JP2001242078A - 劣化診断方法及び装置 - Google Patents

劣化診断方法及び装置

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JP2001242078A
JP2001242078A JP2000055521A JP2000055521A JP2001242078A JP 2001242078 A JP2001242078 A JP 2001242078A JP 2000055521 A JP2000055521 A JP 2000055521A JP 2000055521 A JP2000055521 A JP 2000055521A JP 2001242078 A JP2001242078 A JP 2001242078A
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Yukihiro Etsuno
幸広 越野
Masaru Nishitoba
勝 西鳥羽
Itsuki Umeda
逸樹 梅田
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NGK Insulators Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ポリマーがいしの外被部分の劣化度をより正確
に診断することのできる劣化診断方法及び装置を提供す
る。 【解決手段】コア12と、コア12の周囲に設けられた
シリコーンゴムからなる外被13とからなるポリマーが
いし11の外被部分の劣化度を診断する方法であって、
外被部分に対し赤外分析を行うことで赤外スペクトルを
求め、求めた赤外スペクトルの分布において、外被のピ
ークを基準ピークとし、劣化により外被表面に新たに生
成する物質のピークを参照ピークとし、参照ピーク/基
準ピークの比を指標として劣化度を診断する。また、上
述した劣化診断方法を実施する演算部を有する携帯型の
赤外分析計と、赤外分析計の先端に取り付けた赤外分析
用の光学結晶を具備した光ファイバとから劣化診断装置
を構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コアと、コアの周
囲に設けられたシリコーンゴムからなる外被とからなる
ポリマーがいしの外被部分の劣化度を診断する方法及び
装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、一部の国では送電、変電分野にお
いて磁器製がいしに替わりポリマーがいしが使われてき
ており、米国送電線市場におけるシェアは20%以上で
ある。ポリマー碍子の歴史は1940年代に始まるが、
現行の材料、デザインは20年ほど前から使用されてい
る。ポリマーがいしは主要構成部分が有機物であるた
め、経年劣化は避けられない。従って、ポリマーがいし
の劣化診断技術を検討し、寿命予測法を確率することは
信頼性向上の観点から非常に重要である。
【0003】従来、劣化解析手法としてはさまざまな報
告があり、これらの報告の中ではSEM(走査型電子顕
微鏡)、EDX(エネルギー分散型X線分析)、XPS
(X線光電子分光分析)などの有効性が述べられてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ポリマーがいしにおけ
る外被劣化の進展度は、使用環境によって大きく異なる
ことが予想されるが、有効な劣化診断法、寿命予測法が
確立されていないのが現状である。寿命予測の考え方と
しては、トラッキング、エロージョン及びクラックを伴
わない初期段階の劣化形態とその進展状況を正確に把握
することが重要である。一方、実際のフィールドでは汚
損物の付着があるため、この影響が無視できず、汚損物
がうまく除去できない状態で表面分析を行うことは誤っ
た結果を与えかねない。
【0005】本発明の目的は上述した課題を解消して、
ポリマーがいしの外被部分の劣化度をより正確に診断す
ることのできる劣化診断方法及び装置を提供しようとす
るものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の劣化診断方法
は、コアと、コアの周囲に設けられたシリコーンゴムか
らなる外被とからなるポリマーがいしの外被部分の劣化
度を診断する方法であって、外被部分に対し赤外分析を
行うことで赤外スペクトルを求め、求めた赤外スペクト
ルの分布において、外被のピークを基準ピークとし、劣
化により外被表面に新たに生成する物質のピークを参照
ピークとし、参照ピーク/基準ピークの比を指標として
劣化度を診断することを特徴とするものである。
【0007】また、本発明の劣化診断装置は、ポリマー
がいしの外被表面の劣化を診断するための装置であっ
て、上述した劣化診断方法を実施する演算部を有する携
帯型の赤外分析計と、赤外分析計の先端に取り付けた赤
外分析用の光学結晶を具備した光ファイバとからなるこ
とを特徴とするものである。
【0008】本発明を達成する前提として、すでに本発
明者は人工的試験でコロナ放電と湿気により硝酸が精製
することを解明してきた。この硝酸はシリコーンゴムに
配合されているATH(3水和アルミナ)を溶出させ、
硝酸アルミニウムが表面に付着することも解明した。以
上の知見はあくまで人工試験での結果であり、実際に使
われているポリマーがいしにおいてはどのようであるか
は全く未知であった。
【0009】そこで、本発明では、実際に使われている
ポリマーがいしについての劣化診断方法を見い出すた
め、コロナ放電による外被劣化の診断技術を詳細に調べ
た。その結果、赤外分析を使用すること及び前処理とし
て所定の洗浄を行うことを見い出した。すなわち、前処
理については、実際のフィールドでは汚損物が付着する
が、シリコーンゴム外被の場合この汚損物からしみ出す
LMW(低分子シリコーン)が覆ってしまい、うまく除
去できないという問題が分析以前にあった。そこで汚損
物除去方法を検討し、MIBK(メチルイソブチルケト
ン)と水による超音波洗浄が効果的であり好ましいこと
を見い出した。また、コロナ放電によって付着した硝酸
アルミニウムの付着量を赤外分析で分析し、指標化する
ことで人工試験とフィールド品の相関を把握することが
できた。これにより、そのフィールドで使用されている
年数が判っているポリマーがいしを分析すれば、そのポ
リマーがいしにトラッキング、エロージョン、クラック
が発生するまでの時間を算出でき、劣化診断を行うこと
ができることを見い出した。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は本発明の劣化診断方法の一
例を説明するためのフローチャートである。図1に従っ
て本発明を説明すると、まず、前処理としてポリマーが
いしの外被を洗浄する。これは、実際のフィールドでポ
リマーがいしの外被に付着した汚損物を除去し、表面分
析の精度を向上させるためである。洗浄については後に
詳細に説明する。次に、ポリマーがいしの外被に対する
赤外分析を行うことで赤外スペクトルを求める。次に、
求めた赤外スペクトルの分布において、外被のピークを
基準ピークとして求めるとともに、劣化による外被表面
に新たに生成する物質のピークを参照ピークとして求め
る。これらの基準ピークと参照ピークについては後に詳
細に説明する。次に、求めた基準ピークと参照ピークと
から、参照ピーク/基準ピークを計算し指標として求め
る。その後、予め人工的に求めたコロナ劣化加速試験に
おける上記指標と各種欠陥の発生(エロージョン発生、
トラッキング発生、クラック発生)の有無との関係に基
づき、実際に劣化診断するポリマーがいしの指標から各
種欠陥の発生時期(エロージョン発生時期、トラッキン
グ発生時期、クラック発生時期)を予測することで、劣
化診断を行っている。なお、図1に示す例では洗浄を行
うこととして説明したが、外被が汚れていない場合には
洗浄せず、そのまま劣化診断が可能である。
【0011】図2は本発明の劣化診断装置を使用してポ
リマーがいしに対し劣化診断を行う状態の一例を示す図
である。図2に示す例において、劣化診断装置1は、携
帯型の赤外分析計2と、赤外分析計2の先端に取り付け
た赤外分析用の光学結晶を具備した光ファイバ3とから
構成されている。また、赤外分析計2は上述した本発明
の劣化診断方法を実施する演算部4を備えている。そし
て、FRPコア12とFRPコア12の外周に設けた例
えばシリコーンゴムからなる外被13とからなるポリマ
ーがいし11の外被13に対し、劣化診断装置1の光フ
ァイバ3の先端から赤外線を照射し、外被13で反射し
た赤外線を受け取ることで赤外分析を実施する。
【0012】以下、上述した本発明の劣化診断方法及び
装置における、汚損物除去方法の検討、分析法の選択及
び実際の劣化試験の例について、順に説明する。
【0013】まず、説明に先立って本発明における劣化
の定義について説明する。劣化とはミクロ的には表面組
成が初期と異なることを指し、マクロ的にはトラッキン
グ、エロージョン、クラックなどの現象を指し、非常に
幅広い。劣化診断、寿命予測の考え方としては、図3に
示すように外被にトラッキング・エロージョン、クラッ
クなどが起こる以前のミクロ的劣化、すなわち第1段階
の劣化があり、この段階の外被を分析することで各環境
における劣化現象とその進展度を把握できると考えられ
る。第2段階としてトラッキング・エロージョン、クラ
ックなど目で見えるマクロ的劣化現象の発生と進展があ
る。第1段階から第2段階に移るまでの時間と、第2段
階の劣化進展度より、がいしが機能しなくなるまでの時
間、すなわち寿命が推測できると思われる。
【0014】1.汚損物除去方法の検討について 1−1 試料 フィールドで付着する汚損物の種類はその環境により異
なるが、大別すると砂塵的なものと煤煙などに代表され
るようなカーボンを含む粘着性のあるものの2つになる
と考えられる。本報では砂塵的な汚損物の代表として砂
漠地域で1年間使用されたがいし、ESDD (Equivalent S
alt Deposit Density,等価塩分付着密度) 0.06mg/cm
2 、NSDD (Non Soluble Deposit Density, 不溶性物質
付着密度, 0.45 mg/cm2)と粘着性のある付着物の代表と
して工業地区で3.4 年間使用されたがいしから切り出し
た試料を用いて実験した。形状は外被笠から切り出した
扇状であり、表面積は約10cm2である。外被材は同じで
あり、充填剤としてATH (Alumina Tri-hydrate , 3水和
アルミナ)を含む高温加硫型シリコーンゴム(HTV)であ
る。
【0015】1−2洗浄溶媒 イオン交換水、親水性溶媒としてエタノール、イソプロ
パノール、アセトン、新油性溶媒としてMIBK(Methyl-is
o-butyl ketone) 、トルエン、n-ヘキサン、キレート生
成効果を狙った DL-酒石酸飽和エタノール、0.1M-EDTA-
2Na (Ethylenediaminetetraacetic Acid, Disodium Sal
t)水溶液、及び洗剤効果を期待したイオン交換水+0.1%
iso-octylphenoxypolyethoxyethanol、 及びエタノール
+0.1% iso-octylphenoxypolyethoxyethanol を洗浄溶媒
として検討した。iso-octylphenoxypolyethoxyethanol
は非イオン性界面活性剤である。
【0016】1−3洗浄方法とその効果確認法 洗浄方法は各溶媒約50mlを100ml のガラス製ビーカーに
入れ、水道水を入れた超音波洗浄器で10分間洗浄した。
洗浄後、試料をピンセットで取り出し、表面の汚損物の
除去状態を目視で観察して、汚損物を除去できた面積割
合で評価した。
【0017】1−4汚損物除去溶媒の検討結果 以下の表1に各溶媒で試料を洗浄した後の汚損物除去割
合を示す。数字が大きい方が洗浄効果が大きいことを示
す。これより砂塵タイプの汚損物はイオン交換水での洗
浄が最も効果的であることがわかった。これは付着して
いる汚損物の大半が粒径が比較的大きく且つ親水性の砂
塵であるため、除去しやすかったものと考えられる。一
方、粘着性の汚損物についてはMIBK, トルエン, n-ヘキ
サンなどの有機溶媒が効果的であったが、その中でもMI
BKが優れていた。同じケトン類でもアセトンでは洗浄効
果がそれほど高くなかった。また、この様な粘着性の汚
損付着物上にはLMWが滲み出していると思われるので、
このLMWを除去できる溶媒が洗浄にも有効に左右すると
考えられる。
【0018】汚損物が付着していないゴムシートを代表
的な溶媒に浸漬して、その重量減少を検討した。結果を
図4に示すが、検討した有機溶媒はいずれも同程度のLM
W 抽出効果であった。ジクロロメタンを用いればLMW が
抽出できるという報告があり、その観点からすればどの
溶媒を用いてもLMW が抽出できていると言える。MIBKも
ジクロロメタンと同じ抽出効果を示した。これらの結果
より、シリコーンゴム製外被付着物の洗浄除去方法とし
ては、初めにMIBKで10分間超音波洗浄し、ドラフト内、
室温で一昼夜放置してMIBKを蒸発させる。ついで、イオ
ン交換水で10分間超音波洗浄して風乾させるという方法
を用いると好ましいことがわかった。
【0019】
【表1】
【0020】2.分析法の選択について 2−1ゴム試料 分析法検討に際しては、170℃でプレスキュアーした
2mm厚のHTV シリコーンゴムシートを試料として用い
た。このシリコーンゴムはシリコーンポリマー、シリカ
及びATHからなるのもである。発明者らはこれまでコ
ロナ放電により、硝酸が生成し、その硝酸が充填剤のA
THを溶出させ、最終的にクラックを発生させることを
報告している。今回はこれを模擬し、クラックを伴わな
い第1段階の劣化を再現させる条件として、ゴムシート
を1N−硝酸に24時間浸漬した。試料を取り出し後、
イオン交換水で十分に洗浄して、60℃で8時間真空乾
燥して試料とし、この表面を各法で分析した。
【0021】2−2分析機器 これまで報告されている文献を元に、下記3種の分析機
器を用いて比較検討した。 1.EDX(エネルギー分散型X線分析装置) 日本電子製JED-2001 2.XPS(X線光電子分光分析装置) フィジカルエレクトロニクス社製ESCA 5700 3.多重反射赤外顕微鏡付きフーリエ変換型赤外分析計 パーキンエルマー社製 Spectrum GX 2000 多重反射法に用いた光学結晶はGe。角度:45度。以下こ
の方法をμ-FT-IR-ATRと略記する。以下の表2に比較検
討した3つの分析方法、すなわちEDX,XPS,μ-FT-IR-ATR
の特徴をまとめた。
【0022】
【表2】
【0023】2−3分析法の選定 シリコーンゴムシートを1N−硝酸に24時間浸漬した
後のEDX,XPS,μ-FT-IR-ATRの各分析法で得られたチャー
ト、スペクトルを図5〜図7に示す。表2と図5〜図7
を考え合わせると次のことがわかる。
【0024】EDX では表面に存在する元素とその量の把
握はできる。図5からも硝酸浸漬前後でSiのピーク高
さ、面積は変化していないが、Alのピーク高さ、面積は
浸漬後では減少している。しかし、EDX では検出された
元素がどのような化合物となって存在しているかはわか
らない。例えばATHが酸化されて他の化合物に変化し
た場合など、その判別が困難である。また、装置の原理
上、低原子量側の元素に対しては感度が悪く、カーボン
の分析は誤差が大きくなる可能性が大きい。また、試料
の前処理として金蒸着が必要であり、更に測定は高真空
下で行われるため、数多くの試料を測定するには時間を
要す。
【0025】XPS は表面に存在する元素の結合エネルギ
ーを測定することで目的元素がどのような元素と結合し
ているかを知ることができる。しかしながら、シリコー
ンゴムの場合、Si原子に結合している元素には酸素(O)
、炭素(C) があり、Oの中でも、シリコーンポリマー
主鎖Si-O-Si と充填剤のシリカSiO2 があり、これらの
結合エネルギーをうまく分離して、存在割合を算出する
ことは難しい。また、電子線の脱出深さが、表面から数
nmと非常に浅く、付着汚損物の影響が大きいと考えられ
る。この方法は付着汚損物の上に滲み出してくるLMW の
様子を見るなどの研究には適していると思われるが、フ
ィールドで劣化した外被の劣化モート゛を把握するのには効
果的でないと考えられる。図6より、実際に硝酸浸漬後
の表面分析結果からはAlピークに対する感度が悪く、場
所によってはAlの存在割合が初期より多くなっている所
も見受けられた。
【0026】μ-FT-IR-ATRは深さ方向の分解能が2−5
μmとEDX とほぼ同等、XPS よりかなり深く、付着汚損
物がある程度除去できれば情報は得られる。また、得ら
れる情報が元素単独ではなく、官能基や分子の状態に関
するものであり、これらのピークはそれぞれ固有の波数
位置に複数出現するので、判別し易いという利点があ
る。更に、通常の雰囲気下、常圧で測定でき、煩雑な試
料の前処理も不要なことから、汎用性が最も大きい。胴
部の様な湾曲した試料の微小劣化領域でも簡単に測定す
ることができる。図7から、表面のATHは硝酸浸漬す
ることで減少するが、他のピークは殆ど変化していない
ことがわかる。また、将来現場での劣化診断を考慮すれ
ば、光ファイバーを取付可能で、装置もコンパクト化が
期待できる本法が最有力であると考えた。
【0027】3.劣化試験の実験方法 3−1供試試料 コロナ放電試験用ポリマーがいしの形状を図8に示す。
笠枚数4枚、胴部の直径約26mm、笠の直径約130mm 、が
いし有効長約200mm 、全長約450mm であり、漏れ距離は
約560mm である。図8中の〜の位置で試料を採取
し、分析に供した。フィールド撤去品は同じ笠形状で長
さの異なる海岸地区の試料A(2年使用)、砂漠地区の
試料B(3年使用)、清浄地区の試料C(2年使用)の
3試料を用いた。コロナ放電試験用ポリマーがいし、フ
ィールド撤去品とも外被ゴムの材質はいわゆるHTV-SiR
(高温加硫型シリコーンゴム)であり、補強剤としてシ
リカ、充填剤としてATHを含むものである。
【0028】3−2コロナ放電試験 今回のコロナ劣化加速試験は次の条件下で実施した。3
−1の試料3本を約6.5m X 0.9m X 2.7mの試験室に垂直
に配置し、3-5l/min. の霧 (導電率100μS/cm)を連続的
に発生させ、ポリマーがいし試料の下側より交流30kVを
印加した。試験開始後、840,2000,3100 時間で各1本を
取り外し、各部位の劣化状態をμ-FT-IR-ATR法にて分析
した。
【0029】3−3試料前処理と分析機器 これまでの研究やその他の報告から、劣化は電界の厳し
い課電側胴部で起こりやすいことがわかっている。従っ
て、本研究でも胴部からの試料採取を中心とし、笠部か
らの採取は課電側の笠裏1箇所にとどめた。採取は試料
を試験室から取り外し、各部位の劣化が最も進行してい
ると思われる所から、50-100mm2,厚さ約1mm をナイフで
切り出した。切り出した試料の前処理は硝酸アルミニウ
ムが水に溶け易いことを考慮して、洗浄しない場合と、
MIBK (4-Methyl-2-pentanone(Methyl Iso-butyl Keton
e) とイオン交換水による超音波洗浄を実施した場合に
ついて検討した。
【0030】赤外分析計は下記を使用した。パーキンエ
ルマー社製 Spectrum GX 2000, 赤外顕微鏡付き。本報
ではATR法を組み合わせて使用した。実際の測定に際し
ては下記の条件を用いた。 ・測定面積:100μm X 100μm ・測定回数:64回 ・分解能:4cm-1 ・ATR結晶:Ge、先端の傾斜角度:45度
【0031】4.実験結果と考察 4−1コロナ放電試験による表面劣化 図9に試薬級の硝酸アルミニウム(a) 、試験前の外被ゴ
ム(b) 及び本コロナ放電試験840時間(C) 、2000
時間経過後試料(d) の洗浄前の赤外スペクトルを示す。
コロナ放電試験供試品の試料採取位置は課電側胴部であ
る。硝酸アルミニウムは臭化カリウム結晶に混ぜてペレ
ットにして、その他の試料はそのままμ-FT-IR-ATR法で
測定した。また、硝酸アルミニウムと試験前のシリコー
ンゴムのピークの帰属を以下の表3に示す。
【0032】
【表3】
【0033】図9及び表3から次のことがわかる。 ・試験840時間後ではATHの吸収が小さくなり、*3
のピークが現れるとともに、*4の位置にもショルダーが
出現する。 ・試験2000時間後ではATHのピーク位置の吸収が
ブロードになり、試験前には観測されている4本のピー
クが完全に消滅している。また、*3, *4のピークが鮮明
に現れている。更に*2の位置にもピークが現れつつあ
る。これらのことより、本コロナ放電試験により、表面
には硝酸アルミニウムが生成、付着しており、その量は
試験時間と共に増していることがわかる。ここでコロナ
放電試験における硝酸アルミニウムの付着度合いを示す
指標として、*3と*8のピーク比、すなわち*3/*8が最適
なことがわかった。これは*3のピーク位置がシリコーン
ゴムが持つピークとは全く異なる位置にあること、*8の
ピークすなわちシリコーンポリマー側鎖のSi-CH3が試験
が進行しても変化が少ないことによる。790cm-1の*11の
ピークも変化が少ないがこのピークは硝酸アルミニウム
の*5のピークと重なるので誤差要因となると考えられ
る。
【0034】4−2コロナ放電試験供試品各部位の分析 コロナ放電試験840時間経過した試料の各部位につい
てμ-FT-IR-ATR分析を実施し、上記指標をプロットした
結果を図10に示す。分析部位は課電側から図8の→
→→→の順である。これより、上記指標とも課
電側の数値が大きく、硝酸アルミニウムの付着が大きい
ことを示している。これはすなわち課電側ではコロナ放
電発生頻度が高いことを示唆する。本コロナ放電試験に
おけるコロナ劣化指標の経時変化を図11に示す。図1
0より、コロナ劣化指標は課電端胴部で最も大きかった
ので、ここでは課電端胴部のコロナ劣化指標のみをプロ
ットした。また、上述した手順に従って洗浄した試料に
ついても測定を行い、劣化指標を算出してプロットし
た。劣化指標は洗浄有無に関わらず、試験時間とともに
増加した。
【0035】4−3フィールド供試品の分析 上述した方法に従ってフィールド供試品を分析した結果
を図12に示す。データは全て洗浄前のものである。試
料Bについては課電側、中央部、アース側の各胴部で、
試料A、Cについては課電側胴部のみで試料採取し、測
定に供した。これより、コロナ劣化指標は使用環境の汚
損度が大きいほど大きく、汚損が厳しい所ほどコロナ放
電などの放電が起きやすく、結果として表面に多くの硝
酸アルミニウムが付着している。図10と比べてフィー
ルド供試品の指標は0.04-0.12 と図10のコロナ放電試
験の750-1400時間程度に相当する。指標を元に本コロナ
放電試験とフィールド撤去品で加速倍率を試算すると、
試料Aで56倍、試料Bで12倍、試料Cで18倍となる。こ
のように加速倍率は12−56倍と大きな差があるが、これ
は撤去地区の違いや、データ数が不足しているためと考
えられる。
【0036】5.劣化診断について 以上の実験結果と考察の項の結果に基づき、上述したコ
ロナ放電試験開始後0、50、200、500、100
0、2000、3000時間のポリマーがいしの課電側
胴部表面において、基準ピークとして波数1260cm
−1のシリコーンゴム側鎖のものを使用し、参照ピーク
として波数1632cm−1の硝酸アルミニウムのもの
を使用し、参照ピーク/基準ピークの比をコロナ劣化指
標として求め、同時に各時点でのエロージョン発生有
無、クラック発生有無、トラッキング発生有無を調べ
た。結果を以下の表4に示す。この結果を元に、各フィ
ールド品について求めたコロナ劣化指標からエロージョ
ン発生時期、クラック発生時期、トラッキング発生時期
をそれぞれ予測した。すなわち、海岸地区(2年使用)
のコロナ劣化指標は0.19であり、そのエロージョン
は指標が0.33から0.56の間で発生するため、エ
ロージョン発生予測を(0.33/0.19)×2年か
ら(0.56/0.19)×2年の間から若干安全率を
考えてそれよりも若干広いほぼ5−10年とした。以
下、各欠陥の発生予測は同様の計算による。
【0037】
【表4】
【0038】これにより、ポリマーがいしに対し赤外分
析を行い所定の指標を求めることで、エロージョン発生
時期、クラック発生時期、トラッキング発生時期を予測
できることがわかった。
【0039】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、外被部分に対し赤外分析を行うことで赤外ス
ペクトルを求め、求めた赤外スペクトルの分布におい
て、外被のピークを基準ピークとし、劣化により外被表
面に新たに生成する物質のピークを参照ピークとし、参
照ピーク/基準ピークの比を指標として劣化度を診断し
ているため、フィールドで使用されている使用年数が判
っているポリマーがいしを分析すれば、そのポリマーが
いしにトラッキング、エロージョン、クラックが発生す
るまでの時間を算出でき、劣化診断を行うことができ
る。また、前処理として、MIBKと水による超音波洗
浄が効果的で好ましいことが判った。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の劣化診断方法の一例を説明するための
図である。
【図2】本発明の劣化診断装置を使用してポリマーがい
しに対し劣化診断を行う状態の一例を示す図である。
【図3】本発明における劣化の概念を説明するための図
である。
【図4】各種の洗浄液における浸漬時間と重量減少との
関係を示す図である。
【図5】EDXスペクトルの一例を示すグラフである。
【図6】XPSスペクトルの一例を示すグラフである。
【図7】赤外スペクトルの一例を示すグラフである。
【図8】コロナ放電試験に用いたポリマーがいしを示す
図である。
【図9】コロナ放電試験後の外被表面のμ−FT−IR
−ATRスペクトルの一例を示すグラフである。
【図10】図8に示すポリマーがいしにおける試料採取
位置とコロナ劣化指標との関係を示すグラフである。
【図11】コロナ放電試験におけるコロナ劣化指標の経
時変化を示すグラフである。
【図12】フィールド供試品を分析した結果を示すグラ
フである。
【符号の説明】
1 劣化診断装置、2 赤外分析計、3 光ファイバ、
4 演算部、11 ポリマーがいし、12 FRPコ
ア、13 外被
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 梅田 逸樹 愛知県名古屋市瑞穂区須田町2番56号 日 本碍子株式会社内 Fターム(参考) 2G059 AA05 DD01 EE12 HH01 HH06 JJ17 MM04 MM05

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コアと、コアの周囲に設けられたシリコー
    ンゴムからなる外被とからなるポリマーがいしの外被部
    分の劣化度を診断する方法であって、外被部分に対し赤
    外分析を行うことで赤外スペクトルを求め、求めた赤外
    スペクトルの分布において、外被のピークを基準ピーク
    とし、劣化により外被表面に新たに生成する物質のピー
    クを参照ピークとし、参照ピーク/基準ピークの比を指
    標として劣化度を診断することを特徴とする劣化診断方
    法。
  2. 【請求項2】前記赤外分析の前処理として、シリコーン
    ゴムからなる外被に付着した汚損物をメチルイソブチル
    ケトンと水を用いた超音波洗浄を行う請求項1記載の劣
    化診断方法。
  3. 【請求項3】前記基準ピークとして波数1260cm
    −1のシリコーンゴム側鎖のものを使用するとともに、
    前記参照ピークとして波数1632cm−1の硝酸アル
    ミニウムのものを使用する請求項1または2記載の劣化
    診断方法。
  4. 【請求項4】予め人工的に求めたコロナ劣化加速試験に
    おける前記指標とエロージョン発生、トラッキング発
    生、クラック発生の有無との関係に基づき、実際に劣化
    診断するポリマーがいしから求めた前記指標からエロー
    ジョン、トラッキング、クラックの発生予測時期を求め
    ることで劣化度を診断する請求項1〜3のいずれか1項
    に記載の劣化診断方法。
  5. 【請求項5】ポリマーがいしの外被表面の劣化を診断す
    るための装置であって、請求項1〜4のいずれか1項に
    記載の劣化診断方法を実施する演算部を有する携帯型の
    赤外分析計と、赤外分析計の先端に取り付けた赤外分析
    用の光学結晶を具備した光ファイバとからなることを特
    徴とする劣化診断装置。
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