JP2001192825A - Rfバイアス式ecrスパッタリング金型離型処理方法 - Google Patents

Rfバイアス式ecrスパッタリング金型離型処理方法

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JP2001192825A
JP2001192825A JP2000007257A JP2000007257A JP2001192825A JP 2001192825 A JP2001192825 A JP 2001192825A JP 2000007257 A JP2000007257 A JP 2000007257A JP 2000007257 A JP2000007257 A JP 2000007257A JP 2001192825 A JP2001192825 A JP 2001192825A
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Masahiro Nishikawa
雅弘 西川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋳造用の金型の表面に、c−BN相リッチ又
はh−BN相リッチな離型処理用のBN被膜を簡単に選
択的または重層的に形成でき、しかも比較的低コストで
形成できるようにする。 【解決手段】磁場コイルとマイクロ波供給部と窒素ガス
と希ガスの混合ガスの供給部とを備えた真空処理槽の内
部に、粉体状の固体ボロンターゲットと離型処理をする
金型を配設し、この金型に高周波のRFバイアス電圧又
はパルス状RFバイアス電圧を印加して金型を負極とす
る自己バイアス電圧を生起させ、前記磁場コイルとマイ
クロ波供給部からの電磁エネルギーを用いた電子サイク
ロトロン共鳴法により前記混合ガスを電離して真空処理
槽内にECRプラズマを生成し、プラズマイオンによっ
て固体ボロンターゲットからスパッターさせたボロン原
子を前記金型の表面に固着堆積させ、自己バイアス電圧
やパルス周期を可変することにより、金型表面にc−B
N相リッチ又はh−BN相リッチな窒素ホウ素被膜を選
択的又は重層的に形成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は金型鋳造法に於いて
使用する金型の離型処理技術の改良に係り、金型表面に
所謂離型膜としての機能を有する窒化硼素被膜(以下、
BN皮膜と呼ぶ)を、RFバイアス式のECRスパッタ
リングによって形成するようにした金型の離型処理方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従前から、アルミ合金やマグネシウム合
金等を用いる金型鋳造に於いては、作業性や成型品外表
面の平滑性の向上、金型寿命の延伸等を図るため、金型
の表面に有機バインダ系や有機エマルジョン系、無機鉱
物系等の離型剤を用いて所謂離型膜が形成されている。
しかし、上述の如き離型剤を用いた場合には、離型膜の
不安定さに起因する成型品の表面欠陥や離型不良、有機
物の炭化による金型の汚損等の発生が不可避であり、離
型膜の形成に時間がかかって作業性が低下する等、金型
鋳造の現場に実用上様々な問題が生じている。
【0003】一方、上述の如き問題を解決するものとし
て、金型表面に耐摩耗性や耐剥離性、摺動性、離型性等
に優れたボロンの窒素化合物の被膜(窒化硼素被膜)を
形成し、当該BN被膜を従前の離型剤から成る離型用被
膜に代えるようにした技術が開発されている。
【0004】即ち、窒化ホウ素(BN)は、結晶構造に
よって立方晶系閃亜鉛鉱型のもの(c−BN)と六方晶
系のグラファイトと類似した構造のもの(h−BN)と
六方晶系のウルツ鉱型のもの(w−BN)等に大別され
る。h−BNは、その特性がグラファイトに類似し、軟
質ながらも摺動性に優れているため、固体潤滑剤として
各種摺動部材の摩擦係数を下げるために用いられてい
る。また、c−BNはダイヤモンドに次ぐ高硬度を有し
ており、熱的・化学的安定性に優れると共に、高絶縁性
と高熱伝導率を有しており、工具等の特に耐摩耗性を必
要とする分野への応用研究が、多方面で進められてい
る。更に、w−BNの方は高硬度であって優れた熱的・
化学的安定性を有しており、c−BNと同様に工具等の
耐摩耗性が要求される分野への応用が研究されている。
【0005】ところで、前記h−BNは、低温下で容易
に粉状体として合成することができ、また、各種物理的
蒸着(PVD)法や化学的蒸着(CVD)法により容易
に膜状にも合成することができる。これに対して、c−
BNは、これまで高温・高圧下で、またw−BNは高温
下で夫々人工的に合成されるものであるためその製造コ
ストが非常に高くなり、しかも合成される形態がバルク
状になるため、応用範囲も限られていた。
【0006】そのため、c−BN及びw−BNを薄膜合
成させようとする試みが、各種のPVD法やCVD法に
よって行われている。例えば、特公平2−59863
号、特開平5−163027号、特開平7−10236
0号、特公平2−59863号、特開平5−16302
7号及び特開平7−102360号等がある。
【0007】これらの被膜形成方法はいずれも技術的に
優れたものであるが、解決すべき多くの問題点も残され
ている。先ず、その中でも特に問題となる点は、何れの
方法もB含有物質の蒸着機構(又はスパッター機構)
と、基体の表面に形成した蒸着層へのイオン照射機構と
の両機構を夫々別個に必要とするため、被膜形成装置の
構造が複雑になり、設備の大型化や製造コストの高騰等
を招くと云う難点がある。
【0008】また、上記従前の被膜形成技術では、成形
型との密着性、成型品の離型性、耐酸化性、平滑性、硬
度等の点に於いて優れた特性を具備した被膜を形成する
ことができると述べられているが、現実の金型への適用
に際しては、均一な厚みのc−BN又はw−BN被膜を
形成することは相当に困難であり、実用化は現実に不可
能に近いと云う問題がある。
【0009】そこで、本発明者は、これらの従来技術の
欠点を解消するために、特願平11−3603号により
ECRプラズマを用いた反応性スパッタリングによる金
型の離型処理方法を提案した。
【0010】この金型離型処理方法は、窒素ガスと希ガ
スの混合ガスを電子サイクロトロン共鳴法により電離し
て真空処理槽内にECRプラズマを生成し、このプラズ
マイオンにより固体ボロンターゲットからボロン原子を
スパッターさせ、このボロン原子を真空処理槽内に配設
した金型の表面に固着堆積させ、この金型を負極とする
ようにDCFバイアス電圧又は高周波のRFバイアス電
圧を印加し、このバイアス電圧により窒素イオンを金型
に固着堆積させ、ボロン原子と窒素原子が反応して金型
表面にBN皮膜を形成させることを特徴としている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この方
法にも不十分な点がある。印加電圧がDCバイアス電圧
のとき、金型は負極であるから、プラズマイオンの内、
窒素イオンと不活性ガスイオンが金型に衝突する。一般
にBN物質は絶縁性が高いため、陽イオンが堆積すると
電荷の逃げ場がないために金型表面がプラズマにチャー
ジアップし、衝突しようとする陽イオンを逆に反発する
ことになる。従って、金型表面のBN被膜が薄くなった
り、剥れやすくなる等の欠点がある。
【0012】このDCバイアス電圧の弱点を解消するた
めに、高周波のRFバイアス電圧を印加する方式を開発
した。RFバイアス電圧は交流であるから、金型表面の
チャージアップの問題は解決できる。しかし、次のよう
な問題が生じる。
【0013】高周波のRFバイアス電圧を金型に印加す
ると、陽イオンと電子の質量差に基づく易動度の相違か
ら、金型表面の平均電位がゼロからマイナス側に移動
し、この平均電位の移動量を自己バイアス電圧と呼んで
いる。
【0014】自己バイアス電圧によって金型表面は負極
となり、この金型表面に陽イオンが衝突する。この自己
バイアス電圧はDCバイアスと同様の作用をするが、自
己バイアス電圧の大きさとc−BN相やh−BN相の生
成との関係は明らかではなかった。つまり、自己バイア
ス電圧の大きさが幾らのときに、c−BN相が主に(c
−BN相リッチと云う)作られ、またh−BN相が主に
(h−BN相リッチと云う)作られるのかが明白ではな
かった。
【0015】更に、高周波RFバイアスの場合には、陽
イオンが絶えず金型表面に衝突堆積するため、形成され
るBN被膜に内部応力が蓄積される場合が多い。内部応
力には圧縮性と引張性の2種があるが、いずれにしても
内部応力が蓄積されるとBN被膜が金型から剥離した
り、BN被膜自体が細かく破断したりする等の問題があ
る。
【0016】また、高周波RFバイアスの場合には、金
型表面に陽イオンが連続衝突するため、到着する陽イオ
ンが多い反面、堆積していたB原子やN原子を再放出さ
せる確率が高かった。従って、BN被膜の成膜速度を高
める改良方法が求められていた。
【0017】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、磁場
コイルとマイクロ波供給部と窒素ガスと希ガスの混合ガ
スの供給部とを備えた真空処理槽の内部に、粉体状の固
体ボロンターゲットと離型処理をする金型を配設し、こ
の金型に高周波のRFバイアス電圧を印加して金型を負
極とする自己バイアス電圧を生起させ、前記磁場コイル
とマイクロ波供給部からの電磁エネルギーを用いた電子
サイクロトロン共鳴法により前記混合ガスを電離して真
空処理槽内にECRプラズマを生成し、プラズマイオン
によって固体ボロンターゲットからスパッターさせたボ
ロン原子を前記金型の表面に固着堆積させ、このボロン
原子と前記自己バイアス電圧により金型に堆積する窒素
イオンとが反応して金型表面に窒化ほう素膜を形成し、
前記自己バイアス電圧が100〜250Vのときに窒化
ほう素膜がC−BN相リッチとなり、また自己バイアス
電圧が0〜100Vのときに窒化ほう素膜がh−BN相
リッチとなることを特徴とするRFバイアス式ECRス
パッタリングによる金型離型処理方法である。
【0018】請求項2の発明は、磁場コイルとマイクロ
波供給部と窒素ガスと希ガスの混合ガスの供給部とを備
えた真空処理槽の内部に、粉体状の固体ボロンターゲッ
トと離型処理をする金型を配設し、この金型に高周波の
パルス状RFバイアス電圧を印加して金型を負極とする
パルス状自己バイアス電圧を作用させ、前記磁場コイル
とマイクロ波供給部からの電磁エネルギーを用いた電子
サイクロトロン共鳴法により前記混合ガスを電離して真
空処理槽内にECRプラズマを生成し、プラズマイオン
によって固体ボロンターゲットからスパッターさせたボ
ロン原子を真空処理槽内に配設した金型の表面に固着堆
積させ、このボロン原子と前記パルス状自己バイアス電
圧により金型に堆積する窒素イオンとが反応して金型表
面に窒素ほう素膜を形成し、前記パルス状自己バイアス
電圧とパルス周期を可変して金型上の窒化ほう素被膜を
c−BN相リッチまたはh−BN相リッチに制御するこ
とを特徴とするRFバイアス式ECRスパッタリングに
よる金型離型処理方法である。
【0019】請求項3の発明は、前記パルス状自己バイ
アス電圧を100〜300(V)の範囲およびパルス周
期を10(ms)〜10(s)の範囲で可変するとき、
c−BN相リッチになる領域は特定のパルス状自己バイ
アス電圧に対し0〜Tm (s)の範囲のパルス周期で与
えられ、h−BN相リッチになる領域はTm (s)〜1
0(s)の範囲のパルス周期で与えられ、境界周期のT
m はパルス状自己バイアス電圧が増大するに従い増大す
る傾向にある請求項2記載の金型離型処理方法である。
【0020】請求項4の発明は、まず金型にc−BN相
リッチなBN被膜を形成し、この上にh−BN相リッチ
なBN被膜を形成する請求項1又は2記載の金型剥離処
理方法である。
【0021】請求項5の発明は、まず金型にh−BN相
リッチなBN被膜を形成し、この上にc−BN相リッチ
なBN被膜を形成し、更にその上にh−BN相リッチな
BN被膜を形成した請求項1又は2記載の金型離型処理
方法である。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明は、金型にRFバイアス電
圧を印加した場合に生起する自己バイアス電圧とこれに
より形成されるBN被膜の結晶相との関係を研究した結
果、自己バイアス電圧が0〜100(V)のときにBN
被膜はh−BN相リッチになり、自己バイアス電圧が1
00〜250(V)のときにBN被膜はc−BN相リッ
チになることを知得するに到った。
【0023】また、高周波RFバイアスの場合における
BN被膜中の内部応力の蓄積やB・N原子の再放出を防
止するために、高周波のRFバイアスをパルス化したパ
ルス状バイアスが効果的であることを発見するに到っ
た。つまり、パルスのオン状態のときにBN被膜を成長
させ、パルスのオフ状態のときに内部応力の解消を図
り、再放出を防止することができる。このパルスの繰り
返しにより高性能のBN被膜を形成しようとするもので
ある。
【0024】これらの知見に基づいて本発明を完成した
ものであり、以下、図面に従って本発明の実施の形態を
説明する。図1は、本発明の実施に使用する金型用離型
膜形成装置の断面概要図であり、図に於いて1は真空処
理槽(チャンバー)、2は混合ガス供給口、3はマイク
ロウェーブ入射窓、4は排気口、5はボロンターゲット
支持装置、6は金型支持装置、7はボロンターゲットの
バイアス用電源、8は金型のRFバイアス用電源、9・
10はプラズマ輸送用磁場コイル、11はマイクロ波供
給部、12は窒素供給源、13はアルゴン供給源、14
・15はマスフローコントローラ、16はガス混合部、
17はターボ分子ポンプである。
【0025】前記真空処理槽(チャンバー)1はステン
レス鋼等により所望の内容積を有する筒状体に形成され
ており、混合ガス供給口2やマイクロウェーブ入射窓
3、排気口4等が設けられている。
【0026】前記ボロンターゲット支持装置5はセラミ
ック製のるつぼ5aと、これを支持する電気絶縁材製の
支持台5b等から形成されており、チャンバー1の壁面
に支持固定されている。また、前記るつぼ5a内には、
純度が99.9%の粉体状の固体ボロン5cが適宜量充
填されており、当該固体ボロンターゲット用バイアス電
源7の負極側が接続されている。尚、ボロンターゲット
支持装置5は、固体ボロン5cの外表面がチャンバー1
の中心軸線上の共鳴点に位置するように配設されてい
る。
【0027】前記金型支持装置6は金型保持架台6aと
架台6aを回動並びに傾動させる駆動部6b等から形成
されており、金型保持架台6aの前面に金型6cが、そ
の表面(離型膜形成面)をボロンターゲット装置5と対
向せしめた状態で固定されている。尚、金型6cとして
は、ダイス鋼等の特殊工具鋼の他に、一般的な鋼材も多
く使用される。また、金型6cの外形寸法には、チャン
バー1の内容積との相対関係があるだけで、離型膜形成
の点からの技術的な制約は無い。
【0028】前記ボロンターゲットのバイアス用電源7
は、るつぼ5a内の固体ボロン5cに負の直流バイアス
を印加するものであり、約1〜10kVの直流電圧が印
加される。
【0029】前記プラズマ輸送用磁場コイル9・10
は、最大磁場が1500〜5000G程度となるように
選定されており、後述するように、チャンバー1内に生
成された高密度プラズマを磁場により移動させ、高密度
プラズマによるボロン原子のスパッタリングやスパッタ
ーされたボロン原子のイオン化、金型6c側への移動等
を促進する。
【0030】前記マイクロ波供給部10は公知の2.4
5GHzのマイクロ波を導波管を通してチャンバー1内
の有磁場高密度プラズマ内へ供給するものであり、マイ
クロ波電力は100W〜10kW程度の間に適宜に選定
される。
【0031】前記窒素ガス供給源12及びアルゴンガス
供給源13からは、マスフローコントローラ14・15
を介して窒素N2 とアルゴンArの混合ガスが、所定の
流量並びに混合比(N2 /Ar)でもってチャンバー1
内へ供給される。また、前記ターボ分子ポンプ17には
100〜5000l/sのターボ分子ポンプが用いられ
ており、内径約1000〜1500mmφのチャンバー
1内は、10-7Torr程度の真空度にまで排気され
る。
【0032】本発明に於けるプラズマ源は前記磁場コイ
ル10・11とマイクロ波供給部12とから構成したE
CRプラズマ源であり、電子サイクロトロン共鳴法(E
lectron Cyclotron Resonan
ce:ECR)により、チャンバー1内の混合ガス(放
電ガス)を電離して高密度プラズマ(Ar及びN2 のイ
オン、1011〜1012cm-3)を生成する。また、生成
された高密度プラズマ(ECRプラズマ)は、前記バイ
アス用電源によりボロンターゲット5cに衝突し、プラ
ズマイオンスパッタリング法によりボロンターゲット
(固体ボロン)5aからボロン原子をスパッターさせ、
更に、前記スパッターされたボロン原子は、金型6cの
表面に順次固着・堆積し、これによってBN被膜が形成
されて行くことになる。
【0033】本発明の特徴である金型バイアス用電源8
としては高周波のRFバイアス電源が用いられ、例えば
周波数が13.56MHzで振幅が100〜500Vの
高周波である。この金型バイアス用電源8は、プラズマ
イオンであるN2 + やAr+を電気引力により金型表面
に衝突・堆積させる作用をする。その結果、前述したB
原子とN原子が反応してBN被膜を金型表面に形成す
る。特に、前記RFバイアス電源が高周波交流を用いて
いる理由は、金型6cの表面に形成されたBN堆積被膜
にイオンによるたたき作用を加え、これによって金属面
との密着性を高めたり、被膜密度を高める効果を奏する
からである。
【0034】本発明で利用されるRFバイアス電源に
は、連続作用(CW)をするRFバイアス電源とパルス
波としてのパルス状RFバイアス電源がある。これらの
電源は金型支持装置6とアース間に介裝される。RFバ
イアス電圧自体は高周波の交流であるが、金型6cの表
面電位Vspはマイナス側にシフトした交流となる。
【0035】図2は連続作用(CW)をするRFバイア
ス電圧を印加した場合の金型表面電位Vspの波形であ
る。また、図3はパルス状RFバイアス電圧を印加した
場合の金型表面電位Vspの波形である。
【0036】図2および図3において、金型表面電位V
spの振動中心をマイナス量として自己バイアス電圧Vs
と呼び、その絶対値を自己バイアス電圧Vsという。ど
ちらも記号Vsを用いるが正負で区別する。この自己バ
イアスが生じる理由はプラズマと交周波との相互作用で
あり、更に詳しく言えば、イオンと電子の質量差による
易動度の相違が原因である。
【0037】この自己バイアス電圧Vs の結果、金型表
面が負極となり、プラズマ中のN2 + イオンやAr+
オンが金型表面に電気引力で堆積し、スパッターにより
飛来するB原子と反応して、BN被膜が金型表面に形成
される。
【0038】交流としてのRFバイアス電圧の振幅Vo
と周波数fの大きさは、イオンによるBN被膜へのたた
き作用に関係する。連続作用(CW)ではイオンがBN
被膜上に絶えず堆積するため、BN被膜中の内部応力が
解消されないまま被膜形成が進行することが多い。その
結果、完成した被膜が金型から応力剥離することがあ
る。
【0039】図3に示すパルス状RFバイアス電圧で
は、パルスのオン状態ではイオンの堆積が生じるが、パ
ルスのオフ状態ではイオンの堆積はほとんどない。従っ
て、オフ状態にBN被膜中で原子の再配置が生じ、内部
応力が解消されることが期待できる。また、オフ状態で
はイオン衝突がないからB・N原子の再放出が抑制さ
れ、結果的に堆積速度が速くなることも期待できる。
【0040】これらの効果はパルス周期Tpやデューテ
ィー比τ/Tp(τ:オン時間)にも依存する。特に、
形成されるBN被膜の結晶相に、前記自己バイアス電位
Vsとパルス周期Tpが大きく影響することが分かっ
た。特に自己バイアス電位Vsは、連続作用およびパル
ス作用の両者において結晶相への影響が大きい。
【0041】図4は、種々の条件において作成されたB
N被膜のFT−IRスペクトルを示す。FT−IR法は
BN被膜の赤外分光法で、赤外領域の透過光の波数分布
を与える。780cm-1と1400cm-1の吸収はh−
BN相による振動吸収に相当し、h−BN相が形成され
ていることを意味する。また、1060cm-1の吸収は
c−BN相による吸収に相当し、c−BN相が形成され
ていることを意味する。両者が混在している場合には吸
収量の深さからc−BN相リッチ又はh−BN相リッチ
が判定される。
【0042】図4において、まず連続作用(CW)から
考察する。この場合にはパルス周期Tp=0と表記して
いる。自己バイアス電位Vsが−175Vおよび−25
0Vでc−BN相リッチであるが、Vs=300Vでは
c−BNにもh−BNにもなってないことが分かる。つ
まり、Vs=300Vになると、B原子やN原子の再放
出が激しくなり、BN被膜が形成されなくなることが分
かった。
【0043】本発明者は更に研究を重ね、Vs=0〜1
00Vではh−BN相リッチであり、Vs=100〜−
250Vではc−BN相リッチであり、これ以外ではB
N被膜形成が困難であることを究明した。このように、
連続作用においては、自己バイアス電位を調整すること
により、c−BN相リッチ又はh−BN相リッチにBN
被膜を制御できる。
【0044】次に、図4におけるパルス作用を考察す
る。デューディー比は1/2である。Vs=−175V
では、Tp=20msではc−BN相リッチであるが、
Tp=1sではh−BN相リッチである。Vs=−25
0Vでは、Tp=20msおよび1sでc−BN相リッ
チである。また、Vs=−300Vでは、Tp=20m
sおよび1sでc−BN相リッチである。
【0045】これらの傾向を更に詳細に検討した結果、
図5に示すようなパルス周期と自己バイアス電圧の関係
図を得るに到った。図5では自己バイアス電圧ではなく
自己バイアス電圧を用いているため、Vsはプラス量で
表現されている。
【0046】想像線が境界周期Tm を与え、これを境界
として下方の斜線部がc−BN相リッチな領域、上方の
空白部がh−BN相リッチな領域を与える。パルス作用
では自己バイアス電圧が250Vを越えてもBN被膜が
形成されることが分かる。また、175Vより小さい領
域ではTp≦20msがc−BN相リッチを与える。
【0047】一般的傾向としては、自己バイアス電圧V
sが増加するにつれて境界周期Tmも増加する。従っ
て、自己バイアス電圧Vsが与えられたときには、c−
BN相リッチな領域は0−Tm (s)であり、h−BN
相リッチな領域はTm 〜10(s)である。このように
して、自己バイアス電圧Vsとパルス周期Tpを設定す
ることによりBN結晶相をc−BN相リッチやh−BN
相リッチに制御することができる。
【0048】前述したように、c−BN相リッチなBN
被膜は高硬度であるため耐摩耗剤となり、またh−BN
相リッチBN被膜は高摺動性のために固体潤滑剤として
用いられる。
【0049】従って、金型表面にまずc−BN相リッチ
なBN被膜を形成し、その上にh−BN相リッチなBN
被膜を形成すれば、潤滑剤を有すると同時に耐摩耗性を
有する金型を提供することができる。
【0050】また、金型表面にまずh−BN相リッチな
BN被膜を形成し、その上にc−BN相リッチなBN被
膜を重ね、更にその上層にh−BN相リッチなBN被膜
を形成しても、潤滑性と耐摩耗性を併有した金型を提供
できる。
【0051】本発明は上記実施例に限定されるものでは
なく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種
々の変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含す
るものである。
【0052】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、連続作用のR
Fバイアス電圧を印加して、その自己バイアス電圧を調
整することにより、金型上にc−BN相リッチ又はh−
BN相リッチなBN被膜を自在に選択的に形成すること
ができる。
【0053】請求項2の発明によれば、パルス作用のR
Fバイアス電圧を印加して、その自己バイアス電圧とパ
ルス周期を可変することにより、金型上にc−BN相リ
ッチ又はh−BN相リッチなBN被膜を自在に制御しな
がら形成できる。
【0054】請求項3の発明によれば、パルス作用のR
Fバイアス電圧を作用して、その自己バイアス電圧とパ
ルス周期を具体的数値の下に可変することにより、金型
上にc−BN相リッチ又はh−BN相リッチなBN被膜
を自在に制御しながら形成できる。
【0055】請求項4および5の発明によれば、金型に
潤滑性と耐摩耗性の両性能を付与することができ、金型
の高性能化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施に係る金型用離型膜形成装置の断
面概要図である。
【図2】連続作用(CW)をするRFバイアス電圧によ
る金型表面電位Vspの波形図である。
【図3】パルス状RFバイアス電圧による金型表面電位
Vspの波形図である。
【図4】種々の条件下で作成されたBN被膜のFT−I
Rスペクトル図である。
【図5】パルス周期と自己バイアス電圧の関係図であ
る。
【符号の説明】
1はチャンバー、2は混合ガス供給口、3はマイクロ波
入射窓、4は排気口、5はボロンターゲット装置、5a
はるつぼ、5bは支持台、5cは固体ボロン、6は金型
支持装置、6aは金型保持架台、6bは駆動部、6cは
金型、7はボロンターゲット用バイアス電源、8は金型
用RFバイアス電源、9・10はプラズマ輸送用磁場コ
イル、11はマイクロ波供給部、12はN2 供給源、1
3はAr供給源、14・15はマスフローコントロー
ラ、16はガス混合部、17はターボ分子ポンプ、Vs
は自己バイアス電圧または自己バイアス電位、Tpはパ
ルス周期、τはパルスオン部、VoはRF振幅、Vspは
金型表面電位。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁場コイルとマイクロ波供給部と窒素ガ
    スと希ガスの混合ガスの供給部とを備えた真空処理槽の
    内部に、粉体状の固体ボロンターゲットと離型処理をす
    る金型を配設し、この金型に高周波のRFバイアス電圧
    を印加して金型を負極とする自己バイアス電圧を生起さ
    せ、前記磁場コイルとマイクロ波供給部からの電磁エネ
    ルギーを用いた電子サイクロトロン共鳴法により前記混
    合ガスを電離して真空処理槽内にECRプラズマを生成
    し、プラズマイオンによって固体ボロンターゲットから
    スパッターさせたボロン原子を前記金型の表面に固着堆
    積させ、このボロン原子と前記自己バイアス電圧により
    金型に堆積する窒素イオンとが反応して金型表面に窒化
    ほう素膜を形成し、前記自己バイアス電圧が100〜2
    50Vのときに窒化ほう素膜がC−BN相リッチとな
    り、また自己バイアス電圧が0〜100Vのときに窒化
    ほう素膜がh−BN相リッチとなることを特徴とするR
    Fバイアス式ECRスパッタリングによる金型離型処理
    方法。
  2. 【請求項2】 磁場コイルとマイクロ波供給部と窒素ガ
    スと希ガスの混合ガスの供給部とを備えた真空処理槽の
    内部に、粉体状の固体ボロンターゲットと離型処理をす
    る金型を配設し、この金型に高周波のパルス状RFバイ
    アス電圧を印加して金型を負極とするパルス状自己バイ
    アス電圧を作用させ、前記磁場コイルとマイクロ波供給
    部からの電磁エネルギーを用いた電子サイクロトロン共
    鳴法により前記混合ガスを電離して真空処理槽内にEC
    Rプラズマを生成し、プラズマイオンによって固体ボロ
    ンターゲットからスパッターさせたボロン原子を真空処
    理槽内に配設した金型の表面に固着堆積させ、このボロ
    ン原子と前記パルス状自己バイアス電圧により金型に堆
    積する窒素イオンとが反応して金型表面に窒素ほう素膜
    を形成し、前記パルス状自己バイアス電圧とパルス周期
    を可変して金型上の窒化ほう素皮膜をc−BN相リッチ
    またはh−BN相リッチに制御することを特徴とするR
    Fバイアス式ECRスパッタリングによる金型離型処理
    方法。
  3. 【請求項3】 前記パルス状自己バイアス電圧を100
    〜300(V)の範囲およびパルス周期を10(ms)
    〜10(s)の範囲で可変するとき、c−BN相リッチ
    になる領域は特定のパルス状自己バイアス電圧に対し0
    〜Tm (s)の範囲のパルス周期で与えられ、h−BN
    相リッチになる領域はTm (s)〜10(s)の範囲の
    パルス周期で与えられ、境界周期のTm はパルス状自己
    バイアス電圧が増大するに従い増大する傾向にある請求
    項2記載の金型離型処理方法。
  4. 【請求項4】 まず金型にc−BN相リッチなBN被膜
    を形成し、この上にh−BN相リッチなBN被膜を形成
    する請求項1又は2記載の金型離型処理方法。
  5. 【請求項5】 まず金型にh−BN相リッチなBN被膜
    を形成し、この上にc−BN相リッチなBN被膜を形成
    し、更にその上にh−BN相リッチなBN被膜を形成し
    た請求項1又は2記載の金型離型処理方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010159439A (ja) * 2009-01-06 2010-07-22 Shinko Seiki Co Ltd 成膜装置
CN102773407A (zh) * 2012-07-18 2012-11-14 明志科技大学 改善金属铸造模具脱模效果的方法
US20140255286A1 (en) * 2013-03-05 2014-09-11 Korea Institute Of Science And Technology Method for manufacturing cubic boron nitride thin film with reduced compressive residual stress and cubic boron nitride thin film manufactured using the same

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