JP2001229875A - 垂直加速型飛行時間型質量分析装置 - Google Patents

垂直加速型飛行時間型質量分析装置

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JP2001229875A
JP2001229875A JP2000036180A JP2000036180A JP2001229875A JP 2001229875 A JP2001229875 A JP 2001229875A JP 2000036180 A JP2000036180 A JP 2000036180A JP 2000036180 A JP2000036180 A JP 2000036180A JP 2001229875 A JP2001229875 A JP 2001229875A
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ion
ions
grid
reservoir
mass spectrometer
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Yoshihiro Nukina
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Jeol Ltd
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    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J49/00Particle spectrometers or separator tubes
    • H01J49/26Mass spectrometers or separator tubes
    • H01J49/34Dynamic spectrometers
    • H01J49/40Time-of-flight spectrometers
    • H01J49/401Time-of-flight spectrometers characterised by orthogonal acceleration, e.g. focusing or selecting the ions, pusher electrode

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  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Analytical Chemistry (AREA)
  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】OA/TOFMSの高次の収差係数に由来する
時間収束性の悪化を回避することのできるOA/TOF
MSを提供する。 【解決手段】イオンをイオン溜に導入する導入光学系の
光軸をイオン溜の中心軸から所定の距離だけY方向にず
らして配置した。また、イオンの飛行空間全体に印加さ
れている加速電圧、イオン押し出しプレートと第1のグ
リッドの間の電位差、第1のグリッドと第2のグリッド
の間の電位差、およびリフレクター電圧の内の少なくと
も1つの値を変更することによって、OA/TOFMS
の分解能を制御するようにした

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、質量分解能に優れ
た垂直加速型飛行時間型質量分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】EI、CI、ESI、FAB、ICPな
どの外部イオン源と飛行時間型質量分析装置(Time-of-
flight mass spectrometer:TOFMS)とを組み合わ
せて使用する場合、外部イオン源とTOFMS分光部と
の接続部分にイオン溜を設け、イオン溜内にイオンをド
リフト走行させることが良く行なわれる。そして、イオ
ン溜内にイオンを滞留させた上で、ナノ秒オーダーの短
時間の内にイオンに対して高電圧を印加し、イオンのド
リフト走行の方向とは直交する方向にイオンをパルス状
に押し出して、イオンパルスがTOFMSのイオン検出
器に到達するまでの飛行時間を測定する方法で質量分析
が行なわれる。このような質量分析装置を垂直加速型飛
行時間型質量分析装置(Orthogonal Acceleration TO
FMS:OA/TOFMS)と呼んでいる。
【0003】図1に、典型的なOA/TOFMSの模式
図を示す。外部イオン源1で生成され、運動エネルギー
を与えられたイオンは、ビームとなってイオン押し出し
プレート3と第1のグリッド4で構成されるイオン溜2
に導入される。イオン押し出しプレート3と第1のグリ
ッド4は、イオン溜2にイオンが導入・蓄積されている
間、いずれも接地電位、または装置のコモン電位に保た
れている。
【0004】導入されたイオンがイオン溜2内をドリフ
ト走行し、イオン溜2のX方向の所定の長さを充満する
と、イオン押し出しプレート3にPush-outパルス電圧
(振幅電圧:U1)を印加し、イオンにドリフト走行方
向(X方向)とは交差する方向(TOFMSの光軸方
向、すなわちY方向)に、均一な運動エネルギーを与え
る。すると、イオンは、イオンパルスとなって短時間の
内にイオン溜2から完全に排出された後、第1のグリッ
ド4と第2のグリッド5の電位差U2によって、さらに
大きな運動エネルギーを与えられて、TOFMS分光部
6を飛行する。
【0005】このように、イオン溜2のイオンは、イオ
ン溜2の光軸方向と交差するY方向に2段階で加速され
るので、イオン押し出しプレート3から第2のグリッド
5にかけての部分を2段加速部と呼んでいる。イオン溜
2を排出され、2段加速部で加速されたイオンは、2段
加速部と対向する位置に設けられ、第3のグリッド7お
よび第4のグリッド8を備えたリフレクター電位U4
ミラー反射型のリフレクター部9で反射され、最終的に
マイクロ・チャンネル・プレート(MCP)などで構成
されたイオン検出器10に到達して検出される。
【0006】イオンには、イオン押し出しプレート3と
第2のグリッド5の間の電位差U0に対応する一定のエ
ネルギーが等しく与えられるため、加速終了時には、質
量の小さなイオンほど運動速度が大きく、質量の大きな
イオンほど運動速度が小さい。このような速度差が生ま
れる結果、イオンがTOF分光部6およびリフレクター
部9を飛行する間に質量分離が行なわれ、軽いイオンか
ら先にイオン検出器10に到達し、重いイオンは遅れて
イオン検出器10に到達することになり、イオンのマス
スペクトルが測定される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たような2段加速部とミラー反射型リフレクターとを組
み合わせたOA/TOFMSには、次のような2つの問
題がある。
【0008】(1)リフレクターとして、1段型のリフ
レクターを用いた場合、TOF分光部のドリフト空間距
離d3の1/4の深度d4を与えれば、一義的に1次収差
の収束性が満たされる。しかし、2次の収差係数はd3
/8という大きな値であるため、1段リフレクターと2
段加速部とを組み合わせることによって得られるマスス
ペクトルの分解能は、2次の収差係数に支配され、分解
能の上限は大きく限定されてしまう。
【0009】(2)このため、1次の収差項と2次の収
差項を同時に消去することのできる2段リフレクター型
TOFMSが提案されている。しかし、この2段リフレ
クター型TOFMSでは、イオンがリフレクターに入射
した後、反射されてリフレクターを出ていくまでに、イ
オン透過率が約80%の2枚の金属メッシュ(すなわ
ち、グリッド)を往復で合計4回通過しなければならな
いために、リフレクター部で、(1−0.84)×100
=59%と、全体の約6割のイオン損失が発生する。
(一方、前述した1段リフレクター型TOFMSであれ
ば、金属メッシュが1枚しかないので、リフレクター部
でのイオン損失の問題は、(1−0.82)×100=3
6%にまで緩和できる。)これを簡単に言えば、1段リ
フレクター型TOFMSと2段加速部の組み合わせでは
分解能に、また、2段リフレクター型TOFMSと2段
加速部の組み合わせでは感度に、それぞれ問題があると
いうことになる。
【0010】最近では、高速電子回路技術の急速な進展
に伴い、一般のTOFMSでも分解能R(=M/ΔM)
が10000を上回る高分解能のマススペクトルが得ら
れるようになってきており、より高感度な高分解能TO
FMSへの要望は年々強まるばかりである。この要望に
対して、イオンが金属メッシュを通過する回数を減らす
ことによって感度の低下を抑え、イオン透過率の高い1
段リフレクター型TOFMSと2段加速部を組み合わせ
た完全2次収束光学系も提案されている。
【0011】高感度かつ高分解能のOA/TOFMSを
実現するためには、外部イオン源で生成されたイオンを
できる限り多くイオン溜に導入する必要がある。1段リ
フレクター型TOFMSと2段加速部を組み合わせた場
合、イオンの空間的な広がりに関する1次と2次の収差
項は完全にゼロにできる。しかし、イオンビームが予め
持っている空間的な広がりと、イオンのターンアラウン
ド効果とによる分解能の低下は解消できない。
【0012】ターンアラウンド効果、すなわち、各々の
イオンが予め持っているY方向の速度差の問題を解消す
る唯一の方法は、イオン溜を走行するイオンビームをで
きる限り平行に保つことである。しかしながら、外部イ
オン源からイオン溜にイオンを導入する場合、OA/T
OFMSの原理上、イオンの加速電圧は数十ボルト、運
動エネルギーにして数十エレクトロンボルト程度に制限
される。このため、外部イオン源から導入された低エネ
ルギーのイオンビームは、たとえ優れた静電レンズを用
いたとしても、ビームの平行度を維持しながら、かつ、
数mm程度のビーム幅にまで細く絞ることは極めて困難
である。
【0013】従って、分解能R=10000以上の高分
解能マススペクトルを高感度で測定するためには、静電
レンズによる制御では、イオンビームの平行整形を第1
の目標とし、イオンビームを細く絞ることには必ずしも
とらわれず、イオン溜の中で幅広く広がったイオンビー
ムに対する収束性を議論する方が有利である。そして、
その場合は、TOFMS分光部における3次以上の高次
の収差係数を検討する必要がある。
【0014】また、OA/TOFMSをMS/MSやM
S/MS/MSなどのタンデム式質量分析装置の最終段
の分析装置として使用する場合には、本来のイオンビー
ム幅に加えて、反応室でイオンを解裂させるために稀ガ
スと衝突させることに起因するイオンビーム幅の増大が
あり、その場合にも、TOFMS分光部における3次以
上の高次の収差係数を検討することが必要である。
【0015】OA/TOFMSの高次収差係数を検討す
る場合、一般に、最大次数5次の項まで検討すれば十分
である。しかし、3次と5次の各項の係数は、イオン溜
内のイオンの位置がイオン溜の中心軸からY方向の正の
側にずれているか、それとも負の側にずれているかに関
わりなく符号が等しいのに対して、4次の項の係数は、
イオン溜内のイオンの位置がイオン溜の中心軸からY方
向の正の側にずれているか、それとも負の側にずれてい
るかで符号が異なるために、イオン溜の中心軸の回りに
均等に分布するイオンビームがイオン検出器で検出され
る際に、非対称な飛行時間差をもって検出されることと
なり、時間収束性が微妙に悪化する。
【0016】本発明の目的は、上述した点に鑑み、OA
/TOFMSの高次の収差係数に由来する時間収束性の
悪化を回避することのできるOA/TOFMSを提供す
ることにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、本発明にかかるOA/TOFMSは、質量分析装置
に対してイオンを供給する外部イオン源と、外部イオン
源の後段に配置され、イオン押し出しプレートと第1の
グリッドにより構成されるイオン溜と、第1のグリッド
と第2のグリッドで構成され、イオン押し出しプレート
によってイオン溜から押し出されたイオンを加速するイ
オン加速部と、加速されたイオンを質量分離するリフレ
クター飛行時間型分光部と、質量分離されたイオンを検
出するイオン検出器とから成る垂直加速型飛行時間型質
量分析装置において、イオンをイオン溜に導入する導入
光学系の光軸をイオン溜の中心軸から所定の距離だけY
方向にずらして配置したことを特徴としている。
【0018】また、質量分析装置に対してイオンを供給
する外部イオン源と、外部イオン源の後段に配置され、
イオン押し出しプレートと第1のグリッドにより構成さ
れるイオン溜と、第1のグリッドと第2のグリッドで構
成され、イオン押し出しプレートによってイオン溜から
押し出されたイオンを加速するイオン加速部と、加速さ
れたイオンを質量分離するリフレクター飛行時間型分光
部と、質量分離されたイオンを検出するイオン検出器と
から成る垂直加速型飛行時間型質量分析装置において、
イオンの飛行空間全体に印加されている加速電圧、イオ
ン押し出しプレートと第1のグリッドの間の電位差、第
1のグリッドと第2のグリッドの間の電位差、およびリ
フレクター電圧の内の少なくとも1つの値を変更するこ
とによって、垂直加速型飛行時間型質量分析装置の分解
能を制御するようにしたことを特徴としている。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の
実施の形態を説明する。図2は、本発明にかかるOA/
TOFMSの一実施例を示したものである。外部イオン
源1で生成され、運動エネルギーを与えられたイオン
は、ビームとなってイオン押し出しプレート3と第1の
グリッド4で構成されるイオン溜2に導入される。イオ
ン押し出しプレート3と第1のグリッド4は、イオン溜
2にイオンが導入・蓄積されている間、いずれも接地電
位、または装置のコモン電位に保たれている。
【0020】導入されたイオンがイオン溜2内をドリフ
ト走行し、イオン溜2のX方向の所定の長さを充満する
と、イオン押し出しプレート3にPush-outパルス電圧
(振幅電圧:U1)を印加し、イオンにドリフト走行方
向(X方向)とは交差する方向(TOFMSの光軸方
向、すなわちY方向)に、均一な運動エネルギーを与え
る。すると、イオンは、イオンパルスとなって短時間の
内にイオン溜2から完全に排出された後、第1のグリッ
ド4と第2のグリッド5の電位差U2によって、さらに
大きな運動エネルギーを与えられて、TOFMS分光部
6を飛行する。
【0021】このように、イオン溜2のイオンは、イオ
ン溜2の光軸方向と交差するY方向に2段階で加速され
るので、イオン押し出しプレート3から第2のグリッド
5にかけての部分を2段加速部と呼んでいる。イオン溜
2を排出され、2段加速部で加速されたイオンは、2段
加速部と対向する位置に設けられ、第3のグリッド7お
よび第4のグリッド8を備えたリフレクター電位U4
ミラー反射型のリフレクター部9で反射され、最終的に
マイクロ・チャンネル・プレート(MCP)などで構成
されたイオン検出器10に到達して検出される。なお、
リフレクター部9の第4のグリッド8は、過剰な運動エ
ネルギーを持ったイオンを外部に廃棄する作用をする
が、本発明にとっては必要不可欠なものではない。
【0022】イオンには、イオン押し出しプレート3と
第2のグリッド5の間の電位差U0に対応する一定のエ
ネルギーが等しく与えられるため、加速終了時には、質
量の小さなイオンほど運動速度が大きく、質量の大きな
イオンほど運動速度が小さい。このような速度差が生ま
れる結果、イオンがTOF分光部6およびリフレクター
部9を飛行する間に質量分離が行なわれ、軽いイオンか
ら先にイオン検出器10に到達し、重いイオンは遅れて
イオン検出器10に到達することになり、イオンのマス
スペクトルが測定される。
【0023】このような構成において、TOFMSで
は、質量数Mダルトンの1価のイオン(M+)が運動エ
ネルギーe*U0を持ち、TOF分光部のドリフト空間
3を速度v0で飛行する場合、イオン溜2からイオン検
出器10までの実効飛行距離をL、イオン(M+)の飛
行時間をtionとすると、速度v0と飛行時間tionはそ
れぞれ(1)式と(2)式で与えられる。
【0024】 v0 = 1.39×104√(e*U0/M)(m/s)・・・・・・・・・・・・・(1) tion = 72√(M/e*U0)×L(μs)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2) そして、通常のOA/TOFMSでは、図1に示すよう
に、外部イオン源1の光軸11とイオン溜2の中心軸1
2とは互いに一致させてある。すなわち、外部イオン源
1から導入されるイオンビームのビーム幅(w)は、|
w|=|δ1|+|δ2|(ただし、|δ1|=|δ2|)
である。しかし、本発明のOA/TOFMSでは、図2
に示すように、外部イオン源の光軸11とイオン溜2の
中心軸12とは、互いにY方向にずれている。すなわ
ち、外部イオン源1から導入されるイオンビームのビー
ム幅(w)は、|w|=|δ1|+|δ2|(ただし、|
δ 1|≠|δ2|)である。
【0025】図2の実施例では、|δ1|<|δ2|にな
っている。すなわち、外部イオン源1の光軸11は、イ
オン溜2の中心軸とは一致させず、イオン押し出しプレ
ート3側に向けて、必要な分解能に応じて移動させて設
定されている。その理由を高次収差の観点から説明す
る。
【0026】まず、イオン溜2内でのイオンビームのY
方向への広がりとイオン検出器10上でのイオンパルス
の時間収束性との関係を議論する前に、イオン溜2のイ
オン出射位置(k)を変数として、図2に示した主要な
4つのパラメータ(d1、d2、d3、d4)と併せ、イオ
ンパルスの全飛行時間(T)を表わすのに必要な諸パラ
メータを定義する。
【0027】・全飛行時間:T ・各場定数 ・設計上のイオン加速電圧:U0(通常、U0はイオンビ
ームの中心、またはイオン溜2のギャップd1の中心の
電位と一致させているが、本発明では、高次収差を考慮
した位置(f*d1)の電位をU0とする。) ・TOF分光部6を飛行するイオンの中心運動エネルギ
ー:e*U0 ・イオン押し出しプレート3の印加電圧:U1=α*U0 ・イオン溜2のギャップ:d1 ・第1グリッドと第2グリッドの電位差:U2=β*U0 ・第1グリッドと第2グリッドのギャップ:d2 ・イオン溜2内の中心位置の係数:f(0<f<1)
(fをパラメータとして導入すると、U0=(f*α+
β)*U0と表わされ、f*α+β=1となる。ここで
f*α=α1と置くと、α1+β=1である。) ・イオン溜2内でのイオンビームの中心位置からの広が
り係数:k=(1+δ) ・イオン溜2内でのイオンビーム位置の広がり:δ*f
*d1 ・TOF分光部6のドリフト空間の距離:d3 ・中心イオンビームの上記ドリフト空間での飛行速度:
0(k=1におけるイオンの最終速度のことであ
る。) ・リフレクター9の設定電圧:U4=ρ*U0 ・リフレクター9の長さ:d4 次に、イオンの飛行時間を表わす式の作成と展開を行な
う。f*d1を中心としてイオン溜2内に広がる全ての
イオンが、イオン押し出しプレート3によって、それぞ
れ異なるイオン出射点から同時に加速された後、イオン
検出器10に到達するまでの全飛行時間(T)は、
(3)式で与えられる。
【0028】
【数1】 (3)式から1/v0を除去した式をT(k)(各イオ
ンの飛行距離を示している。)として(4)式に示す。
【0029】
【数2】 T(k)の冪級数展開を行ない、下記に示したk=1(δ
=0)およびα1+β=1としたときのT(k)の1次と
2次の項(dT(k)/dk=0、d2T(k)/d2k=0)、
すなわち(5)式と(6)式の連立方程式を解けば、完
全二次収束の条件を求めることができる。計算の便宜
上、α1=αとして表記してある。
【0030】
【数3】
【数4】 例えば、今後の明快な詳細説明のために、具体例を使用
して説明する。そのための各パラメータを次のように取
る。d1=10mm、d2=20mm、d3=1000m
m、d4=250mm。ここで、外部イオン源1から導
入されるイオンビームの光軸中心を、イオン溜2のギャ
ップの中心位置(d1/2)と一致させると、イオン溜
2内をドリフト走行するイオンビームの中心位置は、イ
オン押し出しプレート3と第1グリッド4の距離d1
10mmの1/2、すなわち5mmのところにあるか
ら、f=0.5となる。これらのパラメータを(5)式
と(6)式に代入して、α1=0.09339を得る。ま
た、α1と共に得られたα、β、ρの各パラメータは次
の通りである。α=α1/f=0.18678、β=0.
90661、ρ=1.3356。従って、例えばU0=5
000Vとすると、U1=851.9V、U2=4488.
5V、U4=6871.3Vが得られる。
【0031】ゼロ次項をT0とすると、k=1、α1+β
=1だから、(4)式よりT0=1.81323×103
を得る。また、dnT(k)/dnkのn=3〜7までの冪級
数展開計算から、T(k)の7次項まで表わしたδに対す
る飛行距離は(7)式で与えられる。
【0032】
【数5】 また、分解能R(δ)は(8)式で表わされる。
【0033】
【数6】 k=1+δであり、−1≦δ≦1、すなわちイオン押し
出しプレート3上がδ=1であり、第1グリッド4上が
δ=−1である。d1=10のとき、d1/2=|±5δ
|であるから、(8)式より、δが正および負の値の場
合の各値に対して得られる分解能R(δ)を、図3のテー
ブル1、テーブル2、およびグラフ1に示す。
【0034】テーブル1とテーブル2から判るように、
収差係数から逆算して得られる分解能は、イオン溜2の
中心から対称な位置、すなわち|+δ|=|−δ|とな
る2つの位置を出射位置とした場合に、両者で得られる
分解能は異なり、プラス側、すなわちイオン押し出しプ
レートに近い側で分解能が高くなる。その理由は、すで
に述べたように、3次項と4次項の係数の符号が異なる
ことによる。
【0035】一般に、TOFMSの分解能は、半値幅
(FWHM)で定義をしている。分解能10000(F
WHM)の条件の場合、すなわち、テーブル1、テーブ
ル2、およびグラフ1でR(δ)=5000の条件の場
合、イオン溜2内におけるイオンビームのY方向のビー
ム許容幅(w)は−2.40<w<3.125となる。こ
のため、外部イオン源1の光軸の位置を、約0.35m
mだけイオン押し出しプレート3側に向けて移動させ
る。+δと|−δ|の差は約0.7mmである。
【0036】また、分解能20000(FWHM)を得
るためには、イオン溜2内におけるイオンビームのY方
向のビーム許容幅(w)が−2.0<w<2.5であるこ
とが必要となり、+δ側の方が|−δ|側よりも許容幅
が0.5mm広いことが判る。この場合は、外部イオン
源1の光軸の位置を、約0.25mmだけイオン押し出
しプレート3側に向けて移動させる。このようにして、
高分解能をより安定して得られるようにすることができ
る。
【0037】5次項以下の項の係数は、(7)式に示し
たように、急速に小さくなって収束する。この傾向を図
4、図5、図6、および図7に示す。5次項は分解能に
若干影響を与えるが、6次項以下の項の分解能への影響
力は急速に減少し、ほとんど無視できることが判る。
【0038】尚、前記実施例では、f=0.5として計
算を行なったが、fを0.5よりも大きく取ることも可
能である。そのようにすることによって、TOF分光部
6を飛行するイオンの中心運動エネルギー(e*U0
の位置を、物理設計時点で、予めイオン押し出しプレー
ト3側に移動させ、Y方向におけるイオン出射位置の非
対称性を緩和し、かつ、イオンの中心運動エネルギー位
置(e*U0)と外部イオン源1からのイオンビームの
Y方向中心位置とを一致させることも可能である。
【0039】図8に、f=0.6の場合の解析例を示
す。このとき、α1=0.10223、α=α1/f=0.
17038、β=0.89777、ρ=1.37425で
あり、U0=5000とすると、U1=933.9V、U2
=4533.05V、U4=6668.0Vとなる。この
例では、分解能20000(FWHM)の場合のイオン
溜2内におけるY方向ビーム許容幅は、前述のf=0.
5の場合に比べて、−2.3<w<2.8に拡大する。
【0040】尚、実際に外部イオン源1の光軸とイオン
溜2の中心軸の位置関係を機械的に変更する方法として
は、例えば、外部イオン源1とイオン溜2の間にスリッ
トを設け、スリット幅およびスリット中心位置を外部か
ら可変させるように構成しても良い。
【0041】一方、α=U1/U0、β=U2/U0、ρ=
4/U0、および、U0=(f*α+β)*U0の各関係
式は、U0、U1、U2、およびU4の各電圧を変更するこ
とによって、fの値を逆算できること(U0の位置の変
更をできること)を意味する。これは、すなわち、所望
の分解能に応じて、適切なU0、U1、U2、およびU4
各電圧を設定すれば、外部イオン源1とイオン溜2の相
対的な位置関係を機械的に動かすことなく、0<f<1
の範囲を電気的に自由に設定することも可能であること
を意味するものである。これを応用すれば、予め、0<
f<1の範囲を計算したテーブルを用意し、そのテーブ
ルを参照して所望の分解能に応じたfを自動設定させる
ことも可能になる。
【0042】また、上述したいくつかの実施例は、基本
的に外部イオン源と組み合わせたOA/TOFMSであ
ることを前提としたものであるが、本発明は、それに限
定されるものではない。例えば、本OA/TOFMS
を、MS/MSやMS/MS/MSなどのタンデム型の
質量分析装置の最終段の分析装置として使用する場合に
も、当然、外部イオン源と組み合わせた場合と同様の効
果を発揮する。特に、MS/MSやMS/MS/MSな
どに用いる場合には、Y方向のビーム幅は更に広くなる
ことが予想され、δに対する非対称性解消策の必要性は
更に増大し、本発明の有用性はいっそう高まる。
【0043】
【発明の効果】以上述べたごとく、本発明のOA/TO
FMSによれば、イオンをイオン溜に導入する導入光学
系の光軸をイオン溜の中心軸から所定の距離だけY方向
にずらして配置したので、高分解能をより安定して得る
ことができるようになった。また、本発明のOA/TO
FMSによれば、イオンの飛行空間全体に印加されてい
る加速電圧、イオン押し出しプレートと第1のグリッド
の間の電位差、第1のグリッドと第2のグリッドの間の
電位差、およびリフレクター電圧の内の少なくとも1つ
の値を変更することによって、垂直加速型飛行時間型質
量分析装置の分解能を制御するようにしたので、イオン
をイオン溜に導入する導入光学系の光軸とイオン溜の中
心軸とを機械的に位置変更することなく、高分解能をよ
り安定して得ることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のOA/TOFMSを示す図である。
【図2】本発明のOA/TOFMSの一実施例を示す図
である。
【図3】イオン溜内におけるイオンビームの位置と分解
能との関係の一例を示す図である。
【図4】イオン溜内におけるイオンビームの位置と分解
能との関係の一例を示す図である。
【図5】イオン溜内におけるイオンビームの位置と分解
能との関係の一例を示す図である。
【図6】イオン溜内におけるイオンビームの位置と分解
能との関係の一例を示す図である。
【図7】イオン溜内におけるイオンビームの位置と分解
能との関係の一例を示す図である。
【図8】イオン溜内におけるイオンビームの位置と分解
能との関係の一例を示す図である。
【符号の説明】
1・・・外部イオン源、2・・・イオン溜、3・・・イオン押し
出しプレート、4・・・第1グリッド、5・・・第2グリッ
ド、6・・・TOF分光部、7・・・第3グリッド、8・・・第
4グリッド、9・・・リフレクター部、10・・・イオン検出
器、11・・・外部イオン源の光軸、12・・・イオン溜の中
心軸。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量分析装置に対してイオンを供給する外
    部イオン源と、外部イオン源の後段に配置され、イオン
    押し出しプレートと第1のグリッドにより構成されるイ
    オン溜と、第1のグリッドと第2のグリッドで構成さ
    れ、イオン押し出しプレートによってイオン溜から押し
    出されたイオンを加速するイオン加速部と、加速された
    イオンを質量分離するリフレクター飛行時間型分光部
    と、質量分離されたイオンを検出するイオン検出器とか
    ら成る垂直加速型飛行時間型質量分析装置において、イ
    オンをイオン溜に導入する導入光学系の光軸をイオン溜
    の中心軸から所定の距離だけY方向にずらして配置した
    ことを特徴とする垂直加速型飛行時間型質量分析装置。
  2. 【請求項2】質量分析装置に対してイオンを供給する外
    部イオン源と、外部イオン源の後段に配置され、イオン
    押し出しプレートと第1のグリッドにより構成されるイ
    オン溜と、第1のグリッドと第2のグリッドで構成さ
    れ、イオン押し出しプレートによってイオン溜から押し
    出されたイオンを加速するイオン加速部と、加速された
    イオンを質量分離するリフレクター飛行時間型分光部
    と、質量分離されたイオンを検出するイオン検出器とか
    ら成る垂直加速型飛行時間型質量分析装置において、イ
    オンの飛行空間全体に印加されている加速電圧、イオン
    押し出しプレートと第1のグリッドの間の電位差、第1
    のグリッドと第2のグリッドの間の電位差、およびリフ
    レクター電圧の内の少なくとも1つの値を変更すること
    によって、垂直加速型飛行時間型質量分析装置の分解能
    を制御するようにしたことを特徴とする垂直加速型飛行
    時間型質量分析装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014520271A (ja) * 2011-06-23 2014-08-21 サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー タンデム質量分析のためのターゲット分析
CN107833823A (zh) * 2005-10-11 2018-03-23 莱克公司 具有正交加速的多次反射飞行时间质谱仪
US11862451B2 (en) 2021-07-21 2024-01-02 Shimadzu Corporation Orthogonal acceleration time-of-flight mass spectrometer

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JP2014520271A (ja) * 2011-06-23 2014-08-21 サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー タンデム質量分析のためのターゲット分析
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