JP2001194364A - 海水中の同化可能有機炭素測定方法 - Google Patents

海水中の同化可能有機炭素測定方法

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JP2001194364A
JP2001194364A JP2000006929A JP2000006929A JP2001194364A JP 2001194364 A JP2001194364 A JP 2001194364A JP 2000006929 A JP2000006929 A JP 2000006929A JP 2000006929 A JP2000006929 A JP 2000006929A JP 2001194364 A JP2001194364 A JP 2001194364A
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seawater
microorganisms
measuring
organic carbon
sample
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Yuichiro Nakaoki
優一郎 中沖
Takuhei Kimura
拓平 木村
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】海水中の同化可能有機炭素測定方法を提供す
る。 【解決手段】海水中に存在する細菌を混在状態で培養
し、その最大増殖数をコロニー数またはアデノシン三リ
ン酸を指標として測定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海水の微生物増加
ポテンシャルの指標となる海水中の同化可能有機炭素の
測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】浄水の分野において水道水の配水管内で
の細菌二次増殖を抑制することは、水系病原微生物の発
現や配水管の腐食を防止するうえで重要であり、現在は
主に残留塩素濃度によって管理されている。しかし過剰
な塩素の添加はトリハロメタン等の生成を引き起こすこ
と、また配水管内に一度バイオフィルムが生成されてし
まうと塩素では有効に処理できないことから、欧米では
残留塩素濃度を削減し、同時に水道水中の微生物増殖を
引き起こす栄養源を除去することが重要と考えられるよ
うになってきた。
【0003】このような水道水中の微生物増殖ポテンシ
ャルを評価する方法として、水道水中に含有する微量の
生物易分解性有機物を定量する手法が提案されている。
同化可能有機炭素(Assimilable Orga
nic Carbon、以下AOCと略する)定量方法
(van der Kooij D., et al,
J. Am. Wat. Wks. Assoc.
74, 540〜545 (1982)、van de
r Kooij D., et al, Wat. R
es. 29, 1655〜1662 (1995))
では、試料中で微生物を増殖させ、その最大増殖数から
微生物が分解可能な有機炭素量を推定する。この方法で
は、試料中に二種類の純粋培養した微生物を接種し、培
養中の最大増殖コロニー数と各微生物の増殖収率からA
OCに相当する酢酸濃度に換算してあらわす。実際に増
殖した微生物数をパラメーターとするため、細菌の増殖
ポテンシャルを適切に表現しうるきわめて有効な指標で
ある。
【0004】水道水中のAOC測定における問題点とし
て、コロニー数の測定に通常数日かかり、結果がすぐに
得られないことがあげられる。これに対しては、コロニ
ー数を測定する代わりに細胞内のアデノシン三リン酸を
ルシフェラーゼを用いて定量して微生物数に換算するこ
とにより、迅速に最大増殖コロニー数を測定する方法も
報告されている。
【0005】水道水中に含有する微量の生物易分解性有
機物の定量方法には、他に生物分解性溶存有機炭素(B
iodegradable Dissolved Or
ganic Carbon、以下BDOCと略する)定
量方法がある。これらには二つの測定方法が提案されて
いる(Pierre Servais, et al,
Wat. Res., 21(4), 445〜45
0 (1987))。一つは、フィルター除菌した試料
に同起源の試料を細菌が混在したまま植菌して培養し、
培養前後の溶存有機炭素(DOC)の減少量を微生物が
分解可能な有機炭素量とする方法である。この方法では
DOCの経時変化を測定値が一定となるまで測定して培
養開始時のDOC測定値から最後に定常となったDOC
測定値を引いたものを、微生物が分解した溶存有機炭素
量、すなわちBDOCとする。BDOCを測定する別の
方法は、水道水試料内で増殖した微生物の総重量からB
DOCを推定する方法である。この方法では、フィルタ
ー除菌した試料に同起源の試料を微生物が混在したまま
植菌、さらにトリチウムでラベルされたチミジンを添加
して培養する。微生物は一度増加した後死滅していくの
で、その間の微生物のDNAの放射線量合計から死滅し
た微生物の総重量が推定できる。この総重量からBDO
Cを換算する。しかし、この方法は微生物DNAの調製
をしなければならないこと、放射性物質を使用すること
のために簡便さに欠ける。
【0006】一方、膜による分離技術においては、微生
物増殖による装置内部の汚染が問題となることがあり、
処理海水中でどの程度の微生物が増殖するのか予測する
必要性が認識されてきている。
【0007】しかし全有機炭素量や生菌数、全菌数など
の測定による従来の水質指標では微生物による分離装置
の汚染の発生を予測することは出来ない。また、AOC
定量方法は、使用する微生物が水道水中から単離したも
のであり、塩濃度が約3.5%と高い海水にそのまま適
用することは難しい。さらにアデノシン三リン酸(AT
P)測定による迅速化も、使用するルシフェラーゼ活性
が海水に含まれるイオンに阻害され、そのままでは測定
することが出来ない。BDOC定量方法は、全有機炭素
(TOC)計を用いる方法では、海水のようにDOCが
TOC計の感度限界と比べて低い試料には適用は難し
い。さらに海水は塩濃度が高いためにTOC計内部の触
媒や配管への負荷が大きく、装置メンテナンスのための
コストがかかってしまう問題がある。水道水試料内で増
殖した微生物の総重量からBDOCを推定する方法で
は、本発明者らが放射性物質を添加せずに海水で同様の
方法を用いて微生物を培養し生菌数の経時変化を測定し
たところ、長期間の培養では無機栄養細菌と考えられる
微生物の増殖により生菌数が増加し続け、死滅していく
ことはなかったので、海水への適用は難しいと考えられ
た。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、膜によ
る分離装置など、微生物による汚染が問題となる装置に
おいて、装置に供給される海水中でどの程度の微生物が
増殖するのか予測するために、微生物増殖ポテンシャル
の指標として海水中の同化可能有機炭素量を測定する方
法について鋭意検討した結果、海水試料中に含まれる細
菌を混在状態で培養し、コロニー数またはアデノシン三
リン酸でその最大増殖数を測定することで、海水中の同
化可能有機炭素を簡便に測定することができることを見
出し、本発明に到達したものである。
【0009】したがって、本発明の目的は、海水中の微
生物増殖ポテンシャルの評価が可能な海水中の同化可能
有機炭素の測定方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記本発明の目的は下記
の構成により達成される。すなわち、本発明は、 (1)海水中で微生物を増殖させた後、微生物の最大増
殖数を測定することを特徴とする海水中の同化可能有機
炭素測定方法。 (2)海水中に存在する微生物を単離せずに使用するこ
とを特徴とする前記(1)記載の海水中の同化可能有機
炭素測定方法。 (3)海水中で微生物を増殖させる期間が一週間以内で
あることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の
海水中の同化可能有機炭素測定方法。 (4)海水中で微生物を増殖させる時に温度を15℃か
ら30℃の間に保つことを特徴とする前記(1)から
(3)のいずれかに記載の海水中の同化可能有機炭素測
定方法。 (5)海水にリンまたは窒素のいずれか、あるいは両方
を添加することを特徴とする前記(1)から(4)のい
ずれかに記載の海水中の同化可能有機炭素測定方法。 (6)酸を添加した海水と、アルカリと、酸を添加して
いない海水を混合し、該海水中で微生物を増殖させるこ
とを特徴とする前記(1)から(5)のいずれかに記載
の海水中の同化可能有機炭素測定方法。 (7)生菌数を測定しその最大値を指標として、微生物
の最大増殖数を測定することを特徴とする前記(1)か
ら(6)のいずれかに記載の海水中の同化可能有機炭素
測定方法。 (8)アデノシン三リン酸を測定しその最大値を指標と
して、微生物の最大増殖数を測定することを特徴とする
前記(1)から(6)のいずれかに記載の海水中の同化
可能有機炭素測定方法。 (9)アデノシン三リン酸の測定にルシフェラーゼを使
用することを特徴とする前記(8)記載の海水中の同化
可能有機炭素測定方法。 (10)海水を濃縮した後、アデノシン三リン酸を測定
することを特徴とする前記(8)または(9)に記載の
海水中の同化可能有機炭素測定方法。 (11)微生物を塩濃度が3.5%から0%の間のいず
れかの溶液で洗浄した後、アデノシン三リン酸を測定す
ることを特徴とする前記(8)から(10)のいずれか
に記載の海水中の同化可能有機炭素測定方法。 (12)微生物の洗浄に使用する溶液の塩濃度を3.5
%から0%の間で段階的に低下させ、各塩濃度で一回以
上洗浄することを特徴とする前記(8)から(11)の
いずれかに記載の海水中の同化可能有機炭素測定方法。
からなるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】本発明では、海水中でどの程度の微生物が
増殖するのか予測するために、海水中の微生物増殖ポテ
ンシャルの指標として、従来の方法では測定困難な同化
可能有機炭素(Assimilable Organi
c Carbon、以下AOCと略する)の簡便な測定
方法を確立することを目標とした。本発明を要約すれ
ば、殺菌した海水試料に、殺菌を行っていない海水試料
を少量添加することで、該海水試料で微生物を混在状態
で増殖させ、それら微生物の生菌数またはアデノシン三
リン酸を測定しその最大値を指標として、最大増殖数を
測定することで達成される。
【0013】本発明は、海水の他、塩濃度の高い廃水、
人工海水などに適用することができる。AOCを測定す
る試料の採取や取り扱いには、有機炭素の混入を防ぐた
めにガラス製の容器を用いることが好ましい。また使用
するガラス容器からの極微量の有機炭素の混入を避ける
ために、アルカリ洗剤等であらかじめよく洗浄しておく
か、購入直後のガラス容器を使用することが好ましい。
【0014】試料中で増殖させる微生物としては、海水
などから単離した微生物や、微生物を混在状態で含んだ
試料そのものを用いることができる。単離した微生物を
用いる場合には、海水などに含まれる微生物の中から、
多くの種類の有機炭素を資化でき、かつAOCに比例し
た最大増殖数を与えるものを単離して用いるのが好まし
いが、そのような微生物を単離するまでには通常時間が
かかるうえ、試料によっては有機炭素の種類に違いがあ
るため正確にAOCを測定できない恐れがある。一方、
試料中には通常、該試料に含有される様々な有機炭素を
資化可能な微生物群が存在するので、試料中でこれらの
微生物群を増殖させることにより試料中のAOCを測定
することができる。AOCを測定する試料と、試料中で
増殖させる微生物を含む試料は、同一箇所で同時に採取
されたものであることが好ましいが、入手が難しい場合
には、同一箇所で異なる時期に採取された試料同士な
ど、条件がほぼ一致している試料同士の組み合わせでも
測定を行うことは可能である。
【0015】採取した試料はすぐ測定に使用するか、よ
り好ましくは殺菌処理をした後、殺菌していない試料を
0.01%から20%、より好ましくは1%から5%の
範囲になるように植菌してから培養するのが好ましい。
植菌量が少なければ微生物の増殖が遅くなるため正常な
微生物増殖曲線が得られず、正確にAOCが測定できな
い。植菌量が多ければ、殺菌していない試料では微生物
によりAOCが変化しているので、その影響を受けて正
確にAOCが測定できない。
【0016】試料の殺菌方法としては、酸を添加する
か、または加温する方法が好ましいが、殺菌方法はこれ
に限定されない。酸を添加して殺菌した場合には、試料
中で微生物を培養する前にアルカリでpHをもとの試料
のpH付近に調整し、加温して殺菌した場合には室温付
近まで放冷することが好ましい。酸を添加する場合には
pH4以下、より好ましくはpH2.6以下に調整す
る。これより高いpHであると耐酸性菌が増殖して試料
中のAOCが測定前に変化する恐れがあるためである。
例えば、酸として硫酸を用いる場合にはpHを充分に下
げるために、120ppm以上、より好ましくは250
ppm以上になるように添加する。添加する酸はリン酸
や硝酸、酢酸のような微生物の栄養源となるものは好ま
しくない。加温する場合には、60℃付近で30分程度
加温するのが好ましい。60℃より低い温度では殺菌率
が充分ではなく、60℃より高い温度では死滅した微生
物の死骸によりAOCが増加する恐れがある。
【0017】試料を採取してすぐに測定を開始すること
が出来ない場合には、試料中での微生物の増殖を抑える
ために酸を添加しておくのが好ましい。酸は殺菌で使用
する条件が好適に用いられる。試料を保存する温度は、
低すぎて凍結してしまうと微生物の細胞壁が破壊され易
分解性物質を放出するためAOCが増加してしまい、ま
た温度が高ければ耐酸性の微生物が増殖してしまう恐れ
がある。このため、4℃付近で保存することが好まし
い。また、これらの条件内であっても、試料中に微量に
含まれる耐酸性の好冷菌が増殖する恐れがあるため、採
取してからできるだけ早く測定に使用することが好まし
い。
【0018】試料中で増殖させる微生物として、微生物
を混在状態で含んだ試料を用いる場合、培養期間が長く
なると無機栄養細菌が増殖し続け最大増殖数が測定でき
なくなる恐れがあるので、培養期間は一週間以内とする
ことが好ましい。
【0019】一般に微生物の増殖には炭素:窒素:リン
の比が100:10:1の割合の栄養源が必要となる。
このため、試料の培養時には、試料に窒素やリンあるい
は両方を添加してもよい。これらは硝酸ナトリウムやリ
ン酸ナトリウムの溶液として添加することができる。ま
た微生物の増殖速度を促進するために、試料に微量金属
の混合液を添加してもよい。
【0020】試料の調整やサンプリングは、外来の微生
物の混入を防ぐため、クリーンベンチや空気の動きの少
ない清浄な部屋の中で行うことが好ましい。培養温度
は、試料の取得時の温度にあわせ、15℃から30℃で
あることが好ましく、より好ましくは20℃から25℃
で培養するのがよい。これより低い温度であると好冷菌
が、これより高い温度であると一般細菌が増殖し、正確
に試料中の微生物の最大増殖数が測定できなくなること
がある。培養は藻類の増殖を防ぐため、暗所で行うこと
が好ましい。最大増殖数は、生菌数または菌体内アデノ
シン三リン酸濃度を定量することで測定することが好ま
しい。
【0021】試料として海水を測定する場合、海水中の
微生物は貧栄養環境で生育し、富栄養状態ではかえって
生育が阻害されることがあるため、海水中の微生物用に
調製された寒天培地、例えばMarine Browt
h 2216、Anderson培地、Jonson培
地などに塗布して生菌数を計数することが好ましい。こ
の他に菌数の測定方法としては、検鏡による全菌数測定
やメンブレンフィルター上に微生物を捕捉して計数する
方法などを用いることもできる。
【0022】アデノシン三リン酸(以下ATPと略す)
の測定方法としては、ルシフェリン、ルシフェラーゼ等
の発光試薬を加えて発光反応を起こし、この際に発光計
測を行ってATP濃度を測定する方法が好ましい。発光
試薬などは調製してもよいが、市販の測定器と試薬キッ
トをそのまま流用することができる。しかし海水中の微
生物数は、最大増殖時でもATPを定量するには少な
く、また塩濃度が高いため、メンブレンフィルター等の
ろ過材で海水中の微生物を捕捉した後、塩濃度が低い溶
液で洗浄することが好ましい。ろ過材の孔径は、微生物
を捕捉できるほど孔径が小さければよいが、あまり孔径
が小さいと吸引ろ過を行ってもろ過効率が悪く、またろ
過材の価格が高価となるため、孔径0.1から0.5μ
m程度、より好ましくは0.2から0.45μm程度の
ものがよい。
【0023】また微生物に由来しない遊離ATPを除去
するために、微生物を捕捉する前や洗浄中にATP分解
酵素を添加することが好ましい。ATP分解酵素として
は、ATPをADPまたはAMPに分解する酵素として
知られている多数のATP分解酵素、例えばアピラー
ゼ、ヘキソキナーゼ、グルコキナーゼ、ケトヘキソキナ
ーゼ、フルクトキナーゼ、またはガラクトキナーゼ等を
使用することが出来る。ATP分解酵素は、溶菌時に残
存しているとATP測定を阻害するため、遊離ATPを
除去した後は微生物表面やろ過材などに残らないよう洗
い流す。
【0024】洗浄に使用する溶液は、コストや入手性な
どから食塩水を好適に用いることができる。また洗浄液
には、ショ糖、グルコース、ラクトースなどの細胞保護
剤をATP測定を阻害しない程度の濃度で添加してもよ
い。ルシフェラーゼ活性は高塩濃度で阻害されるため、
洗浄溶液の塩濃度は、海水の塩濃度である3.5%付近
から段階的に0%付近まで下げるのが好ましい。塩濃度
を急激に下げると洗浄の段階で溶菌しATPの収率が低
下する。また塩濃度を早く低下させていくと同様に溶菌
する原因となるため、塩濃度を変えて後1分以上、好ま
しくは5から10分程度経過してから吸引ろ過等で洗浄
液をろ過する。
【0025】洗浄液はATPの混入を防ぐためにフィル
ター除菌と加熱滅菌処理の組み合わせ、または加熱滅菌
処理を行うのが好ましい。例えば、121℃で15分処
理することによりATPの96%を分解することが出来
る。微生物からATPを抽出する抽出試薬としては市販
の試薬キットを使用する他、アルキルジメチルベンジル
アンモニウムクロライド、塩化ベンゼトニウム、セチル
トリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン性界
面活性剤、トリクロロ酢酸などを調製しても好適に使用
できる。これらのATP抽出試薬は濃度が高いとATP
の測定を阻害する場合があるので、適切な濃度となるよ
うに調製することが重要である。例えばトリクロロ酢酸
を用いる場合には最終濃度を0.1%以下となるように
調製するのが好ましい。ろ過材からのATPの回収は、
ATP測定を阻害しない溶液なら何を使用してもよい
が、フィルター除菌と加熱滅菌処理の組み合わせ、また
は加熱滅菌処理を行った水を好適に使用できる。また、
界面活性剤によるATP測定の阻害を防ぐためにサイク
ロデキストリンまたはその誘導体を含んでいてもよい。
【0026】本発明の海水中の同化可能有機炭素測定方
法は、単に膜分離装置のみならず、膜分離装置を一部に
含む水の分離システムにも適用できる。また水の分離シ
ステムに限らず、他の海水を用いる装置にも用いること
が可能である。
【0027】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定され
るものではない。
【0028】実施例1 二つの地点で採取した海水それぞれに硫酸を300 p
pmとなるように添加してから移送した。以後の操作は
全てクリーンベンチ内で行い、外来菌の混入を防いだ。
各海水試料別にあらかじめ滅菌した平底試験管(25
mm−φ×120 mm)に硫酸を添加した海水25
mlを入れ、1 N水酸化ナトリウムでpH 8付近に
中和した。さらに、硝酸ナトリウムが2.8 ppm
(窒素原子として0.5 ppm)、リン酸二カリウム
が0.3 ppm(リン原子として0.05 pp
m)、TES(trace element solu
tion)が通常使用の1/1000濃度、さらに同一
地点で採取した硫酸無添加の海水が1%となるよう添加
して、ポリプロピレン製キャップをした後、試料採取時
の海水温度にあわせ、海水試料1では25℃、海水試料
2では20℃に設定したインキュベーター内で暗所静置
培養した。培養開始から24時間ごとにサンプリング
し、滅菌した2.5%食塩水で10倍から104倍に希
釈して海洋性細菌用寒天培地に各稀釈度ごとに3枚ずつ
塗抹して海水試料と同じ温度で培養した。各サンプリン
グ時間ごとに、培養後のコロニー数が一枚あたり30か
ら300個の範囲に入っている稀釈度を選び、コロニー
数平均から生菌数を計算した。結果を表1に示す。海水
試料1では培養2日、3日に最大増殖数4.2×106
cfu/ml、海水試料2では培養2日に最大増殖数
8.4×105 cfu/mlが得られた。いずれの海水
試料も培養開始から一週間以内に生菌数の極大値が得ら
れた。
【0029】比較例1 海水試料3に硫酸を300ppmとなるように添加して
から移送し、1N水酸化ナトリウムでpH8付近に中和
した。中和以後の操作は、全てクリーンベンチ内で行い
外来菌の混入を防いだ。孔径0.2μmの酢酸セルロー
スメンブレンフィルターを用い、あらかじめ蒸留水20
0mlをろ過してメンブレンフィルター上の有機物を除
去してから、中和海水200mlをろ過した。ろ過海水
は滅菌した200 ml容ふらん瓶ユニットに受け、硝
酸ナトリウムが2.8ppm(窒素原子として0.5p
pm)、リン酸二カリウムが0.3ppm(リン原子と
して0.05ppm)となるよう添加、さらに同一地点
で採取した硫酸無添加の海水を1%添加して、BODテ
スターを使用して20℃で培養した。培養液はサンプリ
ングを行い、培養開始時の海水と同様にあらかじめフィ
ルター上の有機物を除去したメンブレンフィルターを用
いてろ過を行い、TOC計で各DOCを測定した。培養
開始時のDOCは1.53ppm、培養開始1週間後に
一定となったDOCは1.36 ppmであり、生物分
解性溶存有機炭素(Biodegradable Di
ssolved Organic Carbon、BD
OC)は0.17 ppmと計算されたが、TOC計の
精度±0.2ppmより小さな値であった。
【0030】比較例2 実施例1と同じ方法を用い、海水試料3を長期間培養し
て生菌数の変化を測定した。測定結果を表2に示す。培
養12日経過後から無機栄養細菌と考えられる微生物が
増殖していき、最大増殖数を測定することはできなかっ
た。
【0031】比較例3 実施例1と同じ方法を用い、海水試料4を培養した。た
だし窒素、リン、TESは添加しなかった。培養開始か
ら22日後に硝酸ナトリウムが6ppm(窒素原子とし
て1ppm)、リン酸二カリウムが4ppm(リン原子
として1ppm)となるように添加した。生菌数測定の
結果、窒素、リン添加前の培養22日では105 cfu
/mlでほぼ一定となっていた生菌数が、さらに増殖を
続けて培養30日では107 cfu/mlまで増加し、
微生物の最大増殖数は測定することが出来なかった。
【0032】比較例4 海水によるATP測定の阻害を見るため、人工海水を1
00%、50%、20%、10%、5%、2%、1%の
割合で含むATP水溶液を用いて、ATP測定を行っ
た。結果を表3に示す。海水10%添加で測定値が7
%、1%添加で測定値が42%と大幅に低下し、海水が
混入した場合には、微生物数に比例したATP量は測定
できないことが判明した。
【0033】実施例2 実施例1と同様の方法で海水試料5を培養し、培養3日
後のサンプルを用いてATP測定を行った。減圧ろ過用
フィルターホルダーに孔径0.20μmのポリカーボネ
ートタイプメンブランフィルターと取り付け、オートク
レーブ滅菌(121℃、15分)によりATPを除去し
た。海水サンプル5mlをフィルターホルダーに入れ、
ATP除去試薬500μlを添加し、室温で15分間放
置した。海水を減圧ろ過した後、孔径0.2μmの酢酸
セルロースメンブレンフィルターで除菌した後オートク
レーブ滅菌(121℃、15分)してATPを除去した
3.0%食塩水5mlをフィルターホルダーに入れ、1
0分間放置した後、減圧ろ過することによってメンブレ
ンフィルター上に捕捉された微生物を洗浄した。さらに
同様にATPを除去した食塩水の濃度を2.0%、1.
0%、0.5%と段階的に低下させながら同様の手順で
微生物を洗浄した。次にATP抽出試薬500μlを添
加して5分間放置した後、ATPを除去した水を500
μl加えてから減圧ろ過し、ろ液を回収した。最後にメ
ンブレンフィルター上に残ったATPを回収するために
食塩水と同様の手順でATPを除去した水1mlをフィ
ルターホルダーに入れ、減圧ろ過し、ろ液を回収するこ
とを3回繰り返した。ATP抽出以後のろ液はまとめて
ATPを測定した。結果は比較例5とまとめて表4に示
す。
【0034】比較例5 実施例2と同様の方法で海水試料6の培養3日後のサン
プルを用いてATP測定を行った。ただし、微生物の洗
浄には、ATPを除去した水のみを用い、洗浄回数を2
回とした。結果を表4に示す。実施例2と比較すると、
洗浄に水を使用したため、塩濃度の急激な低下により溶
菌し、洗浄液にATPが検出された一方、ATP抽出以
後のろ液のATPは1/50以下に低下し、微生物数に
比例したATP量は測定することが出来なかった。
【0035】実施例3 実施例1と同様の方法で海水試料7を培養し、培養2日
と3日のサンプルのATPを測定した。ATP測定方法
は実施例2と同様の方法で行った。ATP測定値から海
水培養液1 mlあたりの菌体内ATP濃度を計算し
た。結果を表5に示す。ATP濃度から推定した菌数と
生菌数はよい一致を示し、ATP測定により生菌数が測
定できることが判明した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【発明の効果】海水中に存在する細菌を混在状態で培養
し、その最大数をコロニー数またはアデノシン三リン酸
を指標として測定することで、海水中の微生物増殖ポテ
ンシャルの評価が可能となる。

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】海水中で微生物を増殖させた後、微生物の
    最大増殖数を測定することを特徴とする海水中の同化可
    能有機炭素測定方法。
  2. 【請求項2】海水中に存在する微生物を単離せずに使用
    することを特徴とする請求項1記載の海水中の同化可能
    有機炭素測定方法。
  3. 【請求項3】海水中で微生物を増殖させる期間が一週間
    以内であることを特徴とする請求項1または2に記載の
    海水中の同化可能有機炭素測定方法。
  4. 【請求項4】海水中で微生物を増殖させる時に温度を1
    5℃から30℃の間に保つことを特徴とする請求項1か
    ら3のいずれかに記載の海水中の同化可能有機炭素測定
    方法。
  5. 【請求項5】海水にリンまたは窒素のいずれか、あるい
    は両方を添加することを特徴とする請求項1から4のい
    ずれかに記載の海水中の同化可能有機炭素測定方法。
  6. 【請求項6】酸を添加した海水と、アルカリと、酸を添
    加していない海水を混合し、該海水中で微生物を増殖さ
    せることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載
    の海水中の同化可能有機炭素測定方法。
  7. 【請求項7】生菌数を測定しその最大値を指標として、
    微生物の最大増殖数を測定することを特徴とする請求項
    1から6のいずれかに記載の海水中の同化可能有機炭素
    測定方法。
  8. 【請求項8】アデノシン三リン酸を測定しその最大値を
    指標として、微生物の最大増殖数を測定することを特徴
    とする請求項1から6のいずれかに記載の海水中の同化
    可能有機炭素測定方法。
  9. 【請求項9】アデノシン三リン酸の測定にルシフェラー
    ゼを使用することを特徴とする請求項8記載の海水中の
    同化可能有機炭素測定方法。
  10. 【請求項10】海水を濃縮した後、アデノシン三リン酸
    を測定することを特徴とする請求項8または9に記載の
    海水中の同化可能有機炭素測定方法。
  11. 【請求項11】微生物を塩濃度が3.5%から0%の間
    のいずれかの溶液で洗浄した後、アデノシン三リン酸を
    測定することを特徴とする請求項8から10のいずれか
    に記載の海水中の同化可能有機炭素測定方法。
  12. 【請求項12】微生物の洗浄に使用する溶液の塩濃度を
    3.5%から0%の間で段階的に低下させ、各塩濃度で
    一回以上洗浄することを特徴とする請求項8から11の
    いずれかに記載の海水中の同化可能有機炭素測定方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002143849A (ja) * 2000-08-31 2002-05-21 Toray Ind Inc 造水方法
JP5600864B2 (ja) * 2006-09-25 2014-10-08 東レ株式会社 逆浸透膜ろ過プラントの運転方法、および逆浸透膜ろ過プラント

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