JP2001247488A - 2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリトロ形またはトレオ形の製造方法、および2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリトロ形とトレオ形を分離する方法 - Google Patents

2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリトロ形またはトレオ形の製造方法、および2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリトロ形とトレオ形を分離する方法

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JP2001247488A
JP2001247488A JP2000227160A JP2000227160A JP2001247488A JP 2001247488 A JP2001247488 A JP 2001247488A JP 2000227160 A JP2000227160 A JP 2000227160A JP 2000227160 A JP2000227160 A JP 2000227160A JP 2001247488 A JP2001247488 A JP 2001247488A
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Tetsuya Shintaku
哲也 新宅
Masahide Tanaka
正英 田中
Nobushige Itaya
信重 板谷
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    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C201/00Preparation of esters of nitric or nitrous acid or of compounds containing nitro or nitroso groups bound to a carbon skeleton
    • C07C201/06Preparation of nitro compounds
    • C07C201/16Separation; Purification; Stabilisation; Use of additives

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 医薬品中間体である、式(I)の2−ヒドロ
キシ−3−ニトロ酪酸化合物(化合物(I))のトレオ
形の製造方法、化合物(I)の、エリトロ形:トレオ形
の含有比が約1:1であるエリトロ形とトレオ形との混
合物の製造方法、並びに化合物(I)のエリトロ形とト
レオ形との分離方法の提供。 【解決手段】 溶媒中、化合物(I)に、塩基を化合物
(I)に対して1当量以上作用させることにより、エリ
トロ形またはトレオ形が異性化する。また、溶媒中、化
合物(I)に、炭酸カリウムをトレオ形に対して1当量
以下作用させることにより、エリトロ形とトレオ形を分
離する。 【化1】 (式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキルまた
は置換基を有していてもよいアリールを示す。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、HIVプロテアー
ゼインヒビターであるJE−2147、免疫賦活抗癌剤
であるベスタチンなどの有用な医薬品中間体である、後
記式(I)で表される2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸
化合物のトレオ形およびエリトロ形とトレオ形の混合物
の製造方法、並びに式(I)で表される2−ヒドロキシ
−3−ニトロ酪酸化合物のエリトロ形とトレオ形との分
離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】式(I)
【0003】
【化5】
【0004】(式中、Rは、置換基を有していてもよい
アルキルまたは置換基を有していてもよいアリールを示
す)で表される2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物
(以下、酪酸化合物(I)ともいう)は、2個の不斉炭
素原子を有しており、そのため4つの光学異性体が存在
する。4つの光学異性体としては、(2R,3S)体、
(2S,3R)体、(2S,3S)体、(2R,3R)
体が挙げられ、前から2つをトレオ形、残りの2つをエ
リトロ形という。
【0005】トレオ形(2S,3R)−酪酸化合物
(I)は、例えば
【0006】
【化6】
【0007】で表される免疫賦活抗癌剤であるベスタチ
ン(A)の中間体として有用であり、エリトロ形(2
S,3S)−酪酸化合物(I)は、例えば
【0008】
【化7】
【0009】で表されるHIVプロテアーゼインヒビタ
ーであるJE−2147(B)の中間体として有用であ
る。このため、酪酸化合物(I)のエリトロ形またはト
レオ形を得るための方法、例えば酪酸化合物(I)のエ
リトロ形またはトレオ形の高選択的な製造方法、酪酸化
合物(I)のエリトロ形とトレオ形との混合物からのト
レオ形とエリトロ形を分離する方法、酪酸化合物(I)
のエリトロ形とトレオ形との混合物からトレオ形かエリ
トロ形のどちらか一方を異性化する、異性化晶析方法な
どの開発が望まれている。
【0010】特開昭56−108743号公報には、一
般式
【0011】
【化8】
【0012】(式中、R1は、水素原子、ヒドロキシル
基、低級アルキル基、低級アルコキシ基またはハロゲン
原子を示し、R2は、水素原子またはエステル残基を示
す)で表される2−ヒドロキシ−3−ニトロ−4−フェ
ニル酪酸化合物またはそのエステルを製造する方法が開
示されているが、そのジアステレオ選択性は低く、選択
的に所望の立体配置(エリトロ形またはトレオ形)を有
する当該酪酸化合物またはそのエステルを製造すること
は困難であることが予想される。また、当該公報におい
ては、その酪酸化合物またはそのエステルをメタノール
中で還元することにより、3−アミノ−2−ヒドロキシ
−4−フェニル酪酸化合物またはそのエステルを得、こ
れを濾過することにより、3−アミノ−2−ヒドロキシ
−4−フェニル酪酸化合物またはそのエステルのトレオ
形とエリトロ形とを分離できることが記載されている。
しかしながら、還元する前、つまり2−ヒドロキシ−3
−ニトロ−4−フェニル酪酸化合物またはそのエステル
の時点におけるトレオ形とエリトロ形との分離方法につ
いては、何ら記載がない。
【0013】また、特願平7−165678号公報は、
HIVプロテアーゼインヒビターであるKNI−227
などの医薬品中間体(3−アミノ−2−ヒドロキシ−4
−フェニルブタン酸)を簡便、安全、かつ安価に製造す
る方法が開示されている。例えば、該医薬品中間体(下
記スキーム中の化合物(c))は、例えば下記スキーム
のように化合物(b)を経由して立体選択的に得ること
ができる。
【0014】
【化9】
【0015】(式中、Xはアルキル基、シクロアルキル
基、アラルキル基またはアリール基を表し、Pは水素原
子または水酸基保護基を表し、R3は水素原子、アルキ
ル基、アラルキル基またはアリール基を表すか、または
3とPとが共同で環を形成する。) 当該公報においては、また、化合物(a)のエステル
(即ち、R3がアルキル基、アラルキル基またはアリー
ル基)はヒドリド還元剤を用いることによりエリトロ形
の化合物(b)となり、さらに当該化合物(b)の3位
のニトロ基を還元することによってエリトロ形に富む化
合物(c)を得ることができることも記載されている。
しかしながら、トレオ形の化合物(b)を得る方法の記
載はなく、化合物(b)のエリトロ形をトレオ形に異性
化する方法についても記載はない。さらに、化合物
(b)のエリトロ形とトレオ形との分離方法についても
記載はない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、式(I)で表される2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪
酸化合物のトレオ形を、容易に、かつ収率よく製造する
方法を提供することである。本発明のその他の目的は、
エリトロ形:トレオ形の含有比が約1:1である、式
(I)で表される2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合
物のエリトロ形とトレオ形の混合物を、容易に、かつ収
率よく製造する方法を提供することである。本発明のそ
の他の目的は、式(I)で表される2−ヒドロキシ−3
−ニトロ酪酸化合物のエリトロ形とトレオ形とを、容易
に、かつ収率よく分離する方法を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
について鋭意研究した結果、原料として、式(I)の2
−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物の、エリトロ形、
トレオ形、またはエリトロ形とトレオ形の混合物を用
い、溶媒中、塩基を2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化
合物に対して1当量以上作用させることによって、 2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリトロ形
がトレオ形に異性化するか、または 2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のトレオ形が
エリトロ形に異性化することを見出した。さらに、本発
明者らは、上記異性化において、以下のようなことも見
出した。
【0018】本発明の異性化におけるメカニズムは以下
の通りである。 (1)系内で溶解状態にあるエリトロ形の塩とトレオ形
の塩の含有比が約1:1となるように異性化が進行す
る。2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物に塩基を作
用させることによってエリトロ形およびトレオ形はとも
に塩となるが、一方の塩が析出し易い場合、溶解状態に
あるエリトロ形の塩とトレオ形の塩の含有比が約1:1
となるように異性化が進行するため、塩が析出し易い方
が多量に存在する混合物が得られることになる。 (2)本発明の1態様においては、塩基として1当量以
上の炭酸カリウムを用いる場合には、トレオ形の塩はほ
ぼ100%の割合で析出することができるため、エリト
ロ形の異性化が進行し、結果としてほぼ100%のトレ
オ形を得ることができる。 (3)塩基として炭酸カリウム以外の塩基を用いる場合
には、塩基を1当量以上ではなく、1.5当量以上作用
させることによって異性化が生じる。また、炭酸カリウ
ムの時とは異なり、出発原料中のエリトロ形とトレオ形
の含有比と、反応条件(溶媒の種類や溶媒と塩基の組み
合わせなど)によってエリトロ形やトレオ形の塩がどの
程度析出するか、溶解するかが決まるため、出発原料と
反応条件によって、トレオ形とエリトロ形のどちらが異
性化するか決まる。 (4)本発明の1態様においては、塩基として炭酸カリ
ウム以外の塩基を用い、かつエリトロ形の塩およびトレ
オ形の塩が溶解し易い条件下で行う場合、原料が、エリ
トロ形、またはエリトロ形が主成分であるエリトロ形と
トレオ形の混合物であれば、エリトロ形がトレオ形に異
性化し;原料が、トレオ形、またはトレオ形が主成分で
あるエリトロ形とトレオ形の混合物であれば、トレオ形
がエリトロ形に異性化して、エリトロ形の塩とトレオ形
の塩の含有比が約1:1の混合物となる。 (5)全般的に、トレオ形の塩は、エリトロ形の塩より
も析出し易い。
【0019】また、本発明者らは、原料として、式
(I)の2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリ
トロ形とトレオ形の混合物を用い、溶媒中、炭酸カリウ
ムをトレオ形に対して1当量以下作用させることによっ
て、エリトロ形とトレオ形を分離することができること
も見出した。以上により、容易に、かつ収率よく、式
(I)の2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリ
トロ形をトレオ形に、トレオ形をエリトロ形に異性化さ
せることができ、当該異性化方法を用いることによっ
て、トレオ形、またはエリトロ形:トレオ形の含有比が
約1:1であるエリトロ形とトレオ形の混合物を、容易
に、かつ収率よく製造することができ、その上、式
(I)の2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリ
トロ形とトレオ形とを、容易に、かつ収率よく、分離す
ることができる。
【0020】即ち、本発明は、[1]溶媒中、式(I)
【0021】
【化10】
【0022】(式中、Rは、置換基を有していてもよい
アルキルまたは置換基を有していてもよいアリールを示
す)で表される2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物
(以下、酪酸化合物(I)という)に、塩基を2−ヒド
ロキシ−3−ニトロ酪酸化合物に対して1当量以上作用
させて、 2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリトロ形
(以下、エリトロ形(I)という)をトレオ形に異性化
させるか、または 2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のトレオ形
(以下、トレオ形(I)という)をエリトロ形に異性化
させる、ことを含むことを特徴とする、トレオ形
(I)、または酪酸化合物(I)の、エリトロ形:トレ
オ形の含有比が約1:1であるトレオ形とエリトロ形と
の混合物、を製造する方法、[2]溶媒中、酪酸化合物
(I)の、エリトロ形、またはエリトロ形とトレオ形と
の混合物に、炭酸カリウムを酪酸化合物(I)に対して
1当量以上作用させて、エリトロ形をトレオ形に異性化
させることを含むことを特徴とする、トレオ形(I)の
製造方法、[3]Rが置換基を有していてもよいフェニ
ルである、上記[2]の製造方法、[4]溶媒が低級ア
ルコールである、上記[2]の製造方法、[5]溶媒が
メタノールである、上記[2]の製造方法、[6]溶媒
中、トレオ形(I)の塩およびエリトロ形(I)の塩が
溶解し易い条件下、原料である、エリトロ形(I)、ト
レオ形(I)、またはエリトロ形(I)とトレオ形
(I)との混合物に、炭酸カリウム以外の塩基を酪酸化
合物(I)に対して1.5当量以上作用させて、 酪酸化合物(I)のエリトロ形をトレオ形に異性化さ
せるか、または 酪酸化合物(I)のトレオ形をエリトロ形に異性化さ
せる、ことを含むことを特徴とする、酪酸化合物(I)
の、エリトロ形:トレオ形の含有比が約1:1であるト
レオ形とエリトロ形との混合物の製造方法、[7]Rが
置換基を有していてもよいフェニルである、上記[6]
の製造方法、[8]塩基が水酸化カリウム、水酸化ナト
リウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリ
ウムメトキシド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.
0]ウンデ−7−エンおよび1,5−ジアザビシクロ
[4.3.0]ノナ−5−エンからなる群より選ばれる
少なくとも1種である、上記[6]の製造方法、[9]
塩基が水酸化ナトリウムである、上記[6]の製造方
法、[10](a)原料が、エリトロ形(I)、または
エリトロ形が主成分であるエリトロ形(I)とトレオ形
(I)との混合物である場合、エリトロ形をトレオ形に
異性化させることを含み、(b)トレオ形(I)、また
はトレオ形が主成分であるエリトロ形(I)とトレオ形
(I)との混合物である場合、トレオ形をエリトロ形に
異性化させることを含む、上記[6]の製造方法、[1
1]原料が、エリトロ形(I)、またはエリトロ形が主
成分であるエリトロ形(I)とトレオ形(I)との混合
物である場合、エリトロ形をトレオ形に異性化させるこ
とを含む、上記[6]の製造方法、[12]溶媒が含水
溶媒である、上記[6]の製造方法、[13]含水溶媒
が水単独である、上記[12]の製造方法、[14]含
水溶媒が低級アルコール水溶液である、上記[12]の
製造方法、[15]含水溶媒がメタノール水溶液であ
る、上記[12]の製造方法、[16]溶媒中、エリト
ロ形(I)とトレオ形(I)との混合物に、トレオ形
(I)に対して1当量以下の炭酸カリウムを作用させる
ことを含むことを特徴とする、酪酸化合物(I)のエリ
トロ形とトレオ形とを分離する方法、[17]溶媒が低
級アルコールである、上記[16]の分離方法、および
[18]溶媒がメタノールである、上記[16]の分離
方法に関する。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
尚、主成分とは、全体の50%を超える量含有される成
分のことである。異性化方法 本発明においては、溶媒中、酪酸化合物(I)に、塩基
を酪酸化合物(I)に対して1当量以上作用させること
によって、容易に、かつ収率よく、酪酸化合物(I)
のエリトロ形がトレオ形に異性化するか、または酪酸
化合物(I)のトレオ形がエリトロ形に異性化すること
ができる。この異性化方法を利用すれば、酪酸化合物
(I)のトレオ形、またはエリトロ形:トレオ形の含有
比が約1:1である、酪酸化合物(I)のトレオ形とエ
リトロ形との混合物を製造することができる。
【0024】本発明における「酪酸化合物(I)に対し
て1当量以上」とは、エリトロ形(I)のみを出発原料
とする場合には「エリトロ形(I)に対して1当量以
上」、トレオ形(I)のみを出発原料とする場合には
「トレオ形(I)に対して1当量以上」、エリトロ形
(I)とトレオ形(I)の混合物を出発原料とする場合
には、「これらの混合物に対して1当量以上」を意味す
る。
【0025】本発明における酪酸化合物(I)は、以下
の通りである。式(I)のRにおける「置換基を有して
いてもよいアルキル」の「アルキル」は、直鎖状または
分岐鎖状の、炭素数が好ましくは1〜4、より好ましく
は1〜3であるアルキルであり、具体的には、メチル、
エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチ
ル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが挙げら
れ、好ましくはメチルが挙げられる。当該「置換基」と
しては、アリール(例えば、フェニルなど)、ナフチル
などが挙げられ、好ましくはフェニルが挙げられる。
「置換基を有していてもよいアルキル」の好ましい例と
しては、ベンジルが挙げられる。
【0026】式(I)のRにおける「置換基を有してい
てもよいアリール」の「アリール」としては、フェニ
ル、ナフチルなどが挙げられ、好ましくはフェニルであ
る。ここでいう「置換基」としては、炭素数1〜4のア
ルキル、炭素数1〜4のアルコキシ、ハロゲン原子など
が挙げられる。好適な「置換基を有していてもよいアリ
ール」としては、フェニル、トリルが挙げられる。
【0027】上記「炭素数1〜4のアルキル」として
は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよく、具体的に
はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、
イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが
挙げられ、好ましくはメチルが挙げられる。
【0028】上記「炭素数1〜4のアルコキシ」として
は、直鎖状または分岐鎖状のいずれでもよく、具体的に
はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、
ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert
−ブトキシなどが挙げられ、好ましくはメトキシが挙げ
られる。
【0029】上記「ハロゲン原子」としては、フッ素原
子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ま
しくは塩素原子が挙げられる。
【0030】Rとしては、置換基を有していてもよいフ
ェニルが好ましく、より好ましくはフェニルが挙げられ
る。
【0031】塩基として炭酸カリウムを用いた異性化 当該異性化に用いた塩基が炭酸カリウムである場合につ
いて、以下に詳述する。塩基として炭酸カリウムを用い
た上記異性化は、溶媒中、酪酸化合物(I)に、炭酸カ
リウムを酪酸化合物(I)に対して1当量以上作用させ
ることにより行うことができる。この場合、トレオ形
(I)の塩はほぼ100%の割合で析出し、先に記載し
たように、系内で溶解状態にあるエリトロ形の塩とトレ
オ形の塩の含有比が約1:1となるように異性化が進行
するため、エリトロ形(I)がトレオ形(I)に異性化
し、結果としてほぼ100%のトレオ形(I)を得るこ
とができる。塩基として炭酸カリウムを用いた上記異性
化における出発原料としては、エリトロ形(I)を含ん
でいればよく、エリトロ形(I)単独またはエリトロ形
(I)とトレオ形(I)との混合物を用いることができ
る。混合物の組成は特に限定はない。
【0032】炭酸カリウムを用いた上記異性化とは、具
体的には以下のように行うことができる。エリトロ形
(I)の下記溶媒の溶液中に、エリトロ形(I)に対し
て1当量以上の炭酸カリウムを添加したり、エリトロ
形(I)とトレオ形(I)との混合物の下記溶媒の溶液
中に、エリトロ形およびトレオ形の混合物に対して1当
量以上の炭酸カリウムを添加することにより、異性化が
生じるとともにトレオ形(I)の塩が結晶として析出す
る。において、トレオ形(I)はトレオ形に対して1
当量の炭酸カリウムにより、塩となり結晶として析出
し、エリトロ形(I)はエリトロ形に対して1当量以上
の炭酸カリウムにより異性化して、トレオ形(I)の塩
が結晶となって析出する。即ち、エリトロ形(I)とト
レオ形(I)の混合物が出発原料である場合には、トレ
オ形に対して1当量の炭酸カリウムとエリトロ形に対し
て1当量以上の炭酸カリウムとを使用することになる。
【0033】炭酸カリウムの使用量は、使用する酪酸化
合物(I)(エリトロ形とトレオ形の混合物の場合には
それらの和)に対して、通常1当量以上であれば特に限
定はなく、経済性および操作性の面からは1当量以上が
好ましく、高い転化率で異性化を生じさせるためには、
より好ましくは1〜3当量である。当該塩基の使用量が
使用する酪酸化合物(I)に対して1当量未満の場合、
異性化の転化率が減少して一部のエリトロ形が異性化す
ることなく溶液中に存在することになるが、エリトロ形
とトレオ形とを分離することは可能となる。
【0034】塩基として炭酸カリウムを用いた異性化で
使用する溶媒としては、酪酸化合物(I)が溶解できる
ものであれば特に限定はなく、トレオ形(I)の塩が析
出し易い点から、好ましくは低級アルコール(メタノー
ル、エタノールなどの炭素数1〜3である直鎖状または
分岐鎖状アルコール系溶媒)が挙げられ、特に好ましく
はメタノールである。溶媒の使用量は酪酸化合物(I)
が溶解する量であればよく、溶媒の種類などに依存す
る。メタノールを使用する場合には、使用する酪酸化合
物(I)(エリトロ形とトレオ形との混合物の場合には
それらの和)1gに対して通常3〜15ml、好ましく
は5〜12mlの範囲である。
【0035】塩基として炭酸カリウムを用いた異性化
は、通常0〜50℃、好ましくは10〜30℃で、通常
5〜24時間、好ましくは10〜17時間行う。
【0036】トレオ形(I)は反応液中で塩が結晶とな
って析出し、濾過などの通常の分離操作により、容易に
分離することができる。トレオ形(I)の塩は、酸によ
る中和など、通常、塩をフリー体に変換する方法によっ
てフリー体へと変換することができる。さらに、トレオ
形(I)のフリー体は、洗浄、カラムクロマトグラフィ
ーなどの常法に付すことにより精製することができる。
【0037】塩基として炭酸カリウム以外の塩基を用い
た異性化方法 溶媒中、トレオ形(I)の塩およびエリトロ形(I)の
塩が溶解し易い条件下、原料である、エリトロ形
(I)、トレオ形(I)、またはエリトロ形(I)とト
レオ形(I)との混合物に、炭酸カリウム以外の塩基を
酪酸化合物(I)に対して1.5当量以上作用させるこ
とにより、 酪酸化合物(I)のエリトロ形をトレオ形に異性化さ
せるか、または 酪酸化合物(I)のトレオ形をエリトロ形に異性化さ
せる、ことができる。当該異性化によって、2−ヒドロ
キシ−3−ニトロ酪酸化合物の、エリトロ形:トレオ形
の含有比が約1:1であるトレオ形とエリトロ形との混
合物を製造することができる。ここでいう「エリトロ
形:トレオ形の含有比が約1:1」とは、エリトロ形:
トレオ形の含有比が、通常1:1〜1:1.5、好まし
くは1:1〜1:1.2であることを意味する。
【0038】本発明の異性化は、系内で溶解状態にある
エリトロ形の塩とトレオ形の塩の含有比が約1:1とな
るように進行する。つまりエリトロ形やトレオ形の塩が
析出すると、溶解状態にあるエリトロ形の塩とトレオ形
の塩の含有比が約1:1となるように異性化が進行す
る。このため、出発原料中のエリトロ形とトレオ形の含
有比やエリトロ形やトレオ形の塩が析出し易いか、溶解
し易いかによって、上記、のどちらが生じるかが決
まる。トレオ形とエリトロ形の含有比やエリトロ形やト
レオ形の塩が析出し易いか、溶解し易いかは、塩基の種
類や塩基と溶媒の組み合わせなどの反応条件によって決
まる。
【0039】このため、トレオ形(I)の塩およびエリ
トロ形(I)の塩が溶解し易い条件下で、本発明の異性
化を行う場合、最終的にエリトロ形:トレオ形の含有比
が約1:1である混合物が得られることになる。即ち、
当該条件下では、(a)原料が、エリトロ形(I)、ま
たはエリトロ形が主成分であるエリトロ形(I)とトレ
オ形(I)との混合物である場合、エリトロ形をトレオ
形に異性化させることになり、(b)原料が、トレオ形
(I)、またはトレオ形が主成分であるエリトロ形
(I)とトレオ形(I)との混合物である場合、トレオ
形をエリトロ形に異性化させることになる。
【0040】「トレオ形(I)の塩およびエリトロ形
(I)の塩が溶解し易い条件」とは、トレオ形(I)の
塩およびエリトロ形(I)の塩が用いた溶媒中に実質的
に溶解していればよい。本発明の異性化で使用する試
薬、溶媒および塩基の種類やそれらの使用量などによっ
て当該条件を設定することができる。溶媒の使用量を増
やすことにより当該条件とすることもできるが、コスト
が高くなり、また反応釜も大きくする必要があるなど、
工業的には好ましい手段とは言えない。
【0041】本発明における炭酸カリウム以外の塩基と
しては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、
炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムメト
キシド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ
−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノ
ナ−5−エンが挙げられ、特に好ましくは水酸化ナトリ
ウムである。これらの塩基は、単独または2種以上を併
用してもよい。また、当該塩基は下記溶媒に溶解して系
中に添加してもよい。当該塩基の使用量は、酪酸化合物
(I)(エリトロ形(I)とトレオ形(I)との混合物
の場合にはそれらの和)に対して、通常1.5当量以上
であれば特に限定はなく、反応性の点から1.5当量〜
1.7当量が好ましい。当該使用量が、上記範囲より少
ない程、溶解状態にあるエリトロ形の塩とトレオ形の塩
の含有比が約1:1となるように異性化が起こり難くな
る。
【0042】塩基として炭酸カリウム以外の塩基を用い
た異性化における溶媒としては、エリトロ形(I)の塩
およびトレオ形(I)の塩が溶解するように適宜選択す
ればよく、塩基の種類により異なる。例えば塩基として
上記に例示した塩基を用い、トレオ形(I)の塩および
エリトロ形(I)の塩を溶解させる場合には、含水溶媒
を用いればよい。
【0043】含水溶媒としては、水単独か、または水と
混和する溶媒を含む場合には、好ましくは1〜30重量
%、より好ましくは10〜20重量%の水を含有してい
る溶媒が挙げられ、ここでいう水と混和する溶媒として
は、例えば低級アルコールが挙げられる。含水溶媒とし
ては、具体的には、水単独、低級アルコール水溶液(メ
タノール、エタノールなどの炭素数1〜3である直鎖状
または分岐鎖状アルコールおよび水からなる溶媒)が挙
げられ、当該低級アルコール水溶液としては、特にメタ
ノール水溶液が好ましい。
【0044】塩基として上記に例示した塩基を用い、ト
レオ形(I)の塩およびエリトロ形(I)の塩を溶解さ
せる場合には、低級アルコール単独溶媒を用いることも
できるが、塩基として水酸化カリウムを用いる場合の
み、その使用量を2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合
物に対して2.0当量を超える量にする必要がある。こ
れは、低級アルコール単独溶媒中、水酸化カリウムを酪
酸化合物(I)に対して1.5〜2.0当量作用させる
と、トレオ形(I)の塩が析出し易くなり、2.0当量
を超える量作用させるとトレオ形(I)の塩が溶解し易
くなるためである。当該低級アルコール単独溶媒として
は、メタノールが特に好ましい。
【0045】塩基として炭酸カリウム以外の塩基を用い
た異性化における溶媒の使用量は、目的物、用いる溶媒
の種類や塩基の種類とその量などによって適宜決めれば
よく、例えば、酪酸化合物(I)として2−ヒドロキシ
−3−ニトロ−4−フェニル酪酸、溶媒として10%メ
タノール水溶液、塩基として水酸化ナトリウムを使用
し、トレオ形(I)の塩およびエリトロ形(I)の塩を
溶解させる場合には、酪酸化合物(I)(エリトロ形
(I)とトレオ形(I)との混合物の場合にはそれらの
和)1gに対して、通常3〜20ml、好ましくは5〜
15mlの範囲の溶媒を使用すればよい。
【0046】塩基として炭酸カリウム以外の塩基を用い
た異性化は、溶媒や塩基の組み合わせなどにより異なる
が、通常0〜70℃、好ましくは20〜40℃で、通常
10分〜2時間、好ましくは20分〜1時間行う。
【0047】異性化後の液中にあるエリトロ形(I)お
よびトレオ形(I)は、例えば、エリトロ形(I)とト
レオ形(I)とを含む液を中和後、適当な有機溶媒(例
えば、酢酸エチルなど)により抽出して濃縮したもの
を、後述する「エリトロ形(I)とトレオ形(I)との
分離方法」によってそれぞれ分離することができる。
【0048】酪酸化合物(I)のエリトロ形とトレオ形
との分離方法 酪酸化合物(I)のエリトロ形とトレオ形との分離は、
溶媒中、酪酸化合物(I)のエリトロ形とトレオ形の混
合物に、トレオ形に対して1当量以下の炭酸カリウムを
作用させることを通して、容易に、かつ収率よく行うこ
とができる。具体的には、酪酸化合物(I)のエリトロ
形とトレオ形の混合物の溶液に、トレオ形に対して1当
量以下の炭酸カリウムを添加することにより、トレオ形
の塩およびエリトロ形の塩が生成するが、トレオ形の塩
のみが結晶となって析出し、エリトロ形の塩は溶液中に
溶解したままとなる。このため、これらを濾過などの通
常の手段で分離することができる。分離されたトレオ形
(I)の塩を常法(例えば、酸化合物(例えば、塩酸な
ど)による中和など)によってフリー体としたのち通常
の分離操作(例えば、抽出など)を行うことにより、ト
レオ形(I)を得ることができる。分離されたエリトロ
形(I)は塩基性溶液中にあるため、中和後、抽出や濃
縮などの常法によって取り出すことができる。
【0049】エリトロ形(I)は、単離後、さらに結晶
化に付すことにより純度を高めることができる。エリト
ロ形(I)の結晶化溶媒としては、芳香族炭化水素(例
えば、トルエン、ベンゼンなど)が挙げられ、経済面か
らトルエンが好ましい。結晶化溶媒の使用量は溶媒の種
類に依存し、例えばトルエンを使用する場合には、エリ
トロ形(I)1gに対して、通常2〜15g、好ましく
は5〜10gであればよい。
【0050】酪酸化合物(I)のエリトロ形とトレオ形
との分離に使用する溶媒としては、「塩基として炭酸カ
リウムを用いた異性化」で使用する溶媒と同様なものが
挙げられ、特にメタノールが好ましい。当該溶媒の使用
量は酪酸化合物(I)が溶解する量であればよく、溶媒
の種類などに依存する。メタノールを使用する場合に
は、使用する酪酸化合物(I)(エリトロ形とトレオ形
との混合物の和)1gに対して、通常3〜15ml、好
ましくは5〜12mlの範囲である。
【0051】酪酸化合物(I)のエリトロ形とトレオ形
との分離に使用する炭酸カリウムは、トレオ形(I)に
対して、通常1当量以下であれば特に限定はなく、好ま
しくは0.8〜1当量である。また、炭酸カリウムの使
用量に関する経済面からも、分離に使用する炭酸カリウ
ムの量は、トレオ形(I)に対して1当量以下が好まし
い。分離に使用する炭酸カリウムの量がトレオ形に対し
て1当量を超える場合、エリトロ形の一部が異性化して
トレオ形の塩(結晶)として析出することになる。
【0052】酪酸化合物(I)のエリトロ形とトレオ形
との分離は、通常0〜50℃、好ましくは10〜30℃
で、通常5〜24時間、好ましくは10〜17時間行
う。
【0053】以上から、トレオ形(I)が所望の化合物
である場合には、炭酸カリウムを塩基として用いた上記
異性化を利用するのが、容易にトレオ形(I)をほぼ1
00%で得ることができるため好ましい。また、エリト
ロ形(I)が所望の化合物である場合には、炭酸カリウ
ム以外の塩基を用いた上記異性化により得られた混合物
を用いて上記分離方法を利用してエリトロ形(I)を得
るのが、容易であり、かつ効率がよい点で好ましい。そ
して分離されたトレオ形(I)を、炭酸カリウム以外の
塩基を用いた上記異性化および上記分離に再度付すこと
を繰り返し行うことによって、出発原料をほぼ100%
のエリトロ形(I)にすることもできる。
【0054】本発明においてはいかなる方法で製造され
た酪酸化合物(I)でも使用することができ、製造方法
の一例としては特開昭56−108743号公報に記載
の方法が挙げられる。また、本発明における酪酸化合物
(I)としては、Rが水素原子である、2−ヒドロキシ
−3−ニトロ−4−フェニル酪酸を使用するのが好まし
い。
【0055】本発明により得られた光学活性な酪酸化合
物(I)のうち、トレオ形(I)からは、例えば特開昭
55−72151号公報記載の方法により、HIV免疫
賦活抗癌剤であるベスタチンを誘導でき、エリトロ形
(I)からは、例えばJournal of Medi
cinal Chemistry,1999,Vol.
42,1789−1802記載の方法に準じてHIVプ
ロテアーゼインヒビターであるJE−2147を誘導す
ることができる。
【0056】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではな
い。
【0057】実施例1(分離方法) 30mlのフラスコに、エリトロ形:トレオ形の含有比
が1:1.1(1H−NMR測定より)である2−ヒド
ロキシ−3−ニトロ−4−フェニル酪酸2g(8.9m
mol)をメタノール10mlに溶解し、これに炭酸カ
リウム0.31g(2.2mmol)を加えて室温で1
5時間攪拌した。反応液を濾過し、濾過物と濾液を得
た。得られた濾過物と濾液を、それぞれ、5N塩酸10
mlおよび酢酸エチル20ml中に加え、抽出洗浄し
た。分液して得られた各酢酸エチル層を飽和食塩水10
mlで洗浄した。濾過物からの酢酸エチル層は、硫酸マ
グネシウムで乾燥後に減圧濃縮に付し、結晶としてトレ
オ形2−ヒドロキシ−3−ニトロ−4−フェニル酪酸を
0.90g(4.0mmol)得た。濾液からの酢酸エ
チル層は、硫酸マグネシウムで乾燥後に減圧濃縮に付
し、その後トルエン2.71gから結晶化させ、結晶と
してエリトロ形2−ヒドロキシ−3−ニトロ−4−フェ
ニル酪酸を0.50g(2.2mmol)得た。得られ
た化合物の立体配置が、それぞれトレオ形、エリトロ形
であることは、以下の物性を有することから確認され
た。
【0058】トレオ形2−ヒドロキシ−3−ニトロ−4
−フェニル酪酸: 融点:99.5〜104.0℃ IR(KBr)ν(cm-1):3392,1734,1
557,13721 H−NMR(CDCl3)δ(ppm):7.37−
7.25(m,5H)、5.06(ddd,1H,J=
2.4,5.9,8.8Hz)、4.28(d,1H,
J=2.4Hz)、3.60(dd,1H,J=5.
7,13.7Hz)、3.35(dd,1H,J=9.
8,13.7Hz)
【0059】エリトロ形2−ヒドロキシ−3−ニトロ−
4−フェニル酪酸: 融点:105.9〜106.8℃ IR(KBr)ν(cm-1):3368,1741,1
556,13761H−NMR(CDCl3)δ(pp
m):7.73−7.16(m,5H)、5.06(d
dd,1H,J=3.4,8.3,6.8Hz)、4.
73(d,1H,J=3.4Hz)、3.52(dd,
1H,J=8.3,14.6Hz)、3.29(dd,
1H,J=6.8,14.6Hz)
【0060】実施例2(炭酸カリウムによる異性化方法
1) 30mlのフラスコに、メタノール8ml、炭酸カリウ
ム0.63g(4.5mmol)、エリトロ形:トレオ
形の含有比が1:1.1(1H−NMR測定より)であ
る2−ヒドロキシ−3−ニトロ−4−フェニル酪酸1g
(4.4mmol)を順次添加し、これにさらにメタノ
ール2mlを加えて室温で15時間攪拌した。反応液を
濾過し、濾過物を得た。得られた濾過物を5N塩酸20
mlおよび酢酸エチル20ml中に加え、抽出洗浄し
た。分液して得られた酢酸エチル層を飽和食塩水20m
lで洗浄した。これを硫酸マグネシウムで乾燥後に減圧
濃縮に付し、結晶としてトレオ形2−ヒドロキシ−3−
ニトロ−4−フェニル酪酸を0.85g(3.7mmo
l)得た。得られた化合物を1H−NMR測定した結
果、実施例1のトレオ形2−ヒドロキシ−3−ニトロ−
4−フェニル酪酸と同様の物性を有することが確認され
た。
【0061】実施例3(炭酸カリウムによる異性化方法
1) 30mlのフラスコに、メタノール8ml、炭酸カリウ
ム0.63g(4.5mmol)、エリトロ形:トレオ
形の含有比が1:1.1(1H−NMR測定より)であ
る2−ヒドロキシ−3−ニトロ−4−フェニル酪酸1g
(4.4mmol)を順次添加し、これにさらにメタノ
ール2mlを加えて室温で15時間攪拌した。反応液に
酢酸エチル20mlを加え、5N塩酸でpHを1とし
た。これを硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。
残渣を1H−NMRで測定した結果、2−ヒドロキシ−
3−ニトロ−4−フェニル酪酸のエリトロ形/トレオ形
の比率(モル)は95/5であった。
【0062】実施例4(水酸化ナトリウムによる異性化
方法1) 100mlのナス型フラスコに、トレオ形2−ヒドロキ
シ−3−ニトロ−4−フェニル酪酸2g(8.9mmo
l)をメタノール24mlに溶解し、これに20%水酸
化ナトリウム水溶液2.69g(13.4mmol)を
加えて室温で30分間攪拌した。攪拌後、これに5N塩
酸30mlを加え、酢酸エチル20mlで2回抽出し
た。有機層を飽和食塩水30mlで洗浄し、MgSO4
で乾燥させた。減圧濃縮後に、1H−NMR測定を行っ
た結果、エリトロ形:トレオ形=1:1.1の混合物が
得られていることが確認できた。
【0063】30mlのフラスコに、得られた混合物2
g(8.9mmol)をメタノール10mlに溶解し、
これに炭酸カリウム0.31g(2.2mmol)を加
えて室温で15時間攪拌した。攪拌後、濾過して濾過物
と濾液を得た。得られた濾過物と濾液を、それぞれ、5
N塩酸10mlおよび酢酸エチル20ml中に加え、抽
出洗浄した。分液して得られた各酢酸エチル層を、飽和
食塩水10mlで洗浄した。濾過物からの酢酸エチル層
は、硫酸マグネシウムで乾燥後に減圧濃縮に付し、結晶
としてトレオ形2−ヒドロキシ−3−ニトロ−4−フェ
ニル酪酸を0.90g(4.0mmol)得た。濾液か
らの酢酸エチル層は、硫酸マグネシウムで乾燥後に減圧
濃縮に付し、その後トルエン2.71gから結晶化さ
せ、結晶としてエリトロ形2−ヒドロキシ−3−ニトロ
−4−フェニル酪酸を0.50g(2.2mmol)得
た。得られた化合物の物性データは、実施例1のそれと
同じであった。このことにより、それぞれトレオ形、エ
リトロ形であることが確認された。
【0064】
【発明の効果】本発明の方法により、容易に、かつ収率
よく、酪酸化合物(I)のトレオ形またはエリトロ形を
異性化でき、これを利用することにより、トレオ形
(I)やエリトロ形:トレオ形の含有比が約1:1であ
るトレオ形(I)とエリトロ形(I)との混合物を容易
に、かつ収率よく製造することができる。また酪酸化合
物(I)のエリトロ形とトレオ形を容易に、かつ収率よ
く分離できるため、得られた混合物からトレオ形(I)
とエリトロ形(I)を容易に、かつ収率よく得ることが
できる。このため、HIV免疫賦活抗癌剤であるベスタ
チン、HIVプロテアーゼインヒビターであるJE−2
147などの有用な医薬品を容易に、かつ収率よく得る
ことができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07C 205/53 C07C 205/53 (72)発明者 板谷 信重 大阪市西淀川区歌島3丁目1番21号 住化 ファインケム株式会社総合研究所内 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC46 AC51 AC82 AD15 BA02 BA29 BA32 BA51 BB11 BB14 BB31 BC10 BC19 BC34 4H039 CA65 CA72 CJ10 CJ20

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 溶媒中、式(I) 【化1】 (式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキルまた
    は置換基を有していてもよいアリールを示す) で表される2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物に、
    塩基を2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物に対して
    1当量以上作用させて、 2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリトロ形
    をトレオ形に異性化させるか、または 2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のトレオ形を
    エリトロ形に異性化させる、ことを含むことを特徴とす
    る、2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のトレオ
    形、または2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物の、
    エリトロ形:トレオ形の含有比が約1:1であるトレオ
    形とエリトロ形との混合物、を製造する方法。
  2. 【請求項2】 溶媒中、式(I) 【化2】 (式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキルまた
    は置換基を有していてもよいアリールを示す)で表され
    る2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物の、エリトロ
    形、またはエリトロ形とトレオ形との混合物に、炭酸カ
    リウムを2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物に対し
    て1当量以上作用させて、エリトロ形をトレオ形に異性
    化させることを含むことを特徴とする、2−ヒドロキシ
    −3−ニトロ酪酸化合物のトレオ形の製造方法。
  3. 【請求項3】 Rが置換基を有していてもよいフェニル
    である、請求項2記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 溶媒が低級アルコールである、請求項2
    記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 溶媒がメタノールである、請求項2記載
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 溶媒中、式(I) 【化3】 (式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキルまた
    は置換基を有していてもよいアリールを示す)で表され
    る2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物の、トレオ形
    の塩およびエリトロ形の塩が溶解し易い条件下、原料で
    ある式(I)の2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物
    の、エリトロ形、トレオ形、またはエリトロ形とトレオ
    形との混合物に、炭酸カリウム以外の塩基を2−ヒドロ
    キシ−3−ニトロ酪酸化合物に対して1.5当量以上作
    用させて、 2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリトロ形
    をトレオ形に異性化させるか、または 2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のトレオ形を
    エリトロ形に異性化させる、ことを含むことを特徴とす
    る、2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物の、エリト
    ロ形:トレオ形の含有比が約1:1であるトレオ形とエ
    リトロ形との混合物の製造方法。
  7. 【請求項7】 Rが置換基を有していてもよいフェニル
    である、請求項6記載の製造方法。
  8. 【請求項8】 塩基が水酸化カリウム、水酸化ナトリウ
    ム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウム
    メトキシド、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウ
    ンデ−7−エンおよび1,5−ジアザビシクロ[4.
    3.0]ノナ−5−エンからなる群より選ばれる少なく
    とも1種である、請求項6記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 塩基が水酸化ナトリウムである、請求項
    6記載の製造方法。
  10. 【請求項10】 (a)原料が、式(I)の2−ヒドロ
    キシ−3−ニトロ酪酸化合物の、エリトロ形、またはエ
    リトロ形が主成分であるエリトロ形とトレオ形との混合
    物である場合、エリトロ形をトレオ形に異性化させるこ
    とを含み、(b)原料が、式(I)の2−ヒドロキシ−
    3−ニトロ酪酸化合物の、トレオ形、またはトレオ形が
    主成分であるエリトロ形とトレオ形との混合物である場
    合、トレオ形をエリトロ形に異性化させることを含む、
    請求項6記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 原料が、式(I)の2−ヒドロキシ−
    3−ニトロ酪酸化合物の、エリトロ形、またはエリトロ
    形が主成分であるエリトロ形とトレオ形との混合物であ
    る場合、エリトロ形をトレオ形に異性化させることを含
    む、請求項6記載の製造方法。
  12. 【請求項12】 溶媒が含水溶媒である、請求項6記載
    の製造方法。
  13. 【請求項13】 含水溶媒が水単独である、請求項12
    記載の製造方法。
  14. 【請求項14】 含水溶媒が低級アルコール水溶液であ
    る、請求項12記載の製造方法。
  15. 【請求項15】 含水溶媒がメタノール水溶液である、
    請求項12記載の製造方法。
  16. 【請求項16】 溶媒中、式(I) 【化4】 (式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキルまた
    は置換基を有していてもよいアリールを示す)で表され
    る2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリトロ形
    およびトレオ形混合物に、トレオ形に対して1当量以下
    の炭酸カリウムを作用させることを含むことを特徴とす
    る、2−ヒドロキシ−3−ニトロ酪酸化合物のエリトロ
    形とトレオ形とを分離する方法。
  17. 【請求項17】 溶媒が低級アルコールである、請求項
    16記載の分離方法。
  18. 【請求項18】 溶媒がメタノールである、請求項16
    記載の分離方法。
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