JP2001194379A - 流体の流動挙動の観測方法および流体観測装置 - Google Patents

流体の流動挙動の観測方法および流体観測装置

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JP2001194379A
JP2001194379A JP2000010231A JP2000010231A JP2001194379A JP 2001194379 A JP2001194379 A JP 2001194379A JP 2000010231 A JP2000010231 A JP 2000010231A JP 2000010231 A JP2000010231 A JP 2000010231A JP 2001194379 A JP2001194379 A JP 2001194379A
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Yuki Sato
祐樹 佐藤
Akihiko Toda
昭彦 戸田
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Nok Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】微小領域においても流体の流れに影響を与えず
に、精度良く直接観測可能な流体の流動挙動の観測方法
および流体観測装置を提供する。 【解決手段】流体中にトレーサを導入して前記流体の流
動挙動を光学的に観測する方法であって、前記トレーサ
として、蛍光物質12が封入されたマイクロカプセル1
0を用いる。流体観測装置は、マイクロカプセル10が
導入された被観測流体を導く光学セルと、光を出射する
光源と、マイクロカプセル10からの蛍光を適当な倍率
で拡大する顕微鏡と、蛍光を撮像するビデオカメラと、
光学セルとビデオカメラの間に配置され、光源からの出
射光を光学セルに導くビームスプリッタ、および光源か
らの出射光の波長の光を除去する光学フィルターなどか
らなる光学部材などにより構成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流体の流動挙動の
観測方法および流体観測装置に関し、特に機械部品や機
械装置などと接触して使用される気体あるいは液体など
の流体の流動挙動の観測方法および流体観測装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】大型の飛行機や小型のハードディスクヘ
ッドなどの高速移動体、あるいはポンプや各種バルブな
どの流体輸送設備や輸送機械などの他、例えばエアコン
などの熱媒体として、あるいは油圧機器などの作動流体
として、さらには機械そのものの潤滑剤として、さまざ
まな形態で機械装置は流体と関わり合いをもって使用さ
れている。そのため、これらの機械装置の性能、効率お
よび信頼性向上のため、流体の流れを解析することがし
ばしば求められる。特に近年では機械装置の小型化が進
み、数μmから数mm程度の微小領域での流動観察、計
測手法といった観測方法の必要性が高まってきている。
【0003】従来技術において、流体の流動挙動を直接
観測する方法として、例えば多数の短い糸(タフト)の
なびき具合から流れの方向を知るタフト法、物体表面に
油と顔料の混合物を塗布して、流れによって現れるすじ
模様から流れの状態、方向、速度を知る油膜法、流体中
にその流体とともに運動する微粒子を混ぜて、その動き
を追跡して流れを観測する方法であるトレーサ法、光学
的方法として、密度の変化に基づく屈折率の変化を利用
したシュリーレン法の他、ホログラフ法およびレーザス
ペックル法など、様々な方法が使用されている。
【0004】上記の方法の中で、トレーサ法は、対象流
体が液体もしくは気体のどちらの場合でも使用すること
ができ、さらに適用可能な流速の範囲が広いため、流体
の流動挙動を観測する方法として、最も広く一般的に使
用されている方法の1つである。その一方で、上記トレ
ーサ法を適用する際に、最も注意すべき点は、導入した
トレーサが、対象とする流体の流れを乱すおそれがない
かどうかという点である。トレーサが流体の抵抗とな
り、流れを乱す場合には、トレーサ法は適用できない。
【0005】トレーサが流体の抵抗となる物理的な作用
は、トレーサに作用する浮力、重力、遠心力などであ
る。ここで、用いるトレーサおよび観測対象である流体
の密度をそれぞれρt およびρf とし、トレーサを球と
みなしてその直径をdとし、流体の粘性抵抗(粘度)を
ηとすると、トレーサが上記物理的作用によって、流体
の流れと異なる方向に向かう速度成分UP は、(1−ρ
t /ρf )と(d2 /η)との積で表される。すなわ
ち、(ρt /ρf )を1に近づければ(1−ρt
ρf )が零に近づき、UP が零に近似できることから、
対象とする流体の流れを乱すことはなく、トレーサ法を
適用することができる。あるいは(d2 /η)を零に近
づくほど小さくしても同様に、UP が零に近似できるこ
とから、導入したトレーサが、対象とする流体の流れを
乱すことはなく、トレーサ法を適用することができる。
【0006】上記のような原則に基づき、トレーサおよ
び流体の密度ρt およびρf をできるだけ等しくするよ
うに、トレーサには、煙や染料のように、粒径の非常に
小さいものが選択されて、使用されている。また、泡や
特別な中空のガラス玉などを用いることにより、トレー
サの密度を小さくして、トレーサおよび流体の密度ρt
およびρf をできるだけ等しくすることもある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
従来の泡などを用いたトレーサ法では、泡を発生するた
めの特別な装置が必要になるだけでなく、泡は壊れやす
く存在しうる時間が限られており、また、中空のガラス
玉などの製作も容易ではないことから、現実にはトレー
サの粒径を小さくすることで、流れに及ぼす影響を少な
くする場合が多い。
【0008】また、従来のトレーサ法は、流体中のトレ
ーサ表面で反射、散乱する光を撮影し観測するものであ
ったが、例えば機械部品のごく表面における流体、ある
いは細管等の小さな間隙における流体の流動挙動の観測
等、数μmから数mm程度の微小領域における流体の流
動挙動の観測に、従来技術であるところのトレーサ法を
適用する場合には、光学的に拡大して撮影するため、撮
像装置に入射するトレーサからの反射光強度は減少する
ことから、ノイズ光であるトレーサ以外の部分からの反
射光とのコントラストが低下し、その結果、当該観測は
不可能か、あるいは観測が行えたとしても、その測定精
度は非常に低いものであった。
【0009】上記の問題点を解決する方法として、従来
技術において、既存の蛍光物質をトレーサとして使用
し、適切な光学フィルターを用いて、トレーサからの蛍
光だけを撮影し、前記のノイズの原因となる反射光を分
離する方法が知られている。しかしながら、こうした既
存の蛍光物質は一般に無機物であるため、その密度は一
般的な流体に比べて非常に大きいことから、上記のよう
に流れに及ぼす影響が無視できない。
【0010】また、特に、微小領域の観測では、既存の
蛍光物質の粒径では、大きすぎるため、既存の蛍光物質
をトレーサとして使用する場合には、その粒径を小さく
して使用する必要があった。しかしながら、蛍光物質の
形状と大きさを揃えて、微細に粉砕することは非常に困
難であり、その結果、既存の蛍光物質を観測用トレーサ
として使用する従来技術においては、微小領域の流れを
観測することは不可能であった。
【0011】さらに、既存のさまざまな蛍光物質をその
まま流体中に導入して使用する場合、流体中の他の物質
と接触することによって生じる蛍光物質の発光強度の低
下や、蛍光物質が水や油などの流体へ溶解してしまった
り、化学反応を起こしてしまったりするという問題もあ
った。
【0012】上記のように、従来技術においては、数μ
mから数mm程度の微小領域の流体の流動挙動を精度良
く直接観測するトレーサ法がなく、必要に応じて、スケ
ールアップしたモデルを製作するなどして観測されてい
た。
【0013】本発明は上記の事情に鑑みてなされたもの
であり、従って、本発明は、微小領域においても流体の
流れに影響を与えずに、精度良く直接観測可能な流体の
流動挙動の観測方法および流体観測装置を提供すること
を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明の流体の流動挙動の観測方法は、流体中にト
レーサを導入して前記流体の流動挙動を光学的に観測す
る方法であって、前記トレーサとして、蛍光物質が封入
されたマイクロカプセルを用いる。
【0015】上記の本発明の流体の流動挙動の観測方法
によれば、蛍光物質をマイクロカプセル化し、その蛍光
物質が封入されたマイクロカプセルを流体中に導入し、
その運動を観測することで、蛍光物質が流体中の他の物
質と、接触あるいは化学反応することによって生じる発
光強度の低下などの問題を防止でき、精度良く流体の流
動挙動を観測することができる。
【0016】上記の本発明の流体の流動挙動の観測方法
は、好適には、前記マイクロカプセルの形状が、実質的
に球状である。これにより、被観測領域の流路を構成す
る材料との吸着、エッジ部にトレーサが詰まるという、
観測を実施する際の問題を防止することができる。ま
た、マイクロカプセルを球状にすることで、流体の流れ
に対し抵抗となり、観測精度を低下させる原因となる、
トレーサに作用する力を、正確に見積もることができる
ことから、観測誤差を正確に見積もった観測をすること
ができる。
【0017】上記の本発明の流体の流動挙動の観測方法
は、好適には、前記マイクロカプセルの粒径が、0.1
〜100μmの範囲内である。マイクロカプセルの粒径
は、被観測領域のスケールに応じて決定されるが、上記
範囲内の粒径であれば、微小領域における流体の流動挙
動の観測に、トレーサとして使用するのが適当であり、
粒径が0.1μm以下では、マイクロカプセル1個当た
りの蛍光強度が小さく、観測が困難であり、粒径が10
0μm以上では上述した式におけるdが大きくなってし
まい、その結果、Up が零に近似できなくなり、流体の
流れを乱すおそれがあることから、微小領域における流
体の流動挙動の観測に用いるには、適当でないからであ
る。
【0018】上記の本発明の流体の流動挙動の観測方法
は、好適には、前記蛍光物質が有機物である。蛍光物質
に密度の小さい有機蛍光物質を用いることで、トレーサ
による被観測流体の流れの乱れを防止でき、微小領域に
おける流体の流動挙動を精度良く観測することができ
る。
【0019】上記の本発明の流体の流動挙動の観測方法
は、好適には、前記マイクロカプセルが、前記蛍光物質
と前記蛍光物質を溶解または分散させる媒体を含む。さ
らに好適には、前記媒体が有機高分子である。これによ
り、蛍光物質が流体中の他の物質と接触する事によって
生じる蛍光物質の発光強度の低下、蛍光物質の流体中へ
の溶解または流体との化学反応などを防止でき、十分な
発光を行う状態が保持される。保持する媒体が、有機高
分子である合成樹脂である場合には、この媒体をそのま
まマイクロカプセルの壁材として、使用することが可能
である。
【0020】上記の本発明の流体の流動挙動の観測方法
は、好適には、前記媒体が液体の場合には、前記マイク
ロカプセルが前記蛍光物質と前記媒体を被覆する壁材を
さらに含む。さらに好適には、前記壁材が有機高分子で
ある。これにより、蛍光物質が流体中の他の物質と接触
する事によって生じる蛍光物質の発光強度の低下、蛍光
物質の流体中への溶解または流体との化学反応などを防
止でき、十分な発光を行う状態が保持される。この場
合、壁材として、有機高分子である合成樹脂を用いるこ
とにより、一般的な手法により、上記マイクロカプセル
を簡易に製造することができる。
【0021】さらに、上記の目的を達成するため、本発
明の流体観測装置は、流体の流動挙動を光学的に観測す
る流体観測装置であって、蛍光物質が封入されたマイク
ロカプセルが導入された被観測流体を導く光学セルと、
光を出射する光源と、光を受光して受光信号を出力する
受光部と、前記光源からの出射光を前記被観測流体中の
前記マイクロカプセルに導き、前記マイクロカプセル中
の蛍光物質から発せられる蛍光を前記受光部に結合させ
る光学部材とを有する。
【0022】上記の本発明の流体観測装置によれば、光
源からの出射光が、光学部材を通して、被観測流体中の
マイクロカプセルに照射され、当該光を吸収したマイク
ロカプセル中の蛍光物質により蛍光が発せられ、当該蛍
光が光学部材により、受光部に結合され、受光部から、
受光信号が出力されることにより、流体中のマイクロカ
プセルの挙動を観測することができる。
【0023】上記の本発明の流体観測装置は、好適に
は、前記光源からの出射光の波長が、前記蛍光物質の吸
収領域の波長である。これにより、蛍光物質の電子状態
を励起することができ、励起された電子が基底状態に戻
るときに発せられる蛍光が受光部に結合することによ
り、流体中のマイクロカプセルの挙動を観測することが
できる。
【0024】上記の本発明の流体観測装置は、好適に
は、前記受光部が撮像部である。さらに好適には、前記
受光部が電荷結合型撮像素子である。これにより、蛍光
が撮像部により電気信号に変換され、走査によって、電
気信号(受光信号)となって取り出されることにより、
流体中のマイクロカプセルの挙動を撮像することができ
る。また、他の撮像素子などによっても、蛍光が電気信
号に変換され、取り出されることにより、流体中のマイ
クロカプセルの挙動を撮像することができる。
【0025】上記の本発明の流体観測装置は、好適に
は、前記光学部材が、前記光学セルと前記受光部の間に
配置され、前記光源からの出射光の波長の光を除去する
光学フィルターを含む。これにより、受光部には、蛍光
のみが結合されることになり、前記光源からの出射光が
受光部に結合されることによる、出射光とのコントラス
トの低下を防止して、微小領域においても、マイクロカ
プセルの挙動を正確に観測することができる。
【0026】上記の本発明の流体観測装置は、好適に
は、前記流体の流動挙動を光学的に観測する流体観測装
置には、前記受光部から出力された受光信号を処理する
信号処理部をさらに有する。さらに好適には、前記信号
処理部において、画像処理を行う。これにより、受光部
から出力された受光信号が信号処理部により、所定の規
則で、水平、垂直に走査して並べられていき、光学像の
画像処理が行われることにより、マイクロカプセルの挙
動を観測することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る流体の流動
挙動の観測方法および流体観測装置について、図面を参
照して下記に説明する。
【0028】図1は本実施形態に係る流体の流動挙動の
観測方法にトレーサとして用いる蛍光物質が封入された
マイクロカプセルの断面図である。マイクロカプセル1
0の表面は、例えば樹脂などの壁材11で覆われてお
り、その中に、例えば有機物の蛍光物質12および蛍光
物質12を溶解、分散させる媒体13が封入されてい
る。上記のマイクロカプセル10の形状は、後述の実施
例で示す製造方法により、実質的に球状となっており、
粒径は、0.1〜100μmの範囲内である。
【0029】有機の蛍光物質12としては、すでに市販
されているものが多数あるため、目的とする蛍光波長お
よび密度などに応じて任意の物質を選択して使用するこ
とができる。ここで、観測の感度の面から、発光量子収
率の高い蛍光物質12を用いることが好ましい。同様
に、マイクロカプセル10に占める蛍光物質12の割合
は、高い程マイクロカプセル1個当たりの発光量が多く
なるため好ましい。
【0030】蛍光物質12を保持する媒体13が、樹脂
である場合には、この媒体13をそのままマイクロカプ
セル10の壁材11として、使用することが可能であ
る。この場合、樹脂は、内部で蛍光物質12が十分な強
度で発光し、蛍光物質12を励起する出射光および蛍光
を透過する程度の透過性を有し、流体中で容易に破壊し
なければ、任意のものを用いることができる。また、樹
脂は、単一成分あるいは、複数の成分を組み合わせて使
用することができる。
【0031】蛍光物質12を保持する媒体13が、液体
である場合には、壁材11として、例えば有機高分子で
ある合成樹脂を用いる必要がある。媒体13である液体
は、内部で蛍光物質12が十分な強度で発光するという
条件を満たせば、特に制限はない。水、アルコールなど
が代表的なものであり、単独あるいは複数の溶媒を組み
合わせて使用することができる。なお、壁材11として
の樹脂についての条件は、上記に述べた通りである。
【0032】上記のマイクロカプセル10の粒径を、
0.1〜100μmの範囲内としたのは、マイクロカプ
セル10の粒径は、被観測領域のスケールに応じて決定
されるが、上記範囲内の粒径であれば、微小領域におけ
る流体の流動挙動の観測に、トレーサとして使用するの
が適当であり、粒径が0.1μm以下では、マイクロカ
プセル1個当たりの蛍光強度が小さく、観測が困難であ
り、粒径が100μm以上では大きすぎ、上述した式に
おける粒径dが大きくなってしまい、その結果、Up
零に近似できなくなり、流体の流れを乱すおそれがある
ことから、微小領域における流体の流動挙動の観測に用
いるには、適当でないからである。
【0033】上記の蛍光物質12が封入されたマイクロ
カプセル10を流体中にトレーサとして導入することに
より、蛍光物質12が流体中の他の物質と接触すること
によって生じる発光強度の低下、あるいは蛍光物質の流
体中への溶解または流体との化学反応などを防止でき、
十分な発光を行う状態が保持され、精度良く流体の流動
挙動を観測することができる。
【0034】また、蛍光物質12に密度の小さい有機蛍
光物質を用いることで、トレーサとなるマイクロカプセ
ル10による被観測流体の流れの乱れを防止でき、微小
領域における流体の流動挙動を精度良く観測することが
できる。
【0035】マイクロカプセル10の形状を実質的に球
状とすることにより、被観測領域の流路を構成する材料
との吸着、エッジ部にトレーサが詰まるという、観測を
実施する際の問題を防止することができる。また、マイ
クロカプセル10を球状にすることで、流体の流れに対
し抵抗となり、観測精度を低下させる原因となる、トレ
ーサとなるマイクロカプセル10に作用する力を、正確
に見積もることができることから、観測誤差を正確に見
積もった観測をすることができる。
【0036】図2は、本発明の実施形態に係る流体観測
装置の構成図である。本発明の実施形態に係る流体観測
装置20は、マイクロカプセル10が導入された被観測
流体を導く光学セル23と、光を出射する光源21と、
マイクロカプセル10からの蛍光を適当な倍率で拡大す
る顕微鏡25と、蛍光を撮像するビデオカメラ(受光部
および信号処理部)26と、光学セル23とビデオカメ
ラ26の間に配置され、光源21からの出射光を光学セ
ル23に導くビームスプリッタ22、および光源21か
らの出射光の波長の光を除去する光学フィルター24な
どからなる光学部材などにより構成されている。
【0037】上記の本発明の実施形態に係る流体観測装
置20において、光源21としては、前記蛍光物質12
の吸収領域の波長の光を出射するものを用いる。なお、
光源21としては、使用する蛍光物質12の種類や濃
度、蛍光物質12を保持する媒体13、およびマイクロ
カプセル10の壁材11の選択により、吸収光量の大き
いマイクロカプセルをトレーサとして使用する場合に
は、エネルギー密度の高い光源であるレーザ光源を使用
することが好ましい。
【0038】上記構成において、ビデオカメラ26での
マイクロカプセル10からの蛍光を撮像の際に、光源2
1からの出射光をも撮像してしまうことによる、出射光
とのコントラストの低下を防止して、光源21からの出
射光の波長の光を除去する光学フィルター24が配置さ
れている。従って、当該光学フィルター24によって、
光源21からの出射光の波長の光を容易に除去するため
には、光源としては、水銀ランプやレーザー光源のよう
に、単一波長の光を発する光源を用いることが好まし
い。
【0039】上記構成の流体観測装置20において、光
源21からの出射光が、ビームスプリッタ22により反
射され、光学セル23を通過して、被観測流体中のマイ
クロカプセルに照射されることにより、当該光を吸収し
たマイクロカプセル中の蛍光物質により蛍光が発せら
れ、当該蛍光がビームスプリッタ22を通過し、光学フ
ィルター24を通過して、顕微鏡25により適当な倍率
に拡大され、ビデオカメラ26に結合される。
【0040】蛍光がビデオカメラ26の中の撮像部であ
る、例えばCCD(Charge CoupledDevice 、電荷結合
型撮像素子) により、電気信号に変換され、水平垂直の
走査によって1次元の電気信号(受光信号)となって取
り出され、当該電気信号がビデオカメラ26の中の信号
処理部により、所定の規則で、水平、垂直に走査して並
べられていき、光学像の画像処理が行われることによ
り、流体中のマイクロカプセル10の挙動を観測するこ
とができる。上記蛍光を受光するには、CCD以外の撮
像管、あるいはその他の受光素子を用いることも可能で
ある。
【0041】本発明の流体観測装置20によれば、上記
のトレーサとしてマイクロカプセル10を用いた流体の
流動挙動を簡易な構成で、精度良く観測することができ
る。
【0042】本発明に係る流体の流動挙動の観測方法お
よび流体観測装置の実施形態は、上記の説明に限定され
ない。例えば、マイクロカプセル10の製造方法は、限
定されるものではなく、例えば、噴霧乾燥法やコアセル
ベーション法などの一般的な手法を用いてマイクロカプ
セル10を製造することができる。また、マイクロカプ
セル10の構成物質として、本実施形態における構成物
質以外の構成物質、例えば、樹脂に対する安定化剤、補
強材、あるいは蛍光物質12に対する安定化剤、増感剤
等を加えることもできる。その他、本発明の要旨を逸脱
しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0043】
【実施例】以下に、本発明に係る流体の流動挙動の観測
方法および流体観測装置についての実施例を、図面を参
照して下記に説明する。
【0044】上記のマイクロカプセル10を一般的な方
法の1つを用いて製造した実施例について説明する。ま
ず、500mlのセパラブルフラスコ中に、蒸留水20
0mlおよびドデシル硫酸ナトリウム(関東化学製)
2.0gを加えて、ウォーターバスを用いて液温を40
℃に保ちつつ、撹拌羽根を用いて、十分溶解させた。
【0045】次に、蛍光物質12として、有機蛍光物質
であるクマリン6(アクロス社製)0.2gを溶解させ
たメチルメタクリレート(関東化学製)100gを上記
セパラブルフラスコ中に投入し、撹拌を行って、蛍光物
質含有メチルメタクリレートを水中に乳化、分散させ
た。
【0046】次に、完全に乳化状態になった後、重合開
始剤である過硫酸アンモニウム(東京化成製)0.2g
および亜硫酸水素ナトリウム(東京化成製)0.2gを
徐々に投入した。
【0047】次に、すべての重合開始剤を投入した後、
ウォーターバスの温度を60℃まで上げ、3時間重合反
応を行なった。
【0048】次に、セパラブルフラスコをウォーターバ
スから外して、室温まで冷却後、乳化液をミニスプレー
ドライヤーB- 191(柴田科学機器工業製)を用い
て、噴霧乾燥することにより、図1に示す構造のクマリ
ン6含有ポリメチルメタクリレートのマイクロカプセル
10を製造することができた。
【0049】図3は、上記の製造方法により製造された
マイクロカプセル10を、走査電子顕微鏡を用いて、撮
像した写真である。図3に示すマイクロカプセル10の
平均粒径は、レーザー粒度測定器を用いて、求めたとこ
ろ、13μmであった。
【0050】図4は、上記の本実施形態に係る流体観測
装置20を用いて撮像した流体の流動挙動の観測条件を
説明するための説明図である。本実施例では、図4に示
すように、微小な複列の溝30、31内における流体中
にマイクロカプセル10を導入して流体の流動挙動を観
測した。図4において、複列の溝の溝幅は0.2mm、
マイクロカプセル10の平均粒径は10μm、溝31内
の流体は流速約1m/secで流れており、溝30内の
流体は静止しているため流速は0m/secである。な
お、本実施例では、流体として、工業用潤滑油であるダ
フニースーパーマルチオイル♯22(出光興産)を用い
た。
【0051】上記の観測条件の下で、実際に本実施形態
に係る流体観測装置20を用いて撮像した流体の流動挙
動の観測結果を図5に示す。
【0052】図5では、微小領域における流体中のマイ
クロカプセル10からの蛍光がコントラスト良く撮像さ
れており、これにより、微小領域の流体の流動挙動を精
度良く観測することができることがわかる。
【0053】図5(a)は、流体の流速が約1m/se
cの溝31内、および流体が静止している溝30内に、
それぞれマイクロカプセル10を導入した時点における
流体の流動挙動の観測結果である。図5(a)によれ
ば、溝31内および溝30内の流体中のマイクロカプセ
ル10の発光強度は、図5(a)の図面上中央部が最も
強くなっている。
【0054】図5(b)は、図5(a)から、0.5×
10-3秒後の観測結果を示したものである。図5(b)
では、図5(a)と比較して、溝30内の流体中のマイ
クロカプセル10の発光位置に変化は見られなく、流体
が静止していることがわかるが、溝31内の流体中のマ
イクロカプセル10の発光位置は、特に最も発光強度の
高い部分を見ればわかるように、図5(a)と比較し
て、図面上左に移動しており、流体が流動している様子
を示している。
【0055】図5(c)は、図5(b)から、0.5×
10-3秒後の観測結果を示したものである。図5(c)
においても同様に、図5(b)と比較して、溝30内の
流体中のマイクロカプセル10の発光位置に変化は見ら
れなく、流体が静止していることがわかるが、溝31内
の流体中のマイクロカプセル10の発光位置は、特に最
も発光強度の高い部分を見ればわかるように、図5
(b)と比較して、図面上さらに左に移動しており、流
体が流動している様子を示している。なお、被観測流体
としては、上記のほか、蛍光物質12を励起する出射光
および蛍光を透過する程度の透過性を有する流体であれ
ば、任意のものを用いることができる。
【0056】
【発明の効果】本発明の流体の流動挙動の観測方法によ
れば、微小領域における流体の流動挙動を観測する場合
でも、トレーサとして使用するマイクロカプセルが、流
体の挙動を乱すことはないため、精度良く観測すること
ができる。また、マイクロカプセルに封入する蛍光物質
の種類や量などを制御することにより、マイクロカプセ
ル1個当たりの発光量を大きくできるため、蛍光を拡大
して撮像する場合でも、蛍光以外の反射光などとのコン
トラストが低下することもなく、精度良く、流体の流動
挙動を観測することができる。さらに、蛍光物質をマイ
クロカプセルに封入することにより、蛍光物質が流体中
の他の物質と、接触あるいは化学反応することによって
生じる発光強度の低下などの問題を防止でき、精度良
く、流体の流動挙動を観測することができる。
【0057】本発明の流体観測装置によれば、上記のト
レーサとしてマイクロカプセルを用いた流体の流動挙動
を簡易な構成で、精度良く観測することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明に係る流体の流動挙動の
観測方法に用いるマイクロカプセルの断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る流体観測装置の構成図で
ある。
【図3】図3は、本発明に係る流体の流動挙動の観測方
法に用いるマイクロカプセルの走査電子顕微鏡写真であ
る。
【図4】図4は本発明に係る流体の流動挙動の観測方法
および流体観測装置を用いて、観測した流体の流動挙動
の観測条件の説明図である。
【図5】図5(a)は本発明に係る流体の流動挙動の観
測方法および流体観測装置を用いて、観測した微小複列
溝内における流体の流動挙動の観測結果であり、(a)
は、流体中へのマイクロカプセルの導入時、(b)は
(a)から0.5×10-3秒後、(c)は(b)から
0.5×10-3秒後の観測結果を示す。
【符号の説明】
10…マイクロカプセル、11…壁材、12…蛍光物
質、13…媒体、20…流体観測装置、21…光源、2
2…ビームスプリッタ、23…光学セル(被観測領
域)、24…光学フィルター、25…顕微鏡、26…ビ
デオカメラ、30、31…溝。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】流体中にトレーサを導入して前記流体の流
    動挙動を光学的に観測する方法であって、 前記トレーサとして、蛍光物質が封入されたマイクロカ
    プセルを用いる流体の流動挙動の観測方法。
  2. 【請求項2】前記マイクロカプセルの形状が、実質的に
    球状である請求項1記載の流体の流動挙動の観測方法。
  3. 【請求項3】前記マイクロカプセルの粒径が、0.1〜
    100μmの範囲内である請求項2記載の流体の流動挙
    動の観測方法。
  4. 【請求項4】前記蛍光物質が有機物である請求項1〜3
    のいずれかに記載の流体の流動挙動の観測方法。
  5. 【請求項5】前記マイクロカプセルが、前記蛍光物質と
    前記蛍光物質を溶解または分散させる媒体を含む請求項
    1〜4のいずれかに記載の流体の流動挙動の観測方法。
  6. 【請求項6】前記媒体が液体の場合には、前記マイクロ
    カプセルが前記蛍光物質と前記媒体を被覆する壁材をさ
    らに含む請求項5記載の流体の流動挙動の観測方法。
  7. 【請求項7】前記媒体もしくは前記壁材が有機高分子で
    ある請求項5または6記載の流体の流動挙動の観測方
    法。
  8. 【請求項8】流体の流動挙動を光学的に観測する流体観
    測装置であって、 蛍光物質が封入されたマイクロカプセルが導入された被
    観測流体を導く光学セルと、 光を出射する光源と、 光を受光して受光信号を出力する受光部と、 前記光源からの出射光を前記被観測流体中の前記マイク
    ロカプセルに導き、前記マイクロカプセル中の蛍光物質
    から発せられる蛍光を前記受光部に結合させる光学部材
    とを有する流体観測装置。
  9. 【請求項9】前記光源からの出射光の波長が、前記蛍光
    物質の吸収領域の波長である請求項8記載の流体観測装
    置。
  10. 【請求項10】前記受光部が撮像部である請求項8また
    は9記載の流体観測装置。
  11. 【請求項11】前記受光部が電荷結合型撮像素子である
    請求項10記載の流体観測装置。
  12. 【請求項12】前記光学部材が、前記光学セルと前記受
    光部の間に配置され、前記光源からの出射光の波長の光
    を除去する光学フィルターを含む請求項8〜11のいず
    れかに記載の流体観測装置。
  13. 【請求項13】前記流体の流動挙動を光学的に観測する
    流体観測装置には、前記受光部から出力された受光信号
    を処理する信号処理部をさらに有する請求項8〜12の
    いずれかに記載の流体観測装置。
  14. 【請求項14】前記信号処理部において、画像処理を行
    う請求項13記載の流体観測装置。
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