JP2001238555A - アミノ酸組成が改良されたトランスジェニック植物の作出法 - Google Patents

アミノ酸組成が改良されたトランスジェニック植物の作出法

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JP2001238555A JP2000404172A JP2000404172A JP2001238555A JP 2001238555 A JP2001238555 A JP 2001238555A JP 2000404172 A JP2000404172 A JP 2000404172A JP 2000404172 A JP2000404172 A JP 2000404172A JP 2001238555 A JP2001238555 A JP 2001238555A
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Abstract

(57)【要約】 【解決課題】 植物の可食部分における遊離アミノ酸、
特にグルタミン酸、アルパラギン、アスパラギン酸、セ
リン、スレオニン、アラニン、およびヒスチジンの少な
くとも一つの遊離アミノ酸を高度に蓄積するトランスジ
ェニック植物およびその作出方法を提供する。 【解決手段】 グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GA
D)遺伝子をアンチセンス方向に、植物細胞における遺
伝子発現のために適切な制御配列と共に植物に導入し、
GAD遺伝子の発現を抑制する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遊離アミノ酸含量
が増強されたトランスジェニックトマトの作製方法、作
製されたトランスジェニックトマトに関する。より具体
的には、本発明は、アスパラギン、アスパラギン酸、セ
リン、スレオニン、アラニン、ヒスチジンおよびグルタ
ミン酸の少なくとも1つを高蓄積するトランスジェニッ
クトマトの作製方法およびその方法により作製されたト
ランスジェニックトマトに関する。
【0002】
【従来の技術】植物に特定の遺伝子を導入し形質転換さ
せる技術が世界で初めて報告されたのは土壌細菌、Ag
robacterium tumefaciensを用
いてタバコに遺伝子を導入した研究であり、その後多く
の有用農業形質を付与した作物が作出され、植物に有用
成分を作らせる試みも行われてきた。このようなトラン
スジェニック植物作成技術を用いた植物育種法は、交配
等による従来の伝統的な育種に代わるものとして有望視
されている。その中で窒素同化に関する植物の特性改良
の研究も進められてきており、特にアミノ酸は窒素代謝
産物の中でも果実、根菜類の根、種子などにおいて重要
な成分であり、また食味にも大きく影響を与えることか
ら盛んに研究が行われてきている。
【0003】アミノ酸の生合成に関する研究としては、
例えば、大腸菌由来DHDPS遺伝子をタバコに導入
し、遊離リジンが200倍上昇したという報告(米国特
許第5258300号、Molecular Gene
tics Res.& Development)、A
K遺伝子の導入により遊離リジンが増加したという報告
(EP485970,WO9319190)、AS遺伝
子をタバコに導入し、Asn含量が100倍上昇したと
いう報告(WO 9509911,Univ New
York,WO 901533, Univ Rock
feller)、アントラニル酸合成酵素をイネに導入
しトリプトファン含量が90倍上昇したという報告(W
O 9726366,DEKALB Genetic
Corp)がなされている。遺伝子導入の対象となる植
物はタバコ、シロイヌナズナ等のモデル植物に限られ
ず、トマトなどの果実をもつ植物も利用されている。例
えば、トマトについては1986年にアグロバクテリウ
ム法を用いて形質転換体が作出され(S.McCorm
ick,J.Niedermeyer,J.Fry,
A.Barnason,R.Horsch and
R.Fraley,Plant Cell Repor
ts,5,81−84(1986);Y.S.Chy
i,R.A.Jorgenson,D.Goldste
rn,S.D.Tarksley and F.Loa
iza−Figueroe,Mol.Gen.Gene
t.,204,64−69(1986))、それ以来形
質転換系の改良がなされてきている。また、アミノ酸生
合成、窒素同化に関与する遺伝子は上述の他にも多数知
られており、アスパラギナーゼ、GOGAT等が含ま
れ、これらの塩基配列も報告されている。
【0004】ここで、特にα−アミノ酸の一種であるグ
ルタミン酸は、一般にタンパク質中に広く分布し、調味
用途として使用されているトマトのうま味成分や、ダイ
ズではその醸造食品(例えば、醤油、ミソなど)中のう
ま味成分は、いずれもグルタミン酸であることが知られ
ており、高等植物では窒素代謝の最初の段階で合成され
ることが知られている。また、グルタミン酸より生じた
グルタミン、アスパラギンが篩管を経由して各組織に分
配されその他のアミノ酸合成、タンパク質合成に用いら
れることが分かっている。植物においては、スクロース
やアミノ酸などの光合成産物の輸送経路である篩管には
高濃度に存在する例が報告されている(茅野充男ら、植
物栄養・肥料学p125(1993))が、可食部分に
高濃度に含まれる例としては、トマト果実に0.25g
/100gf.w.程度含まれる例(ときめき2号、日
本食品工業学会誌、第39巻、p64−67(199
2))が知られている。しかしながら、グルタミン酸の
場合は、ソース器官での生合成能が向上できたとしても
アミノ基供与の出発物質であり、前述のように種々の生
合成経路で代謝されるため、植物体中でグルタミン酸を
高濃度に蓄積させるのは容易ではない。
【0005】交配育種、遺伝子操作を問わず、これまで
グルタミン酸の濃度を植物体の可食部分中で飛躍的に高
めるのに成功した例は出願人の知る限り見当たらない。
例えば、GDH(グルタミン酸デヒドロゲナーゼ)遺伝
子を導入したトランスジェニック植物が作製されてお
り、大腸菌由来グルタミン酸デヒドロゲナーゼGDH
(NADP−GDH)を除草剤フォスフィノスリシン耐
性付与を目的としてタバコとトウモロコシに導入したと
ころ、根でグルタミン酸含量が1.3〜1.4倍増加し
たことが報告されており(Lightfoot Dav
idら、CA2180786(1996)、この報告で
は、タバコの根において、14.7mg/100gf.
w.であったグルタミン酸含量が20.6mg/100
gf.w.に、トウモロコシの根において16.2mg
/100gf.w.であったグルタミン酸含量が19.
1mg/100gf.w.に増大した。これ以外にも、
GDH遺伝子の利用について記載された報告はあるが、
実施例は示されていない(WO9509911、クロレ
ラ由来のα、β−サブユニット(WO971298
3))。またグルタミン酸族アミノ酸についての分析値
も示されていない。
【0006】無機窒素を有機体に同化する第一段階は、
上述したように主にグルタミンを生成するためのグルタ
ミン酸へのアンモニアの取り込みであり、これはグルタ
ミンシンテターゼ酵素(GS)により触媒される。次い
で、このグルタミンは、α−ケトグルタル酸とから、グ
ルタミン酸シンターゼ(GOGAT)に触媒され、2分
子のグルタミン酸が生成される。このGS/GOGAサ
イクルが、植物における窒素同化の主要な経路と考えら
れている(文献:MiflinおよびLea,197
6,Phytochemistry,15;873−8
85)。一方、アンモニアの取り込みがGSにより触媒
される経路以外の代謝経路により進行する事が知られて
いる(Knight and Langston−Un
kefer,1988,Science,241:95
1−954)。即ち、グルタミン酸を生成するためのα
−ケトグルタル酸へのアンモニアの取り込みであり、こ
れはグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)により触
媒される。しかし、植物のGDHは、アンモニアに対し
て高いKm値を有しており、一方、アンモニアは毒性が
あり、細胞内アンモニアは通常低濃度であるため、正常
な生育条件下でのこの窒素同化経路の役割については未
だ充分には明らかにされていないが、ある研究では、細
胞内のアンモニウム濃度が正常レベルを越えて上昇した
時の窒素同化に寄与しているとの報告がある(Knig
ht and Langston−Unkefer、前
掲)。
【0007】合成されたグルタミン酸は、さらに別のア
ミノ酸、アスパラギンやアラニン、フェニルアラニン、
ロイシン、イソロイシン、グリシン、バリン、セリン、
チロシン、プロリン、γ−アミノ絡酸(GABA)等の
合成に利用される。特に、トマトの果実やシュガービー
トの根等の貯蔵器官にはGABAが多量に蓄積されてい
ることが知られており、グルタミン酸が消費されている
と考えられる。GABAの蓄積は細胞内の酸性や低温、
ヒートショックなどの環境ストレスによって誘導される
ことが知られている(StreeterおよびThim
pson,Plant Physiol,1972,4
9,572−578:Reggianiら,Plant
Cell Physiol,1988,29;981
−987:Menengusら、1989,Plant
Physiol,90;29−32:Roberts
ら、1992,Plant Physiol 98;4
80−487:Shelpら、1995,Plant
Physiol 94;219−228:Aurisa
noら、1995,Plant Cell Physi
ol 36;1525−1529:Wallaceら、
1990,Plant Physiol 75;170
−175:Mayerら、Plant Physio
l,94;796−810)。GABAはグルタミン酸
デカルボキシラーゼ(GAD)の触媒によりグルタミン
酸から合成される。GADの活性は細胞内のCaイオン
濃度やカルモジュリンによって調節されており(Lin
gら、1994,Plant Cell,6;1135
−1143:Sneddenら、1995,Plant
Physiol,108;543−549:Araz
iら、1995,Plant Physiol,10
8;551−561:Sneddenら、1996,
J.Biol.Chem,271;4148−415
3)、様々なストレスによって細胞内のCaイオン濃度
が誘導的に変化し、その結果GAD活性が急速に高めら
れると考えられている。このため、GABAは植物細胞
におけるシグナル伝達物質としての働きも期待されてい
るが、詳細についてはほとんど分かっていない。
【0008】Petuniaで初めてGADをコードす
る遺伝子が単離され(Baumら,1995,J Bi
ol Chem,268;19610−19617)、
その後、トマト(Gallegoら、1995,Pla
nt Mol Biol,27;1143−1151)
やArabidopsis(Zikら、1998,Pl
ant Mol Biol,37;967−975)か
らもGAD遺伝子が単離された。いずれの場合もC末端
に30−32アミノ酸からなるカルモジュリン結合サイ
トが共通に存在している。しかし、その遺伝子発現の器
官は植物によって異なっており、Petuniaでは花
弁と花で、トマトでは果実で、Arabidopsis
ではGAD1遺伝子が根で、GAD2遺伝子が植物体全
体で発現していることが報告されている。Gideon
ら(EMBO,15;2988−2996,1996)
は、カルモジュリンによる発現調節機能について研究を
行う目的で、Petuniaより単離されたGAD遺伝
子をタバコに導入し形質転換体を作出した。この報告に
よれば、GAD遺伝子全長をセンス方向に導入した場合
とカルモジュリン結合サイトを除き、同様にセンス方向
に導入した場合の形質転換体について調査を行った結
果、GABAが増加し、グルタミン酸が減少した。その
増減の程度はカルモジュリン結合サイトを除いた場合の
ほうが著しく、また、植物の背丈が低くなり、形態的差
異も観察されたことが報告されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、植物
の貯蔵器官の遊離アミノ酸含量、特に根、種子などの植
物の可食部分における遊離アミノ酸、特にグルタミン
酸、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、スレオニ
ン、アラニンおよびヒスチジンの少なくとも1つの蓄積
を増強する方法、および、遊離アミノ酸が高度に蓄積さ
れたトランスジェニック植物を提供することである。
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、窒素の
同化および利用に関わる主要な酵素の発現レベルおよび
/または細胞特異的な発現バランスを変化させた植物お
よびその作製方法を提供することによって達成される。
このような植物は、窒素同化または利用酵素をコードす
る1以上の遺伝子を適切な制御配列と共に導入し、これ
を過剰発現または発現抑制することによって作製され
る。特に、本発明により、グルタミン酸デカルボキシラ
ーゼ(GAD)遺伝子をアンチセンス方向に植物に導入
し、その発現を変えることによって遊離アミノ酸を高度
に蓄積するトランスジェニック植物、特にグルタミン
酸、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、スレオニ
ン、アラニンおよびヒスチジンの少なくとも1つを高度
に蓄積する植物が得られる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、植物における窒素代謝
の遺伝子操作に関する。特に、本発明は、果実、根菜類
の根、種子など有用植物の可食部分の遊離アミノ酸、特
にうま味成分であるグルタミン酸の高蓄積を図るために
窒素同化および利用に関与する酵素の発現量を変化させ
ることに関する。これらの酵素はその発現が増強され、
あるいは修飾され、あるいは抑制され、所望の性質を有
する植物が作製される。本発明において使用される標的
遺伝子の一つのグループは、グルタミン酸のGABAへ
の代謝に関係する酵素をコードする遺伝子群である。標
的遺伝子としては例えば、グルタミン酸デカルボキシラ
ーゼ(GAD)が挙げられる。操作は植物を本明細書に
記載された核酸構築物で形質転換することにより行うこ
とができる。形質転換された植物またはそれらの子孫は
所望の改変された酵素を発現し、相当するmRNAの発
現変化、窒素同化または利用能の変化、および/または
植物の遊離アミノ酸含量増加についてスクリーニングさ
れる。
【0011】簡単には本発明の方法は以下の手順を含
み、また本発明のトランスジェニック植物はこのような
方法によって作製されたトランスジェニック植物であ
る: a)目的とする遺伝子をクローニングするステップ; b)得られた遺伝子を必要により適切なベクターへ適切
な方向に挿入し、再クローニングするステップ; c)植物細胞へ上記ベクターを導入し、形質転換体を得
るステップ; d)得られた形質転換体を植物体へ再生させ栽培するス
テップ;
【0012】本発明の実施態様の一つにおいては、窒素
同化または利用酵素をコードする1個または数個の遺伝
子配列またはそのアンチセンス配列が強力な構成的プロ
モーター制御下に置かれ、植物体中で過剰発現される。
本発明の別の実施態様においては、窒素同化または利用
酵素の発現パターンが改変される。このような発現パタ
ーンの改変は、例えば、 a)酵素をコードする遺伝子配列またはそのアンチセン
ス配列が所望の発現パターンを有するプロモーター(例
えば、器官特異的または生育ステージ特異的発現パター
ンを示すプロモーター)に機能し得る状態で結合されて
いるトランスジーン、 b)酵素をコードする遺伝子配列またはそのアンチセン
スmRNAの好ましいパターンでの発現を活性化する修
飾調節遺伝子、 c)好ましいパターンで発現するように修飾された調節
領域を有する、1コピーの天然遺伝子のアンチセンス配
列、の少なくとも1つを用いて植物を遺伝子操作するこ
とによって達成され得る。
【0013】本発明のさらに別の実施態様においては、
窒素同化または利用経路において改変された酵素または
異なる型の酵素が発現される。この型の実施態様には、
宿主植物の窒素同化または利用酵素の触媒作用とは異な
る触媒作用を有する対応酵素をコードする、植物細胞中
で発現可能な遺伝子構築物を作製し、これにより植物を
遺伝子操作することが含まれる。このような手段をとる
ことにより、増強された遊離アミノ酸を含有する植物が
得られる。このような植物を育成するために伝統的な作
物育種法では大きな分離集団のスクリーニングを必要と
し、多大の時間を要するところ、本発明によれば、こう
した労力を回避し時間を節約することができる。
【0014】以下は本明細書において使用される用語お
よび略語の定義である。 35S = カリフラワーモザイクウイルスプロモーター GAD = グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD) GDH = グルタミン酸デヒドロゲナーゼ 遺伝子融合体= 異種遺伝子が連結されたプロモーターを含む遺伝子構築物 (前記プロモーターは異種遺伝子の転写を調節する) 異種遺伝子 = 遺伝子構築において、異種遺伝子はその遺伝子が自然に連結さ れていないプロモーターに連結されていることを意味する。異種遺伝子は、前記 プロモーターを寄与する生物からのものであってもよく、またそうでなくてもよ い。 PCR =ポリメラーゼ連鎖反応
【0015】本発明に使用できる窒素同化または利用酵
素遺伝子には既に述べたような種々の遺伝子が含まれる
が、グルタミン酸を蓄積させるために利用できる好まし
い遺伝子の例のひとつとして、グルタミン酸デカルボキ
シラーゼ(GAD)遺伝子が挙げられる。GAD遺伝子
が使用される場合は、アンチセンス方向で発現される。
本発明の好ましい実施態様の一つにおいては、トマト由
来GAD遺伝子をコードする配列をアンチセンス方向に
連結された強力な構成植物プロモーターであるカリフラ
ワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター
をコードする組換え構築物を用いて、トマト植物を遺伝
子工学的に操作される。GAD遺伝子の発現が抑制され
た系統は、対照の非形質転換トマトよりも遊離アミノ酸
含量の増加、特にグルタミン酸含量の増加(2倍)が見
られた。
【0016】本発明に使用し得る核酸構築物は当業者に
公知の方法を使用して作成し得る。構築物を単離し、特
性決定する方法、あるいは、その操作および構築物それ
自体を作るのに使用しうる組換えDNA法については、
Sambrookら、Molecular cloni
ng−Laboratory manual、第2版、
Cold Spring Harbor Labora
tory Pressのような出典を参考にし得る。所
望の成分の塩基配列が知られているような場合には生物
起源からそれを単離するのではなく合成することが有利
なこともある。また、塩基配列全体、あるいは部分的に
知られている場合には、所望の核酸断片を増幅すること
もできる。この様な場合当業者はCaruthers
ら、1980,Nuc.Acids.Res.Sym
p.Ser.7:215−233及びChow及びKe
mpe,1981,Nuc.Acids.Res.9:
2807−2817のような文献を参考にすることがで
きる。その他の場合、所望の成分はポリメラーゼ連鎖反
応(PCR)増幅により有利に生産しうる。PCR法に
ついては、当業者は、Gelf and,1989,P
CR技術、DNA増幅に関する原理及び応用、H.A.
Erlich編集、ストックトンプレス,N.Y.、分
子生物学における現行のプロトコル、2巻、15章、A
usubelら編集、ジョンウイリイ&サンズ,198
8を参考にし得る。
【0017】本発明に使用される遺伝子構築物は、一般
に、目的遺伝子の他に植物細胞内で機能する適切なプロ
モーター、ノパリン合成酵素遺伝子ターミネーターのよ
うな適切なターミネーター、その他の発現制御に有用な
エレメント、および、形質転換体を選抜するための適切
なマーカー遺伝子、例えばカナマイシン耐性、G418
耐性、ハイグロマイシン耐性などの薬剤耐性遺伝子を含
んでいる。この構築物に含まれるプロモーターは構成的
プロモーターであっても器官特異的若しくは生育ステー
ジ特異的であってもよく、使用する宿主、遺伝子、必要
とする発現量、発現させるべき器官、生育ステージ等に
応じて選択することができる。本発明によれば、窒素同
化または利用酵素をコードする遺伝子のアンチセンスm
RNAの過剰発現を示す植物は、所望の酵素をコードす
る配列のアンチセンス配列に連結された植物プロモータ
ーを含む遺伝子構築物で植物細胞を形質転換することに
より作製することができる。本発明の好ましい実施態様
において、関連プロモーターは強力かつ非器官特異的ま
たは非生育ステージ特異的プロモーター(例えば、多く
または全ての組織中で強く発現するプロモーター)であ
る。この様な強力な構成的プロモーターの例として、C
aMV35Sプロモーターが挙げられる。
【0018】本発明の別の実施態様において、器官特異
的または生育ステージ特異的プロモーターを所望の酵素
をコードする配列に結合させた遺伝子構築物で植物を操
作するのが有利なことがある。例えば、光合成組織及び
器官中の発現が所望される場合は、リブロースビスフォ
スフェートカルボキシラーゼ(RuBisCO)遺伝子
又は葉緑体a/b結合蛋白質(CAB)遺伝子のプロモ
ーターが使用しうる。種子中の発現が所望される場合
は、種々の種子貯蔵蛋白質遺伝子のプロモーターを使用
することができ、果実中での発現が所望される場合は、
果実特異的プロモーター(例えばトマトの2A11)を
使用することができ、塊茎中での発現が所望される場合
は、塊茎貯蔵蛋白質遺伝子のプロモーター(例えばポテ
トのパタチン)を使用することができる。
【0019】本発明の更に別の実施態様において、誘導
プロモーターを所望の酵素をコードする配列に結合させ
た遺伝子構築物で植物を形質転換する事が有利であり得
る。この様なプロモーターの例は多岐にわたる。例え
ば、熱ショック遺伝子、防御応答遺伝子(例:フェニル
アラニンアンモニアリアーゼ遺伝子)、傷害応答遺伝子
(例:ヒドロキシプロリンに富む細胞壁蛋白質遺伝
子)、化学誘導遺伝子(例:ニトレート還元酵素遺伝
子、キチナーゼ遺伝子)、暗所誘導遺伝子(例:アスパ
ラギンシンテターゼ遺伝子(CoruzziおよびTs
ai、US5,256,558)が挙げられるがこれら
に限定されない。
【0020】本発明の組換え核酸構築物は、その構築物
の伝達追跡のための選択可能なマーカーを含んでもよ
い。例えば、細菌中で伝達される構築物は抗生物質耐性
遺伝子、例えばカナマイシン、テトラサイクリン、スト
レプトマイシン、またはクロラムフェニコール対する耐
性を与える遺伝子を含むことが好ましい。構築物を伝達
するのに適したベクターとして、プラスミド、コスミ
ド、バクテリオファージまたはウイルスが挙げられる。
加えて、組換え構築物は、これらの構築物により形質転
換された植物細胞の単離、同定または追跡のための植物
で発現し得る選択可能なマーカー遺伝子又はスクリーニ
ング可能なマーカー遺伝子を含んでも良い。選択可能な
マーカーとして、抗生物質耐性(例えば、カナマイシン
またはハイグロマイシンに対する耐性)、または除草剤
耐性(例えば、スルフォニル尿素、フォスフィノスリシ
ン、またはグリフォゼートに対する耐性)を与える遺伝
子が挙げられるが、これらに限定されない。スクリーニ
ング可能なマーカーとして、β−グルクロニダーゼをコ
ードする遺伝子(Jefferson,1987,Pl
ant Mol.Biol.Rep 5:387−40
5)、ルシフェラーゼをコードする遺伝子(Owら、1
986,Science 234:856−859)、
アントシアニン色素産生を調節するB及びC1遺伝子産
物(Goffら、1990,EMBO J,9:251
7−2522)が挙げられるがこれらに限定はされな
い。
【0021】本発明に使用できる遺伝子導入法は特に限
定されず、植物細胞あるいは植物体への遺伝子導入法と
して当業者に知られるいずれの方法を使用してもよい。
例えば、本発明の実施態様の一つにおいて、アグロバク
テリウムが遺伝子構築物を植物に導入するのに用いられ
る。この様な形質転換は2成分アグロバクテリウムT−
DNAベクター(Bevan,1984,Nuc.ac
id Res.12:8711−8721)、および同
時培養操作(Horschら、1985,Scienc
e,227:1229−1231)を使用することが望
ましい。一般に、アグロバクテリウム形質転換系が双子
葉植物を操作するのに使用される(Bevansら、1
982,Ann.Rev.Genet.,16:357
−384;Rogersら、1986,Methods
Enzymol.,118:627−641)。アグ
ロバクテリウム形質転換系はまた単子葉植物および植物
細胞を形質転換するのに使用することもできる(Her
nalsteenら、1984, EMBO J.,
3:3039−3041;Hoykass−VanSl
ogterenら、1984,Nature,311:
763−764;Grimsleyら、987,Nat
ure,325:167−1679;Boulton
ら、1989,Plant Mol.Biol.,1
2:31−40;Gouldら、1991,Plant
Physiol.,95:426−434)。植物を
形質転換するためにアグロバクテリウム系を利用する場
合は、組換えDNA構築物は植物細胞に導入すべきDN
A配列に隣接する位置に、T−DNA領域の少なくとも
右ボーダー配列を更に含む。好ましい実施態様において
は、移入される配列は左右のT−DNAボーダー配列の
間に挿入される。この様なT−DNAをベースとする形
質転換ベクターの適切な設計及び構築は当業者に公知で
ある。
【0022】別の実施態様において、組換え核酸構築物
を植物および植物細胞に導入する為の種々の別法を使用
することができる。別の遺伝子導入法および形質転換方
法として、裸のDNAの、カルシウム、ポリエチレング
リコール(PEG)またはエレクトロポレーション介在
性取り込みによるプロトプラスト形質転換(Paszk
owskiら、1984,EMBO J.,3:271
7−2722;Potrykusら、1985,Mo
l.Gen.Genet.,199:169−177;
Frommら、1985,Proc.Nat.Aca
d.Sci.USA,82:5824−5828;Sh
imamotoら、1989,Nature,338:
274−276)が挙げられる。本発明によれば、多種
の植物及び植物細胞系が本発明の核酸構築物および上記
の形質転換方法を使用して本明細書に記載された所望の
生理学的特性につき操作しうる。これらの方法は、標的
が単子葉植物または植物細胞である場合に特に有益であ
る。好ましい実施態様において、操作のための標的植物
および植物細胞として、トマト、ポテト、ビート、ダイ
ズ、アラビドプシス、トウモロコシ、小麦、イネ、サト
ウキビ等が挙げられるが、これらに限定されない。特に
好ましいのはトマトである。
【0023】本発明によれば、本明細書に開示されたよ
うな遺伝子構築物を、プロトプラスト、組織培養細胞、
組織及び器官外殖体、花粉、胚ならびに植物全体を含む
がこれらに限定されない種々の植物細胞型に導入および
操作することにより所望の植物が得られる。本発明の実
施態様において、操作された植物体は下記のアプローチ
および方法に従って形質転換体につき選択又はスクリー
ニングされる。次に単離された形質転換体を植物個体に
再生させてもよい。植物細胞、組織または器官から植物
個体に再生するための方法は、多くの植物種において当
業者に公知である。
【0024】形質転換された植物細胞、カルス、組織ま
たは植物は、形質転換に用いた遺伝子構築物に存在する
マーカー遺伝子によりコードされた形質につき選択又は
スクリーニングする事により同定され、単離することが
できる。例えば、形質転換遺伝子構築物が耐性を与える
ような抑制量の抗生物質または除草剤を含む培地で操作
された植物体を生育させることにより、選択を行うこと
ができる。更に形質転換された植物細胞および植物は、
本発明の組換え核酸構築物に存在しうる可視のマーカー
遺伝子(例えば、β−グルクロニダーゼ遺伝子、ルシフ
ェラーゼ遺伝子、B遺伝子またはC1遺伝子)の活性に
つきスクリーニングする事により同定しうる。この様な
選択方法およびスクリーニング方法は当業者に公知であ
る。
【0025】また、本発明の遺伝子構築物を含む植物ま
たは植物細胞形質転換体を同定するために物理的方法お
よび生化学的方法が使用しうる。そのような方法とし
て、 1)組換えDNAインサートの構造を検出および測定す
るためのサザン分析またはPCR増幅; 2)遺伝子構築物のRNA転写産物を検出および測定す
るためのノーザンブロット、S1 RNase保護、プ
ライマー伸長PCR増幅または逆転写酵素PCR(RT
−PCR)増幅; 3)遺伝子構築産物が蛋白質である場合は、蛋白質ゲル
電気泳動、ウエスタンブロット、免疫沈殿、またはエン
ザイムイムノアッセイが挙げられるが、これらに限定さ
れない。これらのアッセイ方法は全て当業者に公知であ
る。
【0026】本発明によれば、改良された成分特性を有
する植物を得るため、形質転換された植物を所望の生理
学的変化に関してスクリーニングしてよい。例えば、G
AD酵素の発現抑制に関して操作した場合、形質転換さ
れた植物は、所望の組織および生育段階でGAD酵素の
発現が所望のレベルに低下した植物について試験される
であろう。次に、所望の生理学的変化、例えば、GAD
の発現低下を示す植物を、所望の成分変化について引き
続きスクリーニングすることができる。本発明によれ
ば、窒素同化プロセスまたは利用プロセスの変化で操作
された植物は、改良された成分特性、すなわち、遊離ア
ミノ酸、特に、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラ
ギン酸、セリン、スレオニン、アラニン、ヒスチジン高
含有、とりわけうま味成分であるグルタミン酸高含有を
示しうる。この様な改良された特性を有する操作された
植物および植物系統は、植物の遊離アミノ酸含量を測定
する事により同定しうる。この分析のための操作および
方法は当業者に公知である。本発明によって得られる植
物は、遊離アミノ酸含量において対照植物(非形質転換
植物)に対して増加した植物である。好ましい実施態様
において、所望の植物は、その果実、根、種子等の可食
部分での遊離アミノ酸含量、とりわけうま味成分である
グルタミン酸含量が2倍以上の増加を示し、全遊離アミ
ノ酸含量も最大約3倍程度まで増加する。グルタミン酸
以外のアミノ酸に関しては、特に、アスパラギン酸、ア
スパラギン、アラニン、セリン、スレオニンおよびヒス
チジンの増加が著しい。本発明によってアミノ酸組成が
改良され得る植物種は特に限定されないが、グルタミン
酸を主要なうま味成分とするトマトが特に好ましい。
【0027】
【実施例】本発明は、トマト由来GAD遺伝子をコード
する配列をアンチセンス方向に連結された強力な構成植
物プロモーターであるカリフラワーモザイクウイルス
(CaMV)35Sプロモーターをコードする組換え構
築物を用いて、トマト植物を遺伝子工学的に操作した以
下の実施例により具体的かつ詳細に説明される。実施例
1.トマト由来GAD遺伝子の単離 70%エタノール(30秒)、2%次亜塩素酸ナトリウ
ム(15分)を用いて表面殺菌したトマト種子を、植物
ホルモンを含まないMS寒天培地(Murashige
およびSkoog,1962,Physiol.Pla
nt.,15:473−479)に植え、16時間日
長、25℃で1週間培養し、無菌植物を得た。得られた
幼植物の根よりTotal RNAを調製した。
【0028】Total RNAはPoly(A)Qu
ick mRNA Isolation Kit(St
ratagene社)を用いてmRNAを精製した後、
First−Strand cDNA Synthes
is Kit(Amersham Pharmacia
Biothech社)を用いてFirst−Stra
nd cDNAを作成した。作成したFirst−St
rand cDNAをテンプレートに用いてPCR反応
を行ったPCR反応条件は94℃−3分;94℃−45
秒、59℃−30秒、72℃−90秒、35サイクル;
72℃−10分とし、パーキンエルマー社のPCR s
ystem 2400を用いて行った。用いたプライマ
ーを表−1に示した。得られたPCR産物はTA−Cl
oning Kit(Invitrogen社)を用い
てクローニングした。目的サイズの遺伝子がクローニン
グできた6種のプラスミッドについてシークエンサー
(ABI社377A)を用いて塩基配列を決定し、既知
のGAD遺伝子(Gallegoら、1995,Pla
nt Mol Biol,27;1143−1151)
との相同性について調査した。得られたクローンのう
ち、T−gad−19遺伝子の塩基配列を配列番号1に
示した。
【0029】
【表1】 <配列表フリーテキスト> 配列番号2および3:GAD特異的プライマー 配列番号4および5:Nos−PromoterからN
PTII間を増幅するためのPCRプライマー
【0030】その結果、既知のトマトGAD遺伝子の塩
基配列(Gallegoら,1995,Plant M
ol Biol,27;1143−1151)と完全に
一致するものは無かったが、調査したクローンの中でT
−gad−19遺伝子(配列番号1)が最も相同性が高
く85%の相同性を有していた。アンチセンス法の機能
として果たし得る可能性があると判断し、T−gad−
19遺伝子を用いることとした。
【0031】実施例2.トマトGAD遺伝子(T−ga
d−19)のTiプラスミッド(pMAT037)への
サブクローニング PCR2.1ベクターにクローニングしたトマト由来T
−gad−19遺伝子は,植物形質転換用ベクターであ
る、Tiプラスミッド(pMAT037)(Matsu
okaおよびNakamura,1991,Proc
Natl Acad.Sci USA,88:834−
838)にサブクローニングした、始めにPCR2.1
ベクター中の制限酵素XbaIおよびHindIIIを
用いて切り出し、pUC18のマルチクローニングサイ
ト上XbaIおよびHindIII部位に置換した。さ
らに制限酵素KpnIおよびHindIIIで切り出
し、pMAT037のCaMV35Sプロモーター後の
マルチクローニングサイト中の制限酵素KpnIおよび
HindIIIサイトに導入し、E.coli DH5
αにトランスフォーメーションした。anti−T−g
ad−19遺伝子を導入したTiプラスミッドは、アグ
ロバクテリウム、EHA101株に形質転換し(図
1)、トマトに感染させるために用いた。
【0032】実施例3.トマトの子葉へのアグロバクテ
リウム感染による形質転換体の作製 トマト(栽培品種,ミニトマト)の種子を70%エタノ
ール(30秒)、2%次亜塩素酸ナトリウム(15分)
を用いて表面殺菌した後、植物ホルモンを含まないMS
寒天培地に置床し、16時間日長、25℃で1週間培養
した。得られた無菌幼植物より子葉を切り取り、2mg
/lゼアチンと0.1mg/lインドール酢酸を加えた
MS寒天培地(再分化培地、9cmシャーレ使用)に置
床し2日間同条件で培養した。anti−T−gad−
19遺伝子を含むアグロバクテリウム(EHA101)
はYEP培地(表−2)で一晩培養したものを感染に用
いた。2日間培養した子葉を滅菌シャーレに集め、アグ
ロバクテリウム液を加え感染させた。滅菌したろ紙を用
いて余分なアグロバクテリウム液を子葉から取り除き、
アグロバクテリウムの急激な増殖を防ぐため、先に用い
たシャーレ培地に滅菌ろ紙を敷き,その上に感染させた
子葉を乗せ、24時間共存培養させた。その後、子葉は
50mg/lカナマイシン、500mg/lクラフォラ
ンを含むMS再分化培地(選抜培地)に移し、形質転換
体の選抜を行った。再分化したshootは、新しい選
抜培地に移し再選抜を行った。緑色で旺盛に生育したs
hootは茎の部分で切り取り、植物ホルモンを含まな
いMS培地(発根培地、試験管)に移した。発根した再
分化植物は順次土壌に馴化させた。
【0033】
【表2】
【0034】実施例4.導入遺伝子の確認 anti−T−gad−19遺伝子を含むアグロバクテ
リウムを感染させて得られた選抜個体4個体と、目的遺
伝子を含まないTiプラスミッドのみのアグロバクテリ
ウムを感染させて得られた植物3個体、さらにアグロバ
クテリウムで処理しないで、子葉より直接再分化させた
植物体2個体からそれぞれTotalDNAを本田らの
方法に従い抽出した(HondaおよびHirai,1
990,Jpn J Breed 40,339−34
8)。抽出したDNAは、RAase処理、フェノール
/クロロホルム処理、さらにPEG沈殿させ精製した。
0.01μg/μlになるように希釈し、PCR用のテ
ンプレートとした。PCRはTiプラスミッドのT−D
NA上のNPTII遺伝子からNos−Promote
r中の配列を元に約1.0kbpの増幅産物が得られる
ようなプライマー(表−1.b)を用いてPCR反応を
行った。反応条件は,94℃−1分、55℃−1分、7
2℃−2分、35サイクルで行った。PCR産物は1%
アガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマ
イドで染色した。anti−T−gad−19遺伝子を
含むアグロバクテリウムを感染させた個体、およびプラ
スミッド遺伝子を含むアグロバクテリウムを感染させた
個体において、予想されるバンドサイズである約1.0
kbpのバンドが確認され、非形質転換体には検出され
なかった(図2)。これらの結果より、得られた形質転
換植物に各々の遺伝子が導入されていることが示唆され
た。
【0035】実施例5.遊離アミノ酸の抽出と定量 実施例4で得られた形質転換植物の開花後6週目の果実
を収穫し、−80℃に保存した。果実は約1/6にカッ
トし、重さを測定した後、乳鉢に入れ液体窒素で凍らせ
すりつぶした。さらに3mlの80%エタノールを加
え、丁寧にすりつぶした後、遠心チューブに移し、80
℃で20分間インキュベートした。10,000rpm
で20分間遠心し、上澄を新しいチューブに移し、残っ
たペレットに2mlの80%エタノールを加え、再度乳
鉢ですりつぶし、80℃で20分間インキュベートし
た。遠心後、澄をチューブに移し、先の上澄と併せ、8
0%エタノールを用いて総量を5mlに調製した。良く
混合した後、20μl取り乾燥させた後、0.02N塩
酸に溶解した。0.45μmのフィルターでろ過し、分
析用サンプルとした。アミノ酸分析は日立高速アミノ酸
分析計(L−8800)を用いて行った。GADアンチ
センス遺伝子を導入した形質転換トマトのアミノ酸分析
結果を非形質転換トマトおよびTiプラスミッドのみ導
入したトマトのアミノ酸分析結果とともに表3に示し
た。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】調査した形質転換体4株のうち、アミノ酸
含量、特にグルタミン酸含量がコントロールに比べて2
倍以上増加した株はGAD−1およびGAD−2であっ
た。また、それらの系統は他のアミノ酸含量、特にアス
パラギン、アスパラギン酸、セリン、スレオニン、アラ
ニンおよびヒスチジンも増加していた(表3)。GAD
−1およびGAD−2のグルタミン酸含量はコントロー
ルに比べてそれぞれ2.02倍および2.06倍であっ
た。また、グルタミン含量も6.95倍、3.10倍で
あり、γ−アミノ酪酸含量が6.42倍2.29倍とか
なり増加していた(図3)。
【0039】実施例6.anti−T−gad−19遺
伝子導入トマトの後代分析 1)ノーザン分析 形質転換当代(T)植物の腋芽の葉組織よりTola
lRNAをフェノール/SDS法により抽出した。20
μgのTotal RNAをホルムアルデヒド−アガロ
ースゲル(1.0%)を用いて電気泳動後、ナイロンメ
ンブランにトランスファーした。DIG−Labeli
ng and Detection Kit(Roch
e Molecular Biochemicals)
を用いて、ノーザンハイブリダイゼーションを行った。
プローブとしてT−gad−19遺伝子を用いた。その
結果、anti−T−gad−19遺伝子導入系統N
o.1,2系統にハイブリダイズしたバンドのシグナル
は非形質転換体にハイブリダイズしたバンドのシグナル
より弱いため、形質転換体では内在性のGAD遺伝子の
発現が減少していることが示唆された(図4)。しか
し、No.1系統由来の種子は発芽しなかったため、後
代の分析ができなかった。
【0040】2)T世代の選抜 アグロバクテリウム法により遺伝子導入を行ったトマト
形質転換植物(T世代)より得られた種子を、80%
エタノールで30秒,2%次亜塩素酸ナトリウムで15
分間表面殺菌した後、カナマイシン350mg/lを加
えたMS寒天培地に無菌播種した。1ヵ月後、生育の良
い植物の選抜を行った結果、anti−T−gad−1
9遺伝子導入系統No.2より耐性個体GAD2−2−
1,GAD2−2−2,GAD2−2−3,GAD2−
3−1が選抜できた。株当たりの果実数を増加させるた
め、屋外の閉鎖系温室で栽培を行った。栄養条件を同じ
にするため、馴化時に1kgの培養土(パワーソイル,
サカタのタネ)に移植した後は、追肥を行わなかった。
【0041】3)果実中のアミノ酸含量の測定 第一果房の開花後6週目の果実3個を分析に用いた。
果実に80℃に熱した80%エタノールを重量の3倍量
加え、乳鉢ですりつぶした後、再度80℃で20分間加
熱した。7,000rpmで遠心して、上清を回収した
後、再度80%エタノールを加え、80℃に加温した。
エタノールによる抽出を3回行い、総量を80%エタノ
ールで100mlに合わせた。良く混合した後、抽出液
200μlをエッペンドルフチューブに取り、乾燥さ
せ、200μlの滅菌水に溶かした。エチルエーテル2
00μl加え混合後、12,000rpmで遠心し、エ
ーテル層を取り除いた。水層を再度乾燥させた後、20
0μlの0.02NHClに溶解し、0.45μmのろ
過フィルターを用いてろ過したろ液をサンプルとし、日
立高速アミノ酸計測器(L−8800)を用いて分析を
行った。結果は3個の果実の平均値を示した。anti
−T−gad−19遺伝子導入系統No.2の後代GA
D2−2−1,GAD2−2−2,GAD2−2−3,
GAD2−3−1のグルタミン酸含量が非形質転換体に
比べて、それぞれ、1.3倍、1.8倍,3.0倍、
1.8倍増加していた(表4、図5)。グルタミン酸以
外のアミノ酸では、アラニンの増加が顕著であり、アス
パラギン酸、アスパラギン含量が増加した系統も見られ
た。全遊離アミノ酸含量も非形質転換体と比較して最大
3.2倍増加した。
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
【表7】
【0045】
【発明の効果】本発明により、遊離アミノ酸を高濃度に
含有する植物が得られ、付加価値の高い原料作物および
食品素材、特に付加価値の高いトマトが提供される。本
発明により全遊離アミノ酸含量が最大3倍程度まで増加
し、特にグルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン
酸、セリン、スレオニン、アラニンおよびヒスチジンの
少なくとも1つの含量の高い作物が提供され、これらの
アミノ酸の後添加の必要のない付加価値の高い原料作物
が提供される。また、本発明により、高濃度にグルタミ
ン酸を蓄積したもの、すなわち、うま味の優れた食品素
材が提供される。さらに、本発明により、そのような遊
離アミノ酸を高度に蓄積する植物を育種するための期間
が大幅に短縮される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】T−gad−19遺伝子のTiプラスミッド
(pMAT037)へのアンチセンス方向クローニン
グ。 35SPro:CaMV 35Sプロモーター、Ter
m:ターミネーター
【図2】トマト由来GADアンチ配列、anti−T−
gad−19遺伝子を導入した形質転換体のPCRによ
る解析結果を示したものである(NPTII特異的プラ
イマー使用、94℃−1分間、55℃−1分間、72℃
−2分間、35サイクル)。各サンプルの表記は表3と
対応する:非形質転換トマト(Cont−1、Cont
−2);プラスミッドpMAT037を導入した形質転
換トマト;アンチセンスGAD遺伝子を導入した形質転
換トマト(GAD−1、GAD−2、GAD−6−2、
GAD−11)。
【図3】anti−T−gad−19遺伝子を導入した
形質転換体(GAD−1,GAD−2,GAD−6−
2)のアミノ酸含量の比較をグラフに示したものである
(グルタミン酸−Glu、グルタミン−Gln、γ−ア
ミノ酪酸−GABA、リジン−Lys)。
【図4】anti−T−gad−19遺伝子を導入した
形質転換体のノーザン分析の結果を示したものである。
それぞれ、20μgの全RNAを使用した。 レーン1:非トランスジェニックトマト、レーン2、
3:それぞれanti−T−gad−19 no.1,
no.2。
【図5】anti−T−gad−19遺伝子を導入した
形質転換トマトの後代(T)における果実中のアミノ
酸含量を比較したグラフである。GAD2−2−1、G
AD2−2−2、GAD2−2−3、GAD2−3−1
は、それぞれアンチセンスGAD遺伝子を導入した形質
転換トマトである。測定個体数はそれぞれ3個体とした
(n=3)。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 同条件で栽培した天然の同種の植物と比
    べて、可食部分の1以上の遊離アミノ酸をより多く蓄積
    するトランスジェニック植物を作出する方法であって、
    グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)をコードす
    る遺伝子配列のアンチセンス配列および前記アンチセン
    ス配列を発現させ得る制御配列を含む遺伝子構築物で植
    物を形質転換し、該遺伝子構築物に連結されたマーカー
    遺伝子により付与された形質に基づいて前記形質転換植
    物を選択または同定し、1以上の遊離アミノ酸をより多
    く蓄積する前記形質転換植物をスクリーニングし、1以
    上の遊離アミノ酸をより多く蓄積する前記形質転換植物
    を選別することを含む、前記方法。
  2. 【請求項2】 遺伝子構築物が、植物の構成的プロモー
    ターに機能しうる状態で連結されたアンチセンスGAD
    遺伝子配列を含むものである、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 遺伝子構築物がトマト由来のGADから
    なるanti−T−gad−19とCaMV 35Sと
    のアンチセンスGAD遺伝子融合体である、請求項2に
    記載の方法。
  4. 【請求項4】 遊離アミノ酸が、アスパラギン、アスパ
    ラギン酸、セリン、スレオニン、アラニン、ヒスチジン
    およびグルタミン酸からなる群より選ばれる、請求項1
    〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 遊離アミノ酸の一つが遊離グルタミン酸
    である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 トランスジェニック植物がトランスジェ
    ニックトマトであり、可食部分が果実である、請求項1
    〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方
    法により作出されたトランスジェニック植物およびその
    子孫植物。
  8. 【請求項8】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方
    法により作出された、果実中の全遊離アミノ酸含量が天
    然の同種植物の2倍以上に増加したトランスジェニック
    植物およびその子孫植物。
  9. 【請求項9】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方
    法により作出された、果実中の遊離グルタミン酸含量が
    天然の同種植物の2倍以上に増加したトランスジェニッ
    ク植物およびその子孫植物。
  10. 【請求項10】 請求項7〜9のいずれか1項に記載の
    トランスジェニック植物またはその子孫植物の種子であ
    って、アンチセンスGAD配列を含有する前記種子。
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KR100616742B1 (ko) * 2004-02-27 2006-08-28 한국원자력연구소 글루타메이트 디카르복실라제 67의 안티센스 유전자를유효성분으로 포함하는 항암제, 상기 유전자를 포함하는발현 벡터 및 이를 형질도입한 형질전환체

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