JP2001219285A - 鋼材のレーザ切断方法 - Google Patents

鋼材のレーザ切断方法

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JP2001219285A
JP2001219285A JP2000032891A JP2000032891A JP2001219285A JP 2001219285 A JP2001219285 A JP 2001219285A JP 2000032891 A JP2000032891 A JP 2000032891A JP 2000032891 A JP2000032891 A JP 2000032891A JP 2001219285 A JP2001219285 A JP 2001219285A
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Hiroyuki Yamamoto
博之 山本
Hirofumi Imai
浩文 今井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 厚板のレーザ切断の際に、切断地点の溶融物
を強制的に排除し、裏面に残留し付着するドロスの問題
を解決すること。 【解決手段】 アシストガスを用いた鋼材のレーザ切断
において、連続発振レーザのレーザビームにパルス発振
レーザのパルスビームを合成して被切断材料に照射して
切断し、蒸発反力によって裏面に残留し、付着するドロ
スを強制的に排除する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザ切断におい
て切断面及び被切断対象物の裏面に残留するドロスの付
着量を低減する鋼材のレーザ切断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アシストガスとして酸素ガスを用いる鋼
のレーザ切断では、被切断材料(例えば厚鋼板)にレー
ザビームが照射されるとその地点を中心として溶融が開
始し、放射状に溶融領域が広がる。鋼板が幅方向で水平
に保持され、これに対しレーザビームを鉛直方向から照
射すれば溶鋼は板厚み方向に落下し、さらにレーザビー
ムと同軸に酸素ガスを流しているので溶融物は下方に押
しやられ、溶融物は板の裏面から排出される。
【0003】板厚が比較的厚くレーザ切断速度より酸化
発熱反応の進行速度の方が早い場合、レーザビームは板
の上面では切断現象の最前面より遅れる状態になる。レ
ーザビームが切断方向に進行し、再び板の上面に接触す
るとその地点を中心に再び溶融領域が形成され、溶融物
の排出が行われる。
【0004】このようにレーザ切断はほぼ周期的な溶融
と溶融物の排出が行われる。その結果、切断面にはほぼ
周期的な条痕が形成される。その周期は、ビーム径と酸
化反応の進行速度の兼ね合いで決まるとされている。発
明者らの実験によると16〜40mm厚みの鋼板にアシス
トガスとして酸素ガスを用いた切断では、切断面に形成
された条痕のピッチは200〜400μm程度にあり、
切断速度0.5〜2.0m/min の時で、約20Hzから1
70Hzの周期的な溶融、溶融物の排除を繰り返しながら
進行する。特に、切断速度が低速度になると切断前面下
部の温度が低くなるため、溶融物の粘性が高まる。ま
た、アシスト酸素ガスが板下面付近では拡散してしまっ
ており、ガス流れによる有効な溶融物の排除が難しくな
る。その結果、溶融物は厚板下面へのドロス付着として
残留していた。このドロスの付着によって切断工程後に
さらにドロス落としの手間が増え、工程数の増大、人件
費増、効率低下、コスト増に繋がっていた。
【0005】文献(1):三菱電機:金岡、古藤、日本
機械学会論文集C編59巻562号1993−6では、
切断前面下部での酸素濃度が周囲の大気を巻き込むこと
で99.61%以下になるとドロス付着が増えるとして
いる。これに対し、切断点の周囲からシールドガスとし
て酸素を吹き付け酸素濃度の保持を行っている。この方
法では、高純度の酸素ガスを必要とするため、ガスに要
する費用が非常に高くなってしまう。また、ガスのシー
ルドに依存しており、板厚が厚くなればなるほどガスの
流れは拡散してしまうため、安定性に乏しく、特に製造
現場での使用を前提とした場合周辺からの外乱に弱いな
どの欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した溶
融物の粘性の増大によるドロス付着の問題を解決し、安
定的に溶融物の粘性を低下させ周囲の外乱に強いレーザ
切断方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題は、 (1)連続波レーザとパルス波レーザを併用し、両レー
ザを集光して、同時に被切断材料切断部に照射するに際
し、該連続波レーザで単位体積あたり5.8×104 J/
cm3 以下のエネルギーを投入し、該パルス波レーザを
4.7×105 W/cm 2 以上のパワー密度で、1パルス当
たりのパルスレーザの照射時間を25msec以下、非照射
時間を5μsec 以上として投入し、またパルス発振の繰
り返し周波数を20Hz以上50000Hz以下の繰り返し
周期とする。 (2)(1)に記載のレーザ切断方法において、前記連
続波レーザの照射によって形成されたカーフ溝の前端傾
斜部分に該パルス波レーザを照射する。 (3)(1)に記載のレーザ切断方法において、該パル
ス波レーザを溶融物滞留部に照射することによって溶融
物滞留部にくぼみを形成する。ことを特徴とする鋼材の
レーザ切断方法により解決できる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1を実施するため
の切断装置を図1に示す。レーザ切断装置は連続波発振
レーザ1とパルス発振レーザ9で構成されるレーザ発振
器群、ビーム伝送用反射ミラー14、連続波レーザビー
ムとパルス波レーザビームの合成用ミラー17、集光レ
ンズ3、及び切断用ノズル6で構成される。
【0009】図3は本発明による連続波レーザとパルス
波レーザの出力を合成したときの合成波の光強度を示す
概念図である。横軸に時間、縦軸に合成波の光強度を取
っている。時間的に一定である連続波レーザの光強度
に、一定の時間間隔で周期的に高い尖頭値を持つパルス
波を重畳する。まず、切断レーザとして用いる連続波レ
ーザの効果について説明する。被切断材料を蒸発させる
ために必要な熱量は、材料中での伝熱損失並びに酸化発
熱反応の寄与を無視した一次近似においては、材料の溶
融除去体積:V、上昇温度:ΔT、材料の比熱:C、密
度:ρ、溶融潜熱:Hm、蒸発潜熱:Hv、熱量:Qと
した時に、 Q=ρV(CΔT+Hm+Hv) (1) で表される。体積V=1cm3 を溶融除去するためには、
鋼の熱物性値を例に取り、ΔT=1536℃、C=0.
46J/℃g、ρ=7.87×106g/m3 、Hm=275
J/g、Hv=6362J/gとすると、必要熱量QはQ=
5.80×104 J/cm3 である。
【0010】また、レーザ切断で単位時間:t当たりに
被切断材料を溶融、蒸発できる体積:V/tは式(1)
の変形より次のように表される。 V/t=P/[ρ(CΔT+Hm+Hv)] (2) であるので、レーザの出力:PをP=6000Wとする
と、V/t=1.03×10-73 /sである。被切断
材料の単位時間あたりの溶融体積:V/tは、被切断材
料の厚さ:z、切断幅:w、及び切断速度:vとの積で
表されるので切断速度:v=500mm/min、切断幅w=
1.0mm、とすると、切断可能板厚:zはz=12.4
mmとなる。実際上、酸素をアシストガスとして用いるた
め、レーザの出力P=6000W、切断速度v=500
mm/minの時、軟鋼材の場合では、板厚z=25mmまでの
切断が可能である。よって、レーザによる溶融深さの約
2倍の厚みを切断する事ができるが、その差分の熱量を
酸化発熱反応熱から得ていることになる。
【0011】一方、パルス発振レーザは、被切断材料の
溶融のための主たる投入エネルギーとして使用するので
はなく、急峻なパルスエネルギーを被切断材料に投入し
た際に得られる急激な昇温、溶融、蒸発の過程で生じる
蒸発反力を発生する手段として利用する。これには例え
ば高いピーク出力が得られるQスイッチレーザを用いる
ことができる。この時、被切断材料に対する1パルスあ
たりの照射エネルギーが高くても、集光点のスポット径
が大きければ蒸発に至らず反力が得られない。そこで1
パルスの照射で被切断材料が蒸発する温度に達するよう
にパルスレーザを投入する。例えば、被切断材料の比熱
C=0.46J/℃g、密度ρ=7.87×106 g/m3
の時、溶融した状態の1500℃から沸点3000℃ま
で1パルスの照射で上昇させる。以下その原理を説明す
る。
【0012】パワー密度Pd として時間tだけ照射した
ときの被照射材料の到達温度Tは、熱伝導率K=0.3
4W/cm℃、熱拡散係数κ(κ=K/ρC)とすると第1
次近似では、 T=2Pd /K・√(κt/π) (3) で表される。
【0013】上記式(3)によれば、レーザビームのパ
ワー密度Pd =105W/cm2 の時、融点からスタートし
たとして沸点に達する時間はt=70μsec である。こ
のときの照射エネルギーは1パルス当たり7J/cm2 以上
となる。Pd =106 W/cm2の時の沸点に達するまでの
照射時間はt=700nsecである。このときの照射エネ
ルギーは1パルス当たり0.7J/cm2 以上である。
【0014】次に、切断速度vとパルスの繰り返し周波
数Fとの割合とレーザビームの集光スポット径φとの関
係は、レーザビームがトレースする全ての地点にパルス
が照射され、蒸発反力が得られるようv/F<φとす
る。また、レーザビーム通過後のドロスの滞留を防ぐた
めには、自律的なドロス排除周期よりも短い周期のパル
スを照射してドロス排除を促し、ドロスの粘性が低い状
態のまま外部に排除することが必要である。パルス照射
周期が自律的なドロス排除周期よりも遅い場合には、パ
ルス照射しない場合と同程度の性能しか得られない。発
明者らの実験によれば自律的なドロス排除周期はおよそ
20Hzである。よって、切断時のドロスの排除サイクル
である約F=20Hz以上の周波数とすることが必要であ
る。
【0015】図4は本発明による方法で鋼材を切断した
際、パルス繰り返し周波数に対してドロスフリー切断が
行えた領域を示した図である。パルス波レーザの1パル
ス当たりの照射時間の占める割合(パルスデューティ
ー)は50%とした。パルス波レーザの繰り返し周波数
が20Hzより低い場合には、通常のドロスの排出周期よ
りも遅くドロスの排除が効果的に行われていない。繰り
返し周波数20Hzから500Hzまでは周波数の上昇とと
もにドロス付着量が減少し、500Hzでドロス付着量は
ほぼ0になった。500Hz〜10000Hzが最もドロス
付着量の低減効果が見られた範囲である。
【0016】ドロス付着量が急激に増大する50000
Hzの時、パルス照射間隔は20μsec 周期、デューティ
ー50%であるので、レーザビームの照射時間は10μ
secである。(3)式から、被照射材料が沸点に達する
までのレーザビームの照射時間t=10μsec とする
と、パルスレーザのパワー密度はPd =4.7×105
W/cm2必要である。これは、パルス重畳効果が発現した
条件のうち最もパワー密度が低い条件に相当するため、
熱源のパワー密度を少なくとも4.7×105 W/cm2
上に集光する事が必要であり、かつそのときの周波数は
20Hz〜50000Hzの範囲で照射する必要がある。単
位面積あたりの入射エネルギーが、これより低いと効果
的な蒸発反力が得られずドロス付着量の低減効果が無
い。また、繰り返し周波数がこの範囲よりも高いと実効
的に連続波レーザによる切断に近づき、ドロスの排出周
期が連続波レーザによる切断と同じレベルとなるため効
果が薄い。この点について次に詳しく説明する。
【0017】図5はピーク出力2000Wの1パルス当
たりのパルス波レーザの照射(ON)時間と、ドロスフ
リー切断が行えた切断条件の領域を示している。ドロス
フリーの効果が見られる範囲でパルス周波数が最も遅い
20Hzの時、デューティー50%、照射時間25msecを
切る辺りから徐々にドロスフリーの効果が見え始め、そ
れよりもパルスレーザの照射時間が短いほどドロス付着
量が減り、7msecでほぼ0になった。反対に長くなると
連続波レーザに近づくため、ドロス付着量低減の効果は
見られなくなった。従って、パルス波レーザの照射時間
は、25msec以下としなければならない。
【0018】図6はピーク出力2000Wの1パルス当
たりのパルス波レーザの非照射(OFF)時間と、ドロ
スフリー切断が行えた切断条件の領域を示している。ド
ロスフリーの効果が見られる範囲でパルス周波数が最も
速い50000Hzの時、デューティー50%、非照射時
間10μsec を切る辺りから徐々にドロスフリーの効果
が衰え始めた。それよりもパルスレーザの非照射時間が
短いとドロス付着量が増え5μsec で連続波レーザとほ
ぼ同等になり、ドロス付着量低減の効果は見られなくな
った。従って、パルス波レーザの非照射(OFF)時間
は、5μsec 以上としなければならない。
【0019】このように切断用連続波発振レーザ、及び
高ピークパルス発振レーザの役割はそれぞれ溶融と蒸発
反力を得る手段として使用する。
【0020】本発明の請求項2を実施するための切断装
置を図2に示す。レーザ切断装置は連続波発振レーザ1
とパルス発振レーザ9で構成されるレーザ発振器群、ビ
ーム伝送用反射ミラー14、連続波レーザビーム2とパ
ルス波レーザビーム7、集光レンズ3、及び切断用ノズ
ル6で構成される。
【0021】パルス波レーザビーム7を、連続波レーザ
ビーム2の照射によって形成されたカーフ溝の前端部
分、あるいは溶融物の滞留部分を直接狙って照射する。
この時、カーフ溝前端部分の温度は鋼板板厚方向裏面に
近づくにつれ徐々に低下するが、カーフ溝前端部分は裏
面に近い温度の低い部分においても固液両相の境界付近
にあり融点に近い温度に達している。また、鋼板裏面付
近に滞留する溶融物も裏面に達するカーフ溝のスリット
が形成されている限り融点以上の温度にある。このた
め、パルスレーザとして照射する最低必要な熱量は請求
項1と同じと考えて良い。パルスレーザを照射する際に
は、カーフ溝の狭いスリット部分を通す必要があるた
め、レンズやミラーで集光させることでカーフ溝の壁面
等でのエネルギー損失を最小限に抑える。
【0022】この手法による本発明の効果も請求項1と
同様、図4、図5及び図6に示す斜線の領域において、
ドロスの効果的な排除が得られた。このように請求項2
の切断用連続波発振レーザ、及び高ピークパルス発振レ
ーザは、それぞれ溶融、及び融点以上の温度領域にある
鋼が蒸発する際に発生する蒸発反力を得る手段として使
用する。
【0023】本発明の請求項3を実施するためには図
1、図2の切断装置を使用する。レーザ切断装置は連続
波発振レーザ1とパルス発振レーザ9で構成されるレー
ザ発振器群、ビーム伝送用反射ミラー14、パルス重畳
レーザビーム12、または連続波レーザビーム2とパル
ス波レーザビーム7、集光レンズ3、及び切断用ノズル
6で構成される。
【0024】図7は被切断材料へのパルス重畳ビームの
照射と、そのときにパルス波成分の掘削効果によって切
断前端部斜面に形成される深穴部分での切断用連続波ビ
ームの吸収効果を示した図である。パルス波ビームは、
請求項1に記述の急峻に立ち上がる高いピーク出力と高
いエネルギー密度により、瞬時にして切断前端部斜面に
深い加工穴18を形成する。連続波ビームは形成と同時
に深穴部分に入り込み、深穴内側の壁面で多重反射を繰
り返しながら、下方に進んでいく。この壁面反射の際に
レーザビームの吸収が起こり、その度毎に熱エネルギー
に変換される。深穴に入り込んだレーザのエネルギー
は、壁面でほぼ100%吸収され、深穴を逆行して戻る
成分は無視できる。こうして切断前端部斜面での反射に
よる損失がなく、その分光エネルギーの吸収に寄与する
ためレーザエネルギーの吸収効率が向上する。この結果
として請求項3に記載の手法は、融点に達しない部分を
溶融し融点以上の温度領域に引き上げる効果がある。さ
らには蒸発する際に発生する蒸発反力を得る手段とな
る。
【0025】
【実施例】(実施例1)図1は、本発明の第1の実施例
である。厚さz=25mmの鋼板の切断に切断用の出力P
=6000Wの連続波レーザ1と出力ピーク値P=60
000W、平均出力P=300WのQスイッチパルスレ
ーザ9を併用し、合成ビーム12のパルスピーク出力を
P=66000Wとした。パルスレーザの繰り返し周波
数はF=10000Hz、パルス波レーザ照射時間は1μ
sec とした。
【0026】それぞれのレーザビームは別々の光路を通
り、伝送途中で合成用ミラー17にて一本のレーザビー
ム12に合成され、切断点まで導光される。焦点距離f
=254mmの平凸レンズ3を使用してスポット径はφ=
0.6mmとした。切断速度をv=0.8m/min として、
切断を行った結果、カーフ幅(切り代)w=0.6mmと
なり、カーフ幅内側の鋼材全てが溶融に至った。この時
の連続波レーザ成分による被切断材料への入射エネルギ
ーは、Q=ρCΔT=2P/zwv(CΔT−ρHv)
=1.0×104 J/cm3 であり、パルス成分単身のピー
ク時の出力密度Pd =60000/(π×0.032
=2.1×107 W/cm2 、1パルスあたりの入射エネル
ギーはEd =0.03/(π×0.032)=10.6
J/cm2 である。切断用加工ヘッドに供給するアシストガ
スは純度99.5%以上の酸素ガスを使用した。
【0027】切断中のドロス排出の様子を側方から高速
度ビデオカメラによって撮影した。従来の切断方法で
は、切断中の溶鋼は鋼板裏面付近で滞留、排出を周期的
に繰り返し、温度の低下に伴い粘性が増大した溶鋼は切
断点後方で凝固、残留してドロスとなって付着してい
た。
【0028】これに対し本発明による方法では切断点か
ら前方に向かって溶鋼が連続的に流れ落ち、明らかに効
率的なドロス排出が行われていることが確認できた。図
4はパルス重畳周波数とドロス付着量の関係を示す。パ
ルス重畳により、ドロス付着量は著しく減少することが
わかる。最終的にパルス波成分の照射によって蒸発反力
によるドロスの促進排出効果で鋼板裏面はドロスフリー
となり、切断品質の向上効果は著しく見られた。
【0029】(実施例2)図2は、本発明の請求項2の
実施例である。厚さz=25mmの鋼板の切断に切断用の
出力P=6000Wの連続波レーザ1とゲーティングモ
ード発振で出力ピーク値P=6000W、平均出力P=
300Wのパルスレーザ9を併用した。パルスレーザの
繰り返し周波数はF=10000Hz、デューティー5%
とし、パルス波レーザ照射時間は5μsec とした。
【0030】それぞれのレーザビームを別々の光路を通
して切断地点に導光した。切断用の連続波ビーム照射地
点の後方約5mmの位置の既に形成されているカーフ溝
(切り代)wの隙間を通して溝前方下部部分を狙いパル
ス波ビームを照射した。焦点距離f=254mmの平凸レ
ンズ3を使用してそれぞれのレーザビームのスポット径
はφ=0.6mmとした。切断速度をv=0.8m/min と
して、切断を行った結果、カーフ幅(切り代)がw=
0.6mmとなり、カーフ幅内側の鋼材全てが溶融に至っ
た。この時の連続波レーザ成分による被切断材料への入
射エネルギー密度は、Q=ρCΔT=2P/zwv(C
ΔT−ρHv)=1.0×104 J/cm3 であり、パルス
成分単身のピーク時の出力密度はPd =6000/(π
×0.032)=2.1×106 W/cm2 、1パルスあた
りの入射エネルギーはEd =0.03/(π×0.03
2)=10.6 J/cm2 である。切断用加工ヘッドに供給
するアシストガスは純度99.5%以上の酸素ガスを使
用した。
【0031】従来の切断方法では、切断速度の増加や板
厚の増大と共に、切断された溝部分前方の傾斜角度が大
きくなり、底部ほど後方に遅れ始める。やがて温度が低
下し粘性が増大した溶鋼は鋼板裏面の切断点後方で凝
固、残留してドロスとなって付着していた。
【0032】これに対し本発明による方法では切断溝底
部の温度が高まり粘性が低くなったため切断点裏面にお
いて前方に向かって溶鋼が連続的に流れ落ち、明らかに
効率的なドロス排出が行われていることが確認できた。
最終的にパルス波成分の照射によって加熱作用、及び蒸
発反力によるドロスの促進排出効果で鋼板裏面はドロス
フリーとなり、切断品質の向上効果は著しく見られた。
【0033】(実施例3)請求項3の実施例では、図1
のレーザ切断装置を使用した。厚さz=25mmの鋼板の
切断に切断用の出力P=6000Wの連続波レーザ1と
出力ピーク値P=60000W、平均出力P=300W
のQスイッチパルスレーザ9を併用し、合成ビーム12
のパルスピーク出力をP=66000Wとした。パルス
レーザの繰り返し周波数はF=10000Hz、パルス波
レーザ照射時間は1μsec とした。
【0034】それぞれのレーザビームは別々の光路を通
り、伝送途中で合成用ミラー17にて一本のレーザビー
ムに合成され、切断点まで導光される。焦点距離f=2
54mmの平凸レンズ3を使用してスポット径はφ=0.
6mmとした。切断速度をv=0.8m/min として、切断
を行った結果、カーフ幅(切り代)wがw=0.6mmと
なり、カーフ幅内側の鋼材全てが溶融に至った。この時
の連続波レーザ成分による被切断材料への入射エネルギ
ー密度は、Q=ρCΔT=2P/zwv(CT−ρH
v)=1.0×104 J/cm3 であり、パルス成分単身の
ピーク時の出力密度は、Pd =60000/(π×0.
032)=2.1×107 W/cm2 、1パルスあたりの入
射エネルギーはEd =0.03/(π×0.032=1
0.6J/cm 2 である。切断用加工ヘッドに供給するアシ
ストガスは純度99.5%以上の酸素ガスを使用し、切
断速度は1.0m/min とした。
【0035】本発明による方法の効果を確認するため、
切断中、切断進行方向に被切断材料をハンマーで瞬時に
たたき飛ばし、瞬間的に形状保存された切断前端部の深
穴形状の確認を行った。その結果、直径0.5mm、深さ
2mm程度の深穴が形成されていることを確認した。
【0036】従来の切断方法では、切断中の溶鋼は鋼板
裏面付近で滞留、排出を周期的に繰り返し、温度の低下
に伴い溶鋼の粘性が増大して切断点後方で凝固、残留し
てドロスとなって付着していた。これに対し本発明によ
る方法では、パルスレーザ照射による深い加工穴でのレ
ーザビームの吸収効果によって、切断点から前方に向か
って溶鋼が連続的に流れ落ち、明らかに効率的なドロス
排出が行われていることが確認できた。最終的にパルス
波成分の照射によって蒸発反力によるドロスの促進排出
効果で鋼板裏面はドロスフリーとなり、切断品質の向上
効果は著しく見られた。
【0037】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、鋼材のレ
ーザ切断時の切断地点において連続波発振による常時一
定の入熱に加え、パルスレーザによる高ピークパルスが
加わることで、蒸発反力によるドロスの強制的な排出効
果が得られる。この結果、従来よりも大幅なドロス付着
量の低減効果が見られる。このことは切断後のドロス落
としなどの後工程が不要なため、製造現場での要員削減
やコストの削減に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実現する導波途中合成型のレーザ切断
装置を示す図面。
【図2】切断地点の下部を加熱するレーザ切断装置を示
す図面。
【図3】パルス重畳ビームのレーザビーム波形図。
【図4】パルスレーザ周波数とドロスフリー切断が行え
る領域を示す図。
【図5】パルスレーザON時間とドロスフリー切断が行
える領域を示す図。
【図6】パルスレーザOFF時間とドロスフリー切断が
行える領域を示す図。
【図7】パルス重畳微無のパルス成分による掘削効果と
壁面吸収の説明図。
【符号の説明】
1 連続波レーザ発振器 2 連続波レーザ光 3 集光レンズ 4 集光ミラー 5 アシストガス供給装置 6 切断用ノズル 7 パルスレーザ光 8 被切断材 9 パルスレーザ発振器 10 スパッタ除去ノズル 11 スケール 12 パルス重畳レーザ光 13 切断用アシストガス 14 反射ミラー 15 レーザ出射口 16 切断部 17 合成用ミラー 18 パルスレーザによる加工穴

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アシストガスを用いた鋼材のレーザ切断
    方法において、連続波レーザとパルス波レーザを併用
    し、両レーザを集光して、同時に被切断材料切断部に照
    射するに際し、該連続波レーザで単位体積あたり5.8
    ×104 J/cm3以下のエネルギーを投入し、該パルス波
    レーザを4.7×105 W/cm2 以上のパワー密度で、1
    パルス当たりのパルスレーザの照射時間を25msec以
    下、非照射時間を5μsec 以上として投入し、またパル
    ス発振の繰り返し周波数を20Hz以上50000Hz以下
    の繰り返し周期とすることを特徴とする鋼材のレーザ切
    断方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のレーザ切断方法におい
    て、前記連続波レーザの照射によって形成されたカーフ
    溝の前端傾斜部分に該パルス波レーザを照射することを
    特徴とする鋼材のレーザ切断方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載のレーザ切断方法におい
    て、該パルス波レーザを溶融物滞留部に照射することに
    よって溶融物滞留部にくぼみを形成することを特徴とす
    る鋼材のレーザ切断方法。
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