JP2001293081A - 軟骨移植用材料及びその製造方法 - Google Patents

軟骨移植用材料及びその製造方法

Info

Publication number
JP2001293081A
JP2001293081A JP2001030154A JP2001030154A JP2001293081A JP 2001293081 A JP2001293081 A JP 2001293081A JP 2001030154 A JP2001030154 A JP 2001030154A JP 2001030154 A JP2001030154 A JP 2001030154A JP 2001293081 A JP2001293081 A JP 2001293081A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cartilage
cells
collagen
chondrocytes
collagen gel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001030154A
Other languages
English (en)
Inventor
Mitsuo Ochi
光夫 越智
Yuji Uchio
祐司 内尾
Kenzo Kawasaki
賢三 河▲崎▼
Kenichi Katsube
顕一 勝部
Masakazu Kato
雅一 加藤
Takayuki Yamamoto
剛之 山本
Rika Fukushima
里佳 福島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Tissue Engineering Co Ltd
Original Assignee
Japan Tissue Engineering Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Tissue Engineering Co Ltd filed Critical Japan Tissue Engineering Co Ltd
Priority to JP2001030154A priority Critical patent/JP2001293081A/ja
Publication of JP2001293081A publication Critical patent/JP2001293081A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体との親和性が高く移植後に軟骨組織を効
率よく再建可能な軟骨細胞移植材料及びその製造方法を
提供する。 【解決手段】 軟骨細胞を、細胞の増殖よりも軟骨基質
の産生を優先的に行う播種密度、好ましくは2×105
個/ml〜2×107個/mlで軟骨細胞を播種してコ
ラーゲンゲル中で包埋培養して、コラーゲンゲル中に、
コンドロイチン硫酸などの軟骨基質を保持させた軟骨移
植用材料及びその製造方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軟骨移植用材料及
びその製造方法に関し、特にコラーゲンゲルを基材とす
る軟骨移植用材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、自然修復不可能な関節軟骨損
傷に対して、移植という手段が取られている。
【0003】近年、このような関節軟骨損傷に対して、
培養軟骨細胞を浮遊液の状態で移植する方法が開発され
(Brittbergら; New Eng. J Med. 331 (1994) 889-89
5)、欧米では臨床応用されている。この方法で用いられ
る培養軟骨細胞は、軟骨欠損患者の非荷重部関節軟骨組
織からごく少量の軟骨細胞を採取し、in vitroで培養し
て増殖させたものである。しかし、この方法では移植細
胞の漏出という問題があり、さらに、培養時に軟骨細胞
が培養液に接するために、軟骨細胞が産生した軟骨基質
が培養液中に流出する問題もある。また、長期間の単層
培養では本来の形質を失うとされる軟骨細胞が、移植
後、硝子軟骨細胞としての機能を発現できるのかという
問題が指摘されていた。
【0004】一方、軟骨細胞と生体材料を組み合せた組
織工学的手法を用いた軟骨欠損の修復法が報告されてい
る。
【0005】このような方法には、生体吸収性高分子で
あるポリ乳酸やポリグリコール酸などを足場として、こ
れに軟骨細胞を播種する方法がある (Vacantiら; Plas
t. Reconstr. Surg. 88 (1991)753-)。しかし、この方
法には、生体内でポリ乳酸やポリグリコール酸が分解さ
れて生じる低分子が酸性であり毒性があること、また、
細胞の足場としての能力にかけるという問題点が指摘さ
れている。
【0006】また、コラーゲンスポンジを足場として、
これに軟骨細胞を播種することにより軟骨組織の再建に
成功している報告例もある(浅敷ら; Biomaterial 17 (1
996)155-162)。この場合、細胞の足場としての能力に優
れているが、基材自体が多孔質であるため、軟骨細胞が
コラーゲンスポンジから漏出したり、軟骨基質を保持す
ることができないという欠点が指摘されている。
【0007】これらの技術に対して、本発明者である越
智ら(島根医科大)の開発したコラーゲンゲル内培養自
家軟骨細胞移植術が報告された(日本醫事新報 No.3875
(1998)33-36)。この方法では、軟骨細胞がコラーゲン
ゲル内で培養されるため、軟骨基質がコラーゲン内に保
持され漏出を防止するという利点を有する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の移植術
では、液体培地とは異なるゲル状のコラーゲン内で軟骨
細胞を培養するため、コラーゲンゲル内での増殖速度の
調整が困難である。また、コラーゲンゲル内に保持され
る軟骨基質量は生体組織と比較すると少なく、治癒効果
の促進やより生体組織に近い移植材料を得るためにも、
効率の良い基質生産を行う培養条件が求められていた。
【0009】従って、本発明の目的は、生体との親和性
が高く移植後に軟骨組織を効率よく再建可能な軟骨細胞
移植材料及びその製造方法を提供することを技術課題と
する。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の軟骨移
植用材料は、コラーゲンゲルを基材とする軟骨移植用材
料であって、細胞の増殖よりも軟骨基質の産生を優先的
に行う播種密度で軟骨細胞を播種してコラーゲンゲル中
で包埋培養し、前記軟骨基質が前記コラーゲンゲル中に
保持されたことを特徴としている。
【0011】請求項2に記載の軟骨移植用材料は、請求
項1において、前記軟骨細胞の播種密度が、2×105
個/ml〜2×107個/mlであることを特徴としてい
る。
【0012】請求項3に記載の軟骨移植用材料は、請求
項1又は請求項2において、前記コラーゲンゲルの濃度
が0.1重量%以上5重量%未満であることを特徴とし
ている。請求項4に記載の軟骨移植用材料は、請求項1
乃至請求項3のいずれかにおいて、前記コラーゲンゲル
がコラーゲン末端のテロペプチドを切断したアテロコラ
ーゲンであり、該アテロコラーゲンの濃度が0.6重量
%以上3重量%未満であることを特徴としている。
【0013】請求項5に記載の軟骨移植用材料は、請求
項1乃至請求項4のいずれかにおいて、前記包埋培養後
のコラーゲンゲルに存在する線維芽様細胞の数が、軟骨
細胞の数より少ないことを特徴としている。
【0014】請求項6に記載の軟骨移植用材料は、請求
項1乃至請求項5のいずれかにおいて、前記コラーゲン
がニワトリ、ブタ由来であることを特徴としている。
【0015】請求項7に記載の軟骨移植用材料の製造方
法は、コラーゲンゲルを基材とする軟骨移植用材料の製
造方法であって、軟骨細胞を、細胞の増殖よりも軟骨基
質の産生を優先的に行う播種密度で播種して前記コラー
ゲンゲル中で包埋培養し、前記軟骨細胞の軟骨基質を前
記コラーゲンゲル中に保持させることを特徴としてい
る。
【0016】請求項8に記載の軟骨移植用材料の製造方
法は、請求項7において、前記軟骨細胞の播種密度が、
2×105個/ml〜2×107個/mlであることを特徴
としている。
【0017】請求項9に記載の軟骨移植用材料の製造方
法は、請求項7又は請求項8において、前記コラーゲン
ゲルの濃度が0.1重量%以上5重量%未満であること
を特徴としている。請求項10に記載の軟骨移植用材料
の製造方法は、請求項7乃至請求項9のいずれかにおい
て、前記コラーゲンゲルがコラーゲン末端のテロペプチ
ドを切断したアテロコラーゲンであり、該アテロコラー
ゲンの濃度が0.6重量%以上3重量%未満であること
を特徴としている。
【0018】請求項11に記載の軟骨移植用材料の製造
方法は、請求項7乃至請求項10のいずれかにおいて、
前記包埋培養後のコラーゲンゲルに存在する線維芽様細
胞の数が、軟骨細胞の数より少ないことを特徴としてい
る。
【0019】請求項12に記載の軟骨移植用材料の製造
方法は、請求項7乃至請求項11のいずれかにおいて、
前記コラーゲンがニワトリ、ブタ由来であることを特徴
としている。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明者らは、上記諸目的を解決
するために鋭意検討努力した結果、コラーゲンゲル内で
の包埋培養の際の播種密度を所定密度に調節することに
よって、諸目的を達成することを見出した。
【0021】即ち、細胞播種密度によってコラーゲンゲ
ル内での包埋培養時の細胞増殖速度が異なり、低密度で
播種した場合、細胞増殖の速度が速く、包埋培養中では
軟骨基質の産生よりも細胞の増殖が優先的に行われる
が、高密度に播種した場合には細胞増殖速度が遅く、包
埋培養中では軟骨基質の産生の方が細胞の増殖よりも優
先的に行われる。
【0022】このため、細胞の増殖よりも軟骨基質の産
生を優先的に行う細胞播種密度で軟骨細胞を播種するこ
とによって、包埋培養開始当初から軟骨基質の産生を優
先的に行わせることができる。これにより、軟骨移植用
材料として、生体での軟骨基質濃度に近くて生体との親
和性が高い使用可能な状態に早くすることができる。こ
の結果、移植後に軟骨組織を効率よく再建可能な軟骨移
植用材料を効率よく短時間で調製して提供できる。
【0023】本発明で用いられるコラーゲンは、軟骨細
胞の増殖の足場として人体に安全なものであれば、いず
れのものを用いることができる。このようなコラーゲン
には、例えば、日本などBME(ウシ海綿状脳症)の発生し
ていない国由来のウシなどの皮膚から得られるI型コラ
ーゲンや、ブタ、ニワトリ由来のコラーゲンが挙げられ
る。
【0024】さらに安全性を確保するために、例えばBM
E(ウシ海綿状脳症)と無関係のブタ、ニワトリ由来のコ
ラーゲンを使用することが好ましく、アレルギー反応を
低減化するため、コラーゲン末端のテロペプチドを切断
したアテロコラーゲンを使用することがさらに好まし
い。これらのコラーゲンは、どれも高純度の製品が入手
可能である。
【0025】コラーゲン溶液の調製濃度は、使用目的に
より0.1〜5.0重量%の幅で調製可能である。0.1重量%
よりも低いと、軟骨細胞がコラーゲン中で増殖する際の
足場としての機能が十分でないだけでなく細胞の増殖速
度が速くなるため細胞の形態変化が起こり易く、5.0重
量%よりも高いと、細胞や軟骨基質がゲル内で均一化す
るにはゲルの粘性が高すぎるため、好ましくない。コラ
ーゲン溶液の溶媒には、軟骨細胞の培養に不活性な溶媒
から選択される。より好ましくは、軟骨細胞の増殖及び
形態維持の観点からコラーゲン溶液に抗原性の少ないア
テロコラーゲン溶液を使用し、その濃度を0.6重量%
〜3重量%とすることがよい。
【0026】コラーゲン溶液は、軟骨細胞を含有させた
培養液とコラーゲンとを混合して調製される。ここで用
いられる培養液は、軟骨細胞の通常の培養に用いられる
液体培地がそのまま適用可能であり、例えば血清含有ダ
ルベッコ最小必須培地(DMEM)が挙げられる。
【0027】このコラーゲン溶液は、所定の濃度のコラ
ーゲンが溶解されてゲル状となることから、産生された
軟骨基質をこのゲル内にほとんど貯蔵することができ
る。この軟骨基質は、もともと生体中の軟骨組織に保持
されて軟骨組織を誘導する基となる物質であるため、移
植材料にこのような軟骨基質が保持されていることは、
移植後の良好な軟骨再建の観点から必要なことである。
多孔質のポリマーやコラーゲンスポンジのように、培養
液と細胞が接している培養形態では、本発明のコラーゲ
ンゲルのように基材中に軟骨基質を保持することができ
ないので、本発明のような効果は期待できない。
【0028】コラーゲン溶液中で培養される軟骨細胞に
は、硝子軟骨、線維性軟骨、弾性軟骨から得たものを使
用する。好ましくは、移植後の修復を理想的に行うため
には、非荷重部の軟骨から採取された関節軟骨細胞を用
いることである。細胞は、組織から採取された後、常法
に従って結合組織などを除去して調製される。また、軟
骨細胞には、常法を用いた一次培養によって、予め増殖
させた細胞を用いてもよい。
【0029】本発明において、コラーゲン溶液中で培養
するための細胞の播種密度は、細胞の増殖よりも軟骨基
質の産生を優先的に行う播種密度である。このような細
胞播種密度にすることによって、包埋培養の開始時から
軟骨細胞は軟骨基質の産生を旺盛に行うので、移植材料
として必要な量の軟骨基質を効率よく得ることができ
る。
【0030】これに対して細胞増殖が優先的に行われる
低密度の播種条件の場合、播種された細胞は分裂を繰り
返すことにより線維芽様細胞へと形態変化しやすい。こ
の点、本発明では、上記播種密度で軟骨細胞を播種して
包埋培養を開始するので、増殖を繰り返すことによる細
胞の形態の変化を防止することができ、軟骨基質を産生
することができない線維芽様細胞が軟骨細胞移植材料中
に高い割合で混在することを防止することができる。こ
のため、軟骨細胞による軟骨組織の再建をより効率よく
行うことができる。
【0031】ここで、細胞の増殖よりも軟骨基質の産生
を優先的に行う播種密度で播種された軟骨移植用材料
は、軟骨細胞の包埋培養後のコラーゲンゲルにおいて、
軟骨細胞の線維芽様細胞への形態変化の割合が少ないこ
とにより特定することができる。移植適合性及び軟骨基
質の産生の観点から、軟骨細胞の包埋培養後でのコラー
ゲンゲル内における線維芽様細胞の細胞数は、軟骨細胞
の細胞数より少ないこと、すなわち線維芽様細胞の細胞
数が、全体の細胞数(線維芽様細胞+軟骨細胞)の略5
0%未満であることが好ましく、略30%未満であるこ
とがより好ましく、略10%未満であることが更に好ま
しい。
【0032】この場合、コラーゲンゲル中に存在する線
維芽様細胞は星状又は紡錘状の細胞であり、これに対し
て形態を維持した軟骨細胞は円形であるので、両者を顕
微鏡下又は裸眼で明確に区別することができる。
【0033】本発明において軟骨細胞の播種密度は、細
胞の形態を維持して軟骨基質の産生をより効率よく行わ
せる観点から、2×105個/ml〜2×107個/ml
の範囲、好ましくは、2×106個/ml〜2×107
/mlの範囲、より好ましくは、4×106個/ml〜
2×107個/mlの範囲にすることができる。
【0034】この範囲よりも細胞播種密度が低いと、軟
骨細胞の増殖の方が軟骨基質の産生よりも優先的に行わ
れ、細胞の形態が変化したり、効率よく十分な量の軟骨
基質を産生することができず、好ましくない。また、こ
の範囲よりも細胞播種密度が高いと、軟骨細胞の細胞活
性が十分に維持できず、軟骨基質の産生も不十分となる
ので、好ましくない。
【0035】軟骨細胞は、上記のような細胞浮遊コラー
ゲン溶液として適当な培養器に播種される。培養器中で
は、コラーゲン溶液は軟骨細胞の培養に適した上記の濃
度に調製されている。得られたコラーゲンゲルでは、軟
骨細胞は、ゲルの下層に沈むことがなく、ほぼ均一に分
散され、この包埋状態で細胞の培養が行われる。培養を
継続することにより軟骨細胞から産生された軟骨基質
は、コラーゲンゲル中にほぼ均一に蓄積される。
【0036】細胞の形態維持及び増殖速度並びに軟骨基
質産生能の観点から、0.6重量%以上1.6重量%未
満のアテロコラーゲン濃度の場合には2×106〜2×
107の播種密度であることがより好ましく、一方、
1.6重量%以上3重量%未満のアテロコラーゲン濃度
の場合には2×105〜2×107の播種密度であること
がより好ましい。
【0037】本発明における軟骨基質は、通常の軟骨細
胞が生体内又は培養条件下で産生する物質及び培養条件
下で産生される物質のいずれかである。このような物質
には、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ケラタン硫
酸などのグリコサミノグリカンやプロテオグリカン、タ
イプIIコラーゲンなどが挙げられる。軟骨基質の量
は、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)な
どを用いて常法により測定することができる。
【0038】このように、本発明による軟骨移植用材料
は、移植時に多くの軟骨細胞と豊富な軟骨基質を含有し
ているため、生体との親和性も非常に高く、効率よく軟
骨の修復を行うことができる。
【0039】本発明の軟骨移植用材料を使用することが
できる適応症としては、軟骨損傷、離断性骨軟骨炎、変
形性関節症、関節リューマチなどが挙げられるが、その
範囲に限定されるものではなく、軟骨欠損に起因する疾
患全般に適用可能である。
【0040】
【実施例】以下、本発明の内容を実施例を用いて具体的
に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるもので
はない。
【0041】(1)ウサギ関節軟骨のコラーゲンゲル内
培養 <実施例1>日本白色家兎の膝、股、肩関節から関節軟
骨を採取し、0.25%トリプシンおよび0.25%コラゲナーゼ
で酵素処理を行い軟骨細胞を分離した。分離した軟骨細
胞を培養液と混合して軟骨細胞浮遊液を作製し、この軟
骨細胞浮遊液を同量のコラーゲン(アテロコラーゲン:
高研社製)内に2×105個/ml、4×105個/ml 、2×106
個/ml、4×106個/ml、 2×107個/ml、4×107個/mlの
各密度になるように包埋した後、培養を開始した。この
とき、コラーゲン溶液の最終濃度は1.5重量%であ
る。培養は、37℃で4週間行い、1週間毎に細胞数の
推移、組織学的変化を観察し、コラーゲンゲル内のコン
ドロイチン硫酸産生量を定量した。なお、細胞の形態は
トルイジンブルーによる染色によって確認した。また、
コンドロイチン硫酸の異性体の比(コンドロイチン6硫
酸/コンドロイチン4硫酸)を、HPLCによって得ら
れるそれぞれの量から産出した。細胞数の増減と細胞形
態の変化の結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】表1に示されるように、2×106個/mlの場
合、4×106個/mlの場合及び2×10 7個/mlの場合には、
増殖の速度は遅く細胞数の大幅な増加は認められなかっ
たが、多くの細胞で、円形である軟骨細胞の形態が維持
されており、線維芽様細胞の細胞形態に変化しなかっ
た。全体の細胞数に対して線維芽様細胞は、2×106個/
mlの場合、4×106個/mlの場合及び2×107個/mlの場合
において、ほとんど認められなかった。
【0044】これに対して、2×105個/mlで播種した場
合及び4×105個/mlで播種した場合には、細胞は比較的
活発に増殖し、細胞数は共に相対的に大幅に増えたが、
殆どの細胞において線維芽様細胞に形態が変化する傾向
が見られた(全体の細胞の略90%及び略60%)。ま
た、4×107個/mlで播種した場合には、細胞数の大幅な
減少が認められた。
【0045】一方、4週間後のコンドロイチン硫酸産生
含有量は、2×106個/ml〜2×10 7個/mlの範囲の細胞
播種濃度の場合では、播種細胞濃度に依存してコンドロ
イチン硫酸の量は多く認められ、軟骨移植用材料として
適した量であった。特に、4×106個/ml〜2×107個/ml
においては産生量が多く好適であった。また、2×10
6個/ml〜2×107個/ml範囲内では、異性体の比も、コ
ンドロイチン硫酸の量と同様に播種細胞濃度に依存して
培養の進行と共に増加した。
【0046】これに対して、4×107個/mlの播種濃度の
場合には、コンドロイチン硫酸の産生は認められたもの
の2×107個/mlの播種濃度の場合と比較して減少してい
た。また、2×105個/ml及び4×105個/mlではコンドロ
イチン硫酸の産生も不十分であった。
【0047】これらの結果から、コラーゲン濃度を1.
5重量%とし、2×106個/mlから2×107個/mlの播
種密度とすることによって、細胞の増殖よりも軟骨基質
の産生を優先に行っていることが確認できた。この時、
殆どの細胞が軟骨細胞形態を維持しており、コンドロイ
チン硫酸の産生が効率よく行われ、生体親和性の高い軟
骨移植用材料を提供することができる。4×106個/ml
から2×107個/mlの播種密度では、さらに効率よくコ
ンドロイチン硫酸の産生が行われ、より効率的な軟骨移
植用材料を提供できることが示された。
【0048】<実施例2>実施例1と同様に日本白色家
兎の関節軟骨を採取し、酵素処理により軟骨細胞を分離
した後、軟骨細胞浮遊液を作製した。この軟骨細胞浮遊
液を1:4の割合でコラーゲン(アテロコラーゲン:高
研社製)内に2×104個/ml、2×105個/ml 、2×
106個/ml、2×107個/mlの各密度になるように包埋
した後、100μlごとの担体としてディッシュに播種
し、培養を開始した。このときコラーゲンの最終濃度
は、2.4重量%であった。培地には、50μg/ml
アスコルビン酸及び100μg/mlヒアルロン酸を含
有するように調製した10v/v%FBS(ウシ胎児血
清)−DMEM(ダルベッコ変法イーグル最小必須培
地)を使用し、5%CO2、37℃の培養条件下で、適
宜培地交換を行いながら5週間培養し、1週間毎に細胞
数の推移を観察した。細胞数の増減のグラフを図1に示
す。図1における細胞数は一担体(100μl)あたり
の細胞数(cells/well)を示しているので、播種密度に
対して1/10の値となっている。
【0049】組織学的変化、殊に細胞の形態に関して
は、28日間(4週間)培養した時点でのコラーゲンゲ
ルを切断し、その断面像を顕微鏡により観察した。図2
として2×107個/ml及び2×104個/mlの播種
密度で培養したときの顕微鏡写真を示す。
【0050】図1に示されるように、播種密度が低いほ
ど増殖の速度が早く、細胞が比較的活発に増殖していた
が、播種密度が高いと細胞数の大幅な増加は認められな
かった。形態変化に関しては、2×107個/mlでは
多くの細胞で、円形である軟骨細胞の形態が維持されて
おり、線維芽様細胞の細胞形態に変化していなかった
(図2(a)参照)。また、図示してはいないが、軟骨
基質も十分に産生されており、軟骨移植用材料として適
した量であった。
【0051】これに対して、2×104個/mlでは、
殆どの細胞において線維芽様細胞への形態変化が観察さ
れ(全体の細胞の対する線維芽様細胞の割合は略80
%)、若干の軟骨基質の産生が見られるものの、軟骨移
植用材料としては十分な量とは言い難いものであった
(図2(b)参照)。一方、図示してはいないが、2×
106個/ml及び2×105個/mlでは、2×107
個/mlと同様に多くの細胞が軟骨細胞の形態を維持し
ており、基質も十分に産生されていた。
【0052】これらの結果から、コラーゲン濃度を2.
4重量%とし、2×105個/mlから2×107個/m
lの播種密度とすることによって、細胞の増殖よりも軟
骨基質の産生が優先的に行われていることが確認でき
た。この時、殆どの細胞が軟骨細胞形態を維持してお
り、軟骨基質の産生が効率よく行われ、生体親和性の高
い軟骨移植用材料を提供することができる。
【0053】(2)ブタタイプIコラーゲンゲルでの培
養 実施例1と同様にして、軟骨細胞を分離し、タイプIコ
ラーゲンゲルでの培養を行った。コラーゲンゲルは、0.
3%ブタタイプIコラーゲン溶液(酸性溶解物、新田ゼラ
チン社製)を、pH7.0に調整して調製した。コラーゲン
溶液は、1×107個/mlの播種密度となるように細胞含有
培養液と混合し、37℃で静置して、ゲル化させて培養
を開始した。コラーゲンゲルの最終濃度は0.21重量
%であった。4週間の包埋培養後に、前記同様に細胞数
を計測し、組織観察を行い、軟骨基質の産生を確認する
ため、酸性ムコ多糖類の検出方法であるアルシアンブル
ー染色を常法により行った。
【0054】その結果、細胞数は約1.5倍に増殖した
程度であったが、軟骨細胞様形態を維持しており、線維
芽様細胞の細胞は認められなかった。また、多量の酸性
ムコ多糖類が認められた。これにより、1×107個/mlの
細胞播種密度では、ブタタイプIコラーゲンゲルにおい
ても、細胞の増殖よりも軟骨基質の産生が優先的に行わ
れることが示された。このような適度な軟骨基質を含有
するコラーゲンゲルでは、軟骨移植用として移植した後
も、生体との親和性に優れ、効率よく軟骨の修復ができ
る。
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、生体との親和性が高く
移植後に軟骨組織を効率よく再建可能な軟骨細胞移植材
料及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係る軟骨移植用材料におけ
るコラーゲンゲル中での軟骨細胞の細胞数の増減を示す
グラフである。
【図2】 (a)は本発明の実施例に係る軟骨移植用材
料において、軟骨細胞形態が維持されていることを示す
図、(b)は本発明の比較例に相当する軟骨移植用材料
において、軟骨細胞の形態が変化したことを示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河▲崎▼ 賢三 島根県出雲市小山町2 401号 (72)発明者 勝部 顕一 島根県出雲市塩冶町838 A−5号室 (72)発明者 加藤 雅一 愛知県蒲郡市三谷北通6丁目209番地の1 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジ ニアリング内 (72)発明者 山本 剛之 愛知県蒲郡市三谷北通6丁目209番地の1 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジ ニアリング内 (72)発明者 福島 里佳 愛知県蒲郡市三谷北通6丁目209番地の1 株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジ ニアリング内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コラーゲンゲルを基材とする軟骨移植用
    材料であって、細胞の増殖よりも軟骨基質の産生を優先
    的に行う播種密度で軟骨細胞を播種してコラーゲンゲル
    中で包埋培養し、前記軟骨基質が前記コラーゲンゲル中
    に保持されたことを特徴とする軟骨移植用材料。
  2. 【請求項2】 前記軟骨細胞の播種密度が、2×105
    個/ml〜2×107個/mlであることを特徴とする請
    求項1記載の軟骨移植用材料。
  3. 【請求項3】 前記コラーゲンゲルの濃度が0.1重量
    %以上5重量%未満であることを特徴とする請求項1又
    は請求項2に記載の軟骨移植用材料。
  4. 【請求項4】 前記コラーゲンゲルがコラーゲン末端の
    テロペプチドを切断したアテロコラーゲンであり、該ア
    テロコラーゲンの濃度が0.6重量%以上3重量%未満
    であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれ
    かに記載の軟骨移植用材料。
  5. 【請求項5】 前記包埋培養後のコラーゲンゲルに存在
    する線維芽様細胞の数が、軟骨細胞の数よりも少ないこ
    とを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載
    の軟骨移植用材料。
  6. 【請求項6】 前記コラーゲンがニワトリ、ブタ由来で
    あることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか
    に記載の軟骨移植用材料。
  7. 【請求項7】 コラーゲンゲルを基材とする軟骨移植用
    材料の製造方法であって、 軟骨細胞を、細胞の増殖よりも軟骨基質の産生を優先的
    に行う播種密度で播種して前記コラーゲンゲル中で包埋
    培養し、 前記軟骨細胞の軟骨基質を前記コラーゲンゲル中に保持
    させることを特徴とする軟骨移植用材料の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記軟骨細胞の播種密度が、2×105
    個/ml〜2×107個/mlであることを特徴とする請
    求項7記載の軟骨移植用材料の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記コラーゲンゲルの濃度が0.1%重
    量以上5重量%未満であることを特徴とする請求項7又
    は請求項8に記載の軟骨移植用材料の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記コラーゲンゲルがコラーゲン末端
    のテロペプチドを切断したアテロコラーゲンであり、該
    アテロコラーゲンの濃度が0.6重量%以上3重量%未
    満である請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の軟骨
    移植用材料の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記包埋培養後のコラーゲンゲルに存
    在する線維芽様細胞の数が、軟骨細胞の数よりも少ない
    ことを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれかに
    記載の軟骨移植用材料の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記コラーゲンがニワトリ、ブタ由来
    であることを特徴とする請求項7乃至請求項11のいず
    れかに記載の軟骨移植用材料の製造方法。
JP2001030154A 2000-02-07 2001-02-06 軟骨移植用材料及びその製造方法 Pending JP2001293081A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001030154A JP2001293081A (ja) 2000-02-07 2001-02-06 軟骨移植用材料及びその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000029256 2000-02-07
JP2000-29256 2000-02-07
JP2001030154A JP2001293081A (ja) 2000-02-07 2001-02-06 軟骨移植用材料及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001293081A true JP2001293081A (ja) 2001-10-23

Family

ID=26584970

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001030154A Pending JP2001293081A (ja) 2000-02-07 2001-02-06 軟骨移植用材料及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001293081A (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008307359A (ja) * 2007-05-15 2008-12-25 Hana.Com:Kk 骨再生能を有する骨補填材およびその製造方法
US7915028B2 (en) 2003-11-21 2011-03-29 Teijin Limited Tissue regeneration substrate, complex thereof with cells, and method for its production
US8137685B2 (en) 2003-10-29 2012-03-20 Teijin Limited Hyaluronic acid compound, hydrogel thereof and joint treating material
US8293225B2 (en) 2005-10-24 2012-10-23 Ed. Geistlich Soehne Ag Fuer Chemische Industrie Method and device for synovial cell-charged collagen membrane or gel
JPWO2016148246A1 (ja) * 2015-03-18 2018-02-01 富士フイルム株式会社 軟骨再生材料及びその製造方法
CN111019888A (zh) * 2020-01-10 2020-04-17 中怡(深圳)医疗科技集团有限公司 一种基于鲟鱼来源的原代软骨细胞提取方法
US11241518B2 (en) 2015-03-18 2022-02-08 Fujifilm Corporation Cartilage regenerative material
WO2022265021A1 (ja) * 2021-06-15 2022-12-22 株式会社 資生堂 アテロコラーゲンと毛球部毛根鞘(dsc)細胞とを含む組成物、毛髪を再生するためのキット、毛髪を再生するための組成物を製造する方法及び毛髪を再生する方法

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8137685B2 (en) 2003-10-29 2012-03-20 Teijin Limited Hyaluronic acid compound, hydrogel thereof and joint treating material
US7915028B2 (en) 2003-11-21 2011-03-29 Teijin Limited Tissue regeneration substrate, complex thereof with cells, and method for its production
US8293225B2 (en) 2005-10-24 2012-10-23 Ed. Geistlich Soehne Ag Fuer Chemische Industrie Method and device for synovial cell-charged collagen membrane or gel
US8852580B2 (en) 2005-10-24 2014-10-07 Geistlich Pharma Ag Method and device for synovial cell-charged collagen membrane or gel
JP2008307359A (ja) * 2007-05-15 2008-12-25 Hana.Com:Kk 骨再生能を有する骨補填材およびその製造方法
JPWO2016148246A1 (ja) * 2015-03-18 2018-02-01 富士フイルム株式会社 軟骨再生材料及びその製造方法
US11160902B2 (en) 2015-03-18 2021-11-02 Fujifilm Corporation Cartilage regenerative material and method for producing same
US11241518B2 (en) 2015-03-18 2022-02-08 Fujifilm Corporation Cartilage regenerative material
CN111019888A (zh) * 2020-01-10 2020-04-17 中怡(深圳)医疗科技集团有限公司 一种基于鲟鱼来源的原代软骨细胞提取方法
WO2022265021A1 (ja) * 2021-06-15 2022-12-22 株式会社 資生堂 アテロコラーゲンと毛球部毛根鞘(dsc)細胞とを含む組成物、毛髪を再生するためのキット、毛髪を再生するための組成物を製造する方法及び毛髪を再生する方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Pieper et al. Crosslinked type II collagen matrices: preparation, characterization, and potential for cartilage engineering
Sims et al. Tissue engineered neocartilage using plasma derived polymer substrates and chondrocytes
Angele et al. Stem cell based tissue engineering for meniscus repair
Ushida et al. Three-dimensional seeding of chondrocytes encapsulated in collagen gel into PLLA scaffolds
Sims et al. Injectable cartilage using polyethylene oxide polymer substrates
Nehrer et al. Canine chondrocytes seeded in type I and type II collagen implants investigated in vitro
US6378527B1 (en) Cell-culture and polymer constructs
Wayne et al. In vivo response of polylactic acid–alginate scaffolds and bone marrow-derived cells for cartilage tissue engineering
Weng et al. Tissue-engineered composites of bone and cartilage for mandible condylar reconstruction
Cheng et al. Genipin-crosslinked cartilage-derived matrix as a scaffold for human adipose-derived stem cell chondrogenesis
Mafi et al. Evaluation of biological protein-based collagen scaffolds in cartilage and musculoskeletal tissue engineering-a systematic review of the literature
US20150104872A1 (en) Cell-support matrix having narrowly defined uniformly vertically and non-randomly organized porosity and pore density and a method for preparation thereof
US20070178132A1 (en) Injectable chondrocyte implant
US7105580B2 (en) Porous structures useful for growing living tissue, and methods of manufacture
JPH04505717A (ja) 細胞培養物からのインビボでの軟骨の新生
Rotter et al. Cartilage tissue engineering using resorbable scaffolds
EP1819290A2 (en) Scaffoldless constructs for tissue engineering of articular cartilage
Glattauer et al. Preparation of resorbable collagen‐based beads for direct use in tissue engineering and cell therapy applications
Chen et al. In vitro generation of whole osteochondral constructs using rabbit bone marrow stromal cells, employing a two‐chambered co‐culture well design
Lin et al. The development of tissue engineering corneal scaffold: which one the history will choose?
Wang et al. Orchestrated cellular, biochemical, and biomechanical optimizations endow platelet-rich plasma-based engineered cartilage with structural and biomechanical recovery
JP2001293081A (ja) 軟骨移植用材料及びその製造方法
Xu et al. An injectable platform of engineered cartilage gel and gelatin methacrylate to promote cartilage regeneration
Stanton et al. The growth of chondrocytes using Gelfoam® as a biodegradable scaffold
EP1254670A1 (en) Type II collagen matrices for use in cartilage engineering

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20060707

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20071217

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20080605

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090324

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090804