正弦関数であり、その比と
して、2πごとに位相跳びが生じる鋸波状の分布が得ら
れる。位相跳びの位置を判定し、隣り合うデータ間に2
πの位相値を加える(または差し引く)ことによって位
相跳びを補正し、物体の変形に比例した位相分布を得る
ことができる。この処理を位相アンラッピングと称す
る。
【0009】一般に、位相シフト法は2次元干渉縞の1
点の位相をその点の位相シフトした複数のデータから解
析できる。したがって、空間的に別の点の影響を受ける
ことはない。それに対して、フーリエ変換法において空
間キャリアからなる1直線上のデータ全てに亘ってフー
リエ変換の演算を施さなければならないので、各点の位
相を他の点と独立に求めることはできない。
【0010】位相シフト法は複数枚の位相シフトした干
渉縞を撮る間、観察物体は静止していなければならな
い。それに対して、フーリエ変換法においては、キャリ
ア縞さえ作っておけば1枚の干渉縞から位相解析ができ
るので、動的な現象に適しているといえる。換言すれ
ば、位相シフト法は対象物に対して空間的な制限は緩い
が時間的には定常であることが必須であり、フーリエ変
換法においては対象物は空間的には一様である必要があ
るが、時間的には動いていてもかまわないといえる。
【0011】しかしながら、対象物が時間的に変化し、
かつ空間的にも一様でない場合にはこれらの方法を適用
することはできない。例えば、材料の塑性変形から破壊
に至る過程は非線形的で、その歪測定においては、時間
的かつ空間的な変形分布を測定する必要があるが、この
ような測定において上記2つの方法を適用することはで
きない。このような時間的、かつ空間的な変動がある場
合に有効な干渉法として、動的スペックル干渉法が知ら
れている。
【0012】スペックル干渉法は、粗面物体をレーザ光
で照射したときに観察面に生じる斑点状の模様−スペッ
クルパターン−を利用する干渉法である。スペックルパ
ターンは一般の結像系では画像ノイズとして好ましくな
いものとされる。しかし、これを物体に張り付いた自然
の目印と考えると、その動きから変形を見積もることが
できる。また、スペックル干渉法では光の波長を基準と
した高精度な変形測定が可能になる。
【0013】図6に、2光束照射型のスペックル干渉装
置を示す。被観察体である粗面物体100は、xz面内
で対称な、レーザ光源101からの2光束102A、1
02Bによって照明される。被観察体100によって拡
散反射した光束はCCDカメラ103の結像面上に干渉
スペックルパターンを形成する。この後、得られた干渉
スペックルパターン画像を解析して、被観察体100の
表面形状に応じた位相解析を行うこととなるが、図6の
装置においては、和差法を用いた位相解析を行ってい
る。
【0014】一般に、スペックルパターン画像の位相解
析においては、被観察体100の変形前後のスペックル
パターンを撮像し、それらのピクセルごとの強度の差を
計算する。相関の強い場所、すなわち変形による位相変
化が0または2πの整数倍の位置では差強度が0に近く
なり、一方、相関の弱い場所では差強度が大きな値をと
ることから、2画像の強度差Isubの絶対値を計算す
ることによって、変形量に応じた相関縞が得られる。
【0015】これに対し和差法においては、強度差I
subの情報に加えて強度和Iaddの情報を利用する
ことによって、可視度(モデュレーション)γとは無関
係に位相を求める。
【0016】ここで、図6に示すように、2つの光束1
02A、102Bの各光路上にそれぞれシャッタ104
A、104Bを置き、一方の光束のみで物体を照射した
ときの強度分布I、Iをあらかじめ測定しておく。
変形前後のスペックルパターンの強度Ibefore
afterは各々下記(7)式で表される。
【0017】
【数8】 ただし、I=I+Iである。ここで、θはスペッ
クルのランダムな位相、φ´は物体の変形によって変化
した位相であるとする。このとき、強度差I ubと強
度和Iaddは下記(8)式のように計算される。
【0018】
【数9】 これらの式に基づき下記(9)式により位相φ´(x,y)
が求められる。
【0019】上式(9)においては、分母、分子の各々
に絶対値が付されており、このことが本発明において重
要な意味をもつことになる。すなわち、和差法では、求
めようとする位相が、Isub/Iaddの絶対値の逆
正接により導出されるため、求められた位相曲線φ´
は、図3に示す如き三角波状の関数となる。これに対
し、上述したような絶対値を有していない(2)式を用
いた場合、位相分布において、図5に示すような2π毎
に跳びが生じるものとなる。
【0020】このようにして位相曲線の折れ曲がり点を
見つけることができたので、この後隣接する折れ曲がり
点の間の各領域毎に、所定の位相アンラッピング処理を
施すこととなる。
【0021】
【数10】 このようにして、位相φ´(x,y)が強度Iや可視度
(モデュレーション)γと独立に計算によって求められ
ることになるが、ここでの問題は、本来の位相値がπ以
上となる場合であっても、得られる位相値は0とπの間
の値となってしまうため、位相値が0およびπの整数倍
となる位置で折り返された状態になってしまうことであ
る。
【0022】そこで、このような位相ラッピングされた
(折り畳まれた)位相曲線に対して、これを本来の曲線
に戻す位相アンラッピング処理が必要となる。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、和差法
を用いて得られた位相像の中から、このような折れ曲が
り点の位置を見つけ出すことは、図5における跳び点を
検出する場合に比べると大きな困難を伴う。特にスペッ
クル解析画像においては、折り畳まれた位相曲線はスペ
ックルノイズに埋もれている。このことを、以下のよう
にして得られたデータを用いて説明する。
【0024】ここでは、物体を変形させる代りに粗面を
剛体回転させ、これを計測する場合について説明する。
図7に示すように、粗面平板201を水平軸(z軸)周
りに回転できるようにして、平板201の右下端をPZ
T202を用いて変位させる。これにより、正確な回転
量が予測可能となる。平板201の回転操作の前後にお
けるスペックルパターン画像の強度差Isubと強度和
addを上記(8)式を用いて計算し、上記(9)式か
ら位相φ´を計算した。その結果を図8に示す。図8
(A)から強度差Isubによる差画像と強度和I
addによる和画像は位相がπだけずれているのが分か
る。図8(B)に示す位相像は差画像と類似しているよ
うに見えるが、実際にはその位相分布は正弦波状ではな
く、三角波状となっているはずである。これは、位相分
布がスペックルノイズに埋もれているので、差画像と良
く似た分布に見えてしまうことによるものである。
【0025】図8(C)、(D)は、上記各画像におけ
る、縦方向の同一直線上のこれらの分布をグラフによっ
て示したものである。図8(C)において細線が強度差
(Sub)、太線が強度和(Add)、図8(D)における実
線がラッピングされた位相の分布曲線を示すものであ
る。このように、本来三角波状の分布となるべき位相分
布はスペックルノイズに邪魔されてしまい、山と谷のピ
ーク位置を検出することは困難である。
【0026】本発明は上記事情に鑑みなされたもので、
和差法を用い、スペックル干渉により得られた動的被観
察体画像の位相解析を行う場合に、スペックルノイズの
影響を受けることなく、高精度に位相曲線のアンラッピ
ング処理を行うことができるスペックル干渉の画像解析
における位相アンラッピング方法を提供することを目的
とするものである。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明のスペックル干渉
画像解析における位相アンラッピング方法は、スペック
ル干渉法を用いて得られた、動的被観察体の位相情報を
担持したスペックルパターン画像を解析して求めた、所
定位相範囲に位相ラッピングされた被観察体の位相φ´
の分布曲線を、位相アンラッピングする方法であって、
前記被観察体の動きの前後における2つのスペックルパ
ターン画像の強度I efore、Iafterについ
ての強度差をIsub、強度和をIaddとしたとき、
これら強度差Isubおよび強度和Iaddに基づいて
前記被観察体の位相φ´の分布曲線を求める和差法を用
いる方法において、前記位相ラッピングされた被観察体
の位相φ´の分布曲線における、ラッピングに係る反転
位置を、前記強度差Isubの極小点および前記強度和
addの極小点から求めることを特徴とするものであ
る。
【0028】ここで、上記「強度和Iadd」とは、単純
に、IbeforeとIafterを加算したものでは
なく、この加算値から所定のバイアス値を差し引いたも
のである。また、前記強度差Isubの極小点に基づ
き、前記位相φ´の分布曲線における、負の傾きから正
の傾きに移行する反転位置を求め、前記強度和Iadd
の極小点に基づき、位相φ´の分布曲線における、正の
傾きから負の傾きに移行する反転位置を求めることを特
徴とするものである。また、前記位相ラッピングされた
被観察体の位相φ´が下式により求められることを特徴
とするものである。
【0029】
【数11】 ただし、φ´はラッピングされた被観察体の位相値であ
る。また、前記所定範囲が0からπであることを特徴と
するものである。さらに、前記位相アンラッピング処理
が、奇数の第n領域(ラッピング位相増加領域)について
はφ=(n-1)π+φ´により、偶数の第n領域(ラッ
ピング位相減少領域)についてはφ=nπ-φ´によ
り、各々なされることを特徴とするものである。ただ
し、φはアンラッピングされた被観察体の位相値であ
り、第1領域は位相値0から始まる。
【0030】また、前記位相アンラッピング処理の前
に、前記強度差Isubおよび前記強度和Iaddのデ
ータに対して、前記位相φ´により得られた各位相領域
毎にローパスフィルタによる平滑化処理を施すことを特
徴とするものである。さらに、前記動的観察体が引っ張
り試験に供された試験片であることを特徴とするもので
ある。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態に係る
スペックル干渉画像解析における位相アンラッピング方
法について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形
態においては、説明の便宜のため、前述した図6、7を
用いて得られたデータを位相アンラッピングする場合に
ついて説明する。
【0032】図1は本発明の実施形態に係る方法を説明
するための概念的フローチャートを示すものである。ま
ず、前処理として、スペックル干渉法を用い、被観察体
の変形前後におけるスペックルパターン画像の強度I
before、Iafterを求める(S10A、S1
0B)。求められた変形前後のスペックルパターン画像
の強度分布I efore、Iafterは各々下記
(10)式で表される。
【0033】
【数12】 ただし、I=I+Iである。I、Iは図6に
示す装置において、一方の光束102A、102Bのみ
で物体を照射したときの各強度分布を示すものである。
ここで、θはスペックルのランダムな位相、φ´は物体
の変形によって変化した位相である。
【0034】次に、上述したようにして求められた、2
つのスペックルパターン画像の強度分布
before、Iafterに対して和算および差算
の演算処理を施し(S11)、強度差Isubと強度和
addを求める(S12A、S12B)。強度差I
subと強度和Iaddは下記(11)式により表され
る。
【0035】
【数13】 なお、上式(11)から明らかなように、上記強度和I
addは、単純に、I beforeとIafterを加
算したものではなく、この加算値から2I(ただし、
=I+I)を差し引いたものである。
【0036】これらの式を演算して求めた下記(12)
式により位相φ´(x,y)が求められる(S13)。
【0037】
【数14】 このようにして、位相φ´(x,y)が強度Iや可視度
(モデュレーション)γと独立した計算によって求めら
れることになる。
【0038】このように、和差法を用いて求められた位
相曲線(S14)は、前述した図8(D)に示すよう
に、位相値が0およびπの整数倍となる位置で折り返さ
れた状態となっている。すなわち、ラッピングされた
(折り畳まれた)状態となっている。
【0039】このようなラッピングされた(折り畳まれ
た)位相曲線に対して、これを本来の曲線に戻す位相ア
ンラッピング処理が施されることになるが、図示するよ
うに、この曲線そのままでは三角波状の分布となるべき
本来の位相分布はスペックルノイズに邪魔されてしま
い、山と谷のピーク位置を検出することは困難である。
【0040】そこで、位相像に対して適当なローパスフ
ィルタをかけ、スペックルノイズを平滑化する(S1
5)。図9(A)はこのような平滑処理がなされた位相
像を示すものである。これと並行して、上記強度差I
subおよび強度和Iaddを各々表す曲線に対して、
適当なレベルの閾値を設けて閾値以下の領域を極小点周
りに幅をもたせた領域とし、次にこの領域にスケルトニ
ング処理(細線化処理)を施し(S17A、S17
B)、位相折り返し点である極小点を求める(S18
A、S18B)。図2(A)は差画像を表すものであ
り、図2(B)はこのようにして求められた差画像の極
小線を表すものである。このように構成された本実施形
態方法では、スペックルノイズに邪魔されていた位相曲
線の折れ曲がり点を容易に見つけることができる。
【0041】このように極小点を容易に見つけ出すこと
ができるのは、図3に示すように、強度差Isubおよ
び強度和Iaddを各々表す曲線が、各極小点において
折返し形状となっており、スペックルノイズが大きくて
もこの折り返し形状は判別が容易だからである。
【0042】例えば、図3に示すようにラッピングされ
た位相曲線(−o−線)に対しては、強度差Isub
線(細い実線)の極小値から折れ曲がり点位置A、C、
E・・・・・が、強度差Iadd曲線(破線)の極小値から
折れ曲がり点位置B、D・・・・・がそれぞれ見つけられる
ので、位置A-Bの第1領域については位相値φ´をそ
のまま位相値φとし、位置B-Cの第2領域については
位相値2π-φ´を位相値φとし、位置C-Dの第3領域
については位相値2π+φ´を位相値φとし、位置D-E
の第4領域については位相値4π-φ´を位相値φと
し、・・・・・というようにして位相アンラッピング処理を
行い(S16)、アンラッピングされた本来の位相曲線
φを得る。なお、この位相アンラッピング処理を一般式
で表すと、奇数の第n領域(ラッピング位相増加領域)に
ついてはφ=(n-1)π+φ´であり、偶数の第n領域
(ラッピング位相減少領域)についてはφ=nπ-φ´
となる。
【0043】なお、図9(B)は、位相アンラッピング
処理がなされた位相像を表すものである。
【0044】最後に、上記で得られた位相アンラッピン
グ処理がなされた位相曲線φを2次元的に拡張し、図4
に示す如き変形分布を得る(S19)。なお、本発明の
実施形態方法においては種々の態様の変更が可能であ
り、例えば、上述したローパスフィルタによる平滑化処
理や、スケルトニング処理(細線化処理)は、上記強度
差Isubおよび強度和Iaddを各々表すデータとと
もに、あるいはこれらのデータに替えて、位相ラッピン
グされた位相データに対して施すようにしてもよい。
【0045】例えば、図10(図1の実施形態と類似す
る処理については、図1に示す番号に10を加えた数字
によって表わす)に示すように、位相データに対してス
ケルトニング処理を施した後に、位相差πの各領域ごと
にナンバリング(順序付け)処理を行い、この情報に基
づいて強度差Isubと強度和Iaddを表すデータの
絶対値を一旦外し、この後にローパスフィルタによる平
滑化処理を施すようにしてもよい。
【0046】すなわち、図3において、第1領域と第2
領域の境界は強度和Iaddの極小点から、第2領域と
第3領域の境界は強度差Isubの極小点から各々求め
ることができる。しかし、強度差Isubと強度和I
addを表すデータは相当量のノイズを含んでいるた
め、両者の比の逆正接から求められる位相は境界部分で
不連続になったり不自然なピークが現れたりすることが
しばしば生じる。境界領域での不自然な分布を避けるた
めに、強度差Isubと強度和Iaddを表すデータの
絶対値を一旦外した後にローパスフィルタによる平滑化
処理を施す方法が有効である。
【0047】この方法について、図11を参照しながら
説明する。まず、前述したように、図10において、2
枚のスペックル画像からそれらの強度差Isubと強度
和I addのデータを得、かつ前述した(12)式を用
いて位相データを得る処理ステップを経た後、上記位相
データに対してはローパスフィルタによる平滑化処理
((S23A))を行なった後にスケルトニング処理
(細線化処理)を施しておき、図3に示すように位相差
πの各領域毎にナンバリング(順序付け)処理を行う。
次に、符合を反転すべき領域を選ぶ。後述する引っ張り
試験の場合は、位相変化が単調関数であるので、相関縞
1周期ごとに符合が反転する。言い換えると、相隣る2
領域毎に符合が反転する。図11(b)にその一例を示
す。
【0048】このようにして得られたナンバリングデー
タに基づいて、図11(a)に示す強度差Isubと強
度和Iaddのデータを分割し、図11(c)に示すよ
うに、負符号の領域の符号のみを符号反転したデータに
対してフィルタリング処理を施す。これらフィルタリン
グされた強度差LPFIsubと強度和LPFIad
のデータ(図11(d))に再度絶対値をかけることに
より、図11(e)に示すように強度差LPFIsub
と強度和LPFIaddデータに対して鮮明な極小点が
得られる。 このように加工された強度差LPFI
subと強度和LPFIaddに対して下記(13)式
の逆正接演算が施され、図12に示す如きフィルタリン
グ済みの位相ラッピングされた位相データが得られる。
【0049】
【数15】 なお、上記図11(d)のデータを得た後、このデータ
に対して直接上記(13)式で表わす逆正接演算が施さ
れるようにしてもよい。この後、上述のようにしてノイ
ズの影響が取り除かれ、しかもπ毎の領域の境界が確定
されたデータに対して、前述した図1の実施形態と同様
に所定のアルゴリズムにしたがい、容易に位相アンラッ
ピング処理を行うことができ(S28)、被検体の表面
形状に忠実な2次元位相分布φを得ることができる(S
29)。
【0050】また、本明細書においては、本発明方法の
適用対象として剛体回転させた粗面板を挙げて説明して
いるが、この適用対象は動的物体全般に及ぶものであ
り、例えば材料の引っ張り試験を行う際などにおいて特
に有効である。以下、アルミニウム合金の引張り試験に
おいて刻々変化するその変形の解析処理に本発明方法を
適用した場合について説明する。
【0051】一般に、アルミニウム合金等の材料を引っ
張った場合、弾性変形領域では一様な伸びが生じる。こ
れをスペックル干渉法(ESPI)で観察すると、図13
(A)に示すような一様な縞が認識される。位置によっ
て縞の方向や密度が異なるのは、変形以外に予期できな
い試験片の設置誤差等による回転が生じていることによ
るものである。変形が降伏点を越え、塑性変形領域にな
ると、変形はすべり帯と称される、一般には引張り方向
に略45°傾いた狭い領域に局在する。これをスペック
ル干渉法(ESPI)で観察すると、図13(B)に示すよ
うに、局在部に縞が密集して現れる。
【0052】さらに、変形速度に対して相対的に長い差
分時間をもって観察すると、内部の縞構造が消失したよ
うな帯状の部分が現れ、時間的に略一定の速度で上下に
移動していく様子が観察される。この部分について差分
時間を十分に短くとると、縞構造が現れてくる。この部
分を拡大して詳細に観察すると、図13(C)(最左図
から最右図まで3.6秒毎に観察)に示すように、局在
する変形が複雑に非線型的に伸展している様子がわか
る。しかし、このような従来のスペックル干渉法(ESP
I)では、変形の時間的変化を定性的に把握することは
可能であるが、変形の大きさを定量的に求めることはで
きない。
【0053】これに対し、その変形の解析処理に本発明
方法を適用すれば、上記変形の大きさを定量的に容易に
把握することができる。すなわち、図14に示す如きア
ルミニウム合金の試験片を引張試験機に取り付け、1.
6μm/sで緩やかに引張り、1.2秒毎に得られた干
渉スペックル画像をコンピュータに取り込む。この後、
図10に示す実施形態を用いて各干渉スペックル画像に
ついて2次元位相分布φを得、例えば、下記(1)式
を用い各干渉スペックル画像について変形分布uを得
る。なお、αは測定光の試験片表面への入射角を示すも
のである。
【0054】
【数16】 図15(A)、(B)、(C)、(D)、図16
(E)、(F)、(G)は、本実施形態方法を適用して
得られた、変形分布uの定量解析データの抜粋を示すも
ので、図中の番号(NO.1、10、26、30、4
3、49、50)は降伏状態に置ける変形の推移を時系
列に沿って1.2秒毎に番号付けした際の番号を表すも
のである。
【0055】
【発明の効果】本発明の、スペックル干渉の画像解析に
おける位相アンラッピング方法は、動的被観察体の変形
前後の2つのスペックルパターン画像の強度I
before、Iafterの強度差をIsub、強度
和をIaddとし、これら2つの強度I sub、I
addに基づいて被観察体の位相情報を求める和差法を
用いる方法において、位相ラッピングされた被観察体の
位相分布曲線における、ラッピングに係る反転位置を、
強度差Isubの極小点および強度和Iaddの極小点
から求めるようにしている。
【0056】強度差Isubおよび強度和Iaddは、
和差法により位相分布曲線を演算するために既に求めら
れているから、本発明方法においては位相ラッピングに
係る反転位置を見つけるために、別途特別な演算などを
行う必要がない。しかも、強度差Isubおよび強度和
addの極小点位置は折れ線の屈曲した状態となって
おり、極大点等の他の位置に比べて検出が極めて容易で
あるから、良好な位相アンラッピング処理を行うことが
できる。
【0057】また、物体の変形測定の場合に本発明方法
を適用すれば、位相φと変形量uの関係を予め特定して
おくことにより、上記変形の大きさの定量的な把握を容
易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を説明するためのフローチャ
ート
【図2】図1に示す実施形態において、2(A)は差画
像を、2(B)はスケルトニング処理による差画像の極
小線を各々示す図
【図3】強度差、強度和、ラッピング位相値およびアン
ラッピング位相値の関係を示すグラフ
【図4】図1に示す実施形態を用いて得られた変形分布
を示す斜視図
【図5】位相シフト法における位相ラッピング曲線を示
すグラフ
【図6】2光束照射型のスペックル干渉装置を示す概略
【図7】粗面を剛体回転させる際の装置を示す模式図
【図8】図7に示す装置を用い、得られたスペックル干
渉画像から演算された差画像(A)、和画像(A)、位
相像(B)およびこれらの強度分布(C)、(D)を示
すグラフ
【図9】図1に示す実施形態において、9(A)は平滑
化処理がなされた位相像を、9(B)はアンラッピング
処理がなされた位相像を各々示す図
【図10】図1とは異なる他の実施形態を説明するため
のフローチャート
【図11】図10に示すフィルタリング処理による画像
データの変化を示す図
【図12】フィルタリング済みの位相ラッピングされた
位相像を示す図
【図13】アルミニウム合金等の材料を引張った場合に
おける、従来のスペックル干渉法(ESPI)で観察した場
合の変形量分布を示す図
【図14】本発明の実施形態方法の実験に用いられるア
ルミニウム合金の試験片
【図15】本発明の実施形態方法を適用して得られた、
変形分布uの定量解析データを示す図
【図16】本発明の実施形態方法を適用して得られた、
変形分布uの定量解析データを示す図
【符号の説明】
100 被観察体 101 レーザ光源 102A、102B 光束 103 CCD 104A、B シャッタ 201 平板 202 PZT
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2F065 AA65 BB13 CC00 DD04 FF56 GG04 HH12 HH14 JJ03 JJ09 JJ26 QQ00 QQ25 QQ26 QQ27 QQ29 QQ31 QQ32 QQ33 SS00

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スペックル干渉法を用いて得られた、動
    的被観察体の位相情報を担持したスペックルパターン画
    像を解析して求めた、所定位相範囲に位相ラッピングさ
    れた被観察体の位相φ´の分布曲線を、位相アンラッピ
    ングする方法であって、 前記被観察体の動きの前後における2つのスペックルパ
    ターン画像の強度I efore、Iafterについ
    ての強度差をIsub、強度和をIaddとしたとき、
    これら強度差Isubおよび強度和Iaddに基づいて
    前記被観察体の位相φ´の分布曲線を求める方法におい
    て、 前記位相ラッピングされた被観察体の位相φ´の分布曲
    線における、ラッピングに係る反転位置を、前記強度差
    subの極小点および前記強度和Iaddの極小点か
    ら求めることを特徴とするスペックル干渉の画像解析に
    おける位相アンラッピング方法。
  2. 【請求項2】 前記強度差Isubの極小点に基づき、
    前記位相φ´の分布曲線における、負の傾きから正の傾
    きに移行する反転位置を求め、前記強度和I addの極
    小点に基づき、位相φ´の分布曲線における、正の傾き
    から負の傾きに移行する反転位置を求めることを特徴と
    する請求項1記載のスペックル干渉の画像解析における
    位相アンラッピング方法。
  3. 【請求項3】 前記位相ラッピングされた被観察体の位
    相φ´が下式により求められることを特徴とする請求項
    1または2記載のスペックル干渉の画像解析における位
    相アンラッピング方法。 【数1】 ただし、φ´はラッピングされた被観察体の位相値であ
    る。
  4. 【請求項4】 前記所定位相範囲が0からπであること
    を特徴とする請求項3記載のスペックル干渉の画像解析
    における位相アンラッピング方法。
  5. 【請求項5】 前記位相アンラッピング処理が、奇数の
    第n領域(ラッピング位相増加領域)についてはφ=(n
    -1)π+φ´により、偶数の第n領域(ラッピング位相
    減少領域)についてはφ=nπ-φ´により、各々なさ
    れることを特徴とする請求項4記載のスペックル干渉の
    画像解析における位相アンラッピング方法。ただし、φ
    はアンラッピングされた被観察体の位相値であり、第1
    領域は位相値0から始まる。
  6. 【請求項6】 前記位相アンラッピング処理の前に、前
    記強度差Isubおよび前記強度和Iaddのデータに
    対して、前記位相φ´により得られた各位相領域毎にロ
    ーパスフィルタによる平滑化処理を施すことを特徴とす
    る請求項1から5のうちいずれか1項記載のスペックル
    干渉の画像解析における位相アンラッピング方法。
  7. 【請求項7】 前記動的観察体が引っ張り試験に供され
    た試験片であることを特徴とする請求項1から6のうち
    いずれか1項記載のスペックル干渉の画像解析における
    位相アンラッピング方法。
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