JP2001192767A - 延性に優れる低降伏比高張力溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
延性に優れる低降伏比高張力溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.3
〜1.8 %、Mn:1.0 〜3.0 %を含み、残部Feおよび不可
避的不純物からなる組成を有する鋼板に、(Ac3変態点
−80℃) 〜(Ac3変態点+100 ℃)の温度域で5sec 以
上保持する一次加熱処理後、Ms 点以下の温度まで5℃
/s以上10℃/s未満で冷却する一次工程と、2相域で
の二次加熱処理後、500 ℃以下の温度まで急冷する二次
工程と、さらに溶融亜鉛めっき処理を施し、300 ℃まで
急冷する三次工程とを順次施し、60%以上のフェライト
と、5%以上のマルテンサイトと、2%以上の残留オー
ステナイトを含み、フェライトの平均結晶粒径が5μm
以上の複合組織とする。また溶融亜鉛めっき処理後合金
化処理を施してもよい。
Description
っき鋼板に係わり、とくに連続溶融亜鉛めっきラインで
製造される高張力溶融亜鉛めっき鋼板の延性の向上およ
び低降伏比化に関する。
自動車の燃費改善が要求されている。さらに加えて、衝
突時に乗員を保護するため、自動車車体の安全性向上も
要求されている。このようなことから、自動車車体の軽
量化および自動車車体の強化が積極的に進められてい
る。自動車車体の軽量化と強化を同時に満足させるに
は、部品素材を高強度化することが効果的であると言わ
れており、最近では高張力鋼板が自動車部品に積極的に
使用されている。
ス加工によって成形されるため、自動車部品用鋼板には
優れたプレス成形性が要求される。優れたプレス成形性
を実現するには、第一義的には高い延性を確保すること
が肝要である。また、成形後の形状凍結性に優れること
も必要である。このため、自動車部品用鋼板としては、
延性に優れ、降伏比が低い鋼板が望まれている。
高い耐食性も要求される。高い耐食性が要求される部位
に適用される部品の素材としては、溶融亜鉛めっき鋼板
が好適である。したがって、自動車車体の軽量化および
強化をより一層促進するためには、耐食性に優れ、しか
も延性に優れ、低い降伏比を有する高張力溶融亜鉛めっ
き鋼板が必要不可欠な素材となっている。
しては、フェライトとマルテンサイトの複合組織を有す
る二相組織鋼板が代表的である。一方、近年では残留オ
ーステナイトに起因する変態誘起塑性を利用した高延性
鋼板も実用化の段階に至っている。
ラインは、焼鈍設備とめっき設備を連続化して設置して
いる。この連続化されためっき工程の存在により、焼鈍
後の冷却はめっき温度にて中断され、工程を通じた平均
冷却速度も必然的に小さくなる。したがって、連続溶融
亜鉛めっきラインで製造される鋼板では、冷却速度の大
きい冷却条件下で生成するマルテンサイトや残留オース
テナイトをめっき後の鋼板中に含有させることは難し
い。このため、これらの相を有する高張力溶融亜鉛めっ
き鋼板を連続溶融亜鉛めっきラインにて製造すること
は、一般には困難である。
134591号公報には、C:0.02〜0.14%を含み、Mn:1.2
〜3.0 %とCr:0.3 〜1.5 %を、Mn+Cr:2.0 〜3.5 %
の条件下で含有し、金属組織が面積率でフェライト相:
50%以上とベイナイト相:3〜15%およびマルテンサイ
ト相:5 〜20%からなる3相組織であることを特徴とす
る、降伏比が低く、プレス成形性に優れた高強度合金化
溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。この技術では、
鋼板の化学成分と焼鈍および溶融亜鉛めっき工程の温度
条件を規定することにより、上記した所望量のフェライ
ト、べイナイト、マルテンサイトの3相からなる金属組
織を有する鋼板が得られるとしている。
載された技術で製造された高強度合金化溶融亜鉛めっき
鋼板は、現状の鋼板要求特性に十分に対応できる延性を
保持していないという問題があった。
0.05〜0.30%、Mn:0.5 〜3.0 %、P:0.03%以下、
S:0.03%以下、Ti:0.01〜0.5 %、N:0.01%以下を
含み、かつSi:0.5 〜2.5 %、Cr:1.0 〜5.0 %、Al:
0.8 〜3.0 %のうち1種または2種以上を含有する組成
と、体積率で1%以上の残留オーステナイトを含む高強
度高延性溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。この鋼
板は、連続溶融亜鉛めっきラインにて製造可能であると
され、化学組成を適正に調整して、めっき工程後の鋼板
中に残留オーステナイトを多量に含有させ、残留オース
テナイトによる変態誘起塑性効果を利用し高延性を得よ
うとするものである。
0.06〜0.25%、Si:1.0 %以下、Mn:0.5 〜3.0 %、A
l:0.4 〜2.5 %、Ti:0.003 〜0.080 %、N:0.010
%以下を含み、かつTi含有量をN、S含有量と関連した
式にて限定した組成の冷延鋼板、あるいは熱延鋼板に、
前酸化処理を行ったのち、ついで2相域温度での焼鈍を
行って、焼鈍後3 ℃/s以上の冷却速度で420 〜600 ℃
の温度域まで冷却し、この温度で20s以上保持する冷却
保持を行い、さらに溶融亜鉛浴に浸入させてめっきを施
し、あるいはさらに合金化処理を行う、高張力高延性の
亜鉛めっき鋼板の製造方法が開示されている。特開平11
−236621号公報に記載された技術は、焼鈍条件および焼
鈍後の冷却条件を限定してめっき工程後の鋼板中に残留
オーステナイトを多量に含有させ、残留オーステナイト
による変態誘起塑性効果を利用し高強度高延性亜鉛めっ
き鋼板を得ようとすることに特徴がある。
11−222644号公報に記載された技術では、鋼板の製造方
法に関する特段の規定もなく、また、最終的に得られる
亜鉛めっき鋼板の降伏比が安定して低いという保証もな
されていない。また、特開平11−236621号公報に記載さ
れた技術では、オーステナイトの安定化のためにべイナ
イト変態を利用するため、最終的に得られる亜鉛めっき
鋼板の降伏比が高くなるという問題があった。
を解決し、自動車部品用素材として好適な、延性に優
れ、低い降伏比を有する高張力溶融亜鉛めっき鋼板およ
びその製造方法を提供することを目的とする。本発明の
高張力溶融亜鉛めっき鋼板は、連続溶融亜鉛めっきライ
ンを利用して製造されることが望ましい。
亜鉛めっきラインを用いて、延性に優れる低降伏比高張
力溶融亜鉛めっき鋼板を製造するため、鋼板の組成およ
びミクロ組織の観点から鋭意研究を重ねた。その結果、
溶融亜鉛めっき処理後に得られる高張力溶融亜鉛めっき
鋼板の組織を、フェライト、マルテンサイト、残留オー
ステナイトからなる複合組織とし、複合組織中の各相の
体積率を所定の比率とすることにより、とくにフェライ
トの比率を高くすることにより、鋼板に優れた延性を発
現せしめたうえ、かつ鋼板の降伏比を十分に低下させ得
ることができることを知見した。
範囲に調整した鋼板を、まずフェライトと塊状のマルテ
ンサイトを含む一次組織としたうえで、さらに連続溶融
亜鉛めっきラインにて所定の条件下で再加熱処理および
めっき処理を施すことにより、鋼板の組織を所定の体積
率範囲内のフェライト、マルテンサイト、残留オーステ
ナイトの各相を含む複合組織とすることができ、延性に
優れ、かつ低い降伏比を有する高張力溶融亜鉛めっき鋼
板を安定的かつ効率的に製造できることも見出した。
たものである。
融亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層を有する
溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記鋼板が、質量%で、
C:0.05〜0.20%、Si:0.3 〜1.8 %、Mn:1.0 〜3.0
%を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成
と、フェライト、マルテンサイト、残留オーステナイト
を含む複合組織を有し、かつ、前記フェライトを体積率
で60%以上好ましくは90%以下、前記マルテンサイトを
体積率で5%以上好ましくは30%以下、前記残留オース
テナイトを体積率で2%以上含み、さらに、前記フェラ
イトの平均結晶粒径が5μm 以上であることを特徴とす
る延性に優れる低降伏比高張力溶融亜鉛めっき鋼板であ
り、また、第1の本発明では、前記組成に加え、さら
に、次(a群)〜(d群) (a群):Cr、Moのうちの1種または2種を合計で、0.
05〜1.0 質量%、(b群):B:0.003 質量%以下、
(c群):Ti、Nb、Vのうちから選ばれた1種または2
種以上を合計で、0.01〜0.2 質量%(d群):Ca、REM
のうちから選ばれた1種または2種を合計で、0.01質量
%以下のうちから選ばれた1群または2群以上を含有し
てもよい。
05〜0.20%、Si:0.3 〜1.8 %、Mn:1.0 〜3.0 %を含
み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する
鋼板に、(Ac3変態点−80℃) 以上好ましくは(Ac3変
態点+100 ℃) 以下の温度で、5s以上好ましくは120
s以下保持する一次加熱処理を施した後、5℃/s以上
10℃/s未満の冷却速度でMs 点以下の温度まで冷却す
る一次工程と、次いで、(Ac1変態点〜Ac3変態点) の
温度域で5s以上好ましくは120 s以下保持する二次加
熱処理を施した後、5℃/s以上好ましくは50℃/s以
下の冷却速度で500℃以下の温度まで冷却する二次工程
と、次いで溶融亜鉛めっき処理を施し、前記鋼板表層に
溶融亜鉛めっき層を形成した後、5℃/s以上好ましく
は50℃/s以下の冷却速度で 300℃まで冷却する三次工
程とを順次施すことを特徴とする、延性に優れる低降伏
比高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法であり、また、
第2の本発明では、前記三次工程が、溶融亜鉛めっき処
理を施し、前記鋼板表層に溶融亜鉛めっき層を形成した
後、 450〜 550℃の温度域まで再加熱して溶融亜鉛めっ
き層の合金化処理を施し、該合金化処理後、5℃/s以
上好ましくは50℃/s以下の冷却速度で 300℃まで冷却
する工程であるのが好ましく、また、第2の本発明で
は、前記組成に加え、さらに、次(a群)〜(d群) (a群):Cr、Moのうちの1種または2種を合計で、0.
05〜1.0 質量%、(b群):B:0.003 質量%以下、
(c群):Ti、Nb、Vのうちから選ばれた1種または2
種以上を合計で、0.01〜0.2 質量%(d群):Ca、REM
のうちから選ばれた1種または2種を合計で、0.01質量
%以下のうちから選ばれた1群または2群以上を含有し
てもよい。
板は、鋼板表層に溶融亜鉛めっき層または合金化溶融亜
鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板である。
について説明する。なお、以下、組成における質量%は
単に%と記す。
ーステナイトやマルテンサイトの生成に効果があり、本
発明では不可欠の元素である。しかし、C含有量が0.05
%未満では所望の高強度化が得られず、一方、0.20%を
超えると、溶接性の劣化を招く。このため、Cは0.05〜
0.20%の範囲に限定した。
ナイトを安定化し、残留オーステナイト相の生成を促進
する作用を有する。このような作用は、Si含有量が0.3
%以上で認められる。一方、1.8 %を超えて含有する
と、めっき性が顕著に劣化する。このため、Siは0.3 〜
1.8 %の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.5 〜1.
5 %である。
性を向上し、マルテンサイトや、残留オーステナイトの
生成を促進する作用を有する。このような作用は、Mn含
有量が1.0 %以上で認められる。一方、3.0 %を超えて
含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待で
きなくなりコストの上昇を招く。このため、Mnは1.0 〜
3.0 %の範囲に限定した。
て、上記した化学成分に加え、下記に示す(a群)〜
(d群)のうちの1群または2群以上を含有することが
できる。
を合計で、0.05〜1.0 % CrおよびMoは、鋼の焼入性を向上し、マルテンサイトや
残留オーステナイトの生成を促進する作用を有する元素
である。このような作用は、CrおよびMoのうちの1種ま
たは2種を合計で0.05%以上含有して認められる。一
方、合計で1.0 %を超えて含有しても効果が飽和し、含
有量に見合う効果が期待できず、経済的に不利となる。
このため、CrおよびMoのうちの1種または2種を合計で
0.05〜1.0%の範囲に限定するのが望ましい。なお、よ
り望ましい範囲はCrおよびMoのうちの1種または2種を
合計で0.05〜0.5 %である。
必要に応じて含有できる。しかし、B含有量が0.003 %
を超えると、効果が飽和するため、Bは0.003%以下に
限定するのが好ましい。なお、より好ましい範囲は0.00
1 〜0.002 %である。
1種または2種以上を合計で、0.01〜0.2 % Ti、Nb、Vは、鋼中に炭窒化物を形成し、鋼を析出強化
により高強度化する作用を有しており、必要に応じて含
有できる。このような作用は、Ti、Nb、Vのうちから選
ばれた1種または2種以上を合計で、0.01%以上で認め
られる。一方、合計で0.2 %を越えて含有しても効果が
飽和し、含有量に見合う効果が期待できず、経済的に不
利となるうえ、降伏比の上昇も招く。このため、Ti、N
b、Vのうちの1種または2種以上の含有量は、合計
で、0.01〜0.2 %の範囲に限定するのが好ましい。な
お、より好ましい範囲は0.01〜0.1 %である。
種または2種以上を合計で、0.01%以下 Ca、REM は、硫化物系介在物の形態を制御する作用を有
し、これにより鋼板の伸びフランジ性を向上させる効果
を有する。このような効果は、Ca、REM のうちの1種ま
たは2種の含有量が合計で、0.01%を超えると飽和す
る。このため、Ca、REM のうちの1種または2種の含有
量は、合計で0.01%以下に限定するのが好ましい。な
お、より好ましい範囲は0.001 〜0.005 %である。
以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。不可
避的不純物としては、Al:0.1 %以下、P:0.05%以
下、S:0.02%以下が許容できる。
と、(1)フェライト、(2)マルテンサイト、(3)
残留オーステナイトからなる複合組織を有する鋼板であ
る。
い変形能を有し、鋼板の延性を向上させる。本発明の鋼
板では、このようなフェライトを、体積率で60%以上含
有する。フェライト量が60%未満では、顕著な延性向上
効果が期待できない。このため、複合組織中のフェライ
ト量は60%以上に限定した。なお、フェライト量が90%
を超えると鋼板の強度確保が困難となるため、フェライ
ト量は90%以下とするのが望ましい。
強度を増加させる作用を有する。また、変態生成時に可
動転位の発生を伴うため、鋼板の降伏比を低下させる作
用を有する。マルテンサイト量が体積率にて5%未満で
は前記作用が十分に得られない。このため、マルテンサ
イト量は5%以上に限定した。一方、マルテンサイト量
が30%を超えると鋼板の延性低下を招く。このため、マ
ルテンサイト量は30%以下とするのが望ましい。なお、
マルテンサイト量は所望する鋼板強度に応じて適宜増減
することができる。なお、このマルテンサイトは焼戻し
を受けていないマルテンサイトを意味する。すなわち二
次工程以降の冷却過程で生成されるマルテンサイトであ
る。
変態し、局所的に加えられた加工歪を広く分散させ、鋼
板の延性を向上させる作用を有する。本発明の鋼板で
は、このような残留オーステナイトを、体積率で2%以
上含有する。残留オーステナイト量が2%未満では、顕
著な延性の向上が期待できない。このため、残留オース
テナイト量は2%以上に限定した。また、残留オーステ
ナイト量は、好ましくは5%以上である。なお、残留オ
ーステナイト量は多いほどよいが、実際的には10%以下
である。
組織中のフェライトの結晶粒径を5μm 以上、好ましく
は30μm 以下とする。
させる作用がある。本発明の鋼板は、フェライト相が主
相であり、フェライトの平均結晶粒径が5μm 未満と微
細化すると降伏応力が上昇して鋼板の低降伏比化が妨げ
られる。このため、フェライトの平均結晶粒径は5μm
以上に限定した。また、フェライトの平均結晶粒径が30
μm を超えると、強加工を受けた際に鋼板表面が粗くな
る現象が生ずるため、30μm 以下とするのが好ましい。
記した組成および複合組織を有する鋼板の表層に、溶融
亜鉛めっき層または合金化溶融亜鉛めっき層が形成され
ためっき鋼板である。めっき層の目付量は、使用部位に
よる耐食性要求により適宜決定されればよく、特に規定
されない。自動車部品に使用される鋼板では、溶融亜鉛
めっき層の目付量は30〜120g/m2 とするのが好ましい。
の製造方法について説明する。
し、通常公知の方法で鋳造し、次いで通常公知の方法で
熱間圧延、あるいはさらに冷間圧延して、鋼板とする。
また、必要に応じて酸洗あるいは焼鈍等の工程を加える
ことができる。
方法で製造された鋼板に、一次加熱処理後冷却して、フ
ェライトおよび塊状マルテンサイトを生成する一次工程
()と、次いで連続溶融亜鉛めっきラインにて二次加
熱処理を施し、三次工程後にマルテンサイトおよび残留
オーステナイトを生成するために一次工程で生成させた
塊状マルテンサイトの一部再オーステナイト化を図る二
次工程()とを施し、しかる後亜鉛めっき処理を施
し、冷却してマルテンサイトおよび残留オーステナイト
の生成を図る三次工程()を施し、延性に優れ、低降
伏比を有する高張力溶融亜鉛メッキ鋼板を得る。
しくは(AC3変態点+100 ℃)以下の温度域に少なくと
も5s以上好ましくは120 s以下保持する一次加熱処理
を施した後、Ms 点以下の温度まで5℃/s以上10℃/
s未満の冷却速度で鋼板を冷却する。この一次工程によ
り、鋼板中にはフェライトと塊状のマルテンサイトが生
成される。
フェライトから排出されたC等の合金元素が濃縮されて
含有されている。この塊状マルテンサイトが二次工程で
の二相域再加熱処理時に優先的に再オーステナイト化
し、三次工程での冷却後にマルテンサイトあるいは残留
オーステナイトとなる。三次工程後の鋼板組織中に必要
量のマルテンサイトおよび残留オーステナイトを生成さ
せるためには、一次工程後の鋼板中に塊状のマルテンサ
イトを体積率にて10%以上生成させることが好ましい。
素を高度に濃縮することにより、三次工程後のマルテン
サイトおよび残留オーステナイトの生成を促進させ、か
つ、三次工程後の鋼板組織中に十分な量のフェライトを
生成させるためには、一次工程後の鋼板中に体積率にて
60%以上のフェライトを生成させることが望ましい。
点−80)℃未満、あるいは保持時間が5s未満では、加
熱保持中に生成するオーステナイト量が少なく、冷却後
に得られる塊状マルテンサイト量が不足する。なお、一
次加熱処理の加熱保持温度が(AC3変態点+100 )℃を
超えると、加熱保持中にオーステナイトの結晶粒径が過
度に粗大化する。このため、三次工程後に得られる組織
が不均一となり、鋼板の延性低下を招く。このため、一
次加熱処理の加熱保持温度は(AC3変態点+100 )℃以
下とするのが好ましい。また、良好な生産性を確保する
ためには、保持時間は120 s以下とするのが好ましい。
s 未満では、パーライトおるいはベイナイト変態が生
じ、冷却後の鋼板組織を十分な量の塊状マルテンサイト
を含む組織とすることができない。一方、一次加熱処理
後の冷却速度が10℃/s 以上の場合には、冷却後の鋼板
組織を十分な量のフェライトを含む組織とすることがで
きず、マルテンサイトもラス状の形態となる。このた
め、一次加熱処理後の冷却速度は5℃/s 以上10℃/s
未満とした。なお、本発明でいう塊状マルテンサイトと
は、光学顕微鏡あるいは走査型電子顕微鏡による1000倍
程度の倍率下における観察で、相内部のラス構造が視認
できないものを指す。一方、ラス構造が明瞭に認められ
るものをラス状マルテンサイトと呼ぶ。
変態点以上の温度で行われた熱延鋼板を使用する場合に
は、最終圧延後の冷却時に、Ms 点以下の温度まで5℃
/s以上10℃/s 未満で冷却することにより、この一次
工程を代替することができる。
ンサイトを生成させた鋼板に、さらにAc1変態点〜Ac3
変態点の温度域で5s以上保持する二次加熱処理を施し
た後、5℃/s 以上の冷却速度で 500℃以下の温度まで
冷却する。この二次工程により、三次工程後にマルテン
サイトおよび残留オーステナイトを生成するために一次
工程で生成させた塊状マルテンサイトの一部再オーステ
ナイト化を図る。
変態点未満では、オーステナイトが再生成せず、三次工
程後にマルテンサイトや残留オーステナイトが得られな
い。また、加熱保持温度がAc3変態点を超えると、鋼板
組織の全オーステナイト化を招き、三次工程での冷却後
に前記複合組織を得ることが困難になる。また、二次加
熱処理における加熱保持時間が5s未満ではオーステナ
イトの再生成が不十分であるため、三次工程後に十分な
量のマルテンサイトあるいは残留オーステナイトが得ら
れない。なお、良好な生産性を確保するためには、加熱
保持時間は 120s以下とするのが好ましい。
範囲での冷却速度が5℃/s 未満では二次加熱処理にて
生成したオーステナイトがパーライトやベイナイトに変
態し、マルテンサイトや残留オーステナイトとならな
い。なお、二次加熱処理後の冷却速度は5℃/s 以上50
℃/s 以下とするのが好ましい。
鉛めっき設備を兼ね備えた連続溶融亜鉛めっきラインで
行うのが好ましい。このような連続溶融亜鉛めっきライ
ンで行うことにより、二次工程後直ちに三次工程に移行
でき、生産性が向上する。
きを施し、5℃/s 以上の冷却速度で 300℃まで冷却す
る。溶融亜鉛めっき処理は、通常、連続溶融亜鉛めっき
ラインで行われている処理条件でよく、特に限定する必
要はない。しかし、極端に高温でのめっきはマルテンサ
イトや残留オーステナイトの確保が困難となる。このた
め 500℃以下でのめっき処理とするのが好ましい。ま
た、めっき処理後の冷却速度が極端に小さいときも、マ
ルテンサイトや残留オーステナイトの確保が困難にな
る。このため、めっき処理後から 300℃までの温度範囲
における冷却速度は5℃/s 以上に限定するのがよい。
なお、好ましくは50℃/s 以下である。また、めっき処
理後、必要に応じて目付量調整のためのワイピングを行
ってよいのはいうまでもない。
合金化処理を施してもよい。合金化処理は、溶融亜鉛め
っき後、 450〜 550℃の温度域まで再加熱し溶融亜鉛め
っき層の合金化を行う。合金化処理後は、5℃/s 以上
の冷却速度で 300℃まで冷却するのが好ましい。高温で
の合金化は、必要なマルテンサイトや残留オーステナイ
ト量の確保が困難となり、鋼板の延性低下と降伏比の上
昇をもたらす。このため、合金化温度の上限は 550℃に
限定する。また、合金化温度が 450℃未満では、合金化
の進行が遅く生産性が低下する。このため、合金化温度
の下限は 450℃とするのが好ましい。また、合金化処理
後の冷却速度が極端に小さい場合には必要なマルテンサ
イトや残留オーステナイトの確保が困難になる。このた
め、合金化処理後から 300℃までの温度範囲における冷
却速度を5℃/s 以上に限定するのがよい。なお、めっ
き処理後、あるいは合金化処理後の冷却速度は鋼板の形
状保持の観点から50℃/s以下とするのが好ましい。
の鋼板には、化成処理性、摺動性等の調整のためのフラ
ッシュめっきを行ってもよい。さらに、形状矯正、表面
粗度等の調整のための調質圧延を加えてもよい。また、
樹脂あるいは油脂コーティング、各種塗装等の処理を施
しても何ら不都合はない。
金化処理設備を連続した溶融亜鉛めっきラインにおい
て、二次工程と三次工程を連続して行うことを前提とし
ているが、各工程を独立した設備で実施することも可能
である。
し、連続鋳造法にて鋳片とした。得られた鋳片を板厚
2.6mmまで熱間圧延し、次いで酸洗した後、冷間圧延に
より板厚 1.4mmの冷延鋼板を得た。
ンにて、表2に示す一次工程条件にて加熱保持した後冷
却する一次工程を施した。一次工程後、鋼板のミクロ組
織調査を行い、フェライトおよび塊状マルテンサイト量
を測定した。
に、連続溶融亜鉛めっきラインにて、表2に示す二次工
程条件で、加熱保持した後冷却する二次工程を施した
後、引き続き溶融亜鉛めっき処理を施し、一部について
は溶融亜鉛めっき処理後に再加熱する溶融亜鉛めっき層
の合金化処理を行い、次いで冷却する三次工程を施し
た。
のめっき槽に鋼板を浸漬して行い、浸漬した鋼板を引き
上げた後、片面当たりの目付量が50g /m2となるよう
に、ガスワイピングにより目付量を調整した。亜鉛めっ
き層の合金化処理を行う場合には、ワイピング処理の
後、10℃/s の加熱温度で 500℃まで昇温して合金化処
理した。合金化処理時の保持時間は、めっき層中の鉄含
有率が9〜11%となるように調整した。
を光学顕微鏡あるいは走査電子顕微鏡にて観察すること
により調査した。鋼板中のフェライトおよびマルテンサ
イトの量については、倍率1000倍の断面組織写真を用い
て、画像解析により任意に設定した 100mm四方の正方形
領域内に存在する該当相の占有面積率を求め、該当相の
体積率とした。また、残留オーステナイト量は、鋼板を
板厚方向の中心面まで研磨し、板厚中心面での回折X線
強度測定により求めた。入射X線には MoKα線を使用
し、残留オーステナイト相の{111 }、{200 }、{22
0 }、{311 }各面の回折X線強度比を求め、これらの
平均値を残留オーステナイトの体積比とした。フェライ
ト粒径はJIS Z0552 に規定に準拠して結晶粒度を測定
し、平均結晶粒径に換算した。
した。
したJIS Z 2204に規定のJIS5号試験片を用いて、JIS Z
2241に規定に準拠して、耐力(YS)、引張強さ(TS)、破断
伸び(El)を測定し、強度−伸びバランス(TS × El)およ
び降伏比(YS/TS) を算出した。
は、590MPa以上の引張強さ(TS)を有しており、強度−伸
びバランス(TS × El)が21000MPa以上と延性に優れ、か
つ、降伏比(YS/TS) が65%以下となっており、形状凍結
性にも優れる高張力溶融亜鉛めっき鋼板となっている。
一方、本発明の範囲を外れる比較例では、強度−伸びバ
ランスが低いか、降伏比も高い値となっており、高延性
と低降伏比を同時に満足するものはない。
度が低く、冷却後に得られる塊状マルテンサイトが少な
いため、めっき処理後のマルテンサイト量が少なくなっ
ている。このため、強度−伸びバランスが低い値となっ
ている。
小さく、冷却後に塊状マルテンサイトが生成しないた
め、めっき処理後に残留オーステナイトが得られず、一
部ベイナイトが生成している。このため、強度−伸びバ
ランスが低下し、降伏比が高くなっている。
度が高すぎたため、めっき処理後に残留オーステナイト
が得られず、一部ベイナイトが生成している。このた
め、強度−伸びバランスが低下し、降伏比が高くなって
いる。
度が低すぎたため、めっき処理後にマルテンサイトおよ
び残留オーステナイトが得られず、強度−伸びバランス
が低下し、降伏比が大幅に高くなっている。
囲を外れ、めっき処理後にマルテンサイトないしは残留
オーステナイトの生成量が少なくなり、強度−伸びバラ
ンスが低下している。さらに、鋼板No.12 は、ベイナイ
トが生成し、降伏比が大幅に高くなっている。
自動車部品に代表される成形品素材として実に好適な、
非常に優れた延性と十分に低い降伏比を有する高張力亜
鉛めっき鋼板が、安価にしかも安定して製造でき、産業
上格段の効果を奏する。
Claims (5)
- 【請求項1】 鋼板表層に溶融亜鉛めっき層または合金
化溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であっ
て、前記鋼板が、質量%で、 C:0.05〜0.20%、 Si:0.3 〜1.8 %、 Mn:1.0 〜3.0 % を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、
フェライト、マルテンサイト、残留オーステナイトから
なる複合組織を有し、かつ、前記フェライトを体積率で
60%以上、前記マルテンサイトを体積率で5%以上、前
記残留オーステナイトを体積率で2%以上含み、さら
に、前記フェライトの平均結晶粒径が5μm以上である
ことを特徴とする延性に優れる低降伏比高張力溶融亜鉛
めっき鋼板。 - 【請求項2】 前記組成に加え、さらに、下記(a)群
〜(d)群のうちから選ばれた1群または2群以上を含
有することを特徴とする請求項1に記載の延性に優れる
低降伏比高張力溶融亜鉛めっき鋼板。 記 (a)群:Cr、Moのうちの1種または2種を合計で、0.
05〜1.0 質量%、 (b)群:B:0.003 質量%以下、 (c)群:Ti、Nb、Vのうちから選ばれた1種または2
種以上を合計で、0.01〜0.2 質量% (d)群:Ca、REM のうちから選ばれた1種または2種
を合計で、0.01質量%以下 - 【請求項3】 質量%で、 C:0.05〜0.20%、 Si:0.3 〜1.8 %、 Mn:1.0 〜3.0 % を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有
する鋼板に、(Ac3変態点−80℃) 以上の温度で、5se
c 以上保持する一次加熱処理を施した後、5℃/s以上
10℃/s未満の冷却速度でMs 点以下の温度まで冷却す
る一次工程と、次いで、(Ac1変態点〜Ac3変態点) の
温度域で5s以上保持する二次加熱処理を施した後、5
℃/s以上の冷却速度で 500℃以下の温度まで冷却する
二次工程と、次いで溶融亜鉛めっき処理を施し、前記鋼
板表層に溶融亜鉛めっき層を形成した後、5℃/s以上
の冷却速度で 300℃まで冷却する三次工程とを順次施す
ことを特徴とする、延性に優れる低降伏比高張力溶融亜
鉛めっき鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 前記三次工程が、溶融亜鉛めっき処理を
施し、前記鋼板表層に溶融亜鉛めっき層を形成した後、
450〜 550℃の温度域まで再加熱して溶融亜鉛めっき層
の合金化処理を施し、該合金化処理後、5℃/s以上の
冷却速度で 300℃まで冷却する工程であることを特徴と
する請求項3に記載の延性に優れる低降伏比高張力溶融
亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 前記組成に加え、さらに、下記(a)群
〜(d)群のうちから選ばれた1群または2群以上を含
有することを特徴とする請求項3または4に記載の延性
に優れる低降伏比高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方
法。 記 (a)群:Cr、Moのうちの1種または2種を合計で、0.
05〜1.0 質量%、 (b)群:B:0.003 質量%以下、 (c)群:Ti、Nb、Vのうちから選ばれた1種または2
種以上を合計で、0.01〜0.2 質量% (d)群:Ca、REM のうちから選ばれた1種または2種
を合計で、0.01質量%以下
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